説明

潅流ポンプ用液圧脈動装置

潅流ポンプ用液圧脈動装置。それは、移動伝達液状流体の手段により、潅流ポンプのチャンバを交互に膨張させたり収縮させることによって、そのチャンバの容積を変化させることを意図したものである。それは、交互に両方向に移動可能な外部ピストン16が当接する、弾性があり変形可能な前部膜24を備えたラングボデー18を含み、そのピストンは、制御コンソール13の一方の側にあることを特徴とする。このコンソールは、また、外部ピストン16を囲む一方、ラングボデー18の固定手段をなす、包囲リング頭部17を含む。ラングボデー18は、潅流ポンプ23のチャンバ12に結合する中間管状ダクト22に接続された端部狭窄部21を含む。その移動伝達流体は、ラングボデー18の前部と、中間管状ダクト22と、潅流ポンプ23のチャンバ12と、を含むスペース内に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本明細書の発明の名称に示されている通り、潅流(注入)ポンプ用液圧脈動装置に関し、スペイン特許第200601000号明細書に記載されているタイプの血液潅流(注入)ポンプの補助を意図したものである。
【0002】
これらのタイプのポンプは、心臓手術の間、血液潅流に用いられたり、或いは、心不全の治療時における、心室補助に用いられる。
【0003】
上記ポンプをもって、その潅流システムは、線状流れ若しくは連続流れの利点を提供し、また、組織や臓器の潅流により望ましい脈動流れの利点を提供する。加えて、その潅流システムは、心室補助が必要になると考えられている患者の生物学的脈動(パルス)に同期し得る。
【0004】
この前提に基づき、本発明の対象(目的)は、本発明の装置の一部である外部ピストンの手段により、完全に調整可能な液圧パルスの適用を許容する、典型的な液圧脈動装置である。
【背景技術】
【0005】
今日、心臓手術時の血液潅流のため、また、心不全の治療のため、2つのタイプのポンプ、すなわち、ローラポンプと遠心力ポンプとが用いられている。2つのタイプのポンプは、どちらも、心臓により生じせしめられる脈動流れ若しくは生理的流れに取って代わる、線状流れ若しくは連続流れ、従って、一定の流量での血液の循環を生じる。
【0006】
各鼓動(心拍)により生じせしめられるインパクト(衝撃、影響、効果)は最も薄い動脈の潅流を改善するため、組織内を潅流する理想的な流れは、脈動流れ若しくは生理的流れであることが、常に、認められている。ローラポンプと遠心力ポンプの製造業者は、その線状流れを脈動流れに変換する解決策を模索しているが、満足できる結果は得られていない。
【0007】
米国特許第005458459号明細書は、血液等の生物学的流体をポンピングするのに用いられる遠心力ポンプであって、ポンプのチャンバを形成するハウジングを含む遠心力ポンプを開示した。このポンプのチャンバは、溶血反応(血球破壊)の低減を補助するべく回転式誘導装置を形成するために、所定の配置のブレードを有するロータ(推進体)を囲んでいる。しかしながら、それは、非生理的な線状流れを生じるに過ぎない。
【0008】
米国特許第6183220号明細書は、血液について、反溶血性の特徴を減じることなく、スリーブの下部若しくは内部に付着する凝血(血液の凝固)を有意に回避することができる血液ポンプを開示している。それは、ポンプスリーブと、該スリーブの横中央部に配置された吸引インレットと、その下周縁部に配置された出力流れと、メインロータと、を有しており、該メインロータは、上記インレットから供給された血液の遠心性の流れを生じる(形成する)。このロータは、混合機(ミキサー)と、攪拌フィンと、を有する。この場合、同期可能な脈動流れや生理的流れは、いずれも、生成されない。
【0009】
スペイン特許第200601000号明細書の発明は、このタイプのポンプにおける脈動を提供するべく、ポンプ自体における必要な圧力を生じるヘリウム等のガスの手段により、カウンターパルセーション法のバルーンを組み込んだ、液圧脈動装置に関連する血液潅流ポンプからなる。
【0010】
上記装置は、患者にとって結果的に致命的となり得る、血液流体に接し得るテクニカル・ガスや流体を用いており、高価であり、複雑であり、そして、移動性(移動度)が大変低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】スペイン特許第200601000号明細書
【特許文献2】米国特許第005458459号明細書
【特許文献3】米国特許第6183220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
上記目的に到達すると共に、上記欠点を防止する目的をもって、本発明は、スペイン特許第200601000号明細書の発明の潅流ポンプ用液圧脈動装置を提案する。このポンプは、線状流れ及び脈動流れを有する血液潅流の実行を許容し、遠心力ポンプにより発生せしめられる線状流れの利点と、脈動流れの利点と、を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
このポンプは、周知の遠心駆動力(遠心推進力)の一部分を、脈動駆動力(脈動推進力)の他の部分と組み合わせるものである。
【0014】
原理上、上記ポンプは、カプセル、若しくはケーシング、を有し、その内部に、血液が受け入れられ、該血液は、ブレードの手段、若しくは、渦装置、により、線状出力流れの遠心力により生じる高速で、回転せしめられる。遠心ポンプにより提供される線状流れを脈動流れに重ね合わせることができるようにするために、上記カプセル、若しくはケーシング、の湾曲部(膨らみ部)がある内壁(内壁部)は、液圧で、若しくは、気圧で、作動(動作)せしめられる、弾力性(伸縮性)を有するライニング、若しくは弾力性(伸縮性)を有する鐘状(ベル形)の膜、に結合(連結)される。これにより、その膨張及び収縮を達成し、カプセルの内部体積(内部容量)のバイブレーション(振動)を生じさせ、遠心力ポンプのアウトレット(出口)に向けて脈動で流れる血液の同体積(同容量)の変位(移動)を生じさせて、それ自体をその線状流れに統合する。その内部のライニング、つまり鐘状の膜は、その弾力性(伸縮性)を有する壁(壁部)がポンプのインレット(入口)で血液の容積を出力方向のみに変位(変位)させる逆止弁としての機能を実現するように、構成される。上記出力方向は、遠心力推進装置の線状流れに一致する。
【0015】
その潅流ポンプの可変容積チャンバの膨張と収縮のための液圧伝送(伝達)は、中間管状ダクトを介して、そのチャンバに接続された新規な液圧脈動装置の手段により、実行される。上記中間管状ダクトは、調整自在な頻度(回数、度数、振動数、周波数)と経路(コース)とを有し患者の生物学的パルスに同期可能であるところの交互に移動する(揺れる、振動する)動作を有する機械的推進装置から始まる(突出する、スタートする)。
【0016】
このようにして、患者の血液循環は、常に、大きな脈管(導管)の潅流のための基底流出(基底流量)と、より小さい脈管(導管)の潅流を増加させるための脈動流れと、を有する。
【0017】
上記液圧脈動装置は、軸方向に変位自在(移動自在)であり、且つ、両方向に交互に変位自在である、外部ピストンを有するコンソールを備えたことを特徴とする。上記外部ピストンの周囲には、弾力性(伸縮性)があり変形自在な材料から形成された前部膜(正面膜)を備えたラングボデーの固定手段が画定(形成)される。上記前部膜は、必要に応じて外部ピストンの交互の移動(動作)を制御する制御コンソールの上記外部ピストンに当接する。
【0018】
上記ラングボデーは、上記潅流ポンプのチャンバに至る(終わる)中間管状ダクトが接続される末端狭窄部を備える。このチャンバと、中間管状ダクトと、ラングボデーとで、範囲が定められる内部スペース(内部空間)は、食塩水(食塩溶液)等の移動伝達液状流体により、占められる。その脈動(鼓動、拍動、振動)は、上記の通り、この内部スペースを通して、ラングボデーの前部膜に接する上記外部ピストンの制御された動き(振動)のおかげで、ポンプの内部に伝達される。
【0019】
従って、患者の血液流体を、その内部を通して、必要とされるパラメータをもって循環させるために、上記交互移動(動作)の外部ピストンは、上記前部膜に当接し、前部膜に圧力を作用させて、その動き(動作)を液状流体に伝達し、そして、順に、この液状流体をポンプに伝達する。
【0020】
次に、本明細書のより良い理解のために、その不可分の一部である特定の図面であって、限定目的ではなく、実例としての、本発明の目的を示す図面が、この明細書に添付している。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】それは、本発明の目的である、潅流ポンプ用の液圧脈動装置に関連する血液潅流ポンプの断面正面(立面)図を示している。この装置は、基本的に、液圧脈動(拍動,振動,鼓動)を伝達するべく、ポンプに接続されたラングボデーに関連する外部ピストンを組み込んだ(有する)制御コンソールを有する。
【図2】それは、本発明の装置の斜視図を示している。
【図3】それは、本発明の装置の断面図を示している。
【図4】それは、本発明に係る、生成された圧力と、線状脈動流れと、の略図を示しており、そのパルスの時間と、周期(期間)と、線状脈動圧力とは、全て、調整可能である。
【図5】それは、順に、コンピュータスクリーンに接続された電子回路構成ブロックに関連する制御コンソールの略図を示している。
【図6】それは、他の周辺機器或いは装置、及びバッテリ(電池)を備えることができる適切な外部電力供給装置(パワーサプライ)に対する、本発明の装置の外部接続の略図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図面に用いられている番号を考慮に入れて、潅流ポンプ用液圧脈動装置は、電子回路構成ブロック14に関連する制御コンソール13に基づき、決定される。この電子回路構成ブロック14は、順に、コンピュータスクリーン15に接続されており、これにより、本発明の新規な装置により達成されることができる多重(重複、多種多様な)液圧脈動の可能性が可視化されるようになっている。
【0023】
上記制御コンソール13は、外部ピストン16を組み込んで(有して)いる。この外部ピストン16は、軸方向における両方向に変位(移動)できるようになっており、外部ピストン16の回りに、包囲リングヘッド17がある。この包囲リングヘッド17は、軸方向の取り付け(締め付け、クランピング)を通して、ラングボデー18の後方拡張部(後方伸長部、バックストレッチ)の連結(結合、カプリング)を許容する。
【0024】
順に、このラングボデー18は、上記制御コンソール13の包囲リングヘッド17内に確立されたチャネル(溝)20内に適合する外部円周リブ19を組み込んで(有して)おり、これにより、ラングボデー18が、より良く、固定されるようになっている。
【0025】
このラングボデー18は、末端がチャンバ12に接続している中間管状ダクト22に接続された末端狭窄部21を有している。チャンバ12は、可変容積(体積)を有しており、これは、血液潅流ポンプ23の一部である。
【0026】
このラングボデー18は、また、上記制御コンソール13の外部ピストン16に接する(当接する)、弾力性(伸縮性)があり変形自在な材料からなる前部膜(正面膜)24を有している。これにより、外部ピストン16によりなされる軸両方向における全ての動き(移動)が、前部膜24に伝えられ、これは、順に、それにより、移動(動き)を伝達する生理学的流体の手段によって、上記潅流ポンプ23のチャンバ12の内部に伝えられる。上記生理学的流体は、潅流ポンプ23のチャンバ12と、中間管状ダクト22と、ラングボデー18の前部と、からなるスペース(空間)を占める。
【0027】
上記潅流ポンプ23のチャンバ12の圧力は、外部ピストン16の変位(移動)の手段により、上記膜24及び上記移動(動き)を伝達する生理学的流体を通して、パルスとして、伝達される。
【0028】
上記スペイン特許第200601000号明細書に記載されているように、潅流ポンプ23は、血液を受け入れ、そして、遠心力の手段により、出力線状流れを発生する。当該出力線状流れは、横座標軸が時間を示しており、縦座標軸が圧力若しくは流れを示している、図4に示すダイヤグラムにおいて、破線1で示している。その脈動流れは、上記潅流ポンプにより、その線状流れに重ね合わされ、上記制御コンソールの手段による、調整可能な周波数(振動数、度数、頻度、回数)と振幅とを有する脈動波2を発生させる。その制御コンソールの外部ピストン16は、潅流ポンプ23の内部の弾力性(伸縮性)を有するライニングの膨張と収縮を生じさせる。従って、圧力値や流動値、線状コンポーネントや脈動コンポーネント、及び、脈動効果の周期(期間)や時間、を変化させることが可能になる。
【0029】
上記潅流ポンプ23は、インレット(入口)5と、アウトレット(出口)6とを有する、カプセル若しくはケーシング4をなす。その内部において、血液推進ロータ7が回転し、この血液推進ロータ7は、その遠心力の手段により、インレット5を通して血液を吸引し、そして、アウトレット6を通して連続的な流れを送出する。
【0030】
それは、また、ケーシング4の壁部用の、鐘状(ベル形)の膜として形成された、弾力性(伸縮性)を有するライニング8を有しており、それは、その内側エッジにおいて、そのリング領域における弾力性(伸縮性)を制限する要素としてのリング9を提供する。上記リング領域は、水密に、カプセル若しくはケーシング4の壁部に接続している。その上端部は、また、他の同様のリング10を有しており、それは、その上部において、適切な厚さを有するリングリップ11になっている。このリングリップ11は、インレット5に関して、同軸に位置しており、静止状態において、その軸方向の通路(流路)を閉鎖しない。膜8を膨張させることにより、制御コンソール13が作動(活性化)せしめられる時にのみ、それは、僅かに、且つ、弾性的に、血液流れの流入を閉鎖するために、変形せしめられる。それは、ケーシング4と膜8との間に形成されるチャンバ12を膨張させたり収縮させるそのポンプ装置により発生せしめられる圧力の結果として流体が反対方向に循環しようとする時に、逆止弁(逆止め弁)として機能する。
【0031】
上記移動(動き)を伝達する生理的流体が、チャンバ12に達するとき、脈動による血圧の上昇により、内部容積(体積)は減じ、アウトレット6にそれ自体を現す(発現する、マニフェストする)。
【0032】
破線は、実線により示されているその不活性位置からの、上記鐘状の膜8の変形を示している。
【0033】
参照符合3は、上記推進ロータ7の回転を達成するための、外部磁石トランスミッションプレートを示している。
【0034】
上記チャンバ12の膨張と収縮は、ソレノイド25の手段により電子的に動作(作動)する上記外部ピストン16の前後方向の交互移動の手段により、達成される。これは、その周波数(振動数、回数、度数,頻度)とコース(方向、進行、経過)とが、制御コンソール13の手段により、患者の生物学的パルスに依存(従属)することを確実なものとする。
【0035】
本発明の装置が、一旦、作動(起動、活性化)せしめられると、液圧脈動は、3つの異なった方法で、生じせしめられることができる。
(外部ECG信号との同期)
ECGの外部同期を用いるために、我々は、基準として「R」波を用いる、QRS群(QRSコンプレックス)に基礎を置くであろう。
【0036】
その目的のために準備されたコネクタを通して、我々は、ECG信号を受け取り、そして、我々は、トリガー検知アルゴリズムの手段により、その信号を考慮に入れて、常に、行動するであろう。
【0037】
スクリーンに示される、その「ECG同期」メニューにおいて、我々は、分あたりの脈動(鼓動、動悸、脈拍、ビート)でサンプル(実例、見本)が取られる、その外部信号の頻度(度数、回数、周波数)を視覚化することができるであろう。その同期については、遅延(遅れ)、若しくは前進(進み)があり得る。
(単一脈動モード)
このモードにおいて、装置(システム)は、スタートボタンが押圧される度に、単一脈動(振動)を実行し、その値は、推進時間に応じて(従属して)、変更されることが可能である。
(自動脈動モード)
この自動モードにおいて、装置(システム)は、事前に確定されたパターンに基づく液圧脈動を生成(発生)する。当該パターンは、頻度(ビート/分)が40と120の間で調整可能に留まるように、そして、デフォルトで、分あたり80ビートに留まるように、使用者によって変更されることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動伝達液状流体の手段により、潅流ポンプを交互に膨張させたり収縮させることによって、潅流ポンプのチャンバの容積を変化させるための潅流ポンプ用液圧脈動装置であって、
弾力性がある変形自在な前部膜(24)を有するラングボデー(18)を備え、
上記前部膜(24)の上に、両方向に変位自在であり制御コンソール(13)の側面に位置する外部ピストン(16)が入り込んで当接し、
上記制御コンソール(13)は、また、上記外部ピストン(16)を取り囲む包囲リングヘッド(17)を備え、
上記包囲リングヘッド(17)は、ラングボデー(18)の後部の固定手段をなし、
上記ラングボデー(18)は、末端が潅流ポンプ(23)のチャンバ(12)に接続している中間管状ダクト(22)に接続された末端狭窄部(21)を備え、
上記移動伝達液状流体は、上記前部膜(24)の前方のラングボデー(18)の前部と、上記中間管状ダクト(22)と、潅流ポンプ(23)のチャンバ(12)と、からなる内部空間に位置していることを特徴とする、潅流ポンプ用液圧脈動装置。
【請求項2】
上記制御コンソール(13)の上記包囲リングヘッド(17)と、上記外部ピストン(16)と、の間には、上記ラングボデー(18)の後方拡張部が適合する中間スペースがあり、
上記後方拡張部は、上記包囲リングヘッド(17)の一部分内に確立されたチャネル(20)に適合する外部円周リブ(19)を有することを特徴とする、請求項1記載の潅流ポンプ用液圧脈動装置。
【請求項3】
上記制御コンソール(13)の上記外部ピストン(16)は、電子的に動作するソレノイド(25)の手段により、両方向に交互に変位せしめられることを特徴とする、請求項1又は2記載の潅流ポンプ用液圧脈動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−520261(P2013−520261A)
【公表日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−554377(P2012−554377)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【国際出願番号】PCT/ES2010/070753
【国際公開番号】WO2011/104392
【国際公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(508313725)
【氏名又は名称原語表記】Salvador MERCE VIVES
【Fターム(参考)】