説明

濁度測定装置

【課題】液体中に気泡が存在する場合であっても、液体の濁度を高精度に測定することができる濁度測定装置を提供する。
【解決手段】ガスが混在する液体の濁度を測定する濁度測定装置であって、前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな径を有する光を前記液体に照射する光源部と、前記光源部から照射され、前記液体を透過した光を受光する受光部と、前記受光部で受光された光量に基づいて、前記液体の濁度を算出する算出部と、を有することを特徴とする濁度測定装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスが混在する液体の濁度を測定する濁度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ビールを製造する工程は、製麦工程と、仕込工程と、発酵・貯酒工程と、ろ過工程と、パッケージング工程とを含む。このうちろ過工程は、熟成したビールをろ過する工程であって、ろ過状況を管理するために、ろ過前後のビールの濁度(にごり)をそれぞれ測定することが必要である。
【0003】
ビールの濁度は、図4に示すように、光源1100と受光器(受光センサ)1200との間にビールを流し、光源1100から射出され、ビールを透過した光を受光器1200で受光する(即ち、ビールを透過した光の光量)ことで測定される。また、ビールの濁度は、光源から射出され、ビールで反射された光を受光器で受光しても測定することができる。ここで、図4は、ビールの濁度を測定する従来の濁度測定装置の構成の一例を示す図である。
【0004】
また、液体の濁度を測定する濁度測定装置に関連する技術として、従来から幾つか提案されている(特許文献1乃至3参照)。
【特許文献1】特開平7−198605号公報
【特許文献2】特開2003−279396号公報
【特許文献3】特開2005−249783号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の濁度測定装置においては、ビール中の炭酸ガスが遊離して気泡が発生した場合に、かかる気泡の影響で測定値が変動してしまう(即ち、測定誤差が生じてしまう)という問題がある。
【0006】
従来の濁度測定装置は、図4に示したように、ビール中に発生する気泡1300よりも大きい径を有する光を光源1100から射出して、気泡1300よりも大きい受光面積を有する受光器(受光センサ)1200で受光している。従って、図5に示すように、光源1100からの光が気泡1300で反射及び散乱され、受光器1200で受光される光(光量)が減少し、ビール中に気泡1300が存在しない場合の光量(真の光量)に対して、ビール中に気泡1300が存在する場合の光量が変動する。その結果、ビールの濁度は、実際よりも高く測定されてしまう。一方、ビールで反射された光を受光してビールの濁度を測定する濁度測定装置の場合には、光源からの光が気泡で反射及び散乱されるため、受光器で受光される光(光量)が増加してしまう。その結果、ビールの濁度は、実際よりも低く測定されてしまう。ここで、図5は、従来の濁度測定装置におけるビール中の気泡に起因する光量の変動を説明するための図である。図5では、横軸にビールの流れ(経過時間)を採用し、縦軸に受光器で受光される光の光量を採用する。
【0007】
このように、従来の濁度測定装置では、ビール中に発生した(存在する)気泡に起因して測定誤差が生じてしまうため、ビールの濁度を高精度に測定することができなかった。このような問題は、ビールに限らず、炭酸ガスを含有する液体の場合には同様に生じてしまう。
【0008】
なお、特許文献1は、懸濁液の粒子濃度を散乱光の光量から得る測定方法において、散乱光の光量と吸光度から誤差補正率を予め求めておき、かかる誤差補正率に基づいて測定値を補正する技術を開示している。また、特許文献2は、超音波流量計において、受信信号をデジタル処理して得られた信号の振幅が許容最大値の半分以下の場合に、気泡の混入などに起因する異常値と判断し、かかる受信信号を破棄して新たに信号を受信する技術を開示している。また、特許文献3は、分光測光法によって液体中の成分濃度を測定する方法において、複数箇所及び複数回の測定を行って得られた複数のデータを相互に比較し、許容範囲外のデータを誤データとして破棄して測定誤差を低減する技術を開示している。但し、特許文献1乃至3は、過去の測定データに基づいて、誤差補正率や破棄する測定データの範囲を設定しているため、その妥当性に欠ける場合がある。従って、特許文献1乃至3に開示された技術を濁度測定装置に適用したとしても、必ずしも濁度を高精度に測定することができるとは限らない。
【0009】
そこで、本発明では、液体中に気泡が存在する場合であっても、液体の濁度を高精度に測定することができる濁度測定装置を提供することを例示的目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一側面としての濁度測定装置は、ガスが混在する液体の濁度を測定する濁度測定装置であって、前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな径を有する光を前記液体に照射する光源部と、前記光源部から照射され、前記液体を透過した光又は前記液体で反射した光を受光する受光部と、前記受光部で受光された光量に基づいて、前記液体の濁度を算出する算出部と、を有することを特徴とする。かかる濁度測定装置によれば、液体中に気泡が存在する場合には、光源部からの光が気泡で全て遮光され、液体中に気泡が存在しない場合にのみ、光源部からの光を受光部で受光することができる。前記受光部は、前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな受光面積を有することが好ましい。
【0011】
本発明の別の側面としての濁度測定装置は、ガスが混在する液体の濁度を測定する濁度測定装置であって、前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな径を有する光を前記液体に照射する光源部と、前記光源部から照射され、前記液体で反射した光を受光する受光部と、前記受光部で受光された光量に基づいて、前記液体の濁度を算出する算出部と、を有することを特徴とする。かかる濁度測定装置は、上述の濁度測定装置の作用と同様の作用を有する。
【0012】
本発明の更なる目的又はその他の特徴は、以下、添付図面を参照して説明される好ましい実施例によって明らかにされるであろう。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、例えば、液体中に気泡が存在する場合であっても、液体の濁度を高精度に測定することができる濁度測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施の形態について説明する。なお、各図において、同一の部材については同一の参照番号を付し、重複する説明は省略する。
【0015】
図1は、本発明の一側面としての濁度測定装置1の構成の一例を示す図である。濁度測定装置1は、ガスが混在する液体LWの濁度を測定する濁度測定装置である。濁度測定装置1は、ビールを製造する工程のうちろ過工程において、ビールの濁度を測定する際に使用されることが好ましい。
【0016】
濁度測定装置1は、本実施形態では、光源部10と受光部20との間に流される液体LWを透過した光の光量を検出することで、液体LWの濁度を測定する透過型の濁度測定装置の構成を有するが、液体LWで反射された光の光量を検出することで、液体LWの濁度を測定する反射型の濁度測定装置の構成を有していてもよい。濁度測定装置1は、図1に示すように、光源部10と、受光部20と、算出部30とを有する。
【0017】
光源部10は、液体LWが含有するガスに起因して液体中に発生する気泡ABよりも小さな径を有する光を液体LWに照射する。光源部10は、例えば、液体LWに対して高い透過率を有する光を照射する光源と、かかる光源と液体LWとの間に配置され、液体中に発生する気泡ABよりも小さなスリット径を有するスリット板とから構成される。光源部10は、液体中に発生する気泡ABよりも小さな径を有する光を照射するため、かかる光の照射位置に気泡ABが存在する場合には、光源部10からの光は気泡ABで反射及び散乱され(即ち、気泡ABで遮光され)、液体LWを透過することができず、受光部20に到達しない。一方、照射位置に気泡ABが存在しない場合には、光源部10からの光は液体LWを透過することができ、受光部20に到達する。
【0018】
受光部20は、光源部10から照射され、液体LWを透過した光を受光して、かかる光の光量を検出する機能を有する。受光部20は、液体LWが含有するガスに起因して液体中に発生する気泡ABよりも小さな受光面積を有し、例えば、CCDセンサ、CMOSセンサ、フォトダイオード、分割フォトダイオードなどを使用することができる。これにより、受光部20が気泡ABで反射及び散乱された光(特に、気泡ABのエッジ部分で反射及び散乱され、気泡ABが存在しない場合と同様に、略一直線に受光部20に向かう光)を受光することを確実に防止することができる。
【0019】
図2は、受光部20で受光された光の光量(即ち、受光部20の受光結果)の一例を示す図である。図2では、横軸に液体LWの流れ(経過時間)を採用し、縦軸に受光部20で受光された光の光量を採用する。図2を参照するに、光源部10からの光の照射位置に気泡ABが存在する場合には、光源部10からの光が受光部20に到達しないため、受光部20で受光される光はなく、図2にαで示すように、光量は0となる。一方、光源部10からの光の照射位置に気泡ABが存在しない場合には、光源部10からの光が受光部20に到達するため、図2にβで示すように、受光部20はある値の光量を検出する。このように、受光部20で受光される光は、気泡ABの影響を受けておらず、液体LWの濁度の影響のみを受けているため、気泡ABに起因する測定誤差を排除して、液体LWの濁度を高精度に測定することが可能となる。
【0020】
算出部30は、CPUやメモリなどを含み、受光部20で受光された光の光量に基づいて、液体LWの濁度を算出する。なお、算出部30は、当業界で周知のいかなる構成をも適用することができるので、ここでは詳しい構造及び動作の説明は省略する。
【0021】
以下、図3を参照して、濁度測定装置1の測定動作について説明する。まず、光源部10と受光部20との間に液体LWを流すと共に、電源回路42を介して濁度測定装置1(具体的には、光源部10を駆動するための光源部駆動回路44及び受光部20で受光された光の光量を示す信号を増幅するための信号増幅回路46)に電力が供給される。ここで、図3は、濁度測定装置1の測定動作について説明するための図である。
【0022】
濁度測定装置1に電力が供給されると、光源部駆動回路44が光源部10を駆動することによって、光源部10から液体LWに光が照射される。光源部10から照射された光は、液体中に(即ち、光の照射位置に)気泡ABが存在しない場合のみ液体LWを透過し、受光部20で受光される。一方、液体中に(即ち、光の照射位置に)気泡ABが存在する場合には、光源部10からの光は気泡ABで反射及び散乱され、受光部20で受光されることはない。
【0023】
受光部20で受光された光は、かかる光の光量を示す信号に光電変換され、算出部30に出力される。この際、受光部20で受光された光の光量を示す信号は、信号増幅回路46によって増幅される。
【0024】
受光部20で受光された光の光量を示す信号は、算出部30において種々の処理(例えば、図3に示すように、アナログ−デジタル変換処理、ピーク・アンダーカット処理、平均化処理、デジタル−アナログ変換処理など)が施されることによって、液体LWの濁度として算出される。この際、受光部20で受光された光の光量を示す信号は、上述したように、気泡ABの影響は受けておらず、液体LWの濁度のみの影響を受けているため、算出部30は、液体LWの濁度を高精度に算出することができる。なお、ピーク・アンダーカット処理とは、受光部20で受光された光の光量を示す信号のうち、予め設定された範囲における最大値と最小値とを削除する処理である。また、平均化処理とは、受光部20で受光された光の光量を示す信号のうち、予め設定された範囲における光量値を平均化する処理である。
【0025】
このように、濁度測定装置1によれば、液体中に気泡が存在する場合であっても、液体の濁度を高精度に測定することができる。換言すれば、濁度測定装置1は、液体中に存在する気泡よりも小さな径を有する光を照射して、気泡と気泡との間の液体の濁度を測定することを可能とすることによって、液体の濁度を正確に測定することができる。
【0026】
以上、本発明の好ましい実施例について説明したが、本発明はこれらの実施例に限定されないことはいうまでもなく、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。例えば、本実施形態の濁度測定装置は、ビール以外にも発泡酒、雑酒、サイダーなどの発泡性飲料の濁度やガスを含有しない液体の濁度を測定する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一側面としての濁度測定装置の構成の一例を示す図である。
【図2】受光部20で受光された光の光量(即ち、受光部20の受光結果)の一例を示す図である。
【図3】図1に示す濁度測定装置の測定動作について説明するための図である。
【図4】従来の濁度検出装置の構成の一例を示す図である。
【図5】従来の濁度測定装置におけるビール中の気泡に起因する光量の変動を説明するための図である。
【符号の説明】
【0028】
1 濁度測定装置
10 光源部
20 受光部
30 算出部
42 電源回路
44 光源部駆動回路
46 信号増幅回路
LW 液体
AB 気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが混在する液体の濁度を測定する濁度測定装置であって、
前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな径を有する光を前記液体に照射する光源部と、
前記光源部から照射され、前記液体を透過した光を受光する受光部と、
前記受光部で受光された光量に基づいて、前記液体の濁度を算出する算出部と、
を有することを特徴とする濁度測定装置。
【請求項2】
ガスが混在する液体の濁度を測定する濁度測定装置であって、
前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな径を有する光を前記液体に照射する光源部と、
前記光源部から照射され、前記液体で反射した光を受光する受光部と、
前記受光部で受光された光量に基づいて、前記液体の濁度を算出する算出部と、
を有することを特徴とする濁度測定装置。
【請求項3】
前記受光部は、前記ガスに起因して前記液体中に発生する気泡よりも小さな受光面積を有することを特徴とする請求項1又は2記載の濁度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−31018(P2009−31018A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−192634(P2007−192634)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000000055)アサヒビール株式会社 (535)
【Fターム(参考)】