説明

漏洩応急補修方法及び漏洩応急補修器具

【課題】 配管から高温高圧流体が漏洩した場合にも流動状態のまま狭隘部であっても短時間に応急処置可能な漏洩応急補修方法及び漏洩応急補修器具を提供する。
【解決手段】 パッド11の内部にニトリルゴム12を充填した後、配管13の漏洩箇所131上に設置する。そして、パッド11に荷重を加える。すると、パッドに加えられた荷重及びニトリルゴムの弾性力によって、流体の漏洩が補修される。なお、ニトリルゴムを押下することにより、弾性力を増加するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は配管に生じる流体の漏洩を応急処置できる漏洩応急補修方法及び漏洩応急補修器具に係り、特に流体が配管内を流動している状態で応急処置可能な漏洩応急補修方法及び漏洩応急補修器具に関する。
【0002】
【従来の技術】発電プラント、化学プラント等の配管から内部を流れる流体が漏洩した場合の補修方法としては、以下のものが実用化されている。当て板等による接着剤補修法…低温(摂氏100度以下)かつ低圧(10Kg/cm2 )の流体に適用可充填材補修法…高温(最高摂氏350度)かつ高圧(最高175Kg/cm2)の流体に適用可
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、高温高圧の流体の漏洩を補修する充填材補修法あるいは低温低圧の液体の漏洩を補修する接着剤補修法にあっては、少なくとも、内部流体を抜き取り、漏洩箇所が乾燥した後でなければ施行は困難であった。また、充填材補修法にあっては、漏洩箇所の隔離は必要としないものの、充填するクランプの設計、製作が必要であり、かつ充填材の加熱を伴うため、補修に時間を要するだけでなく、漏洩場所によっては適用が困難な場合もある。
【0004】本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、配管から高温高圧流体が漏洩した場合にも流動状態のまま狭隘部においても短時間で応急処置可能な漏洩応急補修方法及び漏洩応急補修器具を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】第1の発明に係る漏洩応急補修方法は、配管の漏洩箇所をパッド状の補修器具で覆う段階と、配管の漏洩箇所を覆う補修器具に荷重を加える段階と、からなる。本発明にあっては、補修器具は漏洩箇所を覆った後、配管に押下される。
【0006】第2の発明に係る漏洩応急補修方法は、配管の漏洩箇所を覆う前に補修器具内部に充填材を充填する段階をさらに含む。本発明にあっては、補修器具内部に充填材が充填される。第3の発明に係る漏洩応急補修方法は、補修器具で配管の漏洩箇所を覆う前に水中接着材を含芯させた漏洩抑制材を配管の漏洩箇所に貼り付ける段階を含む。
【0007】本発明にあっては、漏洩箇所を補修器具で覆う前に、漏洩箇所が漏洩抑制材で覆われる。
【0008】
【発明の実施の形態】図1は第1の漏洩応急補修方法の説明図であって、(イ)の実施形態では、容器状のパッド11と、このパッド内部に充填される弾性充填材12とから構成される漏洩応急補修器具を使用する。充填材は応力緩和の発生を防止し、高温下でも安定した弾性を維持するために、ニトリルゴム(NBR)を不活性ガス中で架橋化したものを使用することが望ましい。
【0009】即ち、配管13の漏洩箇所131に充填材12が当たるようにパッド11を置き、パッド11上に荷重を加える。そして、パッド11に加えられた荷重と充填材12の弾性力により漏洩を止める。なお、パッド11の配管13との接触面には、例えば銅パッキン111であるシール機構を設けることが望ましい。(ロ)の実施形態にあっては、充填材12を押下するためのピストン112を容器11の底部に設けた漏洩応急補修器具を使用する。
【0010】配管13の漏洩箇所131に器具を当てた後に、ピストン112を押下することにより、充填材の漏洩箇所の押下力を増大することが可能となる。(ハ)の実施形態にあっては、(イ)及び(ロ)の実施形態の銅パッキン111に代えてメタルタッチのポイントシール114を具備した漏洩応急補修器具を使用する。
【0011】この場合は、ポイントシール114の先端が配管に食い込み、漏洩水の圧力により容器11が漏洩箇所131から移動することを確実に防止することが可能となる。図2は第2の漏洩応急補修方法の説明図であって、第1の発明に係る漏洩応急補修方法を適用する前に配管13の漏洩箇所を、水中接着材を含芯させた漏洩抑制材21(例えばガラスクロス)で覆う。
【0012】なお、図2は漏洩抑制材21を配管13に巻回した場合を示しているが、漏洩抑制材21で配管13上の漏洩箇所を部分的に覆うこととしてもよい。図3は第3の漏洩応急補修方法の説明図であって、漏洩応急補修器具はパッド31、パッド内に充填された水中接着材32、及びパッド31の底部に設けられた排水機構33から構成される。排水機構33は漏洩液を排出する排水管331と排水管331の途中に設置された止め弁332から構成される。
【0013】この実施形態においては、凝固前の水中接着材32を充填したパッド31を配管13の漏洩箇所131上に設置し、パッド31上に荷重を加える。すると、水中接着材32は漏洩箇所に入り込み凝固を開始する。水中接着材32の凝固が完了する前に配管13の漏洩箇所131から漏洩する液体は容器31内の水中接着剤32の凝固程度の低い部分を通過して排水機構33から排出される。そして、水中接着材32が完全に凝固して漏洩が止まった時点で止め弁332を閉止する。
【0014】なお、本発明においても、パッド31の配管接触面はパッキン又はポイントシールであるシール機構を設ける。さらに、第3の発明に係る漏洩応急補修方法の適用前に配管の漏洩箇所を、水中接着材を含芯させた漏洩抑制材21で覆ってもよい。図4は第4の漏洩応急補修方法の説明図であって、ポイントシールユニット4を使用する。
【0015】ポイントシールユニット4は、配管13の漏洩箇所131の上を覆うシールパット40、シールパット40を保持するシールパッドホルダ41、シールパッドホルダ41を押下するシャフト42、シャフト42が貫通するプッシャ43、プッシャ43及び支持部44と嵌合するベース45、及びベース45と嵌合するキャップ46から構成される。さらに、ベースの中空部にはバネ(例えば皿バネ)47が収納されている。
【0016】第4の発明に係る漏洩応急補修方法を適用するためには、漏洩箇所131の周辺にポイントシールユニット4を支持する支持部44を設置し、支持部44にあけられた取付け孔にベース45をネジ込む。シールパッド40で配管13の漏洩箇所131を覆い、シールパッド40上にシールパットホルダ41及びシャフト42を配置する。そして、シャフト42の周囲にバネ47を配置する。
【0017】この状態でプッシャ43をベース45にネジ込むと、プッシャ43がバネ47の上端と接触し、バネ47を押下する。シャフト42の先端はシールパットホルダ41に当接しているため、シールパッド40はバネ47によって配管13に押下され、配管に食い込んで配管からの漏洩を止める。第4の発明に係る漏洩応急補修方法の適用前に配管の漏洩箇所を、水中接着材を含芯させた漏洩抑制材21で覆ってもよい。
【0018】
【発明の効果】本発明に係る漏洩応急補修方法によれば、パッド状の補修器具を漏洩箇所に押下することにより、高温高圧流体が漏洩した場合にも流動状態のまま狭隘部であっても短時間に応急に漏洩を補修することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】第1の漏洩応急補修方法の説明図である。
【図2】第2の漏洩応急補修方法の説明図である。
【図3】第3の漏洩応急補修方法の説明図である。
【図4】第4の漏洩応急補修方法の説明図である。
【符号の説明】
11、31…パッド
12…ニトリルゴム
111…銅パッキン
13…配管
131…漏洩箇所
20…漏洩抑制材
32…水中接着材
331…配管
332…止め弁
4…ポイントシールユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 配管の漏洩箇所をパッド状の補修器具で覆う段階と、配管の漏洩箇所を覆う補修器具に荷重を加える段階と、からなる漏洩応急補修方法。
【請求項2】 配管の漏洩箇所を覆う前に補修器具内部に充填材を充填する段階をさらに含む請求項1に記載の漏洩応急補修方法。
【請求項3】 補修器具内部に充填される充填材がニトリルゴムである請求項2に記載の漏洩応急補修方法。
【請求項4】 補修器具内部に充填されたニトリルゴムを押下する段階を含む請求項3に記載の漏洩応急補修方法。
【請求項5】 補修器具内部に充填される充填材が水中接着材である請求項2に記載の漏洩応急補修方法。
【請求項6】 補修器具内部に充填された水中接着材が凝固するまでに配管から漏洩する液体を補修器具外部に排出する段階をさらに含む請求項5に記載の漏洩応急補修方法。
【請求項7】 前記補修器具で配管の漏洩箇所を覆う前に、水中接着材を含芯させた漏洩抑制材を配管の漏洩箇所に貼り付ける段階を含む請求項1から6のいずれか1項に記載の漏洩応急補修方法。
【請求項8】 パッドと、前記パッド内部に充填される充填材と、を具備する漏洩応急補修器具。
【請求項9】 補修器具内部に充填される充填材がニトリルゴムである請求項8に記載の漏洩応急補修器具。
【請求項10】 補修器具内部に充填されたニトリルゴムを押下するニトリルゴム押下手段を含む請求項9に記載の漏洩応急補修器具。
【請求項11】 補修器具内部に充填される充填材が水中接着材である請求項8に記載の漏洩応急補修器具。
【請求項12】 補修器具内部に充填された水中接着材が凝固するまでに配管から漏洩する液体を補修器具外部に排出する流体排出手段をさらに含む請求項11に記載の漏洩応急補修器具。
【請求項13】 パッドを配管の漏洩箇所に押下するパッド押下手段をさらに具備する請求項8から12のいずれか1項に記載の漏洩応急補修器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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