説明

滑車付連結環

【課題】予め所定形状に折曲形成された連結環に対して滑車を簡単に組み付け可能となる滑車付連結環を提供すること。
【解決手段】滑車4の軸孔5の孔径寸法を、連結環Aの環基体1を構成する杆材の径寸法より径大な孔径寸法に設定して、この軸孔5を介して環基体1に被嵌した滑車4をこの環基体1に沿って移動し得るように構成すると共に、この滑車4を環基体1に沿って軸杆部1Aに移動させた際に、この滑車4の軸孔5と軸杆部1Aとの間に隙間7を生じる構成とし、この軸孔5と軸杆部1Aとに生じる隙間7に挿入し得る形状の一対の軸受半体16を備えた滑車付連結環。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滑車付の連結環に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、意匠登録第785871号(特許文献1)のような滑車付の連結環が実施されている。
【0003】
この滑車付連結環は、例えば、適宜な二点位置間に張設したロープ20に滑車を載せることでロープ20に対して移動可能に取り付けでき、このロープ20に取り付けた滑車付連結環の連結環に、鳩目22付シート21の鳩目22を連結して吊り下げることで、シート21をロープ20に沿って開閉できるカーテンのようにして使用したり(図6参照。)、連結環に建築用資材などを吊り下げ連結してロープ20に沿って移動させたりすることに使用できる。
【0004】
【特許文献1】意匠登録第785871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記特許文献1のような滑車付連結環の環基体は、滑車の幅と略同幅のストレート杆部(軸杆部)が備えられると共に、この軸杆部の一側端部は滑車を組み込むために開放されていて、この開放端部から軸杆部に滑車を被嵌した後、別パーツの補助杆部をカシメ止め連結するなどして開放端部を閉塞することにより、環状の連結環が形成されると共に滑車が抜け止め状態に設けられる構成となっている。
【0006】
つまり、例えば、予めC状などに折曲形成された連結環の環基体に対しては、特に軸杆部の左右に屈曲部を有するような形状であると、滑車の軸孔は、軸杆部に対して大きくガタつくことがないように環基体の径寸法よりやや径大となる程度の孔径寸法を有するように形成されていて、環基体の屈曲部分に沿って滑車を移動させて軸杆部に位置させることができないために、滑車を取り付けするためには環基体に上記のような複雑な加工を施す必要があり、それ故製作が厄介であると共に、環基体が一体物でないことから強度不足の懸念もあった。
【0007】
本発明は、このような滑車付連結環の改良に係るもので、連結環の一部を別パーツ化するような構成を要せずとも、予め所定形状に折曲形成された連結環に対して滑車を簡単に組み付け可能となる画期的な滑車付連結環を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0009】
連結物を出入りさせる開口部2を備えた環基体1のこの開口部2の一端部に、開閉体3を開閉自在に設けると共に、この環基体1に滑車4軸支用の軸杆部1Aを設けた連結環Aと、互いに突合せ当接することで筒形の軸受体6を構成して前記軸杆部1Aに回動自在に被嵌装着し得る一対の略半筒形の軸受半体16と、この一対の軸受半体16で構成した筒形の前記軸受体6に被嵌装着し得る軸孔5を備えた滑車4とから成り、前記滑車4の前記軸孔5の孔径寸法を、前記環基体1を構成する杆材の径寸法より径大な孔径寸法に設定して、この軸孔5を介して前記環基体1に被嵌した滑車4をこの環基体1に沿って移動し得るように構成すると共に、この滑車4を環基体1に沿って前記軸杆部1Aに移動させた際に、この滑車4の軸孔5と軸杆部1Aとの間に隙間7を生じる構成とし、この軸孔5と軸杆部1Aとに生じる隙間7に挿入し得る形状に前記各軸受半体16を構成したことを特徴とする滑車付連結環に係るものである。
【0010】
また、前記環基体1は、前記軸杆部1Aの左右に杆材が屈曲した屈曲部1Bを有する形状に形成し、前記軸孔5を介して前記環基体1に被嵌した前記滑車4を屈曲部1Bに沿って軸杆部1Aに移動させ、この滑車4の軸孔5と軸杆部1Aとに生じる前記隙間7に一方の前記各軸受半体16を挿入した後、残存する隙間7に他方の軸受半体16を挿入することで、一対の軸受半体16で成る前記軸受体6が前記軸杆部1Aに回動自在に被嵌装着し且つこの軸受体6に軸孔5を介して滑車4が被嵌装着する構成としたことを特徴とする請求項1記載の滑車付連結環に係るものである。
【0011】
また、前記一対の各軸受半体16は、変形弾性を具備する構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の滑車付連結環に係るものである。
【0012】
また、前記軸孔5の端部に、この軸孔5の孔径寸法より径大な孔径寸法を有する径大孔部15を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の滑車付連結環に係るものである。
【0013】
また、前記各軸受半体16の両端部に、この各軸受半体16を軸孔5に挿入した際に軸孔5の両端部に係止して各軸受半体16を軸孔5より抜け止め状態とする係止部16A・16Bを形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の滑車付連結環に係るものである。
【0014】
また、前記各軸受半体16の端部に、前記軸孔5の端部に係止する係止部16Bを設け、この各軸受半体16の突合せ当接部18に、この各軸受半体16を突合せ当接した際に互いに係合してこの突合せ当接状態を位置決めする位置決め係合部19を設けて、この各軸受半体16を前記軸孔5に挿入した際に軸孔5の端部に前記係止部16Bが係止すると共に、各軸受半体16の互いの前記位置決め係合部19が係合し各軸受半体16が互いに位置決め状態となって各軸受半体16が軸孔5より抜け止め状態となるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の滑車付連結環に係るものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明は上述のように構成したから、連結環の環基体に従来例のような複雑な加工を施さずとも、予め所定形状に屈曲形成された環基体に対して滑車を容易に組み付け可能であるため、簡易に且つコスト安に設計実現可能で量産性に秀れ、また、強度の高い一体物の環基体を採用可能であるから強度不足の懸念もないなど、極めて実用性に秀れた画期的な滑車付連結環となる。
【0016】
また、請求項2記載の発明においては、両側に屈曲部があることで滑車が横ずれ阻止されて安定動作する構成の滑車付連結環を実現できると共に、環基体に屈曲部を有する構成でありながら、滑車を屈曲部に沿って軸杆部にまで簡単に移動させて組み付けできる一層実用性に秀れた構成の滑車付連結環となる。
【0017】
また、請求項3記載の発明においては、変形弾性を具備する軸受半体を軸杆部と軸孔との隙間に挿入(例えば圧入)し易いために、滑車の組み付け作業が一層容易に行われることになる極めて実用性に秀れた構成の滑車付連結環となる。
【0018】
また、請求項4記載の発明においては、軸孔の端部に形成された径大孔部により軸孔を介して滑車を直角な屈曲部に沿って移動させるようなことも容易に行われると共に、この径大孔部よりこの軸孔と軸杆部との隙間に軸受半体を挿入し易いために、滑車の組み付け作業が一層容易に行われることになる極めて実用性に秀れた構成の滑車付連結環となる。
【0019】
また、請求項5,6記載の発明においては、滑車が軸受体に対して抜け止め状態(位置決め状態)で装着されるため、軸受体を介して行われる軸杆部に対する滑車の一層の安定動作を実現できる極めて実用性に秀れた構成の滑車付連結環となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
好適と考える本発明の実施形態(発明をどのように実施するか)を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0021】
例えば、環基体1に開口部2から滑車4を入れ、この滑車4の軸孔5を環基体1に被嵌して環基体1に沿って滑車4を軸杆部1Aに移動する。
【0022】
この際、前記軸杆部1Aの径寸法よりも径大な孔径寸法を有する軸孔5は、環基体1の途中部に湾曲部や屈曲部1Bがあっても、この湾曲部や屈曲部1Bに沿って移動可能である。
【0023】
軸杆部1Aに滑車4を位置させると、軸孔5と軸杆部1Aとの間には隙間7を生じているが、この隙間7に一方の軸受半体16を挿入し、次いで、残存する隙間7に他方の軸受半体16を挿入することで、一対の軸受半体16で成る軸受体6が軸杆部1Aに回動自在に被嵌装着した状態となり且つこの軸受体6に軸孔5を介して滑車4が被嵌装着した状態となって、滑車4は軸杆部1Aに対してガタつくことなく、軸受半体16(軸受体6)を介して回動自在となる。
【0024】
また、例えば、前記一対の軸受半体16が変形弾性を具備する構成とすれば、たとえ軸杆部1Aと軸孔5との隙間7が狭くても、この隙間7に軸受半体16を変形させながら容易に挿入することができるので、この軸受半体16の組み付け作業が一層容易に行われる。
【0025】
従って、このように滑車4を環基体1の軸杆部1Aに位置(移動)させた後、軸杆部1Aと軸孔5との隙間7に一対の軸受半体16を挿入するというだけの簡単な作業によって滑車4を連結環Aの環基体1(軸杆部1A)に組み付けできるので、環基体1に従来例のような複雑な加工を施さずとも、予め所定形状に屈曲形成された環基体1に対して滑車4を容易に組み付け可能で量産性に秀れ、また、これにより環基体1を一体物で構成可能となるため、強度の高い環基体1を採用した商品価値の高い滑車付連結環を実現可能となるなど、極めて実用性に秀れた画期的な滑車付連結環となる。
【実施例1】
【0026】
本発明の具体的な実施例1について図1〜図6に基づいて説明する。
【0027】
本実施例は、図1に示すような、杆材をフック状若しくは略C状に折曲形成した環基体1を有する連結環Aに、滑車4を備えた滑車付連結環に係るものである。
【0028】
具体的には、本実施例の環基体1は、図3に示すように、例えば金属製の杆材(丸形杆材)を略C状に屈曲形成し、このC状杆材(環基体1)の両端部間の開口部2に開閉体3を開閉自在に枢着することで環状の前記連結環Aを構成している。
【0029】
また、この環基体1は、一側部(図面上側部)を、左右に杆材が屈曲した屈曲部1Bを有するストレート形状の軸杆部1Aに形成している。更に詳しくは、図4に示すように上側部を略コ字状に屈曲形成し、両側の略直角の屈曲部1B間に存するストレート杆部を軸杆部1Aとし、この軸杆部1Aに前記滑車4を回動自在に被嵌装着する構成としている。
【0030】
また、開閉体3は、金属製線材を略コ字状に屈曲形成して構成し、両基端部の枢着位置をずらした構成とすることで、常にこの開閉体3が前記開口部2を閉塞する方向に弾性を生じ、この閉塞弾性に抗して開閉体3を環基体1の内方へ向けて開放回動でき、開放した開閉体3を放せば、自身の閉塞弾性により自動的に開口部2を閉塞する構成としている。
【0031】
本実施例の滑車4は、例えば金属製とし、図3に示すように、中心部の軸孔5の孔径寸法を、前記環基体1を構成する杆材(軸杆部1Aも含む)の径寸法よりも径大に設定し、この軸孔5を環基体1に開口部2から被嵌して環基体1に沿って移動させることができると共に、前記屈曲部1Bを乗り越えて前記軸杆部1Aに移動させることができ、また、この滑車4を環基体1に沿って軸杆部1Aに移動させた際に、この滑車4の軸孔5と軸杆部1Aとの間に隙間7を生じるように構成している。
【0032】
また、この滑車4の軸杆部1Aへの取り付け構造を説明すると、本実施例では、図3に示すように、互いに突合せ当接することで筒形の軸受体6を構成する一対の略半筒形の軸受半体16を備え、この軸受半体16を滑車4の軸孔5と軸杆部1Aとの間に生じる前記隙間7に介存させることで、この軸受半体16を介して滑車4がガタつくことなく軸杆部1Aに対して回動自在に装着する構造としている。
【0033】
具体的には、本実施例の滑車4の軸孔5は、図2,図4に示すように、軸受体6(軸受半体16)の筒長と略同等の孔長寸法を有するように設定し、更に、前記一対の軸受半体16で構成した軸受体6の外径寸法と略同等の孔径寸法を有するように設定して、この軸孔5に各軸受半体16を圧入することで軸受体6に滑車4が被嵌状態に装着される構成としている。
【0034】
また、この軸孔5の両側端部に、この軸孔5の孔径寸法より径大な径大孔部15を形成した構成とし、この両端に径大孔部15を有することによって、軸孔5を介して滑車4を略直角な前記屈曲部1Bに沿って移動させることが容易に行われると共に、この径大孔部15から軸孔5(隙間7)に軸受半体16を挿入することも容易に行われる構成としている。
【0035】
また、この両端の各径大孔部15は、外側に位置する末広がり形状(端部側程径大になる形状)の傾斜孔縁となる第一径大孔部15Aと、この第一径大孔部15Aの内側に位置して第一径大孔部15Aの最小径寸法と同等の径寸法を有する第二径大孔部15Bとから成る構成としている。
【0036】
一方、本実施例の軸受体6(各軸受半体16)は、変形弾性を有する樹脂製とし、前記軸杆部1Aに対して遊転可能な内径寸法を有する形状に構成すると共に、軸杆部1Aの長さ寸法と略同等の長さ寸法を有する形状に構成し、この各軸受半体16を軸杆部1Aに被嵌すると、軸杆部1Aの両側に存する屈曲部1Bにより軸受体6がこの各屈曲部1Bに沿って移動(横ずれ)することが阻止される構成としている(図4参照。)。
【0037】
また、この各軸受半体16の両側端部には、前記軸孔5に挿入した際に軸孔5の両端部に係止する係止部16A・16Bを形成している。
【0038】
具体的には、各軸受半体16の一側端部(図面左側端部)には、この軸受半体16の円弧方向の両側端部位置に爪形状の突起を一体成形して、この爪状の突起を第一係止部16Aとしている。
【0039】
また、この第一係止部16Aの外周面を、一側端部に向かって下降傾斜する傾斜面17に形成し、この傾斜面17の存する軸受半体16の一側端部を軸孔5に対する挿入先端部とすることで、軸受半体16を前記滑車4の軸孔5の径大孔部15(第一径大孔部15A)に挿入し易い構成としている。
【0040】
また、この傾斜面17は、軸受半体16を軸孔5に挿入した際に軸孔5の内周面に接することになるが、この際、軸受半体16が半筒形で、この軸受半体16の円弧方向の両端部に第一係止部16Aが突設されていることもあって軸受半体16は比較的撓み変形し易く、これにより大きな挿入抵抗を生じることなく軸受半体16を容易に挿入可能となる構成としている。そして、軸受半体16が奥へと挿入(圧入)されて第一係止部16Aが軸孔5の挿入方向の後端部(径大孔部15の第二径大孔部15B)に達すると、軸受半体16自身の復帰弾性によって自動的に第一係止部16Aが第二径大孔部15Bに係止する構成としている。
【0041】
また、前記各軸受半体16の他側端部には、その全周を前記軸孔5の孔径寸法よりも径大な径寸法を有する鍔状の径大部に形成して、この全周の径大部を第二係止部16Bとし、この各軸受半体16を前記第一係止部16Aの存する一側端部から軸孔5に奥まで挿入すると、図4に示すように両端部の係止部16A・16Bが軸孔5の両端部の径大孔部15の第二径大孔部15Bに係止し、これにより滑車4が軸受体6より抜け止め状態(横ずれしない位置決め状態)となる構成としている。従って、前記各屈曲部1Bにより軸受体6が軸杆部1Aに位置決め状態となると共に、この軸受体6に対して滑車4が位置決め状態となるので、滑車4が軸杆部1Aに対して勝手に移動してしまうようなことなく、滑車4が軸杆部1A位置でのみ安定的に動作することになる構成としている。尚、各軸受半体16の両端部の係止部16A・16Bが、軸孔5の両端部の第二径大孔部15Bに当接あるいは近接することで軸受体6に対し滑車4が位置決め状態となるように構成しても良い。
【0042】
次に、本実施例の連結環Aへの滑車4の組み付け方法を説明すると、環基体1に、軸孔5を介して滑車4を被嵌して、この環基体1に沿って滑車4を軸杆部1Aに移動させ、この滑車4の軸孔5と軸杆部1Aとに生じる前記隙間7に一方の前記各軸受半体16を挿入した後、残存する隙間7に他方の軸受半体16を挿入する。
【0043】
図5を用いて更に具体的に説明すると、例えば、環基体1に開口部2から滑車4を入れ、この滑車4の軸孔5を環基体1に被嵌して環基体1に沿って滑車4を移動させ、屈曲部1Bを越えて軸杆部1Aに位置させる。
【0044】
すると、軸孔5は、軸杆部1Aとの間に隙間7を生じるので、先ず、この隙間7に一方の軸受半体16を挿入するが、この際、例えば図5(a)の矢印のように、軸杆部1Aに対して滑車4を上方へ動かして軸孔5を偏心させることにより軸杆部1Aと軸孔5との間の隙間7を上方へ偏らせると、図5(b)の矢印のように、広がった上方の隙間7に一方の軸受半体16を挿入し易い。
【0045】
次いで、図5(c)の矢印のように、他方の軸受半体16を挿入し易いように(屈曲部1Bより下方に垂下する環基体1部分が、軸受半体16の挿入作業の邪魔とならないように)残存する隙間7が上方に位置するまで軸杆部1Aに対して滑車4と共に挿入した一方の軸受半体16を例えば180度回転させ、図5(d)の矢印のように、上部に移動した残存隙間7に他方の軸受半体16を挿入(圧入)すると、一対の軸受半体16で成る軸受体6が軸杆部1Aに回動自在に被嵌装着した状態となると共に、この軸受体6に軸孔5を介して滑車4が被嵌装着した状態となり、滑車4は、軸杆部1Aに対してガタつくことなく、軸受半体16(軸受体6)を介して回動自在となる。
【0046】
従って、このように構成した本実施例によれば、滑車4と一対の軸受半体16(軸受体6)とを連結環Aの環基体1(軸杆部1A)に対して容易に組み付けできるので、環基体1に従来例のような複雑な加工を施さずとも、予め所定形状に屈曲形成された環基体1に対して滑車4を容易に組み付け可能で量産性に秀れ、また、これにより環基体1を一体物で構成可能となるため、強度の高い環基体1を採用した商品価値の高い滑車付連結環を実現可能となるなど、極めて実用性に秀れた画期的な滑車付連結環となる。
【実施例2】
【0047】
本発明の具体的な実施例2について図7〜図11に基づいて説明する。
【0048】
本実施例は、前記実施例1において、一対の軸受半体16の構成並びに、各軸受半体16の前記隙間7への挿入構造を異ならせた場合である。
【0049】
具体的には、各軸受半体16を、互いに反対方向から隙間7へ挿入する構成としている。
【0050】
そのため、本実施例においても、滑車4の軸孔5の両端部の径大孔部15に第二径大部15Bを有するが、この各第二径大部15Bは、図7,図8に示すように軸孔5の孔全周に対して半周分となる範囲にだけ形成すると共に、一側端部に存する第二径大部15Bと他側端部に存する第二径大部15Bとは、形成位置を180度反転した位置に設定している。
【0051】
従って、この各軸受半体16を前記軸孔5に挿入して夫々の第二係止部16Bを第二径大部15Bに係止(嵌合)すると、各軸受半体16は軸孔5に対して回り止め状態となる構成としている。
【0052】
また、本実施例の各軸受半体16は、一側端部に第一係止部16Aを有しない構成であり、替わりにこの各軸受半体16の突合せ当接(面)部18に、この各軸受半体16を突合せ当接した際に互いに係合してこの突合せ当接状態を位置決めする位置決め係合部19を設けて、この各軸受半体16を前記軸孔5に挿入した際に軸孔5の両端部の各第二径大部15Bに前記第二係止部16Bが係止すると共に、各軸受半体16の互いの前記位置決め係合部19が係合して各軸受半体16が軸孔5より抜け止め状態となるように構成している。
【0053】
更に詳しくは、各軸受半体16の突合せ当接面部18の長さ方向の略中間位置に、わずかな段差部(段差0.2mm)を形成してこの段差部を前記位置決め係合部19としている。
【0054】
また、この各軸受半体16の突合せ当接面部18は、図10に示すように、軸受半体16の挿入先端部から位置決め係合部19にかけての先端側面部18Aと位置決め係合部19から挿入基端部にかけての基端側面部18Bを、夫々が平行であって且つ水平面に対して2°傾斜する傾斜面に形成して、一方の軸受半体16を前記隙間7に挿入した後、続いて他方の軸受半体16を残りの隙間7に挿入すると、各軸受半体16の先端側面部18Aが互いに当接し、この先端側面部18Aが互いに傾斜面であることから、軸受半体16を深く押し込むにつれて互いに圧接状態となって押し込み抵抗が大きくなるが、他方の軸受半体16の位置決め係合部19が一方の軸受半体16の先端側面部18Aを乗り越えると、双方の位置決め係合部19が係合すると共に、各軸受半体16の夫々の先端側面部18Aと基端側面18Bとが互いに当接して、各軸受半体16が互いに突合せ当接面部18の面方向へ移動不能な状態となり、この際、各軸受半体16の前記第二係止部16Bが前記第二径大部15Bに係止して、各軸受半体16(軸受体6)が軸孔5(滑車4)より抜け止め状態となる構成としている。
【0055】
また、この際、各軸受半体16の先端側面部18Aが互いに傾斜面であるため、他方の軸受半体16の押し込みに際して押し込み始めは抵抗なく押し込むことができるし、前記位置決め係合部19の段差もわずか0.2mmの段差であるため、押し込みにさほど強い力を要することなく、比較的簡単に挿入操作することができる。
【0056】
次に、図11を用いて本実施例の連結環Aへの滑車4の組み付け方法を説明する。
【0057】
例えば、環基体1に開口部2から滑車4を入れ、この滑車4の軸孔5を環基体1に被嵌して環基体1に沿って滑車4を移動させ、屈曲部1Bを越えて軸杆部1Aに位置させる。
【0058】
すると、軸孔5は、軸杆部1Aとの間に隙間7を生じるので、先ず、この隙間7に一方の軸受半体16を挿入し、第二径大部15Bに第二係止部16Bを位置を合わせて係止するが、この際、例えば図5(a)の矢印のように、軸杆部1Aに対して滑車4を上方へ動かして軸孔5を偏心させることにより軸杆部1Aと軸孔5との間の隙間7を上方へ偏らせると、図5(b)の矢印のように、広がった上方の隙間7に一方の軸受半体16を挿入し易い。
【0059】
次いで、図5(c)の矢印のように、他方の軸受半体16を挿入し易いように(屈曲部1Bより下方に垂下する環基体1部分が、軸受半体16の挿入作業の邪魔とならないように)残存する隙間7が上方に位置するまで軸杆部1Aに対して滑車4と共に挿入した一方の軸受半体16を例えば180度回転させ、図5(d)の矢印のように、上部に移動した残存隙間7に、一方の軸受半体16の挿入方向と反対方向から他方の軸受半体16を挿入(圧入)して第二径大部15Bに第二係止部16Bを係止させると共に互いの位置決め係合部19を係合させると、一対の軸受半体16で成る軸受体6が軸杆部1Aに回動自在に被嵌装着した状態となると共に、この軸受体6に軸孔5を介して滑車4が被嵌装着した状態となり、滑車4は、軸杆部1Aに対してガタつくことなく、軸受半体16(軸受体6)を介して回動自在となる。
【0060】
他の構成は、前記実施例1と同様である。
【0061】
尚、本発明は、実施例1,2に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施例1を示す斜視図である。
【図2】実施例1の滑車及び軸受体の説明斜断面図である。
【図3】実施例1の分解斜視図である。
【図4】実施例1の要部の切欠説明図である。
【図5】実施例1の滑車の組み付け手順を示す説明図である。
【図6】実施例1の使用状態を示す概略説明斜視図である。
【図7】実施例2の分解斜視図である。
【図8】実施例2の滑車並びに一対の軸受半体を示す分解説明図である。
【図9】実施例2の軸受半体を各方面から示した説明図である。
【図10】図9のA部の詳細を示した説明図である。
【図11】実施例2の滑車の組み付け手順を示す説明図である。
【符号の説明】
【0063】
1 環基体
1A 軸杆部
1B 屈曲部
2 開口部
3 開閉体
4 滑車
5 軸孔
6 軸受体
7 隙間
15 径大孔部
16 軸受半体
16A 係止部
16B 係止部
18 突合せ当接部
19 位置決め係合部
A 連結環

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連結物を出入りさせる開口部を備えた環基体のこの開口部の一端部に、開閉体を開閉自在に設けると共に、この環基体に滑車軸支用の軸杆部を設けた連結環と、互いに突合せ当接することで筒形の軸受体を構成して前記軸杆部に回動自在に被嵌装着し得る一対の略半筒形の軸受半体と、この一対の軸受半体で構成した筒形の前記軸受体に被嵌装着し得る軸孔を備えた滑車とから成り、前記滑車の前記軸孔の孔径寸法を、前記環基体を構成する杆材の径寸法より径大な孔径寸法に設定して、この軸孔を介して前記環基体に被嵌した滑車をこの環基体に沿って移動し得るように構成すると共に、この滑車を環基体に沿って前記軸杆部に移動させた際に、この滑車の軸孔と軸杆部との間に隙間を生じる構成とし、この軸孔と軸杆部とに生じる隙間に挿入し得る形状に前記各軸受半体を構成したことを特徴とする滑車付連結環。
【請求項2】
前記環基体は、前記軸杆部の左右に杆材が屈曲した屈曲部を有する形状に形成し、前記軸孔を介して前記環基体に被嵌した前記滑車を屈曲部に沿って軸杆部に移動させ、この滑車の軸孔と軸杆部とに生じる前記隙間に一方の前記各軸受半体を挿入した後、残存する隙間に他方の軸受半体を挿入することで、一対の軸受半体で成る前記軸受体が前記軸杆部に回動自在に被嵌装着し且つこの軸受体に軸孔を介して滑車が被嵌装着する構成としたことを特徴とする請求項1記載の滑車付連結環。
【請求項3】
前記一対の各軸受半体は、変形弾性を具備する構成としたことを特徴とする請求項1,2のいずれか1項に記載の滑車付連結環。
【請求項4】
前記軸孔の端部に、この軸孔の孔径寸法より径大な孔径寸法を有する径大孔部を形成したことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の滑車付連結環。
【請求項5】
前記各軸受半体の両端部に、この各軸受半体を軸孔に挿入した際に軸孔の両端部に係止して各軸受半体を軸孔より抜け止め状態とする係止部を形成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の滑車付連結環。
【請求項6】
前記各軸受半体の端部に、前記軸孔の端部に係止する係止部を設け、この各軸受半体の突合せ当接部に、この各軸受半体を突合せ当接した際に互いに係合してこの突合せ当接状態を位置決めする位置決め係合部を設けて、この各軸受半体を前記軸孔に挿入した際に軸孔の端部に前記係止部が係止すると共に、各軸受半体の互いの前記位置決め係合部が係合し各軸受半体が互いに位置決め状態となって各軸受半体が軸孔より抜け止め状態となるように構成したことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の滑車付連結環。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−97704(P2009−97704A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−290076(P2007−290076)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【出願人】(000139791)株式会社伊藤製作所 (19)
【Fターム(参考)】