説明

潜熱蓄熱材分散自動車用エンジン冷却液組成物

【課題】早期暖気性及び温間運転域における冷却性に優れ、かつ、非引火性及び防食性である冷却液組成物を提供する。
【解決手段】潜熱蓄熱材が封入されたマイクロカプセル、該マイクロカプセルが分散された基剤及び防錆剤を含有する冷却液組成物であって、該基剤が80〜84%エチレングリコール水溶液であり、該マイクロカプセルが凹状であり、該マイクロカプセルを、基剤100質量部に対して、5〜15質量部含有し、該防錆剤として、基剤100質量部に対して、アルミ防錆剤を0.1〜0.5質量部、鉄防錆剤を3〜5質量部、及び銅防錆剤を0.1〜0.5質量部含有する冷却液組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷却液組成物、特には自動車用エンジンに使用される冷却液組成物に関する。具体的には、早期暖気性及び温間運転域における冷却性に優れ、かつ、非引火性及び防食性である冷却液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、潜熱蓄熱材を膜により覆って形成され、水よりも比熱が小さいカプセル粒子を分散させた熱吸放出媒体が記載されている。特許文献1に記載の発明においては、早期暖気性を高めるために、冷媒を低比熱化し、また水より比熱の低い潜熱蓄熱物質を冷媒に配合している。しかしながら、特許文献1には、自動車用エンジン冷却液として実用上の効果は明確に記載されていない。また、潜熱蓄熱材を封入したマイクロカプセルを分散させることで蓄えられる熱量は大きくなるが、マイクロカプセル化することで潜熱蓄熱材単体と比べ熱伝導性が低下する可能性がある。その結果、完全に相変化するまでの時間が長くなり、過冷却温度幅が大きくなると、温間運転時の放熱が不十分となる恐れがある。また、マイクロカプセルを分散させた場合、低温時での媒体の流動性に影響が出る恐れがある。
【0003】
特許文献2には、潜熱蓄熱物質が封入されたマイクロカプセルを50%エチレングリコール水溶液に分散させた自動車エンジンの冷却水が記載されている。特許文献2に記載の発明においては、熱伝導性を高め、冷却性能を向上させるために、マイクロカプセルに金属微粒子等の熱伝導性粒子が配置されている。しかしながら、特許文献2に記載の冷却液の比熱は、従来冷却液(50%エチレングリコール冷却水)の比熱よりも大きく(表1参照)、早期暖気性が向上しているとは言えない。
【0004】
特許文献3には、100%エチレングリコールからなる冷却液が記載されている。特許文献3には、エチレングリコールは水と比較して比熱が小さいため、これを用いた熱交換器は温度上昇が早いことが記載されている。しかしながら、媒体を100%エチレングリコールとすると、温間運転時での比熱が低いため、冷却性能が低下する恐れがある。また、腐食抑制剤が添加されていないため経路内の金属防食性が劣る。また、エンジン冷却液とした場合、引火の危険性がある。
【0005】
さらに、特許文献4には、防錆剤として、セバシン酸、硝酸塩、ベンゾトリアゾールを含むエンジン冷却液が記載されている。また、特許文献5には、30〜80%エチレングリコール水溶液にカリウムミョウバン等の無機塩水和物を潜熱蓄熱材として含有する冷却液組成物が記載されている。
【0006】
しかしながら、早期暖気性及び温間運転域における冷却性に優れ、かつ、非引火性及び防食性である冷却液組成物は未だ知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−129844号公報
【特許文献2】特開2006−16573号公報
【特許文献3】特開平2−140595号公報
【特許文献4】特開2002−322467号公報
【特許文献5】特開2007−239697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、早期暖気性及び温間運転域における冷却性に優れ、かつ、非引火性及び防食性である冷却液組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は以下の発明を包含する。
(1)潜熱蓄熱材が封入されたマイクロカプセル、該マイクロカプセルが分散された基剤及び防錆剤を含有する冷却液組成物であって、
該基剤が80〜84%エチレングリコール水溶液であり、
該マイクロカプセルが凹状であり、
該マイクロカプセルを、基剤100質量部に対して、5〜15質量部含有し、
該防錆剤として、基剤100質量部に対して、アルミ防錆剤を0.1〜0.5質量部、鉄防錆剤を3〜5質量部、及び銅防錆剤を0.1〜0.5質量部含有することを特徴とする上記冷却液組成物。
(2)潜熱蓄熱材がパラフィンワックスである、上記(1)に記載の冷却液組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明の冷却液組成物は、早期暖気性及び温間運転域における冷却性に優れ、かつ、非引火性及び防食性であるため、特に自動車のエンジン冷却液に適する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、比熱測定装置を示す図である。
【図2】図2は、実施例1(上)及び比較例10(下)のDSC測定結果を示す図である。
【図3】図3は、実施例1(左)及び比較例10(右)の電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の冷却液組成物は、潜熱蓄熱材が封入されたマイクロカプセルが凹状であることを特徴とする。これによりマイクロカプセルの表面積が大きくなるため、潜熱蓄熱材の過冷却温度幅が狭くなり、融解、凝固時の熱伝導性が向上する。
【0013】
本発明の冷却液組成物は、潜熱蓄熱材が封入されたマイクロカプセルを含有する。これにより、温間運転域の熱輸送量が大きくなるため、本発明の冷却液組成物は冷却性能に優れる。本発明の冷却液組成物は、高温時(90℃)の比熱が従来の冷却液(50%エチレングリコール水溶液)の比熱3.6kJ/kg以上である。
【0014】
上記潜熱蓄熱材は、周囲から熱を吸収するときは相転移して熱を潜熱として蓄え、周囲に熱を放出するときは相転移して潜熱を放出するものである。潜熱蓄熱材としては、例えば、硫酸ナトリウム水和物、チオ硫酸ナトリウム水和物、塩化カルシウム水和物等の無機物、ヘキサデカン、オクタデカン等の脂肪族炭化水素、ステアリン酸、酢酸ナトリウム水和物等の高級脂肪酸又はその塩、オレイン酸アミド等のアミド化合物、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル等のエステル化合物、ステアリルアルコール等のアルコール類、パラフィンワックス、又は、ポリエチレンオキシド、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィンのオリゴマー等の有機物、エリスリトール、スレイトール、キシリトール、マンニトール等の糖アルコール類を挙げることができる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。これらの中では、融点が実際に使用される温度域である80℃から100℃の範囲内にあることから、パラフィンワックス、スレイトール、キシリトールが好ましく、パラフィンワックスが特に好ましい。また、潜熱が大きい潜熱蓄熱材を用いることが好ましく、例えば潜熱が150J/g以上である潜熱蓄熱材を使用することが好ましい。
【0015】
上記マイクロカプセルの形状は凹状である。ここで、凹状とは、マイクロカプセルの表面積が球状である場合に対して増大する形状であれば特に限定されず、例えば扁平状の形状が挙げられる。マイクロカプセルの表面積の増大により、潜熱蓄熱材の過冷却温度幅が狭くなり、融解、凝固時の熱伝導性が向上する。上記マイクロカプセルの長径は5〜100μmであることが好ましく、10〜20μmであることが特に好ましい。上記マイクロカプセルの短径は2〜50μmであることが好ましく、2〜5μmであることが特に好ましい。上記マイクロカプセルの長径と短径の比は、1:2〜1:50であることが好ましく、1:2〜1:10であることが特に好ましい。また、上記マイクロカプセルの厚さは0.1〜5μmであることが好ましく、0.5〜1μmであることが特に好ましい。
【0016】
上記凹状のマイクロカプセルは、界面重合法により製造することができる。界面重合法は、疎水性モノマーと親水性モノマーが組み合わさりエマルション液滴界面での化学反応を利用して、壁膜を成膜するものである。具体的な一例としては、油溶性モノマー、潜熱蓄熱材および相溶性溶媒を均一に混合した油相プレミックスと、油溶性モノマーと反応して膜を形成するための水溶性モノマーと乳化分散剤(分散剤)とを含む水相と、をそれぞれ調製後、水相に油相プレミックスを分散する。これにより得られた乳化分散液(エマルション)を加熱することにより、油相と水相の界面で加熱重合しカプセル壁膜を形成させる。本製造工程においては、潜熱蓄熱材および相溶性溶媒を1:10〜2:1の比で用いることが好ましい。
【0017】
ここで、マイクロカプセルの壁材としては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリアミド、ポリエステル、ポリエーテル、ポリスチレンを用いることができる。
【0018】
上記マイクロカプセルは基剤中に分散されている。上記マイクロカプセルの配合量は、本発明の冷却液組成物の高温時の比熱を高め、かつ良好な流動性を確保する観点から、基剤100質量部に対して、5〜15質量部であることが必要であり、10〜15質量部であることが好ましい。
【0019】
上記基剤は、低温時の比熱を小さくし、かつ非引火性とする観点から、80〜84%エチレングリコール水溶液であることが必要である。本発明の冷却液組成物は、20℃における比熱が従来の冷却液(50%エチレングリコール水溶液)の比熱2.7kJ/kg以下であるために、早期暖気性に優れる。上記基剤の配合量は、本発明の冷却液組成物100質量部に対して、80〜84質量部であることが好ましく、81〜83質量部であることが特に好ましい。
【0020】
本発明の冷却液組成物は、防錆剤として、アルミ防錆剤、鉄防錆剤及び銅防錆剤を含有する。
【0021】
上記アルミ防錆剤はアルミの腐食を防止するための成分である。上記アルミ防錆剤としては、硝酸、硝酸ナトリウム及び硝酸カリウム等の硝酸塩、リン酸、リン酸ナトリウム及びリン酸カルシウム等のリン酸塩が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。アルミ防錆剤は、アルミに対する防食効果の観点から、基剤100質量部に対して、0.1〜0.5質量部含まれる。
【0022】
上記鉄防錆剤は鉄の腐食を防止するための成分である。上記鉄防錆剤としては、安息香酸、オクチル酸等のモノカルボン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸等のジカルボン酸等の有機酸、有機酸塩、モリブデン酸塩、リン酸塩が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。鉄防錆剤は、鉄に対する防食効果の観点から、基剤100質量部に対して、3〜5質量部含まれる。
【0023】
上記銅防錆剤は銅の腐食を防止するための成分である。上記銅防錆剤としては、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール等のトリアゾール類、ベンゾチアゾール、メルカプトベンゾチアゾールナトリウム等のチアゾール類が挙げられる。これらは、単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。銅防錆剤は、銅に対する防食効果の観点から、基剤100質量部に対して、0.1〜0.5質量部含まれる。
【0024】
本発明の冷却液組成物には、必要に応じて、上記成分以外に、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の添加剤を配合することができる。その他の添加剤としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウム等のpH調整剤等が挙げられる。上記その他の添加剤の合計配合量は、組成物100質量部に対して、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0026】
[製造例1]
凹状マイクロカプセルの調製
凹状マイクロカプセルは、潜熱蓄熱材として合成ワックス(日本精鑞社製FNP−0090:融点90℃、融解潜熱(213J/g)、マイクロカプセル壁材としてウレタン(三井化学ポリウレタン社製D−177N)を用いて界面重合法により以下のように作製した。
【0027】
合成ワックス顆粒8gにウレタン2gと相溶性溶媒としてキシレン7gを加え、95℃に加熱して溶解し油系分散相を得た。次に、純水250gにポリビニルアルコール(和光純薬、重合度500)5gを添加して溶解させ、水系連続相を得た。この連続相をホモジナイザー(IKA社製ホモジナイザー)6500rpmで攪拌しているところに、油系分散相を投入して均一に分散させた。次に、この分散液を攪拌機200rpmで攪拌しながら硬化剤であるエチレンジアミン(和光純薬)0.44gを1分間掛けてゆっくり投入し、6時間かけて重合させて潜熱蓄熱材が封入された凹状マイクロカプセルを得た。
【0028】
[製造例2]
球状マイクロカプセルの調製
球状マイクロカプセルは、in situ法により以下のように作製した。
【0029】
メラミン粉末12gに37%ホルムアルデヒド水溶液15g及び水40gを加え、pH8に調整した後、約70℃まで加熱して、メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液を得た。pH4.5に調整した10%スチレン−無水マレイン酸共重合体のナトリウム塩水溶液22g中に、パラフィンワックス18gを撹拌しながら添加し、粒径が約20μmになるように乳化を行った。得られた乳化液に、上記メラミン−ホルムアルデヒド初期縮合物水溶液全量を添加し、70℃×3時間撹拌した後、pHを9まで上げて、水を添加し、球状マイクロカプセルを得た。
【0030】
[実施例1]
80%エチレングリコール水溶液100質量部に鉄防錆剤としてのセバシン酸4質量部、アルミ防錆剤としてのリン酸0.3質量部、銅防錆剤としてのベンゾトリアゾール0.2質量部を添加し、製造例1において得られた凹状マイクロカプセル15質量部を添加して、冷却液組成物を得た。
【0031】
[実施例2]
80%エチレングリコール水溶液100質量部の代わりに84%エチレングリコール水溶液100質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0032】
[実施例3]
セバシン酸4質量部の代わりにセバシン酸3質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0033】
[実施例4]
セバシン酸4質量部の代わりにセバシン酸5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0034】
[実施例5]
リン酸0.3質量部の代わりにリン酸0.1質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0035】
[実施例6]
リン酸0.3質量部の代わりにリン酸0.5質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0036】
[実施例7]
ベンゾトリアゾール0.2質量部の代わりにベンゾトリアゾール0.1質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0037】
[実施例8]
ベンゾトリアゾール0.2質量部の代わりにベンゾトリアゾール0.3質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0038】
[比較例1]
50%エチレングリコール水溶液100質量部にセバシン酸4質量部、リン酸0.3質量部、ベンゾトリアゾール0.2質量部を添加して、冷却液組成物を得た。
【0039】
[比較例2]
80%エチレングリコール水溶液100質量部にセバシン酸4質量部、リン酸0.3質量部、ベンゾトリアゾール0.2質量部を添加して、冷却液組成物を得た。
【0040】
[比較例3]
80%エチレングリコール水溶液の代わりに50%エチレングリコール水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0041】
[比較例4]
80%エチレングリコール水溶液の代わりに85%エチレングリコール水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0042】
[比較例5]
80%エチレングリコール水溶液の代わりに79%エチレングリコール水溶液を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0043】
[比較例6]
凹状マイクロカプセル15質量部の代わりに凹状マイクロカプセル20質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0044】
[比較例7]
セバシン酸を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0045】
[比較例8]
リン酸を使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0046】
[比較例9]
ベンゾトリアゾールを使用しなかったこと以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0047】
[比較例10]
製造例1において得られた凹状マイクロカプセル15質量部の代わりに製造例2において得られた球状マイクロカプセル15質量部を用いた以外は、実施例1と同様にして冷却液組成物を得た。
【0048】
実施例1〜8及び比較例1〜10で得られた冷却液組成物の比熱、凍結温度、金属防食性、引火点、粘度、過冷却温度幅及び再分散性を、以下に示す方法で測定した。
【0049】
<比熱の測定方法>
比熱は図1に示すような2重管構造を有する比熱測定装置を用いて測定した。加温側液体温度(Th1、Th2)、低温側液体(PWで固定)温度(Tc1、Tc2)を測定し、高温側液体の放熱量Qhを低温側液体の受熱量Qcとして評価した(ここで、Qh=Ch・Wh・△Th、Qc=Cc・Wc・△Tcである)。測定は温度安定後に10分間行い、平均温度から比熱Chを以下の式:
Ch=Cc・Wc・ΔTc/(Wh・ΔTh)
により算出した。
【0050】
<凍結温度>
JIS K2234凍結温度に準拠して測定した。
【0051】
<金属防食試験>
JIS K2234金属腐食試験に準拠して、アルミニウム合金(AC2A)、鋳鉄(FC200)、黄銅(C2680P)の接触腐食試験を行った。
【0052】
実施例1〜8及び比較例1〜10の冷却液組成物の各試料について原液を750ml、88±2℃に保持した中に、上記金属の試験片を336時間浸漬した。浸漬中、空気を100ml/分の流量で吹き込んだ。上記試験片の質量変化を測定した。
【0053】
<引火点>
TS K 2601G引火点試験法に準拠して測定した。クリーブランド開放式で測定した。
【0054】
<粘度>
デジタルB型粘度計(東京計器製)を用い、液温(40℃)、回転数(60rpm)にてローター(No.1)を使用して測定した。
【0055】
<過冷却温度幅>
DSC測定装置(エスアイアイアナノテクノロジー社製FPD−6200型)にて、融点、凝固点を測定した。
【0056】
<再分散性>
マイクロカプセル化した潜熱蓄熱材を含む冷却液(実施例1〜8及び比較例3〜10の冷却液組成物)20mlを、25ml共栓付試験管に入れ、24時間静置した。24時間後、試験管を傾けて冷却液の流動性を目視で確認した。
【0057】
表1に、実施例1〜8及び比較例1〜10の冷却液組成物の測定結果を示す。
【表1】

【0058】
上記測定結果に対する評価を表2に示す。
【表2】

【0059】
評価基準
低温時比熱 :2.7kJ/kg@20℃以下:○、超える:×
高温時比熱 :3.6kJ/kg@90℃以上:○、未満:×
凍結温度 : ○:≦−35.0℃<:×
金属防食性 : JIS K 2234に準拠
引火点 : ○:引火点なし(非危険物)、×:引火点あり
粘度 : ○:<0.07P.s@40℃≦:×
過冷却温度幅: 球状マイクロカプセル(比較例10)と比較して優れる:○、劣る:×
再分散性 : 振とう後流動性あり:○、振とう後流動性なし:×
【0060】
表1及び2の結果より、実施例1〜8の冷却液組成物は、低温、高温時の比熱、凍結温度、金属防食性、引火点、粘度、過冷却温度幅及び再分散性の全てにおいて優れることがわかる。
【0061】
比較例1、3及び5の冷却液組成物は、エチレングリコール濃度が低いために、低温時比熱が低く、評価基準を満たさない。
【0062】
比較例2の冷却液組成物は、マイクロカプセルが配合されていないため、高温時比熱が低く評価基準を満たさない。
【0063】
比較例4の冷却液組成物は、エチレングリコール濃度が高いため、引火点が発生した。
【0064】
比較例6の冷却液組成物は、マイクロカプセル配合量が多いため、粘性が高く、評価基準を満たさない。
【0065】
比較例7、8及び9の冷却液組成物は、金属防錆剤が配合されていないため、金属試験片の質量が減少し評価基準を満たさない。
【0066】
比較例10の冷却液組成物(球状マイクロカプセル)は、過冷却温度幅が大きく、また、再分散性において凝集が見られ、流動性が得られない結果であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の冷却液組成物は、自動車用、特に自動車エンジン用冷却液組成物として好適に使用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潜熱蓄熱材が封入されたマイクロカプセル、該マイクロカプセルが分散された基剤及び防錆剤を含有する冷却液組成物であって、
該基剤が80〜84%エチレングリコール水溶液であり、
該マイクロカプセルが凹状であり、
該マイクロカプセルを、基剤100質量部に対して、5〜15質量部含有し、
該防錆剤として、基剤100質量部に対して、アルミ防錆剤を0.1〜0.5質量部、鉄防錆剤を3〜5質量部、及び銅防錆剤を0.1〜0.5質量部含有することを特徴とする上記冷却液組成物。
【請求項2】
潜熱蓄熱材がパラフィンワックスである、請求項1に記載の冷却液組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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