説明

澱粉質含有食品の老化防止剤及びその製造方法

【課題】澱粉質含有食品の流通過程でおきる老化による品質劣化を抑え、旨味や甘味において呈味改善効果を有し、さらにすし飯においては酸味のもちを長くする効果を有する澱粉質含有食品の老化防止剤を提供する。
【解決手段】穀物又は果汁を原料として得られた酢酸発酵物の濃縮物、または発酵工程でアミノ酸含有組成物及び糖を添加して得られた酢酸発酵物を濃縮して得られた呈味改善効果を有する澱粉質含有食品の老化防止剤と、すし飯に用いた際に酸味の持ちを長くし、呈味改善効果を有する澱粉質含有食品の老化防止剤を含有する合わせ酢と、その合わせ酢を用いた老化しにくく酸味のもちが長いすし飯、食感が保持された、米飯、麺類、餅等をそれぞれ提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、穀類、果汁からなる群より選ばれた1種又は2種以上を原料とする酢酸発酵物、又は、酢酸発酵工程でアミノ酸を含む組成物と糖を添加して発酵させた酢酸発酵物を濃縮することによって得られた、澱粉質含有食品の老化防止剤とその製造方法に関する。また、澱粉質含有食品の老化防止剤を含有した合わせ酢をすし飯に用い、酸味のもちを長くする等の呈味を改善する方法、呈味改善したすし飯に関する。
【背景技術】
【0002】
米飯に代表される澱粉質含有食品又はその加工品は日本人の食生活の主食として欠かせないものであり、最も重要なカロリー源でもある。近年では家庭での調理の省力化が進む中、スーパーやコンビニをはじめとする中食市場が拡大し、米飯やすし飯の状態での流通が増加している。また、うどんに代表される麺類や餅などの澱粉質含有食品も中食市場で広く流通している。しかしながら、澱粉を含有する食品は時間の経過とともに澱粉が老化し、硬化等による品質劣化のため商品価値が低下する。
【0003】
米飯等の澱粉質含有食品の老化防止法としてはトレハロースなどの糖類を用いることが開示されている。例えばトレハロースとグリセリン脂肪酸エステル等を添加する方法(特許文献1)、トレハロースを添加する方法(特許文献2)、β−アミラーゼとトレハロースを添加する方法(特許文献3)、β−アミラーゼと糖類を添加する方法(特許文献4)、糖アルコールを用いる方法(特許文献5)や、カリウム塩やカルシウム塩を併用する方法(特許文献6)などが開示されている。しかしながら、これらの方法では、添加しているものが味を損なう原因になったり、老化防止効果が弱かったり、酵素剤使用時の温度管理が煩雑であったり、といった問題があり、使用時の温度条件に制限がなく、風味に悪影響を及ぼさない老化防止剤が望まれていた。
【0004】
【特許文献1】特開平7−79689
【特許文献2】特開平8−242784
【特許文献3】特開平9−107899
【特許文献4】特開平9−107900
【特許文献5】特開2000−210044
【特許文献6】特開2001−238617
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明は、酢酸を主成分とし、タンパク質及び糖質原料を含有する酢酸発酵物を濃縮することによる濃縮酢酸発酵物を澱粉含有食品に用いることにより、経時とともに起こる澱粉の老化による米飯商品の劣化を遅らせるとともに、味を損なうことを防止し、反面さらに良好な呈味を付与する澱粉質含有食品の老化防止剤を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の老化防止剤は次の構成を備える。すなわち、本発明は穀類、果汁からなる群より選ばれた1種又は2種以上を原料とする酢酸発酵物、又は酢酸発酵工程でアミノ酸を含む組成物と糖を添加して発酵させた酢酸発酵物を濃縮することによって得られた澱粉質含有食品の老化防止剤とすることを特徴とする。本発明は酢酸発酵物を濃縮することによりアミノカルボニル反応を促進させ呈味改善効果を持たせた効果の他に、澱粉質含有食品のすぐれた老化防止効果もあることを見出したものに基づくものである。
【0007】
具体的な解決手段としては、穀物又は果汁を原料として得られた酢酸発酵物の濃縮物であることを特徴とする、澱粉質含有食品の老化防止剤を提供することが挙げられる。また、他の形態として、この濃縮醸造物を製造するための発酵工程でアミノ酸含有組成物及び糖を添加することを特徴とする澱粉質含有食品の老化防止剤として提供してもよい。ここで、前記の酢酸発酵物の濃縮物とは、食酢類の濃縮物であってもよい。
【0008】
また、穀類、果汁からなる群より選ばれた1種又は2種以上を原料とする酢酸発酵物を、その色調に変化が生じるまで濃縮して製造されることを特徴とする濃縮酢酸発酵物であって、任意量の濃縮前の酢酸発酵物及び前記量と同一量の濃縮後の酢酸発酵物について、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈したときに、希釈後の総液量を前記酢酸発酵物の任意量で除して得られる希釈倍率に対し、それぞれの吸光度の数値を乗じて得られた数値を酢酸発酵物の色強度としたときに、前記濃縮による酢酸発酵物の色調変化分が、(濃縮後液の色強度)/(濃縮前液の色強度)=1.1乃至50の範囲内から選択される色調を有する濃縮酢酸発酵物を含有する澱粉質含有食品の老化防止剤として提供してもよい。ここで、前記の酢酸発酵物の濃縮物とは、食酢類の濃縮物であってもよい。
【0009】
ここで、希釈液とは水が一般的である。測定方法は、濃縮前後の酢酸発酵物を一定量取り出し、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈し、希釈後の総液量を記録する。次いで、濃縮前後の酢酸発酵物を希釈したものの吸光度を測定して記録する。ここで、これらの吸光度は、0.001〜0.500の範囲内のいずれかの数値である。希釈倍率は、希釈後の総液量を、当初に一定量取り出した酢酸発酵物の量で除することで算出する。そして、その希釈倍率と、対応するそれぞれの吸光度を乗ずることで、濃縮前後の酢酸発酵物について、それぞれ色強度を求めることができる。
【0010】
本発明において濃縮による色調変化の範囲の上限を50としているのは、製造効率の観点から、産業上の利用に適さないと判断したためである。
【0011】
また、本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤を米飯に添加し、老化しにくい米飯として提供してもよい。
【0012】
また、本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤を麺類や餅に添加し、老化しにくい餅として提供してもよい。
【0013】
また、本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤を麺類に添加し、老化しにくい麺類として提供してもよい。
【0014】
また、本発明の老化防止剤を含有する合わせ酢を使用して、老化しにくく酸味の維持を長期化したすし飯として提供してもよい。また、本発明の老化防止剤を含有した合わせ酢として提供してもよい。その合わせ酢をすし飯に用い、すし飯の酸味の維持を長期化し、呈味改善する方法として提供してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明において老化防止の効果とは、澱粉質含有食品またはその加工食品に含まれる澱粉が時間の経過とともに老化し、硬化等により品質が劣化することを遅らせることである。
【0016】
これら製造方法によって得られた酢酸発酵物を濃縮して得られた本発明の老化防止剤を添加することで、添加された澱粉質含有食品またはその加工食品の老化による劣化を遅らせることができる。また、旨味と甘味に「厚み」「深み」を付与し、甘味の「しつこさ」を軽減する機能を有し、素材の風味を引き立てることができる。さらに添加するものがすし飯であった場合、時間経過とともにぼけてしまう酸味の「厚み(強さ)」、「伸び」を保持する機能も有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明において酢酸発酵物とは、穀類あるいは果実を原料とした酢酸発酵物、たんぱく質と糖を添加して発酵させた酢酸発酵物、又は合成酢や合成酢に穀類あるいは果実を添加したものなど酢酸を主成分とする発酵物を意味する。ここでは、食酢を例示して説明する。
【0018】
また、本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤をデキストリンと混合してスプレードライする方法などで粉末化して使用することもできる。
【0019】
食酢は、米酢のように穀物原料を利用して古くから製造されてきた。現在では、さまざまな原料によって多様化しているが、基本的には、醸造酢と合成酢に大別される。醸造酢は、穀物や果実を原料として、微生物を利用して作られる。微生物の利用様式から次の1〜3段型に分類されている。
【0020】
1段型は、含有アルコールを酢酸菌の働きで酢酸に変えるタイプであり、アルコール酢、粕酢がこれに該当する。2段型は、発酵性糖類(グルコース、フラクトース、マルトース、シュクロース等)を含む原料に酵母を加えてアルコールを造り、それに酢酸菌を加えて、酢酸に変えるタイプであり、糖蜜酢や果実酢がこれに属する。3段型は、でん粉、穀類、イモ類を麹や酵素製剤を用いて、でん粉を発酵性糖類に分解し、酵母を加えてアルコールとし、ついで酢酸菌を働かせて酢酸に変えるタイプであり、米酢や麦芽酢がこれに属する。
醸造酢による食酢は、合成酢酸を含まず、原料によって酢に含まれる微量成分に差異が生じることになる。食酢の原料は、糖類が重要な役割をしていて、それが甘味や風味などに影響している。
【0021】
アルコール発酵処理条件については、従来公知の方法を適宜利用できる。
例えば、30℃で時々撹拌して行い、3〜4日で発酵を完了することができる。有用な酵母としては、Saccharomyces
cerevisiae AKU4100、 Saccharomyces sake AKU4111、Schizosaccharomyces pombe AKU4220、Saccharomycodes
Iudwigii AKU4400などが利用できる。
【0022】
酢酸発酵条件についても、従来公知の方法を適宜利用できる。
例えば、30℃で撹拌下、深部発酵法で行い、24〜48時間で発酵を完了することができる。有用な酢酸菌としては、Acetobacter
aceti IFO3283、Acetobacter rancensIFO3298、Acetobacter methanolicus JCM6891、Acetobacter
pasteurianus IFO3222、Acetobacter aceti IFO3299、Acetobacter lovaniensis SKU1108などが利用できる。
【0023】
クエン酸やグルコン酸、乳酸などの有機酸と比較すると、食酢に代表される酢酸発酵物の主成分である酢酸は特に、味覚上において「刺激の伴う酸っぱさ」を有している。この「刺激の伴う酸っぱさ」が食酢の添加において困難を要していた。本発明は酢酸発酵物を濃縮することによりアミノカルボニル反応を促進させ「刺激の伴う酸っぱさ」を改善し、さらに呈味改善効果を持たせることに成功しただけでなく、優れた老化防止効果もあることを見出したものに基づくものである。
【0024】
呈味改善効果としては、本発明における濃縮酢酸発酵物は、主成分である酢酸特有の酸味と臭気を低減させ、酢酸発酵物としての酸味は残存しつつも、まろやかな酸味を付与することが可能である。また、該濃縮酢酸発酵物は、米飯類に添加することにより、すし飯などの米飯類にも同様の呈味改善の効果を示すことが、本発明者によって見出された。さらに、通常の合わせ酢に、本発明による濃縮酢酸発酵物を主成分とする本発明の老化防止剤を添加して、すし飯用の合わせ酢とすると、老化防止効果と共に酸味や旨味のもちを長くする効果を有する合わせ酢が得られる効果も、本発明者によって併せて見出された。
【0025】
また、本発明において、原料の穀物としては、米類、麦類、とうもろこし、粟、ヒエ、アマランサス、豆類、芋類などの穀類が挙げられ、原料の果汁としては、りんご、ぶどう、プルーン、柿、パイナップルなどの果汁の中からなる群より選ばれた1種以上の原料を使用することができる。さらに添加するアミノ酸含有組成物としてはアミノ酸単体、アミノ酸ナトリウム塩、タンパク質及びそれらを多量に含む糠、発酵粕、たんぱく加水分解物、酵母エキスなどの中からなる群より選ばれた1種又は2種以上の原料を使用することができる。
【0026】
また、本発明において、添加する糖は、ブドウ糖、果糖等の単糖類、ショ糖、麦芽糖等の二糖類、およびそれらを多量に含む水飴、糖蜜、異性化糖などの中からなる群より選ばれた1種又は2種以上の原料をそれぞれ使用することができる。
【0027】
濃縮方法としては、減圧濃縮、凍結濃縮、膜濃縮など、従来公知の方法が適宜利用できる。ここで言う濃縮とは、濃縮前と比べ濃縮後の体積が小さくなるプロセスのことを示す。濃縮時間については、長時間をかけて濃縮することもできるが、例えば30分から5時間といった短時間の濃縮でも、本発明の効果を有する呈味改善剤を得ることができるので、本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤及びその製造方法は、工業的な生産にも適している。
【0028】
酢酸発酵物を濃縮する目安と測定方法について、以下に説明する。濃縮する際に褐変を始め様々な成分の変化が見られる。濃縮による酢酸発酵物の色調変化分が、任意量の濃縮前の酢酸発酵物及び前記量と同一量の濃縮後の酢酸発酵物について、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈したときに、希釈後の総液量を前記酢酸発酵物の任意量で除して得られる希釈倍率に対し、それぞれの吸光度の数値を乗じて得られた数値を酢酸発酵物の色強度としたときに、(濃縮後液の色強度)/(濃縮前液の色強度)=1.1乃至50、好ましくは3乃至50、より好ましくは9乃至50の範囲内から選択される色調を有する濃縮酢酸発酵物とし、これを主成分とする澱粉質含有食品の老化防止剤とすることが望ましい。
ここで言うOD420nmの吸光度は一般的に用いられている分光光度計「日立製作所製U-1000型分光光度計」を用いて室温にて測定した。
【0029】
本発明の老化防止剤は、澱粉質含有食品としては、米飯、すし飯など米飯類、餅、求肥などの餅類、うどん、そば、スパゲッティ、中華麺などの麺類、パン類など、澱粉質を含む食品に広く利用できる。
【実施例1】
【0030】
(本発明の老化防止剤の製造方法)
玄米に液化酵素を作用させ、60〜70℃で3時間液化を行った。次いで糖化酵素を添加し、50〜60℃にて16時間糖化を行った。得られた糖化液に酵母を加え30度でアルコール発酵を行い、アルコール濃度約15%の玄米アルコールを得た。得られた玄米アルコールを玄米酢にて変性し酢酸菌を摂取し深部培養法にて酢酸発酵を行った。得られた酢酸発酵液をろ過し、酸度8%(酢酸換算)窒素濃度0.25%の酢酸発酵液を得た。さらにその酢酸発酵液を液量が1/10になるまで濃縮し、酸度9%、窒素濃度2.5%の濃縮物を得、そのものを本発明品の老化防止剤として用いた。
【実施例2】
【0031】
実施例1で調整した本発明品の老化防止剤をさらに濃縮し、酸度2%、窒素濃度2.5%の濃縮物を得て、そのものを本発明の老化防止剤として用いた。
【実施例3】
【0032】
(すし酢への利用)
下記表1の配合の合わせ酢10gを炊いたご飯100gに混ぜ合わせたすし飯を作り、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を含むものを添加区、含まないものを対照区とした。それぞれ6時間室温で保存した添加区、対照区について、二点比較法を用い味覚パネラー20名で官能評価を実施した。結果は表2に示す。
【表1】

【表2】

※印のものは0hと8hの比較
【実施例4】
【0033】
下記表3の配合の合わせ酢14gを炊いたご飯100gに混ぜ合わせたすし飯を作り、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を含むものを添加区、含まないものを対照区とした。それぞれ12時間チルド保存した添加区、対照区の米粒の硬さについてクリープメータ(株式会社山電製 RE2−33005使用)による測定を行った。結果を表4に示した。
【表3】

【表4】

【0034】
[1]と[2]を比較すると、[1]よりも[2]のほうが荷重が低く、対照区よりも添加区の方が米を押しつぶして表面を破断する力が少ないことがわかる。すなわち、添加区では表面が硬くなりにくく、柔らかさが維持されていることが示される。また、[1]と[3]の荷重の差、[2]と[4]の荷重の差を比較すると、[1]と[3]の荷重の差よりも[2]と[4]の荷重の差の方が対照区よりも添加区の方が差が少なく、かんだ後もぼろぼろせず柔らかくもっちりとした食感があると考えられる。
よって12時間チルド保存されたものは、対照区に比べて添加区の方が柔らかく、且つ粘りがあることが明らかである。
【実施例5】
【0035】
表1の配合の合わせ酢16gを炊いたご飯100gに混ぜ合わせたすし飯を作り、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を含むものを添加区、含まないものを対照区とした。それぞれ24時間常温保存した添加区、対照区の米粒の付着性についてクリープメータ(株式会社山電製 RE2−33005使用)による測定を行った。結果を表5に示した。
【表5】

表5の結果から、24時間常温保存されたものは、対照区に比べて添加区の方が付着性があることがわかる。よって、本発明である「澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、すし飯の付着性が保持されることが明らかである。
【実施例6】
【0036】
濃縮前後の色強度の比が1.1〜50である「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を様々な比率で添加した表1の配合割合の合わせ酢16gを、炊いたご飯100gに混ぜ合わせたすし飯を作り、二点比較法を用い味覚パネラー20名で官能評価を実施した。この評価結果は表6に示す。
なお、老化防止、呈味改善については以下の評価指標を用い、20名のパネラーの平均値を評価結果とした。評価指標については、+++:非常に良い、++:良い、+:やや良い、−:変わらない、の4段階で表した。
【表6】

表6の結果から、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」は、濃縮前後の色強度の比が3〜50の範囲で好ましい、9〜50の範囲でさらに好ましい「柔らかさの保持」、「粘り気の保持」、「酸味の保持」、「旨味の保持」の効果を得られることが明らかである。
【実施例7】
【0037】
炊いたご飯100gに、実施例2で製造した「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を10g添加したものを添加区、添加していないものを対照区とした。それぞれ0時間後のものと24時間常温保存したものを用意し、「柔らかさ」と「粘り気」の保持の差に関して、二点比較法を用い味覚パネラー8名で官能評価を実施した。結果は表7に示す。
【表7】

表7の結果から、24時間常温保存されたものは、対照区に比べて添加区の方が米飯の柔らかさ、粘り気が保持されることがわかる。よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、すし飯の付着性が保持されることが明らかである。
【実施例8】
【0038】
炊いたご飯100gに実施例2で製造した「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を10g添加したものを添加区、含まないものを対照区とした。それぞれ24時間4℃チルド保存した添加区、対照区の米粒の硬化度、もろさについてクリープメータ(株式会社山電製 RE2−33005使用)による測定を行った。結果を表8、表9に示した。

【表8】

【表9】

表8の添加区と対照区を比較すると、対照区よりも添加区のほうが4℃24時間後で荷重が低く、対照区よりも添加区の方が米を押しつぶして表面を破断する力が少ないことがわかる。すなわち、添加区では表面が硬くなりにくく、柔らかさが維持されていることが示される。また、表9の添加区と対象区を比較すると、対象区よりも添加区のほうが4℃24時間後で荷重の差が少なく、かんだ後もぼろぼろせず柔らかくもっちりとした食感があると考えられる。
よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、米飯が硬くなりにくく、もろくなりにくいことが明らかである。
【0039】
炊いたご飯100gに実施例2で製造した「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を10g添加したものを添加区、添加しないものを対照区とした。それぞれ24時間常温保存した米粒の付着性についてクリープメータ(株式会社山電製 RE2−33005使用)による測定を行った。結果を表10に示した。
【表10】

表10の結果から、24時間常温保存した米飯は、対照区に比べて添加区の方が米粒の付着性が保持されることがわかる。よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、米飯の付着性が保持されることが明らかである。
【実施例9】
【0040】
温めた市販の切餅100gに、実施例1で製造した「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を4g添加したものを添加区、添加していないものを対照区とした。それぞれ0時間後のものと24時間常温保存したものを用意し、「柔らかさ」と「粘り気」の保持の差に関して、二点比較法を用い味覚パネラー8名で官能評価を実施した。結果は表11に示した。
【表11】

表11の結果から、24時間常温保存した餅は、対照区に比べて添加区の方が柔らかさ、粘り気が保持されることがわかる。よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、餅の柔らかさ、粘り気が保持されることが明らかである。
【実施例10】
【0041】
温めた市販の切り餅100gに実施例1で製造した「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を4g添加したものを添加区、添加しないものを対照区とした。それぞれ24時間常温保存した添加区、対照区の餅の付着性についてクリープメータ(株式会社山電製 RE2−33005使用)による測定を行った。結果を表12に示した。
【表12】

表12の結果から、24時間常温保存した餅は、対照区に比べて添加区の方が付着性が保持されることがわかる。よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、餅の付着性が保持されることが明らかである。
【実施例11】
【0042】
茹でた市販のうどん100gに、実施例2で製造した「本発明の老化防止剤」を8g添加したものを添加区、添加していないものを対照区とした。それぞれ0時間後のものと24時間常温保存したものを用意し、「柔らかさ」と「粘り気」の保持の差に関して、二点比較法を用い味覚パネラー7名で官能評価を実施した。結果は表13に示した。
【表13】

表13の結果から、24時間常温保存したうどんは、対照区に比べて添加区の方が柔らかさ、粘り気が保持されることがわかる。よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、うどんの柔らかさ、粘り気が保持されることが明らかである。
【実施例12】
【0043】
温めた市販のゆでうどん100gに実施例2で製造した「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を8g添加したものを添加区、添加していないものを対照区とした。それぞれ24時間常温保存した添加区、対照区のうどんの付着性についてクリープメータ(株式会社山電製 RE2−33005使用)による測定を行った。結果を表14に示した。
【表14】

表14の結果から、24時間常温保存したうどんは、対照区に比べて添加区の方が付着性が保持されることがわかる。よって、「本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加することによって、うどんの付着性が保持されることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明の澱粉質含有食品の老化防止剤は合わせ酢に用いてすし飯等を製造するだけで、すし飯の呈味を劇的に改善する効果、並びに、米飯及び餅、麺類の老化を防止する効果を有する。本発明は、「澱粉質含有食品の老化防止剤」を添加した米飯及び餅、麺類は、旨味の立ち、伸び、保持に対して改善する効果、及び全体の味を増強する効果が得られると共に、時間経過と共に懸念される酸味の消失が軽減されるものとなる。更に、常温またはチルド保存された場合において、良好な食感を長時間保持し続けるものとなる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
酢酸発酵物を濃縮することにより得られる、澱粉質含有食品の老化防止剤。
【請求項2】
酢酸発酵物の原料が穀物又は果汁である、請求項1に記載の澱粉質含有食品の老化防止剤。
【請求項3】
酢酸発酵物が食酢である請求項1又は2に記載の澱粉質含有食品の老化防止剤。
【請求項4】
穀類、果汁からなる群より選ばれた1種又は2種以上を原料とする酢酸発酵物を、その色調に変化が生じるまで濃縮して製造されることを特徴とする老化防止剤であって、任意量の濃縮前の酢酸発酵物及び前記量と同一量の濃縮後の酢酸発酵物について、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈したときに、希釈後の総液量を前記酢酸発酵物の任意量で除して得られる希釈倍率に対し、それぞれの吸光度の数値を乗じて得られた数値を酢酸発酵物の色強度としたときに、前記濃縮による酢酸発酵物の色調変化分が(濃縮後液の色強度)/(濃縮前液の色強度)=1.1乃至50の範囲内から選択される色調を有する濃縮発酵物を含有する澱粉質含有食品の老化防止剤。
【請求項5】
穀類、果汁からなる群より選ばれた1種又は2種以上を原料とする食酢類を、その色調に変化が生じるまで濃縮して製造されることを特徴とする老化防止剤であって、任意量の濃縮前の食酢類及び前記量と同一量の濃縮後の食酢類について、それぞれOD420nmにおける吸光度が0.001〜0.500の範囲内となるように希釈液で適宜希釈したときに、希釈後の総液量を前記食酢類の任意量で除して得られる希釈倍率に対し、それぞれの吸光度の数値を乗じて得られた数値を食酢類の色強度としたときに、前記濃縮による食酢類の色調変化分が(濃縮後液の色強度)/(濃縮前液の色強度)=1.1乃至50の範囲内から選択される色調を有する濃縮醸造酢を含有する澱粉質含有食品の老化防止剤。
【請求項6】
澱粉質含有食品が米飯類である、請求項1及至5に記載の老化防止剤。
【請求項7】
澱粉質含有食品がすし飯である請求項1及至6に記載の老化防止剤。
【請求項8】
請求項1及至7に記載の老化防止剤を含有する合わせ酢をすし飯に用い、すし飯の酸味の維持を長期化し、呈味改善する方法。
【請求項9】
請求項1乃至7に記載の老化防止剤を含有する合わせ酢。
【請求項10】
請求項1乃至7に記載の老化防止剤を含有する合わせ酢を使用した、老化しにくく酸味の維持を長期化したすし飯。



【公開番号】特開2007−190018(P2007−190018A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−346815(P2006−346815)
【出願日】平成18年12月22日(2006.12.22)
【出願人】(505324227)株式会社キックオフ (9)
【Fターム(参考)】