説明

演奏支援装置

【課題】演奏に応じて動作する部材の状態の変化を目視によらずに演奏者に伝える。
【解決手段】ダンパペダル110がハーフペダルの開始位置まで踏まれていない時にはダンパペダル110の操作部分の位置の変化に応じてペダルソレノイド23を駆動してダンパペダル110の操作をアシストし、ハーフペダルの開始位置又はハーフペダルの開始位置を超えた位置まで踏まれた時にはペダルソレノイド23を駆動せずダンパペダル110の操作をアシストしない。ダンパペダル110をハーフペダルの開始位置まで踏み込むまではペダルソレノイド23によるアシストがあるものの、演奏者がダンパペダル110をハーフペダルの開始位置まで踏み込むと、演奏者は自分の力のみでダンパペダル110を操作することとなり、演奏者はダンパペダル110を踏んでいる感触の変化を感じ、ハーフペダルの開始位置を知ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、演奏を支援する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
ピアノのダンパペダルを踏んだ時にハーフペダルの状態にあるか否かを示す装置として特許文献1に開示された踏込量表示装置がある。この踏込量表示装置は、ダンパペダルの踏み込み量をセンサで検知し、センサで検知した踏み込み量に応じて指針を駆動する。指針の背後にはハーフペダルの状態の開始位置と終了位置とを示す表示があり、ダンパペダルがハーフペダルの状態にあると、この開始位置と終了位置との間に指針が位置する。この踏込量表示装置によれば、演奏者はハーフペダルの状態とそうでない状態とを目視で容易に知ることができるので、ダンパペダルの踏み込み量を調整して多彩な演奏を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−259148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示された踏込量表示装置を用いる場合、ハーフペダルの状態か否かを演奏者は目で見て確認することとなる。しかしながら、このように目で見て確認するとなると、ダンパペダルの使用時には踏込量表示装置を注視して演奏が疎かになるおそれがある。
【0005】
本発明は、上述した背景の下になされたものであり、演奏に応じて動作する部材の状態の変化を目視によらずに演奏者に伝える技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために本発明は、演奏者によって操作される演奏部材を駆動する駆動手段と、演奏者によって操作された前記演奏部材の操作量を検出する検出手段と、前記演奏部材が操作されて当該演奏部材を備える楽器が予め定められた所定状態にあるか否かを前記検出手段によって検出された操作量を基に判断し、前記楽器が所定状態にある場合と前記楽器が所定状態にない場合とで前記駆動手段の駆動と非駆動とを切り換える制御手段とを有する演奏支援装置を提供する。
【0007】
本発明においては、前記演奏部材はピアノのダンパペダルであり、前記所定状態はハーフペダルの状態である構成としてもよい。
また、本発明においては、前記制御手段は、前記ダンパペダルの操作量がハーフペダルの開始時の操作量から所定範囲内にあるときと、前記ダンパペダルの操作量がハーフペダルの終了時の操作量から所定範囲内にあるときに前記ダンパペダルが予め定められた所定状態にあると判断する構成であってもよい。
また、本発明においては、前記演奏部材はピアノのシフトペダルであり、前記所定状態は、ピアノの鍵盤が前記シフトペダルが操作されていない初期位置から移動した状態である構成であってもよい。
また、本発明においては、前記演奏部材はピアノの鍵であり、前記所定状態は、前記鍵に対応したハンマーの位置がレットオフの位置に到達するまでの状態である構成であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、演奏に応じて動作する部材の状態の変化を目視によらずに演奏者に伝えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動演奏ピアノ100の外観図である。
【図2】自動演奏ピアノ100のアクション機構およびダンパ機構の側面図と、機能および電気的構成を示した図である。
【図3】自動演奏ピアノ100においてソレノイドを制御するハードウェアの構成を示したブロック図である。
【図4】モーションコントローラ140bの構成を示したブロック図である。
【図5】ダンパペダル110の操作部の位置とペダルソレノイド23のプランジャの操作量の関係を示した図である。
【図6】操作量テーブルの一例を示した図である。
【図7】演奏者がペダルを操作する力をペダル110の操作量U−ufに換算した図。
【図8】本発明の変形例におけるダンパペダル110の操作部の位置とペダルソレノイド23のプランジャの操作量の関係を示した図である。
【図9】本発明の変形例において演奏者がペダルを操作する力をペダル110の操作量U−ufに換算した図。
【図10】本発明の変形例におけるダンパペダル110の操作部の位置と、ダンパペダル110の操作部の位置の目標値との関係を示した図である。
【図11】本発明の変形例におけるダンパペダル110の操作部の位置とペダルソレノイド23のプランジャの操作量の関係を示した図である。
【図12】本発明の変形例において演奏者がペダルを操作する力をペダル110の操作量U−ufに換算した図。
【図13】本発明の変形例におけるダンパペダル110の操作部の位置とペダルソレノイド23のプランジャの操作量の関係を示した図である。
【図14】本発明の変形例に係る操作量テーブルの一例を示した図である。
【図15】本発明の変形例に係るモーションコントローラ140bの構成を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る自動演奏ピアノ100の外観図である。自動演奏ピアノ100は、複数の鍵1と、ダンパペダル110、ソステヌートペダル111、ソフトペダル112を備えている。また、自動演奏ピアノ100は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式の演奏データを記録したDVD(Digital Versatile Disk)やCD(Compact Disk)などの記録媒体から演奏データを読み出すディスクドライブ120を備えており、譜面台の横には、自動演奏ピアノ100を操作するための各種メニュー画面などの表示手段である液晶ディスプレイと、操作者からの指示を受け付ける受付手段として機能するタッチパネルとを備えた操作パネル130を備えている。
【0011】
次に図2は、自動演奏ピアノ100の主要部の機械的構成と機能および電気的構成を示した図であり、鍵1に対応して設けられたハンマーアクション機構3、鍵1を駆動するソレノイド5、鍵センサ26、ダンパペダル110、ダンパペダル110の運動をダンパ6に伝達するダンパ機構9、ダンパペダル110を駆動するペダルソレノイド23、ダンパペダル110の位置を検出するペダル位置センサ24などを側面から見た図である。なお、図2において鍵1はハンマーアクション機構3に近い部分と演奏者により押下される部分のみを図示し、それ以外の部分の図示を省略している。また、図2においては、右側が演奏者側、左側が演奏者から見て奥側となる。また、鍵1は図2において紙面の表裏方向にわたって88個並設されており、ハンマーアクション機構3及び鍵センサ26も鍵1に対応して88個並設されている。
【0012】
図2に示したように、鍵1はピンPにより揺動自在に支持されており、演奏者によって押下される。ハンマー2を備えたハンマーアクション機構3は、鍵に対応して張られている弦4を打撃する機構であり、演奏者により鍵1が押下されるとハンマー2が鍵1の動きに対応して弦4を打撃する。ソレノイド5は、鍵1を駆動する駆動手段であり、ソレノイド5を駆動する信号が供給されるとプランジャが変位する。プランジャが変位して鍵1を押し上げると、ハンマー2が鍵1の動きに対応して弦4を打撃する。また、鍵センサ26は、各鍵1の前端側(図の右側)の下方にそれぞれ配置されており、鍵1の位置や速度などの運動状態を検出し、検出した運動状態を示す信号を出力する。
【0013】
ダンパペダル110は、回転軸110aにより支持されており、この回転軸を中心にして回転する(以下、図2において回転軸110aよりも右側をダンパペダル110の前端側、左側をダンパペダル110の後端側という)。また、ペダルレバー110cと棚板11との間には、弾性体であるペダルレバースプリング12が取り付けられており、ダンパペダル110の前端側は、このペダルレバースプリング12とダンパ機構9により最終的に上方に押し上げられている。一方、ダンパペダル110の後端側には突上棒110bが連結されており、これにペダルソレノイド23と、ペダル位置センサ24とが設けられている。ペダル位置センサ24は、ダンパペダル110において演奏者により操作される操作部分の上下方向の位置を突上棒110bの上下方向の位置を基にして検出し、検出した位置を表す信号を出力するものである。ペダル位置センサ24は、ダンパペダル110が演奏者により操作されていない場合、即ち、ダンパペダルが所謂レストポジションにある場合には上下方向の位置を示す値として「0」を表す信号を出力する。なお、ペダル位置センサ24が出力する信号は、ダンパペダル110の操作部分が演奏者に踏まれて下がるにつれて位置値の値が大きくなる。つまり、ダンパペダル110の操作量に応じて位置値が変化する。
【0014】
ダンパ機構9は、ダンパペダル110の運動をダンパ6に伝達するものである。演奏者が、ペダルレバースプリング12とダンパ機構9の付勢力に抗してダンパペダル110を踏み下げると、ダンパペダル110が回転軸110aを中心にして回転して突上棒110bが上昇する。この突上棒110bの運動はダンパ機構9を介してダンパ6に伝えられ、ダンパ6は弦4から離れる。演奏者がダンパペダル110から足を離すと、ペダルレバースプリング12とダンパ機構9の力によりダンパペダル110は所定位置に復帰し、ダンパ6が弦4を押さえつける。
また、ペダルソレノイド23は、ダンパ6を駆動するためのソレノイドであり、ペダルソレノイド23を駆動する信号が供給されると信号に応じてプランジャが変位する。プランジャが変位してダンパ機構9を動かすとダンパ機構9の動きに対応してダンパ6が移動する。
【0015】
また、図2に示したように、自動演奏ピアノ100は、コントローラ10と、ソフトウェアによって実現されるモーションコントローラ140a,140bを備えている。
【0016】
図3は、ソレノイドを制御するコントローラ10の構成を示したブロック図である。図3に示したように、自動演奏ピアノ100は、バス101に接続されているCPU102、ROM103、RAM104、ディスクドライブ120、操作パネル130、電子音発生部150を備えており、これらはバス101を介して各種データを授受する。
電子音発生部150は、音源回路とスピーカを備えており、音源回路はバス101から供給された信号に応じて楽音の信号を生成し、生成した信号をスピーカへ供給してスピーカから楽音を出力する。
CPU102は、RAM(Random Access Memory)104を作業領域としてROM(Read Only Memory)103に記憶された制御プログラムを実行する。ROM103に記憶された制御プログラムが実行されると、ディスクドライブ120から読み出した演奏データに従ってソレノイド5を駆動して自動演奏を行う自動演奏機能が自動演奏ピアノ100において実現する。なお、CPU102は、自動演奏を行う際には、MIDI形式の演奏データに基づいて、鍵1をどのタイミングで動作させるかを算出し、時間経過に対応した鍵1の軌道を表す軌道データを生成する。そして、この軌道データに基づいて、駆動する鍵1を表す鍵番号と、駆動する鍵1の位置を表す位置指示値および駆動する鍵1の速度を表す速度指示値とを後述するモーションコントローラ140aへ出力する。
【0017】
また、制御プログラムが実行されると、後述するモーションコントローラ140bへデータを出力し、演奏者によるダンパペダル110の操作をアシストし、ハーフペダルの開始位置を演奏者に伝える演奏支援機能が実現する。
ここで、CPU102がモーションコントローラ140bへ出力するデータについて説明する。まず、自動演奏ピアノ100の動作モードには、「アシストモード」と「非アシストモード」とがある。「非アシストモード」は、ソレノイドを駆動せず演奏者の演奏を支援しないモードであり、「アシストモード」は、ソレノイドを駆動して演奏者の演奏を支援するモードである。演奏者が操作パネル130を操作して「非アシストモード」を選択する操作を行うと、CPU102は、動作モードを示すアシストモードフラグの値を「0」に設定し、アシストモードフラグをRAM104に記憶させると共にアシストモードフラグをモーションコントローラ140bへ出力する。また、演奏者が操作パネル130を操作して「アシストモード」を選択する操作を行うと、CPU102は、動作モードを示すアシストモードフラグの値を「1」に設定し、アシストモードフラグをRAM104に記憶させると共にアシストモードフラグをモーションコントローラ140bへ出力する。
【0018】
モーションコントローラ140aは、CPU102が制御プログラムを実行することにより実現する機能ブロックであって、鍵1の動きを制御するものであり、ソレノイド5に接続されたPWM信号発生部142へ信号を出力し、鍵センサ26に接続されたA/D変換部141から信号を受け取る。モーションコントローラ140aは、駆動する鍵1を表す鍵番号と、位置指示値および速度指示値とを受け取ると、この位置指示値と速度指示値とに応じた駆動信号をPWM信号発生部142へ出力する。
PWM信号発生部142は、駆動信号をパルス幅変調(Pulse Width Modulation)方式の信号に変換し、変換後の信号を鍵番号で特定される鍵1に対応したソレノイド5へ出力する。PWM信号発生部142から出力された信号をソレノイド5が受け取ると、ソレノイド5は駆動信号に応じてプランジャを変位させる。
また、A/D変換部141は、鍵センサ26から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をモーションコントローラ140aへ出力する。モーションコントローラ140aは、A/D変換部141から供給される信号が表す鍵1の位置及び速度と、供給される位置指示値及び速度指示値とを比較し、両者が一致するようにサーボ制御を行う。これにより、位置指示値と速度指示値のとおりに鍵1が駆動されることになる。
【0019】
次にモーションコントローラ140bは、CPU102が制御プログラムを実行することにより実現する機能ブロックであって、ダンパペダル110の動きを制御するものであり、ペダルソレノイド23に接続されたPWM信号発生部142へ信号を出力し、ペダル位置センサ24に接続されたA/D変換部141から信号を受け取る。
PWM信号発生部142は、モーションコントローラ140bから出力される制御信号をパルス幅変調方式の駆動信号に変換し、変換後の駆動信号uiをペダルソレノイド23へ出力する。
A/D変換部141は、ペダル位置センサ24から出力されたアナログ信号yaをデジタル信号に変換し、変換後のデジタル信号をモーションコントローラ140bへ出力する。
【0020】
図4は、モーションコントローラ140bの構成の一例を示したブロック図である。正規化部154は、A/D変換部141から供給されるダンパペダル110の位置を表すデジタルデータを正規化して位置生成部155へ供給する。位置生成部155は、正規化部154から供給されるデータからダンパペダル110の操作部分の位置を示す位置値yxを生成してペダル軌道目標値制御部150へ出力する。減算器151は、入力される2つの値の一方から他方の値を減算するものであり、減算結果を出力する。増幅部152は、減算器151から出力された値を予め定められた増幅率Kxで増幅するものであり、増幅後の値を出力する。加算器153は、入力される2つの値を加算するものであり、加算結果uを出力する。
【0021】
また、ペダル軌道目標値制御部150は、ペダルソレノイド23のプランジャの操作量を制御するものである。ペダル軌道目標値制御部150は、アシストモードフラグの値が「1」である場合、ダンパペダル110の操作部分の位置を表す位置値yxがハーフペダルの位置を表す位置値に達していないと、演奏者がダンパペダル110を踏むのをアシストするためにペダルソレノイド23を駆動するデータを出力し、位置値yxがハーフペダルの位置値またはハーフペダルの位置を超えた位置値であるとペダルソレノイド23の駆動を停止するデータを出力する。一方、アシストモードフラグの値が「0」である場合、ダンパペダル110の操作部分の位置を表す位置値yxに関係なく、ペダルソレノイド23の駆動を停止するデータを出力する。
【0022】
具体的には、ペダル軌道目標値制御部150は、演奏者がダンパペダル110を踏むのをアシストするために、図5に実線で示した操作量曲線L1に従ってペダルソレノイド23を駆動するデータを出力する。ここで、操作量曲線L1は、ダンパペダル110の位置値yxとペダルソレノイド23のプランジャの操作量ufとの関係を表したものである。ペダル軌道目標値制御部150は、操作量曲線L1におけるペダルソレノイド23の操作量ufとの関係を格納した操作量テーブル(図6)を記憶している。なお、本実施形態の操作量テーブルは、図6に示したようにハーフペダルの開始位置である位置値(XH)より小さい位置値については位置値に対応した操作量が格納されており、位置値が0からyx1,yx2,yx3,・・・、と大きくなるにつれ操作量も0からuf1,uf2,uf3,・・・と大きくなっている。また、ハーフペダルの開始位置である位置値(XH)とXHより大きな位置値については操作量として「0」が格納されている。ペダル軌道目標値制御部150は、位置生成部155から出力された位置値yxに対応した操作量ufを操作量テーブルから読み出し、読み出した操作量ufを出力する。
【0023】
なお、図5において点線で示されている曲線L2は、ダンパペダル110をペダルソレノイド23のみで駆動した時のプランジャの操作量とダンパペダル110の位置の関係を表した曲線である。操作量曲線L1は、この曲線L2より下に位置するように作成されているため、ダンパペダル110を踏んだ時のペダルソレノイド23の操作量は、ペダルソレノイド23のみでダンパペダル110を駆動する時の操作量より小さいものとなる。
【0024】
(実施形態の動作)
次に、自動演奏ピアノ100が演奏支援を行う際の動作を説明する。なお、以下の説明においては、まず自動演奏ピアノ100が非アシストモードである時の動作について説明し、次に自動演奏ピアノ100がアシストモードである時の動作について説明する。
【0025】
(非アシストモード時の動作)
まず、演奏者が操作パネル130を操作して「非アシストモード」を選択する操作を行うと、CPU102は、動作モードを示すアシストモードフラグの値を「0」に設定し、アシストモードフラグをRAM104に記憶させると共にアシストモードフラグをモーションコントローラ140bへ出力する。
【0026】
このアシストモードフラグがペダル軌道目標値制御部150で受け取られると、ペダル軌道目標値制御部150は、ペダルソレノイド23のプランジャの操作量が「0」となるように動作する。
具体的には、たとえば演奏者がダンパペダル110の操作部分を図5のyx3の位置まで踏み込むと、このyx3という位置を表す信号がペダル位置センサ24から出力され、位置生成部155からダンパペダル110の位置を示す位置値yx(ここで値はyx3)が出力される。
ペダル軌道目標値制御部150は、値が「0」であるアシストモードフラグがモーションコントローラ140bで受け取られていると、ダンパペダル110の目標とする位置を表す目標値rxを、位置生成部155から受け取った位置値yxと同じ値にして減算器151へ出力する。ここで、減算器151においては目標値rxから位置値yxが減算されるが、目標値rxと位置値yxは同じ値(ここではyx3)であるため、減算器151の出力する値は「0」となり、増幅部152から出力される値を増幅した差分増幅値uxも値が「0」となる。
【0027】
また、ペダル軌道目標値制御部150は、アシストモードフラグの値が「0」であると、操作量ufの値を「0」として加算器153へ出力する。ここで、加算器153においては、増幅部152から出力された差分増幅値uxと操作量ufとが加算される。差分増幅値uxと操作量ufはいずれも値が「0」であるため、加算結果の加算値uは「0」となる。そして、加算器153から加算値uを表す制御信号がPWM信号発生部142へ出力されると、加算値uの値が「0」であるため、PWM信号発生部142からはペダルソレノイド23のプランジャの操作量を「0」とする駆動信号がペダルソレノイド23へ出力される。
【0028】
ペダルソレノイド23がこの駆動信号を受け取ると、プランジャの操作量が「0」となっているため、ペダルソレノイド23は駆動されず、プランジャが変位しようとしない。つまり、非アシストモードにおいてはプランジャが変位しようとしないようにペダルソレノイド23が制御されるため、ペダルソレノイド23によるアシストがなく演奏者は自分の力のみでダンパペダル110を操作することとなる。
【0029】
(アシストモード時の動作)
次に、自動演奏ピアノ100がアシストモードである時の動作について説明する。
まず、演奏者が操作パネル130を操作して「アシストモード」を選択する操作を行うと、CPU102は、動作モードを示すアシストモードフラグの値を「1」に設定し、アシストモードフラグをRAM104に記憶させると共にアシストモードフラグをモーションコントローラ140bへ出力する。
【0030】
この値を「1」としたアシストモードフラグがペダル軌道目標値制御部150で受け取られると、ペダル軌道目標値制御部150は、演奏者によるダンパペダル110の操作をアシストし、ハーフペダルの開始位置を演奏者に伝えるようにペダルソレノイド23のプランジャの操作量を設定する。
具体的には、まず、演奏者がダンパペダル110を踏み始めてハーフペダルの位置XHより浅いyx3の位置まで踏み込むと、このyx3という位置を表す信号がペダル位置センサ24から出力され、位置生成部155からダンパペダル110の位置を示す位置値yx(ここで値はyx3)が出力される。
ペダル軌道目標値制御部150は、値が「1」であるアシストモードフラグを受け取っていると、ダンパペダル110の目標とする位置を表す目標値rxを、位置生成部155から受け取った位置値yxと同じ値にして減算器151へ出力する。ここで、減算器151においては、目標値rxから位置値yxが減算されるが、目標値rxと位置値yxは同じ値であるため、減算器151の出力する値は「0」となり、増幅部152から出力される値を増幅した差分増幅値uxも値が「0」となる。
【0031】
また、ペダル軌道目標値制御部150は、アシストモードフラグの値が「1」であると、位置値yxに対応する操作量ufを操作量テーブルから読み出す。ここで、位置値がyx3であると図6に示したようにyx3という値に対応する操作量はuf3であるため、ペダル軌道目標値制御部150は操作量ufの値を「uf3」として加算器153へ出力する。加算器153においては、増幅部152の出力した差分増幅値uxと操作量ufとが加算される。差分増幅値uxの値は「0」であり、操作量ufの値は「uf3」であるため、加算値uは「uf3」となる。
【0032】
そして、加算器153からこの加算値u(ここでは値がuf3)を表す制御信号がPWM信号発生部142へ出力されると、PWM信号発生部142からはプランジャの操作量を「uf3」とする駆動信号がペダルソレノイド23へ出力される。ペダルソレノイド23がこの駆動信号を受け取ると、操作量が「uf3」となっているため、ペダルソレノイド23は、この操作量の駆動力を発生する。
このように、アシストモードである時にハーフペダルの開始位置である位置XHより浅い位置までダンパペダル110が演奏者により踏まれると、演奏者がダンパペダル110を踏むのをアシストするようにペダルソレノイド23が駆動力を発生するため、演奏者はハーフペダルの開始位置まではアシストが無い場合と比較してダンパペダル110の操作を軽く感じることとなる。
【0033】
次に、演奏者がダンパペダル110をさらに踏み込み、ハーフペダルの開始位置である位置XHの位置まで踏み込むと、このXHという位置を表す信号がペダル位置センサ24から出力され、位置生成部155からダンパペダル110の位置を示す位置値yx(ここでは値がXH)が出力される。するとペダル軌道目標値制御部150は、目標値rxを位置生成部155から受け取った位置値yxと同じ値にして減算器151へ出力する。減算器151においては、目標値rxと位置値yxは同じ値であるため、減算器151の出力する値は「0」となり、増幅部152から出力される値を増幅した差分増幅値uxも値が「0」となる。
【0034】
また、ペダル軌道目標値制御部150は、位置値yxに対応する操作量ufを操作量テーブルから読み出す。ここで、位置値がXHであると図6に示したようにXHという値に対応する操作量は「0」となっているため、ペダル軌道目標値制御部150は操作量ufの値を「0」として加算器153へ出力する。加算器153においては、増幅部152の出力した差分増幅値uxと操作量ufとが加算される。差分増幅値uxは「0」であり、操作量ufも「0」であるため、加算値uは「0」となる。
【0035】
そして、加算器153から加算値u(ここでは値が「0」)を表す制御信号がPWM信号発生部142へ出力されると、加算値uの値が「0」であるため、PWM信号発生部142からはプランジャの操作量を「0」とする駆動信号がペダルソレノイド23へ出力される。
【0036】
ペダルソレノイド23がこの駆動信号を受け取ると、操作量が「0」となっているため、ペプランジャが変位しようとしない。つまり、演奏者がダンパペダル110をハーフペダルの開始位置まで踏み込むと、プランジャが変位しようとしないようにペダルソレノイド23が制御されるため、演奏者は自分の力のみでダンパペダル110を操作することとなる。そしてペダルソレノイド23によるアシストがなくなるため、演奏者はダンパペダル110を踏んでいる感触の変化を感じ、ハーフペダルの開始位置を知ることができる。
また、演奏者がダンパペダル110をハーフペダルの開始位置よりさらに踏み込んだ場合においては、操作量テーブルにおいては、この位置に対応する操作量として「0」が格納されているため、ペダルソレノイド23は駆動されず、演奏者は自分の力のみでダンパペダル110を操作することとなる。
【0037】
ここで、図7は、横軸をダンパペダル110の位置値yxとし、縦軸を、演奏者がペダルを操作する力をペダル110の操作量U−ufに換算したものである。図7に示したように、演奏者は、ハーフペダルの開始位置までは、ペダルソレノイド23のアシストを受けない場合と比較して少ない力でダンパペダル110を操作できる。また、図7に示したように、演奏者は、ハーフペダルの開始位置以降は、ペダルソレノイド23のアシストを受けず、自身の力でダンパペダル110を操作する。
【0038】
このように本実施形態においては、演奏者がダンパペダル110をハーフペダルの開始位置まで踏み込むと、ペダルソレノイド23によるアシストがなくなるため、演奏者はダンパペダル110を踏んでいる感触の変化を体で感覚として直に感じ、ハーフペダルの開始位置の把握が容易である。
また、特許文献1に開示された発明と比較して、指針を見ることを必要としないため、演奏に集中できる。
また、体で感触の変化を感じるため、アコースティックピアノにおいて音を聞きながらハーフペダルの開始位置を知る場合と比較して、ハーフペダルの開始位置の把握が容易である。
また、ハーフペダルの開始位置の把握が容易となるため、ハーフペダルの開始位置の学習に奇与し、演奏能力の向上に寄与する。
また、本実施形態では、モーションコントローラ140bは制御プログラムによって実現する機能であるため、従来の自動演奏ピアノに対してハードウェアや機構を追加することなく、ソフトウェアの更新だけでハーフペダルの開始位置の把握を行えるようになる。
【0039】
なお、実際のハーフペダルの開始位置と、ペダルソレノイド23によるアシストがなくなる位置とに差がある場合、ペダルの感触の変化と、音の変化とにより差を容易に認識でき、感触の変化に合わせてダンパ機構9を調整することもできる。
【0040】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。例えば、上述の実施形態を以下のように変形して本発明を実施してもよい。
【0041】
(変形例1)
上述した実施形態においては、操作量テーブルを用いてプランジャの操作量ufを設定しているが、プランジャの操作量ufを設定する構成は上述した実施形態の構成に限定されるものではなく、たとえば以下のようにプランジャの操作量ufを設定してもよい。
具体的には、まず、ペダル軌道目標値制御部150は操作量テーブルに替えて、ハーフペダルの開始位置までダンパペダル110をペダルソレノイド23のみで駆動した時のプランジャの操作量ufH(図8参照)を記憶すると共に、ダンパペダル110の初期位置の位置値XR、ハーフペダルの開始位置の位置値XHおよびダンパペダル110を最も深く踏み込んだ時の位置の位置値XEを記憶する。
そして、ペダル軌道目標値制御部150は、アシストモードである時に受け取った位置値yxが位置値XH未満である場合には、以下の式(1)を用いて操作量ufを算出する。
uf=ufH*(yx−XR)/(XH−XR)・・・(1)
また、位置値yxの値が位置値XHと同じまたは位置値XHより大きな値である場合には、操作量ufの値を「0」に設定する。なお、この式に従って操作量を設定すると、ダンパペダル110の位置値yxとペダルソレノイド23のプランジャの操作量ufとの関係は図8に示した操作量曲線L3のようになる。この構成によれば、操作量テーブルを記憶する必要がなく簡易な構成となる。
また、図9は、この構成において、横軸をダンパペダル110の位置値yxとし、縦軸を、演奏者がペダルを操作する力をペダル110の操作量U−ufに換算したものである。図9に示したように、演奏者は、ハーフペダルの開始位置までは、ペダルソレノイド23のアシストを受けない場合と比較して少ない力でダンパペダル110を操作でき、特にハーフペダルの開始位置近くまで踏み込むと、力をほとんど掛けることなくダンパペダル110を操作できる。また、図9に示したように、演奏者は、ハーフペダルの開始位置以降は、ペダルソレノイド23のアシストを受けず、自身の力でダンパペダル110を操作する。
【0042】
(変形例2)
また、本発明においては以下のようにしてプランジャの操作量を設定してもよい。
まず、増幅部152における増幅率をKxとする。また、ペダル軌道目標値制御部150は、ハーフペダルの開始位置までダンパペダル110をペダルソレノイド23のみで駆動した時のプランジャの操作量ufH、ダンパペダル110の初期位置の位置値XR、位置値XRでの予め定められた操作量ufR、ハーフペダルの開始位置の位置値XHを記憶し、定数AKと定数BKとを以下の式で求める。
AK=(ufH−ufR)/(XH−XR)/Kx・・・(2)
BK=ufH/Kx・・・(3)
また、ペダル軌道目標値制御部150は、ダンパペダル110の目標とする位置を表す目標値rxを以下の式で求める。
rx=AK*yx+BK+yx・・・(4)
そして、ペダル軌道目標値制御部150は、アシストモードである時に受け取った位置値yxが位置値XH未満である場合には、(4)の式で目標値rxを求め、求めた値を減算器151へ出力すると共に操作量ufの値を「0」とする。
また、位置値yxの値が位置値XHと同じまたは位置値XHより大きな値である場合には、ペダル軌道目標値制御部150は目標値rxの値を位置値yxと同じとすると共に、操作量ufの値を「0」とする。
【0043】
ここで、図10において実線で示した曲線L4は、この構成における位置値yxと目標値rxとの関係を表したものである。また、図10,11において点線で示されている曲線L5は、ダンパペダル110をペダルソレノイド23のみで駆動した時のプランジャの操作量uとダンパペダル110の位置の関係を表した曲線であり、図11において実線で示されている曲線L6は本態様における位置値yxとプランジャの操作量u(加算器153の出力)との関係を示したものである。この構成によれば、図10に示したようにペダル軌道目標値制御部150は、位置値yxの値がハーフペダルの開始位置の値であるXH未満である場合には、位置値yxよりダンパペダル110を踏み込んだ時の位置を目標としてペダルソレノイド23を制御する。
【0044】
なお、図12は、この構成において、横軸をダンパペダル110の位置値yxとし、縦軸を、演奏者がペダルを操作する力をペダル110の操作量U−ufに換算したものである。図12に示したように、この構成においても演奏者は、ハーフペダルの開始位置までは、ペダルソレノイド23のアシストを受けない場合と比較して少ない力でダンパペダル110を操作でき、途中からは力をほとんど掛けることなくダンパペダル110を操作できる。また、図12に示したように、演奏者は、ハーフペダルの開始位置以降は、ペダルソレノイド23のアシストを受けず、自身の力でダンパペダル110を操作する。
【0045】
(変形例3)
上述した実施形態においては、ダンパペダル110がハーフペダルの開始位置まで踏まれていない時にはペダルソレノイド23を駆動し、ハーフペダルの開始位置またはハーフペダルの開始位置を超えた位置まで踏まれた時にはペダルソレノイド23を駆動しないようにしているが、たとえば、ダンパペダル110がハーフペダルの領域にある場合にはペダルソレノイド23を駆動し、ハーフペダルの領域外にある場合にはペダルソレノイド23を駆動しないようにしてもよい。
具体的には、ペダル軌道目標値制御部150は、図13に実線で示した操作量曲線L7に従ってペダルソレノイド23を駆動するデータを出力する。操作量曲線L7は、本変形例におけるダンパペダル110の位置値yxとペダルソレノイド23のプランジャの操作量ufとの関係を表したものである。ペダル軌道目標値制御部150は、操作量曲線L7におけるペダルソレノイド23の操作量ufとの関係を格納した操作量テーブルを記憶しており、位置生成部155から出力された位置値yxに対応した操作量ufを操作量テーブルから読み出し、読み出した操作量ufを出力する。なお、図13において点線で示されている曲線L2は、ダンパペダル110をペダルソレノイド23のみで駆動した時のプランジャの操作量とダンパペダル110の位置の関係を表した曲線である。
【0046】
なお、この変形例の操作量テーブルは、図14に示したようにハーフペダルの開始位置である位置値(XH)より小さい位置値については位置値に対応した操作量として「0」が格納されている。また、ハーフペダルの開始位置XH1からハーフペダルの終了位置XH2までの間においては、位置値がXH1,yx11,yx12,yx13,・・・、と大きくなるにつれ操作量もUF1,uf11,uf12,uf13,・・・と大きくなっている。また、ハーフペダルの終了位置である位置値(XH2)を超えた位置の位置値については操作量として「0」が格納されている。
【0047】
ペダル軌道目標値制御部150が図14に示した操作量テーブルを用いて操作量ufを設定すると、演奏者がダンパペダル110を踏んだ時に位置生成部155から出力された位置値yxの値がハーフペダルの開始位置XH1の値未満であると、操作量ufが「0」に設定されるため、演奏者は自分の力のみでダンパペダル110を操作することとなる。
そして、演奏者がダンパペダル110を踏み込み、位置生成部155から出力された位置値yxの値がハーフペダルの開始位置XH1の値以上で且つハーフペダルの終了位置XH2以下であると、操作量ufが操作量テーブルに従って設定され、演奏者がダンパペダル110を踏むのをアシストするようにダンパペダル110のプランジャが変位するため、演奏者はハーフペダルの開始位置から終了位置の間ではダンパペダル110の操作を軽く感じ、ハーフペダルの領域を容易に知ることができる。
また、演奏者がダンパペダル110を踏み込み、位置生成部155から出力された位置値yxの値がハーフペダルの終了位置を超えると、再び操作量ufが「0」に設定されるため、演奏者は自分の力のみでダンパペダル110を操作することとなり、ハーフペダルの領域の終了を容易に知ることができる。
【0048】
(変形例4)
また、ダンパペダル110がハーフペダルの領域にある時にペダルソレノイド23を駆動する場合、以下のようにして操作量ufを求めるようにしてもよい。
具体的には、ペダル軌道目標値制御部150は、ハーフペダルの開始位置をXH1、ペダルソレノイド23のみで位置値yxをXH1とするのに必要な操作量をUH1、ハーフペダルの終了位置をXH2、ペダルソレノイド23のみで位置値yxをXH2とするのに必要な操作量をUH2、係数Suを記憶する。なお、係数Suは1より小さな値である。
そして、ペダル軌道目標値制御部150は、アシストモードである時に受け取った位置値yxがXH1以上であり且つXH2以下である場合には、以下の式(5)を用いて操作量ufを算出する。

uf=((UH2−UH1)*(yx−XH1)/(XH2−XH1)+UH)*Su・・・(5)
また、ペダル軌道目標値制御部150は、位置値yxの値がXH1未満またはXH2を超えた値である場合には、操作量ufの値を「0」に設定する。この態様においても、操作量テーブルを記憶する必要がなく簡易な構成となる。
【0049】
(変形例5)
本発明においては、ダンパペダル110の踏み込み速度を用いてペダルソレノイド23の駆動を制御するようにしてもよい。具体的には、モーションコントローラ140bの構成を図15に示した構成とする。なお、図15において上述した実施形態と同じ構成については図4と同じ符号を付している。減算器158は、入力される2つの値の一方から他方の値を減算するものであり、減算結果を出力する。増幅部156は、減算器158から出力された値を予め定められた増幅率Kvで増幅するものであり、増幅後の値を出力する。速度生成部157は、正規化部154から供給されるデータからダンパペダル110の操作部の位置の時間的変化を解析してダンパペダル110の操作部の移動速度を算出し、算出した速度を示す速度値yvをペダル軌道目標値制御部150へ出力する。また、ペダル軌道目標値制御部150は、ダンパペダル110の目標とする速度を表す目標値rvを出力する。
【0050】
この態様においては、増幅部152の出力は減算器151の出力結果、即ち、(rx−yx)に対して増幅率Kxを乗じたものとなり、増幅部156の出力は、減算器158の出力結果、即ち、(rv−yv)に対して増幅率Kvを乗じたものとなる。そして、加算器153においては、増幅部152の出力結果と増幅部156の出力結果が加算されるため、加算値uは以下の式(6)となる。
u=ux+uv=Kx*(rx−yx)+Kv*(rv−yv)・・・(6)
ここで、rx=yx、rv=yvとペダル軌道目標値制御部150が設定すると加算値uは値が「0」となるので、ダンパペダル110の操作をアシストしない場合にはrx=yx、rv=yvとする。
【0051】
なお、この態様においては、ダンパペダル110の操作をアシストする場合には常にrv=0と設定してもよい。この場合、増幅部156の出力が負の値となり、ダンパペダル110の踏み込み速度が速いほど加算値uの値が小さくなる。即ち、踏み込み速度が速いほどプランジャの操作量が小さくなり、演奏者が感じる負荷は大きくなる。また、この態様においては、ダンパペダル110の操作をアシストする場合には常にrvを固定の速度Yvと設定してもよい。
【0052】
(変形例6)
上述した変形例においては、ダンパペダル110がハーフペダルの開始位置から終了位置の間にある時にペダルソレノイド23を駆動するようにしているが、ハーフペダルの開始位置から終了位置の間にある時にペダルソレノイド23を駆動しないようにし、ハーフペダルの開始位置から終了位置の間にない時にはペダルソレノイド23を駆動するようにしてもよい。この態様においても、ダンパペダル110の位置がハーフペダルの開始位置から終了位置の間にある時とそれ以外の時とではダンパペダル110を踏む感触が異なるため、ハーフペダルの領域を演奏者に知らせることができる。
また、ハーフペダルの開始位置まではペダルソレノイド23を駆動せずに演奏者の操作のみでダンパペダル110を動かすようにし、ハーフペダルの開始位置以降は、ペダルソレノイド23を駆動して演奏者の操作をアシストするようにしてもよい。
また、ハーフペダルの開始位置を含む所定領域内とハーフペダルの終了位置を含む所定領域内にダンパペダル110の操作部がある場合にのみペダルソレノイド23を駆動して演奏者の操作をアシストするようにしてもよい。この態様によれば、ハーフペダルの開始位置と終了位置とを演奏者はダンパペダル110を踏んだ時の感触の違いで知ることができる。
【0053】
(変形例7)
上述した実施形態においては、モーションコントローラ140a,140bはCPU102が実行する制御プログラムにより実現されているが、モーションコントローラ140a,140bの機能がハードウェアによってCPU102で実現されるようにしてもよい。
【0054】
(変形例8)
本発明の自動演奏ピアノ100は自動演奏機能を備えているが、自動演奏中においてもアシストモードを有効とするようにしてもよい。このように自動演奏中においてもアシストモードを有効とすると、自動演奏と連弾を行う際にダンパペダル110においてハーフペダルの開始位置を知ることができる。
【0055】
(変形例9)
上述した実施形態においてはダンパペダル110を駆動しているが、ソフトペダル112についても、演奏者がソフトペダル112を踏み始めてからソフトペダル112の操作部分の位置が予め定められた位置に達するまでは演奏者の操作をアシストするようにソレノイドでソフトペダル112を駆動し、操作部分の位置が予め定められた位置となるかまたは予め定められた位置を超えるとソレノイドの駆動を停止するようにしてもよい。
【0056】
この場合、たとえばソフトペダル112を踏んで鍵盤が移動を開始する時の操作部分の位置をSX1(ここまではハンマー2は3本の弦と対向)、ソフトペダル112を踏んで鍵盤の移動が終了する時の操作部分の位置をSX2とした場合(ここではハンマー2は2本の弦と対向)、操作部分の位置がSX1となるまではソレノイドでソフトペダル112の操作をアシストし、操作部分の位置がSX1の位置となるかSX1の位置を超えた場合にはソレノイドの駆動を停止するようにしてもよい。
また、操作部分の位置がSX1からSX2の間の位置にある時にソレノイドでソフトペダル112の操作をアシストし、操作部分の位置がSX1となるまで又は操作部分の位置がSX2の位置を超えた位置である時はソレノイドの駆動を停止するようにしてもよい。
グランドピアノのハンマー2は、ソフトペダル112が操作されない時は同じ位置で弦を叩くために3本の溝が生じ、この溝の部分はフェルトが凹んで硬くなるが、ソフトペダル112を操作して操作部をSX1の位置とSX2との間の位置にすると鍵盤が移動し、ハンマー2は、この溝以外のまだ柔らかいフェルト部分で弦を叩くため音が柔らかくなる。そこで上述したように、SX1からSX2の間の位置にある時にソレノイドでソフトペダル112の操作をアシストするようにすれば、音が柔らかくなる領域を演奏者は容易に知ることが可能となる。
【0057】
(変形例10)
なお、自動演奏ピアノ100においては、ダンパペダル110やソフトペダル112だけでなく、鍵1についてもダンパペダル110と同様にソレノイド5で駆動するようにしてもよい。具体的には、たとえば鍵1の位置がレットオフ開始位置に達するまではソレノイド5によって鍵1の操作をアシストし、レットオフ開始位置となるかレットオフ開始位置を超えた場合にはソレノイド5の駆動を停止するようにしてもよい。
【0058】
上述した実施形態では、自動演奏ピアノ100を例に説明を行ったが、自動演奏ピアノ100は、消音機能を備え、演奏者が行った鍵やペダルの操作に応じて電子音発生部150を制御して楽音を出力する構成であってもよい。
この場合、鍵センサ26から出力されてA/D変換部141でデジタル信号に変換された信号をCPU102が受け取り、モーションコントローラ140aは、A/D変換部141から供給される信号を基に鍵1の位置及び速度を算出し、この算出結果に基づいて電子音発生部150を制御し、打鍵された鍵に対応する音をスピーカから出力してもよい。
また、ペダルについても、ペダル位置センサ24から出力されてA/D変換部141でデジタル信号に変換された信号をCPU102が受け取り、モーションコントローラ140bは、A/D変換部141から供給される信号を基に電子音発生部150を制御し、ペダルの操作に応じた音をスピーカから出力してもよい。
消音機能を有するピアノの場合、発音や音の変化は、鍵センサ26やペダル位置センサ24からの信号に基づくものであるため、ハーフペダルのタイミングは、センサの調整状態によっては、消音機能を使用しない場合と異なる場合が生じえる。この場合、消音機能を使用しない場合の感覚で演奏者が演奏を行うと、演奏者は、発音や音の変化のタイミングに違いを感じることとなる。しかし本発明においては、センサからの検出結果に応じてコントローラ10からの制御により感触の変化を感じさせ、音の変化のタイミングの違いを演奏者に明示できるため、このタイミングの違いを利用してセンサの調整を行うこともできる。また、本発明の自動演奏ピアノ100は、演奏者の各センサで検出されてA/D変換部141で変換された信号をディスクドライブに挿入された記録媒体に記録し、演奏を記録してもよい。本発明では、センサからの検出結果に応じてコントローラ10からの制御によりダンパペダル110の感触の変化を感じることが可能である。つまり、感触の変化を感じた時の演奏を記録することが可能であり、良好な演奏を記録することができる。
【符号の説明】
【0059】
1・・・鍵、2・・・ハンマー、3・・・アクション機構、4・・・弦、5・・・ソレノイド、6・・・ダンパ、9・・・ダンパ機構、23・・・ペダルソレノイド、24・・・ペダル位置センサ、26・・・鍵センサ、100・・・自動演奏ピアノ、101・・・バス、102・・・CPU、103・・・ROM、104・・・RAM、110・・・ダンパペダル、111・・・ソステヌートペダル、112・・・ソフトペダル、120・・・ディスクドライブ、130・・・操作部、140a,140b・・・モーションコントローラ、141・・・A/D変換部、142・・・PWM信号発生部、150・・・ペダル制御部、151・・・減算器、152・・・増幅部、153・・・加算器、154・・・正規化部、155・・・位置生成部、156・・・増幅部、157・・・速度生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
演奏者によって操作される演奏部材を駆動する駆動手段と、
演奏者によって操作された前記演奏部材の操作量を検出する検出手段と、
前記演奏部材が操作されて当該演奏部材を備える楽器が予め定められた所定状態にあるか否かを前記検出手段によって検出された操作量を基に判断し、前記楽器が所定状態にある場合と前記楽器が所定状態にない場合とで前記駆動手段の駆動と非駆動とを切り換える制御手段と
を有する演奏支援装置。
【請求項2】
前記演奏部材はピアノのダンパペダルであり、前記所定状態はハーフペダルの状態であることを特徴とする請求項1に記載の演奏支援装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記ダンパペダルの操作量がハーフペダルの開始時の操作量から所定範囲内にあるときと、前記ダンパペダルの操作量がハーフペダルの終了時の操作量から所定範囲内にあるときに前記ダンパペダルが予め定められた所定状態にあると判断することを特徴とする請求項1に記載の演奏支援装置。
【請求項4】
前記演奏部材はピアノのシフトペダルであり、前記所定状態は、ピアノの鍵盤が前記シフトペダルが操作されていない初期位置から移動した状態であることを特徴とする請求項1に記載の演奏支援装置。
【請求項5】
前記演奏部材はピアノの鍵であり、前記所定状態は、前記鍵に対応したハンマーの位置がレットオフの位置に到達するまでの状態であることを特徴とする請求項1に記載の演奏支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2010−266606(P2010−266606A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−116759(P2009−116759)
【出願日】平成21年5月13日(2009.5.13)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)