説明

漏洩同軸ケーブル

【課題】たとえ暗闇であってもスロット面の方向の確認が容易であり、また、金属体などをスロット部からどの方向についてどの程度離せばよいのかの判断を容易に行うことができ、延線作業の容易化が図られたLCXを提供する。
【解決手段】中心導体2と、中心導体2を被覆した絶縁体3と、絶縁体3の外側を覆う外部導体4と外部導体4を被覆した外被5とが同軸構造となされ、外部導体4に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部6が形成された漏洩同軸ケーブルであって、外被5の表面には、蓄光材料により、スロット部6の位置を表示する目印7が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩同軸ケーブルに関し、特に、表面に蓄光材料による目印を設けた漏洩同軸ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
漏洩同軸ケーブル(以下、「LCX」という。)は、新幹線沿いに布設されて列車と地上との無線連絡のために使用されたり、あるいは、地下鉄構内や地下街に布設されて地上との消防無線や警察無線の連絡用に使用されている。
【0003】
図5は、前記LCXの一部破断斜視図、図6は、前記LCXの横断面図である。すなわち、前記LCXは、図5及び図6に示すように、内部導体102、絶縁体103、外部導体104及び外被(シース)105を備えて同軸状に構成されている。内部導体102は、銅の中空線(銅パイプ)、もしくは、銅被覆アルミニウム線によって構成されている。外部導体104には、同導体104内の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、周期的なスロット部101が設けられている。すなわち、外部導体104には、ケーブル軸に対して一定周期毎に、一周期当たり複数の長孔状のスロット部101が設けられている。各スロット部101は、ケーブル軸に対して所定の角度を持って傾斜されている。
【0004】
LCX1は、外部導体104にスロット部101をケーブル長手方向に連続的に設けることにより、これらスロット部101から電波を漏洩させ、長手方向に連続的に放射される電波の重ね合わせを利用して、外部との通信を行なっている。そのため、LCXは、スロット部101が形成された方向、すなわちスロット面101aの法線方向101bがLCX全長で、一定方向を向くように延線することが望ましい。また、スロット面101aが、LCXの近傍の金属体によって覆われないようにする必要がある。なおスロット面101aは、より詳細には、図6に示すように、例えば、スロット部101の長手方向の中点における外部導体104の外表面の接平面から成る。
【0005】
特許文献1には、外被105にスロット面の方向を目視により識別可能とする目印を設けたLCXが記載されている。この目印としては、外被105とは違う色のラインをスロット部101の直上の外皮105に印刷したもの、外被105とは違う色で、スロット部101の直上外皮に文字、図形などの表面印刷を行ったもの、または、外被105とは違う色の樹脂をケーブル長手方向にライン状に押出し成形したものなどが考えられる。また、LCXに支持線が平行して取付けられている場合には、この支持線の位置により、スロット面の方向を確認することもできる。
【0006】
従来、天井裏やトンネル、洞道などの暗闇においてLCXを延線する場合には、延線中及び延線後に、ライト等の照明器具によりLCXの表面を照らし、目印や支持線の位置を確認し、スロット面の方向を確認していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−168330号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述したように、LCXは、スロット面101の法線を一定方向に揃えて向けて延線することが望ましく、また、スロット部101が金属体に覆われ無いように注意して延線する必要がある。
【0009】
しかしながら、LCXは、延線時に捻回が生じてしまうことが多く、スロット部101の方向を一定に保ち難い。従って延線の終了したLCXについて、捻回が発生していないかを順次確認しながら、その後の延線を行う必要がある。
【0010】
暗闇においてLCXを延線する場合においては、延線の終了したLCX及び延線中のLCXについて、照明器具により照明し、スロット面の方向を確認しながら行う必要がある。しかし、図7に示すように、天井裏など、障害物の多い場所においては、柱や突起箇所などの遮光物106により照明光が遮られてしまい、スロット面の方向を示す目印107が見えなくなる場合が多い。このような場合、作業者は、目印107が見える位置まで移動し、スロット面の方向を随時確認しなければならず、作業が煩雑であった。
【0011】
また、スロット面の方向が確認されたとしても、金属体などをスロット部101からどの方向についてどの程度離せばよいのかの判断が困難であり、LCX1の延線は容易ではない。
【0012】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、その目的は、たとえ暗闇であってもスロット面の方向の確認が容易であり、また、金属体などをスロットからどの方向についてどの程度離せばよいのかの判断を容易に行うことができ、延線作業が容易なLCXを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るLCXは、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0014】
〔構成1〕
中心導体と中心導体を被覆した絶縁体と絶縁体の外側を覆う外部導体と外部導体を被覆した外被とが同軸構造となされ、外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、外被の表面には、蓄光塗料により、スロット部の位置を表示する目印が印刷されていることを特徴とするものである。
【0015】
〔構成2〕
中心導体と中心導体を被覆した絶縁体と絶縁体の外側を覆う外部導体と外部導体を被覆した外被とが同軸構造となされ、外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、外被の一部は、蓄光樹脂により形成され、この蓄光樹脂により形成された部分が、スロット部の位置を表示する目印となっていることを特徴とするものである。
【0016】
〔構成3〕
構成1、または、構成2を有する漏洩同軸ケーブルにおいて、目印は、この漏洩同軸ケーブルの軸回りについてのスロット部の位置を中心とする電磁波の放射分布特性を表示するものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0017】
構成1を有する本発明に係るLCXにおいては、外被の表面には、蓄光塗料により、スロット部の位置を表示する目印が印刷されているので、暗闇においても、スロット面の方向の確認が容易である。
【0018】
構成2を有する本発明に係るLCXにおいては、外被の一部は、蓄光樹脂により形成され、この蓄光樹脂により形成された部分が、スロット部の位置を表示する目印となっているので、暗闇においても、スロット面の方向の確認が容易である。
【0019】
構成3を有する本発明に係るLCXにおいては、目印は、この漏洩同軸ケーブルの軸回りについてのスロット部の位置を中心とする電磁波の放射分布特性を表示するので、金属体などをスロットからどの方向についてどの程度離せばよいのかの判断を容易に行うことができる。
【0020】
すなわち、本発明は、たとえ暗闇であってもスロット面の方向の確認が容易であり、また、金属体などをスロットからどの方向についてどの程度離せばよいのかの判断を容易に行うことができ、延線作業の容易化が図られたLCXを提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係るLCXの構成を示す一部破断斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るLCXの暗闇における延線作業の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係るLCXの構成を示す一部破断斜視図である。
【図4】本発明の第3実施形態に係るLCXの構成を示す説明図である。
【図5】従来のLCXの構成を示す一部破断斜視図である。
【図6】従来のLCXの構成を示す横断面図である。
【図7】従来のLCXの暗闇における延線作業の状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明する。
【0023】
図1は、本発明に係るLCXの構成を示す一部破断斜視図である。
【0024】
本発明に係るLCX1は、図1に示すように、中心導体2と、この中心導体2を被覆した絶縁体3と、この絶縁体3の外側を覆う外部導体4とが同軸構造となされ、外部導体4が外被(シース)5により被覆されて構成されている。
【0025】
外部導体4には、導体内部の電磁エネルギーを外部に漏洩させるために、複数の長孔状のスロット部6が設けられている。これらスロット部6は、ケーブル軸円周方向の一定の位置(すなわち一定の角位置)において、ケーブル軸に沿う列(スロット列)をなして形成されている。各スロット部6は、ケーブル軸に対して所定傾斜角αを持って傾斜している。各スロット部6は、ケーブル軸に対して周期的に設けられ、各周期には、例えば前記傾斜角αが相互に異なる複数のスロット部6が設けられている。
【0026】
前述の如く(背景技術の説明参照)、外部導体4の表面においてスロット部6が形成された面をスロット面と言い、LCXは、スロット面の法線方向がLCX全長で、一定方向を向くように延線することが望ましい。又、LCX1においては、スロット面の方向が、金属体などによって覆われないようにして延線する必要がある。
【0027】
この実施形態のLCX1においては、スロット部6直上の外被5の表面に、スロット面の位置を表示する目印7が蓄光塗料により印刷されている。この目印7は、スロット列上となる位置に、スロット列に沿う直線状に印刷されている。
【0028】
なお目印7は、外被5の一部を蓄光樹脂により、押出し成形等によって形成することによって設けてもよい。この場合には、蓄光樹脂により形成された部分が、スロット部6の位置を表示する。すなわち、この場合においても、目印7は、スロット列上となる位置に、スロット列に沿う直線状に形成される。
【0029】
図2は、前記LCXの暗闇における延線作業の状態を示す斜視図である。
【0030】
このLCX1においては、目印7が設けられていることにより、たとえ暗闇において延線する場合においても、図2に示すように、蓄光塗料、または、蓄光樹脂、すなわち、蓄光材料からなる目印7が発光するので、照明器具により照明しなくとも、スロット面の方向を確認することができる。天井裏など障害物の多い場所において、柱や突起箇所などが遮光物106となって照明光が遮られた場合においても、目印7が視認できるので、スロット面の方向を確認することができる。
【0031】
したがって、このLCX1は、暗闇において延線する場合においても、作業者がスロット面の方向を随時確認することができ、延線作業が煩雑となることがなく、効率的に作業を行うことができる。
【0032】
図3は、本発明の第2実施形態に係るLCXの構成を示す一部破断斜視図である。
【0033】
このLCX1においては、図3に示すように、蓄光材料からなる目印7は、トンネルや洞道内における避難経路(避難方向)を表示する。この場合には、目印7は、直線状の印刷、または、形成部分の一部を矢印形状とするとともに、「避難経路」等の文字と組合わせて表示する。
【0034】
この場合には、トンネルや洞道内において事故等が発生し、照明の電源が落ちて暗闇となった場合においても、LCX1の表面の目印7により、非常口の方向などの避難方向を確認することができるので、円滑な避難を行うことができる。
【0035】
図4は、本発明の第3実施形態に係るLCXに於ける目印を示す説明図である。
【0036】
すなわち目印7は、同図に示すように、このLCX1の軸回りについてのスロット部の位置を中心とする電磁波の放射分布特性を表示する。
【0037】
なお図4においては、紙面に対する法線がケーブル軸方向であり、グラフに示す電磁波の放射分布特性は、5.2GHz無線LAN用のLCX(20D−SSD)における放射分布特性を示すものである。
【0038】
このLCX1においては、蓄光材料からなる目印7は、スロット面を中心とする電磁波の放射が十分に強い角度範囲に対応する範囲に亘って形成される事を示す。なお目印7は、電磁波の放射強度に対応させて、濃淡を設けて形成してもよい。すなわち、目印7の印刷の濃度を電磁波の放射強度に比例させて、電磁波の放射強度が強い方向において目印7の印刷の濃度を高くし、電磁波の放射強度が弱い方向において目印7の印刷の濃度を低くする。
【0039】
このLCX1においては、目印7が形成された範囲や濃淡により、金属体などをスロット部6からどの方向についてどの程度離せばよいのかの判断を容易に行うことができ、延線を容易に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、漏洩同軸ケーブルに関し、特に、表面に蓄光材料による目印を設けた漏洩同軸ケーブルに適用される。
【符号の説明】
【0041】
2 中心導体
3 絶縁体
4 外部導体
5 外被(シース)
6 スロット部
7 目印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体と、この外部導体を被覆した外被とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、
前記外被の表面には、蓄光塗料により、前記スロット部の位置を表示する目印が印刷されている
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【請求項2】
中心導体と、この中心導体を被覆した絶縁体と、この絶縁体の外側を覆う外部導体と、この外部導体を被覆した外被とが同軸構造となされ、前記外部導体に漏洩電磁界形成用の複数のスロット部が形成された漏洩同軸ケーブルであって、
前記外被の一部は、蓄光樹脂により形成され、この蓄光樹脂により形成された部分が、前記スロット部の位置を表示する目印となっている
ことを特徴とする漏洩同軸ケーブル。
【請求項3】
前記目印は、この漏洩同軸ケーブルの軸回りについての前記スロット部の位置を中心とする電磁波の放射分布特性を表示するものである
ことを特徴とする請求項1、または、請求項2記載の漏洩同軸ケーブル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate