説明

漏水センサ

【課題】漏水の発生を的確に把握するとともに、結露等に起因するわずかな水滴の発生は検知しない条件とするなどの調整を容易にする。
【解決手段】底板11を有するケース10と、ケース10内に底板11と平行な方向に互いに離間して設けられた複数の導電体20A,20Bと、ケース10内に各導電体20A,20B間にまたがるように設けられた吸水性シート30とを備え、ケース10の底板11には、吸水性シート30に通じる貫通孔41が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏水の発生を検知するための漏水センサに関する。
【背景技術】
【0002】
各種工場やプラント、医療施設など、水を使う様々な現場において、漏水による事故を防止するために、漏水センサが使用される。
この種の漏水センサの基本的な構造は、漏水によって生じる2つの電極間の抵抗や電気容量の変化を常時監視し、それらの値に所定の変化が見られた場合に漏水が発生したとみなすものである(例えば特許文献1、2を参照)。
【特許文献1】特開平5−288701号公報
【特許文献2】特開2006−53057号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記のような構造の漏水センサにおいては、漏水時に速やかに検知できることが求められるが、2つの電極間にまたがって水が接触する状態となるまでに時間がかかる傾向にある。一方では、結露等に起因するわずかな水滴の発生は検知しない条件として使用する場合があるが、そのような微妙な調整は困難である。
また、漏れ出た水が表面張力に依存して水滴になって付着すると、漏水の発生を的確に把握することができないという問題もある。特に、電極に導電性樹脂を用いた場合には、その撥水性により、電極に水が馴染まず、顕著になる。
【0004】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたもので、漏水の発生を的確に把握するとともに、結露等に起因するわずかな水滴の発生は検知しない条件とするなどの調整を容易にすることができる漏水センサを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の漏水センサは、底板部(実施形態ではベース11)を有するケースと、前記ケース内に前記底板部と平行な方向に互いに離間して設けられた複数の導電体と、前記ケース内に各導電体間にまたがるように設けられた吸水性シートとを備え、前記ケースの底板部には、前記吸水性シートに通じる貫通孔が形成されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の漏水センサによれば、漏水が発生すると、ケースの底板部に形成されている貫通孔から水が侵入し、吸水性シートにしみ込み、該吸水性シート内を面方向に伝わって各導電体間をまたがるようにして接触する。この貫通孔を通じて吸水性シートに水がしみ込んで広がるので、従来のように表面張力に依存して水滴になってしまうことがない。その結果、吸水性シートにしみ込んだ水を介して導電体間がショートし、両導電体間の抵抗値が大きく変化する。この抵抗値の変化を検出することにより、漏水の発生を的確に把握することができる。
また、ケースの底板部は、その厚さの分、吸水性シートを床面等の被検査面から浮かせた状態とすることができ、その底板部の貫通孔を侵入してきた水のみを漏水と検知することになる。したがって、結露等により被検査面上に水滴がわずかに付着する程度では、漏水と検知することはない。この底板部の厚さを適切に設定することにより、その検知感度を調整することができる。
【0007】
本発明の漏水センサにおいて、前記貫通孔は、各導電体の間で前記吸水性シートに通じるように開口している構成としてもよい。
導電体の間に貫通孔が開口していることにより、導電体相互間の離間距離に対して、その離間距離を二分するように貫通孔から各導電体間の距離が短くなる。したがってこの貫通孔から侵入した水は、吸水性シートにしみ込んで、その短い距離を面方向に伝って速やかに導電体間をまたがった状態となり、速やかに漏水を検知することができる。また、漏れ出た水が少量であっても、両導電体がショートし易くなり、漏水の発生を的確に把握することができる。
【0008】
本発明の漏水センサにおいて、前記導電体は、導電性樹脂からなるようにしてもよい。
撥水性に富む導電性樹脂を用いても、吸水性シートによって水が広がるので、漏水を確実に検知することができる。また、漏れ出た水による導電体の腐食が起き難くなるので、漏水センサの耐久性が向上する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の漏水センサによれば、漏水が発生すると、ケースの底板部に形成されている貫通孔から水が侵入して吸水性シートにしみ込み、この吸水性シートを介して各導電体間をまたがるようにして接触するので、漏水の発生を的確に把握することができる。また、底板部の厚さを適切に設定することにより、結露に起因する水滴等を検知しないように設定するなど、その検知感度を調整することができる。漏れた水が水滴となって付着しないので、導電性樹脂などの撥水性を有する導電体の使用が可能であり、腐食を防止して耐久性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の漏水センサの実施形態について図1から図4を参照しながら説明する。
図1〜図3は第1の実施形態を示しており、この実施形態の漏水センサ1は、図1及び図2に全体を示したように、ケース10と、ケース10内に互いに離間して設けられた2本の線状の導電体20A,20Bと、ケース10内に導電体20A,20B間にまたがって設けられた吸水性シート30とを備えている。
【0011】
ケース10は、ベース(底板部)11およびカバー12の2枚の板状部材から構成されている。
ベース11は、幅の狭い長方形の板状に形成されている。カバー12は、ベース11と同じ幅の長方形状の天板部13を有しており、その天板部13の四隅及び長さ方向の中央二個所に配置されるように、ブロック状の当て板部14が天板部13から突出して一体に形成されている。各当て板部14には、雌ネジ孔15が厚さ方向に形成されており、これに対応するベース11の四隅及び長さ方向の中央二個所には、当て板部14の雌ネジ孔15にねじ込まれる皿ネジ16を通す貫通孔17がそれぞれ形成されている。そして、当て板部14をベース11の上面に当接させた状態として、これらベース11とカバー12とを重ね合わせ、当て板部14の雌ネジ孔15に貫通孔17を通じて皿ネジ16をねじ込むことにより、カバー12がベース11に固定される構成である。
【0012】
また、カバー12の天板部13の裏面には、長さ方向に沿って2本の溝18A,18Bが平行に離間して形成されており、この2本の溝18A,18Bに、上記2本の導電体20A,20Bが嵌め込まれている。これら導電体20A,20Bは、導電性の柔軟な合成樹脂からなり(例えば、信越化学工業株式会社製導電シリコーンゴムECシリーズが使用できる)、いずれも細長い線状に形成されている。
また、各導電体20A,20Bの一端には、リング状のタブ21が一体に形成されており、各タブ21には、カバー12の各溝18A,18Bの端に形成された雌ネジ孔19にねじ込まれるネジ25を通す貫通孔21aが形成されている。
【0013】
そして、導電体20A,20Bを溝18A,18Bにそれぞれ嵌め込み、タブ21に形成された貫通孔21aを通じてカバー12の雌ネジ孔19にネジ25をねじ込むことにより、導電体20A,20Bがカバー12に固定される構成である。各タブ21には、図1に示すようにケース10の外に引き出される導線26が接続される。
【0014】
また、ベース11にカバー12が固定されることにより、これらベース11とカバー12との間には当て板部14の高さ分の隙間が形成され、この隙間に吸水性シート30が挟み込まれる。この吸水性シート30は多孔質材料からなり(例えば、合成樹脂製のスポンジが使用できる)、ベース11やカバー12と同じ幅の長方形状に形成されているが、その四隅及び長さ方向の中央二個所には、カバー12の当て板部14を避けるための切欠部31がそれぞれ形成されている。この吸水性シート30の厚さは、ベース11とカバー12との間に形成される隙間(当て板部14の高さ)と同じかもしくは若干大きく形成されている。そして、この吸水性シート30は、ベース11とカバー12との間に挟み込まれた状態では、ベース11の上で導電体20A,20Bの裏面に密接し、これら導電体20A,20Bにまたがるように配置される。
【0015】
また、ベース11には、複数の貫通孔41が、ベース11の長さ方向に二列に並んで形成されている。図3に示すように、貫通孔41の列は、2本の導電体20A,20Bとほぼ等しい幅に離間し、それぞれ導電体20A,20Bと対応するように設けられており、各貫通孔41には、ケース10内の吸水性シート30が露出している。各貫通孔41の深さはベース11の板厚に依存しており、その深さ(板厚)は、漏水センサ1が漏水のみを検知し結露程度の水滴は検知しないように、適切に設定されている。
【0016】
上記のように構成された漏水センサ1は、ベース11を下にして、漏水の監視を行うべき場所に設置される。そして、導線26を図示しない漏水監視装置に接続する。
漏水センサ1を設置した場所に漏水が発生すると、いずれかの貫通孔41を通じて吸水性シート30に水がしみ込み、その吸水性シート30にしみ込んだ水を介して導電体20A,20Bがショートし、導電体20A,20B間の抵抗値が急激に低下する。漏水監視装置は、導電体20A,20B間の抵抗値が低下し所定のしきい値を下回ったら、漏水が発生したとみなして警報を発する。
【0017】
本実施形態の漏水センサ1によれば、ベース11の貫通孔41から侵入した水は図3の矢印で示すように、貫通孔41に臨んでいる吸水性シート30にしみ込み、図3の破線で模式的に示したように吸水性シート30内を広がって導電体20A,20Bに到達する。したがって、その水が従来のように表面張力によって水滴になってしまうことがない。また、この吸水性シート30は導電体20A,20Bにまたがって配置されているので、両貫通孔41から侵入した水が吸水性シート30を伝って厚さ方向だけでなく、面方向等にも広がり、速やかに両導電体20A,20Bをショートさせることができ、漏水の発生を迅速かつ的確に把握することができる。
【0018】
この場合、導電体20A,20B及び吸水性シート30はケース10内に収容されているから、この漏水センサ1を床等の被検査面上に設置すると、ベース11の厚さの分、吸水性シート30が被検査面より浮かされた状態になる。そして、このベース11に形成した貫通孔41を経由して吸水性シート30に水がしみ込むことになるので、被検査面にわずかに付着した結露等の水滴は吸水性シート30にしみ込んでくることはない。したがって、結露等に起因するわずかな水滴を漏水と把握することがなく、漏水のみを適切に検出することができる。どの程度の水滴で検知可能とするかは、ベース11の板厚を調整することにより、適宜の感度に制御することができる。
【0019】
また、導電体20A,20Bの材料に導電性樹脂を採用することにより、金属などと比べて漏れ出た水による導電体20A,20Bの腐食が起き難くなるので、漏水センサ1の耐久性が向上する。
【0020】
また、図4は、本発明の漏水センサの変形例を示している。
この変形例では、複数の貫通孔41が、ベース11の長さ方向に一列に並んで形成されており、これら貫通孔41の列が、2本の導電体20A,20Bのいずれからもほぼ等距離の位置、言い換えれば、両導電体20A,20Bの中間位置に配置されている。
この変形例によれば、貫通孔41が、導電体20A,20Bからほぼ等距離の位置に設けられているので、貫通孔41から侵入した水は、図4の破線で模式したように、吸水性シート30を厚さ方向及び面方向等に伝わって広がり、導電体20A,20Bの両方に接することになる。したがって、漏れ出た水が少量であっても導電体20A,20Bがショートし易くなり、漏水の発生を的確に把握することができる。
【0021】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、実施形態ではドリル加工等によってベースに貫通孔を形成したが、ベースをメッシュ状に形成して、多数の貫通孔を有する構成としてもよい。また、ケースを構成するベース及びカバーをいずれも柔軟性を有する材料から構成してもよく、被検査面の表面形状に応じて、導電体及び吸水性シートとともに変形させて配置するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る漏水センサの第1の実施形態を示しており、下方から見た斜視図である。
【図2】図1の漏水センサの分解斜視図である。
【図3】図1の漏水センサのX−X線に沿う断面図である。
【図4】本発明に係る漏水センサの変形例を示す図3同様の断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 漏水センサ
10 ケース
11 ベース(底板部)
12 カバー
13 天板部
14 当て板部
18A,18B 溝
20A,20B 導電体
21 タブ
30 吸水性シート
31 切欠部
41 貫通孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
底板部を有するケースと、前記ケース内に前記底板部と平行な方向に互いに離間して設けられた複数の導電体と、前記ケース内に各導電体間にまたがるように設けられた吸水性シートとを備え、
前記ケースの底板部には、前記吸水性シートに通じる貫通孔が形成されていることを特徴とする漏水センサ。
【請求項2】
前記貫通孔は、各導電体の間で前記吸水性シートに通じるように開口していることを特徴とする請求項1に記載の漏水センサ。
【請求項3】
前記導電体は、導電性樹脂からなることを特徴とする1又は2に記載の漏水センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−288171(P2009−288171A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−143303(P2008−143303)
【出願日】平成20年5月30日(2008.5.30)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】