説明

潤滑剤及び潤滑流体組成物

【課題】摩擦低減効果に優れた潤滑剤及びこれを含む潤滑流体組成物、特に自動車、産業機械装置等の省エネルギー性が要求される用途に好適な潤滑流体組成物を提供すること。
【解決手段】本発明の潤滑剤は、式R1−N(R2)−R3−(OH)nで表されるヒドロキシ基含有アミン化合物からなる。本発明の潤滑流体組成物は、該潤滑剤と、水、アルコール、カルボン酸、鉱油、合成油及び油脂から選ばれる1種又は2種以上からなる潤滑流体基材を含む。
上記式中、R1:C6〜30のアルキル基又はアルケニル基、R2:H等、R3:炭素数1〜10の1価又は多価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、n:1〜10の整数。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑剤及び潤滑流体組成物に関し、詳しくは摩擦低減効果に優れる新規な潤滑剤及び潤滑流体組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素排出量の削減が急務の課題となっており、自動車や産業用の機械装置等に対し一段と省エネルギー性が要望されている。また、これらに使用される潤滑流体は、省エネルギー性に加え、自動車の排ガス後処理装置への影響緩和や廃油処理等の観点から、低摩擦性能、長寿命化に加え金属やリン、硫黄等を削減することが要望されている。
低摩擦性能を高めるためには、一般に潤滑剤として、モリブデンジチオカーバメートやモリブデンジチオホスフェートなどの硫黄含有モリブデン化合物が使用され、効果を挙げている(例えば特許文献1)。
しかしながら、これらモリブデン化合物は金属を含むとともに硫黄やリンを含む等、自動車の排ガス後処理装置への影響や廃油処理の問題は依然として存在する。加えて、機械装置の種類、使用する摺動材料、使用環境等によっては金属、硫黄及びリンのいずれか又は全ての使用は好ましいとは言い難い。
【特許文献1】特開平8−302378号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、特に摩擦低減効果が要求される機械装置に好適な摩擦低減効果に優れた新規な潤滑剤及びこれを含む潤滑流体組成物を提供することである。
本発明の別の課題は、摩擦低減効果に優れ、排ガス後処理装置への影響や廃油処理の問題等を低減可能な新規な潤滑剤及びこれを含む潤滑流体組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
すなわち、本発明によれば、式(1)で表されるヒドロキシ基含有アミン化合物からなる潤滑剤が提供される。
1−N(R2)−R3−(OH)n (1)
(式(1)中、R1は炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、R2は水素、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、−R4−(OH)m、又は−(R5O)t−H(ここで、R4は炭素数1〜10の1価又は多価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、m又はtは各独立に1〜10の整数を示す。)、R3は炭素数1〜10の1価又は多価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、nは1〜10の整数を示す。)
また本発明によれば、水、アルコール、カルボン酸、鉱油、合成油及び油脂から選ばれる1種又は2種以上からなる潤滑流体基材と、上記ヒドロキシ基含有アミン化合物からなる潤滑剤とを含有することを特徴とする潤滑流体組成物が提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明の潤滑剤は、上記式(1)で表されるヒドロキシ基含有アミン化合物からなり、硫黄及び/又はリン含有モリブデン化合物等の潤滑剤のように硫黄及び/又はリンを含有しないので、排ガス後処理装置への影響や廃油処理の問題等を低減しつつ潤滑流体の摩擦低減効果を改善することができる。
本発明の潤滑流体組成物は、上記本発明の潤滑剤を含有するので、低摩擦性能が要求される機械装置、例えば自動車、産業用機械装置の省エネルギーに貢献できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明について詳述する。
本発明の潤滑剤は、上記式(1)で表されるヒドロキシ基含有アミン化合物からなり、各種潤滑流体の摩擦低減効果等を改善するための潤滑成分として使用することができる。
式(1)においてR1は、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、油溶性の点で好ましくは炭素数8以上のアルキル基又はアルケニル基であり、より好ましくは炭素数12以上のアルキル基又はアルケニル基である。また、原料の入手性の観点から、好ましくは炭素数24以下、より好ましくは20以下のアルキル基又はアルケニル基である。
【0007】
式(1)においてR2は、水素、炭素数1〜30のアルキル基又はアルケニル基、−R4−(OH)m、又は−(R5O)t−Hであり、好ましくは水素、炭素数1〜18のアルキル基又はアルケニル基、−R4−(OH)mであり、より好ましくは水素又は−R4−(OH)mであり、特に好ましくは水素である。また、R2におけるアルキル基又はアルケニル基としては、炭素数1〜6のアルキル基又はアルケニル基も好ましく挙げられる。
ここで、R4は、後述するR3と同様な基であり、好ましい基としても同様なものを挙げることができる。R5は、炭素数1〜4のアルキレン基、好ましくは炭素数2又は3のアルキレン基が挙げられる。mは1〜10、好ましくは1〜6、特に好ましくは1〜4の整数を示す。m又は1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3の整数であり、特に好ましくは2である。tは1〜10の整数を示す。
【0008】
式(1)においてR3は、炭素数1〜10の1〜10価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、好ましくは炭素数2〜6の1〜6価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、さらに好ましくは炭素数3の1〜3価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基であり、特に好ましくは炭素数3の2価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基である。また、nは1〜10、好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜3の整数であり、特に好ましくは2である。
【0009】
式(1)で表わされるヒドロキシ基含有アミン化合物としては、例えば以下の(a)〜(d)を充足する化合物を好ましく挙げることができる。
(a)R1が炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、R2が水素、R3が炭素数3の1価又は2価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、nが1又は2である化合物、(b)R1が炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、R2が−R4−(OH)m、R3及びR4が各独立に炭素数3の1価又は2価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、n及びmが各独立に1又は2である化合物、(c)R1が炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、R2が−(R5O)t−H、R5が炭素数2又は3のアルキレン基、tが1〜4の整数、R3が炭素数3の1価又は2価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、nが1又は2である化合物、(d)R1が炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基であり、R2が炭素数1〜30のアルキル基又はアルケニル基、R3が炭素数3の1価又は2価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、nが1又は2である化合物が挙げられる。中でも、(a)〜(c)から選ばれる1種又は2種以上であることが好ましく、(a)及び/又は(b)であることがより好ましく、(a)であることが特に好ましい。
(a)の具体例としては、C1835−NH−CH2CH2(OH)CH2(OH)が好ましく挙げられる。
(b)の具体例としては、C1835−N[CH2CH2(OH)CH2(OH)]2が好ましく挙げられる。
(c)の具体例としては、C1835−N[(CH2CH2O)(1-4)H]−CH2CH2(OH)CH2(OH)が好ましく挙げられる。
(d)の具体例としては、[C1835−]2N−CH2CH2(OH)CH2(OH)が好ましく挙げられる。
【0010】
式(1)で表わされるヒドロキシ基含有アミン化合物の製造方法としては、何ら制限はなく、例えば、1級アルキル又はアルケニルアミン及びそのアルキレンオキサイド付加物、2級アルキル又はアルケニルアミンから選ばれるアミン化合物とグリシドールとを反応させる方法が例示できる。これらの方法は、例えば、特開昭58−63736号公報、特開昭46−21306号公報、米国特許第2784233号明細書等に開示されている。
【0011】
本発明において、例えば、上記(a)を充足する化合物の製造方法としては、具体的に、トルエン等の溶媒に溶解させた1級アルキル又はアルケニルアミンに、同モルのグリシドールを含むメタノール溶液を滴下混合し、30〜100℃、好ましくは60〜90℃で反応させ、減圧蒸留等により残存するトルエン及びメタノールを留去する方法等が挙げられる。
【0012】
本発明の潤滑流体組成物は、水、アルコール、カルボン酸、鉱油、合成油及び油脂から選ばれる1種又は2種以上からなる潤滑流体基材と、前記式(1)で表わされるヒドロキシ基含有アミン化合物からなる本発明の潤滑剤とを含み、必要に応じて、例えば、リン含有化合物、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、摩耗防止剤、流動性向上剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、腐食防止剤及び防錆剤から選ばれる少なくとも1種等を含有しても良い。
【0013】
前記アルコールは、1価又は多価アルコールが挙げられる。
1価アルコールとしては、通常炭素数1〜30、好ましくは炭素数6〜24の飽和又は不飽和脂肪族アルコールが挙げられ、これらは直鎖状でも分枝状でも良い。具体的には、例えば、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウンデカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、ヘプタデカノール、オクタデカノール、ノナデカノール、イコサノール、ヘキセノール、ヘプテノール、オクテノール、ノネノール、デセノール、ウンデセノール、ドデセノール、トリデセノール、テトラデセノール、ペンタデセノール、ヘキサデセノール、ヘプタデセノール、オクタデセノール等の1価飽和又は不飽和脂肪族アルコールが挙げられ、これらは直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意である。
多価アルコールとしては、通常2〜10価、好ましくは2〜6価のものを例示でき、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールの3〜15量体等のポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールの3〜15量体等のポリプロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン等のトリメチロールアルカン及びこれらの2〜4量体、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,3,5−ペンタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,3,4−ブタンテトロール、ソルビトール、ソルビタン、ソルビトールグリセリン縮合物、アドニトール、アラビトール、キシリトール、マンニトール等の2〜6価の多価アルコール及びこれらの混合物が例示できる。これらの中でも、より高い酸化安定性が得られることから、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビタン及びこれらの混合物等が好ましい。
【0014】
前記カルボン酸は、一塩基酸でも多塩基酸でも良く、その炭素数も任意であるが、炭素数6〜30、特に炭素数8〜24の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましい。炭素数6〜30の飽和又は不飽和脂肪酸としては、例えば、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、イコサン酸、ヘキセン酸、ヘプテン酸、オクテン酸、ノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、ヘプタデセン酸、オクタデセン酸等の飽和又は不飽和脂肪酸等が挙げられ、これらは直鎖状でも分枝状でも良く、二重結合の位置も任意である。中でもラウリン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の炭素数12〜18の飽和又は不飽和脂肪酸が特に好ましい。
【0015】
前記鉱油は、特に制限はないが、具体的には、原油を常圧蒸留して得られる留分を公知の方法により精製、改質等の処理を行った軽質鉱油や、原油を常圧蒸留して得られる常圧残油を減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、水素化精製等の処理を1つ以上行って精製したもの、或いはワックス異性化鉱油、GTL WAX(ガストゥリキッドワックス)を異性化する手法で製造される基油等が例示できる。
前記合成油としては、具体的には、ポリブテン又はその水素化物;1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマー等のポリ−α−オレフィン又はその水素化物;ジトリデシルグルタレート、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のジエステル;ネオペンチルグリコール、2−ブチル−2−エチルプロパン−1,3ジオール等の炭素数5〜19のジアルキルプロパンジオール等のポリオールエステル;1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパン、1,1,1−トリメチロールブタン等の炭素数5〜15のトリメチロールアルカン;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール等のポリオールから選ばれる少なくとも1種と吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、オレイン酸、イソペンタン酸、2−メチルヘキサン酸、2−エチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3,5,5−トリメチルヘキサン酸等の脂肪酸から選ばれる少なくとも1種とからなるモノエステル、ジエステル、トリエステル、テトラエステル及びこれらの混合物;アルキルナフタレン、アルキルベンゼン、芳香族エステル等の芳香族系合成油;これら2種以上の混合物が例示できる。
前記油脂としては、例えば、動物油、植物油等の天然油脂及びこれらを精製処理した油脂等が挙げられる。
前記潤滑流体基材としては、水、上記アルコール、上記カルボン酸、上記鉱油、上記合成油、上記油脂又はこれらの中から選ばれる2種以上の任意混合物等が使用できる。例えば、1種以上の鉱油、1種以上の合成油、1種以上の鉱油と1種以上の合成油との混合油等を挙げることができる。尚、以下、これらのうちの鉱油、合成油及び油脂からなる群より選択される1種又は2種以上を潤滑流体基油ということがある。
【0016】
前記潤滑流体基油の動粘度は特に制限はないが、40℃における動粘度が通常1〜500mm2/s、好ましくは2〜100mm2/sである。また、本発明の潤滑流体組成物を高温条件で使用する場合の前記潤滑流体基油の100℃における動粘度は、好ましくは1〜100mm2/s、より好ましくは2〜20mm2/s、特に好ましくは2.5〜8mm2/s、更に好ましくは3〜5mm2/sである。100℃における動粘度を1mm2/s以上とすることで油膜保持により優れた潤滑性が得られ、低粘度、特に5mm2/s以下とすることで攪拌抵抗低減による省エネルギー性をより高めることができる。
【0017】
前記潤滑流体基油の粘度指数は特に限定されず任意であるが、低温から高温まで優れた粘度特性が得られるように、好ましくは80以上、さらに好ましくは100以上、特に好ましくは120以上である。粘度指数の上限については特に制限はなく、例えば、ノルマルパラフィン、スラックワックス、GTL WAX等、あるいはこれらを異性化したイソパラフィン系鉱油を用いる場合の粘度指数の上限は135〜180程度であり、コンプレックスエステル系基油やHVI-PAO系基油を用いる場合の粘度指数の上限は150〜250程度である。
【0018】
前記潤滑流体基油の芳香族分は、特に制限はないが、通常50質量%以下、より好ましくは15質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、特に好ましくは3質量%以下であり、0質量%でも良い。ここで芳香族分は、ASTM D2549に準拠して測定した全芳香族分を意味する。また、潤滑流体基材の硫黄分は、特に制限はないが、好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.05質量%以下、特に好ましくは0.005質量%以下である。更に、潤滑流体基油の蒸発損失量としては、NOACK蒸発量で、好ましくは40質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは16質量%以下である。NOACK蒸発量を40質量%以下とすることで、蒸発損失を抑制し易くなる。なお、ここでNOACK蒸発量とは、ASTM D5800に準拠して測定されたものである。
【0019】
本発明の潤滑流体組成物において含有可能なリン含有化合物としては、一般に公知のリン化合物が挙げられ、例えば、ジアルキルジチオリン酸亜鉛、ジアルキルリン酸亜鉛、(亜)リン酸エステル類、チオ(亜)リン酸エステル、これらのアミン塩等のリン含有化合物が挙げられる。これらの中でも1級又は2級ジアルキルジチオリン酸亜鉛、1級又は2級ジアルキルリン酸亜鉛、リン酸トリエステル等が好ましい。これらは通常炭素数3〜30の炭化水素基を有している。
リン含有化合物を含有させる場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、リン含有量として、好ましくは0.005〜0.4質量%、より好ましくは0.01〜0.1質量%、さらに好ましくは0.02〜0.08質量%、特に好ましくは0.03〜0.06質量%である。リン含有化合物を0.005質量%以上含有させることにより摩耗防止性をより高め、特にリン含有化合物を0.1質量%以下に低減することで、より摩擦低減効果に優れた組成物を得ることができる。
【0020】
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な金属系清浄剤としては、一般に公知の金属系清浄剤が挙げられ、例えば、アルカリ土類金属スルホネート、アルカリ土類金属フィネート、アルカリ土類金属サリシレート等の金属系清浄剤が挙げられる。これらは中性でも(過)塩基性であっても良く、通常塩基価が0〜500mgKOH/gのものが一般に入手可能である。
金属系清浄剤を含有させる場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常金属量として0.005〜5質量%である。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な無灰分散剤としては、一般に公知の無灰分散剤が挙げられ、例えば、炭素数40〜400のアルキル基又はアルケニル基を有するコハク酸イミド系、ベンジルアミン系、アミン系及びこれらのホウ素化合物誘導体、リン化合物誘導体、アシル化物誘導体が挙げられる。
無灰分散剤を含有させる場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.1〜15質量%である。
【0021】
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な酸化防止剤としては、一般に公知の酸化防止剤が挙げられ、例えば、2,6−ジ−tert−ブチルパラクレゾール等のモノフェノール系酸化防止剤;4,4'−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)等のビスフェノール系酸化防止剤;オクチル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、(3−メチル−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のヒドロキシフェニル基置換脂肪酸エステル系酸化防止剤;(アルキル)フェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミン等のアミン系酸化防止剤;銅系、モリブデン系等の金属系酸化防止剤が挙げられる。
酸化防止剤を含有させる場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.1〜5質量%である。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な摩擦調整剤としては、一般に公知の摩擦調整剤が挙げられ、例えば、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオホスフェート、炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基を有する脂肪酸エステル類、脂肪族アルコール類、脂肪族アミン類、脂肪族エーテル類、脂肪族イミド類、脂肪族ヒドラジド類、脂肪族ウレア類が挙げられる。
摩擦調整剤を含有させる場合の含有量は、特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.1〜5質量%である。
【0022】
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な粘度指数向上剤としては、一般に公知の粘度指数向上剤が挙げられ、例えば、各種メタクリル酸エステルから選ばれる1種又は2種以上のモノマーの重合体又は共重合体若しくはその水添物等のいわゆる非分散型粘度指数向上剤、又はさらに窒素化合物を含む各種メタクリル酸エステルを共重合させたいわゆる分散型粘度指数向上剤、非分散型又は分散型エチレン−α−オレフィン共重合体若しくはその水素化物、ポリイソブチレン若しくはその水添物、スチレン−ジエン共重合体の水素化物、スチレン−無水マレイン酸エステル共重合体、ポリアルキルスチレンが挙げられる。ここで、上記α−オレフィンとしては、プロピレンが例示できる。
粘度指数向上剤を含有させる場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.1〜20質量%である。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な摩耗防止剤としては、一般に公知の摩耗防止剤が挙げられ、上記に挙げたリン含有化合物以外の摩耗防止剤、例えば、ジスルフィド類、硫化オレフィン類、硫化油脂類、ジチオカーバメート、ジチオカルバミン酸亜鉛等の硫黄含有化合物が挙げられる。
摩耗防止剤を含有させる場合の含有量は特に制限はないが、組成物全量基準で、通常0.005〜10質量%である。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な流動点降下剤としては、一般に公知の流動点降下剤が挙げられ、例えば、ポリ(メタ)アクリレート系流動点降下剤が挙げられる。
流動点降下剤を含有させる場合の含有量は、組成物全量基準で、通常0.01〜5質量%である。
【0023】
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な抗乳化剤としては、一般に公知の抗乳化剤が挙げられ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル等のポリアルキレングリコール系非イオン系界面活性剤;ソルビタンモノオレートが挙げられる。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な金属不活性化剤としては、一般に公知の金属不活性化剤が挙げられ、例えば、イミダゾリン、ピリミジン誘導体、アルキルチアジアゾール、メルカプトベンゾチアゾール、ベンゾトリアゾール又はその誘導体、1,3,4−チアジアゾールポリスルフィド、1,3,4−チアジアゾリル−2,5−ビスジアルキルジチオカーバメート、2−(アルキルジチオ)ベンゾイミダゾール、β−(o−カルボキシベンジルチオ)プロピオンニトリルが挙げられる。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な消泡剤としては、一般に公知の消泡剤が挙げられ、例えば、シリコーン、フルオロシリコール、フルオロアルキルエーテルが挙げられる。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な腐食防止剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系、トリルトリアゾール系、チアジアゾール系、イミダゾール系化合物が挙げられる。
本発明の潤滑流体組成物において含有可能な防錆剤としては、例えば、石油スルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、ジノニルナフタレンスルホネート、アルケニルコハク酸エステル、多価アルコールエステルが挙げられる。
これらの添加剤を含有させる場合の含有量は、組成物全量基準で、抗乳化剤、腐食防止剤、防錆剤ではそれぞれ通常0.005〜5質量%、金属不活性化剤では通常0.005〜1質量%、消泡剤では通常0.0005〜1質量%である。
【0024】
本発明の潤滑剤及び潤滑流体組成物は、一般的な鉄系、アルミニウム系、マグネシウム系等の摺動材料の摩擦低減だけではなく、各種摺動材料、例えば、炭素系硬質薄膜被覆摺動材料、フッ素樹脂系摺動材料の摩擦低減にも有効である。
本発明の潤滑剤及び潤滑流体組成物は、自動車用エンジン、二輪車用エンジン、船舶用エンジン、発電用エンジン等の内燃機関;自動変速機、手動変速機、無段変速機、終減速機等の駆動伝達装置;圧縮機、タービン、工業用ギヤ、冷凍機、軸受、抄紙機、すべり案内面、切削、プレス、圧延、金属加工、緩衝器、建設機械、油圧装置、工作機械、ハードディスク等の各種用途の摺動面に使用することができる。
【実施例】
【0025】
以下に本発明の内容を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例になんら限定されない。
実施例1〜4、比較例1及び2
表1に示す組成の本発明にかかる潤滑流体組成物(実施例1〜4)、比較用の潤滑流体組成物(比較例1及び2)をそれぞれ調製した。
得られた各組成物に対して、下記の評価試験を行った。結果を表1に示す。
(SRV摩擦試験)
オプチモール社製SRV摩擦試験機用の試験片(円筒/ディスク、SUJ-2)を粗さ仕上げRa0.2μm以下とし、各潤滑流体組成物を試験片に滴下し、試験機にセットした。温度80℃、荷重30N、振幅3mm、周波数50Hzの試験条件にて30分後の摩擦係数を測定した。
【0026】
尚、表1中のヒドロキシ基含有アミン化合物(I)及び(II)は、以下の手順で合成した。
<ヒドロキシ基含有アミン化合物(I)の合成>
オレイルアミン61.52gを500mlの4口フラスコにとり、室温、窒素雰囲気で、脱水トルエン200mlを加え溶解させた。次いで、17.04gのグリシドールを脱水メタノール34.72mlに溶解させ、フラスコに2時間かけて滴下混合し、攪拌を続けながら80℃に2時間加熱保持し、メタノールの留去とともに反応を完了させた。反応液を80℃に保持したロータリーエバポレータでトルエンを留去し、目的物である、N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)オレイルアミン78.47gを得た。
<ヒドロキシ基含有アミン化合物(II)の合成>
オレイルアミンの代わりにオクチルアミン77.54gを用い、グリシドールの使用量をオクチルアミンと等モルにした以外は、上記ヒドロキシ基含有アミン化合物(I)の合成と同様の方法で目的物であるN−(2,3−ジヒドロキシプロピル)オクチルアミン121.0gを得た。
【0027】
【表1】

表1から明らかな通り、本発明の潤滑剤を含む潤滑流体組成物は、本発明の潤滑剤を含まない潤滑流体組成物に比べ、優れた摩擦低減効果を有していることがわかる。特に長鎖炭化水素基を有する本発明の潤滑剤を含む実施例1の潤滑流体組成物がより優れた摩擦低減効果を示すことがわかる。また、ZDTPを含有する実施例3及び4の潤滑流体組成物よりも低リン化された実施例1の組成物の方が優れた低摩擦性を示すことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるヒドロキシ基含有アミン化合物からなる潤滑剤。
1−N(R2)−R3−(OH)n (1)
(式(1)中、R1は炭素数6〜30のアルキル基又はアルケニル基、R2は水素、炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルケニル基、−R4−(OH)m、又は−(R5O)t−H(ここで、R4は炭素数1〜10の1価又は多価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、R5は炭素数1〜4のアルキレン基、m又はtは各独立に1〜10の整数を示す。)、R3は炭素数1〜10の1価又は多価アルコールからヒドロキシ基を除いた残基、nは1〜10の整数を示す。)
【請求項2】
水、アルコール、カルボン酸、鉱油、合成油及び油脂から選ばれる1種又は2種以上からなる潤滑流体基材と、請求項1記載の潤滑剤とを含有することを特徴とする潤滑流体組成物。
【請求項3】
リン含有化合物、金属系清浄剤、無灰分散剤、酸化防止剤、摩擦調整剤、粘度指数向上剤、摩耗防止剤、流動性向上剤、抗乳化剤、金属不活性化剤、消泡剤、腐食防止剤及び防錆剤から選ばれる少なくとも1種を含有する請求項2記載の潤滑流体組成物。

【公開番号】特開2006−282797(P2006−282797A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−103056(P2005−103056)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】