説明

潤滑組成物用抗酸化相乗剤

(1)アルキル化したジフェニルアミン(APDA)、(2)ポリアミン分散剤、および(3)モノグリセリド、エトキシ化アミド、またはその混合物の組合せに基づく抗酸化性添加剤組成物を有する、モリブデンを含まない潤滑組成物を提供する。成分(3)がホウ酸化され、リン濃度を0.08%よりも低く下げることを可能にするか、さらにはリンを含まない組成物である場合、さらなる相乗作用が達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐酸化性が改善された潤滑組成物に関する。本発明の別の態様は、抗酸化相乗剤および耐酸化性を改善するためにこの抗酸化相乗剤を潤滑組成物に組み入れることに関係する。
【背景技術】
【0002】
エンジンオイルは、激しい酸化条件で機能する。エンジンオイルの酸化分解は、スラッジおよび堆積物を生成し、オイルの粘度特性を劣化させ、エンジン部分を腐蝕させる酸性の物体を発生させる。酸化作用と戦うため、エンジンオイルには、ヒンダードフェノール、芳香族アミン、ジチオリン酸亜鉛(ZDDP)、硫化炭化水素、金属および無灰ジチオカルバメート、ならびにオルガノモリブデン化合物を含めた多数の抗酸化物質が配合されている。特に効果のある抗酸化物質は、アルキル化ジフェニルアミン(ADPA)、およびZDDPである。このような2つの化合物は、合わせて、現在実用されているエンジンオイルの抗酸化機能の大部分を提供している。しかし、ZDDPのエンジンオイルへの使用は、排気ガス後処理触媒の働きをリンが阻害するために減少している。加えて、エンジンオイル中の硫黄濃度も、硫酸化した灰が排気ガス後処理へ影響を与えるため低下しつつある。したがってリンおよび硫黄を含んだ抗酸化物質の必要性を低減または排除することができる効果的な抗酸化性化学作用が必要である。
【0003】
さらに、有機モリブデン化合物が、抗酸化物質としてエンジンオイルの成分として使用されてきた。しかしながら、金属に伴う高いコストならびにこのコストが処理レベルおよび添加剤パッケージの総コストに与える影響のため、産業界の関心は、モリブデンベースの抗酸化物質への依存を和らげることに向けられてきた。モリブデンは、コストに加え、銅/鉛の軸受けの腐蝕、錆の抑制、および特にエンジンオイルに対するGF−4規格の一部であるボールラストテストに関する問題または懸念を提示している。さらに、GF−5に対して提唱されているTEOST33手順に関する懸念がある。この試験は、高温下の堆積物制御およびNOx環境への曝露に注目している。Mo濃度が350ppmより高い場合、高レベルの堆積物が形成し、これにより提唱されているGF−5規格に合格するオイルを配合することが困難となることが判明した。しかし今までに、モリブデンの使用を回避しつつモリブデンのような利点を得ることができる適切な配合物は発見されていない。
【0004】
グリセロールまたはモノグリセリドのモノエステル、エトキシ化アミド、およびそのホウ酸エステルは、参照のため本明細書中に取り込まれる米国特許第4389322号、米国特許第4450771号、米国特許第5629272号で開示されているように、摩擦低下性および抗摩耗性の効果的な潤滑剤用添加剤として長い間認識されてきた。さらにこのような物質は、摩擦を低減するモリブデン化合物と組合わせて、エンジンオイルの摩擦低下能力をさらに改善し、よって乗用車の燃費を改善してきた。
【0005】
米国特許第6723685 B2号において、Hartleyは、a)粘度指数が少なくとも96の潤滑粘度のオイル、b)少なくとも一種のカルシウム清浄剤、c)少なくとも有機モリブデン化合物、d)無灰で窒素を含まない、少なくとも1種の有機の摩擦調整剤、およびe)少なくとも1種の金属のジヒドロカルビルジチオリン酸化合物を含み、少なくとも10ppmの量のモリブデンおよび約0.1重量%までの量のリン形態の金属ジヒドロカルビルジチオリン酸化合物を有する潤滑オイル組成物を開示している。好まれる有機の無灰窒素はグリセリンのモノエステルで、この中でエステルはオレイン酸である。Hartleyは、改変されたSequence VLBエンジン試験において、エラストマー密封に有害な影響なしに燃料消耗を軽減するのに、この組成物が非常に効果的であると述べている。しかし、Hartleyは、グリセリンモノオレイン酸が抗酸化性または堆積物制御の機能を有することは教示していない。
【0006】
米国特許出願第2006/0025313 A1号において、Boffaは、燃費の利点を実証する一方で、高温酸化、ピストンへの堆積物、および摩耗保護が得られる、内燃機関用の低リン潤滑油組成物を開示している。この発明の潤滑油組成物は、a)多量の潤滑粘度の基油、b)過塩基性アルカリ土類スルホン酸塩清浄剤、c)0.02〜10重量%のオキシモリブデン含有錯体、d)0.1〜5重量%のエステル摩擦調整剤、およびe)ジフェニルアミンタイプ、硫化エステル含有化合物およびその混合物から成る群から選択される、約0.2〜10重量%の抗酸化物質であり、この組成物中のリン含有量が0.08重量%以下であるものから成る。本発明において好ましいエステル摩擦調整剤は、ホウ酸化グリセロールモノオレエートである。しかし、Boffaは、エステル摩擦調整剤が、抗酸化機能を有し、酸化および堆積物制御保護を得るためジフェニルアミンタイプの抗酸化物質およびモリブデン錯体の両方に依存しなければならないことを教示していない。
【0007】
【特許文献1】米国特許第4389322号
【0008】
【特許文献2】米国特許第4450771号
【0009】
【特許文献3】米国特許第5629272号
【0010】
【特許文献4】米国特許第6723685 B2号
【0011】
【特許文献5】米国特許出願第2006/0025313 A1号
【0012】
【特許文献6】米国特許第3405064号
【0013】
【特許文献7】米国特許第3574576号
【0014】
【特許文献8】米国特許第4089794号
【0015】
【特許文献9】米国特許第4171273号
【0016】
【特許文献10】米国特許第4670173号
【0017】
【特許文献11】米国特許第4517104号
【0018】
【特許文献12】米国特許第4632769号
【0019】
【特許文献13】米国特許第5512192号
【0020】
【特許文献14】米国特許第3368972号
【0021】
【特許文献15】米国特許第3539663号
【0022】
【特許文献16】米国特許第3649229号
【0023】
【特許文献17】米国特許第4157309号
【0024】
【特許文献18】米国特許出願第2004/0138073 A1号
【0025】
【特許文献19】米国特許第3211652号
【0026】
【特許文献20】米国特許第6235686号
【0027】
【特許文献21】米国特許第5328619号
【0028】
【特許文献22】米国特許第4031023号
【0029】
【特許文献23】米国特許第4792410号
【0030】
【特許文献24】米国特許第5110488号
【0031】
【特許文献25】米国特許第4259254号
【0032】
【特許文献26】米国特許第5137647号
【0033】
【特許文献27】米国特許第4889647号
【0034】
【特許文献28】米国特許第4164473号
【0035】
【特許文献29】米国特許第4130494号
【0036】
【特許文献30】米国特許第4880553号
【0037】
【特許文献31】米国特許第4753745号
【0038】
【特許文献32】米国特許第5157088号
【0039】
【特許文献33】米国特許第5256752号
【0040】
【特許文献34】米国特許第5395539号
【0041】
【特許文献35】米国特許第5403501号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0042】
アルキル化ジフェニルアミンおよびホウ酸化モノグリセリド/エトキシ化アミドの組合せは、潤滑組成物において抗酸化の相乗作用を示すことが証明された。しかし、より低い濃度のリンを使用する場合、満足な抗酸化保護を得るには、この組合せだけでは十分ではない。
【0043】
本発明は、本明細書の中で、より高濃度のリンを有する組成物と同じ程度の酸化安定度を達成する、低リンまたは無リンで、モリブデンを含まない潤滑組成物を開示する。モリブデンを含まないという意味は、潤滑組成物は、モリブデンを元素、または結合もしくは非結合のイオンの一部として、または無機もしくは有機の分子または錯体の一部として、いかなる形態においても含まないことを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0044】
本発明に従い、(1)アルキル化ジフェニルアミン(APDA)、(2)ポリアミン分散剤、および(3)モノグリセリド、エトキシ化アミド、またはその混合物を含有する相乗的抗酸化組成物が開示される。モノグリセリドは、脂肪油、植物油、トリグリセリドまたは他のグリセロールエステルの部分加水分解によって調製するのが好ましい。エトキシ化アミドは、脂肪油、植物油、トリグリセリド、または他のグリセロールエステルに、3当量のエトキシ化アミンを反応させることにより調製する。後者の混合物は脂肪油、植物油、トリグリセリドまたは他のグリセロールエステルに、3当量未満のエトキシ化アミンを部分的に反応させることにより調製する。本発明の別の態様において、(3)に記載の化合物は、ホウ酸化することにより、ADPAとの相乗作用に影響を与えることなく、抗摩耗性能を改善する。
【0045】
本発明の別の実施形態は、多量の潤滑粘度のオイルおよび(1)ADPA、(2)ポリアミン分散剤、および(3)モノグリセリド、エトキシ化アミド、またはその混合物を含有する、酸化抑制量の相乗的抗酸化組成物から成る潤滑組成物に関する。本発明の別の態様において、(3)に記載の化合物をホウ酸化することにより、潤滑組成物の酸化安定性に影響を与えることなく、抗摩耗性能を改善する。さらなる実施形態は、ZDDPと組合せて上記の相乗的な抗酸化組成物を有する潤滑組成物に関する。好ましくは抗酸化組成物は、そのような潤滑組成物に普通存在するZDDPの一部分に代わることによって、亜リン酸および硫黄の濃度の低下とともに効果的な結果を達成する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
本発明のADPA抗酸化剤は、以下の一般式の第二級ジアリールアミンである。
【0047】
【化1】

【0048】
式中、R、R、R、およびRは、それぞれ独立して、水素、各基が1〜約20個の炭素原子を有する、アルキル、アラルキル、アリール、およびアルカリル基を表す。好ましい基は、水素、2−メチルプロペニル、2,4,4−トリメチルペンテニル、スチレニル、およびノニルである。
【0049】
本明細書中に開示した相乗的な抗酸化組成物の第2の成分は、ポリアルケニルアミン化合物に基づくポリアミン分散剤である。
【0050】
【化2】

【0051】
式中、RおよびRは、独立して水素、直鎖および分枝の、1〜25個の炭素原子を含有するアルキル基、1〜12個の炭素原子を含有するアルコキシ基、2〜6個の炭素原子を含有するアルキレン基、および2〜12個の炭素原子を含有するヒドロキシルまたはアミノアルキレン基であり、xは、2〜6であり、好ましくは2〜4であり、およびnは、0〜10であり、好ましくは、2〜6である。特に最も好ましいのがトリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペントアミン、およびこれらの混合物であり、ここでRおよびRは両方とも水素であり、xは2〜3であり、nは2である)。
【0052】
ポリアミン分散剤は、ポリアルケニルアミン化合物と、カルボン酸(ROOH)またはその反応性誘導体、アルキルまたはアルケニルハロゲン化物(R−X)およびアルキルまたはアルケニル置換のコハク酸との反応により、カルボン酸アミド、ヒドロカルビル置換のポリアルケニルアミン、およびスクシンイミドをそれぞれ形成することにより調製する。
【0053】
【化3】

【0054】
典型的なカルボン酸アミドは、米国特許第3405064号に開示されているものであり、参照によってその開示が取り込まれる。生成物は、上に示したモノカルボン酸アミドまたは2つ以上の第一級および第二級アミン(−NHおよびNH)がカルボン酸アミドに変換しているポリカルボン酸アミドのいずれかである。カルボン酸の中のR基は、12〜250個の脂肪族炭素原子である。好ましいR基は、12〜20個の炭素原子および72〜128個の炭素原子を含有するポリイソブテニル鎖を含む。
【0055】
典型的なヒドロカルビル置換のポリアルケニルアミン化合物は、米国特許第3574576号に開示されており、参照によってその開示が取り込まれる。生成物は、モノまたはポリ置換されている。ヒドロカルビル基、Rは、20〜200個の炭素原子であることが好ましい。ヒドロカルビルポリアルケニルアミン化合物の形成に用いられる特に好ましいハロゲン化物は、70〜200個の炭素原子を含むポリイソブテニルクロライドである。
【0056】
本発明の好ましいポリアミン分散剤は、モノ置換またはビス置換のいずれかがなされているスクシンイミドである。
【0057】
【化4】

【0058】
式中、R10は、8〜400個の炭素原子および好ましくは50〜200個の炭素原子である。特に好ましいのは、ポリイソブテニル、およびトリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペントアミンなどのポリエチレンアミンおよびその混合物から得られるスクシンイミド分散剤である。
【0059】
別の種類の分散剤は、ポリアミングラフトした粘度指数(VI)改善剤である。これらの化合物の調製を教示している多数の特許が、利用可能である。参照のため取り込まれるこのような特許の抽出見本は、米国特許第4089794号、米国特許第4171273号、米国特許第4670173号、米国特許第4517104号、米国特許第4632769号、および米国特許第5512192号である。典型的な調製は、エチレン性不飽和カルボン酸物質でオレフィンコポリマーを予備グラフトすることによって、アシル化されたVI改善剤を作成することを含む。アシル基は、次いでポリアミンと反応させることによって、カルボン酸アミドおよびスクシンイミドを形成する。
【0060】
別の種類のポリアミン分散剤は、マンニッヒ塩基型組成物である。本発明に使用することができる典型的なマンニッヒ塩基型は、米国特許第3368972号、米国特許第3539663号、米国特許第3649229号、および米国特許第4157309号で開示されている。マンニッヒ塩基は、炭素原子9〜200個のアルキル基を有するアルキルフェノール、ホルムアルデヒドなどのアルデヒド、トリエチレンテトラアミン、テトラエチレンペントアミンなどのポリアルケニルアミン化合物、およびその混合物から通常調製する。
【0061】
本明細書中に開示される相乗的な抗酸化組成物の第3の成分は、グリセリルエステルから得られ、トリグリセリドとしても知られている。
【0062】
【化5】

【0063】
式中、R11、R12、およびR13は、互いに独立しており、好ましくは少なくとも8個の炭素原子を含み、22個以上の炭素原子を含み得る。そのようなエステルは、通常は天然由来のもので、一般に植物油および動物性油として知られている。特に有用な植物油は、ココナツ、トウモロコシ、綿実、亜麻仁、大豆、およびアブラナである。同様に、牛脂などの動物性脂肪油を使用することができる。このような油は通常、(a)部分加水分解により、反応(1)に示すモノグリセリド化合物を形成するか、(b)3当量のエトキシ化アミンとの反応により、反応(2)に示すエトキシ化アミド化合物を形成するか、または(c)3当量未満のエトキシ化アミンとの下記の反応によって、下記の反応(3)で示す(a)および(b)の混合物を形成することにより、本発明の抗酸化成分へと変換する。
【0064】
【化6】

【0065】
反応2および3において、R14は、エトキシル基、すなわち−CHCHOHであり、R15は、エトキシル基、水素、または1個または複数の炭素のアルキル基である。反応2および3において、好ましいアミン反応体は、R14およびR15が両方ともエトキシル基であるジエタノールアミンである。
【0066】
反応1、2、および3の生成物をホウ酸とさらに反応させて、以下の形態のホウ酸エステル形成してもよい。
【0067】
【化7】

【0068】
反応1、2、および3のホウ化した生成物は、抗酸化相乗作用への悪影響なしに、0.1〜2質量%のホウ素を含み得る。好ましい生成物の調製は、米国特許出願第2004/0138073 A1号に記載されている。好ましいホウ酸化エステルは、Vanlube(登録商標) 289、であり、これはR.T.Vanderbilt Company、Inc.から市販されている商品である。
【0069】
ADPA成分は、潤滑組成物の約0.1〜2.5質量%を構成することになるであろう。ADPA成分は、好ましくは約0.25〜1.5質量%、最も好ましくは潤滑組成物の約0.5〜1.0質量%を構成することになるであろう。
【0070】
ポリアミン分散剤の成分は、潤滑組成物の約1〜9質量%、好ましくは約4.0〜7質量%、および最も好ましくは約2〜5質量%を構成することになるであろう。
【0071】
モノグリセリド、エトキシ化アミド、またはその混合物は、潤滑組成物の約0.05〜2.0質量%を構成することになるであろう。好ましくは、潤滑組成物の約0.10〜1.5質量%、最も好ましくは約0.15〜1.0質量%を構成することになるであろう。
【0072】
相乗的な抗酸化組成物は、既知の方法で任意の潤滑媒体に取り込んでもよい。当分野で知られている、潤滑粘度を有する任意の基油を本発明に従って使用することができ、そのような基油が、主要な部分、すなわち潤滑組成物の少なくとも50%を構成することになるであろう。代表的な石油系油は、例えば、ナフテン系、芳香族系、およびパラフィン系油である。代表的な合成油は、例えば、ポリアルキレングリコール、カルボン酸エステル、およびポリ−α−オレフィンである。
【0073】
本発明の組成物は、所望の酸化抑制特性を生じるのに効果的な量で、潤滑組成物に取り込んでもよい。量は通常、潤滑組成物の全質量に対して約1.1〜14.0質量%にわたってもよい。好ましい範囲は、潤滑組成物の全質量に対して、約2.0〜7.0%の添加剤である。
【0074】
潤滑組成物はまた、好ましくは金属ジヒドロカルビルジチオリン酸としてリンを含むことにより、0.01〜0.08質量%、好ましくは約0.03〜0.07質量%、および最も好ましくは約0.05%のリン濃度を提供し得る。加えて、本明細書中に開示する本発明に基づき、特にホウ酸化グリセリルエステル派生物が存在する場合、驚くほど効果のある抗酸化作用を維持しながら、リンを含まない潤滑組成物を有することが可能である。
【0075】
ジヒドロカルビルジチオリン酸化合物は、普通Pとアルコールまたはフェノールとの反応により調製することで、ジヒドロカルビルジチオリン酸化合物を形成し、これを次いで適切な金属化合物で中和する。金属化合物の例は、それだけに限らないが、亜鉛、アンチモン、ビスマス、および銅の酸化物を含む。先に述べたように、ジヒドロカルビルジチオリン酸亜鉛、ZDDPは、好ましいリン源である。
【0076】
【化8】

【0077】
式中、R16およびR17は、アルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、アルキルアリール、およびシクロ脂肪基を含めた、1〜18個、好ましくは2〜12個の炭素原子を含有する独立したヒドロカルビル基である。ヒドロカルビル基の例は、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、iso−オクチル、2−エチルヘキシル、およびブチルフェニルである。
【0078】
非金属ジヒドロカルビルジチオリン酸化合物はまたリン源として用いることによって、抗摩耗および抗酸化特性を付与する。このような添加剤は、ジヒドロカルビルジチオリン酸をアクリレートおよびマレアートの化合物に添加してそれぞれカルボン酸エステルおよびコハク酸を形成することによって調製される。
【0079】
【化9】

【0080】
式中、R18、R19、およびR20は、2〜8個の炭素原子を有するアルキル基から独立して選択される。市販されているものの例は、R.T.Vanderbilt Company Inc.製のVanlube(登録商標)7611MおよびVanlube(登録商標)727およびCiba Geigy Corporation製のIrgalube(登録商標)63である。
【0081】
本発明の成分に加えて、完全に配合された潤滑組成物は、以下の1種または複数を含み得ることを当業者であれば理解されよう。
1.追加の抗酸化化合物
2.本明細書に記載のグリセリルベースのエステルおよびアミド抗酸化相乗剤に加えて追加の摩擦調整剤
3.追加の極圧/抗摩耗添加剤
4.粘度調整剤
5.流動点降下剤
6.清浄剤
7.消泡剤
8.錆阻害剤
9.腐蝕阻害剤
【0082】
1. 追加の抗酸化化合物
必要に応じて、本発明の組成物中に他の抗酸化剤を用いてもよい。典型的な抗酸化剤は、ヒンダードフェノール抗酸化剤、硫化フェノール抗酸化剤、油可溶性の銅化合物、リン含有の抗酸化剤、有機硫化物、二硫化物および多硫化物、ならびにメチレンビス(ジブチルジチオカルバミン酸)などのジアルキルジチオカルバミン酸化合物、およびジアルキルジチオカルバミン酸銅、ジアルキルジチオカルバミン酸亜鉛、ジアルキルジチオカルバミン酸ビスマスおよびジアルキルジチオカルバミン酸アンチモンなどの金属錯体が挙げられる。
【0083】
例示的な立体障害フェノール抗酸化剤としては、オルトアルキル化フェノール化合物、例えば2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、4−メチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、2−tert−ブチルフェノール、2,6−ジソプロピルフェノール、2−メチル−6−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、4−(N,N−ジメチルアミノメチル)−2,8−ジ−tert−ブチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−メチル−6−スチリルフェノール、2,6−ジスチリル−4−ノニルフェノールなど、ならびにこれらの類似体および相同体が挙げられる。そのような単核のフェノール化合物の2種類以上の混合物もまた適切である。
【0084】
本発明の組成物に使用するのに好ましい他のフェノール抗酸化剤は、メチレン架橋したアルキルフェノールであり、これらは、単独もしくは互いに組合せて使用することができるか、または非架橋の立体障害フェノール化合物と組合せて使用することができる。例示的なメチレン架橋した化合物としては、4,4’−メチレンビス(6−tert−ブチルo−クレゾール)、4,4’−メチレンビス(2−tert−アミル−o−クレゾール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2、6−ジ−tert−ブチルフェノール)および類似の化合物が挙げられる。特に好ましいのは、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第3211652号に記載のものなど、メチレン架橋したアルキルフェノールの混合物である。
【0085】
本発明の組成物に包含するのに好ましい別の有用な種類の抗酸化剤は、1種または複数の液状の部分的に硫化したフェノール化合物、例えば一塩化硫黄と、フェノール混合物の少なくとも約50重量%が1種または複数の反応性のヒンダードフェノールで構成されるフェノールの液体混合物とを、液体生成物を生成するために、反応性ヒンダードフェノール1モルあたり約0.3〜約0.7g原子の一塩化硫黄を与える割合で反応させることによって調製されるものである。そのような液体生成物の組成物を作製するのに有用な典型的フェノール混合物としては、重量にして約75%の2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、約10%の2−tert−ブチルフェノール、約13%の2,4,6−トリ−tert−ブチルフェノール、および約2%の2,4−ジ−tert−ブチルフェノールを含有する混合物が挙げられる。反応は発熱性であるので、好ましくは約15℃〜約70℃の範囲内に、最も好ましくは約40℃〜約60℃の間に維持する。
【0086】
別の有用な種類の抗酸化剤は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第6235686号に記載の、芳香化した末端単位を含有する2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン(TMDQ)ポリマーおよび相同体である。
【0087】
異なる抗酸化剤の混合物も使用できる。参照により本明細書中に取り込まれる米国特許第5328619号で開示の通り、適切な一混合物は、(i)25℃で液性状態で、少なくとも3つの異なる、立体障害性3級ブチル化一価フェノールの油可溶性の混合物、(ii)少なくとも3つの異なる立体障害性メチレン架橋3級ブチル化ポリフェノールの油可溶性混合物、および(iii)アルキル基が8〜12個の炭素原子を有する分枝アルキル基である、少なくとも1つのビス(4−アルキルフェニル)アミンの組合せから構成され、(i)、(ii)および(iii)の割合が、重量ベースで成分(iii)1重量部につき、成分(i)が3.5〜5.0重量部および成分(ii)が0.9〜1.2重量部の範囲に入る。他の有用な、好ましい抗酸化剤は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第4031023号の開示に含まれるものである。
【0088】
2. 摩擦調整剤
摩擦調整剤は、当業者にも周知である。摩擦調整剤の有用なリストが、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第4792410号に含まれている。米国特許第5110488号は、脂肪酸の金属塩、特に亜鉛塩を開示しており、参照により本明細書に取り込まれる。有用な摩擦調整剤としては、脂肪性ホスファイト、脂肪酸アミド、脂肪性のエポキシド、ホウ酸化した脂肪性のエポキサイド、脂肪性アミン、脂肪酸の金属塩、硫化オレフィン、脂肪性イミゾリン、モリブデンジチオカルバメート(例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第4259254号)、モリブデン酸エステル(例えば、いずれも参照により本明細書に取り込まれる米国特許第5137647号および米国特許第4889647号)、硫黄供与体を有するモリブデン酸アミン(例えば、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第4164473号)、およびその混合物が挙げられる。
【0089】
摩擦調整剤は、脂肪酸の金属塩も含む。好ましいカチオンは、亜鉛、マグネシウム、カルシウム、およびナトリウムであり、任意の他のアルカリまたはアルカリ土類金属を用いてもよい。塩は、当量のアミンにつき過剰のカチオンを含めることにより過塩基化してもよい。これら過剰のカチオンは、次いで二酸化炭素で処置し、炭酸塩を形成する。金属塩は、適切な塩と、塩を形成する酸とにより、適切な場合は、反応混合物に二酸化炭素を添加することによって、その塩を形成するのに必要とされる量を超える任意のカチオンの炭酸塩を形成することにより調製される。好ましい摩擦調整剤は、オレイン酸亜鉛である。
【0090】
3. 極圧/抗摩耗剤
潤滑組成物はまた、硫黄を含有する類似体を含めた、少なくとも1種のリン酸、リン酸塩、リン酸エステルまたはその誘導体を、好ましくは0.002〜1.0重量%の量で含むことが好ましい。リン酸、リン酸塩、リン酸エステルまたはその誘導体は、リン酸エステルまたはその塩、ホスファイト、リン含有アミド、リン含有カルボン酸またはカルボン酸エステル、リン含有エーテルおよびその混合物から選択される化合物を含む。
【0091】
アルキルホスフェートのアミン塩は、例えば参照により本明細書に取り込まれる米国特許第4130494号で開示されている、既知の方法で調製される。適切なリン酸のモノまたはジエステルまたはその混合物は、アミンで中和されている。モノエステルを用いる場合、アミン2モルが必要になるが、ジエステルにはアミン1モルが必要になるであろう。いずれにせよ、必要なアミンの量は、全酸価が基本的に全塩基価と等しい反応の中性点をモニターすることで制御することができる。別法としてアンモニアまたはエチレンジアミンなどの中和剤を反応物に添加することができる。
【0092】
好ましいリン酸エステルは、脂肪性エステル、中でも、2−エチルヘキシル、n−オクチル、およびヘキシルモノまたはジエステルである。アミンは、第一級または第二級アミンから選択できる。特に好ましいものは、10〜24個の炭素原子を有するtert−アルキルアミンである。このようなアミンは、例えば、RohmおよびHaas Co.が製造するPrimene(登録商標)81Rとして、市販されている。
【0093】
4. 粘度調整剤
粘度調整剤および分散粘度調整剤は、周知である。粘度調整剤および分散粘度調整剤の例は、ポリメタクリル酸、ポリアクリレート、ポリオレフィン、スチレン−マレイン酸エステルコポリマー、およびホモポリマー、コポリマーおよびグラフト共重合体を含めた類似の重合体材料である。以下は、市販の粘度調整剤、分散粘度調整剤およびそれらのケミカルタイプの例の一覧である。分散粘度調整剤は、その数の後に(D)と明記してある。代表的な市販の粘度調整剤は、以下の表1に挙げている。
【0094】
5. 流動点降下剤(PPD)
このような成分は、潤滑油の低温特性を改善するのに特に有用である。好ましい流動点降下剤は、アルキルナフタレンである。流動点降下剤は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第4880553号および米国特許第4753745号で開示されている。流動点降下剤は一般に、低温および低剪断速度で測定する粘度を低下させるために潤滑組成物に通用される。流動点降下剤は、0.1〜5重量%の範囲で用いるのが好ましい。潤滑液の低温、低剪断速度での流動性を入手するために使用される試験の例としては、ASTM D97(流動点)、ASTM D2983(Brookfield粘度)、D4684(Mini−rotary粘度計)、およびD5133(Scanning Brookfield)が挙げられる。
【0095】
表2は、市販の流動点降下剤およびその化学的種類の例の一覧である。
【0096】
【表1】

【0097】
粘度調整剤の概要は、参照により本明細書に取り込まれる米国特許第5157088号、米国特許第5256752号、および米国特許第5395539号において見い出すことができる。
【0098】
【表2】

【0099】
6. 清浄剤
多くの場合、潤滑組成物は、清浄剤も含むことが好ましい。清浄剤は、本明細書で使用する場合、有機酸の金属塩を含むことが好ましい。清浄剤の有機酸の部分は、スルホン酸、カルボン酸、石炭酸、またはサリチル酸が好ましい。清浄剤の金属部分は、アルカリまたはアルカリ土類金属が好ましい。好ましい金属は、ナトリウム、カルシウム、カリウム、およびマグネシウムである。清浄剤は、過塩基性であるのが好ましく、中性金属塩を形成するのに必要な量を超えて化学量論的に過剰な金属が存在することを意味する。
【0100】
好ましい過塩基性有機酸塩は、実質的に親油性の性質を有し、有機物質から形成されるスルホン酸塩である。有機スルホン酸塩は、潤滑剤および清浄剤の分野では周知の物質である。スルホン酸塩化合物は、好ましくは平均して約10〜40個の炭素原子、より好ましくは約12〜約36個の炭素原子、および最も好ましくは平均して約14〜約32個の炭素原子を含むべきである。同様に、石炭酸塩、オキシレート、およびカルボン酸塩は、実質的に親油性の性質を有することが好ましい。
【0101】
本発明では、炭素原子は、芳香族またはパラフィン系の配置にあることが可能であるが、アルキル化した芳香族を使用するのが極めて好ましい。ナフタレンベースの物質を使用し得るが、一般に好まれる芳香族は、ベンゼン部分である。
【0102】
特に好ましい一成分は、したがって過塩基性のモノスルホン化したアルキル化ベンゼンであり、好ましくはモノアルキル化ベンゼンである。アルキルベンゼン画分は、静止ボトム源から得られ、モノアルキル化またはジアルキル化されているのが好ましい。本発明において、モノアルキル化芳香族は、全体的な特性でジアルキル化芳香族よりも優れていると考えられている。
【0103】
モノアルキル化した芳香族(ベンゼン)の混合物を利用することによって、本発明のモノアルキル化塩(ベンゼンスルホン酸塩)を得ることが好ましい。その組成物のかなりの部分が、アルキル基源としてプロピレンのポリマーを含む混合物は、その塩の溶解を促進する。一官能性(例えば、モノスルホン化)物質の使用により、分子の架橋が回避され、潤滑剤からの塩の沈殿が減少する。塩は、過塩基化することが好ましい。過塩基化による過剰な金属は、潤滑剤中に蓄積し得る酸を中和する効果がある。第2の利点は、過塩基化した塩は、動摩擦係数を向上させることである。好ましくは過剰な金属は、当量を基準として、約30:1まで、好ましくは5:1〜18:1の付近の比率で、酸を中和するのに必要な量を超えた量で存在することになる。
【0104】
該組成物に使用される過塩基性の塩の量は、好ましくは油を含まない基準で、約0.1〜約10重量%である。過塩基性の塩は、普通は約50%油中で生成され、TBN範囲は油を含まない基準で、10〜600である。ホウ酸化および非ホウ酸化した過塩基化清浄剤は、これに関連する開示のために参照により本明細書に取り込まれる米国特許第5403501号および米国特許第4792410号に記載されている。
【0105】
7.消泡剤
消泡剤は、当分野でケイ素樹脂組成物またはフルオロケイ素樹脂組成物として周知である。そのような消泡剤は、Dow Corning Chemical CorporationおよびUnion Carbide Corporationから入手可能である。好ましいフルオロケイ素樹脂消泡剤製品は、Dow FS−1265である。好ましいケイ素樹脂消泡剤製品は、Dow Corning DC−200およびUnion Carbide UC−L45である。該組成物に単独または混合のいずれかで含み得る他の消泡剤は、PC−1244として知られている、Nitro、West VirginiaのMonsanto Polymer Products Co.から入手可能なポリアクリレート消泡剤である。Farmington Hills, MichiganのOSI Specialities, Incから入手可能なシロキサンポリエーテルコポリマー消泡剤もまた挙げられる。そのような一物質は、SILWET−L−7220として販売されている。消泡剤製品は、好ましくは本発明の組成物に、油を含まない基準の活性成分として5〜80P.P.M.の濃度で含まれる。
【0106】
8. 腐蝕阻害剤
錆阻害剤の実施形態は、アルキルナフタレンスルホン酸の金属塩を含む。任意選択で加えてもよい銅腐蝕阻害剤の実施形態には、チアゾール、トリアゾール、およびチアジアゾールが挙げられる。そのような化合物の実施形態の例として、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、オクチルトリアゾール、デシルトリアゾール、ドデシルトリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2,5−ジナルカプト−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルチオ−1,3,4−チアジアゾール、2−メルカプト−5−ヒドロカルビルジチオ−1,3,4−チアジアゾール、2,5−ビス(ヒドロカルビルチオ)−1,3,4−チアジアゾール、および2,5−ビス(ヒドロカルビルジチオ)−1,3,4−チアジアゾールが挙げられる。
【0107】
以下の実施例は、本発明を例示する目的で提供するもので、本発明を限定することを意図しない。すべてのデータは、特に指定しない限り、質量%に基づく。
【0108】
酸化安定度試験
酸化安定度は、ASTM D 6186で記載されているように、加圧した示差走査熱量測定法(PDSC)により測定した。PDSCは、潤滑組成物の抗酸化能力が劣化し、基油が自動酸化として知られる酸化的な連鎖反応へと進むときの発熱性の放熱を検出することによって酸化安定度を測定する。実験開始から自動酸化への時間は、酸化誘導時間(OIT)として知られている。したがって、OITが長いほど、酸化的安定度および抗酸化剤能力が大きいことを示している。
【0109】
実施例A
以下の実施例は、表Aに記載のデータと共に、ADPA、C6〜18モノグリセリドおよびエトキシ化アミド混合物、ならびに脱ろうした、重パラフィン系石油留分の35〜50質量%溶媒中に溶解したポリエチレンアミンおよびポリイソブチレン無水コハク酸由来のモノスクシンイミド分散剤の間に存在する抗酸化剤の相乗作用を示す。1モルのやし油と約2.0モルのジエタノールアミンを反応させることによって調製した、C6〜18モノグリセリドおよびエトキシ化アミド混合物である。
【0110】
【表3】

【0111】
実施例B
以下の実施例は、表Bに記載のデータと共に、ZDDPの形態のリンの存在下、ADPA、モノスクシンイミド分散剤、およびモノグリセリド、エトキシ化アミド、またはその混合物の間に存在する抗酸化剤相乗作用を示す。データは、グリセロールカルボン酸塩、エトキシ化アミドおよびその混合物が、リン濃度が減少したときに失った抗酸化剤能力を回復するのに有用であることを示している。
【0112】
【表4】

【0113】
実施例C
以下の実施例は、表Cに記載のデータと共に、リン(ZDDPとして)の存在下で、ADPA、ポリアミン分散剤およびホウ酸化モノグリセリド/エトキシ化アミド混合物の間に存在する抗酸化剤相乗作用を示す。データは、グリセロールカルボン酸塩/エトキシ化アミド混合物が、リン濃度が減少したときに失った抗酸化剤能力を回復するのに有用であることを示すとともに、リンが排除された場合でも、満足な抗酸化剤能力を達成することを実証している。加えてデータは、分散剤を欠いたシステムと比較した(比較試験18v.試験17)場合の、3成分システムに特有の相乗作用を実証するのに役立つ。リンなしにもかかわらず、3成分システムは、81.1でのPDSC OIT結果値を示し、これは、最小許容値である約55よりも上である。
【0114】
【表5】

【0115】
堆積物制御テスト
自動車エンジンオイルの堆積物形成傾向を測定するために行った試験は、TEOST MHT4(高温酸化エンジンオイルシミュレーション試験 Thermo−oxidation Engine Oil Simulation Test Moderately High Temperature)である。この試験においては、酸化触媒で処置したエンジンオイルを、事前に秤量したワイヤーを巻いたロッドの外側に持続性に循環させるが、ロッドはガラスマントル内に入っている。ロッドを抵抗的に加熱することにより、最大温度285℃を得て、油を24時間循環し、乾燥し空気をケース内のガラスマントル内を10mL/分の速度で流動させる。24時間後に、ロッドを溶媒ですすぎ、残留油を取り出し、次いで乾燥させる。ロッド上の堆積物の質量と、すすいでいる間にロッドから取れたあらゆる堆積物とを加えたものを秤量し、試験前のロッドの重量と比較する。エンジンオイルに対するILSAC GF−4規格によると、全堆積物が35mg以下でなければならない。
【0116】
実施例D
3つの完全に配合した5W−20エンジンオイルをPDSCおよびTEOST MHT4で検査した。エンジンオイルAは、ポリアミン分散剤をエンジンオイルに典型的に使用される濃度で、ADPAを0.5質量%で、およびZDDPを油と共にリン0.1質量%となるような量で含む。エンジンオイルBはエンジンAと同じだが、より少ない量のZDDP、つまり油のみでリンが0.05質量%となる量を含む。エンジンオイルCは、エンジンオイルBと同じだが、エンジンオイルCは、1.0質量%のVanlube 289、ホウ酸化モノグリセリド/エトキシ化アミド混合物を含む。表Dの結果は、本発明の成分が、抗酸化性および堆積物制御の特性の両方において優れている、モリブデンを含まない、低リンのエンジンオイル(P<0.08質量%)を配合するのに有用であることを証明している。
【0117】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑基油の主要部分と、
(1)アルキル化ジフェニルアミン、
(2)モノグリセリド、エトキシ化アミドまたはその混合物、および
(3)ポリアミン分散剤
を含む添加剤組成物と
を含む潤滑組成物であって、
潤滑組成物がモリブデンを含まず、潤滑組成物のリン濃度が0から0.08質量%未満である潤滑組成物。
【請求項2】
約0.01から0.08質量%までの間のリンをさらに含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項3】
約0.03〜0.07質量%のリンを含む、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項4】
リンを含まない、請求項1に記載の潤滑組成物。
【請求項5】
潤滑組成物の約1.1〜約14.0質量%の添加剤組成物が存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項6】
潤滑組成物の約2.0〜約7.0質量%の添加剤組成物が存在する、請求項1から4のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項7】
潤滑組成物の約0.1〜約2.5質量%の成分(1)が存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
潤滑組成物の約0.25〜約1.5質量%の成分(1)が存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項9】
潤滑組成物の約0.50〜約1.5質量%の成分(1)が存在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項10】
潤滑組成物の約0.05〜約2.0質量%の成分(2)が存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項11】
潤滑組成物の約0.1〜約1.5質量%の成分(2)が存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項12】
潤滑組成物の約0.15〜約1.0質量%の成分(2)が存在する、請求項1から9のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項13】
潤滑組成物の約1.0〜約9.0質量%の成分(3)が存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項14】
潤滑組成物の約4.0〜約7.0質量%の成分(3)が存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項15】
潤滑組成物の約2.0〜約5.0質量%の成分(3)が存在する、請求項1から12のいずれか一項に記載の潤滑組成物。
【請求項16】
成分(2)がホウ酸化されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の潤滑組成物。

【公表番号】特表2009−529603(P2009−529603A)
【公表日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−500638(P2009−500638)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/US2007/067488
【国際公開番号】WO2007/127836
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(507293620)アール.ティー. ヴァンダービルト カンパニー インコーポレーティッド (11)
【Fターム(参考)】