説明

漏洩抑止シール方法

【課題】シール剤が業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞できるシール方法を提供する。
【解決手段】本発明のシール方法は、配管1の漏洩部6を閉塞するためのシール剤8を、供給ガス流に対して前記漏洩部6の上流域から供給ガスとともに流通させ、前記漏洩部6を閉塞するシール方法であって、配管1に接続された業務用大型ガスメーター2の下流域に形成され、かつ配管1に前記シール剤8を供給可能な供給部位から、前記シール剤8を供給するシール方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路(例えば、ガス管などの気体供給又は輸送用管路)の漏洩部(ネジ継手部など)をシールするシール方法に関し、特に、業務用大型ガスメーターに対してシール剤の悪影響を及ぼすことなく、前記漏洩部を効率よくシールするシール方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物内においてガス管の漏洩が発生した場合、ガス検知器などを利用してガスの漏洩箇所を特定し、修繕している。例えば、ネジ継手部で漏洩が発生した場合には、ガスの供給を停止するとともに、前記継手部とその周辺部分とを切断し除去し、代わりのガス管に入れ替えるなどの方法により、前記漏洩箇所を修繕している。しかし、このような方法では、漏洩箇所を発見し、修繕作業(例えば、ガス管の取替作業など)を行うには、多くの時間及び費用が必要であり、不経済である。また、修繕作業中は、ガスの供給を停止する必要があるため、消費者はガスの使用が制限される。さらに、このような方法では、未だ漏洩にまでは至っていない管路や継手部などを予防的に保全することができない。
【0003】
特開2002−356670号公報(特許文献1)には、配管の漏洩部からのガスの漏洩を抑制するためのシール剤であって、前記配管内のガス流とともに流通可能であり、かつ反応又は体積膨張により前記漏洩部を閉塞可能な封止性化合物で構成されているシール剤が開示されている。この文献には、前記シール剤として、湿気反応硬化型成分、ラジカル重合硬化型成分、カチオン重合硬化型成分などを例示している。そして、前記カチオン重合硬化型成分として、ビニルエーテル類、カチオン重合性オレフィン、シクロアルカン類、ラクトン類、ラクタム類、環状エーテル類(エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、トリメチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピランなど)などが記載されている。さらに、この文献には、前記封止性化合物を前記配管内のガス流とともに流通させて、前記漏洩部からガスの漏洩を抑制するシール方法も記載されている。また、この文献には、ガス流を利用して広域の漏洩箇所をシールするのに有効であると記載されている。
【0004】
また、特開2006−342960号公報(特許文献2)には、配管の漏洩部を閉塞可能な封止性化合物で構成されているシール剤を、配管内の供給ガス流に供給して前記ガス流とともに流通させて、前記漏洩部を閉塞するシール方法であって、前記ガス流に対して、前記漏洩部よりも下流側であり、かつ配管に接続されたガス関連機器よりも上流側に位置する箇所に配設した捕捉剤により、配管内を通過した余剰のシール剤を捕捉しつつ前記漏洩部を閉塞するシール方法が開示されている。この文献には、余剰のシール剤(封止性化合物)が配管の漏洩部を閉塞することなく流通又は通過しても、前記漏洩部より下流側においてシール剤を捕捉(トラップ)できるので、配管に接続されたガス関連機器[ガスメーター、ガス消費機器(ガスコンロ、ガス給湯器など)]に対する影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部を閉塞できると記載されている。前記方法では、シール剤を、例えば、供給ガスを減圧して流通するためガバナ又はガバナよりも下流の適当な場所(例えば、中圧に減圧するガバナ、中圧配管の任意の場所、低圧に減圧するガバナ、ガバナを通過した配管(低圧配管)の任意の場所)に添加してもよいことが記載されている。
【0005】
さらに、特開2006−342337号公報(特許文献3)には、配管の漏洩部を閉塞するためのシール剤であって、配管内の供給ガス流とともに流通可能であり、かつ配管の漏洩部に残存する残存シール剤に、吸収されて蓄積することにより前記漏洩部を閉塞可能な封止性化合物で構成されているシール剤が開示されている。この文献にも、前記シール剤を、供給ガスを減圧して流通するためガバナ又はガバナよりも下流の適当な場所(例えば、中圧に減圧するガバナ、中圧配管の任意の場所、低圧に減圧するガバナ、ガバナを通過した配管(低圧配管)の任意の場所)に添加してもよいことが記載され、通常、漏洩部を閉塞する観点から、少なくともシール剤(残存シール剤)によりシールされている箇所(継ぎ手部分など)よりも、ガス流の上流側において前記シール剤を添加するのが好ましいとも記載されている。
【0006】
特許文献1〜3のシール方法では、シール剤を配管内の供給ガス流とともに流通可能であり、ガスの供給を停止することなく、簡便に修繕作業を行うことができるとともに、未だ漏洩にまでは至っていない管路や継手部などを予防的に保全することもできる。しかし、これらの文献には、シール剤の供給部位は明確に記載されておらず、前記供給部位によっては、業務用大型ガスメーターにシール剤が到達し、悪影響を及ぼす虞がある。また、多量のシール剤が必要となるため、効率よく漏洩部を封止できず、不経済である。さらには、前記供給部位によっては、シール剤を供給し難く、操作性に劣る場合がある。
【特許文献1】特開2002−356670号公報(請求項1、請求項8、段落[0019][0028])
【特許文献2】特開2006−342960号公報(請求項1、段落[0020][0095])
【特許文献3】特開2006−342337号公報(請求項1、段落[0074])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、シール剤が業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞できるシール方法を提供することにある。
【0008】
本発明の他の目的は、簡便に効率よく前記漏洩部を閉塞できるシール方法を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、シール剤の供給量を容易に調整できるシール方法を提供することにある。
【0010】
本発明の別の目的は、供給ガスの供給量の変動を抑制しつつ、前記漏洩部を閉塞できるシール方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を達成するため鋭意検討した結果、配管の漏洩部を閉塞するためのシール剤を、配管に形成された特定の部位から配管内に供給すると、業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞できることを見いだし、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明のシール方法は、配管の漏洩部を閉塞するためのシール剤を、供給ガス流に対して前記漏洩部の上流域から供給ガスとともに流通させ、前記漏洩部を閉塞するシール方法であって、配管に接続された業務用大型ガスメーターの下流域に形成され、かつ配管に前記シール剤を供給可能な供給部位から、前記シール剤を供給するシール方法である。
【0013】
前記方法において、供給部位は検圧孔であってもよい。また、シール剤は、前記シール剤を拡散させるための燃焼性媒介ガスとの混合ガスとして配管に供給されてもよい。
【0014】
さらに、前記方法において、供給部位に接続された流路において、シール剤と前記シール剤を拡散させるための燃焼性媒介ガスとを混合するとともに、前記流路に設けられた流量制御手段を用いて、配管に供給されるシール剤の量を調整してもよい。前記燃焼性媒介ガスは、供給ガスと同種であってもよい。
【0015】
なお、本明細書において、配管の「漏洩部」とは、配管の適所に形成された開口部や劣化し薄弱化している箇所などを意味し、必ずしもガスが漏洩していなくてもよい。具体的には、前記漏洩部には、例えば、配管(配管のネジ継手部)と、予め配管に施されているシール剤との間に隙間(配管のシール部分(例えば、継手部など)の隙間)が生じている箇所[前記シール剤(例えば、配管のネジ継手部をシールするシール剤)が、減容(体積減少)している箇所(又は配管に残存しているシール剤が存在している箇所)や剥離している箇所なども含む。]などが含まれる。さらに、本明細書において、「類」とは置換基を有していてもよいことを意味し、例えば、「ヒドロキシシクロアルケンオキシド類」とは、「置換基を有していてもよいヒドロキシシクロアルケンオキシド」と同意である。
【0016】
なお、供給ガス、シール剤及び燃焼性媒介ガスを単に「ガス」と称する場合がある。
【発明の効果】
【0017】
本発明のシール方法では、シール剤を、配管に接続された業務用大型ガスメーターの下流域に形成されている特定部位から配管内に供給するため、シール剤が前記業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞することができる。また、シール剤を、前記特定部位から配管内に供給するため、簡便に効率よく前記漏洩部を閉塞できる。さらに、シール剤を、前記シール剤を拡散させるための燃焼性媒介ガスとの混合ガスとして配管に供給すると、シール剤の供給量を容易に調整できる。前記燃焼性媒介ガスとして供給ガスと同種のガスを使用すると、供給ガスの供給量の変動を抑制し、安定した供給量を保持したまま、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明のシール方法では、配管の漏洩部を閉塞するためのシール剤を、配管に接続された業務用大型ガスメーターの下流域に形成された特定部位から配管に前記シール剤を供給する。以下に必要に応じて添付図面を参照しつつ、本発明を詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明のシール方法の一例を表す概略模式図である。なお、図中の矢印は、ガスの流れを示す。
【0020】
この例では、供給ガス(又は都市ガス)は、供給ガス流に対し、上流から下流に向かって業務用大型ガスメーター2、検圧孔3を順に通過し、各ガス関連機器(又は物件)5に供給される。そして、このガス関連機器(又は物件)5の上流側であって、検圧孔3の下流側に位置する継手部18には、漏洩部6が形成され、この部位において、ガス漏れが発生している。
【0021】
シール剤8は、業務用大型ガスメーター2の下流側に備えられた検圧孔3から配管1に供給される。この例では、前記シール剤8は、ガスボンベ12から供給されかつ前記シール剤を拡散させるための媒介ガスとの混合ガスの形態で、検圧孔3に接続された第1の流路9を流通し、前記検圧孔3から配管1に供給される。
【0022】
より詳細には、第1の流路9の上流域に配設されているバブリング装置7に収容されたシール剤8は、前記バブリング装置7に連通する第2の流路13を介し、ガスボンベ12から供給される圧縮ガス(圧縮された燃焼性媒介ガス)の作用により、前記装置7内で気化(ガス化)され、拡散されて前記媒介ガスとの混合ガスとなる。なお、この例では、前記媒介ガスは、供給される供給ガス(都市ガス)と同種のガスを用いている。また、前記第2の流路13には、媒介ガス流に対し、上流から下流に向かって順に、ガスボンベ12からの圧縮ガスの圧力を調整するための圧力調整(又は制御)弁14、及びガスボンベ12からの圧縮ガスの流量を測定するための流量計11aが形成されている。なお、圧縮ガスの吐出圧力は、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの所望の供給圧力と、ガスボンベ12から検圧孔3に至る間に損失される圧力との合計圧力より大きいことが好ましい。通常、圧縮ガスの吐出圧力は、前記供給圧力と前記損失される圧力との合計圧力より、100〜500Pa(好ましくは150〜450Pa)程度大きく調整される場合が多い。
【0023】
生成した前記混合ガスは、前記第1の流路9を流通し、前記検圧孔3から配管1に供給される。前記混合ガスは、配管1内で拡散し、供給ガスと混合され、漏洩部6に到達し、漏洩部6(又は漏洩箇所)を閉塞する。なお、検圧孔3と第1の流路9とは、ネジ継手を利用して、検圧孔3に備えられている雌ネジに対し、第1の流路9が装着されて接続されている。なお、前記雌ネジは、通常、プラグで閉鎖されている。また、前記検圧孔3には、供給ガスの供給量(又は流量)を測定するための流量計4が、前記第1の流路9には、混合ガス(又はシール剤)の供給量(又は流量)を制御するための流量制御弁10が形成されている。
【0024】
図1の例では、シール剤を業務用大型ガスメーターの下流側に備えられた検圧孔から、ガス流が存在する配管内に供給するため、シール剤が業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞できる。
【0025】
図2は本発明のシール方法の他の例を表す概略模式図である。なお、図中の矢印は、ガスの流れを示す。なお、前記図1に示されるシール方法と同様の機能を果たす要素又は部材については、図1と同様の符号を付して説明する。
【0026】
この例のシール方法は、前記シール剤8を拡散させるための燃焼性媒介ガスとして、配管1を流通している供給ガスを利用する点を除いて、図1に示されるシール方法と同様である。
【0027】
すなわち、この例では、供給ガス(又は都市ガス)を、検圧孔3から分岐して形成された第3の流路15に分流させて、前記供給ガスの圧力を調整するためのブロワ(防爆型ブロワ)16に誘導する。前記ブロワ(防爆型ブロワ)16を通過した前記供給ガスは、前記ブロワ(防爆型ブロワ)16とバブリング装置7とを連結する第2の流路17を介して、前記バブリング装置7に導かれる。なお、前記ブロワ(防爆型ブロワ)16から吐出される前記供給ガスの吐出圧力は、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの所望の供給圧力と、ブロワ16から検圧孔3に至る間に損失される圧力との合計圧力より100〜500Pa(好ましくは150〜450Pa)程度大きく調整(又は加圧)されている。前記供給ガスの作用により、前記図1に示されるシール方法と同様の機構で、前記供給ガスと前記シール剤との混合ガスが生成され、生成した混合ガスは、前記検圧孔3を介して配管1に供給される。なお、前記第2の流路17には、前記ブロワ(防爆型ブロワ)16からの供給ガスの圧力及び流量を測定するための流量圧力計11bが形成されている。
【0028】
この例では、前記シール剤8を拡散させるための燃焼性媒介ガスとして、配管1を流通している供給ガスを利用するため、供給ガスの供給量の変動を抑制しつつ、前記漏洩部を閉塞できる。
【0029】
なお、図1及び図2では、上流から下流に向けて、業務用大型ガスメーター2、検圧孔3及びガス関連機器5が接続され、検圧孔3とガス関連機器5との間の配管1に漏洩部6が形成されている状態を概略的に示しているが、通常、配管1は、検圧孔3の下流域において分岐して、複数の枝管が形成され、前記各枝管の末端には、同一の又は異なるガス関連機器が接続されている。
【0030】
また、図1に示されるシール方法において、ガスボンベ12からの圧縮ガスの吐出圧力は、前記のように、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの所望の供給圧力と、ガスボンベ12から検圧孔3に至る間に損失される圧力との合計圧力より、100〜500Pa程度大きい圧力に限られず、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの供給圧力を大きく変動させない限り、さらに大きい圧力であってもよい。具体的には、ガスボンベ12からの圧縮ガスの吐出圧力は、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの所望の供給圧力と、ガスボンベ12から検圧孔3に至る間に損失される圧力との合計圧力より、50〜1000Pa、好ましくは75〜800Pa、さらに好ましくは100〜600Pa程度大きくてもよい。
【0031】
さらに、図2に示されるシール方法において、ブロワ(防爆型ブロワ)16からの吐出圧力も、前記のように、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの所望の供給圧力と、ブロワ16から検圧孔3に至る間に損失される圧力との合計圧力より100〜500Pa程度大きい圧力に限られず、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの供給圧力を大きく変動させない限り、さらに大きい圧力であってもよい。具体的には、ブロワ16からの供給ガスの吐出圧力は、ガス関連機器(又は物件)5への供給ガスの所望の供給圧力と、ブロワ16から検圧孔3に至る間に損失される圧力との合計圧力より、50〜1000Pa、好ましくは75〜800Pa、さらに好ましくは100〜600Pa程度大きくてもよい。
【0032】
本発明のシール方法の特色は、配管に接続された業務用大型ガスメーターの下流域に形成され、かつ配管にシール剤を供給可能な供給部位から前記シール剤を供給して配管の漏洩部を閉塞する点にある。前記業務用大型ガスメーターの下流域の供給部位から前記シール剤を供給することにより、前記シール剤が業務用大型ガスメーターに悪影響(例えば、前記シール剤の業務用大型ガスメーター内壁への付着など)を及ぼすことなく、漏洩部を効率よく閉塞(又は封止)できる。
【0033】
前記供給部位は、業務用大型ガスメーターの下流側であって、少なくとも前記シール剤を配管に供給可能な部位(例えば、孔部、空隙部など)であればよい。なお、例えば、商用ビル(デパートなど)などの大型施設の配管の漏洩部に対し、本発明のシール方法を適用する場合には、前記施設の配管図を利用して前記シール剤が影響を及ぼす範囲を考慮し、供給部位を決定してもよい。前記供給部位は、検圧孔(配管路の圧力を一括して管理(検出)する圧力検出用の検圧孔)の他、例えば、バルブ部などであってもよいが、シール剤を簡便に供給でき、操作性に優れ、かつシール剤の供給量を調整し易い点から、通常、供給部位は検圧孔である場合が多い。
【0034】
前記供給部位から供給するシール剤は、配管の漏洩部を閉塞(抑止、封止)するためのシール剤であり、前記漏洩部を閉塞可能な限り特に制限されない。例えば、前記シール剤は、配管内のガス流とともに流通可能であり、かつ反応又は体積膨張により漏洩部を閉塞可能な封止性化合物(例えば、湿気反応性モノマー、ラジカル反応性モノマー、カチオン反応性モノマーなど)で構成されているシール剤(例えば、特開2002−356670号公報に記載されているシール剤など)であってもよいが、配管内の供給ガス流とともに流通可能であり、かつ配管の漏洩部[詳細には、残存シール剤と配管(配管のネジ継手部)との間に形成された隙間]に残存する残存シール剤に、吸収されて蓄積することにより前記漏洩部を閉塞可能な封止性化合物(又は封止剤)で構成されているシール剤であってもよい。このようなシール剤としては、例えば、特開2006−342337号公報に記載されているシール剤を使用できる。
【0035】
前記封止性化合物は、配管内で流通している供給ガス(例えば、都市ガスなど)とともに流通可能であってもよい。すなわち、前記封止性化合物は、代表的には、常温常圧において蒸気圧を有しており、通常、気体状態である供給ガスとともに流通可能である。また、封止性化合物は、残存シール剤に接触して吸収されたのち、残存シール剤から脱離することなく蓄積する性質を有しているのが好ましい。このような封止性化合物では、残存シール剤に直接吸収されるので、低濃度で供給ガスとともに流通しても、効率よくシールできるとともに、ガス工作物やガスの燃焼などに悪影響を与えることがない。また、前記シール剤は、残存シール剤に蓄積し、供給後においても残存シール剤から脱離しない(又は脱離しにくい)ため、漏洩部近傍における温度などの変動に拘わらず、長期に亘って有効に漏洩部をシールできる。
【0036】
前記封止性化合物の沸点は、比較的高い沸点であってもよく、例えば、50℃以上(例えば、50〜300℃)、好ましくは80℃以上(例えば、80〜250℃)、さらに好ましくは100℃以上(例えば、100〜220℃)、特に120〜200℃程度であってもよい。
【0037】
また、封止性化合物の蒸気圧は、蓄積されるという観点から比較的小さい蒸気圧、例えば、20℃において、10000Pa以下(例えば、10〜9000Pa)、好ましくは8000Pa以下(例えば、20〜7000Pa)、さらに好ましくは5000Pa以下(例えば、30〜5000Pa)、特に40〜3000Pa(例えば、50〜2000Pa)、通常、60〜1500Pa(例えば、80〜1000Pa)程度であってもよい。特に、封止性化合物(前記オレフィンオキシド類など)の蒸気圧は、20℃において、例えば、500〜5000Pa、好ましくは600〜4000Pa、さらに好ましくは700〜3000Pa(例えば、750〜2500Pa)程度であってもよい。
【0038】
なお、前記封止性化合物は、通常、漏洩部に残存している残存シール剤に対して何らかの親和性を有しており、前記残存シール剤に対する親和性基(官能基、特性基、親和性官能基)を有している場合が多い。残存シール剤に対する親和性の点から、前記シール剤を構成する封止性化合物として、通常、オレフィンオキシド類(α,β−エポキシ基又は1,2−エポキシ基を有する化合物、オキシラン類)が好適に使用される。
【0039】
代表的なオレフィンオキシド類としては、例えば、鎖状オレフィンオキシド類{例えば、アルケンオキシド(2,3−エポキシヘキサンなどのC6−20アルケンオキシドなど)、置換基を有するアルケンオキシド[例えば、ヒドロキシアルケンオキシド類(又はα,β−エポキシアルカノール類)などの親和性基又は官能基を有するアルケンオキシドなど]};環状オレフィンオキシド類(置換基を有していてもよい環状オレフィンオキシド){例えば、単環式オレフィンオキシド類[シクロアルケンオキシド類(又はα,β−エポキシシクロアルカン類)、シクロアルカジエンオキシド類(又はα,β−エポキシシクロアルケン類)など]、多環式オレフィンオキシド類(例えば、ジシクロアルケンオキシド類、トリシクロアルケンオキシド類など)}などが挙げられる。これらのオレフィンオキシド類のうち、ヒドロキシアルケンオキシド類、シクロアルケンオキシド類が好適に使用される。
【0040】
ヒドロキシアルケンオキシド類(又はα,β−エポキシアルカノール類)としては、例えば、2,3−エポキシプロパノール(グリシドール)、2,3−エポキシブタノールなどのヒドロキシC3−10アルケンオキシド類、好ましくはヒドロキシC3−6シクロアルケンオキシド類(特に、2,3−エポキシプロパノール(グリシドール)など)などが挙げられる。
【0041】
シクロアルケンオキシド類(又はα,β−エポキシシクロアルカン類)としては、例えば、シクロアルケンオキシド[例えば、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン(シクロヘキセンオキシド)などのC5−10シクロアルケンオキシド]、置換基を有するシクロアルケンオキシド[例えば、アルキルシクロアルケンオキシド類(例えば、1,2−エポキシ−4−メチルシクロヘキサンなどのC1−4アルキル−C5−10シクロアルケンオキシド類)、アルケニルシクロアルケンオキシド類(例えば、1,2−エポキシ−4−ビニルシクロヘキサンなどのC2−4アルケニル−C5−10シクロアルケンオキシド類)などの炭化水素基を有するシクロアルケンオキシド類;アルコキシシクロアルケンオキシド類(例えば、1,2−エポキシ−4−メトキシシクロヘプタンなどのC1−6アルコキシ−C5−10シクロアルケンオキシド類)、ヒドロキシシクロアルケンオキシド類(例えば、2,3−エポキシシクロブタノール、2,3−エポキシシクロペンタノールなどのヒドロキシC5−10シクロアルケンオキシド類)、カルボキシシクロアルケンオキシド類(例えば、1,2−エポキシ−4−カルボキシシクロヘキサンなどのカルボキシC5−10シクロアルケンオキシド類)、アミノシクロアルケンオキシド類(例えば、1,2−エポキシ−3−アミノシクロヘプタンなどのアミノC5−10シクロアルケンオキシド類)などの官能基又は親和性基を有するシクロアルケンオキシド類など]などが挙げられる。これらのシクロアルケンオキシド類のうち、C5−10シクロアルケンオキシド(特に、1,2−エポキシシクロヘキサン(シクロヘキセンオキシド)など)などが好適に使用される。前記オレフィンオキシド類は、単独で又は二種以上組み合わせて使用してもよい。
【0042】
前記シール剤において、封止性化合物は、単独で又は2種以上組みあわせてもよい。本発明に使用するシール剤は、前記封止性化合物で少なくとも構成されていればよく、封止性化合物単独で構成してもよく、前記封止性化合物と、この封止性化合物の残存シール剤に対する吸収を促進するための吸収促進剤とで構成されていてもよい。なお、前記吸収促進剤を用いると、吸収促進剤を残存シール剤に吸収させて(さらに膨張又は膨潤させて)、残存シール剤に対してより一層選択的に封止性化合物を吸収させることにより、残存シール剤に対する封止性化合物の吸収性(選択吸収性)を促進又は向上させて漏洩部をより一層効率よくシールしてもよい。すなわち、前記封止性化合物とともに、前記吸収促進剤を流通させることにより、残存シール剤に対する前記封止性化合物の吸収性および蓄積性を向上させることができる。
【0043】
前記吸収促進剤としては、例えば、特開2006−342337号公報に記載されている吸収促進剤を使用できる。代表的な吸収促進剤としては、慣用の溶媒、例えば、炭化水素類(脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、芳香族炭化水素類)、アルコール類[アルカノール類(例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソブタノール、イソアミルアルコール、オクタノール、デカノールなどのC1−10アルカノール、好ましくはC1−6アルカノールなど)などの脂肪族アルコール類;シクロアルカノール類(例えば、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどのC5−8シクロアルカノールなど)などの脂環族アルコール類など]、エーテル類[ジアルキルエーテル類などの鎖状エーテル類;ジオキサン、テトラヒドロフランなどの環状エーテル類など]、ケトン類[ジアルキルケトン類などの脂肪族ケトン類;シクロアルカノン類など]、エステル類(酢酸エチルなど)などが挙げられる。吸収促進剤は、単独で又は2種以上組みあわせて使用してもよい。吸収促進剤の沸点は、例えば、30℃以上(例えば、35〜250℃)、好ましくは40℃以上(例えば、45〜200℃)、さらに好ましくは50℃以上(例えば、55〜150℃)、特に55℃以上(例えば、60〜120℃)程度であってもよい。
【0044】
好ましい吸収促進剤は、残存シール剤の種類にもよるが、アルコール類[例えば、C1−4アルカノール(メタノール、エタノール、ブタノールなど)などのアルカノール類]である。
【0045】
封止性化合物と吸収促進剤との使用割合は、前者/後者(重量比)=90/10〜1/99、好ましくは70/30〜2/98、さらに好ましくは50/50〜3/97、特に30/70〜5/95程度であってもよい。また、シール剤は、さらに必要に応じて他の成分(例えば、反応又は重合開始剤など)を含んでいてもよい。なお、前記封止性化合物と吸収促進剤とを用いる場合、封止性化合物と吸収促進剤とを混合して用いてもよく、例えば、封止性化合物の供給に先立って吸収促進剤を予め供給するなどの態様で、個別に又は分離して用いてもよい。好ましい態様では、吸収促進剤が供給を停止すると残存シール剤から徐々に脱離する性質を有していることを利用して、吸収促進剤は、封止性化合物の供給にオーバーラップ(重複又は共存)させて供給してもよい。
【0046】
前記シール剤(又は封止性化合物)の供給量(又はシール剤の配管内の濃度)は、供給ガス流全体[又は供給ガス、シール剤などの配管内を流通する全ての流体の総量]に対して、体積基準で、例えば、0.1〜20000ppm程度の範囲から選択でき、例えば、0.1〜5000ppm、好ましくは0.5〜3000ppm、さらに好ましくは1〜2500ppm、特に5〜2000ppm(例えば、10〜1500ppm)程度であってもよいが、漏洩部を短時間内に封止できる点から、前記シール剤(又は封止性化合物)の供給量(又はシール剤の配管内の濃度)は、供給ガス流全体に対して、体積基準で、500ppm以上(例えば、1000〜20000ppm)、好ましくは1200〜15000ppm、さらに好ましくは1500〜12000ppm(例えば、1500〜11000ppm)、特に2000〜10000ppm程度であってもよい。なお、4000ppm以上、特に5000ppm以上の濃度では、漏洩部を短時間内に封止できる。封止性化合物(又はシール剤)の濃度が漏洩部のシールに大きく関与する理由は明確ではないが、漏洩部の残存シール剤が封止性化合物を一旦吸収すると、封止性化合物の吸収速度が急激に大きくなるためと思われる。
【0047】
また、前記シール剤(又は封止性化合物)を含む供給ガス(又は後述する燃焼性媒介ガスを含む混合ガス)流の圧力は、1kPa以上(例えば、1.2〜35kPa)、好ましくは1.5〜30kPa(例えば、1.5〜25kPa)、さらに好ましくは2〜20kPa程度であってもよい。ガス流の圧力が漏洩部のシール性に影響する理由も明確ではないが、残存シール剤が封止性化合物を一旦吸収すると、封止性化合物の吸収速度が急激に大きくなるためと思われる。
【0048】
前記シール剤を前記供給部位から供給する形態としては、特に制限されず、前記シール剤を単独で供給してもよいが、シール剤を均一に拡散させ、かつ高い移動度で流通させることができる点から、前記シール剤を他の媒体(例えば、気体状態の媒体、媒介ガスなど)との混合物として供給してもよい。
【0049】
前記他の媒体(特に、媒介ガス)としては、特に制限されないが、シール剤及び供給ガスとともに流通するため、シール剤及び/又は供給ガスとともに燃焼(特に完全燃焼)可能な燃焼性のガス(燃焼性媒介ガス)であることが好ましい。すなわち、前記媒介ガスは、通常、空気;炭素原子及び水素原子(必要に応じて酸素原子及び/又は窒素原子)を主成分とする化合物であってもよい。代表的な前記媒介ガスは、通常、炭化水素類(特に、メタン、エタン、プロパン、ブタンなどのC1−5アルカンなど)である場合が多い。これらの媒介ガスは、単独で又は二種以上組み合わせて用いてもよい。前記媒介ガスと供給ガスとは、異なっていてもよいが、供給ガスの供給量の変動及びエネルギー効率の低下を抑制(又は防止)するため、前記媒介ガスと供給ガスとは同種であることが好ましい。なお、供給ガスは、通常、都市ガスなどの燃焼性ガス(例えば、メタンなど)である。
【0050】
前記媒介ガスとシール剤とを混合して混合物(又は混合ガス)を配管内に供給する形態(又は手段)は、前記混合物(又は混合ガス)を配管内に供給可能な限り特に制限されず、例えば、予め(又は独立した系で)調製した混合物(又は混合ガス)を供給部位から供給する形態であってもよく、供給部位に配設された装置(又は手段)を利用して混合物(又は混合ガス)を生成し、配管内に供給する形態であってもよい。前記装置(又は手段)としては、例えば、前記の例示のように、バブリング装置7とガスボンベ12との組み合わせを備えている装置(又は流路)、バブリング装置7とブロワ16との組み合わせを備えている装置(又は流路)などが挙げられる。
【0051】
また、前記装置(又は手段)を利用して生成した混合物(又は混合ガス)を、配管内に供給する他の形態としては、例えば、シール剤の蒸気圧を利用し、配管内に拡散させる形態などが挙げられる。具体的には、例えば、供給部位に接続した容器(特に、バルブ付き容器などの開閉可能な容器)に前記シール剤(及び前記媒介ガス)を充填し、蒸気圧を利用して拡散させて、前記媒介ガス[例えば、空気、供給ガス(特に空気)など]との混合物を生成させ、配管に供給する形態であってもよい。
【0052】
なお、前記混合物(又は混合ガス)を配管内に供給する場合、効率よく漏洩部を閉塞するため、前記シール剤(及び前記媒介ガス)を加熱及び/又は撹拌することにより、前記混合物(又は混合ガス)の生成を促進させてもよい。
【0053】
前記混合ガスは、供給部位から配管に供給され、供給ガスと混合されてさらに拡散し、各物件(又はその漏洩部)に到達し、漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞する。
【0054】
なお、前記混合ガスの配管への供給量(又は流量)は、制御されていなくてもよいが、エネルギー効率、経済性などの点から、制御されていることが好ましい。前記混合ガスの供給量(又は流量)を制御するための手段(流量制御手段)は、前記例示の流量制御弁に限られず、他の手段、例えば、流量制御ポンプなどを用いてもよい。
【0055】
前記流量制御手段を利用すると、配管に供給される混合ガス(又はシール剤)の供給量(又は流量)を容易に調整することができる。特に、前記の飽和状態(又は飽和蒸気圧)にある混合ガス(特に、シール剤)を用いると、混合ガス中のシール剤濃度が一定(又はほぼ一定)であるため、さらに簡便に前記供給量(又は流量)を調整することができる。例えば、前記混合ガス(又はシール剤)の供給量(又は流量)は、供給ガスの流量に応じて調整してもよく、或いは配管の漏洩部(又は漏洩箇所)の数に応じて調整してもよい。具体的には、例えば、図1乃至図3に示されるシール方法では、前記流量計4を用いて供給ガスの供給量(又は流量)を測定し、この供給量に応じ、前記流量制御弁10及び流量計11a(又は流量圧力計11b)を用いて混合ガス(又はシール剤)の供給量を調整してもよい。また、業務用大型ガスメーター2で測定される供給ガスの供給量(又は流量)を信号処理し、この供給量に応じ、前記流量制御弁10及び流量計11a(又は流量圧力計11b)を用いて混合ガス(又はシール剤)の供給量を調整してもよい。さらには、漏洩部(又は漏洩箇所)の数に応じ、前記流量制御弁10及び流量計11a(又は流量圧力計11b)を用いて混合ガス(又はシール剤)の供給量を調整してもよい。より実用的には、例えば、ガスの使用量が少ない時間帯(又は供給ガスの供給量が少量である時間帯)を利用して前記シール剤を供給すると、必要とされる前記シール剤の量を低減することができる。また、漏洩部(又は漏洩箇所)が多い場合や、緊急を要する場合であっても、容易に前記シール剤の供給量を増大させることができ、瞬時に対応が可能となる。
【0056】
なお、前記シール剤(又は混合ガス)の供給は、配管に対して所定の期間(例えば、6時間〜50日間、特に10時間〜2週間程度)に亘り定常的(又は連続的)に行ってもよく、断続的に又は間欠的に行ってもよい。
【0057】
前記シール剤を、断続的に又は間欠的に供給すると好ましい理由を以下に例示する。例えば、前記シール剤(又は封止性化合物)は、残存シール剤に対して吸収されて蓄積され、漏洩部の(又は漏洩部の残存シール剤に対する)補修剤として作用するが、一部において、残存シール剤に吸収されることなくガスとともに流通する場合がある。また、前記封止性化合物は、前記のように、残存シール剤のみならず、通常、配管又はその周辺に使用されるゴム材料(配管に使用されるOリングを構成するゴム材料(例えば、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)など))などに吸収され、ゴム材料を膨張又は膨潤させる場合がある。そのため、前記ゴム材料などに対するシール剤の吸収(又はゴム材料の膨張)を抑制するため、前記シール剤を低濃度で供給することが有効であるが、残存シール剤に十分な封止性化合物を蓄積させて漏洩部を閉塞するには、長時間必要となる場合がある。
【0058】
そこで、シール剤の供給を、一回ではなく、間欠的に(又は複数回に分けて)行ってもよい。すなわち、前記封止性化合物は、ゴム材料に吸収されるものの蓄積しないため、シール剤の供給を停止すると、徐々に脱離し、元の状態に復元する。一方、残存シール剤に吸収されたシール剤(封止性化合物)は、シール剤の供給を停止しても、脱離する(又は放出される)ことなく残存シール剤に蓄積する。そのため、本発明では、供給ガス流に対するシール剤の供給と停止とを繰り返して間欠的にシール剤を供給し、ゴム材料などに吸収された封止性化合物を脱離させつつ、残存シール剤に封止性化合物を蓄積させることにより確実に漏洩部をシールしてもよい。また、前記シール剤(封止性化合物)は、通常、ゴム材料などに対してよりも残存シール剤に対して吸収されやすいため、間欠的にシール剤を供給することにより、より一層選択的に残存シール剤に吸収させることができ、ゴム材料などに吸収されるシール剤の量を低減しつつ効率よく漏洩部を閉塞できる。
【0059】
なお、前記シール剤を間欠的に供給する場合、封止性化合物又は吸収促進剤をガス流に供給又は添加する回数(あるいは供給又は添加を停止する回数)は、2回以上(例えば、2〜100回程度)、好ましくは2〜50回(例えば、2〜30回)、さらに好ましくは3〜15回(例えば、4〜10回)程度であってもよい。封止性化合物及び吸収促進剤について、供給時間と停止時間(第n回目に封止剤を供給する期間と、第n回目に封止剤の供給を停止する期間)との割合は、例えば、前者/後者=90/10〜10/90、好ましくは80/20〜20/80、さらに好ましくは70/30〜30/70(例えば、60/40〜40/60)程度であってもよい。
【0060】
なお、必要に応じて、配管を加熱又は加温しながら前記シール剤を流通させてもよい。配管の加熱又は加温は慣用の方法で行うことができ、配管の外部から加熱手段(ヒーター、熱媒など)により加熱してもよく、加熱気体(加熱空気、加熱水蒸気などの加熱媒体)を配管内に導入することにより配管を加熱又は加温してもよい。
【0061】
本発明のシール方法では、シール剤を、配管に接続された業務用大型ガスメーターの下流域に形成されている特定部位(例えば、配管路の圧力を一括して管理(検出)する圧力検出用の検圧孔)から配管内に供給するため、シール剤が前記業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなく、配管の漏洩部(又は漏洩箇所)を閉塞することができる。さらに、前記の特定部位(例えば、検圧孔など)を利用すると、シール剤の供給部位から漏洩部までの流路が短く、シール剤の供給量が少量であっても、有効に配管内のシール剤濃度を高めることができ、漏洩部(又は漏洩箇所)が多い場合や、緊急を要する場合であっても、瞬時に対応が可能となる。
【0062】
また、本発明のシール方法は、シール剤を供給ガスとともに流通させて前記漏洩部を閉塞するので、微量のガス漏れなどの発見されにくいガス漏洩であっても、効率よく抑止できる。さらに、前記方法は、供給ガスを停止することなく、漏洩部(ガス漏洩部など)をシールするのに有効であり、漏洩部の修繕する際の作業手間を省略することができる。
【0063】
なお、本発明の方法は、気体を流通させる種々の管体(又は配管)、特に都市ガスなどのガス管に適用でき、配管は1つの流路に限らず複数の流路を有する分岐管であってもよい。配管の種類は特に限定されず、種々の配管又は管路(例えば、平均内径15〜100mm程度の管体)に有効に適用できる。特に、シール剤との間に隙間が生じやすい配管、例えば、図3に示されるように、本管から分岐した枝管の継手部(例えば、微小のガス漏れが生じやすいネジ継手部など)を有する管体又は管路に有効に適用でき、ガスの漏洩を有効に抑止又は防止できる。なお、漏洩部が、物件(又は建物)内の配管に形成された漏洩部であっても、物件(又は建物)外の配管に形成された漏洩部であっても本発明のシール方法は有効である。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明のシール方法は、業務用大型ガスメーターに悪影響を及ぼすことなくガス漏れを抑止又は防止できる。そのため、本発明のシール方法は、種々のガス管、例えば、都市ガス又は燃料ガスの配管(特に、容易にメンテナンスできることが望まれる大型物件などの配管)に有用である。
【0065】
また、本発明では、供給ガスの供給量の変動を抑制しつつ、配管の漏洩部を閉塞することができるため、ガスの安定した供給が必要とされる物件(例えば、ガラス細工所、工業炉などの直火を多用する物件など)の上流域の配管(管体又は管路)にも適用できる。
【実施例】
【0066】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0067】
(実施例1)
図3に示されるように、末端にガス関連機器5を接続した4つの枝管(本管から分岐した管)にそれぞれ継手部18を形成した模擬配管(配管ユニット)を作製した。なお、検圧孔3と第1の流路9との接続は、ネジ継手を利用して、検圧孔3に備えられている雌ネジに対し、第1の流路9を装着することにより行った。前記継手部18には、漏洩部6(供給ガスを、6m/hrの流量で流通させたとき、ネジ継手部から3〜7mL/分程度のガス漏れを生じる漏洩部)を形成した。バブリング装置7を用いて、シール剤(又は封止性化合物)としてのシクロヘキセンオキシド(1,2−エポキシシクロヘキサン)をバブリングにより、供給ガスとともに、2.5kPa、流量1〜6m/hrで流通させた。なお、シール剤(シクロヘキセンオキシド)の濃度は、供給ガス流全体に対して、体積基準で2500ppmであった。前記継手部18から漏れるガスの量を観測したところ、10日でガス漏れが検出されなくなった。ガス漏れが停止した時点で、業務用大型ガスメーターの内部を観察したところ、シール剤による汚染は観られなかった。
【0068】
(比較例1)
図3に示されるシール方法において、ブロワ16及びバブリング装置7を利用してシール剤を検圧孔3から供給せず、業務用大型ガスメーター2の上流域に接続されているガバナ(図示せず)からシール剤を供給する以外は、実施例1と同様に漏洩部6を封止した。前記継手部18から漏れるガスの量を観測したところ、10日でガス漏れが検出されなくなったが、漏洩部6からのガス漏れが停止した時点で、業務用大型ガスメーターの内部を観察したところ、内部にシール剤が付着していた。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】図1は本発明のシール方法の一例を表す概略模式図である。
【図2】図2は本発明のシール方法の他の例を表す概略模式図である。
【図3】図3は本発明のシール方法のさらに他の例を表す概略模式図である。
【符号の説明】
【0070】
1…配管
2…業務用大型ガスメーター
3…検圧孔
4…流量計
5…ガス関連機器
6…漏洩部
7…バブリング装置
8…シール剤
9…第1の流路
10…流量制御弁
11a…流量計
11b…流量圧力計
12…ガスボンベ
13,17…第2の流路
14…圧力制御弁
15…第3の流路
16…ブロワ
18…継手部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管の漏洩部を閉塞するためのシール剤を、供給ガス流に対して前記漏洩部の上流域から供給ガスとともに流通させ、前記漏洩部を閉塞するシール方法であって、配管に接続された業務用大型ガスメーターの下流域に形成され、かつ配管に前記シール剤を供給可能な供給部位から、前記シール剤を供給するシール方法。
【請求項2】
供給部位が、検圧孔である請求項1記載のシール方法。
【請求項3】
シール剤を、前記シール剤を拡散させるための燃焼性媒介ガスとの混合ガスとして供給する請求項1又は2に記載のシール方法。
【請求項4】
供給部位に接続された流路において、シール剤と前記シール剤を拡散させるための燃焼性媒介ガスとを混合するとともに、前記流路に設けられた流量制御手段を用いて、配管に供給されるシール剤の量を調整する請求項1〜3のいずれかの項に記載のシール方法。
【請求項5】
燃焼性媒介ガスが、供給ガスと同種である請求項3又は4に記載のシール方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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