説明

漬物包装品及びその製造方法

【課題】 漬物の食味、風味を損なうことなく、長期間保存が可能な漬物包装品を提供する。
【解決手段】 漬物包装品は、液状部14を有する塩漬け刻み葱15と漬物11とが接触した状態で容器本体2内に収容され、容器本体2の開口部が閉鎖されている。ここで、漬物11を容器本体2内に充填し、塩漬け刻み葱15を充填された漬物11の上面を覆うように充填する。漬物包装品の製造方法は、液状部を有する塩漬け刻み葱15と漬物11とを接触させた状態で容器本体2内に収容し、容器本体の開口部を閉鎖する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、白菜キムチ等の漬物を長期保存することが可能な漬物包装品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
白菜キムチや白菜漬けに代表される野菜の漬物は短期間で品質が劣化して食することができなくなることから、従来より長期保存を行うための工夫がなされている。
【0003】
漬物の原料として胡瓜を8%食塩水に漬け込んだ後、キトサン、酢酸及びアジピン酸を混合した漬け液に浸漬して製造する方法の提案がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は、キトサンと酢酸に加え抗菌力が強いアジピン酸を用いることにより、これらの相乗効果により微生物繁殖を抑制して漬物の保存を長期化させるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平1−291747号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の方法では、アジピン酸によって原料野菜の食味、風味が損なわれ易く、漬物として食するのに適しない問題を有している。
【0006】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであって、原料野菜の食味、風味を損なうことなく、長期間保存が可能な漬物包装品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の漬物包装品は、液状部を有する塩漬け刻み葱と漬物とが接触した状態で容器本体内に収容され、前記容器本体の開口部が閉鎖されていることを特徴とする。
【0008】
この場合、前記漬物が容器本体内に充填され、前記塩漬け刻み葱が充填された漬物の上面を覆っていることが好ましい。又、前記漬物と塩漬け刻み葱とが混合された状態で前記容器本体内に充填されていてもよい。さらに、前記塩漬け刻み葱としては、刻んだ葱と酒精と糊料とを含む葱混合材料を還元澱粉糖化物と唐辛子破片と塩とを含む漬け材を用い塩漬けにしたものであることが好ましい。
【0009】
本発明の漬物包装品の製造方法は、液状部を有する塩漬け刻み葱と漬物とを接触させた状態で容器本体内に収容し、前記容器本体の開口部を閉鎖することを特徴とする。
【0010】
この製造方法においては、前記漬物を容器本体内に充填し、前記塩漬け刻み葱を、充填された漬物の上面を覆うように充填しても良く、前記塩漬け刻み葱と漬物とを混合し、この混合物を容器本体内に収容しても良い。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、液状部を有する塩漬け刻み葱を漬物と接触させた状態とし、この状態で容器本体内に収容することにより塩漬け刻み葱が有している抗菌作用が漬物に有効に作用する。このため、長期間の保存が可能となる。又、塩漬け刻み葱は自然食品を原料とするものであるから、漬物自体の食味や風味を損なうことがないばかりでなく、塩漬け刻み葱の食味、風味が漬物本来の味に加わる。このため、豊かな食味、風味が付与されて良好に食することができる。また、塩漬け刻み葱が漬物の外表面を覆うように敷き詰めた状態で容器本体内に充填したときには、粘性のある液状部に刻み葱が浸かった状態の塩漬け刻み葱によって漬物を嫌気性に近い状態に維持できることもあり、塩漬け刻み葱と漬物との混合状態に比して漬物の過発酵や産膜酵母の発生をより抑制する場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態の漬物包装体の断面図である。
【図2】本発明の別の実施形態の漬物包装体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の漬物包装品は、液状部を有する塩漬け刻み葱と漬物とが接触した状態で容器本体内に収容され、容器本体の開口部が閉鎖されているものである。
【0014】
漬物は、白菜、胡瓜、大根、茄子等の野菜を原料とし、この野菜を通常の方法により漬け液に浸漬することにより製造されるものである。すなわち、野菜を洗浄したり、煮た後、食塩、食酢、醤油、みりん、果汁、昆布や削り節のだし汁等に漬けることにより製造される。漬物としては、白菜キムチ、白菜漬、胡瓜漬、その他のものを選択することができる。この漬物としては、市販のものも適宜用いることができる。
【0015】
塩漬け刻み葱は、刻んだ葱が糊料や漬け材などによって粘性を有する液状部に浸かる(覆われている)状態に調製されていれば特に限定されないが、一般的には、刻んだ葱と酒精と糊料とを含む葱混合材料を還元澱粉糖化物と唐辛子破片と塩とを含む漬け材を用い塩漬けにすることにより製造される。ここで用いる葱は、ネギ属(Allium)に分類されるものであれば、いずれの種であっても良いが、青葱、白葱、小葱などと呼ばれる葱(A.fistulosum)の他、分葱(A.wakegi)、浅葱(A.schoenoprasum)、西洋葱(A.ampeloprasum)などがより好ましい。刻み葱は、洗浄の後に細片状に刻まれ、水切りしたものが使用される。配合比としては、刻み葱100重量部に対し、酒精を0.2〜5重量部及びキサンタンガム、グアーガム等の糊料を0.005〜2重量部混合して葱混合材料とすることができる。また、刻み葱100重量部に対し5〜30重量部の還元澱粉糖化物、0.5〜10重量部の唐辛子破片、1〜10重量部の塩を含む漬け材に葱混合材料を混合して塩漬けすることにより製造することができる。上記配合比の範囲を超えると液状部の粘度が低く、又は高くなりすぎたり、刻み葱や唐辛子破片が液状部に適度に浸かった状態とならない場合があり、また、充分な漬物の過発酵抑制作用や産膜酵母発生抑制作用が得られない場合がある。葱混合材料と漬け材とを夫々別に調製して混合しても良く、刻み葱に刻み葱以外の葱混合材料成分と漬け材成分とを順不同で直接添加混合しても良い。上記配合比における好ましい範囲は、酒精0.5〜3重量部、糊料0.01〜0.5重量部、還元澱粉糖化物10〜20重量部、唐辛子破片1〜7重量部、塩2〜8重量部であり、塩は塩漬け刻み葱としての塩分含量が2〜4重量%となるように食塩を添加することがより好ましい。
【0016】
塩漬け刻み葱としては、上記材料に加え、魚介エキス、魚醤、グルタミン酸ソーダ等の調味料、蛋白加水分解物等の添加物を適宜加えて漬け込むことが可能である。これらの添加物の配合比は0.1〜5重量部の範囲で適宜選択することができる。
【0017】
このような塩漬け刻み葱は、葱を細片化して粘性を有する液状部に浸っていることから葱が有する抗菌力を有効に作用させることができる。このため、塩漬け刻み葱を漬物と接触させることにより、漬物を長期保存することができる。塩漬け刻み葱と漬物との接触は、容器本体内で行われるものであり、容器本体内に充填された漬物の上面を塩漬け刻み葱が覆うようにしても良く、塩漬け刻み葱と漬物とを混合し、この混合状態で容器本体内に充填しても良い。
【0018】
かかる塩漬け刻み葱は自然食品を原料とするものであるから、漬物自体の食味や風味を損なうことがないばかりでなく、塩漬け刻み葱の食味、風味が漬物本来の味に加わる。このため、豊かな食味、風味が付与されて良好に食することができる。
【0019】
図1及び図2は、本発明の漬物包装品1を図示しており、容器本体2と、容器本体2に被せられる蓋体3とからなる容器4が用いられる。容器本体2及び蓋体3としては、内部を透視することが可能な樹脂が好ましく、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)等のオレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、その他の樹脂を用いることができる。
【0020】
容器本体2は、内容物が充填されるものであり、内容物充填の後においては、フィルム6を容器本体2の縁部に熱シールして容器本体2の開口部が閉鎖される。フィルム6としては、内容物の発酵によって発生するガスが通過可能な材質が良好であり、このため、ガス透過性フィルムが用いられる。なお、蓋体3は、容器本体2に対して着脱が容易であれば良く、その形状は適宜変更することができる。また、フィルム6による容器本体2の熱シールを施さずに、蓋体3を容器本体2の開口縁部に嵌め込み可能な形状のものとして、蓋体3によって容器本体2の開口部を閉鎖しても良い。フィルムの熱シールなしで蓋体3により容器本体2の開口部を閉鎖する場合においても、内容物のうち粘性を有する液状部が漏れ出ず且つ発生ガスが通過できるように閉鎖することが必要である。
【0021】
容器本体2内には、内容物として、漬物11及び塩漬け刻み葱15が充填される。塩漬け刻み葱15は、刻み葱や唐辛子破片などの固形部分13と粘性のある液状部14からなり、固形部分13が液状部14に浸かっている。言い換えれば、液状部14が固形部分13に絡み、固形部分13を潤った状態で包むように覆っている。図1においては、漬物11を容器本体2の底面から順に充填することにより漬物11を容器本体2下部に敷き詰め、この漬物11の上面を塩漬け刻み葱15が覆うように、特に液状部14が漬物11上面を全面的に潤った状態で覆うように塩漬け刻み葱15を充填している。図2においては、漬物11と塩漬け刻み葱15とを混合し、この混合物を容器本体2の内部に充填している。いずれにおいても、塩漬け刻み葱15が容器本体2の内部で漬物11と接触した状態となり、塩漬け刻み葱15の抗菌力を漬物11に有効に作用させることができる。特に、図1の形態においては、塩漬け刻み葱15が容器本体2内に敷き詰められた漬物11の上面を覆っていることから、塩漬け刻み葱15の濃厚な抗菌力をより長期間、持続的に漬物11に作用させることができる。また、図1のように塩漬け刻み葱が漬物の外表面を覆うように敷き詰めた状態で容器本体内に充填したときには、粘性液状部に刻み葱が浸った状態の塩漬け刻み葱によって漬物を嫌気性に近い状態に維持できることもあり、塩漬け刻み葱と漬物との混合状態に比して漬物の過発酵や産膜酵母の発生をより抑制する場合がある点でより好ましい。このため、長期保存が可能となる。さらに、図1の形態においては、下側の漬物11は塩漬け刻み葱15と混じっていないため、漬物11自体の食味、風味を保持することができる。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
実施例1では、塩漬け刻み葱を調製した。この調製は、青葱又は白葱を原料葱に用い、原料葱の根部を裁断して除き、青部(緑色部)と白色部とを裁断した後、青部及び白色部につき、夫々水道水で洗浄し、縦方向に4ッ割りの後1〜3mmに細かく裁断して水切りすることにより細片状の刻み葱(刻んだ葱)とした。この刻み葱100重量部に対し、酒精を1.5重量部及び糊料としてのキサンタンを0.05重量部加えて混合し、葱混合材料とした。また、刻み葱100重量部に対し、還元澱粉糖化物としての還元水飴16重量部、細片状の唐辛子破砕片3重量部、食塩4重量部によって漬け材とし、この漬け材を葱混合材料と混合して漬けた。なお、ここでは、調味のために漬け材には、魚介エキス、蛋白加水分解物(大豆蛋白)、グルタミン酸塩を微量(1重量部以下)添加した。この浸漬を1日行うことにより、この実施例の液状部を有する塩漬け刻み葱を調製した。液状部が刻み葱や唐辛子破砕片などの固形部分に絡み、固形部分を潤った状態に包み込むように、固形部分が液状部にひたった状態に調製した。かかる塩漬け刻み葱は、それ自体で葱の良好な食味及び風味を有しており、米飯、豆腐等の食材にかけて食することが可能である。
【0023】
(実施例2)
実施例2では、塩漬け刻み葱の白菜キムチに対する保存性を観察した。市販の白菜キムチ200gを容器本体内に充填し、その上に上述した塩漬け刻み葱を厚さ1〜5mm(液状部1〜3mm)となるように敷き詰めて白菜キムチを塩漬け刻み葱によって覆い、図1に示す漬物包装品を作成した。一方、同様の白菜キムチ200gに対し、上述した塩漬け刻み葱を混合して容器本体内に充填することにより図2に示す漬物包装品を製造した。包装容器は、本体PET製、蓋PET製、シールフィルム低密度PE製、152mm角、容量350mLのものを用いた。
【0024】
表1は、以上の漬物包装品を室温(20〜25℃)に置いて性状を観察した結果である。表2は、10℃の恒温槽内(ホシザキ電機株式会社製、冷蔵ショーケース、RS−120ST−463型、制御温度:7℃〜10℃)に置いて性状を観察した結果である。表3は苛酷試験条件として35℃の恒温槽内(三洋電機株式会社製、インキュベーターMIR−252型、制御温度33℃〜37℃)に置いて性状を観察した結果である。対照(コントロール)は、塩漬け刻み葱を用いることなく白菜キムチだけを容器本体内に充填した比較例である。表1〜表3における各欄の上段の数値はpH(堀場製作所製、pHメータ F−52型使用、測定表示値の小数点以下3桁目を四捨五入)を示し、下段の記載は性状(外観、臭い)を示す。産膜酵母(白黴)発生、腐敗のためpH測定を行なわなかった場合には上段に「×」と記し、顕著な性状変化を認めなかった場合(水分揮散で瑞々しさに欠ける場合も含む)は、下段に「−」と記載した。
【0025】
(実施例3)
実施例3では、塩漬け刻み葱の白菜漬けに対する保存性を観察した。白菜漬け(塩分2.5重量%の他には添加物を加えずに塩漬けのみの浅漬け白菜を調製)200gを容器本体内に充填し、その上に上述した塩漬け刻み葱を厚さ1〜5mm(液状部は1〜3mm)となるように敷き詰めて白菜漬けを塩漬け刻み葱によって覆い、図1に示す漬物包装品を製造した。一方、同様の白菜漬け200gに対し、上述した塩漬け刻み葱を混合して容器本体内に充填することにより図2に示す漬物包装品を製造した。包装容器は、本体PET製、蓋PET製、シールフィルム低密度PE製、152mm角、容量350mLのものを用いた。
【0026】
表4は、以上の漬物包装品を室温(20〜25℃)に置いて性状を観察した結果である。表5は、10℃の恒温槽内(ホシザキ電機株式会社製、冷蔵ショーケース、RS−120ST−463型、制御温度:7℃〜10℃)に置いて性状を観察した結果である。表6は、苛酷試験条件として35℃の恒温槽内(三洋電機株式会社製、インキュベーターMIR−252型、制御温度33℃〜37℃)に置いて性状を観察した結果である。対照(コントロール)は、塩漬け刻み葱を用いることなく白菜漬けだけを容器本体内に充填した比較例である。表4〜表6における各欄の上段の数値はpH(堀場製作所製、pHメータ F−52型使用、測定表示値の小数点以下3桁目を四捨五入)を示し、下段の記載は性状(外観、臭い)を示す。産膜酵母(白黴)発生、腐敗のためpH測定を行なわなかった場合には上段に「×」と記し、顕著な性状変化を認めなかった場合(水分揮散で瑞々しさに欠ける場合も含む)は、下段に「−」と記載した。
【0027】
(実施例1乃至3の結果)
表1〜表3に示すように、塩漬け刻み葱を白菜キムチの上面に載せ敷き詰めた場合、白菜キムチに混合した場合のいずれにおいても、白菜キムチの保存性が向上していた。又、表4〜表6に示すように、塩漬け刻み葱を白菜漬けの上面に設けた場合、白菜漬けに混合した場合のいずれにおいても、白菜キムチの保存性が向上している。但し、白菜漬の場合に比して白菜キムチに塩漬け刻み葱を上載せ或は混合した場合のほうが、産膜酵母の発生抑制効果、過発酵抑制効果がより高く、また、白菜漬、白菜キムチ共に、塩漬け刻み葱を上載せした場合の方が、混合した場合に比して効果がより高いことが確認された。苛酷試験条件(35℃)では、保存開始後短期間の内に表面から水分が揮散して乾燥状態となり、水分活性が低下するためか、室温保存の場合より産膜酵母の発生が遅延されたり、産膜酵母発生や腐敗に至らないことも認められた。なお、苛酷試験条件(35℃)では、塩漬け刻み葱の漬物上載せ60g、漬物混合20%、30%など葱の使用が多くなるのに伴い、pH値の低下は確認されても葱のにおいが強いためか、35℃という温度のためか酸味臭は殆んど感じられなかった。
【0028】
【表1】

【0029】
【表2】

【0030】
【表3】

【0031】
【表4】

【0032】
【表5】

【0033】
【表6】

【0034】
(実施例4)
実施例1と同様にして調製した塩漬け刻み葱を使用し、実施例2に準じた条件で白菜キムチに上載せした包装品及び混合した包装品につき、15℃(温度制御:10℃を超え15℃以下)、10℃(7℃〜10℃)の保存条件にて産膜酵母の発生抑制効果を試験した(pH測定省略)。但し、ここでは、対照の白菜キムチに220gを用い、実施例4−1:白菜キムチ170gに対して塩漬け刻み葱50g上載せした包装品、実施例4−2:白菜キムチ198gに対して塩漬け刻み葱22g混合した包装品、実施例4−3:白菜キムチ170gに対して塩漬け刻み葱50g(23重量%)混合した包装品について試験を行なった。包装容器は実施例2と同様の材料(フィルムシール、蓋を含む)で152mm角、容量350mLのものを用いた。
この結果、15℃の保存条件においては、対照では包装(保存開始)10日後、表面に産膜酵母の発生を認めたが、実施例4−1及び実施例4−3では57日後においても産膜酵母の発生が無く、実施例4−2では18日後に表面一部に産膜酵母の発生が認められた。10℃の保存条件においては、対照では包装18日後、表面に産膜酵母の発生を認めたが、実施例4−1及び実施例4−3では57日後においても産膜酵母の発生が無く、実施例4−2では22日後に表面一部に産膜酵母の発生が認められた。
【0035】
(実施例5)
実施例1と同様にして調製した塩漬け刻み葱を使用し、実施例2に準じた条件で白菜キムチに混合し、フィルムの熱シールを施さず、蓋を嵌め込み包装した包装品につき、室温(温度制御:15℃〜25℃)、35℃(温度制御:33℃〜37℃)の保存条件にて産膜酵母の発生抑制効果を試験した(pH測定省略)。但し、ここでは、対照の白菜キムチに200gを用い、実施例5−1:白菜キムチ174gに対して塩漬け刻み葱26g混合(13重量%)した包装品、実施例5−2:白菜キムチ170gに対して塩漬け刻み葱30g(15重量%)混合した包装品、実施例5−3:白菜キムチ164gに対して塩漬け刻み葱36g(18重量%)混合した包装品、実施例5−4:白菜キムチ160gに対して塩漬け刻み葱40g(20重量%)混合した包装品について試験を行なった。包装容器は実施例2と同様の材料(蓋を含む)で152mm角、容量350mLのものを用いた。
この結果、室温の保存条件においては、対照では包装(保存開始)9日後、表面に産膜酵母の発生を認めたが、実施例5−2乃至実施例5−4では32日後においても産膜酵母の発生が無く、実施例5−1では21日後に表面一部に産膜酵母の発生が認められた。35℃の保存条件においては、対照では包装9日後、表面に産膜酵母の発生を認めたが、実施例5−1乃至実施例5−4の全包装品サンプル共に、32日後においても産膜酵母の発生が認められなかった。
【0036】
(実施例6)
実施例1と同様にして調製した塩漬け刻み葱を使用し、実施例3に準じた条件で白菜漬に上載せ又は混合し、フィルムの熱シールを施さず、蓋を嵌め込み包装した包装品につき、10℃(温度制御:7℃〜10℃)の保存条件にて試験した。本実施例では、対照の白菜漬に200gを用い、実施例6−1:白菜漬200gに対して塩漬け刻み葱20gを上載せした包装品、実施例6−2:白菜漬200gに対して塩漬け刻み葱30g上載せした包装品、実施例6−3:白菜漬200gに対して塩漬け刻み葱50g上載せした包装品、実施例6−4:白菜漬180gに対して塩漬け刻み葱20g混合(10重量%)した包装品、実施例6−5:白菜漬160gに対して塩漬け刻み葱40g(20重量%)混合した包装品、実施例6−6:白菜漬140gに対して塩漬け刻み葱60g(30重量%)混合した包装品について試験を行なった。包装容器は実施例3と同様の材料(蓋を含む)で152mm角、容量350mLのものを用いた。本実施例の試験結果は、表7に示すとおりであり、フィルムの熱シールを施さない包装形態によっても、実施例3(表5)に示した結果と同様の産膜酵母の発生抑制効果、過発酵抑制効果が得られることが確認された。
【0037】
【表7】

【符号の説明】
【0038】
1 漬物包装体
2 容器本体
6 フィルム
11 漬物
13 固形部分
14 液状部
15 塩漬け刻み葱

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状部を有する塩漬け刻み葱と漬物とが接触した状態で容器本体内に収容され、前記容器本体の開口部が閉鎖されていることを特徴とする漬物包装品。
【請求項2】
前記漬物が容器本体内に充填され、前記塩漬け刻み葱が充填された漬物の上面を覆っていることを特徴とする請求項1記載の漬物包装品。
【請求項3】
前記漬物と塩漬け刻み葱とが混合された状態で前記容器本体内に充填されていることを特徴とする請求項1記載の漬物包装品。
【請求項4】
前記塩漬け刻み葱は、刻んだ葱と酒精と糊料とを含む葱混合材料を還元澱粉糖化物と唐辛子破片と塩とを含む漬け材を用い塩漬けにしたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の漬物包装品。
【請求項5】
液状部を有する塩漬け刻み葱と漬物とを接触させた状態で容器本体内に収容し、前記容器本体の開口部を閉鎖することを特徴とする漬物包装品の製造方法。
【請求項6】
前記漬物を容器本体内に充填し、前記塩漬け刻み葱を充填された漬物の上面を覆うように充填することを特徴とする請求項5記載の漬物包装品の製造方法。
【請求項7】
前記塩漬け刻み葱と漬物とを混合し、この混合物を容器本体内に収容することを特徴とする請求項5記載の漬物包装品の製造方法

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−95563(P2012−95563A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−244374(P2010−244374)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000124926)会津天宝醸造株式会社 (2)
【Fターム(参考)】