説明

濃度検出装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】広い粘度レンジで液体現像剤の濃度を検出することが可能な濃度検出装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】濃度検出装置は、液体現像剤の液位置かつ回転部材の回転速度に応じて第1換算および第2換算を選択的に行う。第1換算は、液体現像剤が第1の液位置にあるときに粘度の変化に応じて回転速度が変化する度合いが大きい第1領域において回転速度と液体現像剤の濃度との関係を予め求めて作成した第1テーブルを参照することで、回転速度から濃度への換算を行うものである。第2換算は、液体現像剤が第2の液位置にあるときに粘度の変化に応じて回転速度が変化する度合いが大きい第3領域において回転速度と濃度との関係を予め求めて作成した第2テーブルを参照することで、回転速度から濃度への換算を行うものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体現像剤の濃度を検出する濃度検出装置およびそれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体現像剤を用いてシート上に画像を形成する画像形成装置は、画像形成に用いられなかった液体現像剤を調整タンクに回収し、回収した液体現像剤を調整タンク内で適正な濃度に調整する。これにより、回収された液体現像剤が再利用可能となる。画像形成装置は、調整中の液体現像剤の濃度を検出する濃度検出装置を含む(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1の画像形成装置では、濃度検出装置が液体現像剤の濃度を検出している間、回収現像剤貯蔵槽への液体現像剤の搬送が停止されるように制御される。これにより、液体現像剤を回収現像剤貯蔵槽に搬送するポンプの動作に起因する流動ムラの影響を低減している。その結果、特に高濃度の液体現像剤の濃度を正確に検知することが図られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−219068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の画像形成装置では、回収現像剤貯蔵槽内で液体現像剤を攪拌する攪拌部材の回転トルクに基づいて液体現像剤の濃度を検出している。液体現像剤の濃度が高いとき、液体現像剤の粘度が高いため、回転トルクの変化は大きく、したがって、濃度検出の精度が高い。しかしながら、液体現像剤の濃度が低いとき、液体現像剤の粘度が低いため、回転トルクの変化は小さい。そのため、濃度検出の精度が低くなる。濃度検出の精度が低いと、回収された液体現像剤の濃度を適正に調整することができない。その結果、回収した液体現像剤を再利用した場合、高画質な画像を形成することが難しい。
【0006】
また、回転トルクの変化が大きい場合であっても、回転トルクが許容値以上になると、濃度検出を行うことができない。濃度検出ができないと、回収された液体現像剤の濃度を適正に調整することができない。その結果、回収した液体現像剤を再利用した場合、高画質な画像を形成することが難しい。
【0007】
そこで、本発明は、広い粘度レンジで液体現像剤の濃度を検出することが可能な濃度検出装置およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を解決するために、本発明に係る濃度検出装置は、粘度が変化する液体現像剤の濃度を検出するものであって、前記液体現像剤を、第1の液位置および前記第1の液位置よりも上方に位置する第2の液位置のいずれか一方の液位置で貯留する貯留容器と、前記液体現像剤を前記貯留容器に供給する供給手段と、前記液体現像剤を前記貯留容器から排出する排出手段と、前記第1の液位置によって規定される第1の液範囲から前記第2の液位置によって規定される第2の液範囲にかけて配置された回転可能な回転部材と、前記回転部材を一定の駆動力で回転させる駆動源と、前記回転部材の回転速度を検出する回転速度検出手段と、前記供給手段および前記排出手段を制御すると共に、前記回転速度を前記液体現像剤の前記濃度に換算する第1換算および第2換算を選択的に行う濃度検出部とを含む。前記濃度検出部は、前記液体現像剤が前記第1の液位置にある場合において前記回転速度が第1所定回転速度以下のとき、前記第1換算を行い、前記回転速度が前記第1所定回転速度よりも大きいとき、前記液体現像剤が前記第2の液位置に調整されるように前記供給手段を制御した後、前記第2換算を行い、一方、前記液体現像剤が前記第2の液位置にある場合において前記回転速度が第2所定回転速度以上のとき、前記第2換算を行い、前記回転速度が前記第2所定回転速度よりも小さいとき、前記液体現像剤が前記第1の液位置に調整されるように前記排出手段を制御した後、前記第1換算を行う。前記第1換算は、前記液体現像剤が前記第1の液位置にあるときに前記粘度の変化に応じて前記回転速度が変化する度合いが大きい第1領域において前記回転速度と前記液体現像剤の前記濃度との関係を予め求めて作成した第1テーブルを参照することで、前記回転速度から前記濃度への換算を行うものである。前記第1所定回転速度は、前記第1領域と、前記粘度の変化に応じて前記回転速度が変化する度合いが小さい第2領域との間の境界点に対応する回転速度である。前記第2換算は、前記液体現像剤が前記第2の液位置にあるときに前記粘度の変化に応じて前記回転速度が変化する度合いが大きい第3領域において前記回転速度と前記濃度との関係を予め求めて作成した第2テーブルを参照することで、前記回転速度から前記濃度への換算を行うものである。前記第2所定回転速度は、前記第3領域と、前記粘度の変化に応じた前記回転速度の変化が起きない第4領域との間の境界点に対応する回転速度である。
【0009】
本発明に係る濃度検出装置は、液体現像剤の粘度が濃度に応じて変化する特性を利用すると共に、液体現像剤が第1の液位置にあるときに液体現像剤の粘度の変化に応じて回転部材の回転速度が変化する特性と、液体現像剤が第2の液位置にあるときに液体現像剤の粘度の変化に応じて回転部材の回転速度が変化する特性とを利用し、回転速度に基づいて液体現像剤の濃度を検出する。
【0010】
具体的には、本発明に係る濃度検出装置は、液体現像剤が第1の液位置にあるときに粘度の変化に応じて回転速度が変化する度合いが大きい第1領域と、液体現像剤が第2の液位置にあるときに粘度の変化に応じて回転速度の変化が大きい第3領域とを、濃度検出のために用いる。第1領域における回転速度と濃度との関係は、第1テーブルとして予め作成され、第3領域における回転速度と濃度との関係は、第2テーブルとして予め作成されている。また、濃度検出装置は、液体現像剤が第1の液位置にあるときに粘度の変化に応じて回転速度が変化する度合いが小さい第2領域と、液体現像剤が第2の液位置にあるときに粘度の変化に応じた回転速度の変化が起きない第4領域とを用いない。
【0011】
濃度検出部は、液体現像剤が第1の液位置にある場合において回転速度が第1所定回転速度以下のとき、第1テーブルを参照して、回転速度を濃度に換算する第1換算を行い、回転速度が第1所定回転速度よりも大きいとき、第2テーブルを参照して、回転速度を濃度に換算する第2換算を行う。一方、濃度検出部は、液体現像剤が第2の液位置にある場合において回転速度が第2所定回転速度以上のとき、第2テーブルを参照して第2換算を行い、回転速度が第2所定回転速度よりも小さいとき、第1テーブルを参照して第1換算を行う。第1換算および第2換算により、液体現像剤の濃度が検出される。
【0012】
このように、濃度検出装置は、粘度の変化に応じて回転速度の変化が大きい第1領域および第3領域を用いるので、広い回転速度のレンジで(つまり、広い粘度のレンジで)液体現像剤の濃度を検出することができる。また、第1領域および第3領域が用いられているので、濃度の分解能が高くなり、検出精度が向上する。
【0013】
本発明に係る画像形成装置は、液体現像剤を用いてシート上に画像を形成する画像形成部と、上記構成の濃度検出装置と、前記濃度検出装置による検出に基づいて前記液体現像剤の濃度を調整する調整部とを含む。
【0014】
本発明に係る画像形成装置は、広いレンジで液体現像剤の濃度を検出することができると共に、高い検出精度を備えた濃度検出装置を有しているので、液体現像剤の濃度が適正に調整される。これにより、高画質の画像が得られる。
【0015】
本発明の好ましい実施形態では、前記液体現像剤は、キャリア液と、前記キャリア液中に分散された顔料と、前記キャリア液中に溶解された溶解樹脂とを含み、前記溶解樹脂は、前記シート上で前記顔料を定着させるために用いられており、前記濃度検出装置は、前記溶解樹脂の濃度を検出するものであり、前記第1テーブルは、前記第1領域における前記回転速度と前記溶解樹脂の前記濃度との関係を予め求めて作成されたものであり、前記第2テーブルは、前記第3領域における前記回転速度と前記溶解樹脂の前記濃度との関係を予め求めて作成されたものであり、前記調整部は、前記濃度検出装置による検出に基づいて前記溶解樹脂の前記濃度を調整する。
【0016】
この構成によれば、濃度検出装置により、顔料をシート上に定着させるための溶解樹脂の濃度を広いレンジでかつ精度良く検出することができるので、溶解樹脂の濃度が適正に調整される。これにより、顔料の定着状態が良い高画質の画像が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る濃度検出装置によれば、広い回転速度のレンジで液体現像剤の濃度を検出することができると共に、濃度の分解能が高くなり、検出精度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る濃度検出装置の構成を模式的に示す図である。
【図2】第1回転部材および第2回転部材の回転速度と液体現像剤の粘度との関係を示す第1曲線および第2曲線を示す図である。
【図3】濃度検出装置の濃度検出部による濃度検出動作を示すフローチャートである。
【図4】濃度検出装置の濃度検出部による濃度検出動作を示す他のフローチャートである。
【図5】本発明の実施形態に係るカラープリンタの全体概略断面図である。
【図6】液体現像剤循環装置の部分を除いた、カラープリンタの概略断面図である。
【図7】カラープリンタに用いられている現像装置およびその周辺部分の概略断面図である。
【図8】液体現像剤循環装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る濃度検出装置の構成を模式的に示す図である。濃度検出装置は、液体現像剤を用いてシート上に画像を形成する湿式の画像形成装置に適用され、液体現像剤の濃度を検出するための装置である。特に、本実施形態で用いられる液体現像剤は、電気絶縁性のキャリア液と、キャリア液中に分散された着色粒子と、キャリア液中に溶解された樹脂(以下、溶解樹脂という)とを含み、濃度検出装置は、溶解樹脂の濃度を検出するための装置である。溶解樹脂は、着色粒子をシート上に定着させるための重要な要素である。液体現像剤については後で詳述する。
【0020】
濃度検出装置は、具体的には、後述するように現像装置14から回収された液体現像剤の濃度を調整する現像剤調整部に適用される。濃度検出装置は、貯留容器50と、回転機構Rと、回転速度検出部Sと、濃度検出部60とを含む。
【0021】
貯留容器50は、液体現像剤LDを貯留するものであって、液体現像剤LDを、第1の液位置LV1および第1の液位置LV1よりも上方に位置する第2の液位置LV2のいずれか一方の液位置で貯留する。第1の液位置LV1によって第1の液範囲LR1が規定され、第2の液位置LV2によって第2の液範囲LR2が規定されている。第1の液範囲LR1は、貯留容器50の底部から第1の液位置LV1にわたる範囲であり、第2の液範囲LR2は、第1の液位置LV1から第2の液位置LV2にわたる範囲である。
【0022】
貯留容器50には、供給管51、第1排出管52および第2排出管53が接続されている。供給管51には、供給ポンプ54が配設されている。供給ポンプ54が駆動されると、液体現像剤LDが供給管51を通って貯留容器50内に供給される。供給管51は、図1では第2の液位置LV2よりも上方に位置しているが、その位置は特に限定されず、第1の液位置LV1よりも下方に位置させてもよい。供給管51および供給ポンプ54は供給手段を構成する。
【0023】
第1排出管52は、第1の液位置LV1に対応した位置に第1排出口52aを有している。第1排出管52には、第1排出弁55が配設されている。第2排出管53は、第2の液位置LV2に対応した位置に第2排出口53aを有している。第2排出管53には、第2排出弁56が配設されている。液体現像剤LDが貯留容器50に供給されているとき、第1排出弁55が開状態とされると、液体現像剤LDは第1の液位置LV1に調整される。また、液体現像剤LDが貯留容器50に供給されているとき、第1排出弁55が閉状態とされると共に、第2排出弁56が開状態とされると、液体現像剤LDは第2の液位置LV2に調整される。第1排出管52における第1排出弁55よりも下流側部分と、第2排出管53における第2排出弁56よりも下流側部分とは合流する。その合流部分よりも下流側に排出ポンプを配設してもよい。第1排出管52および第1排出弁55と、第2排出管53および第2排出弁56とは排出手段を構成する。
【0024】
回転機構Rは、貯留容器50内に配設されている。回転機構Rは、第1回転部材57と、第2回転部材58と、第1回転部材57および第2回転部材58が固定された回転軸59と、駆動源Mとを含む。第1回転部材57は、第1の液位置LV1よりも下方にかつ第1の液範囲LR1内に配置されており、第2回転部材58は、第2の液位置LV2よりも下方にかつ第2の液範囲LR2内に配置されている。第1回転部材57および第2回転部材58は、図1では扁平な円柱の形状を有するが、それらの形状は特に限定されず、回転軸59を中心として対称なプロペラの形状を有していてもよいし、平板の形状を有していてもよい。また、第1回転部材57および第2回転部材58は同軸状態で回転軸59に固定されている。回転軸59には、駆動源Mが接続されている。駆動源Mは、例えばモータであり、一定の駆動力で回転軸59を回転させる。回転軸59の回転により、第1回転部材57は第1の液範囲LR1において液体現像剤LD中で回転し、第2回転部材58は第2の液範囲LR2において液体現像剤LD中で回転する。
【0025】
第1回転部材57および第2回転部材58は、回転に伴い、液体現像剤LDの粘度に応じて液体現像剤LDから抵抗を受ける。特に、溶解樹脂の濃度は液体現像剤LDの粘度に大きく影響するため、溶解樹脂の濃度が高いとき、液体現像剤LDの粘度が高くなり、第1回転部材57および第2回転部材58が液体現像剤LDから受ける抵抗は大きくなる。これにより、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度は低下する。一方、溶解樹脂の濃度が低いとき、液体現像剤LDの粘度が低くなり、前記抵抗は小さくなる。これにより、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度が大きくなる。つまり、前記抵抗が大きくなるにつれ、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度は小さくなり、前記抵抗が小さくなるにつれ、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度は大きくなる。
【0026】
また、液体現像剤LDが第1の液位置LV1に調整されているときと、液体現像剤LDが第2の液位置LV2に調整されているときとでは、液体現像剤LDが同一の粘度であっても、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度は異なる。液体現像剤LDが同一の粘度の場合、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度は、液体現像剤LDが第2の液位置LV2に調整されているときのほうが第2回転部材58にも抵抗が作用するため、小さくなる。
【0027】
回転速度検出部S(回転速度検出手段)は、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度を検出する。回転速度検出部Sは、例えば、発光素子と、受光素子と、第1回転部材57または第2回転部材58もしくは回転軸59に取り付けられた遮光板とを有し、遮光板が発光素子の光を遮光する回数を分単位で計測することで、第1回転部材57および第2回転部材58の回転速度を求める。回転速度検出部Sの構成は特に限定されない。なお、第1回転部材57および第2回転部材58は同一の回転速度を有するので、以下の説明では、第1回転部材57および第2回転部材58を、便宜的に単に回転部材という。
【0028】
濃度検出部60は、回転部材(第1回転部材57および第2回転部材58)の回転速度に基づいて溶解樹脂の濃度を検出する。濃度検出のために、濃度検出部60は、液体現像剤LDの粘度が特に溶解樹脂の濃度に応じて変化する特性を利用すると共に、液体現像剤LDが第1の液位置LV1に調整されているときに液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度が変化する特性と、液体現像剤LDが第2の液位置LV2に調整されているときに液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度が変化する特性とを利用する。
【0029】
上記特性を利用して溶解樹脂の濃度の検出を行うために、濃度検出部60は、第1記憶部61と、第2記憶部62と、回転速度判定部63と、換算部64とを含む。
【0030】
第1記憶部61は、液体現像剤LDが第1の液位置LV1に調整されている場合における回転部材57,58の回転速度と溶解樹脂の濃度との間の関係を示す第1テーブルを記憶する。第1テーブルは、液体現像剤LDが第1の液位置LV1に調整されている場合において回転部材57,58の回転速度が液体現像剤LDの粘度の変化に応じてどのように変化するのかを求める実験を行うことで、予め作成されたものである。図2は、実験により得られた、回転部材57,58の回転速度と液体現像剤LDの粘度との関係を示す第1曲線C1を示す。
【0031】
第1曲線C1の傾きから、液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度が変化する度合いが大きい領域(以下、第1領域R1という)と、前記度合いが小さい領域(以下、第2領域R2という)とが第1曲線C1において存在していることが分かる。回転速度の変化の度合いが大きいと、回転速度に基づいて検出される溶解樹脂の濃度の分解能が高くなる一方、回転速度の変化の度合いが小さいと、濃度の分解能が低下する。そのため、本実施形態では、第1領域R1のみにおける回転部材57,58の回転速度と溶解樹脂の濃度との間の関係を予め求めて、その関係を示す第1テーブルを作成している。また、本実施形態では、第2領域R2を濃度の検出のために用いない。このように、本実施形態では、濃度の分解能が高い第1領域R1を利用する一方、濃度の分解能が低い第2領域R2を利用しない。
【0032】
第2記憶部62は、液体現像剤LDが第2の液位置LV2に調整されている場合における回転部材57,58の回転速度と溶解樹脂の濃度との間の関係を示す第2テーブルを記憶する。第2テーブルは、液体現像剤LDが第2の液位置LV2に調整されている場合において回転部材57,58の回転速度が液体現像剤LDの粘度の変化に応じてどのように変化するのかを求める実験を行うことで、予め作成されたものである。図2は、第1曲線C1に加え、実験により得られた、回転部材57,58の回転速度と液体現像剤LDの粘度との関係を示す第2曲線C2を示す。
【0033】
第2曲線C2の傾きから、液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度が変化する度合いが大きい領域(以下、第3領域R3という)と、粘度の変化の度合いが小さいにも関わらず、回転速度の変化の度合いが大きい領域(以下、第4領域R4という)とが第2曲線C2において存在していることが分かる。第4領域R4では、粘度が所定値を超えると、粘度の変化の度合いの割には回転速度が急激に低下する。これは、液体現像剤LDが第2の液位置LV2に調整されているとき、第1回転部材57および第2回転部材58の両方に対して液体現像剤LDによる抵抗が作用し、回転部材の回転速度が急激に低下するためである。そのため、第4領域R4は、液体現像剤LDの粘度の変化に応じた回転速度の変化が起きない領域である。
【0034】
したがって、本実施形態では、第3領域R3のみにおける回転部材57,58の回転速度と溶解樹脂の濃度との間の関係を予め求めて、その関係を示す第2テーブルを作成している。また、本実施形態では、第4領域R4を濃度の検出のために用いない。このように、本実施形態では、濃度の分解能が高い第3領域R3を利用する一方、正確な濃度の分解能が得られない第4領域R4を利用しない。
【0035】
回転速度判定部63は、回転速度検出部Sによる検出に基づいて回転部材57,58の回転速度が所定値を超えているか否かを判定する。具体的には、回転速度判定部63は、液体現像剤LDが第1の液位置LV1に調整されているとき、回転速度が第1所定回転速度V1以下であるか否かを判定する。第1所定回転速度V1は、第1領域R1と第2領域R2との間の境界点に対応する回転速度である。
【0036】
また、回転速度判定部63は、液体現像剤LDは第2の液位置LV2に調整されているとき、回転速度が第2所定回転速度V2以上であるか否かを判定する。第2所定回転速度V2は、第3領域R3と第4領域R4との間の境界点に対応する回転速度である。
【0037】
換算部64は、回転速度判定部63の判定に応じて、供給管51の供給ポンプ54、第1排出管52の第1排出弁55、第2排出管53の第2排出弁56および駆動源Mを制御すると共に、第1テーブルおよび第2テーブルを選択的に参照して、回転部材57,58の回転速度を溶解樹脂の濃度に換算する。
【0038】
換算部64は、液体現像剤LDが第1の液位置LV1にある場合において回転部材57,58の回転速度が第1所定回転速度V1以下のとき、第1テーブルを参照して、回転部材57,58の回転速度を溶解樹脂の濃度に換算する第1換算を行い、回転部材57,58の回転速度が第1所定回転速度V1よりも大きいとき、液体現像剤LDを第2の液位置LV2に調整した後、第2テーブルを参照して、回転部材57,58の回転速度を溶解樹脂の濃度に換算する第2換算を行う。
【0039】
一方、換算部64は、液体現像剤LDが第2の液位置LV2にある場合において回転速度が第2所定回転速度V2以上のとき、第2換算を行い、回転速度が第2所定回転速度V2よりも小さいとき、液体現像剤LDを第1の液位置LV1に調整した後、第1換算を行う。
【0040】
換算部64による具体的な濃度換算動作について、図3のフローチャートを参照して説明する。
【0041】
溶解樹脂の濃度を検出するにあたり、換算部64は、まず、供給ポンプ54を制御して液体現像剤LDを貯留容器50に供給させると共に、第1排出弁55を制御して第1排出弁55を開状態とすることにより、液体現像剤LDの液位置を第1の液位置LV1に調整する(ステップS1)。次に、換算部64は駆動源Mを制御して回転部材57,58を回転させる(ステップS2)。回転部材57,58の回転速度は回転速度検出部Sによって得られる。そして、換算部64は、回転速度判定部63によって回転速度が第1所定回転速度V1以下であると判定されたとき(ステップS3においてYES)、第1テーブルを参照して第1換算を行う(ステップS4)。これにより、溶解樹脂の濃度が得られる。
【0042】
一方、回転速度判定部63によって回転速度が第1所定回転速度V1よりも大きいと判定されたとき(ステップS3においてNO)、換算部64は、供給ポンプ54を制御して液体現像剤LDを貯留容器50にさらに供給させると共に、第1排出弁55を制御して第1排出弁55を閉状態とし、第2排出弁56を制御して第2排出弁56を開状態とすることにより、液体現像剤LDを第2の液位置LV2に調整する(ステップS5)。そのため、第2回転部材58にも液体現像剤LDによる抵抗が作用するので、回転速度が低下する。これにより、液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転速度の変化の度合いが大きくなる。次に、換算部64は、第2テーブルを参照して第2換算を行う(ステップS6)。これにより、溶解樹脂の濃度が得られる。
【0043】
図3では、液体現像剤LDを最初に第1の液位置LV1に調整した後、濃度検出を行う場合につき説明したが、図4に示すように、液体現像剤LDを最初に第2の液位置LV2に調整した後に濃度検出を行ってもよい。その場合、換算部64は、まず、供給ポンプ54を制御して液体現像剤LDを貯留容器50に供給させると共に、第1排出弁55を制御して第1排出弁55を閉状態とし、第2排出弁56を制御して第2排出弁56を開状態することにより、液体現像剤LDの液位置を第2の液位置LV2に調整する(ステップS10)。次に、換算部64は駆動源Mを制御して回転部材57,58を回転させる(ステップS11)。回転部材57,58の回転速度は回転速度検出部Sによって得られる。そして、換算部64は、回転速度判定部63によって回転速度が第2所定回転速度V2以上であると判定されたとき(ステップS12においてYES)、第2テーブルを参照して第2換算を行う(ステップS13)。これにより、溶解樹脂の濃度が得られる。
【0044】
一方、回転速度判定部63によって回転速度が第2所定回転速度V2よりも小さいと判定されたとき(ステップS12においてNO)、換算部64は、第1排出弁55を制御して第1排出弁55を開状態とすることにより、液体現像剤LDを第1の液位置LV1に調整する(ステップS14)。そのため、第1回転部材57のみに液体現像剤LDによる抵抗が作用するので、回転速度が大きくなる。これにより、液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転速度の変化の度合いが大きくなる。次に、換算部64は、第1テーブルを参照して第1換算を行う(ステップS15)。これにより、溶解樹脂の濃度が得られる。
【0045】
以上説明した本実施形態に係る濃度検出装置では、液体現像剤LDが第1の液位置LV1にあるときに液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度が変化する度合いが大きい第1領域R1において回転速度と溶解樹脂の濃度との関係を示す第1テーブルと、液体現像剤LDが第2の液位置LV2にあるときに液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度が変化する度合いが大きい第3領域R3において回転速度と溶解樹脂の濃度との関係を示す第2テーブルとを選択的に参照して、回転部材57,58の回転速度を溶解樹脂の濃度に換算している(第1換算および第2換算の選択的使用)。このように、本実施形態に係る濃度検出装置は、液体現像剤LDの粘度の変化に応じて回転部材57,58の回転速度の変化が大きい第1領域R1および第3領域R3を用いるので、広い回転速度のレンジで、つまり広い粘度のレンジで、溶解樹脂の濃度を検出することができる。また、第1領域R1および第3領域R3が用いられているので、濃度の分解能が高くなり、検出精度が向上する。これにより、画像形成装置の現像剤調整部は、濃度検出装置が検出した正確な溶解樹脂の濃度に基づいて溶解樹脂の濃度を調整することができる。その結果、着色粒子の定着状態が良い高画質の画像を得ることができる。
【0046】
(湿式画像形成装置)
図5は、上述の濃度検出装置が組み込まれたカラープリンタ1(湿式画像形成装置)の概略構成図であり、図6は、液体現像剤循環装置の部分を除いたカラープリンタ1の概略断面図である。なお、図5および図6は、画像形成装置としてカラープリンタを例示している。
【0047】
図5に示される如く、カラープリンタ1は、画像形成のための様々なユニットや部品が収納される上側本体部1Aと、この上側本体部1Aの下部に配置され、各色用の液体現像剤循環装置LY、LM、LC、LBが収納される下側本体部1Bとから構成されている。
【0048】
図6に示すように、上側本体部1Aには、画像データに基づいて画像を形成するタンデム式の画像形成部2と、シートを収容するシート収納部3と、画像形成部2で形成された画像をシート上に転写する二次転写部4と、画像の定着が完了したシートを排紙する排出部6と、シート収納部3から排出部6までシートを搬送するシート搬送部7とが含まれている。
【0049】
画像形成部2は、中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21のクリーニング部22と、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(Bk)の各色にそれぞれ対応した画像形成ユニットFY、FM、FC、及びFBとを備える。
【0050】
中間転写ベルト21は、導電性を有する、幅広の、無端状のベルト部材であり、図1において時計回りに循環駆動される。
【0051】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、中間転写ベルト21の下側走行面に沿って並べて配置されている。
【0052】
画像形成ユニットFY、FM、FC、FBは、感光体ドラム10と、帯電装置11と、LED露光装置12と、液体現像装置14と、一次転写ローラ20と、クリーニング装置26と、除電装置13と、キャリア液除去ローラ30とを備える。
【0053】
円柱状の感光体ドラム10の表面(周面)は、帯電(本実施形態ではプラス極性に帯電)された着色粒子で顕像化された画像を担持可能である。図示される感光体ドラム10は、反時計回りに回転可能である。帯電装置11は、感光体ドラム10の表面を一様に帯電させる。
【0054】
LED露光装置12は、LEDを光源として有し、外部の機器から入力された画像データに基づいて、一様に帯電された感光体ドラム10の表面に光を照射する。これにより、感光体ドラム10の表面に、画像データに基づいた静電潜像が形成される。
【0055】
液体現像装置14は、液体現像剤を、感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像に対向するように保持する。これにより、帯電された液体現像剤で感光体ドラム10表面の静電潜像が顕像化され、画像として現像される。
【0056】
図7に示されるように、液体現像装置14は、現像容器140、現像ローラ141、供給ローラ142、支持ローラ143、供給ローラブレード144、現像クリーニングブレード145、現像剤回収装置146及び現像ローラ帯電装置147を含む。
【0057】
現像容器140は、その内部に、液体現像剤が供給され、液体現像剤を貯留する。液体現像剤は、濃度調整が予め行われた後、供給ノズル278から現像容器140の内部へ供給される。その場合、液体現像剤は、供給ローラ142と支持ローラ143とのニップ部へ向けて供給され、余剰分は支持ローラ143の下方へ落下し、現像容器140の底部に貯留される。余剰の液体現像剤は回収され、再利用される。
【0058】
支持ローラ143は現像容器140の略中央に配置され、供給ローラ142に下方から当接されてニップ部を形成する。供給ローラ142は、支持ローラ143の直上ではなく、供給ノズル278から離れる方向にずれて配置される。供給ローラ142の周面には液体現像剤を保持するための溝が設けられる。図中に点線矢印で示すように、支持ローラ143は反時計方向に、供給ローラ142は時計方向に回転する。
【0059】
供給ノズル278から供給される液体現像剤は、前記ニップ部で一時的に滞留され、両ローラ142,143の回転に伴って、供給ローラ142の溝に保持された状態で上方へ運ばれる。供給ローラブレード144は、供給ローラ142の周面に圧接され、供給ローラ142の溝に保持される液体現像剤の量が所定量になるように規制する。供給ローラブレード144により掻き落とされた余剰の液体現像剤は、現像容器140の底部に貯留される。
【0060】
現像ローラ141は、現像容器140の上部開口部に、供給ローラ142と接するように配置される。現像ローラ141は供給ローラ142と同方向に回転される。この結果、現像ローラ141と供給ローラ142とが当接するニップ部では、現像ローラ141の表面は供給ローラ142の表面と逆方向に移動する。これにより、現像ローラ141の周面には、供給ローラ142の周面に保持された液体現像剤が受け渡される。供給ローラ142の溝に保持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)が所定値に規制されているので、現像ローラ141の表面に担持される液体現像剤の量(液体現像剤の薄層の厚み)もまた所定値に保たれる。
【0061】
現像ローラ帯電装置147は、液体現像剤の着色粒子の帯電極性と同極性のバイアス電位(本実施形態ではプラス極性のバイアス電位)を現像ローラ141に外表面側から与えること(現像コロナチャージ)により、現像ローラ141の表面に担持された液体現像剤の薄層中の着色粒子を現像ローラ141の表面側に移動させる。この結果、液体現像剤の薄層中の着色粒子が電界的作用により現像ローラ141側に集合・圧縮され(コンパクション処理)、現像ローラ141側に高濃度の着色粒子の層が形成される。この後、感光体ドラム10の表面の静電潜像の電位と現像ローラ141に印加される現像電界との電位差によって、液体現像剤の薄層は、感光体ドラム10に供給されて、感光体ドラム10上の静電潜像が現像される。
【0062】
現像クリーニングブレード145は、現像ローラ141の感光体ドラム10との接触部の回転方向下流側に接触するように配置され、感光体ドラム10への現像動作を終えた現像ローラ141の表面の液体現像剤を除去する。
【0063】
現像剤回収装置146は、現像クリーニングブレード145で除去された液体現像剤を回収して、液体現像剤循環装置の第1パイプ771へ液体現像剤を送り出す。
【0064】
一次転写ローラ20は、中間転写ベルト21と接触している位置で、中間転写ベルト21に着色粒子と逆極性(本実施形態ではマイナス)の電圧を印加する。中間転写ベルト21は導電性を有するので、この印加電圧によって、中間転写ベルト21の表面側及びその周辺に着色粒子が引き付けられる。つまり、感光体ドラム10の表面に現像された画像が中間転写ベルト21に転写される。
【0065】
クリーニング装置26は、感光体ドラム10から中間転写ベルト21に転写されずに残留した液体現像剤をクリーニングするための装置である。クリーニング装置26は、図7に示すように、残留現像剤搬送スクリュー261と、クリーニングブレード262とを備える。残留現像剤搬送スクリュー261は、クリーニングブレード262によって掻き取られ、クリーニング装置26内に収納された残留現像剤をクリーニング装置26の外部に搬送する。
【0066】
除電装置13は、除電用の光源を有し、次の周回による画像形成に備えて、クリーニングブレード262による液体現像剤の除去後、感光体ドラム10の表面を光源からの光によって除電する。
【0067】
略円柱状のキャリア液除去ローラ30は、感光体ドラム10と中間転写ベルト21とが接触する位置よりも二次転写部4が配置されている側に配置されており、中間転写ベルト21の表面からキャリア液を除去する。
【0068】
図6に示されるシート収容部3は、上側本体部1Aの下部に配置されると共に、シートを収容する給紙カセット(図示せず)を含む。
【0069】
二次転写部4は、中間転写ベルト21上に形成された画像をシートに二次転写する。二次転写部4は、中間転写ベルト21を支持する支持ローラ41と、支持ローラ41に対向して配置された二次転写ローラ42とを有する。
【0070】
二次転写部4の上側には、搬送ローラ8,8が備えられている。上側本体部1Aの上面に設けられた排出部6には、画像が転写され、画像の定着が完了したシートが排出される。シート搬送部7は、複数の搬送ローラ対を備え、シート収容部3から、二次転写部4を経て、排出部6までシートを搬送する。
【0071】
本実施形態に係る上側本体部1Aでは、次に説明する液体現像剤を用いることにより、シートに転写された画像を熱や光のエネルギーを用いてシートに定着させる定着工程を経ることなく、シートに転写された画像をシートに定着させることができる。
【0072】
(液体現像剤)
本実施形態に係る液体現像剤は、電気絶縁性のキャリア液と、キャリア液中に分散された着色粒子と、キャリア液中に溶解された溶解樹脂であるセルロースエーテルとを含有する。
【0073】
一般に、電気絶縁性のキャリア液は液体キャリアの役割を果たし、得られる液体現像剤の電気絶縁性を高めることを目的として用いられる。電気絶縁性のキャリア液としては、電気絶縁性を有するものであって、例えば、25℃における体積抵抗が1010Ω・cm以上(換言すれば導電率が100pS/cm以下)の有機溶剤が好ましい。
【0074】
本実施形態で使用し得るキャリア液としては、前記物性に加えて、セルロースエーテルを溶解させることができるもの(セルロースエーテルの溶解度が相対的に高いもの)が好ましい。そのようなキャリア液としては、例えば、植物性の油、動物性の油、鉱物性の油等の油類が挙げられ、これらのうちでも植物性の油が好ましく、さらには植物性の油のうちでも、トール油脂肪酸(主成分:オレイン酸、リノール酸)が好ましい。
【0075】
本実施形態では、着色粒子として、顔料を結着樹脂に分散させたトナーではなく、顔料そのものを用いる。そのような顔料としては、例えば、従来公知の有機顔料や無機顔料を特に限定することなく用いることができる。
【0076】
本実施形態では、液体現像剤は、溶解樹脂であるセルロースエーテルを含有する。セルロースエーテルは、セルロース分子内の水酸基がアルコキシ基に置換された高分子である。置換率は、45〜49.5%が好ましい。また、アルコキシ基のアルキル部分が例えばヒドロキシル基等によって置換されていてもよい。セルロースエーテルによって形成された被膜は、強靭性、熱安定性等に優れている。
【0077】
本実施形態に係る液体現像剤では、セルロースエーテルは、キャリア液に溶解した状態で存在する。その結果、画像のシートへの定着のメカニズムはおよそ次のようなものである。すなわち、液体現像装置14の現像容器140内に貯留されている液体現像剤中のセルロースエーテルは、キャリア液に溶解した状態で存在している。この状態は、現像ローラ141上、感光体ドラム10上、中間転写ベルト21上においても同様である。もっとも、液体現像剤中に占めるキャリア液の比率は次第に低減していくが、液体現像剤中のセルロースエーテルはキャリア液に溶解した状態のままである。そして、二次転写部4により、画像が中間転写ベルト21からシートに転写されると、キャリア液中のセルロースエーテルと着色粒子(顔料)とはシートの表面に残留する一方、キャリア液はシートの内部に吸収される。これに伴い、シートの表面上においてキャリア液中のセルロースエーテルの濃度が高くなり、飽和溶解量を超える。飽和溶解量を超えたセルロースエーテルは、シートの表面上に留まっている顔料を被覆しつつ、シートの表面上に留まって被膜を形成する。このセルロースエーテルの被膜によって顔料がシートに定着されることとなり、熱エネルギーや光エネルギーを消費することなく、顔料つまりシートに転写された画像をシートに定着させることができ、湿式画像形成装置における消費エネルギーの削減が図られる。これは、環境保護の面で極めて有利な作用である。また、本実施形態に係る湿式画像形成装置1は、従来から用いられてきた熱や光のエネルギーを用いた定着部が不要となり、湿式画像形成装置1の簡素化やコストダウンが図られる。
【0078】
液体現像剤中のセルロースエーテルの含有量は1〜6質量%であることが好ましい。より好ましくは、2質量%以上であり、さらに好ましくは、3質量%以上である。また、より好ましくは、5質量%以下であり、さらに好ましくは、4質量%以下である。セルロースエーテルの含有量が1質量%未満であると、シートの表面上に留まるセルロースエーテル被膜の量が少なくなり過ぎ、造膜性ひいては定着性が過度に不足する可能性がある。セルロースエーテルの含有量が6質量%を超えると、シートの表面上に留まるセルロースエーテル被膜の量が多くなり過ぎ、被膜の乾燥性が過度に低下し、被膜の粘着性(タック性)が過度に大きくなり、画像の耐擦過性が過度に低下する可能性がある。また、現像性が不足し、画像濃度が低くなり、かぶりが多くなる可能性もある。
【0079】
(液体現像剤循環装置)
次に、液体現像剤の供給及び回収系統について説明する。図8は、一つの液体現像剤循環装置LYの全体の概略を示すブロック図である。他の液体現像剤循環装置LM、LC、LBも同じ構成である。この液体現像剤循環装置LYは、現像装置14へ液体現像剤を供給すると共に、現像に利用されずに回収された液体現像剤を循環させ、再利用するための装置である。
【0080】
液体現像剤循環装置LYは、回収現像剤タンク71、現像剤調整部72、顔料タンク73、樹脂タンク74、キャリアタンク75、現像剤リザーブタンク76及び複数のポンプP1〜P8を備えている。
【0081】
回収現像剤タンク71は、現像装置14に第1パイプ771を介して接続され、現像装置14側から回収された液体現像剤を収容可能なタンクである。第1パイプ771は、現像剤回収装置146に接続され、第1パイプ771の途中には、第1ポンプP1が配置され、第1ポンプP1の駆動により第1パイプ771を通して現像剤回収装置146によって回収された残存液体現像剤が、回収現像剤タンク71に収集される。また、回収現像剤タンク71には、現像容器140から延びる図略のパイプが接続されている。このパイプにより、現像容器140中に残存している液体現像剤が回収現像剤タンク71に回収される。
【0082】
現像剤調整部72は、濃度が適正に調整された液体現像剤LDを調製すると共に、後述する濃度検出装置723の濃度検出に基づいて液体現像剤LDの濃度を調整する。回収現像剤タンク71に接続された現像剤収容容器720を有する。現像剤収容容器720は、回収された残存液体現像剤LDと、顔料と、樹脂溶液及びキャリア液を加えることで、濃度が適正範囲に調整された液体現像剤LDを調製するための容器である。現像剤収容容器720は回収現像剤タンク71と第2パイプ772を介して接続されており、この第2パイプ772には第2ポンプP2が取り付けられている。回収現像剤タンク71内の液体現像剤LDは、第2ポンプP2の駆動により第3パイプ83を通して現像剤収容容器72に送られる。
【0083】
現像剤収容容器72内には、液体現像剤量LDを検出するために、回転羽根721及び回転羽根721を回転させる駆動軸722を含む液面検出装置が配置されている。回転羽根721は、現像剤収容容器272内における液体現像剤LDの液面高さが所定高さ位置以上となったときに、該液体現像剤LDと接触するように配置されている。駆動軸722はモータ(図略)で回転駆動され、回転羽根721が液体現像剤LDの液面と接触することに伴う前記モータの負荷変化に基づいて、液体現像剤量が検出される。
【0084】
顔料タンク73には、各色の画像形成に寄与する顔料の分散液が貯留されている。結着樹脂タンク74には、セルロースエーテルが絶縁性有機溶剤に溶解された状態で貯留されている。キャリアタンク75には、キャリア液が貯留されている。
【0085】
顔料タンク73と現像剤収容容器72とは第3パイプ773で接続されており、顔料分散液は、第3パイプ773の途中に設けられた第3ポンプP3の駆動によって現像剤収容容器72へ供給される。結着樹脂タンク74と現像剤収容容器72とは第4パイプ774で接続されており、セルロースエーテルは、第4パイプ774の途中に設けられた第4ポンプP4の駆動によって現像剤収容容器72へ供給される。キャリアタンク75と現像剤収容容器72とは第5パイプ775で接続されており、キャリア液は、第5パイプ775の途中に設けられた第5ポンプP5の駆動によって現像剤収容容器72へ供給される。
【0086】
現像剤リザーブタンク76は、現像装置14に補給する液体現像剤を収納するタンクである。現像剤リザーブタンク76は、現像剤収容容器720と第6パイプ776で接続されており、第6パイプ776の途中に設けられた第6ポンプP6の駆動によって、現像剤収容容器720から液体現像剤LDの供給を受ける。さらに現像剤リザーブタンク76は、現像装置14内に液体現像剤を供給する上述の供給ノズル278と第7パイプ777で接続されており、前記液体現像剤の供給は、第7パイプ777に取り付けられた第7ポンプP7の駆動によって実行される。
【0087】
現像剤収容容器720内の液体現像剤の濃度は、濃度検出装置723による液体現像剤LDの濃度、特に溶解樹脂の濃度の検出結果に基づいて調整される。濃度検出装置723として、図1〜図4を参照して説明した濃度検出装置が用いられる。現像剤収容容器720には、現像剤収容容器720の底部に接続された循環管路778が付設されている。循環管路778には、濃度検出装置723及び第8ポンプP8が配設されている。第8ポンプP8の駆動によって、濃度検出装置723の貯留容器へ液体現像剤LDが取り入れられ、溶解樹脂の濃度測定後、液体現像剤LDは現像剤収容容器720へ戻される。図略の制御部は、濃度検出装置723の濃度測定結果に基づき、第3〜第5ポンプP3〜P5を適宜駆動させ、液体現像剤の濃度を調整して、液体現像剤を調製する。
【符号の説明】
【0088】
1 画像形成装置
2 画像形成部
50 貯留容器
51 供給管
52 第1排出管
53 第2排出管
54 供給ポンプ
56 第1排出弁
57 第1回転部材
58 第2回転部材
59 回転軸
60 濃度検出部
61 第1記憶部
62 第2記憶部
63 回転速度判定部
64 換算部
C1 第1曲線
C2 第2曲線
LB,LC,LM,LY 液体現像剤循環装置
LD 液体現像剤
LV1 第1の液位置
LV2 第2の液位置
LR1 第1の液範囲
LR2 第2の液範囲
M 駆動源
R 回転機構
R1〜R4 第1〜第4領域
S 回転速度検出部
V1 第1所定回転速度
V2 第2所定回転速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘度が変化する液体現像剤の濃度を検出する濃度検出装置であって、
前記液体現像剤を、第1の液位置および前記第1の液位置よりも上方に位置する第2の液位置のいずれか一方の液位置で貯留する貯留容器と、
前記液体現像剤を前記貯留容器に供給する供給手段と、
前記液体現像剤を前記貯留容器から排出する排出手段と、
前記第1の液位置によって規定される第1の液範囲から前記第2の液位置によって規定される第2の液範囲にかけて配置された回転可能な回転部材と、
前記回転部材を一定の駆動力で回転させる駆動源と、
前記回転部材の回転速度を検出する回転速度検出手段と、
前記供給手段および前記排出手段を制御すると共に、前記回転速度を前記液体現像剤の前記濃度に換算する第1換算および第2換算を選択的に行う濃度検出部と、
を備え、
前記濃度検出部は、
前記液体現像剤が前記第1の液位置にある場合において前記回転速度が第1所定回転速度以下のとき、前記第1換算を行い、前記回転速度が前記第1所定回転速度よりも大きいとき、前記液体現像剤が前記第2の液位置に調整されるように前記供給手段を制御した後、前記第2換算を行い、
一方、前記液体現像剤が前記第2の液位置にある場合において前記回転速度が第2所定回転速度以上のとき、前記第2換算を行い、前記回転速度が前記第2所定回転速度よりも小さいとき、前記液体現像剤が前記第1の液位置に調整されるように前記排出手段を制御した後、前記第1換算を行い、
前記第1換算は、前記液体現像剤が前記第1の液位置にあるときに前記粘度の変化に応じて前記回転速度が変化する度合いが大きい第1領域において前記回転速度と前記液体現像剤の前記濃度との関係を予め求めて作成した第1テーブルを参照することで、前記回転速度から前記濃度への換算を行うものであり、
前記第1所定回転速度は、前記第1領域と、前記粘度の変化に応じて前記回転速度が変化する度合いが小さい第2領域との間の境界点に対応する回転速度であり、
前記第2換算は、前記液体現像剤が前記第2の液位置にあるときに前記粘度の変化に応じて前記回転速度が変化する度合いが大きい第3領域において前記回転速度と前記濃度との関係を予め求めて作成した第2テーブルを参照することで、前記回転速度から前記濃度への換算を行うものであり、
前記第2所定回転速度は、前記第3領域と、前記粘度の変化に応じた前記回転速度の変化が起きない第4領域との間の境界点に対応する回転速度である濃度検出装置。
【請求項2】
液体現像剤を用いてシート上に画像を形成する画像形成部と、
請求項1に記載の濃度検出装置と、
前記濃度検出装置による検出に基づいて前記液体現像剤の濃度を調整する調整部と、
を備えた画像形成装置。
【請求項3】
請求項2に記載の画像形成装置において、
前記液体現像剤は、キャリア液と、前記キャリア液中に分散された顔料と、前記キャリア液中に溶解された溶解樹脂とを含み、
前記溶解樹脂は、前記シート上で前記顔料を定着させるために用いられており、
前記濃度検出装置は、前記溶解樹脂の濃度を検出するものであり、
前記第1テーブルは、前記第1領域における前記回転速度と前記溶解樹脂の前記濃度との関係を予め求めて作成されたものであり、
前記第2テーブルは、前記第3領域における前記回転速度と前記溶解樹脂の前記濃度との関係を予め求めて作成されたものであり、
前記調整部は、前記濃度検出装置による検出に基づいて前記溶解樹脂の前記濃度を調整する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−128087(P2012−128087A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−278198(P2010−278198)
【出願日】平成22年12月14日(2010.12.14)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリュ−ションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】