説明

潤滑剤組成物

【課題】潤滑剤組成物、特に極圧耐性や潤滑性能等において優れた性質を示すナノリテーナ又はナノベアリングを極圧部において自己組織化して形成する潤滑剤組成物を提供する。
【解決手段】モース硬度5以上で粒径300ナノメーター(nm)以下の球状酸化物系セラミック0.01〜40重量%と、ブリネル硬さ試験値17HB以下で粒径50マイクロメーター(μm)以下の球状金属0.01〜40重量%とが有機質潤滑基剤中に分散含有された薄膜ベアリング形成用潤滑剤組成物であって、前記球状酸化物系セラミックは、Al、BeO、CaO、MgO、SiO、ThO、TiO、ムライト、スピネル、フォルステライト、ジルコニア及びジルコンの中から選ばれた少なくとも1種であり、前記球状金属は、Al、Cu、Sb、Sn及びZnの中から選ばれた少なくも1種である、潤滑剤組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤組成物に関し、特に極圧耐性や潤滑性能等において優れた性質を示すナノリテーナ又はナノベアリングを極圧部において自己組織化して形成する潤滑剤組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
潤滑剤としては、液状の潤滑油、常温で半固体状或いは粘稠なペースト状のグリース及び粉末状の固体潤滑剤があるが、如何なる使用条件にも適合し得るような潤滑剤はない。添加剤として固体潤滑剤を配合することも行われているが、潤滑油やグリースに対して親和性が悪く潤滑基材中での分散安定性が劣るので添加剤を多量に必要とし、添加しても分離が起き、充分な極圧耐性や潤滑性能を発揮し得ない場合がある。
【0003】
相対的に動く物体における摩擦抵抗を減少させ、消費エネルギーを節約するために従来より多種多様な潤滑剤が使われているが、すべてが潤滑基材の表面張力を利用したものである。このような観点から、非常に大きな荷重が作用する軸や軸受、歯車等に表面張力を維持するため固体潤滑剤(固体−樹脂グラフト重合複合材粉末)を添加剤として多量に使用(特開昭56−112995号公報)しても、十分な極圧耐性や潤滑性能を発揮し得ない場合があった。また長期安定使用のため、粉末状固体潤滑材を基油に分散させてなる潤滑剤組成物において基油としてナフテン系油を使用することが提案(特開平1−92296号公報)されている。しかしこの場合、使用する基油が制限されその用途範囲も制限される難点がある。
【0004】
石英超微粒子と摩擦抵抗の少ない超微粒子物質をエンジンオイルに添加してなる潤滑用材(特開平6−271882号公報)でその摩擦や損傷並びに焼付け等を防止することが出来るとのことであるがフッソ系樹脂微粒子では、球状微粒子が摩擦部に固定されないので長期安定効果を維持できず摺動部の耐久性を劣化してしまう恐れがあり亦騒音悪化を招いてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭56−112995号公報
【特許文献2】特開平1−92296号公報
【特許文献3】特開平6−271882
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は潤滑剤組成物、特に極圧耐性や潤滑性能等において優れた性質を示すナノリテーナ又はナノベアリングを極圧部において自己組織化して形成する潤滑剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に関わる潤滑剤組成物は、モース硬度5以上で粒径300ナノメーター(nm)以下の球状酸化物系セラミック0.01〜40重量%とブリネル硬さ試験値17H以下で粒径50マイクロメーター(μm)以下の球状金属0.01〜40重量%とが有機質潤滑基剤中に分散含有されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の潤滑剤組成物においては、粒径50μm以下の球状金属微粒子表面に粒径300nm以下のナノメータースケールの無機超微粒子が付着した状態で有機質潤滑基剤中に分散している。軸や軸受けなどの摺動部に極圧が作用すると、球状金属粒子が強制的に変形しナノメータースケールの薄膜を形成する。その薄膜にナノメータースケールの無機超微粒子がナノメータースケールのベアリングとして存在し著しく摩擦応力を軽減することが出来、摺動接点の磨耗を防止すると共に接触抵抗を安定化させ雑音の発生を防止する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
モース硬度5以上の球状酸化物系セラミックとしては、Al、BeO、CaO、MgO、SiO、ThO、TiO、ムライト、スピネル、フォルステライト、ジルコニア及びジルコンの中から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。モース硬度5未満であると、材質的に極圧に耐えられない。また粒径が300ナノメーター(nm)を超えると、ナノリテーナ又はナノベアリングとしての効果を発揮できない。
【0010】
ブリネル硬さ試験値17H以下の金属としては、Al、Cu、Sb、Sn及びZnの中から選ばれた1種又は2種以上、或いはそれらの合金が挙げられる。
ブリネル硬さ試験値17Hを超えると、極圧負荷時に変形してナノスケールの薄膜を形成する現象が起きにくい。
【0011】
潤滑基材としいては、潤滑油類、有機溶媒、合成樹脂、糊類、膠類等から選択された一種類又は二種類以上の組み合わせからなるものが良い。
【0012】
潤滑油類としては、パラフィン系、ナフテン系、又は芳香族系鉱油、オレフィン重合油、アルキル化芳香族油、ポリエーテル油、エステル油、ハロゲン化炭化水素油、シリコン油、フッソ化油、水素添加油等の合成油、動植物油脂、固形又は半固形状のパラフィン、アルコール等の潤滑剤及びそれらに金属石鹸、ソープレスソープ等の石鹸類を加えたグリース類を挙げることが出来る。
【0013】
有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、ハロゲン炭化水素系溶媒、アルコール、フェノールあるいはエーテル系溶媒、酸あるいはエステル系溶媒、アルデヒド、アセタールあるいはケトン類、含窒素化合物、イオウ化合物、シンナー類等を挙げることが出来る。
【0014】
更に、合成樹脂類としては、フェノール樹脂、ABS樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ樹脂、DVB樹脂、フラン樹脂、フッソ樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、シリコン樹脂、メタアクリル樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニール樹脂、ナイロン、メラミン樹脂、アクリル樹脂、合成ゴム、アスファルト、ピッチ、タール等を挙げることが出来る、更に糊類及び膠類としては、澱粉、寒天、膠、天然ゴム、天然樹脂、蛋白質等を挙げることが出来る。
【0015】
潤滑基材を選択することにより、潤滑油、エンジンオイル、グリース、乾式潤滑剤として有効な潤滑剤組成物を得ることができる。
【0016】
金属の球状微粒子は、特開2002−317212号公報記載の方法で製造できる。
【0017】
本発明における自己組織化とは、本発明の潤滑剤組成物が、その内包する特性に基づきかつ外部環境に応じて、極圧の摺動部に自動的にナノ超薄膜リテーナ・ナノベアリングを構成することを言う。
【実施例1】
【0018】
粒径200nm以下の球状SiO(モース硬度7)30重量%、粒径30μm以下の球状Cu(ブリネル硬さ試験値17H以下)40重量%及び有機質潤滑基剤としてのパラフィン系鉱油30重量%を混合して本発明の潤滑剤組成物を得た。
【0019】
[比較例1]
球状Cuを加えなかった以外は実施例1と同様にして、即ち粒径200nm以下の球状SiO(モース硬度7)30重量%及び有機質潤滑基剤としてのパラフィン系鉱油70重量%を混合して潤滑剤組成物を得た。
【0020】
[比較例2]
特開昭56−112995号公報に記載された方法に従って潤滑剤組成物を調整した。
【0021】
実施例1、比較例1及び比較例2の潤滑剤組成物を極圧試験機の摺動部に塗り極圧750Kgf/cmをかけて極圧潤滑性を比較した。試験結果を表1に示す。比較例2の潤滑剤組成物を用いた場合は1分10秒後に停止(停止直前の電流値は6.0A:アンペア)、比較例1の潤滑剤組成物を用いた場合は6分10秒後に停止(停止直前の電流値は6.0A)したが、実施例1の潤滑剤組成物を用いた場合は6分10秒後も順調に回転続行しており、電流値は5Aのままであった。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
モース硬度5以上で粒径300ナノメーター(nm)以下の球状酸化物系セラミック0.01〜40重量%とブリネル硬さ試験値17H以下で粒径50マイクロメーター(μm)以下の球状金属0.01〜40重量%とが有機質潤滑基剤中に分散含有されていることを特徴とする潤滑剤組成物。
【請求項2】
モース硬度5以上の球状酸化物系セラミックがAl、BeO、CaO、MgO、SiO、ThO、TiO、ムライト、スピネル、フォルステライト、ジルコニア及びジルコンの中から選ばれた1種又は2種以上である請求項1に記載の潤滑剤組成物。
【請求項3】
ブリネル硬さ試験値17H以下の金属がAl、Cu、Sb、Sn及びZnの中から選ばれた1種又は2種以上、或いはそれらの合金である請求項1又は請求項2に記載の潤滑剤組成物。
【請求項4】
モース硬度5以上で粒径300nm以下の球状酸化物系セラミックとブリネル硬さ試験値17H以下で粒径50μm以下の球状金属とが揮発性有機溶剤中に分散含有されているプレス加工用表面乾式潤滑剤組成物。


【公開番号】特開2010−100856(P2010−100856A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275781(P2009−275781)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【分割の表示】特願2004−18434(P2004−18434)の分割
【原出願日】平成16年1月27日(2004.1.27)
【出願人】(504034585)有限会社ナプラ (55)
【Fターム(参考)】