説明

漏れ検出方法

【解決手段】本発明は漏れ検出方法に関しており、漏れ検出方法では、試験ガスが充填された試験体(24)が吸引口(11)の前方に置かれる。漏れの場合には、吸引された空気が、前記試験体の表面に軽く触れて試験ガスを吸収する。該試験ガスは試験ガス検出器(17,17a)によって検出される。本発明によれば、前記試験体が前記吸引口を通過させられている間にも試験が行われ得るように、前記試験体(24)の十分な可動性が試験処理中に確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試験ガスが充填された試験体を気流にさらして、該気流又は該気流の部分流を試験ガスの存在について検査することにより、試験体の漏れを検出する漏れ検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
試験体、つまり漏れについて検査されるべき対象物に試験ガスを充填する漏れ検出方法が既に知られている。試験体は、キャリアガスが通過する漏れ止めチャンバに置かれる。キャリアガスが漏れ止めチャンバを通過した後、キャリアガスが試験ガスの存在について検査される。このような方法は、国際公開第2005/054806号パンフレット(センシスター テクノロジーズ エービー(Sensistor Technologies AB))に述べられている。この方法では、試験体が密閉可能なチャンバに置かれて、該チャンバの内部が大気に対して密閉されていることが必要である。
【0003】
特開第2005−121481号公報(デンソー)には、漏れ検出方法が述べられており、該漏れ検出方法では、試験体が楔状チャンバ内に挿入されて、該楔状チャンバの先端部が吸引装置に接続されて、該楔状チャンバの幅が広い端部が大気に向かって開口してフィルタのみによって覆われている。空気が、前記フィルタを通って楔状チャンバの内部に吸引されて試験体に沿って流れる。試験体の内部から外部に漏れる試験ガスが、楔状チャンバから吸引された空気の部分流が供給される試験ガス検出器によって検出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2005/054806号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知の漏れ検出方法の必須条件は、試験体を密閉するチャンバを設けることであり、該チャンバは、周囲に対して気密に密閉されるか、又は周囲に空気圧で接続される。夫々の場合で、試験体を収容するチャンバを必要とする。
【0006】
更に、密閉されていない試験体の検査に適した吸込み式漏れ検出器が知られている。吸込み式漏れ検出器は、周囲空気を吸引して取り入れるための棒状の細いプローブを備えている。該プローブは、吸引された周囲空気中の試験ガスを検出可能な試験ガス検出器に接続されている。このような吸込み式漏れ検出器の空間検出領域は、必然的に狭く制限される。この吸込み式漏れ検出器は、漏れの存在を検出するだけでなく漏れの箇所を確定するためにも設けられている。漏れを検出する際に、漏れの箇所は、漏れが検出された時点でプローブの先端部によって占められた位置に基づいて確定される。従って、この漏れ検出方法の特性として、吸込み式漏れ検出器の空間検出領域は非常に厳密に画定される。
【0007】
本発明は、試験体の可動性を少しも制限することなく且つ試験体の密閉を必要とすることなく、漏れ検出が行われ得る漏れ検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る漏れ検出方法は、請求項1によって定義されている。本発明は、周囲雰囲気中で、気流が、吸引のみによる方向付けられていない流れの形態で、密閉されていない試験体の略全面を通過することにより特徴付けられている。
【0009】
「方向付けられていない流れ」という文言は、気流が、偏向板又は同様の案内手段の影響を受けずに、吸収のみによって試験体の表面に沿って移動することを意味する。試験体の表面は、全ての位置で自由にアクセス可能である。
【0010】
本発明によれば、試験体は、いかなる密閉も無しで、寸法が大きな吸引口に吸引される気流にさらされる。吸引口の直径は、試験体の最大直径の5%より大きい。大きな吸引口によって、吸引された気流が試験体の外面の略全てに軽く触れることが確保されており、そのため、試験体の漏れの箇所が突き止められることはないが、試験体に存在する漏れが各位置で検出され得る。
【0011】
本発明は更に、移動可能な試験体の漏れ検出に特に適している。本発明により、大量生産で製造されるような通過する製品を、移動している間に検査することが可能になる。このような製品は、例えば、試験ガス、特にはヘリウムが超過圧力で充填されるポンプ又は容器である。本発明の方法によれば、これらの製品は漏れについて全体的に検査される。
【0012】
本発明の方法により、夫々の試験領域を密閉することなく、試験体の漏れの存在について生産工場の完成領域を全体的に検査することが可能になる。
【0013】
試験ガスの検出は、気流全体又は気流の部分流のいずれかで行われ得る。部分流が気流から分岐される場合、この部分流は、質量分析計、又は試験ガスに選択的に反応する石英窓タイプのセンサのいずれかに供給され得る。
【0014】
気流の流速は、比較的高く、少なくとも毎秒100 標準cm3 であり、特には少なくとも毎秒1標準リットルである。吸引管の直径は対応して大きく、少なくとも5cmであり、特には少なくとも10cmである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】漏れ検出方法の第1の実施形態を示す概略図である。
【図2】漏れ検出方法の第2の実施形態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を、図面を参照して以下により詳細に説明する。
【0017】
図1に係る方法では、直径が比較的大きい吸引管10が設けられている。直径は、少なくとも5cmであり、特には少なくとも10cmである。吸引管10の一端部にある吸引口11を介して、周囲空気が、矢印12によって示されているように吸引される。周囲空気はあらゆる空気案内手段無しで吸引されており、従って、矢印12によって示されているように、軸方向だけでなく横方向の周囲空気も共に吸引管10に吸引される。
【0018】
吸引管10の下流側の端部13が、気流16を推進させるべく設けられた搬送部15に可撓性のホース14を介して接続されている。
【0019】
気流16の進路に沿って、部分流抽出部分1,2,3 が設けられており、部分流抽出部分1,2,3 は夫々、試験ガス検出器17を部分流抽出部分1,2,3 に接続するように構成されている。このような試験ガス検出器17が、部分流抽出部分2 の位置に図示されている。前記試験ガス検出器17は、真空ポンプ19に接続された質量分析計18を備えている。試験ガス検出器17の入口20が、部分流抽出部分に接続される。
【0020】
部分流抽出部分1 は吸引管10に配置されており、部分流抽出部分2 はホース14上で且つ搬送部15の上流側に配置されており、部分流抽出部分3 は搬送部15の下流側に配置されている。
【0021】
図1は、石英窓タイプのセンサとして設計された試験ガス検出器17a を更に図示している。このような石英窓タイプのセンサが、独国特許出願公開第10031882号明細書に述べられている。前記石英窓タイプのセンサは、膜22によって閉じられたケーシング21を備えている。膜22は、試験ガス、例えばヘリウムに対して選択的に浸透性を有する。ケーシング21の内部には、圧力センサが配置されている。気流は前記膜22に沿って流れる。試験ガスが気流に含まれている場合、この試験ガスは膜22を通過してケーシング21に入る。ケーシング21の内部で圧力が増加し、圧力の増加は測定ゲージによって示される。石英窓タイプのセンサの機能性は、試験体の領域に真空を必要としない。
【0022】
試験体の表面全体が気流にさらされるように、試験体24は、周囲雰囲気中で吸引口11の前方に配置される。試験体24には、試験ガス(ヘリウム)が充填されている。漏れが存在すれば、試験ガスは気流に入り込み、気流によって運ばれる。
【0023】
気流が確実に試験体の表面全体に軽く触れるために、吸引口11の断面積は、吸引口11の面への試験体24の投影面の少なくとも10%になる必要がある。特には、断面積は前記投影面の少なくとも20%になる必要がある。
【0024】
複数の試験体24が吸引口11を連続的又は不連続的に通過させられている間に、試験が行なわれ得る。従って、本発明の方法は、連続生産又は大量生産にも適用可能である。吸引管10を複数の試験体24に移動させることにより、生じ得る漏れについて複数の試験体24の全域又は試験体群を検査するオプションが更に設けられる。これは、可撓性のホース14によって可能になる。
【0025】
図2に係る実施形態では、搬送部15が吸引管10の内部に通風装置の形態で設けられている。第1の実施形態に設けられているようなホースが、ここでは設けられていない。部分流抽出部分1,2 は夫々試験ガス検出器17a に接続されるように構成されている。図2では、石英窓タイプのセンサが示されているが、質量分析計のセンサも使用され得る。部分流抽出部分1,2 は、搬送部15の上流側又は下流側に配置され得る。
【0026】
更に、吸引口11の周囲にカラーを設けることが可能である。
【0027】
本発明は、漏れ試験で高い適応性を可能にする。本発明は、試験体の漏れの箇所を突き止めることなく、単なる漏れの存在の検出として主に役立つ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験ガスが充填された試験体(24)を気流にさらして、該気流(16)又は該気流の部分流を試験ガスの存在について検査することにより、前記試験体(24)の漏れを検出する漏れ検出方法において、
周囲雰囲気中で、気流が、吸引のみによる方向付けられていない流れの形態で、密閉されていない前記試験体(24)の略全面を通過することを特徴とする漏れ検出方法。
【請求項2】
前記試験体(24)は、吸引管(10)の吸引口(11)の前方に置かれて、
該吸引口(11)は、周囲雰囲気から前記試験体(24)を通過した空気を吸引すべく作用することを特徴とする請求項1に記載の漏れ検出方法。
【請求項3】
前記吸引口(11)の断面積は、前記吸引口(11)の面への前記試験体(24)の投影面の少なくとも10%であることを特徴とする請求項1又は2に記載の漏れ検出方法。
【請求項4】
前記試験体(24)の下流側で、部分流が気流(16)から分岐されて試験ガス検出器(17,17a)に供給されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の漏れ検出方法。
【請求項5】
流れの方向に見たとき、前記部分流の分岐の前に前記吸引管(10)内に気流の乱流が生じることを特徴とする請求項4に記載の漏れ検出方法。
【請求項6】
前記部分流は、前記吸引管(10)の途中で抽出されることを特徴とする請求項4に記載の漏れ検出方法。
【請求項7】
前記部分流は、前記吸引管(10)の断面の複数箇所で抽出されることを特徴とする請求項4に記載の漏れ検出方法。
【請求項8】
前記試験ガス検出器(17)として、質量分析計が用いられていることを特徴とする請求項4に記載の漏れ検出方法。
【請求項9】
石英窓タイプのセンサが、試験ガス検出器(17a) として用いられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の漏れ検出方法。
【請求項10】
内径が少なくとも2cmである前記吸引管(10)が用いられていることを特徴とする請求項2に記載の漏れ検出方法。
【請求項11】
内径が少なくとも5cmである前記吸引管(10)が用いられていることを特徴とする請求項10に記載の漏れ検出方法。
【請求項12】
気流(16)の流速が、少なくとも毎秒100 標準cm3 であることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の漏れ検出方法。
【請求項13】
気流(16)の流速は、少なくとも毎秒1標準リットルであることを特徴とする請求項12に記載の漏れ検出方法。
【請求項14】
前記試験体(24)は、前記吸引口(11)を連続的又は不連続的に通過させられることを特徴とする請求項1乃至13のいずれかに記載の漏れ検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−514743(P2012−514743A)
【公表日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−544829(P2011−544829)
【出願日】平成21年12月15日(2009.12.15)
【国際出願番号】PCT/EP2009/067196
【国際公開番号】WO2010/079055
【国際公開日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【出願人】(500469855)インフィコン ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (43)
【氏名又は名称原語表記】Inficon GmbH
【住所又は居所原語表記】Bonner Strasse 498, D−50968 Koeln, Germany
【Fターム(参考)】