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潜在捲縮性ポリエステル複合繊維および不織布
説明

潜在捲縮性ポリエステル複合繊維および不織布

【課題】優れた伸長性と伸長回復性を有し、良好な切断性およびソフトな風合いの不織布を得るのに適した、表面性質と加工性に優れた潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を提供する。
【解決手段】2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン2〜7モル%とイソフタル酸5〜13モル%とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンが0.5モル%以下、イソフタル酸が1モル%以下のポリエチレンテレフタレート(B)とがサイドバイサイドに接合した複合繊維であって、単繊維の切断伸度が30%以下で、タフネスが17〜23cN/dtex・(%)1/2、180℃での発現捲縮数が30〜50コ/25mmであり、前記(A)と前記(B)との質量比率が(A)/(B)=10/90〜40/60である潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潜在捲縮性ポリエステル複合繊維とその潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を含有する不織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリエステル繊維は、力学的性質、熱安定性およびウォッシャブル性等に優れていることから、衣料用、産業資材用およびインテリア用等極めて広い分野に使用されている。それらの用途の中で、生活資材用途、特に貼付基材用途においては、機能性とフィット性の要求から、伸縮性および弾性回復性に富んだ繊維が求められている。
【0003】
従来から、ポリエステル繊維に伸縮性を付与する方法として、潜在捲縮能を有するポリエステル複合繊維によるものが知られている。
【0004】
例えば、金属塩スルホネート基を有する構成単位を3〜6モル%共重合したエチレンテレフタレート単位主体のポリエステルを使用した潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が提案されている(特許文献1参照。)。しかしながら、このような複合成分ポリマーとして、金属スルホネート基を有する構成単位を共重合したポリエステルを用いた複合繊維は、ポリマーの重合触媒として一般的に用いられる重金属が繊維表面に析出するという課題があった。さらに、この複合繊維は、薬剤を塗布した衛生材の場合、薬剤と金属スルホネート基とが反応して薬効を損なうという課題もあった。
【0005】
また別に、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン2〜7モル%とイソフタル酸5〜13モル%とを共重合したエチレンテレフタレート単位主体のポリエステルを使用した複合繊維が提案されている(特許文献2参照。)。しかしながら、この提案では、熱処理時の繊維の収縮率が大きく、風合いが硬くなるという課題があった。
【0006】
さらには、酸成分に対してイソフタル酸を4〜12モル%と、金属塩スルホネート基を有したイソフタル酸を3〜6モル%共重合させたエチレンテレフタレート単位主体のポリエステルを使用した複合繊維が提案されており(特許文献3参照。)、このポリエステルの使用により、繊維の伸度と強度を適正化し、切断性を改善したことが示されている。しかしながら、金属スルホネート基を有する構成単位が含まれているため、上述した表面性質の課題があり、衛生材に用いるには不適当であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−78214号公報
【特許文献2】特開平7−54216号公報
【特許文献3】特開2003−89928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の従来技術の複合繊維において、薬効を損なうことのない共重合成分を用いた複合繊維は、強度と伸度が大きいため不織布加工の切断性が良好でなく、また風合いが硬いという課題があった。
【0009】
そこで本発明の目的は、上記従来技術の欠点、すなわち風合いの硬化、薬効の喪失、不織布加工後の切断不良を解消し、優れた伸長性と伸長回復性を有し、良好な切断性およびソフトな風合いの不織布および織編物等の布帛を得るのに適した、表面性質と加工性に優れた潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した結果、共重合ポリエステル成分の質量比率を抑えることによって柔軟な風合いを得ると共に、強度と伸度を抑え、適切な範囲にすることが出来ることを見出し、本発明に至った。
【0011】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維は、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン(以下、BHPPと略すことがある。)2〜7モル%とイソフタル酸(以下、IPAと略すことがある。)5〜13モル%とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンが0.5モル%未満、イソフタル酸が1モル%未満のポリエチレンテレフタレート(B)とが、サイドバイサイドに接合した複合繊維であって、単繊維の切断伸度が30%以下で、かつ次式(1)によって求められる繊維のタフネスが17〜23cN/dtex・(%)1/2、180℃の温度における無荷重熱処理時の発現捲縮数が30〜50コ/25mmであり、前記共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と前記ポリエチレンテレフタレート(B)との質量比率が、(A)/(B)=10/90〜40/60であることを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合繊維である。
タフネス(cN/dtex・(%)1/2)=切断強度(cN/dtex)×切断伸度(%)1/2 ・・・(1)
また、本発明の不織布は、本発明の前記の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を70質量%以上含有する不織布であって、伸長率が60%、伸長回復率が55%以上であることを特徴とする不織布である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ソフトな風合いと良好な切断性を有する、伸長性と伸長回復性に優れた不織布あるいは織編物等の布帛を得るのに適した、加工性と表面性質の優れた潜在捲縮性を有するポリエステル複合繊維が得られる。そして、本発明のこの潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を用いて、上記のようにソフトな風合いと良好な切断性を有する、伸長性と伸長回復性に優れた不織布や織編物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維について詳細に説明する。
【0014】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維は、高収縮な共重合ポリエチレンテレフタレート(A)、およびその共重合ポリエチレンテレフタレート(A)に比べ低収縮なポリエチレンテレフタレート(B)から構成され、詳細にはBHPP2〜7モル%とIPA5〜13モル%とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンが0.5モル%未満、イソフタル酸が1モル%未満ポリエチレンテレフタレート(B)とが、サイドバイサイドに接合したポリエステル複合繊維であって、弛緩熱処理によってスパイラル捲縮を発現する潜在捲縮性複合繊維である。
【0015】
本発明で用いられる共重合ポリエチレンテレフタレート(A)は、エチレンテレフタレート単位を主たる構成成分とする共重合ポリエチレンテレフタレートであり、共重合成分としてBHPPまたはそのエステル形成誘導体(以下、エステル形成誘導体も含めてBHPPと略すことがある。)とIPAを用いて改質された共重合ポリエチレンテレフタレートである。ここで言うエチレンテレフタレート単位とは、テレフタル酸とエチレングリコールの一等量同士が脱水縮合反応したものである。
【0016】
本発明においては、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)中のBHPPの共重合割合は、2〜7モル%とするものであり、中でも共重合割合を4〜6モル%とすることが好ましい。BHPPの共重合割合が2モル%未満では、収縮特性が不十分となり、不織布にした場合、その伸長率と伸長回復率が小さく十分な伸縮機能が得られない。一方、BHPPの共重合割合が7モル%を超えると、ポリマーの融点が低下し、繊維の強度低下が著しいため、不織布用途には適さなくなる。
【0017】
また、本発明においては、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)中のIPAの共重合割合は、5〜13モル%とするものであり、中でも共重合割合を7〜11モル%とすることが好ましい。IPAの共重合割合が5モル%未満では、実質的に大きな捲縮が得られず、一方、IPAの共重合割合が13モル%を超えると、ポリマーの融点が低下するため、熱安定性が損なわれる。
【0018】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート(B)は、BHPPが0.5モル%未満、IPAが1モル%未満のポリエチレンテレフタレートである。
【0019】
ポリエチレンテレフタレート(B)は、上記のとおり、BHPPを0.5モル%未満共重合したものであり、その共重合割合は好ましくは0.25モル%未満であり、最も好ましくはゼロ(0)モル%である。
【0020】
また、ポリエチレンテレフタレート(B)は、上記のとおり、IPAを1モル%未満共重合したものであり、その共重合割合は好ましくは0.5モル%未満であり、最も好ましくはゼロ(0)モル%である。
【0021】
本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート(B)において、BHPPとIPAの共重合割合が多くなると、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)との熱収縮差が不十分となり、得られる複合繊維を不織布とした場合、その伸長率と伸長回復率が小さく十分な伸縮機能が得られない。
【0022】
また、本発明で用いられる共重合ポリエチレンテレフタレート(A)成分およびポリエチレンテレフタレート(B)成分には、本発明の効果を損なわない範囲内で、他の共重合成分を含んでいてもよい。
【0023】
共重合可能な他の共重合成分としては、例えば、コハク酸、シクロヘキサジカルボン酸等のジカルボン酸類、ジエチレングリコール、トリメチレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコールなどのジオール類を挙げることができる。また、それらの他の共重合成分の、エチレンテレフタレート(A)およびポリエチレンテレフタレート(B)への共重合割合は、15モル%以下とすることが好ましく、より好ましくは10モル%以下、更に好ましくは5%以下である。
【0024】
そして、ポリエチレンテレフタレート(B)は、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)より熱収縮性が低くなるようにするため、結晶性を大きく阻害する成分が含まれたものや、BHPP、IPAおよびスルホン酸塩基化合物等はできるだけ含有しないようにすることが好ましい。
【0025】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維において、用いられる共重合ポリエチレンテレフタレート(A)の固有粘度は、溶融紡糸を円滑に行う観点からは、好ましくは0.55〜0.70である。また、本発明で用いられるポリエチレンテレフタレート(B)の固有粘度は、溶融紡糸を円滑に行う観点からは、好ましくは0.45〜0.60である。また、捲縮発現を十分なものとし、しかも紡糸安定性を損なわないようにする観点からは、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)の固有粘度が、ポリエチレンテレフタレート(B)の固有粘度より高い方が好ましく、これらの2種のポリマーの固有粘度の差は、好ましくは0.25以下であり、より好ましくは0.02以上である。固有粘度の差が0.25より大きくなると、紡糸時に糸がベンディングするため、安定して紡糸する事が難しくなる。固有粘度の差が0.02より小さくなると、十分な捲縮発現が得られなくなる。
【0026】
さらに、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維においては、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)および/またはポリエチレンテレフタレート(B)に、難燃剤、抗菌剤、芳香剤、顔料およびセラミックス等種々の特性付与剤や添加物を任意に配合することができる。その他の紡糸条件は、従来のポリエステル複合繊維の紡糸条件を採用することができる。
【0027】
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)とポリエチレンテレフタレート(B)の質量比率は、(A)/(B)=10/90〜40/60であり、質量比率は、特に20/80〜30/70であることが望ましい。質量比率が、この範囲を超えて共重合ポリエチレンテレフタレート(A)が少なくなる場合には、十分な潜在捲縮を発現させることができなくなる。また、質量比率がこの範囲を超えて共重合ポリエチレンテレフタレート(A)が多くなる場合には、発現する捲縮が過多となり、風合いが硬くなる。
【0028】
また、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)成分の質量比率を40%以下にすることにより、得られる複合繊維の伸度と強度を適切な範囲に収め、適度な切断性を持つ複合繊維を得ることができる。共重合ポリエチレンテレフタレート(A)が40%を超えて複合された場合、得られる複合繊維の強度と伸度が高くなり、適切な切断性を持つ不織布が得られなくなる。
【0029】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル繊維の構造は、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)とポリエチレンテレフタレート(B)とが、繊維の断面を横断する界面によって長手方向に平行に張り合わされたサイドバイサイド構造であれば良く、断面形状は中空と中実のどちらであっても構わない。
【0030】
また、本発明の潜在捲縮性ポリエステル繊維の単繊維繊度は、0.5〜10dtexであることが好ましい。単繊維繊度が0.5dtex未満となると、製糸性が不良となったり、カード通過性が不良となり、地合の悪い不織布となり好ましくない。また、単繊維繊度が10dtexを超えると、風合いのソフトな不織布が得られなくなる傾向を示す。単繊維繊度は、カード通過性および他素材との混綿使用の面から、好ましくは1dtex〜5dtexである。
【0031】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維は、単繊維の切断伸度が30%以下であり、特に好ましくは15〜30%である。単繊維の切断伸度が30%を超えると、本発明の複合繊維からなる不織布は、裁断の際に繊維が伸びてしまい裁断されにくく、不織布の切断面に毛羽が発生する。
【0032】
加えて、本発明においては、下記式(1)により求められる潜在捲縮性ポリエステル複合繊維のタフネスを、17〜23cN/dtex・(%)1/2とするものである。タフネスは、特に好ましくは19〜22cN/dtex・(%)1/2である。
タフネス(cN/dtex・(%)1/2)=切断強度(cN/dtex)×切断伸度(%)1/2 ・・・(1)
タフネスが17cN/dtex・(%)1/2を下回る場合は、不織布加工時に繊維の切断を招き、飛綿による不織布欠点発生の要因となる。また、タフネスが23cN/dtex・(%)1/2を超える場合には、得られる不織布の強度が高くなりすぎ、切断性が悪くなる。
【0033】
本発明の複合繊維の切断伸度を30%以下、タフネスを17〜23cN/dtex・(%)1/2とするためには、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)成分の質量比率を40%以下にすると共に、口金直下に設置した急冷装置(以下サブチムニーとする)を用いて急冷し、繊維内のポリマーの配向を高めることで達成することができる。単純に延伸倍率を高めただけでは、繊維の強度が高くなり、適度なタフネスの繊維を得ることができない。
【0034】
さらに、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維においては、柔軟な風合いと伸縮性、伸長回復性を有する不織布を得るために、180℃の温度における無荷重熱処理時の発現捲縮数を30〜50コ/25mmとするものである。捲縮数が30コ/25mm未満では、伸縮性が著しく低下し、伸長回復性の低いものとなる。また、捲縮数が50コ/25mmを超える場合には、不織布にしたときの風合いが硬くなる傾向がある。風合いと伸縮性の最適な不織布を得るためには、発現捲縮数を35〜45コ/mmとすることが好ましい。
【0035】
本発明の複合繊維の発現捲縮数30〜50コ/25mmとするためには、共重合ポリエチレンテレフタレート(A)とポリエチレンテレフタレート(B)の質量比率を(A)/(B)=10/90〜40/60とすることで達成することができる。
【0036】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維は、以下の製糸方法によって製造する事が出来る。
【0037】
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)及びポリエチレンテレフタレート(B)を溶融し、複合溶融紡糸装置を用いて所定の質量比率にて複合流とした後、孔径0.3〜0.6mmの吐出孔を150〜700孔有する紡糸口金を通して、融点よりも20〜40℃高い紡糸温度で溶融紡糸し、口金から紡糸された繊維に、サブチムニーにより10〜25℃の温度の空気50〜110m/分の流れで急冷し、次いで10〜25℃の温度の空気を40〜100m/分の流れで吹き付けて冷却させた後、紡糸油剤を付与し、引き取り速度900〜1500m/分で一旦、缶に納めることにより未延伸糸トウを得る。
【0038】
次いで、得られた未延伸糸トウを2.5〜4.0倍の延伸倍率で、温度75〜95℃の液浴を用いて1段延伸を施し、30℃〜130℃の温度で定長熱処理を施し、クリンパーを用いて好ましくは12〜20山/25mmの機械捲縮を付与し、仕上げ油剤水溶液をスプレーで付与し、60〜150℃の温度で15〜30分間乾燥し、長さ20〜80mmに切断して、単繊維繊度が0.5〜10dtexの潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を製造することができる。
【0039】
また、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維には、梳綿工程通過時、ネッブや未開繊トラブルが発生しない程度に、通常の押し込み型捲縮機などにより、好ましくは押し込み圧2〜3kg/cmGにより機械捲縮12〜20コ/25mmを付与した原綿とすることが好ましい。
【0040】
本発明の不織布は、前記した本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を70質量%以上含有するものである。潜在捲縮性ポリエステル複合繊維が70質量%に満たない場合は、本発明で目的とする伸縮率に優れた不織布は得られない。
【0041】
すなわち、本発明の不織布には、本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維以外に、30質量%未満の範囲で、通常のポリエステル繊維、熱接着性バインダー繊維、木綿、ウールおよび麻などの天然繊維等を適宜混綿することもできる。
【0042】
本発明の不織布は、前記した本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維からなる原綿(短繊維)を、単独または必要に応じて通常のポリエステル繊維や熱接着バインダー繊維と混綿して、カードにかけ繊維ウェブを作製し、得られた繊維ウェブを必要に応じて、ニードルパンチを施した後、フリーな状態で熱処理して潜在捲縮を顕在化させることにより繊維同士の絡みを生ぜせしめ、伸縮回復性に極めて優れた不織布を得ることができる。
【0043】
本発明の不織布の伸長率は、60%以上とするものである。伸長率が60%に満たない場合には、伸縮性を要する用途には適用できない。
【0044】
また、本発明の不織布の伸長回復率は、55%以上とするものである。伸長回復率が55%に満たない場合には、外力により変形しやすくなる。
【0045】
本発明の不織布の目付は、50〜150g/mとすることが好ましい。目付が50g/m未満では、十分な不織布の強度を得ることができず、目付が150g/mを超えると、目的とする伸縮性が得られないことがある。より適切な強度と伸縮性を得るためには、目付は70〜110g/mとすることが好ましい。
【0046】
本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維は、不織布の他、紡績糸としても用いることができ、それらは、伸縮性やフィット性を必要とする用途、例えば、貼付基材用途、スポーツ用衣料等の織編物や中綿などに用いることができる。
【実施例】
【0047】
次に、実施例によって本発明の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維について、詳しく説明するが、本発明は実施例のみに限定されるものではない。
【0048】
本発明における特性値等の測定法は、次のとおりである。
【0049】
(原綿の評価)
<繊度>
JIS−L1015(2010年)の方法に従い、測定した。
【0050】
<切断強度(cN/dtex)および切断伸度(%)>
JIS−L1015(2010年)の方法に従い、測定した。
【0051】
<捲縮数(コ/25mm)>
JIS−L1015(2010年)の方法により測定した。発現捲縮数は、短繊維を180℃の温度で5分間乾熱処理した後、測定した。
【0052】
(不織布の評価)
<目付け(g/m)>
JIS−L1085(1998年)の方法により、20cm×20cmの試料重量を測定し、cmあたりの重量として求めた。
【0053】
<伸縮率>
不織布試験片(5cm幅×約60cm長さ)について、引っ張り試験機を用い、試験片の一端を上部クランプで固定し、他端に初荷重30gをかける。次いで、20cm間隔に印をつけ、静かに240gの荷重をかける。1分間放置後の印間の長さを測り、次の式で伸長率(%)を求め、3回以上の平均値で表す(小数点以下1桁まで)。
伸長率(%)={(L−L)/L}×100
ただし、L:もとの印間の長さ(20cm)
:240gの荷重をかけ1分間放置後の印間の長さ(cm)
<伸長回復率>
上記伸長率測定用と同様な試験片につき、自記記録装置付定速伸長形引張試験機を用い、初荷重30gのもとで、つかみ間の距離を20cmまたは50cmとなるように試験片を取り付け、1分間当たりつかみ間隔の100%の引張速度で求めた。荷重240g時の伸びの80%まで試験片を伸ばして、次の式で定荷重240gにおける伸長回復率(%)を求め、それぞれ3回以上の平均値で表す。
伸長回復率(%)={(L10−L11)/L10}×100
ただし、L10:1分間当たりつかみ間隔の100%引張り速度で求めた荷重240g時の伸びの80%の伸び(cm)
11:5回繰り返し荷重した後の残留の伸び(cm)。
【0054】
<風合い>
10人のパネラーが、手で触れたときの触感(風合い;ソフト性)をランクづけで、非常に良好(10点)、良好(8点)、普通(5点)、不良(0点)として評価し、その平均点が8点を超える場合を不織布としての風合いとして、非常に良好(◎)とし、7点以上8点以下良好(○)、4点〜7点未満を普通(△)、4点未満を不良(×) として評価した。本発明においては、◎および○を合格とした。
<不織布の切断性>
横および縦がそれぞれ20cmの試料を作成し、内径10cmの円形打ち抜き機を用いて試料を打ち抜き、その切断面に飛び出した単繊維毛羽の本数を評価指数として、下記の基準で評価を行った。本発明においては、◎および○を合格とした。
◎:毛羽数0〜1本/円周
○:毛羽数2〜5本/円周
×:毛羽数6本以上/円周。
【0055】
(実施例1)
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)として、エチレンテレフタレートを主成分とし、IPA7.1モル%と、BHPP4.4モル%とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレートと、ポリエチレンテレフタレート(B)として、ポリエチレンテレフタレートホモポリマーを用いて、複合溶融紡糸装置によって丸断面口金孔から300℃の温度で質量比率(A)/(B)=20/80とし、304g/分の吐出量、1200m/分の速度で巻き取り、サイドバイサイド型未延伸糸を得た。このとき、口金直下に取り付けたサブチムニーにより、急冷を施した。これらの未延伸糸を収束後、延伸倍率3.56倍、延伸温度85℃で延伸し、緊張熱処理温度140℃で熱処理を行い、押し込み式捲縮機で機械捲縮を付与した後、切断して捲縮数15コ/25mm、繊維長51mm、単繊維繊度2.2dtexの短繊維を得た。
【0056】
別途、熱接着繊維として、イソフタル酸40モル%共重合させた、単繊維繊度4.4dtex、カット長51mmの共重合ポリエチレンテレフタレート繊維を作成した。
【0057】
次に、上記で得られた短繊維と熱接着バインダー繊維を、95:5の質量割合でオープナーを用いて開繊混綿し、ローラー型梳綿に2回通して目付け120g/mの繊維ウェブを160℃の温度のオーブン中で5分間自由収縮熱処理を行い、続いて表面温度160℃の熱ロールで1分間熱接着処理を行い、不織布を作成した。得られた不織布は、風合い、切断性共に良好な結果を示した。用いた短繊維(原綿)の特性と、得られた不織布の評価結果を、表1に併せて示す。
【0058】
(実施例2および実施例3)
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)とポリエチレンテレフタレート(B)の質量比率を、それぞれ(A)/(B)=25/75(実施例2)、30/70(実施例3)としたこと以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸し、機械捲縮を付与した後切断して短繊維を得た。次に、得られた短繊維と実施例1で用いたものと同じ熱接着バインダー繊維を用いて、実施例1と同様に不織布を作成した。共重合ポリエステル成分(A)の質量比率の少ない実施例2の方が低タフネスを示し、切断性が良好であったが、実施例3ではより高い伸長率、伸長回復率が得られた。いずれの実施例においても良好な風合いが得られた。これら各短繊維(原綿)の特性、および不織布の評価結果を表1に併せて示す。
【0059】
(実施例4)
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)として、エチレンテレフタレートを主成分とし、IPA6.0モル%とBHPP5.4モル%とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート用いたこと以外は、実施例3と同じ条件で紡糸、延伸し、機械捲縮を付与した後、切断して短繊維を得た。次に、得られた短繊維と実施例1で用いたものと同じ熱接着バインダー繊維を用いて、実施例1と同様に不織布を作成した。実施例1〜3に比べてBHPPの共重合割合が増えたため、より高い伸長率、伸長回復率を示したが、反面風合いは若干硬くなった。また、タフネスは低い値を示し、切断性は良好であった。これら各短繊維(原綿)の特性、およびこれを用いて実施例1と同様にして作成した不織布の評価結果を、表1に併せて示す。
【0060】
(比較例1)
実施例3と同じ質量比率で、サブチムニーによる冷却を施さないこと以外は、実施例1と同じ条件で紡糸し、延伸倍率を3.40倍としたこと以外は、実施例1と同じ条件で延伸し機械捲縮を付与した後、切断して短繊維を得た。
【0061】
次に、前記比較例で得られた短繊維と実施例1で用いたものと同じ熱接着バインダー繊維を95:5の質量割合で混綿し、実施例1と同様にして不織布を作成した。得られた短繊維は伸度が高く、加えてタフネスも高かったため、不織布の切断性は実施例1〜4に比べ悪くなった。用いた短繊維(原綿)の特性と、得られた不織布の評価結果を、表1に併せて示す。
【0062】
(比較例2)
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)とポリエチレンテレフタレート(B)の質量比率を(A)/(B)=50/50としたこと以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸して短繊維を得た。
【0063】
次に、前記比較例で得られた短繊維と実施例1で用いたと同じ熱接着バインダー繊維を95:5の重量割合で混綿し、実施例1と同様にして不織布を作成した。得られた短繊維はタフネスが高くなり、不織布の切断性は実施例1〜4に比べ悪くなった。また、捲縮発現数が高いため、不織布の風合いも硬くなった。用いた短繊維(原綿)の特性と、得られた不織布の評価結果を、表1に併せて示す。
【0064】
(比較例3)
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)とポリエチレンテレフタレート(B)の質量比率を(A)/(B)=50/50としたこと以外は、比較例1と同じ条件で紡糸、延伸し、機械捲縮を付与した後、切断して短繊維を得た。次に、前記比較例で得られた短繊維と実施例1で用いたものと同じ熱接着バインダー繊維を95:5の質量割合で混綿し、実施例1と同様にして不織布を作成した。得られた短繊維は、伸度、タフネスおよび捲縮発現数共に高くなり、不織布の切断性および風合いは、実施例1〜4に比べ悪くなった。これら短繊維(原綿)の特性、およびこれらを用いて実施例1と同様にして作成した不織布の評価結果を、表1に併せて示す。
【0065】
(比較例4)
共重合ポリエチレンテレフタレート(A)に、IPA9.1モル%を共重合したエチレンテレフタレート単位主体のポリエステルを用いたこと以外は、実施例1と同じ条件で紡糸、延伸して短繊維を得た。
【0066】
次に、前記各比較例で得られた短繊維と実施例1で用いたと同じ熱接着バインダー繊維を95:5の質量割合で混綿し、実施例1と同様にして不織布を作成した。得られた短繊維は、伸度、タフネス共に高く、切断性は実施例1〜4に比べ悪くなった。用いた短繊維(原綿)の特性、得られた不織布の評価結果を表1に併せて示す。
【0067】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパン2〜7モル%とイソフタル酸5〜13モル%とを共重合した共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]プロパンが0.5モル%以下、イソフタル酸が1モル%以下のポリエチレンテレフタレート(B)とがサイドバイサイドに接合した複合繊維であって、単繊維の切断伸度が30%以下で、かつ、次式(1)によって求められる繊維のタフネスが17〜23cN/dtex・(%)1/2、180℃の温度における無荷重熱処理時の発現捲縮数が30〜50コ/25mmであり、前記共重合ポリエチレンテレフタレート(A)と前記ポリエチレンテレフタレート(B)との質量比率が、(A)/(B)=10/90〜40/60であることを特徴とする潜在捲縮性ポリエステル複合繊維。
タフネス(cN/dtex・(%)1/2)=切断強度(cN/dtex)×切断伸度(%)1/2 ・・・(1)
【請求項2】
請求項1に記載の潜在捲縮性ポリエステル複合繊維を70質量%以上含有する不織布であって、伸長率が60%以上、伸長回復率が55%以上であることを特徴とする不織布。

【公開番号】特開2013−44070(P2013−44070A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184327(P2011−184327)
【出願日】平成23年8月26日(2011.8.26)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】