説明

澱粉を利用したソフトカプセル及びその製造方法並びに製造装置

澱粉からソフトカプセルを製造する方法であって、50重量%以上の澱粉が顆粒澱粉の粒子として存在する澱粉と可塑剤と水とが含まれた混合物を準備するステップと、混合物を成形加工して膜体を形成するステップと、成形加工時及び/又は成形後に混合物を5℃より多くの温度の上昇により固化させるステップと、膜体からソフトカプセルに成形するステップとを含んでいる。このように製造されたソフトカプセルは互いに接着した澱粉粒子を含んでいる。この方法を実施する装置は澱粉材料を膜体に成形する成形装置と、成形加工時及び/又は成形後に澱粉を構造破壊するために熱処理を施す加熱装置と、ロータリーダイ装置とを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は澱粉ソフトカプセルの成形法、成形されたソフトカプセル、並びにその製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
ソフトカプセルは、例えば活性薬剤成分、食品、並びに補助食を内包するために利用される。普通、ソフトカプセルの外殻は主としてゼラチンである。カプセルがしばしばソフトゼラチンカプセルと呼称される所以である。ゼラチンはほぼ寡占的に利用されているが、この物質は数々の弱点を有している。ゼラチンは動物由来物質であるため、先のBSE発症事件時には抗議および公の批判に曝された。それ以来、植物由来の代替物質を求めて広範な探索が行われている。BSE危機以来、再発する食肉関連スキャンダルの環境下で新たな批判が繰り返されており、菜食者の運動を理解するトレンドも存在する。ゼラチンカプセルは菜食者にとっては不都合であり、菜食主義者には許容できないものである。ほとんどのゼラチンは豚屠殺場廃棄物から入手されるため、ゼラチンカプセルはイスラム教信者にとっては宗教上の理由でも受け容れられない。
【0003】
好適にはソフトカプセル分野での望ましいゼラチン代替物質は植物由来であり、ゼラチンの場合と同等品質のカプセルの製造を可能にし、代替原料は価格的にも同等以下であり、製造工程が従来以上に複雑あるいはコスト高であってはならず、新技術のために研究投資を必要としないものでなければならない。
【0004】
米国特許6770293はポリビニルエステルとポリエステルの共重合体を材料とするソフトカプセルの外殻を提案する。しかしながらこれらは合成ポリマーである。ソフトカプセルの分野では、これまで優勢であったゼラチンを植物由来の物質で代替することが望まれている。
【0005】
米国特許5342626はゼラチンを含まないソフトカプセルの製法を解説する。この製法は必須成分であるゲラン、カラギーナンおよびマンナンの混合物を使用する。この混合物はゼラチンのごとき特性を備え、高温では液体であり、冷却されると膜体となる。米国特許6949256はカラギーナンを材料としたゼラチンを含まないソフトカプセルの製法を解説する。このように製造されたソフトカプセルは植物由来の開始物質を材料とするが、カラギーナンは高価であり、発癌性である可能性もある。さらに、このようなソフトカプセルの製造方法は複雑であり、微妙な条件調整を必要とする。なぜならカラギーナン溶融物は高粘性であり、そのゲル化には長時間を要するからであり、それらの物性は明らかにソフトゼラチンカプセルの物性よりも劣る。
【0006】
植物資源由来のソフトカプセル製造のための別材料は澱粉である。澱粉はゼラチンよりも格段に安価である。しかし、澱粉水溶液から澱粉ソフトカプセルを製造する成形法は、低澱粉濃度(高水分濃度)である水溶液を使用する必要性により制限を受ける。典型的には構造破壊あるいは溶解された澱粉は、単純な成形法では成形が不可能である5%の澱粉濃度で非常に高粘性となる。この高粘性の理由は、100000000g/molほどもある澱粉の非常に大きい分子量のためである。
【0007】
高濃度の澱粉を含有した混合物は、オプションで使用澱粉を加水分解させて分子量を減らし、沸騰及び/又はせん断によって澱粉粒を溶解させることで成形することもできる。しかし、この条件ではゲル化は成形によっては得ることができず、その代わりに溶液は冷却と遅乾燥によって徐々に固化し、製造効率が非常に低い状態のままである。さらにソフトカプセルの力学的特性は劣化する。なぜなら澱粉の長形巨大分子が力学的特性に良好な影響を及ぼすからである。例えば米国特許6375981は成形澱粉ソフトカプセルを解説する。使用される加水分解された澱粉は澱粉粒の完全な破壊に至らせる条件下で沸騰される。
【0008】
しかし、澱粉ソフトカプセルは大抵の場合に押出成形によって製造される。これには高価な押出成形機を必要とする。高粘性の均質な澱粉溶融物は、せん断形態の力学的エネルギーの影響下での可塑化によって、100℃を超える温度にて顆粒形態で存在する澱粉から製造される。その後にこの澱粉溶融物は高圧下においてスロット状ノズルから押し出され、まずは澱粉膜体が作成される。高力学的エネルギーの投入によって澱粉の分子量は大きく減じられる。このことは膜体の力学的特性には不都合である。さらに、巨大分子はノズルで発生する流動中に膜体の縦方向に配向するため、膜体は異方性となるが、これはさらなる処理にとっては不都合である。澱粉膜体が押し出されるときにはゲル化は起きず、その代わりに成形後に膜体の温度は降下し、膜体の強度は幾分増加する。この膜体はさらに加工されてソフトカプセルの外殻が形成される。
【0009】
押し出し成形によって得られた均質な澱粉膜体から製造されるソフトカプセルは、例えば欧州特許EP1103254B1において紹介されている。それらの製造は複雑である。なぜなら押出成形機が必要とされ、可塑化された澱粉膜体は溶着接合が困難であるためである。この溶着には高温が必要である。得られるカプセルは劣った物性を有し、低湿度条件下では非常に脆い。
【0010】
澱粉の構造破壊は水性媒質内で澱粉を加熱することにより達成される。そこでは構造破壊は温度の上昇で増加する。もし澱粉粒がせん断力による機械応力を同時進行的に受けるなら、さらに増幅された構造破壊が同一温度で発生する。もしも澱粉粒の結晶が実質的に破壊されると、澱粉混合物の単純な撹拌や流動でも発生するせん断力であっても構造破壊の程度を増大させ、膨張した澱粉粒を実質的に破壊し、さらには澱粉巨大分子の分子量を大きく減少させる。構造破壊の程度は以下のステージ(段階)に分割できる。
【0011】
ステージ1:澱粉の結晶性の一部が破壊される。偏光顕微鏡によれば以下のように細分化される。
ステージ1.1:最大5%の澱粉粒が複屈折性(光弾性効果)を喪失
ステージ1.2:5〜10%の澱粉粒が複屈折性を喪失
ステージ1.3:10〜20%の澱粉粒が複屈折性を喪失
ステージ1.4:20〜30%の澱粉粒が複屈折性を喪失
ステージ1.5:30〜40%の澱粉粒が複屈折性を喪失
【0012】
ステージ2:澱粉の結晶が実質的に破壊される。偏光顕微鏡によれば以下のように細分化される。
ステージ2.1:40〜50%の澱粉粒が複屈折性を喪失
ステージ2.2:50〜60%の澱粉粒が複屈折性を喪失
ステージ2.3:60〜80%の澱粉粒が複屈折性を喪失
ステージ2.4:80〜100%の澱粉粒が複屈折性を喪失
【0013】
ステージ3:最大5%の澱粉が複屈折性である。
ステージ3.1:1〜10%の澱粉粒が破砕状態
ステージ3.2:10〜20%の澱粉粒が破砕状態
ステージ3.3:20〜30%の澱粉粒が破砕状態
ステージ3.4:30〜50%の澱粉粒が破砕状態
ステージ3.5:50〜70%の澱粉粒が破砕状態
ステージ3.6:70〜100%の澱粉粒が破砕状態
【0014】
破砕状態の澱粉粒は表面に破損痕/亀裂を有しており、及び/又は以前には比較的に平滑であった表面は大きく変形(例:皺形成)している。全穀粒形態で存在し続ける澱粉粒に加えて、分解されて破砕片化した澱粉粒も存在し得る。しかし、澱粉粒および破砕片は構成要素として確認が可能である。
【0015】
ステージ4:複屈折は観察されず、澱粉粒は実質的に破壊状態
ステージ4.1:澱粉粒の破砕片は存在するが、澱粉はほぼ溶解状態
ステージ4.2:澱粉は完全溶解状態
【0016】
技術の世界では“構造破壊された澱粉”の統一された解釈は存在しない。ここでは構造破壊された澱粉とはせいぜいステージ4.1の構造破壊された澱粉のことを言う。すなわち澱粉は少なくともその一部が粒子形態で存在する。
【0017】
分解された澱粉の溶液から製造された全ソフトカプセルあるいは押し出された澱粉は澱粉の分子量が大きく減少し、澱粉粒子がほぼ完全に破壊されていることを共通の特徴とする。よって上記の米国特許6375981および欧州特許EP1103254B1に従って製造されたソフトカプセルは本質的に構造破壊ステージ4.2の澱粉のみを含む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許6770293
【特許文献2】米国特許5342626
【特許文献3】米国特許6949256
【特許文献4】米国特許6375981
【特許文献5】欧州特許EP1103254B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の目的は、誰からも異議を唱えられない好ましい植物由来物質を原料とし、良好な力学的特性を備え、簡単でコスト効率が高い製法で製造されるソフトカプセルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0020】
好適には標準型の“ロータリーダイ”を利用するカプセル形成法で本発明のソフトカプセルを製造することができる。
【0021】
ソフトカプセルとは一般的なソフトカプセルの総称である。すなわちソフトカプセルの外殻に加えてその中身、およびソフトカプセル外郭のみを意味する概念である。本明細書におけるソフトカプセルとは、ソフトカプセル全体及び/又はソフトカプセル外殻のことである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1はソフトカプセルを製造する本発明装置の第1実施例の詳細を示す。
【図2】図2はソフトカプセルを製造する本発明装置の第2実施例の詳細を示す。
【図3】図3はソフトカプセルを製造する本発明装置を示す。
【図4】図4は、実施例1に従ってソフトカプセルを製造するための本発明の澱粉膜体の光学顕微鏡画像を示す。
【図5】図5は、実施例1に従ってソフトカプセルを製造するための本発明の澱粉膜体(相対湿度58%の保存)の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図6】図6は、本発明には従わず、EP1103254B1に従ってソフトカプセルを製造するための押し出された澱粉膜体の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図7】図7は、未加工の複屈折ヒドロキシプロピレート化タピオカ澱粉の水性懸濁液の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図8】図8は、70℃に加熱されたヒドロキシプロピレート化タピオカ澱粉の水性懸濁液の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図9】図9は、70℃の水内の実施例1に従った本発明のソフトカプセルを加熱することで得られたヒドロキシプロピレート化タピオカ澱粉の水性懸濁液の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図10】図10は、交差偏光器による未加工ヒドロキシプロピレート化ジャガイモ澱粉の水性懸濁液の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図11】図11は、70℃に加熱されたヒドロキシプロピレート化ジャガイモ澱粉の水性懸濁液の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図12】図12は、実施例5に従った本発明のソフトカプセルのサンプルを70℃の水内で加熱することで得られたヒドロキシプロピレート化ジャガイモ澱粉の水性懸濁液の150倍の倍率による光学顕微鏡画像を示す(幅0.57mmの膜体詳細が示されている)。
【図13】図13は、開始澱粉と、この開始澱粉から製造された実施例5に従った本発明のソフトカプセルを溶解させて回収された澱粉のモル質量分布を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
発明の説明
前記の目的は澱粉を原料としたソフトカプセルを製造する本発明の方法により達成される。特に成形法によって達成される。この成形法では澱粉を含んだ混合物(液相の澱粉の50重量%より多くが顆粒澱粉の粒子として存在)が膜体に形成され、その形成時及び/又は形成後に混合物は温度を上昇(特に5℃より多く上昇)させることで固化され、この膜体からソフトカプセルが製造される。
【0024】
この目的は澱粉を原料としてソフトカプセルを製造する方法(特に成形法)によって好適に達成される。この方法は以下のステップを含んでいる。
【0025】
以下の成分を含んだ混合物を調製するステップであって、
a)可塑剤分を差し引いて乾燥混合澱粉の40重量%より多くの澱粉(液相澱粉の50重量%より多くが顆粒澱粉の粒子の形態で存在)
b)15〜70重量%の乾燥混合可塑剤
c)15〜90重量%の全混合水
d)可塑剤分を差し引いてオプションで乾燥混合物の最大50重量%の増粘剤
e)オプションで従来添加剤および賦形剤、
の調製ステップと、
成形工程で混合物を成形して膜体を形成するステップと、
成形工程時及び/又は製造工程後に混合物の温度を5℃より多く上昇させて混合物を固化させるステップと、
膜体を成形し、構造破壊された澱粉の粒子を含んだソフトカプセルを形成するステップと、
を含んだ方法。
【0026】
本発明によれば澱粉の分子量が大きく損なわれることはない。従って新鮮膜体、新鮮ソフトカプセルおよび乾燥ソフトカプセルの非常に良好な力学的特性が可能となる。さらに、材料の非均質構造もこの特性に大きく寄与する。すなわち固化温度で形成された顆粒澱粉の構造破壊された粒子はそれ自体が既に所定の強度並びに弾性を備えている。このことは新鮮膜体と新鮮ソフトカプセルおよび乾燥ソフトカプセルの取り扱い性に有利に作用する。
【0027】
本発明の好適実施態様は従属請求項で提示されている。
【0028】
澱粉膜体の良好な力学的特性のため、澱粉の分子量と開始混合物内のその含有割合は十分に大きいものでなければならない。材料の当初矛盾する注入特性の組み合わせ(すなわち低粘性と高分子量)である澱粉が、本発明では成形用混合物内において粒子形態で存在する。混合物の粘性は主として水と可塑剤の粘性によって決定されるものであるため低い。例えば、澱粉含有量に対して全体で約35重量%の水と、約35重量%のグリセロールを含んだ澱粉混合物は加圧せずとも成形加工性が高い。同一組成であるが、成型前に澱粉が構造破壊状態、溶解状態あるいは可塑化状態で存在する混合物は、少なくとも1000倍の粘性を有するであろう。すなわち、10000Pasを有するであろう。膜体を形成するためにそのような混合物を成形するには、例えば押出成形機により発生可能な高圧が必要であろう。あるいは、混合物が圧力なしでも成形できるように、そのような混合物の含水量は約95%に増加されなければならないであろう。しかしそうなると、その後に温度を上昇させようとも材料注入後はまだ液状であり、ソフトカプセルが成形可能な利用性のある力学的特性を備えた膜体は形成できない。
【0029】
もしそのような澱粉混合物が加熱されると澱粉粒子のさらに大きな膨張と構造破壊が発生する。澱粉粒子は水と可塑剤を吸収し、膨張し、互いに接着し、澱粉粒子の凝塊物または集塊物が得られる。すなわち澱粉粒子の混合物で成る異種構造物が得られる。
【0030】
続いて、弾性率のごとき典型的な固体時の特性により特徴付けられる粘弾性固形物体を形成するため、それ以前には低粘性であった成形可能な混合物の固化が温度の上昇とほぼ同時的に発生する。これは水と可塑剤の液相が消滅する事実、すなわち澱粉粒子内への拡散によるものである。網状構造、すなわち澱粉粒子内のゲル構造は巨大分子の絡合によって形成され、澱粉粒子は互いに接着する。オプションとして澱粉粒子の接着は増粘剤の追加によってさらに調整することが可能である。
【0031】
混合物の固化は一次固化であるとして理解される。ここでは顆粒澱粉の構造破壊が発生している。すなわち規模の程度に応じて澱粉の相変換および混合物の特性の変化が発生している。この相変換は固体膜体を形成するための成形用化合物/成形用物質のゲル化として説明できる。これには澱粉以外のゲル化剤を必要としない。混合物の一次固化後に二次固化が発生する。続いて、膜体(主として固化したもの)の温度が降下し、及び/又はその含水分量が低下したとき物質の特性が徐々に変化し、及び/又は逆進、すなわち澱粉巨大分子の結晶化によって澱粉の網状物の緩やかな形成が発生する。
【0032】
本発明によれば、多い割合で澱粉を含有した澱粉混合物が、単純な成形法を採用してソフトカプセルに加工できる。同量の澱粉が溶解形態で含まれる混合物と比較すると、混合物の低粘性が複数の程度で得られる。高弾性率で高伸展性を備えた等方性ソフトカプセル物質への混合物の固化は温度を上昇させることで達成される。本発明方法では澱粉の分子量が大きく損なわれないことが有利である。好適にはM2/M1の比は0.3より大であり、さらに好適には0.4より大であり、さらに好適には0.5より大であり、さらに好適には0.6より大であり、さらに好適的には0.7より大であり、さらに好適には0.8より大である。M1は使用される澱粉の重量平均分子量分布であり、M2は製造されたソフトカプセルにおける澱粉の重量平均分子量分布である。澱粉の分子量は機械的応力に対して非常に敏感に反応する。例えば、溶解澱粉の分子量は単に溶液を振るだけでも相当に低減される。
【0033】
本発明によって使用される澱粉混合物はゼラチン成形法の場合とほぼ同様にソフトカプセルに加工できる。これはゼラチンソフトカプセルを代替するための特に好適な前提条件である。なぜなら同一の施設と装備が利用できるからである。加工技術の観点では、ゼラチンソフトカプセルと比較した場合の相違は、本質的にはゼラチン溶解物は冷却されるとゲル化し、本発明の澱粉混合物は温度の上昇でゲル化するという事実である。本発明のソフトカプセルはゼラチンソフトカプセルの知られた品質を備えるだけではなく、同程度以下の複雑性を備えた製造方法により成形が可能であり、新技術の開拓のために大きな投資を必要としない。それどころかゼラチン溶解物の複雑な加工工程は排除され、及び/又は単純な混合工程により置換が可能である。
【0034】
澱粉
原料と加工とに関しては一般的にいかなる種類の澱粉または澱粉混合物であっても利用できる。例えば、それらは天然の状態であっても、物理的及び/又は化学的/酵素的に改質された状態のものであっても構わない。
【0035】
原料に関しては、例えば、ジャガイモ澱粉またはタピオカ澱粉のごとき根澱粉が好適である。なぜなら、それらは他の原料の場合よりもゲル化温度が低く、ソフトカプセル製造用の膜体を形成するための成形用組成物の固化及び/又はゲル化は低温であっても可能だからである。タピオカ澱粉は特に好適である。タピオカ澱粉は無色、無味であり、非常に良好な透明性を有し、遺伝子的に改質されたタピオカの変種は知られていないからである。
【0036】
1つの好適な実施態様では澱粉は天然状態、すなわち非改質状態で使用される。このため良好な特性が安価に得られる。
【0037】
別な1つの好適な実施態様では澱粉エステルおよび澱粉エーテルのごとき代用澱粉が使用される。例えば、ヒドロキシプロピル化あるいはアセチル化された澱粉が使用できる。これらの改質物は膜体の特に高い透明性および特に高い伸展性を備えている。
【0038】
酸化処理された澱粉が代用物として使用される。
【0039】
別の実施態様では架橋処理された澱粉が使用される。特に、架橋澱粉エステル及び/又は架橋澱粉エーテルが使用される。例えば、リン酸澱粉およびアジピン酸澱粉が使用される。架橋に伴う分子量の増大により、改善された力学的特性が得られ、澱粉粒は構造物として機械的に安定する。このことは加工にとって特に有利である。なぜなら新鮮膜体、新鮮ソフトカプセルおよび乾燥ソフトカプセルの力学的特性に対する澱粉粒子の貢献度が増加するからである。高度に架橋された澱粉の場合には構造破壊された澱粉粒は巨大分子量を有した非常に安定性の高い分子を形成する。
【0040】
別の1つの実施態様においては置換タピオカ澱粉、特に架橋された置換タピオカ澱粉、例えばヒドロキシプロピル化リン酸澱粉が使用される。
【0041】
使用される澱粉の好適な重量平均分子量分布M1は少なくとも500000g/molであり、特に好適には少なくとも1000000g/molであり、さらに好適には少なくとも2500000g/molであり、さらに好適には少なくとも3000000g/molであり、さらに好適には少なくとも4000000g/molであり、さらに好適には少なくとも5000000g/molであり、さらに好適には少なくとも7000000g/molであり、最も好適には少なくとも10000000g/molである。
【0042】
澱粉のアミロース含有量の重量%は、好適には50より少なく、さらに好適には40より少なく、さらに好適には35より少なく、さらに好適には30より少なく、さらに好適には27より少なく、さらに好適には25より少なく、最も好適には20より少ない。高アミロース含有量は膜体の伸展性を低下させ、得られるソフトカプセルの光沢と透明性を減じさせる。さらには水性媒液内での分解特性が悪化する。
【0043】
加えて、蝋質澱粉、特に架橋及び/又は置換された蝋質澱粉が好適である。蝋質澱粉は透明性において優れている。
【0044】
澱粉のアミロース含有量の重量%は、好適には0より多く、さらに好適には0.3より多く、さらに好適には0.5より多く、さらに好適には0.7より多く、さらに好適には1より多く、さらに好適には2より多く、最も好適には3より多い。もしアミロース含有量が少なすぎると膜体の伸展性が低下する。
【0045】
また好適な澱粉はゲル化温度が90℃未満であり、特に好適には80℃未満であり、さらに好適には75℃未満であり、さらに好適には70℃未満であり、さらに好適には67℃未満であり、特に最も好適には65℃未満である。10℃/分の温度上昇速度で65重量%の水を含有する澱粉/水混合物を加熱する場合のピーク温度としてゲル化温度はDSC(示差熱量測定)によって決定される。ゲル化温度の低下で、さらに低い温度での成形膜体の固化が可能になり、工程がさらに簡単で迅速になる。
【0046】
10未満、特に1未満、さらに好適には0.7未満、さらに好適には0.5未満、さらに好適には0.2未満、さらに好適には0.1未満、最も好適には0.05未満のデキストロース当量(DE)の澱粉も好適である。多糖体混合物のデキストロース当量とは乾燥物質内の糖分の減少量(百分率)のことである。それはグルコース(デキストロース)の量に相当し、100gの乾燥物質に対して同程度の減少作用を有していると考えられる。DE値とは、ポリマー分解程度の進行を表す測定値であり、よって低DE値の全生成物は多量の多糖体と少量の低分子量糖体(オリゴ糖)を有しており、高DE値の生成物は主として低分子量糖体のみで構成されている。デキストロース当量はISO規準5377に従って決定される。ソフトカプセルの強度は固化後にDE値が低下するに連れて増加する。
【0047】
本発明の1つの好適な実施態様では可塑剤を差し引いた後(すなわち澱粉、可塑剤および全てのオプションの成分で成る乾燥混合物から可塑剤を数学的に減算した後)の乾燥混合物の澱粉含有量(重量%)は40より多く、好適には50より多く、さらに好適には60より多く、さらに好適には70より多く、さらに好適には80より多く、さらに好適には90より多く、最も好適には95より多い。
【0048】
顆粒澱粉
顆粒澱粉は、好適には2.2まで、さらに好適にはステージ2.1まで、さらに好適にはステージ1.5まで、さらに好適にはステージ1.4まで、さらに好適にはステージ1.3まで、さらに好適にはステージ1.2まで、さらに好適にはステージ1.1までの構造破壊状態、最も好適には天然の非構造破壊状態で利用される。混合物の粘性は構造破壊程度の低下と共に降下するため成形加工は容易化される。
【0049】
本発明によれば顆粒澱粉は粒子形状で利用される。この粒子は元の澱粉粒に形状的に対応しているか、その凝集体である。非膨張状態である澱粉粒の典型的な大きさは、ジャガイモ澱粉では5から100μmであり、トウモロコシ澱粉では5から30μmであり、小麦澱粉では1から45μmであり、タピオカ澱粉では4から35μmであり、米澱粉では1から30μmである。部分的構造破壊においては元の澱粉粒は形状および大きさにおいて変化しており、特に構造破壊の大きさの明確な増加が発生している。様々な顆粒澱粉混合物も使用できる。
【0050】
混合物の全澱粉含有量の顆粒澱粉量(重量%)は、好適には60より多く、さらに好適には70より多く、さらに好適には75より多く、さらに好適には80より多く、さらに好適には85より多く、最も好適には90より多い。
【0051】

成形化合物の粘性において、および膜体を形成するために成形組成物を成形した後のソフトカプセルの固化の調整においては水が重要である。水の含有量が多ければそれだけ成形が容易になり、固化が早くなり、そのために必要な温度上昇が抑えられる。一方、多量の水はソフトカプセルの強度を低下させ、乾燥時間を長くする。なぜなら膜体及び/ソフトカプセルからさらに多くの水分を除去しなければならないからである。
【0052】
成形組成物の含水量(重量%)の上限は、好適には90であり、さらに好適には80であり、さらに好適には70であり、さらに好適には60であり、さらに好適には50であり、さらに好適には45であり、最も好適には40である。一方下限は、好適には15であり、さらに好適には20であり、さらに好適には25であり、さらに好適には30であり、最も好適には33である。含水量の上昇で固化が助けられる。すなわち、低い温度で固化が可能になり、及び/又は促進されるが、固化した膜体の強度は落ち、固化後に脱水が必要な水量は増加する。
【0053】
可塑剤
一般的に従来から知られている澱粉用の可塑剤の全てが可塑剤として本発明に使用できる。低可塑剤含有量は低湿度環境においてソフトカプセルを脆くし、高可塑剤含有量は高湿度環境にてソフトカプセルの物性を劣化させる。
【0054】
可塑剤は個別でも、あるいは種々な可塑剤の混合物であっても使用できる。グリセロール、ソルビトール、マルチトール、エリスリトール、キシリトール、マンニトール、ガラクチトール、タガトース、ラクチトール、マルツロース、イソマルト、マルトール、等々のポリオールが好適に使用できるが、スクロース、マルトース、トレハロース、ラクトース、ラクツロース、ガラクトース、フルクトース、等々の様々な糖類、並びに単糖類およびオリゴ糖類でも使用できる。グリセロールは可塑剤として特に好適である。可塑剤としてのその特性に加えて、スクロースはソフトカプセルの酸素バリア特性を改善する利点も有する。水も澱粉の可塑剤であるが、ここでは可塑剤としては扱わず、別に考慮されている。
【0055】
乾燥混合物内の可塑剤含有量(重量%)の上限は、好適には70であり、さらに好適には60であり、さらに好適には55であり、さらに好適には50であり、さらに好適には46であり、最も好適には42である。一方下限は、好適には15であり、さらに好適には20であり、さらに好適には25であり、さらに好適には28であり、さらに好適には31であり、さらに好適には32.5であり、最も好適には33.5である。
【0056】
1つの好適な実施態様においては、無水可塑剤の最大融点150℃、好適には125℃、さらに好適には110℃、さらに好適には95℃、最も好適には70℃を有した可塑剤が使用される。この条件を満たす全含有可塑剤の可塑剤量(重量%)50より多く、好適には70より多く、さらに好適には80より多く、最も好適には90より多い。
【0057】
澱粉混合物のオプション成分
短鎖アミロース
澱粉混合物は一定量の短鎖アミロースを含むことができる。この短鎖アミロースは、例えば顆粒澱粉に対する酵素作用により顆粒澱粉内で得ることができる。あるいは溶解短鎖アミロースを顆粒澱粉に噴霧することによって適用できる。この短鎖アミロースは膜体の形成に使用される澱粉のうち少なくとも1種の澱粉と共に供給できる。あるいは、例えば短鎖澱粉の溶液の形態で、または噴霧乾燥短鎖澱粉の形態で混合物に別々に加えられる。この噴霧乾燥短鎖澱粉は混合物内のもの以外に他の噴霧乾燥澱粉を有することができる。好適には短鎖アミロースは非結晶形態で顆粒澱粉内及び/又は顆粒澱粉上に存在する。
【0058】
1つの好適な実施態様では短鎖アミロースは実質的に非分岐アミロースである。短鎖アミロースの分岐度(モノマー単位の分岐数)は0.01未満であり、好適には0.005未満であり、さらに好適には0.003未満であり、さらに好適には0.001未満であり、さらに好適には0.0007未満あり、さらに好適には0.0004未満であり、最も好適には0.0001未満である。理想的には、短鎖アミロースは、例えば、それが完全脱分岐によって得られたとき(例えばプリラナーゼ手段によって得られたとき)には短鎖アミロースは0あるいはほぼ0の分岐度を有する。分岐度の低下に伴い、短鎖アミロースの結晶度、および網状組織の形成(さらに長い澱粉巨大分子との異種結晶による)は増加するが、これは短鎖アミロースによるものである。網状組織形成の増加によって、本発明のソフトカプセルの改善された特性が得られる。特に高温での高弾性率が得られ、ソフトカプセルは異なる大気湿度の幅広い帯域の環境で使用できる。
【0059】
短鎖アミロースは平均重合度(DPn:数量平均)が8より大きく、500より小さい。本発明によれば、その平均重合度は好適には300未満であり、さらに好適には100未満であり、さらに好適には70未満であり、さらに好適には50未満であり、最も好適は30未満である。加えて本発明によれば、好適な平均重合度は10より大きく、さらに好適には12より大きく、さらに好適には14より大きく、最も好適は15より大きい。DPnの低下に伴いソフトカプセルの透明度は改善する。なぜなら短鎖アミロースと、さらに長い澱粉巨大分子で成る異種結晶は短鎖アミロースのDPnの低下に伴って小さくなり、光の拡散が減少するからである。もしDPnが過度に低ければ結晶化は不可能となる。
【0060】
短鎖アミロースは、例えばグルコースの合成による重合により得られる。または酵素(例えば、αアミラーゼ、βアミラーゼ、イソアミラーゼ、プルラナーゼ)の作用により澱粉から得られる。
【0061】
混合物の全澱粉含有量における短鎖アミロース量(重量%)は、好適には15未満であり、さらに好適には10未満であり、さらに好適には7.5未満であり、さらに好適には5未満であり、さらに好適には3未満であり、最も好適には0である。
【0062】
増粘剤
成形加工における混合物の粘性を最良化するよう、混合物の粘度を所望レベルに調整するために増粘剤が澱粉混合物に加えられる。さらに、増粘剤は水性媒質における促進された分解作用に関して固化したソフトカプセル内の構造破壊された澱粉粒子間の結合力を弱めるために有利に使用される。増粘剤は混合物の成形時に粒子形態、膨張形態または溶解形態で存在する。
【0063】
一般的に、粘性を増加させる全ての親水性物質およびそれらの混合物が増粘剤として使用できる。特に、親水性ポリマー、並びに、好適には植物由来の親水性ポリマーが有利に使用できる。例えば、ヒドロコロイド、およびガラクトマンナン(例:グアガムまたはローカストビーンガム)等のガム類、セルロース誘導体、特にラムノガラクツロナンおよびプロトペクチン等のペクチン、デキストラン、キサンタン、ザイモサン、アルギン酸塩、寒天、アガロース、カラギーンおよびカラギーナンのごとき海藻類からのヒドロコロイド、ファーセレラン、リケニンやイソリケニン等のごとき地衣類からのヒドロコロイド、あるいはガムトラガカント(アストラガルスガム)、カラヤガム、ガムアラビック、クチラガム等の木材からの滲出物、ラテックス、キチン、キトサン、ゲラン、コラーゲン、ゼラチン、カゼイン、等々である。溶解澱粉は増粘剤と同様な機能性のために使用できるが、ここでは増粘剤としては扱わず、別に扱われている。
【0064】
これら増粘剤の一部、例えばゼラチン、カラギーナン、ゲランおよびペクチンはゲル化剤としても知られるが、加熱されたときではなく冷却されたときにゲル化する。それらは温度の上昇では本発明の成形混合物の固化におけるゲル化には一切貢献せず、この目的では使用されない。
【0065】
1つの好適な実施態様では乾燥混合物から可塑剤を差し引いた後の増粘剤の最大量(重量%)は50であり、さらに好適は40であり、さらに好適には30であり、さらに好適には20であり、さらに好適には10であり、さらに好適には5であり、さらに好適には2.5であり、最も好適には1である。
【0066】
別の実施態様においては、乾燥混合物から可塑剤を差し引いた後のカラギーンおよびカラギーナンの最大量(重量%)は10であり、さらに好適には7.5であり、さらに好適には5であり、さらに好適には3であり、さらに好適には2であり、さらに好適には1であり、さらに好適には0.5であり、最も好適には0である。なぜなら、これら原料の高価格並びに疑われる発がん性のためにカラギーンとカラギーナンの量は可能な限り抑制される。
【0067】
別の好適な実施態様では、ゼラチンの最大量(可塑剤を差し引いた後の乾燥澱粉混合物に対する重量%)は10であり、さらに好適には7.5であり、さらに好適には5であり、さらに好適には3であり、さらに好適には2であり、さらに好適には1であり、さらに好適には0.5であり、最も好適には0である。一般的なゼラチンの問題のためにゼラチンの量は可能な限り抑えられる。
【0068】
別の好適な実施態様では、ゲランの最大量(可塑剤を差し引いた後の乾燥澱粉混合物に対する重量%)は好適には5であり、さらに好適には2.5であり、さらに好適には2であり、さらに好適には1.5であり、さらに好適には1であり、さらに好適には0.5であり、さらに好適には0.2であり、最も好適には0である。原料の高価格のためにゲランの量は可能な限り抑えられる。
【0069】
別の好適な実施態様では、ペクチンの最大量(可塑剤を差し引いた後の乾燥澱粉混合物に対する重量%)は好適には5であり、さらに好適には2.5であり、さらに好適には2であり、さらに好適には1.5であり、さらに好適には1であり、さらに好適には0.5であり、さらに好適には0.2であり、最も好適には0である。原料の高価格および処理時の問題のためにペクチンの量は可能な限り抑えられる。
【0070】
別の好適な実施態様では、セルロース誘導体の最大量(可塑剤を差し引いた後の乾燥澱粉混合物に対する重量%)は好適には15であり、さらに好適には10であり、さらに好適には5であり、さらに好適には2.5であり、さらに好適には1であり、さらに好適には0.5であり、最も好適には0である。原料の高価格および高温における澱粉混合物からのセルロース誘導体の分離及び/又は沈澱のためにセルロース誘導体の量は可能な限り抑えられる。
【0071】
溶解澱粉
混合物の粘性を増加させ、澱粉粒子同士の結合を改質するため、溶解澱粉は上述した増粘剤と同様に使用できる。その使用はオプションである。なぜなら成形に適した粘度までの粘性の所望する増加は、成形混合物の温度の適した上昇によっても達成されるからである。ここでは顆粒澱粉は膨張によって粘度を増加させる。しかし、溶解澱粉(または増粘剤)を使用する際の手順をさらに簡単にし、好適なものとするには成形用混合物の温度を正確に調整して制御しなければならない。
【0072】
溶解澱粉に関しては、適した澱粉および一般的な澱粉に関する好適タイプの澱粉の説明と同様に前述の説明が当てはまる。しかし、溶解澱粉は澱粉に一般的に適した分子量よりも小さい分子量を有するであろう。さらに、非常に老化安定化した澱粉(例えば高程度に置換された澱粉または高程度に分岐したデキストリン)が水性媒質内でソフトカプセルの分解を促進する好適な溶解澱粉である。
【0073】
溶解形態あるいは支配的に構造破壊形態で存在する成形用混合物内の状態の溶解澱粉は顆粒澱粉とは異なる。顆粒澱粉はこの時点ではまだほとんど構造破壊されてはいない。
【0074】
溶解澱粉は、例えば非結晶状態である押し出された澱粉を溶解させることで得られる。あるいは予備ゼラチン化された澱粉から得られる。本発明によれば“溶解澱粉”とは、たとえ非溶解形態あるいは一部溶解形態で存在したものであっても、予備ゼラチン化された澱粉(例えばロール乾燥された予備ゼラチン化澱粉)を包含する概念である。予備ゼラチン化された澱粉は、好適には少なくともステージ2.3まで、さらに好適には少なくともステージ2.4まで、さらに好適には少なくともステージ3.1まで、さらに好適には少なくともステージ3.3まで構造破壊されている。
【0075】
1つの好適な実施例では、溶解澱粉は遅くとも混合物が膜体に成形されるときまでには少なくともステージ2.3まで、さらに好適には少なくともステージ2.4まで、さらに好適には少なくともステージ3.1まで、さらに好適には少なくともステージ3.3まで、さらに好適にはステージ3.5まで、さらに好適にはステージ3.6まで、さらに好適にはステージ4.1まで、最も好適にはステージ4.2まで構造破壊されている。
【0076】
加えて、本発明によれば、無水混合物に対して溶解澱粉量の上限(重量%)は好適には30であり、さらに好適には25であり、さらに好適には20であり、さらに好適には15であり、さらに好適には10であり、最も好適には5である。
【0077】
追加成分(添加剤および賦形剤)
澱粉混合物の追加成分は、染料および顔料並びに一般充填剤、鉱物充填剤(例えばタルク)または改質剤(例えばポリエチレングリコール)あるいは分解補助剤(例えば炭酸塩または重炭酸塩)、あるいは添加剤(例えば保存剤、抗酸化剤または乳化剤(例えばレシチン、脂肪酸のモノ、ジおよびトリグリセリド、ポリグリセロールエステル、ポリエチレンエステルまたは糖エステル))である。一般的にソフトゼラチンカプセル外殻に使用される全添加剤も本発明に使用できる。特にソフトカプセル外殻を成分に合わせて調整するのに使用される添加物(成形賦形剤)が使用できる。
【0078】
成形および固化
顆粒澱粉の粒子の形態である澱粉は、温度の上昇によって膜体が形成させるよう混合物の成形加工時及び/又はその後に構造破壊される。よって、固形膜体を形成する成形用混合物の急速固化が得られる。
【0079】
好適には温度上昇は膜体を形成するために混合物が成形されてから行われる。特に膜体を形成するように混合物を成形した直後に行われる。オプションでは成形加工時の固化温度への温度上昇は、成形用化合物の温度上昇全体の最大50%、好適には最大40%、さらに好適には最大30%、さらに好適には最大20%、最も好適には最大10%である。
【0080】
1つの好適な実施態様では、澱粉を含んだ混合物は、5バール(0.5MPa)未満、好適には4バール(0.4MPa)未満、さらに好適には3バール(0.3MPa)未満、さらに好適には2バール(0.2MPa)未満、最も好適には1バール(0.1MPa)未満の圧力下で成形される。そのような圧力においては、圧力蓄積は容易であり、そのために必要な装置も単純であるために好適である。別の1つの好適な実施態様では、澱粉を含んだ混合物は、0.7バール(0.07MPa)未満、好適には0.6バール(0.06MPa)未満、さらに好適には0.5バール(0.05MPa)未満、さらに好適には0.4バール(0.04MPa)未満、さらに好適には0.3バール(0.03MPa)未満、最も好適には0.2バール(0.02MPa)未満の圧力下で成形される。最も好適な実施態様では混合物は事実上無圧力下で成形加工される。すなわち、混合物は自身の重量により、例えばゼラチン成形において使用される標準装置のスプレッダボックスである成形装置を通過する。
【0081】
成形用混合物を成形加工して膜体を形成するには5バール(0.5MPa)を遥かに超える圧力が必要であるため、一般的には成形用混合物の粘度は、例えば増粘剤によって非常に高く設定される。
【0082】
成形加工前または成形加工時における混合物の動的粘度(すなわち対応温度での粘度)(Pas)の上限は3000であり、さらに好適には1000であり、さらに好適には500であり、さらに好適には300であり、さらに好適には200であり、さらに好適には150であり、さらに好適には120であり、さらに好適には100であり、さらに好適には70であり、最も好適には50である。さらに成形加工前または成形加工時における混合物の動的粘度(Pas)の下限は0.01であり、さらに好適には0.05であり、さらに好適には0.1であり、さらに好適には0.5であり、最も好適には1である。粘度はせん断速度1.1/sに基づいている。高粘度は高圧の必要性と相関しており、低粘性の利点は低圧の利点に対応する。広い範囲の粘度を備えた成形用混合物のいくつかの可能性が存在するため、対象粘性は広範囲にわたる。約300Pas以下の粘性である場合には、ゼラチン成形法において典型的に使用されるスプレッダーボックスによる無圧成形法(混合物自身の重力を利用)が可能である。粘性の下限は、膜体の成形、および特に成形膜体の厚みの調整が非常に低い粘度(混合物が流動する)では益々困難になるという事実に基づいて決定される。
【0083】
澱粉を含んだ混合物が成形される温度の上限は、好適には90℃であり、さらに好適には80℃であり、さらに好適には70℃であり、さらに好適には65℃であり、さらに好適には60℃であり、さらに好適には55℃であり、最も好適には50℃である。さらに1つの好適な実施態様では、澱粉を含んだ混合物が成形される温度の下限は、好適には−20℃であり、さらに好適には−10℃であり、さらに好適には0℃であり、さらに好適には10℃であり、さらに好適には20℃であり、さらに好適には30℃であり、さらに好適には35℃であり、さらに好適には40℃であり、最も好適には45℃である。
【0084】
成形前の成形化合物の温度、すなわちスプレッダーボックス内の成形用化合物の温度から開始して、固化するために澱粉混合物の温度は上昇される。固化を誘導する澱粉混合物の温度上昇の下限は、好適には10℃であり、さらに好適には15℃であり、さらに好適には20℃であり、さらに好適には25℃であり、さらに好適には30℃であり、さらに好適には35℃であり、最も好適には40℃である。加えて、1つの好適な実施態様では、温度上昇の上限は、好適には130℃であり、さらに好適には110℃であり、さらに好適には90℃であり、最も好適には70℃である。温度の上昇によって固化が加速され、さらに向上した力学的特性が得られる。なぜなら澱粉粒子は互いにさらに良好に接着するからである。温度の上限はバブル形成によって決定される。バブルは温度の上昇と共に発生及び/又は増加する。
【0085】
成形用化合物の成形加工後の成形物の固化中の含水量は、好適にはほぼ一定に維持される。特に(室温の)膜体がMPaで少なくとも0.001、好適には0.003、さらに好適には0.005、さらに好適には0.007、さらに好適には0.009、最も好適には0.01の弾性率に到達するまで一定に保たれる。固化の最中に含水量は、好適には最大25重量%、さらに好適には最大20重量%、さらに好適には最大15重量%、さらに好適には最大10重量%、さらに好適には最大7重量%、さらに好適には最大5重量%、さらに好適には最大3重量%だけ減少される(補足すると、膜体を形成するための成形化合物の成形加工後の含水量が40%であると、3%が減少した後の含水量は37%となる)。膜体の固化中の含水量の安定は固化を促進するが、固化中に含水量が過度に減少すると、膜体の不完全な固化が発生し、力学的特性が損なわれる。特にこのような膜体はその後の処理中に破損と亀裂を発生させる傾向がある。
【0086】
ソフトカプセル
澱粉を利用した発明のソフトカプセルは好適には以下を含む。
a)可塑剤を差し引いた後、乾燥ソフトカプセルの40重量%以上の澱粉
b)乾燥ソフトカプセルの15から70重量%の可塑剤
c)全ソフトカプセルの0.1から50重量%の水
d)オプションで、可塑剤を差し引いた後、乾燥ソフトカプセルの最大50重量%の増粘剤
e)オプションで従来の添加剤および賦形剤
ここでソフトカプセルは互いに接着した澱粉粒子、特に互いに接着している構造破壊された澱粉の粒子を含む。好適には互いに接着した澱粉粒子はマトリックス(母質)を形成し、オプションでは追加の形態相はこのマトリックスに含まれる。追加の形態相量(重量%)は、好適には30未満であり、さらに好適には20未満であり、さらに好適には10未満であり、さらに好適には5未満であり、さらに好適には2.5未満であり、最も好適は1.5未満である。
【0087】
ソフトカプセル内の澱粉粒子は、膜体を形成するために成形用混合物のゲル化によって顆粒澱粉から形成される構造破壊された澱粉粒子であり、成形用混合物および溶解澱粉(好適にはこれらの構造破壊程度は少なくとも顆粒澱粉の構造破壊程度に対応する)のゲル化前に既にこの状態であった構造破壊された澱粉粒子もオプションで存在できる。
【0088】
好適には顆粒澱粉の澱粉粒子は個別の澱粉粒子として存在し続ける。特に、平均粒径が少なくとも2μm、さらに好適には少なくとも4μm、さらに好適には少なくとも6μmである澱粉粒子として存在する。顆粒澱粉から形成される澱粉粒子は、好適には少なくともステージ2.1まで、さらに好適にはステージ2.2まで、さらに好適はステージ2.3まで、さらに好適にはステージ2.4まで、最も好適にはステップ3.1まで構造破壊される。構造破壊程度の増加で新鮮膜体の取り扱い性が向上し、新鮮で乾燥したソフトカプセルの機械的並びに光学的特性が改善される。一方、好適には澱粉粒子は最大ステージ4.1まで、好適には最大ステージ3.6まで、さらに好適は最大ステージ3.5まで、さらに好適には最大ステージ3.4まで、さらに好適には最大ステージ3.3まで、最も好適には最大ステップ3.2まで構造破壊される。非常に高い程度の構造破壊を達成するため、固化には非常に高い温度が必要である。このことはプロセスエンジニアの点でモニターと制御が困難であり、特に含水量および不都合な空気バブルの形成の制御が困難である。さらに澱粉粒子がますます分解する非常に高程度の構造破壊で、新鮮膜体とソフトカプセルの力学的特性に対する澱粉粒子の好都合な貢献は低下する。
【0089】
顆粒澱粉は固形物として存在し、膜体を製造するための混合物の成形時には、せいぜい部分的に膨張した粒子である。この澱粉は激しく膨張している構造破壊された澱粉粒子の形態で固形膜体内に存在する。そのような澱粉粒子は、澱粉粒子の表面同士が結合によって直接的に接着するか、中間層を介して間接的に接着している。この中間層はオプションで結合剤及び/又は澱粉、特に溶解澱粉を含む。膨張粒子の平均粒径で割った中間層の平均厚の値(比)は、好適には0.4未満であり、さらに好適には0.2未満であり、さらに好適には0.15未満であり、さらに好適には0.1未満であり、さらに好適には0.05未満である。言い換えると、澱粉粒子は好適には高密度にパッキングされており、最も好適には澱粉粒子は高密度パッキングによって互いに接触状態であり、特に、非常に高密度であるパッキング状態にされている(すなわち中間スペースを残さないパッキング状態)。
【0090】
オプションにより澱粉粒子間の結合(接着)は粒子間の溶解澱粉あるいは別の結合剤によって改善されるが、適した結合はこれ以外の方法でも達成される。澱粉膜体及び/又はソフトカプセルが水中に置かれ、例えば室温または70℃にてマグネチックスターラーによって撹拌されると、澱粉粒子の高濃度塊体として澱粉膜体及び/又はソフトカプセルの構造は確認が可能になる。ソフトカプセルは分解(オプションでは僅かな摩擦の影響を受けて(室温))し、当初は微粒状態の均質ペーストを形成する。もしこの物質がさらに水で希釈されると、個々の澱粉粒子は再び希釈物から得られ、その形状によって構造破壊された澱粉の膨張粒子として光学顕微鏡で特定できる。使用される澱粉の由来及び/又は種類は構造破壊された澱粉粒からでも決定でき、ソフトカプセルから回収できる。なぜなら異なる澱粉は異なる粒体形状と粒体サイズ分布を有しているからである。顕微鏡で粒子を可視化するため、有利には澱粉粒子はヨウ素溶液(ルゴール溶液)によって着色される。澱粉粒子を再可視化する別の可能性は着色の代わりに顕微鏡スライド上に水で薄めた物質を1滴垂らすことである。水分が蒸発すると澱粉粒子は光学顕微鏡により特定できる。乾燥工程中の膨張した澱粉粒子の収縮によって、これら粒子は特徴的に変形し、裂け目を有することもある。
【0091】
含まれる澱粉の好適な重量平均分子量分布M2(g/mol)は、成形用澱粉混合物内の澱粉の好適な重量平均分子量分布M1と同様に少なくとも500000であり、好適には少なくとも1000000であり、さらに好適には少なくとも2500000であり、さらに好適には少なくとも3000000であり、さらに好適には少なくとも4000000であり、さらに好適には少なくとも5000000であり、さらに好適には少なくとも7000000であり、最も好適には少なくとも10000000である。
【0092】
ソフトカプセルの成分に関しては水分を除いて、この方法で使用される成形用混合物に関する記述内容が利用可能である。本発明のソフトカプセルの含水量の上限(重量%)は好適には40であり、さらに好適には30であり、さらに好適には25であり、さらに好適には20であり、最も好適には17であり、その下限は好適には1であり、さらに好適には3であり、さらに好適には5であり、最も好適には7である。含水量が増加するとソフトカプセルはその力学的特性を喪失し、過剰に軟らかくなる。含水量が低下するとソフトカプセルは過剰に硬くなる。
【0093】
膜体及び/又はソフトカプセルの不溶成分
製造される膜体及び/又はソフトカプセル外殻は、1つの好適な実施態様では高密度にパッキングされた澱粉粒子で成る。これは膜体の加工および最終的な膜体の特性のために有利な特性を提供する。これら澱粉粒子は、例えば膜体を70℃で30分間溶解させることで可溶成分(特に可塑剤、可溶性澱粉、オプションで増粘剤を含む)から分離され、膜体内のそれらの数量は計測可能となる。
【0094】
回収法ナンバー1
1つの好適な実施態様では、ソフトカプセルを70℃で30分間溶解させた後に回収できるソフトカプセル外殻の澱粉の最低量(重量%)は30であり、好適には40であり、さらに好適には50であり、さらに好適には55であり、さらに好適には60であり、さらに好適には65であり、最も好適には70である。
【0095】
回収法ナンバー2
別の好適な実施態様では、ソフトカプセル外殻を70℃で30分間溶解させた後に回収できる物質の量が乾燥膜体の質量に基づいて決定される。この定義による決定は回収法ナンバー1による決定よりも簡単である。なぜならこの方法はソフトカプセル外殻の組成が正確に知られていない場合であっても利用できるからである。回収できる物質の最低量(重量%)は25であり、好適には35であり、さらに好適には40であり、さらに好適には45であり、最も好適には50である。
【0096】
発明方法と発明ソフトカプセルの利点
本発明の成形混合物は調製が簡単である(本発明は単純混合工程であり、ゼラチンは複合ゲル調製を伴い、熱可塑性澱粉(TPS)はその粘性と塊化により取り扱いが困難な顆粒が必要である)。しかし、成形工程自体はゼラチンの場合と同様である。すなわち、自重による無圧成形が可能であり、ゼラチン成形から本発明方法への切り換えは可能であるが、固化は温度の上昇で行われ、温度の低下によるものではない。成形工程後の急速固化(ゲル化)によって高効率でコストパーフォーマンスに優れた製造が可能である。膜体はゼラチン膜のように等方性である。すなわちその特性は方向性に依存しない。
【0097】
本発明の方法において使用される澱粉混合物の重要な特徴は、この混合物が粒子の形態の澱粉を含むことである。すなわち、混合物は水性媒質内で粒子が分散したものである。この混合物は長期間にわたって安定している。
【0098】
カプセル化には少なくとも100%の膜体伸展性を必要とする。ソフトカプセルの両端を閉じる際に膜体は自身が溶着性でなければならず、溶着部は直ちに荷重に耐え得るものでなければならない。新鮮カプセルは続く処理工程(“ロータリーダイ”から離れる工程およびタンブラーの洗浄工程(ロータリーダイオイルの除去))のために安定していなければならない。これらの必要条件は本発明の方法によって充足される。
【0099】
本発明のカプセル製造のための原料コストおよび処理コストはソフトゼラチンカプセルの場合よりも少ない。
【0100】
固化後にソフトカプセルの製造のための膜体の弾性率は少なくとも0.009MPaであり、その破断伸び率は少なくとも100%である。弾性率と破断伸び率は固化直後に室温で測定される。すなわち膜体を形成するための混合物の成形終了後、最大で数分後であり、その含水量は膜体の固化後の含水量に対応する。もし固化がロータリードラム上で達成されるなら、膜体の弾性率と破断伸び率は膜体がドラムを離れた後に測定され、測定時の含水量はこの時点の膜体の含水量に対応する。膜体の取り扱いは固化後に弾性率が十分に高く、破断伸び率が適当であるときのみ可能になる。なぜなら固化膜体はさらなる加工時に機械的応力に曝されるからである。新鮮膜体の特性はこのためには十分以上であり、高生産性も同時に可能である。
【0101】
本発明のソフトカプセルは良好な力学的特性も備えている。特に高弾性と高伸展性である。ソフトカプセルは互いに結合した高密度パッキングされた個別の澱粉粒子を含む。澱粉粒子は膨張状態で存在し、好適には高密度状態で存在する。ソフトカプセルもコンパクトで気泡を含まない。過去においては、利用可能なソフトカプセルを製造するには澱粉は押出装置において可塑化されなければならないと考えられてきた。しかしながらその場合には、典型的には顆粒澱粉である澱粉粒子の別個性は完全に喪失することになる。
【0102】
粒体構造を考察するとさらに驚くべきことが判明する。普通であれば澱粉粒子間の結合は弱点であると考えられるが、本発明のソフトカプセルは実際にさらに優れた力学的特性を備えている。例えば、押出装置内で澱粉を可塑化することにより製造される同一組成物のソフトカプセルよりも弾性率が高い。この理由は少なくとも部分的には、高温及び/又は高いせん断率によって澱粉可塑時に減少した澱粉の巨大分子の分子量および力学的特性が分子量と共に増加することによる。本発明の膜体を製造するのにせん断は不要であるため、必要とされる温度は可塑化に必要とされる温度よりも大幅に低く、ソフトカプセル内の澱粉の分子量は加工前の澱粉の分子量にほぼ匹敵する(測定が困難であるため、普通の場合には分子量の決定は相当な誤差を含む)。
【0103】
可塑化された透明な澱粉製の知られたソフトカプセルは水中に保管されると軟化および白色化(非透明化)するが、それらの寸法的安定性は維持され、小さな機械的応力を受けて破損片に分解する。元の澱粉粒子に溶解することはない。なぜならそれらは押し出し加工による可塑化において既に破壊されているからである。
【0104】
押し出された澱粉と本発明の澱粉ソフトカプセルとの間の前述の相違は利点も有する。すなわち本発明のソフトカプセルは水に良く分解(巨視的には元の粒子に溶解)する。一方、押し出されたソフトカプセルは軟化するが機械的な力が作用しなければその形状を維持する。従って本発明のソフトカプセルではカプセルの内包物はさらに容易に放出され、薬局方スペックとの適合性がある。これにはカプセル外殻の溶解性が必要である。
【0105】
ソフトカプセル外殻の粒子は密にパッキングされているため、非常に高密度である。その密度は好適には1.07から1.3g/cmの範囲である。
【0106】
透明度を減少させる顔料等の添加物を一切含まない成形用化合物を使用するときには、澱粉粒子を含み、殆ど完全に不透明である成形用化合物は固化状態が進行するに連れて透明性を増す。固化が終了するとソフトカプセルはほぼ完全に透明化する。すなわち、離れている人物が判読できる記述内容は、ソフトカプセルを完成させるためにその記述を透明膜(約0.5mm厚)で覆って、フォントサイズを最大50%程度増加させただけでも同一距離の人物によって判読が可能である。
【0107】
本発明のソフトカプセルは広範な湿気条件および温度条件において安定している。一方、ゼラチンソフトカプセルは高湿気条件では非常に軟らかくなり、高温では溶解する。本発明のソフトカプセルはゼラチンソフトカプセルよりも低い酸素浸透度を有する。
【0108】
本発明のソフトカプセルの良好な力学的特性は、本発明の方法が可能にした、高密度にパッキングされ、構造破壊された澱粉粒の塊物としてのソフトカプセル膜体の構造の結果であり、並びに澱粉の高分子量の結果である。構造破壊された澱粉粒は一定の強度を備えており、よって広範な大気の湿気条件下におけるソフトカプセルの良好な力学的特性に貢献する。
【0109】
カプセル化装置
ここで説明する方法はソフトカプセルの製造に適している。なぜなら、この方法はゼラチンの成形に非常に似ているからである。ゼラチンから澱粉に切り換える際に、この切り換えは合理的範囲内で実施でき、革新性は膜体の製造に関係するカプセル化装置の部分だけに関わる。追加の方法ステップのためには、いくつかのプロセスパラメータが調整を必要とするが、基本的なパラメータ変更は介在しない。ゼラチン溶解物を製造するステップが排除でき、及び/又は澱粉混合物を製造するための、大幅に簡素化され、迅速化されたステップと置換できることも有利である。この成形用混合物は撹拌しながら混合物成分を混合することで容易に入手でき、通常の簡単な撹拌機構で十分である。成形加工にはゼラチンの成形と同じスプレッダーボックスが使用可能である。
【0110】
澱粉からソフトカプセルを製造する本発明の装置は、膜体を形成する澱粉材料を成形する成形装置と、成形加工時及び/又は成形後に澱粉のゲル化のために熱処理を実行する少なくとも1つの加熱装置と、加熱装置に続いてカプセルを成形し、充填し、型出しさせるロータリーダイ装置とを含む。オプションで、ソフトカプセルを製造する本発明の装置は、成形加工時及び/又は成形後、特に加熱装置の領域で澱粉を固化する際に含水量を調整する装置をさらに含む。
【0111】
ゼラチンソフトカプセルの製造と澱粉ソフトカプセルの製造の特徴的な相違は、溶融ゼラチン成形用化合物は成形後の冷却により固化及び/又はゲル化することであり、一方、澱粉成形用化合物は成形後に温度の上昇によって固化することである。ゼラチンカプセル法では、約80℃(典型的には約18℃)に冷却した円筒ドラム上で材料は成形されるが、本発明方法では材料は好適には回転加工部上に提供され、そこで成形用化合物の温度上昇は特に熱伝導によって達成される。しかしながら一般的には、別方法または追加的に他のタイプの加熱も利用できるが、特に放射熱を利用した加熱方法、例えば、赤外線放射またはマイクロ波放射が適している。他の加熱方法は水蒸気を使用する。回転加工部は好適にはドラムである。
【0112】
好適には膜体は、膜体がほぼ完全に固化(一次固化)するまで回転加工部との接触状態を保つ。
【0113】
1つの好適な実施態様においては、膜体は回転加工部の周囲の少なくとも30%、特に好適には少なくとも40%、さらに好適には少なくとも50%、さらに好適には少なくとも60%、最も好適には少なくとも70%において回転加工部との接触状態を保つ。
【0114】
1つの好適な実施態様においては、膜体の含水量を調整する装置は、膜体が回転加工部と接触している最中に膜体の含水量が最大25重量%、特に好適には最大20重量%、さらに好適には最大15重量%、さらに好適には最大10重量%、さらに好適には最大7重量%、さらに好適には最大5重量%、最も好適には最大3重量%だけ減少するように調節する(補足すると、膜体を形成するための成形化合物の成形後の含水量が40重量%であるなら、3重量%の減少後には37重量%となる)。
【0115】
1つの好適な実施態様では、回転加工部は少なくとも25℃、好適には少なくとも50℃、さらに好適には少なくとも80℃、さらに好適には少なくとも90℃、さらに好適には少なくとも100℃、最も好適には少なくとも105℃の温度に加熱される。
【0116】
回転加工部は好適には少なくとも片側が断熱加工されている。
【0117】
1つの実施態様においては成形後に膜体の含水量を調節する装置は、回転加工部の周囲の少なくとも30%、好適には少なくとも40%、さらに好適には少なくとも50%、さらに好適には少なくとも60%、最も好適には少なくとも70%だけ回転プロセス部上で膜体を覆う手段を含む。このようにして膜体の固化時に膜体の含水量は調節され、特に本質的には一定に保たれる。
【0118】
好適にはこのカバー作用は共に回転するベルトで達成される。これは膜体上に設置され、特に回転加工部と同速度または同角速度を有する。このベルトは自身の駆動装置を有することもできるが、好適には回転加工部により直接駆動され、回転加工部及び/又は膜体とベルトとの間の作用力の移動は接着手段によって達成される。ベルトは回転加工部及び/又は膜体上に設置される前に、例えば、赤外線放射のごとき放射線によって加熱される。1つ、あるいは複数の他形態の加熱装置、例えば赤外線ランプが、ベルトが設置される領域において回転加工部の周囲のベルト周囲に沿って使用できる。
【0119】
その後にオプションで固化された膜体は冷却され、続いてゼラチン膜のように、例えばオイルを塗られ、ロータリーダイによるカプセル化のために使用される。
【0120】
別の実施態様では成形後の膜体の含水量を調節する装置は、水分が膜体から蒸発する量が制限されるように回転加工部の少なくとも一部に沿って膜体の上方の空間を制限する手段を含む。好適にはこの制限は回転加工部の周囲の少なくとも30%、好適には少なくとも40%、さらに好適には少なくとも50%、さらに好適には少なくとも60%、最も好適には少なくとも70%に関連する。好適には制限される体積はその制限範囲内の膜体体積の最大10倍、好適に最大5倍、さらに好適には最大2倍の量である。1つの好適な実施態様では、制限体積は、大気中の湿気を調節し、オプションで温度を調節することで調節される。
【0121】
別の好適な実施態様においては成形後に膜体の含水量を調節する装置は、膜体に水(好適は熱湯、特に好適には水蒸気)を供給する手段を含む。
【0122】
別の好適な実施態様においては成形後に膜体の含水量を調節する装置は、膜体の表面を液体で覆う手段を含む。特にこの手段は液体の膜を澱粉膜体上に形成するか、澱粉膜体を通過させる液体槽を含む。この液体は好適にはオイルである。
【実施例】
【0123】
実施例のレシピは表1で示されている。それぞれ10kgの成形用混合物が準備された。成形用混合物の粘度、力学的特性および澱粉の回収率も表1に示されている。
【0124】
ソフトカプセル製造の全試行において良質の完全に透明なソフトカプセルが得られた。特に、それらソフトカプセルは寸法的に安定しており、非常に良好な溶着性を備え、洗浄および乾燥が非常に簡単であった。
【0125】
本発明の全実施例において、顕微鏡分析によって、澱粉膜体は高密度パッキングされている構造破壊された澱粉粒で構築されており(5%未満の複屈折澱粉粒)、膜体は水中で再びこれら成分内に溶解可能であることが確認された。すなわち、膜体の分解後に、構造破壊された澱粉粒は水中で再び検出でき、それらの重量が決定できる(回収法ナンバー1)ことが示された。
【0126】
製造後に約10%の含水量にまで乾燥され、33%の大気湿度で20日間保管されていたソフトカプセルに対して0.5%塩酸内でのソフトカプセルの溶解が37℃の渦槽内で確認された。ソフトカプセル内容物の放出は全サンプルにおいて20分未満に行われた。
【0127】
[実施例1]
まず配合1に従い、室温にて水と可塑剤が撹拌具を備えた加熱可能で排出可能な容器に入れられた。その後にこれら2成分は100rpmの回転速度で混合された。続いて、35%の含水量にて非常に穏やかに押し出された澱粉S1Eが加えられ、水と可塑剤の混合物内に100rpmで5分間溶解された。押し出された澱粉S1Eは、ビータミルによる乾燥押出物(澱粉S1に基づく)から準備され、30から150μmmの粒子サイズ分布を有しており、10%の短鎖アミロースを含有していた(この短鎖アミロースは、プルラナーゼの手段による脱分岐処理によってタピオカ澱粉から得られ、数平均重合度DPn25を有していた)。
【0128】
この混合物には、30100000g/molの重量平均分子量Mを有した顆粒状澱粉S1が加えられ、そこで100rpmにて5分間分散された。その後、この混合物は45℃で、真空を適用(空気バブルを除去)することで100rpmにて5分間脱気された。この温度における混合物の動的粘度は1.1/sのせん断速度で5.7Pasであった。
【0129】
続いて高温混合物は本発明の膜体成形装置によって加工された。この装置は図1に図示されている。この装置は回転する加熱ドラム(11)、スプレッダーボックス(12)、回転テフロン(登録商標)ベルト(14)およびプリー(15)を含む。成形用化合物(13)は固化され、膜体(16)が形成される。
【0130】
ドラム(11)は、加熱流体によって105℃の温度TZに加熱された直径50cmの金属シリンダーで成る。ドラムの回転速度nは0.6rpmであった。混合物の成形温度TGは45°であった。混合物は、幅25cmで厚み0.7mmの膜体(16)が回転する金属シリンダー上でスプレッダーボックス(12)により成形された。成形された膜体(16)は共に回転するテフロン(登録商標)ベルト(14)により周囲の3/4で覆われ、膜体の含水量は一定であった。3/4の回転後、膜体は金属シリンダーから外され、チャン・スン社のロータリーダイ装置(30)CS−J1−500Rにまで運ばれた。そこで膜体は2rpmのロータリーダイでさらに処理され、大豆オイルが充填された形状/サイズ長円体#10のソフトカプセルが成形された(図3参照)。得られたソフトカプセルは完全に透明であり、ソフトカプセルの半分体同士は良好に溶着した。新鮮カプセルは良好な寸法安定性を有し、タンブラドライヤ内で良好に洗浄および乾燥できた。ソフトカプセル内には複屈折澱粉粒は観察されなかった。ドラム上で3/4回転した後に膜体の物質温度は91℃であった。
【0131】
臭化ナトリウム上に7ヶ月間(相対湿度58%)保管された澱粉膜体の光学顕微鏡画像は図4で示されている。この画像は、膜体が相互連結された澱粉粒で成ることを明確に示す。図5は塩化マグネシウム上で7ヶ月(相対湿度33%)保管された澱粉膜体の光学顕微鏡画像を示す。比較のため、欧州特許EP1103254B1に従った押し出し澱粉膜体が図6に示されている。全澱粉粒子は押し出しにより破壊されており、光学顕微鏡では検出できなかった。
【0132】
相対湿度33%、43%、57%および75%で2週間保管された実施例1の膜体の弾性率はそれぞれ23MPa、3.4MPa、3.7MPaおよび3.3MPaであった。一方、同一組成であるが、長手方向に同一相対湿度で押し出された膜体の弾性率はそれぞれ4.5MPa、0.7MPa、0.9MPaおよび0.4MPaであった。
【0133】
[実施例1a]
実施例1が繰り返された。押し出された澱粉S1Eと顆粒澱粉とが水と可塑剤の混合物と混合された。成形用混合物の調製手順は続く処理または製品特性に何ら影響を及ぼさないことが分った。
【0134】
[実施例1b]
実施例1が繰り返された。完成した成形用混合物はさらなる処理に先立って2時間、室温で保管されたが、さらなる処理または製品特性には影響を及ぼさなかった。
【0135】
[実施例1c]
実施例1が繰り返された。完成した成形用混合物はさらなる処理に先立って、2時間、45℃で保管されたが、さらなる処理または製品特性には影響を及ぼさなかった。
【0136】
[実施例2]
実施例1と同様であるが、38%の水量の代わりに成形用混合物は35%の水量を有していた。ドラムの温度は108℃に設定された。3/4回転後のドラム上の膜体の物質温度は93℃であった。
【0137】
[実施例3]
実施例1と同様であるが、38%の水量の代わりに成形用混合物は41.1%の水量を有していた。ドラムの温度は103℃に設定された。3/4回転後のドラム上の膜体の物質温度は89℃であった。
【0138】
[実施例4]
実施例1と同様であるが、成形用化合物の押し出された澱粉S1Eの量は2.28%から4.49%に増加した。それで45℃で、せん断速度1.1/sでの動的粘度は5.7Pasから21Pasに増加した。ドラムの温度は105℃に設定された。3/4回転後のドラム上の膜体の物質温度は約90℃であった。
【0139】
[実施例5]
実施例1と同様であるが、ヒドロキシプロピル化架橋タピオカ澱粉S1は天然タピオカ澱粉S2と置換され、澱粉S1Eは予備ゼラチン化澱粉S2Pと置換された。ドラムの温度は111℃に設定された。3/4回転後のドラム上の膜体の物質温度は約96℃であった。
【0140】
処理前に澱粉S2とS2Pは22690000g/molの重量平均分子量Mを有し、それにより製造されたソフトカプセルから抽出された澱粉は21340000の分子量Mを有していた。すなわち、ソフトカプセルの製造で分子量はほんの少々減少しただけであった(図13参照)。
【0141】
[実施例6]
実施例1と同様であるが、グリセロール含有量は増加された。ドラムの温度は102℃に設定された。3/4回転後の膜体の温度は88℃であった。
【0142】
[実施例7]
実施例1と同様であるが、ヒドロキシプロピル化架橋タピオカ澱粉S1は天然蝋質タピオカ澱粉S4と置換された。成形用混合物の温度は40℃であった。ドラムの温度は102℃に設定された。3/4回転後のドラム上の膜体の温度は87℃であった。
【0143】
[実施例8]
実施例1と同様であるが、ヒドロキシプロピル化架橋タピオカ澱粉S1はヒドロキシプロピル化ジャガイモ澱粉S5と置換され、澱粉S1Eは予備ゼラチン化されたヒドロキシプロピル化ジャガイモ澱粉S5Pと置換された。成形用混合物の温度は40℃であった。ドラムの温度は101℃に設定された。3/4回転後のドラム上の膜体の温度は86℃であった。
【0144】
処理前に澱粉S5とS5Pは13530000g/molの重量平均分子量Mを有しており、それらで製造されたソフトカプセルから抽出された澱粉は第1計測では13490000の分子量Mを有しており、第2計測では15460000の分子量Mを有していた。すなわち、ソフトカプセルの製造で分子量は事実上変動しなかった。第2計測での分子量の見掛けの増加は、これら高分子量での分子量測定の精度が限定的であるという事実によるものと考えられる。
【0145】
[実施例9]
実施例1と同様であるが、押し出された澱粉S1Eは予備ゼラチン化澱粉S1Pと置換された。澱粉S1とS1Pは30100000g/molの重量平均分子量Mを有していた。対応するソフトカプセル内の澱粉の分子量分析は、第1計測では21340000g/molの分子量Mであり、第2計測では20220000g/molの分子量Mであることを示した。すなわち分子量はほんの少々減少しただけであった。可能な限り穏やかな条件下、すなわち多量の水分と低いせん断速度で押し出されたが、澱粉S1が920000g/molの分子量Mを有していた押出成形法と較べた場合にその点が確認された。
【0146】
[実施例9a]
実施例9が繰り返された。しかし押し出された澱粉S1Eは澱粉S1(溶解澱粉)と置換された。この澱粉S1を水と可塑剤の混合物に加えた後、この澱粉S1は混合物を90℃に加熱することでこの混合物内で構造破壊された。その後の45℃未満への冷却後、顆粒澱粉S1(顆粒澱粉として)が加えられた。このことは続く処理並びに製品特性には一切影響を及ぼさなかった。
【0147】
[実施例9b]
実施例9aが繰り返された。冷却を回避するため、この方法は、水と可塑剤の混合物の一部だけで澱粉S1(溶解澱粉として)を構造破壊し、その後に室温で水と可塑剤の残りを加え、45℃未満に温度を下げることで単純化された。
【0148】
[実施例10]
実施例9が繰り返された。ただし予備ゼラチン化澱粉S1Pは予備ゼラチン化澱粉S6Pと置換された。澱粉S6(溶解澱粉として)を構造破壊するためにここでも実施例9aおよび実施例9bで解説した手順が利用できた。
【0149】
[実施例11から実施例13]
実施例1が繰り返された。ただし、これらの実施例では溶解澱粉S1Eは増粘剤V1、V2およびV3と置換され、酸水性媒体内での澱粉ソフトカプセルの分解状況は加速できた。水と可塑剤の混合物内で増粘剤V2(キサンタンガム)とV3(ローカストビーンガム)を溶解させるため、水、可塑剤および多糖体の混合物が実施例9aと同様に90℃に加熱され、その後に顆粒澱粉を加える前に約45℃未満の温度に冷却された。水、可塑剤および溶解した多糖体の混合物の積極的な冷却を防止するため、ここでも実施例9bと同じ変形が利用できる。
【0150】
[実施例14から実施例16]
実施例1が繰り返された。ただし、これら実施例では溶解澱粉S1Eは種々なタピオカデキストリンS7,S8およびS9により置換され、酸水性媒質内での澱粉ソフトカプセルの分解が加速できた。水と可塑剤の混合物内でデキスストリンS7とS8を溶解させるため、水、可塑剤および多糖体の混合物は実施例9aに従って90℃に加熱され、その後に、顆粒澱粉(表1の澱粉1)を加える前に約45℃未満の温度に冷却された。水、可塑剤および溶解多糖体の混合物の積極的な冷却を防止するため、ここでも実施例9bと同じ変形が利用できる。
【0151】
[実施例17]
実施例1から実施例17で得られた全ての澱粉ソフトカプセルを使用し、それらを水中に入れ、ルゴール溶液を使用してそれらを着色してから顕微鏡で可視化することにより元の澱粉粒子が回収できた。
【0152】
実施例1からの未処理顆粒状タピオカ澱粉S1の光学顕微鏡画像は図7にて示されている。
【0153】
図8は温度の影響下における澱粉内での変化を示す。サンプルは20重量%の澱粉を試験管の水中で懸濁し、水層内にて70℃で5分間加熱することで準備された。室温にまで冷却した後に澱粉はヨウ素で着色され、顕微鏡で検査された。図7は小さな複屈折澱粉粒子を示すが、図8は、粒子が膨張しており、複屈折ではなくなっていることを示す。
【0154】
図9はソフトカプセルから回収された澱粉粒子を示す。そのために実施例1からのソフトカプセルがまず7ヶ月間塩化マグネシウム上で保管(相対湿度33%)された。サンプルは、約100mgのソフトカプセルを7gの水内に入れて、磁性撹拌具により30分間70℃で撹拌しながら保持し、物質を粒子に分解させることで準備された。冷却後、ヨウ素による着色が実行された。膜体からのこれらの澱粉粒子はさらに着色され、さらに希釈されたが、懸濁澱粉を加熱して得られた図8のものとさほど異ならなかった。よって、ソフトカプセルは構造破壊された澱粉粒で成ることが示された。
【0155】
[実施例18]
実施例17がジャガイモ澱粉S5と実施例8に従ったソフトカプセルにより繰り返された。
【0156】
架橋分極剤の存在下での実施例8からの未処理澱粉S5の光学顕微鏡画像は図10に示されている。これらのさらに大きな粒体は天然澱粉の典型として知られるマルタクロスの良好な画像である。
【0157】
図11は70℃に加熱した後の澱粉の変化を示す。図12は実施例8によるソフトカプセルから回収され、臭化マグネシウム上で7ヶ月間保管(相対湿度58%)された澱粉粒子を示す。
【0158】
それらは図11の澱粉粒と同様であるが、さらに強力に着色されており、さらに希釈されている。これはソフトカプセルが、懸濁液に変換でき、沈澱によって回収できる構造破壊された澱粉粒で成ることを示す。
【0159】
[実施例19]
図4は実施例1に従ってソフトカプセルを製造するための本発明の澱粉膜体の光学顕微鏡画像である。澱粉膜体の非常に薄い層はレーザ光線でスライスされ、その上にヨウ素溶液の一滴が垂らされた(暗部分はさらに強力に染色された部分)。この調製物は2枚の顕微鏡スライド間に挟まれて手によって押圧され、膜体の厚みがさらに幾分か減少された。得られた膜体厚はほぼ2つの澱粉粒の厚みを有しており、粒体は部分的に上下に重ねられた。いずれにしろ、膜体が高密度パッキングされた構造破壊澱粉粒で成ることが確認された(さらなる複屈折は確認されなかった)。
【0160】
図5は実施例1に従ってソフトカプセルを製造するための本発明の澱粉膜体の光学顕微鏡画像である。図4と較べて個別の澱粉粒をさらに明確に可視化するため、レーザーブレードで得られた澱粉膜体は70℃で簡単に膨張され、澱粉粒はヨウ素で着色され、膜体は2枚の顕微鏡スライド間で圧迫され、膜体厚は粒体径にほぼ匹敵させた。粒体は70℃での膨張現象により膨張されるため、図4のものよりも幾分かは大きい。
【0161】
[実施例20]
図6は、本発明には従わず、欧州特許EP1103254に従ったソフトカプセルの製造のための押し出し加工された澱粉膜体の倍率150倍の光学顕微鏡画像である(幅0.57mmの膜体詳細が図示されている)。澱粉は完全に溶解しているため、澱粉には粒子は存在しない。乾燥膜体の約1.5%の物質が回収法ナンバー2により得られた。これは溶液から沈澱したものであり、不溶性添加物によるものである。
【0162】
[実施例21]
未処理澱粉S2と、実施例5に従った本発明のソフトカプセルを製造するように処理された澱粉S2のモル質量分布は相互に比較された。そのために澱粉サンプル及び/又はソフトカプセルサンプルが小型オートクレーブ内にて所定の条件下で加圧および加熱により溶解され、分子的に分散して溶解した澱粉のモル質量分布がGPC−MALLSにより調査された。
【0163】
そのために澱粉サンプルは3重量%の濃度で乾燥物質を含んだ水中に懸濁された。この懸濁液はミニオートクレーブ内で撹拌しながら加熱された。150℃に達した後、温度はそのまま20分間維持された。続いて溶液は60℃に冷却され、0.3重量%に希釈され、5μmの濾膜で濾過され、GPC−MALLSで測定された。
【0164】
得られたモル質量分布は図13に示されている。このAは開始澱粉S2のサンプルであり、Bは実施例5に従ったソフトカプセルサンプルである。開始澱粉の平均モル質量はM=22.69x10g/molであり、ソフトカプセルから回収された澱粉のモル質量はM=21.84x10g/molであった。開始サンプルの相対的に高いモル質量はソフトカプセルの処理ではさほど劣化しないことが確認された。開始澱粉と処理済み澱粉とは両方とも同様のモル質量範囲であった。
【0165】
測定方法
せん断速度1.1/s(5rpm、スピンドル25)および明記された温度にて、タイプLVDV-I+のブルックフィールド社の粘度計の助けを借りて動的粘度が決定された。
【0166】
ISO527に従って力学的特性(破断伸び率、弾性率)がインストロン5542試験装置で測定された。
【0167】
含水量は、80℃で48時間、五酸化リン上で乾燥させることにより測定された。
【0168】
ウォーターズ社のAlliance2695分離モジュールと、ウォーターズ社のDRIDetector2414と、米国サンタバーバラ市のワイアットテクノロジー社のDawn−HELEOS MALLS検出器とを使用してGPC−MALLSが波長1=658nmのK5通流槽を利用して実施された。カラムはSUPREMA−Gelカラムセットであり、排除限界S30000は108-106であり、S1000は2x106-5x104であり、S100は105-103であった。溶離剤は0.09MのNaNOのDMSOであり、温度は70℃であり、分析はAstra Software5.3.0.18であった。前サンプルの屈折率の増分dn/dcは0.068であった。
【0169】
膜体内の不溶断片の確認は次のように実施された。まず乾燥ソフトカプセルが57%の湿度下で2ヶ月間保管された。0.5mm厚のソフトカプセル外殻の膜体形態物100から150mg(乾燥物M0)が膨張され、及び/又は7gの脱塩水と共に70℃で試験管内にて30分間磁性撹拌具にて穏やかに撹拌しながら溶解された。続いて試験管が、溶解成分が沈澱して上澄み液が透明になるまで遠心分離された。次に上澄み液はデカントされた。続いて7gの脱塩水が加えられ、沈殿物と共に撹拌され、再び遠心分離して最終的にデカントされた。この手順は繰り返され、沈澱物内に可溶物質が含まれていないことが確認された。澱粉と可塑剤で成る膜体の場合には、この沈殿物は未溶解澱粉で成っていた。最後に沈殿物は五酸化リン上にて80℃で48時間乾燥され、乾燥物質(M1)が確認された。溶解処理後に回収できる物質の割合は重量%で100xM1/M0と決定された。澱粉と可塑剤で成る澱粉膜体に対する、溶解処理後に回収できる澱粉の割合は重量%で100xM1/(M0x(1−(WM/100))であった。WMは乾燥混合物内の可塑剤の量(重量%)である。一般的に澱粉膜体は、澱粉粒子に加えて、最小量の不溶成分(例えば顔料)(典型的には0.5%未満)または二酸化チタン等の充填剤(典型的には1.5%未満)を含んでいる。必要に応じてこのような成分は乾燥物M0および物質M1から除去される。
【表1】

【0170】
表1の説明
顆粒澱粉
S1 ヒドロキシプロピル化架橋タピオカ澱粉(セレスター社のCreamtex75725)
S2 天然タピオカ澱粉(セレスター社)
S4 蝋質ジャガイモ澱粉(アベベ社のEliane100)
S5 ヒドロキシプロピル化ジャガイモ澱粉(エムスランド社のEmdenKH15)
【0171】
溶解澱粉
S1E 澱粉S1、押し出し、10%の短鎖アミロース含有
S1P 澱粉S1、予備ゼラチン化
S2P 澱粉S2、予備ゼラチン化
S5P 澱粉S5、予備ゼラチン化
S6P ヒドロキシプロピル化澱粉(エムスランド社のEmcolH7)、予備ゼラチン化
S7 タピオカデキストリン(ロケット社のCleargumTA90)
S8 タピオカデキストリン(テート&ライル社のTapiocaDextrin11)
S9 50%澱粉S1Pと50%タピオカデキストリンの混合物(セレスター社のDextrinD−400)
【0172】
増粘剤
V1 グアガム(メイホール/ローディア社のMeyproGuarCSAA M−200)
V2 キサンタンガム(ケルコ社のKeltrolHP E415)
V3 ローカストビーンガム(メイホール/ローディア社のMeyproLBG Fleur M−175)
【0173】
WM 可塑剤としてのグリセロール
【0174】
全百分率量は全成形混合物100重量%に対する重量%である。
【0175】
新鮮膜体の力学的特性(弾性率と伸展率)は膜体製造後に25℃の温度で10分間測定された。
Wg 回収法ナンバー1による回収

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉からソフトカプセルを製造する成形法であって、液相で50重量%以上の澱粉が顆粒澱粉の粒子として存在する混合物を成形加工して膜体を形成し、この成形加工時及び/又は成形後に前記混合物を5℃より多くの温度の上昇で固化させ、前記膜体からソフトカプセルを製造することを特徴とする成形法。
【請求項2】
a)可塑剤を含まない状態の乾燥混合物の40重量%より多くの澱粉(50重量%より多くの液相の澱粉が顆粒澱粉の粒子として存在)と、
b)乾燥混合物の15から70重量%の可塑剤と、
c)全混合物の15から90重量%の水と、
d)オプションで、可塑剤を含まない状態の乾燥混合物の最大50重量%の増粘剤と、
e)オプションで、従来の添加剤および賦形剤と、
を含有した混合物を調製するステップと、
前記混合物を成形加工して膜体を形成するステップと、
前記成形加工時及び/又は成形後に前記混合物の温度を5℃より多く上昇させて該混合物を固化するステップと、
前記膜体を成形して構造破壊された澱粉の粒子を含有したソフトカプセルを形成するステップと、
を含んでいることを特徴とする請求項1記載の成形法。
【請求項3】
膜体を形成するために成形加工するための澱粉を含んだ前記混合物は3000Pas未満の動的粘度を有していることを特徴とする請求項1または2記載の成形法。
【請求項4】
固化時の混合物の含水量は最大25重量%だけ減少されることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の成形法。
【請求項5】
澱粉の分子量の減少は限定的であり、M2/M1の比は0.3より大であることを特徴とし、ここでM1は使用澱粉の重量平均分子量分布であり、M2は製造されるソフトカプセル内の澱粉の重量平均分子量分布である請求項1から4のいずれかに記載の成形法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の成形法に従って製造される澱粉のソフトカプセルであって、
a)可塑剤を含まない状態の乾燥ソフトカプセルの40重量%より多い澱粉と、
b)乾燥ソフトカプセルの15から70重量%の可塑剤と、
c)全ソフトカプセルの0.1から50重量%の水と、
d)オプションで、可塑剤を含まない状態の乾燥混合物の最大50重量%の増粘剤と、
e)オプションで、従来の添加剤および賦形剤と、
を含んでおり、前記ソフトカプセルは互いに接着した澱粉粒子を含み、特に互いに接着した構造破壊された澱粉粒子を含んでいることを特徴とするソフトカプセル。
【請求項7】
ソフトカプセルは互いに接着した構造破壊された澱粉の粒子のマトリックスを含んでいることを特徴とする請求項6記載のソフトカプセル。
【請求項8】
ソフトカプセルの外殻中の澱粉は、70℃で30分間ソフトカプセルを溶解させた後に粒子の形態で存在する少なくとも30%の量であり、沈澱によって回収できることを特徴とする請求項6または7記載のソフトカプセル。
【請求項9】
乾燥したソフトカプセルの外殻は少なくとも25重量%の固体内容物を有しており、70℃でソフトカプセルを溶解させた後に沈澱によって回収できることを特徴とする請求項6から8のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項10】
澱粉のM2の分子量は少なくとも500000g/molであることを特徴とする請求項6から9のいずれかに記載のソフトカプセル。
【請求項11】
請求項1から10のいずれかに記載のソフトカプセルを具現する澱粉ソフトカプセル製造装置であって、
膜体(16)を形成するために澱粉材料(13)を成形加工することができる成形装置(12)と、
成形加工時及び/又は成形後に澱粉を構造破壊するために熱処理を施す加熱装置(11、20)と、
前記加熱装置(11)の下流に設置されるロータリーダイ装置(30)と、
を含んでいることを特徴とする製造装置。
【請求項12】
前記加熱装置(11)は加熱式回転ドラムの形態であるロータリー加工部を含んでおり、前記加熱式回転ドラムは好適には少なくとも50℃、少なくとも25℃の最低温度にまで加熱されることを特徴とする請求項11記載の製造装置。
【請求項13】
製造装置は成形加工時及び/又は成形後に膜体の含水量を調節する手段を含んでいることを特徴とする請求項11または12記載の製造装置。
【請求項14】
製造装置は前記回転加工部の周囲の少なくとも30%で前記澱粉材料(13)を覆い、該回転加工部と共に同一角速度で回転するベルト(14)等の手段を含んでいることを特徴とする請求項11から13のいずれかに記載の製造装置。
【請求項15】
前記成形装置(12)はスプレッダーボックスであることを特徴とする請求項11から14のいずれかに記載の製造装置。
【請求項16】
請求項1から5のいずれかに記載の成形法を実施するための請求項11から15のいずれかに記載の製造装置の利用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2012−519663(P2012−519663A)
【公表日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552435(P2011−552435)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【国際出願番号】PCT/EP2010/052702
【国際公開番号】WO2010/100196
【国際公開日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(511212295)インノゲル アーゲー (1)
【Fターム(参考)】