説明

濃度測定装置

【課題】 懸濁液中の気泡を分離した状態にして懸濁液中の固形物の濃度を正確に且つ連続的に計測できる濃度測定装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 懸濁液送液用本管Bを流れる懸濁液を取り込んで懸濁液中の固形物濃度を測定する円筒状の形態をした測定容器1が、懸濁液を内部に供給する懸濁液供給口1aと、該懸濁液を外部に排出するべく懸濁液供給口1aから軸方向に離間した位置に設けられた排出口1bとを有し、懸濁液供給口1aから供給された懸濁液が測定容器1内部で渦巻き状の流れを形成しつつ前記排出口1bへ向かって流れるように構成し、懸濁液内の固形物の濃度を検出するべく超音波センサー9の超音波発信子9Aと超音波受信子9Bを、該超音波発信子9Aから測定容器1の渦巻き状の流れの部位であって該計測容器1内の外径側の部位を、超音波が通過するように設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気体と固形物が液体内に混入した懸濁液中の固形物の濃度を正確に測定することができる濃度測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
懸濁液、例えばその一種である下水や処理水(廃液もという)は、その処理を適正におこなうために、該廃液中の固形物(懸濁物質)の濃度が測定される。
【0003】
従来、かかる廃液中等の懸濁液中の固形物の濃度を測定するのに、超音波を廃液中に照射して固形物の濃度を計る超音波式の濃度測定装置が用いられている。
【0004】
前記濃度測定装置は、対になるように超音波発信子と超音波受信子とを、間に測定する懸濁液が位置するように配置し、前記超音波発信子から超音波受信子に向けて超音波を発信して、該超音波受信子で受信した超音波の減衰状態から、懸濁液中の固形物の濃度を計測するよう構成されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−98158号公報。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記濃度測定装置の場合には、前記懸濁液中に気泡が混入していると、該気泡によって前記超音波の減衰状態が影響を受け、正確な固形物の濃度を測定することができない。
【0007】
このため、従来の濃度測定装置の場合、測定すべき懸濁液を測定容器内にサンプリング状に採取して、かかる測定容器内の懸濁液を加圧することによって気泡の容積を小さくすることによって、バッチ式に測定するものが専ら使用されていた。
【0008】
本発明は、このような状況に鑑みておこなわれたもので、簡単な構成によって、前記懸濁液中の気泡を分離して、懸濁液中の固形物の濃度を正確に且つ連続式に計測することができる濃度測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明にかかる濃度測定装置は、懸濁液送液用本管を流れる懸濁液を取り込んで懸濁液中の固形物濃度を測定する円筒状の形態をした測定容器が、懸濁液を内部に供給する懸濁液供給口と、該懸濁液を外部に排出するべく前記懸濁液供給口から軸方向に離間した位置に設けられた排出口とを有するとともに、
前記懸濁液供給口から供給された懸濁液が測定容器内部で渦巻き状の流れを形成しつつ前記排出口へ向かって流れるように構成し、
前記懸濁液内の固形物の濃度を検出するべく超音波センサーの超音波発信子と超音波受信子を、該超音波発信子から前記測定容器の前記渦巻き状の流れの部位であって該計測容器内の外径側の部位を、超音波が通過するように、設けたことを特徴とする。
【0010】
前述のように構成された濃度測定装置によれば、懸濁液送液用本管を流れる懸濁液を前記懸濁液供給口から前記測定容器内に連続的に取り込み、測定容器内で懸濁液が測定容器の側周壁に沿って渦巻き状になって排出口側へ向かって流れると、かかる渦巻き状になって測定容器内を排出口側に向かって流れる際に、遠心力の作用によって、懸濁液中の比重の大きい固形物は外径側の部位に、比重の小さい気泡は測定容器の軸方向の中心部(内径部)に、それぞれ集まるように分離される。この結果、前記超音波が通過する測定容器内の外径側の部位には気泡がない状態となり、かかる部位の懸濁液を測定すれば気泡の影響のない濃度を測定することができる。
従って、本濃度測定装置によれば、気泡が混入している懸濁液であっても、気泡に影響されずに、懸濁液内の固形物の濃度を、正確に、且つ連続的に、測定することが可能となる。
【0011】
前記濃度測定装置において、前記測定容器内に渦巻き状の流れを形成すべく、前記懸濁液供給口を、該測定容器の側周壁に対して周方向から径方向へ傾けて懸濁液を内部へ吐出するように設けると、特段に渦巻き状の流れを形成するための構成と動力が不要な優れた構成となる。
しかし、前記渦巻き状の流れを形成すべく、羽根等を測定容器内に設けてもよいことは言うまでもない。
【0012】
前記濃度測定装置において、前記測定容器の懸濁液供給口が、懸濁液送液用本管内部と、取出し管路を介して接続されるとともに、前記排出口が、懸濁液送液用本管内部と、戻し管路を介して接続され、前記取出し管路と戻し管路に通液量を調整する調整バルブをそれぞれ設けると、測定容器内への懸濁液の流量と流速を変化させることができ、また測定容器内の圧力を変化(昇圧)させることができる。この結果、懸濁液の粘度や種類が変化しても又は気泡の状態が異なるものであっても、気泡のない状態で懸濁液中の固形物濃度を測定することが可能となる。
【0013】
前記濃度測定装置において、前記取出し管路に懸濁液供給用のポンプを介装すると、本管を流れる懸濁液の流速が小さい場合や粘度の高い状態の懸濁液であっても、前記測定容器内で好ましい状態の渦巻き流を発生させることが可能となる。
【0014】
前記濃度測定装置において、前記調整バルブのバルブ開度が制御装置の制御によって変更可能に構成されるとともに、前記ポンプの回転数が制御装置の制御によって変更可能に構成されていると、前記制御装置によって、測定する懸濁液の粘度や種類が変更されても、前記ポンプの回転数や前記調整バルブのバルブ開度を最も最適な状態に調整して、測定容器内で好ましい状態の渦巻き流を発生させて、気泡が含まれない状態の懸濁液中の固形物濃度を測定することが可能となる。
【0015】
前記濃度測定装置において、前記測定容器の少なくとも前記超音波発信子と超音波受信子間の一部分が透明であると、測定者が視認しながら、気泡が測定容器の軸方向の中央部が集まるように、前記ポンプの回転数や前記調整バルブの開度を調整することが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
前述のように構成された本発明にかかる濃度測定装置によれば、簡単な構成によって、前記懸濁液中の気泡を分離して、懸濁液中の固形物の濃度を正確に計測することができる濃度測定装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明にかかる濃度測定装置の構成を概念的に示した図である。
【図2】図1に示す濃度測定装置の制御装置を含む全体の構成を概念的に示した全体図である。
【図3】図1,図2に示す測定容器の上流部に配置された取出し管路と懸濁液供給口の構成を示す図で、(a)は斜視図、(b)は(a)のb−b矢視図、(c)は(a)のc−c矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施例にかかる懸濁液中の固形物の濃度測定装置について、図面を参照しながら説明する。
(実施例)
図1,図2において、Aは濃度測定装置で、かかる濃度測定装置Aは、内部に懸濁液を入れて懸濁液中の固形物の濃度を測定する測定容器1と、該測定容器1の懸濁液供給口1aと懸濁液送液用本管Bとを接続する取出し管路2と、前記測定容器1内の懸濁液を排出する排出口1bと懸濁液送液用本管Bとを接続する戻し管路3と、前記取出し管路2の分岐部分の後流側に各配置された第1調整バルブ4Aと第2調整バルブ4Bと、前記取出し管路2の前記分岐部分の上流方に配設された第3調整バルブ5と、前記取出し管路2の途中に配置され懸濁液を強制的に前記測定容器1側へ圧送するためのポンプPと、前記戻し管路3に配設された第4調整バルブ7とを有する。また、前記測定容器1の一部には、内部の様子(気泡の有無の状態等)が見えるように設けられた覗き窓8が設けられている。さらに、本濃度測定装置Aは、前記測定容器1内の外径部に対をなすように配設された超音波発信子9Aと超音波受信子9Bを具備した超音波センサー9を有する。
また、本濃度測定装置Aは、前記ポンプPの回転数、第1〜第4調整バルブ4A,4B,5,7の開度等を制御し前記超音波センサー9からの検出信号を受信して該検出信号から固形物の濃度を算出する制御装置10(図2参照)を有する。
【0019】
ところで、前記測定容器1は、全体が概略円筒状の形態をしており、この実施例の場合には、先端部(下流部)1Tが、半球状体の形態に形成されている。また、本測定容器1の基端部(上流部)1Bは、円筒状の管をその軸方向(長手方向)に直交する方向で切断しそこに円板の蓋(フランジ等)を設けたような形態に形成されている。
そして、前記基端部1Bの側周壁1Fには、該側周壁1Fに対して周方向からやや径方向に傾けて懸濁液を測定容器1内へ吐出する前記懸濁液供給口1aが対をなすように形成され、かかる懸濁液供給口1aは、前記取出し管路2と液密式に連結されている。つまり、この懸濁液供給口1aと前記取出し管路2は、立体的に表した図3(a)及びそのb−b矢視平面図である図3(b)に図示するように、該取出し管路2の長手方向に延びる中心線6が測定容器1の側周壁1Fに対して、その周方向(接線方向)からやや円筒状の測定容器1の軸方向の中心側に向けてやや傾斜(周方向となる接線12方向に対して傾斜角A1で傾斜)するよう対をなして設けられる。この実施例の場合、前記傾斜角A1は25〜35度程度になっているが、かかる角度に限定されるものでなく、計測しようとする懸濁液の粘度や流速等によって適宜設定されればよい。例えば、前記傾斜角A1は5〜50度程度であってよく、より好ましくは10〜40度程度であればよい。
さらに好ましくは、前記傾斜角A1が25〜35度程度になっていることである。
【0020】
また、かかる懸濁液供給口1aと前記取出し管路2は、図3(a)及びそのc−c矢視側面図である図3(c)に図示するように、測定容器1の軸方向(長手方向)に直交する線11に対して該測定容器1の先端側へやや傾斜(線11に対して傾斜角A2で傾斜)するよう設けられている。この実施例の場合、前記傾斜角A2は15〜25度程度になっているが、かかる角度に限定されるものでなく、計測しようとする懸濁液の粘度や流速等によって適宜設定されればよい。例えば、1〜40度程度であってよく、より好ましくは3〜30度程度であればよい。
さらに好ましくは、前記傾斜角A2が15〜25度程度になっていることである。
【0021】
また、前記ポンプPは、吐出量が変更可能に構成された形式のポンプ(可変ポンプ)で、この実施例の場合には、該ポンプPの電動モータの回転数が変更可能に構成されている形式のポンプで構成されている。
前記吐出量の変更は、電動モータの回転数の変更によっておこなわれる形式に限定されるものでなく、他の形式のポンプ、例えば、ベーンの傾斜角が変更になるような形式の可変ポンプであってもよい。
【0022】
また、前記第1〜第4調整バルブ4A,4B,5,7の開度の変更は、各バルブに配設された電動モータあるいはソレノイド等の動作によっておこなわれるものであればよい。
【0023】
そして、図2に示す如く、前記ポンプPは、前記制御装置10と信号線S1を介して接続されるとともに、前記第1〜第4調整バルブ4A,4B,5,7は、前記制御装置10とそれぞれ信号線S4a,S4b,S5,S7を介して接続され、かかる制御装置10によって動作制御されるように構成されている。
また、前記超音波センサー9は、前記制御装置10と信号線S9を介して接続され、検出データを制御装置10へ送信するよう構成されている。
【0024】
また、前記超音波センサー9は、前記超音波受信子9Bで受信された超音波が、懸濁液中の固形物に衝突することに起因して、前記超音波発信子9Aから発射された超音波に比べてどの程度減衰しているかによって、懸濁液中の固形物濃度を検出するような形態のものが採用されている。
【0025】
そして、前述のように構成された本実施例にかかる濃度測定装置の場合、懸濁液中の固形物濃度を測定する際、以下のように作用する。以下、本濃度測定装置の作用とともに前記制御装置10の制御内容について説明する。
【0026】
まず、測定者が、本装置のメインスイッチをONにすると、前記制御装置10は、前記第1〜第4調整バルブ4A,4B,5,7を初期状態(例えば、全開の状態に対して60パーセント開になる角度)まで開くように制御する。
続いて、あるいは同時に、前記ポンプPを初期回転数(例えば、650rpm)で回転させる。
【0027】
かかる状態で、懸濁液送液用本管B内を流れている気泡を含んだ懸濁液が、前記取出し管路2を介して、前記懸濁液供給口1aから前記測定容器1内に、供給(圧送)される。かかる測定容器1内に供給される際、前述のように、前記取出し管路2と前記懸濁液供給口1aが傾斜角A1,A2の角度だけ傾斜して配置されていることから、また、前述のように、懸濁液供給口1aが周方向に対をなすように配設されていることから、測定容器1内で懸濁液が側周壁1Fの内面に沿って渦巻き状になって、前記排出口1bへ向かって流れる。
【0028】
このため、遠心力によって、懸濁液内に含まれ比重の大きい固形物は測定容器内の外周部へ移動し、一方比重の小さい気泡は測定容器の軸方向の中心部(内径部)に集まる。この結果、前記超音波が通過する測定容器1内の外径部には気泡がない状態の懸濁液が存在することになる。
【0029】
測定者は、測定容器1の前記超音波センサー9が配置されている外径部に、気泡が存在しないか否か、前記覗き窓8から目で確認し、気泡が中心部分に集まり外径部に存在しない状態であれば、そのときの検出信号に基づいて、前記制御装置10が算出した固形物の濃度を、測定値として採用する。
【0030】
一方、気泡が測定容器1の外径部にも未だ存在する場合には、前記第1調整バルブ4Aと第2調整バルブ4Bの開度が大きくなるように、制御装置10を介して操作する。あるいは、かかる操作に変えて、前記ポンプPの回転数を大きくして、より大量の懸濁液を測定容器1内に供給するように制御をおこなう。
このようにより大量の懸濁液が測定容器1内に供給されると、前記渦巻き状態がより顕著になって、前記遠心力がより大きくなって、該測定容器1の外径部に気泡が存在しないようにすることが可能となる。
また、測定容器1の外径部に気泡が存在しないようにする別の手法として、前記第4調整バルブ7の開度を少し閉まる側に前記制御装置10を介して操作することによって、測定容器1内の圧力を高めることによって実行することも可能である。
【0031】
そして、前記測定容器1内の外径部に気泡が存在するかしないかを、前記覗き窓8から視認しながら、前記操作を実行することによって、確実に測定容器1の外径部に気泡が存在しないようにすることが可能となる。
そして、かかる状態において、前記超音波センサー9からの検出信号に基づいて制御装置10で算出された測定データによれば、気泡のない正確な懸濁液中の固形物の濃度が測定できることになる。
また、かかる濃度測定装置Aによれば、懸濁液送液用本管Bを流れる懸濁液の前記濃度を連続的に測定することが可能となる。
【0032】
ところで、前記実施例では、前記第1〜第4調整バルブ4A,4B,5,7、前記ポンプPの回転数を制御装置10によって、制御するよう構成されているが、制御装置10による制御に代えて、作業者が手動で操作するよう構成してもよい。
【0033】
ところで、前述した実施例は本発明の単なる実施例であって、本発明は、前記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的思想に基づく範囲において種々の形態で実施することが可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明にかかる濃度測定装置は、上水、下水、廃液の種々の液体に混入した固形物濃度の測定に利用することができる。
【符号の説明】
【0035】
A…濃度測定装置
B…懸濁液送液用本管
1…測定容器
1a…懸濁液供給口
1b…排出口
9…超音波センサー
9A…超音波発信子
9B…超音波受信子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
懸濁液送液用本管を流れる懸濁液を取り込んで懸濁液中の固形物濃度を測定する円筒状の形態をした測定容器が、懸濁液を内部に供給する懸濁液供給口と、該懸濁液を外部に排出するべく前記懸濁液供給口から軸方向に離間した位置に設けられた排出口とを有するとともに、
前記懸濁液供給口から供給された懸濁液が測定容器内部で渦巻き状の流れを形成しつつ前記排出口へ向かって流れるように構成し、
前記懸濁液内の固形物の濃度を検出するべく超音波センサーの超音波発信子と超音波受信子を、該超音波発信子から前記測定容器の前記渦巻き状の流れの部位であって該計測容器内の外径側の部位を、超音波が通過するように、設けたことを特徴とする濃度測定装置。
【請求項2】
前記測定容器内に渦巻き状の流れを形成すべく、前記懸濁液供給口を、該測定容器の側周壁に対して周方向から径方向へ傾けて懸濁液を内部へ吐出するように設けたことを特徴とする請求項1記載の濃度測定装置。
【請求項3】
前記測定容器の懸濁液供給口が、懸濁液送液用本管内部と、取出し管路を介して接続されるとともに、前記排出口が、懸濁液送液用本管内部と、戻し管路を介して接続され、
前記取出し管路と戻し管路に通液量を調整する調整バルブをそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1又は2記載の濃度測定装置。
【請求項4】
前記取出し管路に懸濁液供給用のポンプを介装したことを特徴とする請求項3記載の濃度測定装置。
【請求項5】
前記調整バルブのバルブ開度が制御装置の制御によって変更可能に構成されるとともに、前記ポンプの回転数が制御装置の制御によって変更可能に構成されていることを特徴とする請求項4記載の濃度測定装置。
【請求項6】
前記測定容器の少なくとも前記超音波発信子と超音波受信子間の一部分が透明になっていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1の項に記載の濃度測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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