説明

潤滑剤連続塗布装置

【課題】
解決しようとする課題は、潤滑剤の連続塗布において、被塗布物の両面に均一に均一量の潤滑剤を塗布できる装置を提供することで、塗布量のバラツキを低減し、塗布面に均一に塗布することで、高精度の品質要求に対応することにある。
【解決手段】
第1のローラーと第2のローラーを一定の隙間を設けて平行に並べて設置されたものをローラーユニットとして、更にもう一つのローラーユニットを並列に隣接して設置し、第1のローラーが潤滑剤の供給を受け第2のローラーへ転写により供給し、第2のローラーが第1のローラーから潤滑剤の供給を受けながら、被塗布物に潤滑剤を転写により塗布する構造とした連続塗布装置において、被塗布物に対してローラーに傾きを設けた塗布用ローラーの構造を主要な特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は潤滑剤を均一に連続塗布する装置の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用及び家庭用の電気製品及び機械器具等の滑動部に使用される部品には、動きを滑らかにするために、潤滑剤を塗布することが一般的に行われている。潤滑剤の塗布量や塗布範囲における均一性については、それぞれに要求される性能・機能等により違いがあり、特に高精度を要求するものについては、その精度要求が高く、また要求品質も年々厳しくなってきている。
【0003】
従来の潤滑剤塗布の方法としては、ディスペンサーによる塗布が塗布効率もよく一般的に行われているが、ある範囲に均一に塗布をする方法としては不適切な場合がある。これに対し被塗布物の両面に均一に塗布をするため、ローラーが隣接して設置され、その間を被塗布物が通過することにより、ローラーに転写された潤滑剤が、被塗布物へ転写する方法が特許文献1で開示されている。
【0004】
また、前述のローラーを利用した潤滑剤塗布の場合は、ディスペンサーによる塗布に比べれば、均一に塗布することが可能であるが、連続して塗布を行う場合や塗布範囲を限定された被塗布物の場合等は塗布量のバラツキが問題となる。
【0005】
塗布量にバラツキが起こる要因として考えられることは、ローラーに供給される潤滑剤の量にバラツキがあること、連続塗布により潤滑剤の塗布と供給のバランスが崩れること、ローラーとローラーの間を被塗布物が侵入又は通過するときに被塗布物が安定しないこと等が考えられる。これらの要因は、被塗布物の構造や塗布位置、塗布範囲により、更に均一に塗布することの困難性が増してゆくものと考えられる。
【特許文献1】実開平6−70860
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、潤滑剤の連続塗布において、被塗布物の両面に均一に均一量の潤滑剤を塗布できる装置を提供することで、塗布量のバラツキを低減し、塗布面に均一に塗布することで、高精度の品質要求に対応することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1のローラーと第2のローラーを一定の隙間を設けて平行に並べて設置されたものをローラーユニットとして、更にもう一つのローラーユニットを並列に隣接して設置し、第1のローラーが潤滑剤の供給を受け第2のローラーへ転写により供給し、第2のローラーが第1のローラーから潤滑剤の供給を受けながら、被塗布物に潤滑剤を転写により塗布する構造とした連続塗布装置において、被塗布物に対してローラーに傾きを設けた塗布用ローラーの構造を主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
被塗布物が安定してローラー間を通過することができ、潤滑剤の供給がローラー2段構造であるため、均一量の供給と塗布が可能となり、塗布量のバラツキの少ない均一量の潤滑剤塗布を連続でおこなうことが可能となる。
【0009】
被塗布物が通過するローラー間の幅を調整することにより、被塗布物の寸法に合わせて潤滑剤の塗布をすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
詳細について実施例をもとに説明する。
【実施例1】
【0011】
図4は被塗布物の形状と潤滑剤塗布位置の一例を示す3面図である。図1は本発明の塗布用ローラーの構成を示す平面図である。
この塗布装置は、第1のローラーと第2のローラーを一定の隙間を設けて平行に並べて設置されたローラーユニットを2つ並列に隣接して設置される構成をとる。
【0012】
第1のローラーは潤滑剤の供給を受ける役割と第2のローラーに潤滑剤を転写により供給する役割を持つ。第2のローラーは第1のローラーから潤滑剤の供給を受ける役割と被塗布物へ潤滑剤を転写により塗布する役割を持つ。ローラーを2段構成とすることで、第1のローラーが潤滑剤を一時的に蓄積する役割を持ち、第2のローラーに供給される潤滑剤の量のバラツキが少なくなり、均一量の供給が可能となる。
【0013】
第1のローラーへの潤滑剤の供給方法は、潤滑剤供給容器からパイプ又はチューブ等により、ローラー下部又は上部の中心部に接続され、ローラーにはローラー軸心に潤滑剤が流れる流路孔が設けられ、この軸心の流路孔からローラー表面に向けた複数の流路孔が設けられることにより、潤滑剤供給容器から一定の時間間隔で一定量の潤滑剤がローラー内の穴からローラー表面に供給される。
図5は第1のローラーの断面図である。
【0014】
前述のローラーユニットをもう1つ用意し、被塗布物の寸法に応じた距離をおき、並列に設置する。被塗布物の寸法の違いに対応するため、ローラー間の距離を調整できるように、片側若しく双方のローラーユニットがスライド可能に可動式とする。ローラーユニットの可動方法は、例えばレール上にローラーユニットを置きレール上をスライド可能とし、位置調整後、ネジやマグネット等でレールとローラーユニットを固定する方法が望ましいが、これに限定されるものではない。
【0015】
これら2つのローラーユニットは、被塗布物が安定してローラー間を通過し、塗布される範囲に均一に且つ量のバラツキを抑えて塗布するために、被塗布物の進行方向に対して90度より小さくなるよう傾きを設ける。これは、仮にローラー角度が被塗布物に対して垂直であった場合、ローラーに入る瞬間において線で進入することとなり、進入時の負荷が大きくなり、負荷を受けた被塗布物が、負荷を吸収しきれず、上下左右に振動するような動きを伴い、安定して通過することができなくなる。
【0016】
この不具合を解消するために、ローラーに角度を設けることで、被塗布物がローラーに入る瞬間において点で進入するようにすることで、進入時の負荷が小さくなり安定して通過することが可能となる。
図2は本発明の構造を示す一例の斜視図。図3は従来構造のローラー角度と本発明の傾斜角を設けた構造の側面図である。
【0017】
被塗布物の搬送方法は、被塗布物の上部又は下部を機械的に保持し、コンベア又はスライド機構により、水平に搬送する。被塗布物がローラーを通過するときに、保持位置が変化しないようある程度の保持力で固持する必要があると同時に、搬送位置の精度を確保するための設計精度も必要である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
被塗布物の両面又は片面に潤滑剤を塗布する装置の基本構造として、被塗布物の大きさに合わせて利用でき、潤滑剤連続塗布装置として、又は塗布構造部として工業生産が可能であり、潤滑剤の換わりに接着剤塗布装置としても応用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の塗布用ローラー構成を示す平面図
【図2】本発明の構造を示す一例の斜視図
【図3】従来構造のローラー角度と本発明の傾斜角を設けた構造の側面図
【図4】被塗布物の一例を示す三面図
【図5】第1のローラー断面図
【符号の説明】
【0020】
1 第1のローラー 21 平面図
2 第2のローラー 22 正面図
3 搬送部 23 右側面図
4 被塗布物 24 左側面図
5 傾斜角 25 潤滑剤塗布位置
6 従来構造のローラー角度側面図 31 ローラー軸心の流路孔
7 本発明の傾斜角を設けた構造の側面図 32 流路孔
8 搬送用チャック 33 潤滑剤挿入口
34 ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のローラーと第2のローラーを一定の隙間を設けて平行に並べて設置されたものをローラーユニットとして、更にもう一つのローラーユニットを並列に隣接して設置し、第1のローラーが潤滑剤の供給を受け第2のローラーへ転写により供給し、第2のローラーが第1のローラーから潤滑剤の供給を受けながら、被塗布物に潤滑剤を転写により塗布する構造とした連続塗布装置において、被塗布物に対してローラーに傾きを設けたことを特徴とする潤滑剤連続塗布装置。
【請求項2】
第1のローラー軸心に潤滑剤が流れる流路孔が設けられ、この軸心の穴からローラー表面に向けて複数の流路孔が設けられることを特徴とする請求項1記載の潤滑剤連続塗布装置。
【請求項3】
ローラーユニット間の距離を調整可能とし、調整後のローラーユニットを固定できる構造を設けることを特徴とする請求項1から2いずれか1項に記載の潤滑剤連続塗布装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−36162(P2010−36162A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−204847(P2008−204847)
【出願日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(308012521)株式会社アサカ精機 (1)
【Fターム(参考)】