説明

漏洩検知補助装置

【課題】 特に大型の真空処理装置に発生した微小なリークを確実に検出きるようにする。
【解決手段】 本発明では、例えば、漏洩検知対象物として、内部を真空引きする真空ポンプ2、5が付設されたチャンバを有する真空処理装置の漏洩検知を実施する際に、このチャンバ11と、ヘリウムガスを検知する質量分析管61と真空ポンプ63とを有するリークディテクタ6との間に介設される漏洩検知補助装置8を介設する。漏洩検知補助装置8は、チャンバに設けたテストポート13に第1の接続ポート82aと、質量分析管のターボ分子ポンプに通じる配管が接続可能な第2の接続ポート82bとを有する本体81を備え、この本体に、第1及び第2の両接続ポート間を連通する接続管83と、チャンバから第1の接続ポートを経てこの接続管内に引き込まれたヘリウムを第2の接続ポートへと移送し得るターボ分子ポンプ84とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏洩検知対象物と、ヘリウムガスを検知する質量分析管と真空ポンプとを有するリークディテクタとの間に介設されて、漏洩検知対象物に発生した微小な漏洩まで確実に検知できるように補助する漏洩検知補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スパッタリング装置やエッチング装置等の真空処理装置や密閉容器等の漏洩検知対象物からの漏洩(リーク)の有無を検知するために、質量分析管と真空ポンプとを有するリークディテクタを用いることが従来から知られている。リークディテクタとしては、質量分析管の動作圧力(10―3Pa程度)より高い圧力で漏洩検知(リークテスト)が可能であることや質量分析管でのバックグランド値を迅速に低下できること等の理由から、逆拡散式のものが広く利用されている(例えば、特許文献1参照)。この種のリークディテクタは、ヘリウムを逆拡散し易く構成すれば感度が高まって微小なリークまで発見し得る一方で、質量分析管の動作圧力を所定値に維持するために、チャンバ内の圧力を十分に低くしてからでないと、リークテストを実施できないという特徴がある。
【0003】
ここで、洩検知対象物を真空処理装置とし、上記リークディテクタを用いてこの真空処理装置のリークテストを実施する場合を例に説明すると、上記リークディテクタからの配管を、真空処理装置の処理室を画成するチャンバに予め設けられた(テスト)ポートに接続する。そして、チャンバを真空引きし、その外側からサーチガスたるヘリウムガスを局所的に吹き付けていく。この真空処理装置にリークが発生していると、そのリーク箇所からチャンバ内に引き込まれたヘリウムガスが、配管を介してリークディテクタに内蔵した真空ポンプに引き込まれ、この真空ポンプにて逆拡散したヘリウムが質量分析管へと導かれる。この質量分析管にてヘリウムガスをイオン化し、ヘリウムイオンのみを選別してイオンコレクタに入射させ、イオン電流として真空中に漏れるヘリウムガスを定量的に検知される。これにより、ヘリウムガスの吹き付け箇所との関連で真空処理装置のリーク箇所が発見される。
【0004】
ところで、近年、フラットパネルディスプレイの製造工程にてガラス基板表面にITOなどの透明電導膜やゲート電極たる金属膜を形成する真空処理装置のように、処理対象物たる基板の大面積化に伴い、真空処理装置自体が大型化している。このような大型の真空処理装置では、チャンバに、高い排気能力を有するターボ分子ポンプ等の高真空ポンプが複数台設けられ、例えば、高真空ポンプの排気側に排気管をそれぞれ接続し、各排気管が集合されて一台のフォアポンプに接続して各高真空ポンプを補助排気するようになっている。このような大型の真空処理装置に対してリークテストを実施する場合、上記の如くチャンバのテストポートにリークディテクタからの配管を接続してリークテストを実施すると、以下のような問題が顕在してきた。
【0005】
即ち、真空処理装置の大型化に伴い、リークディテクタからの配管を長くする必要があり、リークディテクタの実効排気速度の低下を招来している。つまり、床面からのチャンバの高さが数mに及ぶような大型の真空処理装置では、その周囲の床面に配管や配線が引き回されていたり、安全確保の観点などから足場が設置されていたりして、リークディテクタを真空処理装置のチャンバの近傍に設置することができない。このため、チャンバから離してリークディテクタを設置する必要があり、場合によっては、配管の長さが5m以上に達することもある。この場合、配管が長くなるのに従ってテストポートにおけるリークディテクタの実効排気速度の低下を招来する。
【0006】
また、リークテスト時、真空処理装置に設けた比較的大型の高真空ポンプを運転することが必要である。つまり、真空処理装置のチャンバが大型化すると、内部表面積も大きくなって放出ガス量が増加する。このため、リークディテクタが有する比較的小型の真空ポンプ(一般に、排気速度が1〜4L/S)では、リークテストに十分な圧力までチャンバを真空引きするために多大な時間が必要となる。このため、真空処理装置に付設された、排気速度が大きい高真空ポンプ(数千L/s)にてチャンバを真空引きしながら、リークテストを行う必要がある。このように、リークテスト時におけるリークディテクタの実効排気速度の低下や比較的大型の高真空ポンプの運転の結果、真空処理装置に発生した微小なリークの発見が困難となるという問題が顕在化してきた。以下、この微小なリークの発見が困難な理由を説明する。
【0007】
先ず、大型の真空処理装置に設けられる高真空ポンプの実行排気速度をS、チャンバに設けたテストポートにおけるリークディテクタの実効排気速度をSとすると、リーク箇所からチャンバ内に引き込まれるヘリウムガスは、排気速度の比率(S:S)の割合でそれぞれの真空ポンプにより排気される。つまり、リークディテクタに導入されるヘリウムガスの量(M)は、リーク箇所からチャンバ内に引き込まれたヘリウムガスの総量(M)と、上記実効排気速度S、Sとから次式で算出される。
【数1】

【0008】
ここで、Sが大きくなれば、より効率良くヘリウムガスを検出すること、言い換えると、微小なリークを発見できる。この場合、Sは、チャンバのテストポートに通じる配管の一端が接続されるリークディテクタの接続ポートにおける排気速度をS、配管の配管コンダクタンスをCとすると、次式から算出される。
【数2】

【0009】
そして、上記式1に式2を代入してSを消去すると、次式となる。
【数3】

【0010】
以上より、真空処理装置に設けた高真空ポンプの実効排気速度に対して、リークディテクタのテストポートにおける排気速度S及びコンダクタンスCが大きくなる程、Mが大きくなり、ヘリウムガスの検知にとっては有利になることが判る。
【0011】
然しながら、上記大型の真空処理装置にてリークディテクタに導入されるヘリウムガスの量を具体的に計算すると、例えば、S=3000L/s、S=1L/s、C=0.63L/s(配管内径25mm、配管長さ3mで計算される配管コンダクタンス)の条件では、M=M×1.3E−4(0.013%)となる。これは、チャンバのリーク箇所からこのチャンバ内に引き込まれたヘリウムガスの殆どが高真空ポンプにより排気されることを意味する。このため、微小なリーク検出が困難であることが判る。
【0012】
このような問題の解決策として、特許文献2には、リークディテクタの接続ポートの直上にターボ分子ポンプを設け、テストポートにおける排気速度(S)を高めることが提案されているが、この排気速度を高めても、配管コンダクタンス(C)の影響の方が圧倒的に強いため、Mを大きくする効果は殆ど見られない。つまり、Sを無限大としても、M=M×2.1E−4(0.021%)であり、排気速度が1L/sの場合と比べて2倍にも満たない。
【0013】
このため、配管コンダクタンスCを大きくすることが考えられるが、これには径を大きくするかまたはその長さを短くすることが有効であるものの、配管を引き回すスペースの確保が必要なことやリークテストの際にチャンバに対して頻繁に着脱が行われることを考慮すると、径を大きくすることはできない。しかも、上記のように大型の真空処理装置近傍にリークディテクタを設置することが困難であることから、配管の長さを短くできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2007−198865号公報
【特許文献2】特表2006−515666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、以上の点に鑑み、漏洩検知対象物が大型の高真空ポンプを備えた真空処理装置のような場合であっても、リークディテクタにより微小なリークを確実に検知し得る漏洩検知補助装置を提供することをその課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記課題を解決するために、本発明は、漏洩検知対象物と、ヘリウムガスを検知する質量分析管と真空ポンプとを有するリークディテクタとの間に介設される漏洩検知補助装置であって、漏洩検知対象物に設けたポートに接続される第1の接続ポートと、リークディテクタに接続される第2の接続ポートとを有する本体を備え、この本体に、第1及び第2の両接続ポート間を連通する接続管と、漏洩検知対象物から第1の接続ポートを経てこの接続管内に引き込まれたヘリウムを第2の接続ポートへと移送し得る移送手段と、を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明において、前記第1及び第2の両接続ポートは、前記本体に、外側に向けて突設され、第1の接続ポートが前記テストポートに直結されることが好ましい。
【0018】
また、本発明において、前記移送手段は、接続管に介設されたターボ分子ポンプであり、このターボ分子ポンプの上流側及び下流側に開閉弁が介設されていることが好ましい。
【0019】
さらに、本発明において、前記本体に他の真空ポンプを更に備え、この他の真空ポンプからの吸気管が、ターボ分子ポンプの排気側に接続されてこのターボ分子ポンプを補助排気すると共に、この吸気管が分岐されて第1の接続ポートと上流側の開閉弁との間で接続管に接続されていることが好ましい。
【0020】
本発明によれば、漏洩検知対象物のリークテストに先立って、漏洩検知対象物に予め設けられているポートに第1の接続ポートを例えば直結することで漏洩検知補助装置の本体を取り付ける。そして、本体の第2の接続ポートにリークディテクタからの配管を接続する。次に、リークディテクタの真空ポンプを稼働すると共に、場合によっては漏洩検知対象物に付設された各真空ポンプを稼働する。併せて、本体に内蔵した移送手段を稼働する。漏洩検知対象物内が所定圧力まで真空引きされると、漏洩検知対象物の外側からサーチガスたるヘリウムガスを局所的に吹き付け、リークが存すると、このヘリウムガスが漏洩検知対象物内に吸い込まれる。
【0021】
ここで、本発明では、漏洩検知補助装置の本体内に設けられる接続管は、その内部に収納される真空ポンプや開閉弁等の部品の数やその大きさに応じた本体の容積に依存するものの、数十cm程度の長さを有していればよく、移送手段たるターボ分子ポンプからの配管の長さより極めて短くできる。このため、接続管の径を特段大きくすることなく、配管コンダクタンス(C)を大きくできる。その結果、大型の高真空ポンプを備えた真空処理装置のような場合であっても、漏洩箇所から内部に引き込まれ、微小なリーク検出が可能な量のヘリウムガスを、漏洩検知補助装置の接続管へと導くことが可能となる(上記各式参照のこと)。この場合、請求項2記載のように、本体の壁部に突設した第1の接続ポートをテストポートに直結すれば、漏洩検知補助装置の接続管へとヘリウムガスをより確実に導くことができてよい。そして、移送手段によりこの接続管内をヘリウムガスが移送され、第2の接続ポートから配管を介してリークディテクタへと略同量のヘリウムガスが移送される。これにより、リークディテクタにより微小なリークを確実に検知し得る。
【0022】
なお、本発明において、第1の接続ポートでの排気速度は、100L/s以下であることが好ましい。移送手段をターボ分子ポンプとした場合に、排気速度が100L/sを超えるものでは、その重量が重くなり、床面からのチャンバの高さが数mに及ぶような大型の真空処理装置では、テストポートの位置も床面から高い位置に形成されていることが多く、このような場合、一人の作業者により漏洩検知補助装置をチャンバに取り付けることができず、作業性が損なわれる。
【0023】
また、微小なリークを確実に検知し得るために、移送手段の上流側に配置される開閉弁のコンダクタンスは、1L/s以上、好ましくは、10L/s、より好ましくは、移送手段たるターボ分子ポンプの排気速度と同等以上のコンダクタンスを有する。他方、移送手段の下流側に配置される開閉弁のコンダクタンスは、ターボ分子ポンプの背圧が限界背圧を超えないように、5L/s以上であることが好ましい。
【0024】
さらに、本発明において真空処理装置には、真空計、スパッタリングカソードや開閉バルブなど、チャンバ内で実施される処理に応じてこのチャンバに取り付けられる各種の構成部品を含む概念であり、チャンバのテストポートとは、リークディテクタからの配管を接続するために予め形成されているものだけでなく、例えば、真空計を装着するために設けられたポートにてこの真空計を取り外して配管を接続できるようなポートも含むものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】真空処理装置への本発明の漏洩検知補助装置とリークディテクタとの接続状態を模式的に説明する図。
【図2】図1に示すリークディテクタの内部構造を模式的に説明する図。
【図3】図1に示す漏洩検知補助装置の内部構造を模式的に説明する図。
【図4】変形例に係る漏洩検知補助装置の内部構造を模式的に説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照して、洩検知対象物を真空処理装置とし、本発明の実施形態の漏洩検知補助装置を用いてこの真空処理装置の漏洩検知を行う場合を例に説明する。
【0027】
図1及び図2を参照して、1は、漏洩検知が行われる洩検知対象物たる真空処理装置である。真空処理装置1は、例えば、大面積の基板に対して成膜処理を行い得るものであり、処理室を画成するチャンバ11を備える。チャンバ11の壁面には、円形開口たる排気口12が複数(本実施形態では3個)設けられ、これら各排気口12を臨むようにチャンバ11にはターボ分子ポンプ(高真空ポンプ)2がそれぞれ設けられている。ターボ分子ポンプ2の排気側には排気管3がそれぞれ接続されている。各排気管3は集合排気管4に接続され、この集合排気管4が一台のロータリーポンプ(フォアポンプ)5に接続され、ターボ分子ポンプ2を補助排気するようになっている。
【0028】
本実施形態では、高真空ポンプとしてターボ分子ポンプ2を例としているが、これに限定されるものではなく、チャンバ11内を高真空まで真空引きできる拡散ポンプ等でもよい。また、高真空ポンプ2の排気速度は、チャンバ11の容積に応じて適宜設定される。さらに、フォアポンプ5についても、高真空ポンプを補助排気し得るものであれば特に限定されるものではなく、ブースターポンプ等を使用できる。
【0029】
また、特に詳細に図示して説明しないが、チャンバ11には、真空計G、バルブ、ガス導入手段、スパッタリングカソードや開閉扉など、チャンバ内で実施される処理に応じて各種の構成部品が設けられている。また、チャンバ11の側壁には、規格品のフランジを備えた(テスト)ポート13が設けられ、後述の漏洩検知補助装置や他の真空計等が取付可能となっている。
【0030】
リークディテクタ6は、図2に示すように、筐体6aを有し、この筐体6a内に磁場偏向型の質量分析管61を有する。質量分析管61は、特に図示して説明しないが、フィラメントとグリッドを有して内部のガス成分をイオン化するイオンソースと、ヘリウムイオンを捕集するイオンコレクタと、イオンソースにて生成された正イオンのうちヘリウムイオンのみをイオンコレクタへと導くマグネットとを備える。そして、イオンコレクタに付設された電流計Aにて、このイオンコレクタを流れるイオン電流が検出される。
【0031】
質量分析管61には主管路62が接続され、この主管路62には、高真空排気手段たる複合分子ポンプ63と、その背圧側でフォアバルブ64を介在させて接続された補助真空排気手段たるロータリーポンプ65とが設けられている。複合分子ポンプ63としては、ポンプケーシングにターボ分子ポンプとドラッグポンプとを内蔵したもので構成でき、その排気速度が10〜100L/s程度のものである。また、補助真空排気手段としては、上記限定されるものではなく、メンブレンポンプ等であってもよい。
【0032】
筐体6aの上面には、後述の配管7の一端が接続される規格品のフランジを備えた接続ポート6bが設けられている。接続ポート6bには排気通路66が接続され、この排気通路66は2箇所で分岐され、分岐した第1及び第2の気体導入管路66a、66bが、第1及び第2の各開閉弁67a、67bを介して、複合分子ポンプ63の圧縮比の異なる位置にそれぞれ接続されている。また、排気通路66は、ピラニ真空計等の真空計68と他の開閉弁69とを介してロータリーポンプ65に接続されている。真空計68は、各開閉弁67a、67b、69の開閉やフォアバルブ64の開閉を制御するために利用される。なお、特に図示して説明しないが、排気管路66には、リークディテクタの起動時に校正を行うための標準リークやベントバルブが接続されている。
【0033】
これらの各部品の作動等の制御は、コンピュータやシーケンサ等を備えた制御手段C1によって統括制御される。この場合、制御手段C1には、イオン電流からリーク値を算出するための算出表やリークテスト時のリークディテクタ6の制御プログラム(作動シーケンス)等が予め記憶されたROM等の記憶手段Mが付設されている。また、リーク値や質量分析管2内の圧力を表示できるように図示省略のディスプレイが設けられている。そして、上記構成のリークディテクタ6の接続ポート6bに配管7の一端が接続され、その他端が漏洩検知補助装置8の第2のポートに接続される。以下、図3を参照して漏洩検知補助装置8の構造を説明する。
【0034】
漏洩検知補助装置8は、箱体からなる本体81を有し、相互に対向する壁部には、規格品たるフランジを備えた第1及び第2の接続ポート82a、82bが外側に向けて突設されている。なお、第1及び第2の接続ポート82a、82bの位置は、これに限定されるものではなく、後述の接続管の形態やターボ分子ポンプの取付姿勢に応じて適宜選択される。以下では、チャンバ11から漏洩検知補助装置8を経てリークディテクタ6へとヘリウムガスが向かう場合において、チャンバ11側を上流側、リークディテクタ6側を下流側として説明する。
【0035】
第1及び第2の接続ポート82a、82bは、本体81の壁部において同一の高さ位置に設けられ、ストレート管たる接続管83により相互に連通されている。接続管83には移送手段たるターボ分子ポンプ84が介設され、ターボ分子ポンプ84の上流側及び下流側には第1及び第2の開閉弁85a、85bが介設されている。また、接続管83内の圧力を測定する真空計G2が設けられ、第1及び第2の開閉弁85a、85bの開閉を制御するために利用できるようになっている。そして、本体81は、第1の接続ポート82aとチャンバ11に設けたテストポート13とを直結することで取り付けられるようになっている。
【0036】
ターボ分子ポンプ84としては、第1の接続ポートでの排気速度が100L/s以下となるものが用いられる。排気速度が100L/sを超えるものでは、その重量が比較的重くなり、床面からのチャンバの高さが数mに及ぶような大型の真空処理装置では、テストポートの位置も床面から高い位置に形成されていることが多く、このような場合、一人の作業者により漏洩検知補助装置8をチャンバに取り付けることができず、作業性が損なわれる。
【0037】
また、微小なリークを確実に検知し得るために、上流側の開閉弁85aのコンダクタンスは、1L/s以上、好ましくは、10L/s、より好ましくは、移送手段たるターボ分子ポンプ84の排気速度と同等以上のコンダクタンスを有する。他方、下流側の開閉弁85bのコンダクタンスは、ターボ分子ポンプ84の背圧が限界背圧を超えないように、5L/s以上であることが好ましい。
【0038】
上記のようにターボ分子ポンプ84と、第1及び第2の開閉弁85a、85bとを構成した場合、接続管83の全長が、数十cm以下の範囲に収まる。このため、配管コンダクタンスを大きくできる。これらターボ分子ポンプ84と、第1及び第2の開閉弁85a、85bとは本体81に内蔵した制御手段C2により統括制御されるようになっている。制御手段C2は、上記制御手段Cと同様、コンピュータやシーケンサ等を備える。本実施形態では、制御手段C2は、制御手段Cに通信自在に接続され、制御手段Cからの信号を受けてターボ分子ポンプ84や第1及び第2の開閉弁85a、85bを適宜制御するようになっている。
【0039】
次に、上記漏洩検知補助装置8を用いたリークテストについて説明する。先ず、大気状態のチャンバ11のポート13と、本体81の第1の接続ポート82aとをOリング等のシール手段を介在させて直結して漏洩検知補助装置8をチャンバに取り付ける。この場合、第1及び第2の両開閉弁85a、85bは閉弁されている。また、ポート13に図示省略の開閉弁が予め装着されているような場合には、チャンバ内が既に真空雰囲気に形成されているか否かに関係なく、上記同様に取り付けできる。そして、本体81の第2の接続ポート82bに配管7の一端を接続し、その他端を、チャンバから離れた床面に設置されたリークディテクタ6の接続ポート6bに接続する。
【0040】
次に、各ターボ分子ポンプ2及びロータリーポンプ5を起動してチャンバ11を真空引きすると同時に、制御手段Cによりリークディテクタ6の起動指示を入力する。これにより、フォアバルブ64が開弁されると共に、複合分子ポンプ63とロータリーポンプ65とが起動する。このとき、その他の弁は閉弁状態であり、所定圧力に達すると先ず校正が行われ、その後、リークディテクタ6がスタンバイ状態となる。リークディテクタ6がスタンバイ状態となると、制御手段Cにより制御手段C2を介して、本体81内のターボ分子ポンプが稼働され、下流側の開閉弁85bが開弁された後、リークディテクタ6をテスト状態にして、接続管83内が所定圧力に達すると、開閉弁85aを開けばテストが開始される状態となる。
【0041】
次に、チャンバ11が所定真空度に達すると、リークテストが開始される。この場合、制御手段C2により上流側の開閉弁85aが開弁され、この状態で、真空処理装置1の外側からスプレーガン等によってヘリウムガスを吹き付けていく。このとき、真空処理装置1にリークが存すると、そのリーク箇所からヘリウムガスがチャンバ1内に吸い込まれる。なお、チャンバ11が予め真空排気されていても、上記と同様の手順でリークテストを実施することが可能である。
【0042】
本実施形態においては、チャンバ11のポート13と、本体81の第1の接続ポート82aとをOリング等のシール手段を介在させて直結することで、漏洩検知手段のターボ分子ポンプ84までの接続管83の長さは短くなって、配管コンダクタンスが大きくなる。このため、チャンバ11内に引き込まれた、微小なリーク検出が可能な量のヘリウムガスを漏洩検知補助装置8の接続管83へと導くことが可能となる。そして、ターボ分子ポンプ84により接続管83内をヘリウムガスが移送され、第2の接続ポート82bから配管7を介してリークディテクタ6へと略同量のヘリウムガスが移送される。これにより、大型の真空処理装置1であっても、リークディテクタ6により微小なリークを確実に検知し得る。
【0043】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記に限定されるものではない。上記実施形態では、チャンバ11のポート13に本体81を直結するものを例に説明したが、チャンバ11に設けた真空計等の機器のために直結できないような場合には、配管コンダクタンスが小さくならない程度の配管を介して本体81を接続してもよい。また、移送手段として、ターボ分子ポンプを例に説明したが、接続管83内を分子流領域まで排気できるものであり、かつ、重量が嵩むものでなければ、他の真空ポンプを用いることができる。さらに、第1の開閉弁85a及び第2の開閉弁85bは、手動により開閉できるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、漏洩検知対象物として真空処理装置1を例に説明したが、これに限定されるものではない。例えば、気密容器等のリークテストにも本発明の漏洩検知補助装置8を利用することができる。この場合、例えば気密容器の容積が大きく、また、気密容器が真空ポンプを有さず、リークディテクタ6の真空ポンプ63、65にて気密容器を真空排気してリークテストするような場合に、漏洩検知補助装置8を用いることで、気密容器内を所定圧力まで早期に真空排気でき、例えばリークテスト開始までの時間を短縮することができ、有利である。
【0045】
さらに、上記実施形態では、漏洩検知補助装置8として、リークディテクタ6内の真空ポンプを排圧側の真空ポンプとして利用し得るものを例に説明したが、上記限定されるものではない。図4に示すように、本体81に小型のロータリーポンプ等の他の真空ポンプ86を内蔵し、真空ポンプ86からの吸気管87aを、ターボ分子ポンプ84の排気側に開閉弁85cを介して接続してターボ分子ポンプ84を補助排気すると共に、他の吸気管87bを第1の接続ポート82aと上流側の開閉弁85aとの間で、他の開閉弁85dを介して接続管83に接続し、排気管83のうちターボ分子ポンプ84(開閉弁85a)の上流側を真空引きできるようにしてもよい。G2、G3は、電離真空計やピラニ真空計であり、開閉弁85a〜85dの開閉を制御するために利用され、圧力や開閉弁の状態は、ディスプレイDPに表示できるようになっている。
【0046】
上記構成によれば、ターボ分子ポンプの起動と独立して漏洩検知補助装置8を起動することができる。そして、チャンバ11のテストポート13に図示省略の開閉弁が設けられているような場合には、開閉弁85a〜85dを適宜開閉して、接続管83の真空雰囲気を保持したまま、テストポートから取り外し、チャンバに設けた他のテストポートに再装着して、リークテストを実施でき、有利である。
【符号の説明】
【0047】
1…真空処理装置、11…チャンバ、13…テストポート、2…ターボ分子ポンプ(高真空ポンプ)、5…ロータリーポンプ(フォアポンプ)、6…リークディテクタ、61…質量分析管、63…複合分子ポンプ(リークディテクタ用の真空ポンプ)、65…ロータリーポンプ(リークディテクタ用の真空ポンプ)、7…配管、8…漏洩検知補助装置、81…本体、82a…第1の接続ポート、82b…第2の接続ポート、83…接続管、84…ターボ分子ポンプ(移送手段)、85a〜85d…開閉弁、87a、87b…吸気管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
漏洩検知対象物と、ヘリウムガスを検知する質量分析管と真空ポンプとを有するリークディテクタとの間に介設される漏洩検知補助装置であって、
漏洩検知対象物に設けたポートに接続される第1の接続ポートと、リークディテクタに接続される第2の接続ポートとを有する本体を備え、
この本体に、第1及び第2の両接続ポート間を連通する接続管と、漏洩検知対象物から第1の接続ポートを経てこの接続管内に引き込まれたヘリウムを第2の接続ポートへと移送し得る移送手段と、を備えたことを特徴とする漏洩検知補助装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の両接続ポートは、前記本体に、外側に向けて突設され、第1の接続ポートが前記テストポートに直結されることを特徴とする。
【請求項3】
前記移送手段は、接続管に介設されたターボ分子ポンプであり、このターボ分子ポンプの上流側及び下流側に開閉弁が介設されていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の漏洩検知補助装置。
【請求項4】
前記本体に他の真空ポンプを更に備え、この他の真空ポンプからの吸気管が、ターボ分子ポンプの排気側に接続されてこのターボ分子ポンプを補助排気すると共に、この吸気管が分岐されて第1の接続ポートと上流側の開閉弁との間で接続管に接続されていることを特徴とする請求項3記載の漏洩検知補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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