説明

漏れ検査装置

【課題】被検査物内外の所定圧力差を保持することができ、かつ、装置の構成を簡素化することが可能な漏れ検査装置を提供すること。
【解決手段】制御装置90は、検査開始後、圧力センサ30が検出する検出圧力が所定検査圧力値から乖離した場合には、ピストン装置20の駆動機構23を駆動してピストン22を変位させて、圧力センサ30が検出する検出圧力が所定検査圧力値となるように補正し、補正に伴うピストン22の変位量に基づいて、被検体100の内部空間から外部への気体の漏れ量を算出し、算出結果を表示部92に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検査物の内外に所定の圧力差を形成したときの被検査物からの気体漏れを検査する漏れ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、気密容器内に収容された被検査物(検査対象物)の内部に送り込む気体の圧力を電空レギュレータやリリーフ弁等で所定圧に調節し、気密容器に接続された排気通路を流れる気体の量を測定して、被検査物の内外に所定の圧力差を形成したときの被検査物からの気体の漏れ検査を行う漏れ検査装置が知られている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術の漏れ検査装置では、被検査物の内外に形成した所定の圧力差を保持するために電空レギュレータやリリーフ弁等の圧力調整手段を設けて圧力制御を行う必要があるため、装置の構成が複雑であるという問題がある。
【0005】
本発明は、上記点に鑑みてなされたものであり、被検査物内外の所定圧力差を保持することができ、かつ、装置の構成を簡素化することが可能な漏れ検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、
被検査物の内部空間と連通するシリンダおよびシリンダ内に変位可能に配設されたピストンを有するピストン装置と、
被検査物の内部空間に印加される圧力を検出する圧力検出手段と、
圧力検出手段が検出する圧力に基づいてピストン装置の作動制御を行う制御手段と、を備え、
制御手段は、圧力検出手段が検出する検出圧力が所定値から乖離した場合には、ピストン装置のピストンを変位させて、圧力検出手段が検出する検出圧力が所定値となるように補正することを特徴としている。
【0007】
これによると、被検査物の内部空間に印加される圧力が所定値から外れた場合には、ピストン装置のピストンを変位させることで容易に補正することができる。したがって、比較的構成が簡素なピストン装置を採用して、被検査物内外の所定圧力差を保持することができる。
【0008】
また、請求項2に記載の発明では、制御手段は、補正に伴うピストンの変位量に基づいて、被検査物の内部空間と外部との間の気体の漏れ量を算出することを特徴としている。ピストン装置のピストンを変位させて被検査物内外の所定圧力差を保持しているときには、被検査物の内部空間と外部との間の気体の漏れ量(内部空間と外部との間の気体の移動量)は、ピストンの変位によるシリンダ内の空間容積の変化量に相当する。したがって、印加圧力の所定値への補正に伴うピストンの変位量に基づいて、被検査物の内部空間と外部との間の気体の漏れ量を容易に算出することができる。
【0009】
また、請求項3に記載の発明のように、制御装置が算出した漏れ量を表示する表示手段を備えることにより、漏れ量を表示して容易に報知することができる。
【0010】
また、請求項4に記載の発明では、制御手段は、漏れ検査を開始するときに、ピストン装置のピストンを変位させて、被検査物の内部空間に印加される圧力を所定値とすることを特徴としている。これによると、漏れ検査を開始するときに、被検査物の内部空間に印加される圧力を所定値にするためにピストン装置とは異なる圧力源を必要としないため、構成を一層簡素化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明を適用した一実施形態における漏れ検査装置1の概略構成を示す模式図である。
【図2】漏れ検査装置1の制御装置90が行う概略制御動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した実施の形態を図に基づいて説明する。
【0013】
図1は、本発明を適用した一実施形態における漏れ検査装置1の概略構成を示す模式図であり、図2は、漏れ検査装置1の制御装置90が行う概略制御動作を示すフローチャートである。
【0014】
図1に示す漏れ検査装置1は、例えば、車両の内燃機関に燃料を供給する燃料供給システムを構成する燃料系部品等の所定の気密性を必要とする被検体100(被検査物に相当)の漏れ検査を行う装置であり、被検体100の内部空間に所定の圧力を印加して、被検体100の内部と外部との間に所定の圧力差を形成して漏れ検査を行うようになっている。
【0015】
以下に説明する例では、被検体100の外部を大気圧とし、被検体100の内部空間に所定の正圧を印加して、被検体100の内部空間から外部への気体の漏れを検査する場合について説明するが、被検体100の外部が大気圧以外であったり、、被検体100の内部空間に所定の負圧を印加して被検体100の外部から内部への気体の漏れを検査する場合であっても、本発明を適用することができる。
【0016】
図1に示すように、漏れ検査装置1は、ピストン装置(シリンダ−ピストン装置)20、圧力センサ30、配管40、制御装置90、操作盤91等により構成されている。
【0017】
本実施形態のピストン装置20は、シリンダ21と、シリンダ21内に変位可能に配設されたピストン22と、ピストン22のロッド部に接続されてピストン22を変位させる電動式の駆動機構23(例えばリニアサーボ機構)とにより構成されている。
【0018】
配管40は、内部がシリンダ21内の空間(具体的には、シリンダ21とピストン22とにより形成されるシリンダ21内の閉塞空間)と連通するように配設されている。配管40のシリンダ21への接続端とは反対側の端部は、被検体100の装着部位となっており、配管40に被検体100を装着した際には、被検体100の内部空間が配管40内と連通するようになっている。
【0019】
被検体100は、配管40に直接装着されるものに限定されず、例えば、配管40の端部に取り付けられた装着部に装着されるものであってもよい。
【0020】
配管40には、配管40内の圧力を検出する圧力センサ30が装着されている。圧力センサ30は、配管40と連通する被検体100の内部空間の圧力を検出するものであり、シリンダ21に取り付けられるものであってもよし、配管40の端部に装着部が設けられている場合には、装着部に直接取り付けられるものであってもよい。圧力センサ30は、被検体100の内部空間に印加される圧力を検出する圧力検出手段に相当する。
【0021】
制御手段に相当する制御装置90は、圧力センサ30からの圧力情報信号を入力するとともに、駆動機構23に駆動指令信号を出力し、駆動機構23から駆動位置情報信号を入力するようになっている。制御装置90は、例えば、プログラマブルコントローラであって、操作盤91のスタートスイッチ93が操作されると、圧力センサ30からの圧力情報に基づいて駆動機構23に信号を出力し、ピストン装置20の作動制御を行うようになっている。操作盤91には表示手段に相当する表示部92が設けられており、制御装置90は、操作盤91に対して信号を出力して、表示部92に検査結果である漏れ量等の情報を表示可能となっている。
【0022】
次に、上記構成に基づき漏れ検査装置1の作動について説明する。
【0023】
図2に示すように、制御装置90は、配管40の装着端部に被検体100が装着され、操作盤91のスタートスイッチ93が操作されると、まず、ステップS110で、圧力センサ30からの圧力情報に基づいてピストン装置20の駆動機構23を駆動させて、ピストン22を図示左方に変位させて被検体100に印加される圧力を検査時の所定圧力とする。これに合わせて、制御装置90内に設けられたタイマーのカウントをスタートさせる。
【0024】
ステップS110を実行したら、ステップS120で、タイマーのカウントが検査時間として予め設定された所定時間となったか否か判断する。すなわち、被検体100に所定検査圧力を印加してから所定検査時間が経過したか否か判断する。
【0025】
所定検査時間が経過していない場合には、ステップS130へ進んで、圧力センサ30からの圧力情報に基づいて被検体100に印加されている圧力を検出し、ステップS140で、検出圧力が所定検査圧力から乖離しているか否か判断する。本例では、被検体100の内部に正圧を印加しているので、検出圧力が所定検査圧力に一致しているか、所定検査圧力よりも低下しているかを判定することになる。
【0026】
ステップS140で、検出圧力が所定検査圧力に一致していると判断した場合には、ステップS120へリターンする。ステップS140で、検出圧力が所定検査圧力よりも低下していると判断した場合には、ステップS150へ進んで、圧力センサ30からの圧力情報に基づいてピストン装置20の駆動機構23を駆動させて、ピストン22を変位させ(本例ではピストン22を図示左方に変位させ)、被検体100に印加される圧力が所定検査圧力となるように補正する。
【0027】
ステップS150を実行したら、ステップS160へ進んで、ステップS150における駆動機構23の駆動量を記憶する。このとき、ステップS150の実行が2回目以降である場合には、前回までに記憶した値に積算して駆動量を記憶する。ステップS160を実行したら、ステップS120へリターンする。
【0028】
以上説明したように、ステップS120、S130、S140、S150、S160からなるルーチンでは、検査時間中、被検体100に印加される圧力を監視し、常に印加圧力を所定検査圧力に保つように、ピストン22の位置を駆動機構23で調整し、調整に要したピストン22の変位に係わる駆動機構23の駆動量を記憶する。
【0029】
ステップS120において、所定検査時間が経過したと判断したら、ステップS170へ進み、ステップS160で記憶した駆動機構23の駆動量の積算値から、当該検査における被検体100の内部から外部への気体の漏れ量を算出する。具体的には、駆動機構23の駆動量の積算値に対応するピストン22の変位量と、シリンダ21の内部空間断面積(シリンダ21内の空間の軸線に直交する断面積)とから、漏れ量を算出する。そして、この算出値を操作盤91の表示部92に表示する。
【0030】
上述の構成および作動によれば、制御装置90は、検査開始後、圧力センサ30が検出する検出圧力が所定検査圧力値から乖離した場合には、ピストン装置20の駆動機構23を駆動してピストン22を変位させて、圧力センサ30が検出する検出圧力が所定検査圧力値となるように補正し、補正に伴うピストン22の変位量に基づいて、被検体100の内部空間から外部への気体の漏れ量を算出し、算出結果を表示部92に表示する。
【0031】
このように、被検体100の内部空間に印加される圧力が所定検査圧力値から外れた場合には、ピストン装置20のピストン22を変位させることで容易に補正することができる。したがって、比較的構成が簡素なピストン装置20を用いて、被検体100内外の所定圧力差を容易に保持することができる。また、補正に伴うピストン22の変位量に基づいて、被検体100の内部空間から外部への気体の漏れ量を容易に算出することができる。さらに、算出した漏れ量等の検査結果を表示部92に表示して容易に検査作業者等に報知することができる。
【0032】
また、漏れ検査開始時には、ピストン装置20のピストン22を変位させて、被検体100の内部空間に印加される圧力を所定検査圧力値としている。したがって、検査開始時の圧力印加のためにピストン装置20とは異なる圧力源を必要としないため、構成を一層簡素化することができる。
【0033】
また、ピストン装置20とは異なる圧力源を必要とせず、比較的容易にピストン装置20と被検体100とを近接させることができる。すなわち、配管40の配管長を短くできる。したがって、被検体100の内部空間と同一圧力となる配管40内の容積およびシリンダ21内の容積を比較的小さくできる。
【0034】
換言すれば、被検体100の内部容積、配管40の内部容積、およびシリンダ21の内部容積が、被検体100の内部空間に印加される圧力が所定検査圧力値から外れた場合に圧力調節を行う際の実質的な調節容積であり、この実質的な調節容積を比較的小さくすることができる。したがって、漏れ量の検出感度を容易に向上することができる。
【0035】
(他の実施形態)
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において種々変形して実施することが可能である。
【0036】
上記実施形態では、操作盤90の表示部92は被検体100からの気体の漏れ量を表示するものであったが、これに限定されるものではなく、漏れ量に関連する情報を表示するものであってもよい。例えば、漏れ量を気密性合否判定値と比較して合否判定結果を表示するものであってもよい。また、結果の報知手段は表示手段に限定されず、例えば、音声等により報知を行う発音手段を用いてもかまわない。
【0037】
また、上記実施形態では、制御装置90は、所定時間の漏れ検査終了時に漏れ量の総和を算出して表示していたが、これに限定されるものではない。例えば、単位時間当たりの漏れ量を逐次(リアルタイムに)算出して表示するものであってもよい。
【0038】
また、上記実施形態では、制御装置90は、算出した漏れ検査結果を表示部92で表示することのみ説明していたが、これに限定されるものではない。例えば、漏れ検査結果を制御装置90内部に収容された記憶手段に記憶してもよいし、制御装置90外部のデータベース等に送信してもかまわない。
【0039】
また、上記実施形態では、検査開始時の所定検査圧力印加のためにピストン装置20を用いていたが、これに限定されるものではなく、検査開始時の所定検査圧力印加のためにピストン装置20とは異なる圧力源を採用してもかまわない。
【0040】
また、上記実施形態では、燃料系部品等の被検体100の漏れ検査を行う漏れ検査装置1について説明していたが、燃料系部品以外の所定の気密性を必要とする被検査物における漏れ量を検査するものであってもよい。
【0041】
また、上記実施形態では、ピストン装置20のピストン22の変位により、被検体100内外の所定圧力差を保持しつつ、ピストン22の変位量から漏れ量を検知していたが、ピストン装置20のピストン22の変位により、被検体100内外の所定圧力差を保持し、漏れ量の検出は他の検出手段により行うものであってもかまわない。
【符号の説明】
【0042】
1 漏れ検査装置
20 ピストン装置
21 シリンダ
22 ピストン
23 駆動機構
30 圧力センサ(圧力検出手段)
90 制御装置(制御手段)
92 表示部(表示手段)
100 被検体(被検査物)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の内部空間と連通するシリンダおよび該シリンダ内に変位可能に配設されたピストンを有するピストン装置と、
前記内部空間に印加される圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段が検出する圧力に基づいて前記ピストン装置の作動制御を行う制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記圧力検出手段が検出する検出圧力が所定値から乖離した場合には、前記ピストンを変位させて、前記検出圧力が前記所定値となるように補正することを特徴とする漏れ検査装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記補正に伴う前記ピストンの変位量に基づいて、前記内部空間と外部との間の気体の漏れ量を算出することを特徴とする請求項1に記載の漏れ検査装置。
【請求項3】
前記算出した漏れ量を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項2に記載の漏れ検査装置。
【請求項4】
前記制御手段は、漏れ検査を開始するときに、前記ピストンを変位させて、前記内部空間に印加される圧力を前記所定値とすることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つに記載の漏れ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−242291(P2011−242291A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115507(P2010−115507)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000161840)京三電機株式会社 (99)
【Fターム(参考)】