説明

演算処理システム

【課題】LPFの異常を的確に判断すること。
【解決手段】通常及び自己診断切替部4は、LPF6のカット周波数に基づき設定したフィルタチェック用周波数であってカット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有するフィルタチェック用矩形波電圧信号を、所定のフィルタチェック期間、LPF6に出力する。CPU5は、チェック用信号発生手段4からLPF6にフィルタチェック用矩形波電圧信号が出力されているとき、LPF6の出力電圧信号に基づくA/Dコンバータ7の出力電圧信号を所定の期間、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、フィルタチェック期間中の最大電圧値を算出し、A/Dコンバータ7の出力電圧の正常値を基準として設定した所定の電圧範囲内に最大電圧値が属属していない場合、LPF6に異常があると判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トルクコントロールシステムなどに適用可能な演算処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
レンチ、ナットランナ等ツールを用いてワークにボルトやナットを締め付ける作業に、各種の締付異常を検知し、また締付本数を管理するトルクコントロールシステムが用いられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載のトルクコントロールシステムは、トルク検知用の歪センサ、歪センサの出力信号を増幅する入力アンプ、入力アンプの出力信号からノイズを除去するローパスフィルタ(以下、LPFともいう。)、LPFの出力信号を2.5倍に増幅する増幅部、増幅部のアナログ出力信号をデジタル信号へ変換するアナログ・デジタルコンバータ(以下、A/Dコンバータともいう。)、A/Dコンバータのデジタル出力信号を入力し、このデジタル入力信号に基づいて締付異常の検知などのために各種演算処理を行う中央処理装置(CPU)などを備えて構成される。
【0004】
そして、上記トルクコントロールシステムにおいては、電源投入時にA/Dコンバータの出力特性のチェックを行い、A/Dコンバータの出力特性が正常であると判断した場合にトルクコントロールプログラムを始動するようにしている。
【特許文献1】特開2007−249645公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、A/Dコンバータの出力特性が正常であっても、LPF用ICの劣化、損傷等によってLPFが正常なフィルタ動作をしなくなっている場合があることが判明した。
【0006】
本発明は、上記の点にかんがみなされたものであり、上記のようなトルクコントロールシステムなどに適用可能な演算処理システムであって、LPFの異常を的確に判断することが可能な演算処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の演算処理システムは、センサと、該センサの出力側に接続されるローパスフィルタと、該ローパスフィルタの出力側に接続されるアナログ・デジタルコンバータと、該アナログ・デジタルコンバータの出力側に接続される中央処理装置とを備える演算処理システムにおいて、前記ローパスフィルタのカット周波数に基づき設定したフィルタチェック用周波数であって前記カット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有するフィルタチェック用矩形波電圧信号を、所定のフィルタチェック期間、前記ローパスフィルタに出力するチェック用信号発生手段を設けるとともに、前記中央処理装置に、前記チェック用信号発生手段から前記ローパスフィルタにフィルタチェック用矩形波電圧信号が出力されているとき、前記ローパスフィルタの出力電圧信号に基づくアナログ・デジタルコンバータの出力電圧信号を所定の期間、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、前記フィルタチェック期間中の最大電圧値を算出する最大電圧値算出手段と、前記アナログ・デジタルコンバータの出力電圧の正常値を基準として設定した所定の電圧範囲内に前記最大電圧値が属するか否かを判定し、前記最大電圧値が前記所定の電圧範囲に属していない場合、前記ローパスフィルタに異常があると判定する異常判定手段とを設けることを特徴とする。
【0008】
本発明の演算処理システムによると、チェック用信号発生手段からローパスフィルタに、カット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有するフィルタチェック用矩形波電圧信号を出力するようにし、このフィルタチェック用矩形波電圧信号を出力しているとき、ローパスフィルタの出力電圧信号に基づくアナログ・デジタルコンバータの出力電圧信号を所定の期間、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、フィルタチェック期間中の最大電圧値を算出し、最大電圧値が所定の電圧範囲内に属していない場合、ローパスフィルタに異常があると判定するよう構成したため、ローパスフィルタ自体の異常の有無をチェック可能になる。
【0009】
ここで、前記チェック用信号発生手段は、前記フィルタチェック用矩形波電圧信号の他にアナログ・デジタルコンバータチェック用電圧信号を発生可能に構成されており、前記チェック用信号発生手段は、前記中央処理装置からの切替信号に従ってフィルタチェック用矩形波信号とアナログ・デジタルコンバータチェック用電圧信号を選択して出力するよう構成され、また、前記中央処理装置は、前記チェック用信号発生手段から前記ローパスフィルタにアナログ・デジタルコンバータチェック用電圧信号が出力されているとき、前記アナログ・デジタルコンバータのチェックを行うコンバータチェック手段を備えるようにすると、アナログ・デジタルコンバータの出力特性のチェックを行い、このチェック結果が正常であると判断された場合においてもローパスフィルタの異常の有無を判定可能になり、精度の高い演算処理を行うことが可能になる。
【0010】
前記フィルタチェック用周波数は、例えば、前記ローパスフィルタのカット周波数が800Hz又は900Hzのときそれぞれ1kHz又は1.1kHzに設定される。このような値にフィルタチェック用周波数を設定すると、ローパスフィルタの出力が減衰することにより、ローパスフィルタの異常の有無を的確に判定することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0012】
図1は、本発明の一実施形態に係る演算処理システムが適用されるトルクコントロールシステムの要部構成図、図2は、中央処理装置(CPU)が実行する演算処理の概要を表したフローチャート、図3は、自己診断処理の内容を表したフローチャート、図4は、アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)チェック処理の内容を表したフローチャート、図5は、ローパスフィルタ(LPF)チェック処理の内容を表したフローチャート、図6は、100μsecの割込み処理で実行されるアナログ・デジタル(A/D)サンプリング処理の内容を表したフローチャート、図7は、1msecの割込み処理の内容を表したフローチャート、図8は、アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)チェック処理の内容を説明するための波形図、図9は、ローパスフィルタ(LPF)チェック処理の内容を説明するための波形図をそれぞれ示す。
【0013】
図1において、演算処理システムは、本体側とワーク側とに分離される。
【0014】
ワーク側には、ワークにボルトやナットを締め付けるために使用されるレンチ、ナットランナ等ツールのトルクを検知するための歪センサ1が配される。
【0015】
本体側には、歪センサ1からのリード線が接続されるコネクタ2が設けられる。
【0016】
コネクタ2には、歪センサ1の出力信号を増幅する入力アンプ3が接続される。
【0017】
入力アンプ3の出力側には、チェック用信号発生手段としての通常及び自己診断切替部4が接続される。
【0018】
通常及び自己診断切替部4は、後述する中央処理装置(CPU)5からの切替信号1に応じて通常モードとチェックモードとに切替り、通常モード時には、入力アンプ3の出力信号をそのままローパスフィルタ(LPF)6に通過させ、一方、チェックモード時(A/Dコンバータチェックモード時及びLPFチェックモード時)には、切替信号1に従って、アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)チェック用電圧信号及びLPFチェック用電圧信号をそれぞれLPF6に出力する。ここで、A/Dコンバータチェック用電圧信号は、A/Dコンバータ7の入力信号が図8に示すような矩形波電圧信号となるよう設定されている。また、LPFチェック用信号は、LPF6のカット周波数に基づき設定したフィルタチェック用周波数であってカット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有する±1.5Vのフィルタチェック用矩形波電圧信号をLPF6に出力する。このフィルタチェック用周波数は、例えば、カット周波数が800Hzのときには1kHzに設定され、このときのフィルタチェック用矩形波電圧信号は、図9に示すような波形となる。また、カット周波数が900Hzのときには、フィルタチェック用周波数は1.1kHzに設定される。
【0019】
通常及び自己診断切替部4の出力側には、ローパスフィルタ(LPF)6が接続される。
【0020】
LPF6は、入力アンプ3の出力信号からノイズ分を除去するために所定のカット周波数例えば800Hz又は900Hzを有する。
【0021】
LPF6には、LPFカット周波数切替部8が接続される。
【0022】
LPFカット周波数切替部8は、CPU5からの切替信号2に応じてLPF6のカット周波数を800Hzに設定するためのコンデンサC1を選択する動作と、カット周波数を900Hzに設定するためのコンデンサC2を選択する動作を行う。
【0023】
LPF6の出力側には、2.5倍の増幅率を有する増幅部9が接続される。
【0024】
増幅部9の出力側には、アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)7が接続される。
【0025】
A/Dコンバータ7の出力側には、中央処理装置(CPU)5が接続される。
【0026】
CPU5は、電源が投入されると、予め設定されたプログラムに従って図2に概略的に示す演算処理を実行する。
【0027】
図2に示す演算処理を概略的に説明すると、CPU5は、電源が投入されると、イニシャライズを行う(ステップS1)。次に、通常及び自己診断切替部4、LPFカット周波数切替部8などハードウエア部の初期セットを行う(ステップS2)。次に、自己診断を実施する(ステップS3)。ここで、自己診断の内容は図3に示されるが、その具体的説明は後述する。次に、自己診断の結果が正常であるか異常であるかを判定し(ステップS4)、正常であると判定した場合は、通常のトルクコントロールプログラムを実行し(ステップS5)、一方、異常であると判定した場合は、異常履歴として保存するとともに異常表示を行い(ステップS6)、次に、オペレータによりリセットボタンがオンされたか否かを判定し(ステップS7)、リセットボタンがオンされた場合、システム異常(ハードウエア異常)か否かを判定し(ステップS8)、システム異常であると判定した場合、リセットボタンがオンされても異常表示を継続し、一方、システム異常でないと判定した場合、再び自己診断を実施する(ステップS3)。
【0028】
次に、自己診断の処理内容を図3に基づいて説明する。
【0029】
図3において、CPU5は、まず、RAMのプログラムエリアのチェックを行い(ステップS11)、RAMのプログラムエリアが正常であるか否かを判定する(ステップS12)。
【0030】
RAMのプログラムエリアが異常であると判定した場合、その旨を示す異常コードをセットする(ステップS13)。
【0031】
一方、RAMのプログラムエリアが正常であると判定した場合、電源遮断時にRAMにバックアップされたデータをチェックし(ステップS14)、このバックアップデータが正常か否かを判定する(ステップS15)。
【0032】
バックアップデータが異常であると判定した場合、その旨を示す異常コードをセットする(ステップS13)。
【0033】
一方、バックアップデータが正常であると判定した場合、データ用ポインタ(スタックポインタ)をセットし(ステップS16)、A/Dコンバータチェックを行う(ステップS17)。
【0034】
CPU5は、A/Dコンバータチェックを行った後、A/Dコンバータ7が正常か否かを判断する(ステップS18)。
【0035】
A/Dコンバータ7に異常があると判定した場合、その旨の異常コードをセットする(ステップS13)。
【0036】
一方、A/Dコンバータ7が正常であると判定した場合、フィルタチェックを行う(ステップS19)。
【0037】
フィルタチェックの結果、LPF6に異常があると判定した場合、その旨の異常コードをセットする(ステップS20)。
【0038】
一方、LPF6が正常であると判定した場合、図2図示の通常のトルクコントロールプログラムを始動する(ステップS5)。
【0039】
次に、A/Dコンバータチェック(ステップS17)を図4に基づいて具体的に説明する。
【0040】
図4において、CPU5は、全ての割込み処理を禁止する(ステップS21)。
【0041】
次に、通常及び自己診断切替部4の出力電圧を0Vから−1.5Vに切替える切替信号1を通常及び自己診断切替部4に出力する(ステップS22)。
【0042】
次に、33msecの経過を待って(ステップS23)、1msec以内にEOCがオンしたか否か、つまり、A/Dコンバータ7からA/D変換を終了した旨の信号を受信したか否かを判定する(ステップS24)。
【0043】
EOCがオフの場合、その旨のエラーコードをセットし、異常履歴の書き込みを行う(ステップS25)。
【0044】
一方、EOCがオンの場合、A/DコンバータデータつまりA/D変換後のデジタル信号を10回読み込み、その平均値を算出する(ステップS26)。
【0045】
次に、平均値が理論値の±10%以内か否かを判定する(ステップS27)。
【0046】
平均値が理論値の±10%を超えている場合、A/Dコンバータ7に異常がある旨のエラーコードをセットし、異常履歴の書き込みを行う(ステップS25)。
【0047】
一方、平均値が理論値の±10%以内である場合、ステップS22で−1.5Vへの切替えを行った時点から84msecの経過を待って、通常及び自己診断切替部4の出力電圧を−1.5Vから+1.5Vに切替える切替信号1を通常及び自己診断切替部4に出力する(ステップS29)。
【0048】
次に、ステップS29で+1.5Vへの切替えを行った時点から66msecの経過を待って(ステップS30)、A/DコンバータデータつまりA/D変換後のデジタル信号を10回読み込み、その平均値を算出する(ステップS31)。
【0049】
次に、通常計測に切替えた後(ステップS32)、ステップS31で求めた平均値が理論値の±10%以内か否かを判定する(ステップS33)。
【0050】
平均値が理論値の±10%を超えている場合、A/Dコンバータ7に異常がある旨のエラーコードをセットし、異常履歴の書き込みを行う(ステップS25)。
【0051】
一方、平均値が理論値の±10%以内である場合、エラーコードをクリアする(ステップS34)。
【0052】
上述したように、さらに、図8に示すように、A/Dコンバータチェックにおいて、CPU5は、通常及び自己診断切替部4の出力電圧を0Vから−1.5Vへ切替え、84msecの間−1.5Vを保持させる切替信号1を通常及び自己診断切替部4に対して出力するとともに、−1.5Vへの切替時点から33msecが経過した時点でA/Dコンバータデータを10回読み込んで平均値を算出する。そして、平均値が理論値の±10%以内である場合はA/Dコンバータ7は正常であり、一方±10%を超えている場合はA/Dコンバータ7は異常であると判断する。
【0053】
さらに、CPU5は、出力電圧が−1.5VであるときにA/Dコンバータ7が正常であると判断した場合に、今度は通常及び自己診断切替部4の出力電圧を−1.5Vから+1.5Vへ切替え、この切替時点から66msecが経過した時点でA/Dコンバータデータを10回読み込んで平均値を算出する。そして、平均値が理論値の±10%以内である場合はA/Dコンバータ7は正常であり、一方±10%を超えている場合はA/Dコンバータ7は異常であると判断する。
【0054】
ここで、通常及び自己診断切替部4の出力電圧を0Vから−1.5Vへ切替えた後のチェックタイミングと、−1.5Vから+1.5Vへ切替えた後のチェックタイミングとを比べると、前者が切替時点から短い時間が経過した時点に設定され、後者が切替時点から長い時間が経過した時点に設定されている理由は、電圧の変化幅が大きくなるに従ってオーバーシュート又はアンダーシュートが大きくなり、信号が収束するまでの時間に差が生じることを考慮したためであり、A/Dコンバータデータは、安定後の信号をベースにして取得される。
【0055】
次に、フィルタチェック(ステップS19)を図5〜図7に基づいて具体的に説明する。
【0056】
CPU5は、コンデンサC1を選択指示する内容の切替信号2をLPFカット周波数切替部8に出力し、LPF6のカット周波数を800Hzにセットする(ステップS41)。
【0057】
次に、チェック時間として1000msecをセットするとともに、チェック開始フラグをオンする(ステップS42)。
【0058】
次に、チェック開始フラグがオフしたか否かを判定し(ステップS43)、チェック開始フラグがオフするまでの間は、ステップS43を繰り返し実行し、チェック開始フラグが後述するようにオフするようになると、ステップS44を実行する。
【0059】
ここで、ステップS44の内容説明をする前に、図6に示す100μsec割込み処理(A/Dサンプリング処理)と、図7に示す1msec割込み処理を説明する。
【0060】
図6図示の100μsec割込み処理(A/Dサンプリング処理)においては、チェック開始フラグがオンか否かを判定する(ステップS51)。
【0061】
チェック開始フラグがオフの場合は、歪センサ1の出力信号に基づく通常の計測つまりトルク計測を行う(ステップS52)。
【0062】
一方、チェック開始フラグがオンの場合は、チェック開始フラグがオンした時点から500μsecが経過したか否かを判定する(ステップS53)。
【0063】
500μsec経過前においては100μsecごとにカウンタ(500μsecカウンタ)を+1し(ステップS54)、500μsecが経過した時点で、LPF6の入力電圧を+1.5Vから−1.5Vへ、−1.5Vから+1.5Vへそれぞれ切り替える切替信号1を通常及び自己診断切替部4に出力し(ステップS55)、500μsecカウンタをクリアする(ステップS56)。
【0064】
次に、A/Dコンバータ7の出力電圧信号に対して6回のサンプリングを行い、サンプリング値のなかで一番大きな値を捨て、残り5つのサンプリング値の平均値を算出する(ステップS57)。
【0065】
次に、各々の100μsec割込み処理によって算出した平均値のうちから最大値(最大電圧値)を求め、換言すると、最大電圧値を更新処理してゆき、更新された最大電圧値をRAMに格納する(ステップS58)。
【0066】
このように、100μsec割込み処理においては、フィルタチェック期間中、500μsecが経過するたびに、LPF6の入力電圧を+1.5Vから−1.5Vへ、−1.5Vから+1.5Vへそれぞれ切り替える処理を行い、LPF6に対して、1kHzのフィルタチェック用周波数を有する±1.5Vのフィルタチェック用矩形波電圧信号を印加する。また、フィルタチェック期間中、A/Dコンバータの出力電圧信号を100μsecの周期つまり10kHzのサンプリング周波数でサンプリングし、サンプル値のなかで最大のサンプル値つまり最大電圧値を算出する。
【0067】
図7図示の1msec割込み処理においては、チェック開始フラグがオンか否かを判定する(ステップS61)。
【0068】
チェック開始フラグがオフの場合は、通常処理に戻る。
【0069】
一方、チェック開始フラグがオンの場合は、ステップS42でセットされたチェック時間を1msecずつ順に減算してゆき(ステップS62)、チェック時間が0になる、つまり、チェック時間が経過すると、チェック開始フラグをオフする(ステップS64)。
【0070】
このように、1msec割込み処理においては、フィルタチェック期間の計測を行い、フィルタチェック期間が経過すると、チェック開始フラグをオフする。
【0071】
再び、図5に戻り、ステップS43においてチェック開始フラグがオフになったと判定すると、CPU5は、通常及び自己診断切替部4を通常状態にセットする、つまり、通常及び自己診断切替部4の出力電圧を0Vに設定する。
【0072】
次に、フィルタチェックで求めた最大電圧値が正常値の±10%以内にあるか否かを判定する(ステップS45)。
【0073】
最大電圧値が正常値の±10%以内にある場合(例えば、図9に実線波形で示す。)、図2図示のステップS5に移行する。
【0074】
一方、最大電圧値が正常値の±10%を超えている場合(例えば、図9に破線波形で示す。)、フィルタ異常である旨のコードをセットし(ステップS46)、異常履歴の書き込みを行う(ステップS47)。
【0075】
以上説明したように、本実施形態に係る演算処理システムは、歪センサ(センサ)1と、センサ1の出力側に接続されるLPF6と、LPF6の出力側に接続されるA/Dコンバータ7と、A/Dコンバータ7の出力側に接続されるCPU5とを備える演算処理システムであって、LPF6のカット周波数に基づき設定したフィルタチェック用周波数であってカット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有するフィルタチェック用矩形波電圧信号を、所定のフィルタチェック期間、LPF6に出力する通常及び自己診断切替部(チェック用信号発生手段)4を設けるとともに、CPU5に、チェック用信号発生手段4からLPF6にフィルタチェック用矩形波電圧信号が出力されているとき、LPF6の出力電圧信号に基づくA/Dコンバータ7の出力電圧信号を所定の期間、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、フィルタチェック期間中の最大電圧値を算出する最大電圧値算出手段(ステップS58)と、A/Dコンバータ7の出力電圧の正常値を基準として設定した所定の電圧範囲内に最大電圧値が属するか否かを判定し、最大電圧値が所定の電圧範囲に属していない場合、LPF6に異常があると判定する異常判定手段(ステップS45)とを設けている。
【0076】
本実施形態の演算処理システムによると、チェック用信号発生手段4からLPF6に、カット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有するフィルタチェック用矩形波電圧信号を出力するようにし、このフィルタチェック用矩形波電圧信号を出力しているとき、LPF6の出力電圧信号に基づくA/Dコンバータ7の出力電圧信号を所定の期間、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、フィルタチェック期間中の最大電圧値を算出し、最大電圧値が所定の電圧範囲内に属していない場合、LPF6に異常があると判定するよう構成したため、LPF6自体の異常の有無をチェック可能になる。
【0077】
また、チェック用信号発生手段4は、フィルタチェック用矩形波電圧信号の他にA/Dコンバータチェック用電圧信号を発生可能に構成されており、チェック用信号発生手段4は、CPU5からの切替信号1に従ってフィルタチェック用矩形波信号とA/Dコンバータチェック用電圧信号を選択して出力するよう構成され、また、CPU5は、チェック用信号発生手段4からLPF6にA/Dコンバータチェック用電圧信号が出力されているとき、A/Dコンバータ7のチェックを行うコンバータチェック手段(ステップS17)を備える。このため、A/Dコンバータ7の出力特性のチェックを行い、このチェック結果が正常であると判断された場合においてもLPF6の異常の有無を判定可能になり、精度の高い演算処理を行うことが可能になる。
【0078】
また、フィルタチェック用周波数は、LPF6のカット周波数が800Hz又は900Hzのときそれぞれ1kHz又は1.1kHzに設定される。このような値にフィルタチェック用周波数を設定したことにより、LPF6の出力が減衰し、LPF6の異常の有無を的確に判定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の一実施形態に係る演算処理システムが適用されるトルクコントロールシステムの要部構成図である。
【図2】中央処理装置(CPU)が実行する演算処理の概要を表したフローチャートである。
【図3】自己診断処理の内容を表したフローチャートである。
【図4】アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)チェック処理の内容を表したフローチャートである。
【図5】ローパスフィルタ(LPF)チェック処理の内容を表したフローチャートである。
【図6】100μsecの割込み処理で実行されるアナログ・デジタル(A/D)サンプリング処理の内容を表したフローチャートである。
【図7】1msecの割込み処理の内容を表したフローチャートである。
【図8】アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)チェック処理の内容を説明するための波形図である。
【図9】ローパスフィルタ(LPF)チェック処理の内容を説明するための波形図である。
【符号の説明】
【0080】
1 歪センサ(センサ)
4 通常及び自己診断切替部(チェック用信号発生手段)
5 中央処理装置(CPU)
6 ローパスフィルタ(LPF)
7 アナログ・デジタルコンバータ(A/Dコンバータ)
ステップS17 コンバータチェック手段
ステップS45 異常判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センサと、該センサの出力側に接続されるローパスフィルタと、該ローパスフィルタの出力側に接続されるアナログ・デジタルコンバータと、該アナログ・デジタルコンバータの出力側に接続される中央処理装置とを備える演算処理システムにおいて、
前記ローパスフィルタのカット周波数に基づき設定したフィルタチェック用周波数であって前記カット周波数よりも高いフィルタチェック用周波数を有するフィルタチェック用矩形波電圧信号を、所定のフィルタチェック期間、前記ローパスフィルタに出力するチェック用信号発生手段を設けるとともに、
前記中央処理装置に、
前記チェック用信号発生手段から前記ローパスフィルタにフィルタチェック用矩形波電圧信号が出力されているとき、前記ローパスフィルタの出力電圧信号に基づくアナログ・デジタルコンバータの出力電圧信号を所定の期間、所定のサンプリング周波数でサンプリングし、前記フィルタチェック期間中の最大電圧値を算出する最大電圧値算出手段と、
前記アナログ・デジタルコンバータの出力電圧の正常値を基準として設定した所定の電圧範囲内に前記最大電圧値が属するか否かを判定し、前記最大電圧値が前記所定の電圧範囲に属していない場合、前記ローパスフィルタに異常があると判定する異常判定手段と
を設ける
ことを特徴とする演算処理システム。
【請求項2】
前記チェック用信号発生手段は、前記フィルタチェック用矩形波電圧信号の他にアナログ・デジタルコンバータチェック用電圧信号を発生可能に構成されており、前記チェック用信号発生手段は、前記中央処理装置からの切替信号に従ってフィルタチェック用矩形波信号とアナログ・デジタルコンバータチェック用電圧信号を選択して出力するよう構成され、
また、前記中央処理装置は、前記チェック用信号発生手段から前記ローパスフィルタにアナログ・デジタルコンバータチェック用電圧信号が出力されているとき、前記アナログ・デジタルコンバータのチェックを行うコンバータチェック手段を備えている
ことを特徴とする請求項1に記載の演算処理システム。
【請求項3】
前記フィルタチェック用周波数は、前記ローパスフィルタのカット周波数が800Hzのとき1kHzに設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の演算処理システム。
【請求項4】
前記フィルタチェック用周波数は、前記ローパスフィルタのカット周波数が900Hzのとき1.1kHzに設定されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の演算処理システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−5727(P2010−5727A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−167349(P2008−167349)
【出願日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(000176958)三明電機株式会社 (37)
【Fターム(参考)】