説明

濃縮装置

【課題】略水平方向に伸びる回転軸により攪拌羽根を回転して被処理液を濃縮する濃縮装置において、被処理液から発生するベーパの浮遊、拡散を抑制して、効率的な濃縮処理ができる濃縮装置を提供すること。
【解決手段】略水平向に軸支された回転軸11と、被処理液を投入する供給口19と処理液を排出する排出口21とが開口された処理ドラム5と、前記回転軸11の周囲に形成された攪拌羽根13と、前記回転軸11を回転させる駆動装置25とを備えた濃縮装置1であって、前記処理ドラム5の一方側にベーパドラム6が配置され、前記処理ドラム5と前記ベーパドラム6の間には、ベーパを移動するためのベーパ流路6aと、凝縮液が前記処理ドラム5に流入するのを抑制するための壁部6bが形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、各種被処理液の濃縮処理に用いる濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、脂肪酸等の油脂類、スープ・ジュース等の各種飲料食品、各種ビタミン・抗生物質等の医薬品、カプロラクタム等の各種合成樹脂、各種合成ゴム・ワックス・洗剤等の石油化学製品、等の各種処理液の加熱蒸発による濃縮処理を行う際には、処理液を流入する略円筒状の処理ドラムの外周に処理液を加熱する加熱手段を設け、攪拌羽根で攪拌、濃縮する濃縮装置が使用されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この種の濃縮装置では、処理ドラムが略水平となるように配置されており、処理ドラムの軸線方向の一方側の上方に処理ドラム内に処理液を投入する供給口が設けられるとともに他方側の下方に濃縮された処理液を排出する排出口が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−313381号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、濃縮装置内において被処理液の攪拌、濃縮をする過程で、被処理液からベーパが発生し、このベーパが処理ドラム内に浮遊、拡散した状態では、効率的な濃縮処理が阻害され、濃縮した処理液の品質が低下する場合がある。
【0006】
この発明は、このような事情を考慮してなされたものであり、略水平方向に伸びる回転軸により攪拌羽根を回転して被処理液を濃縮する濃縮装置において、被処理液から発生するベーパの浮遊、拡散を抑制して、効率的な濃縮処理ができる濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明は以下の手段を提案している。
請求項1に記載の発明は、略水平向に伸びる軸線周りに回転自在に軸支された回転軸と、内周壁面が略円筒形状とされ、被処理液を投入する供給口と処理液を排出する排出口とが開口された処理ドラムと、前記回転軸の周囲に形成され、前記処理ドラムの内周壁面と間隙をあけて回転可能とされる攪拌羽根と、前記回転軸を回転させる駆動手段と、を備えた濃縮装置であって、前記処理ドラムの軸方向の少なくとも一方側には、前記処理ドラムで発生したベーパを受けるベーパ部が配置され、前記処理ドラムと前記ベーパ部の間には、前記処理ドラムから前記ベーパ部側にベーパを流通させるベーパ流路と、ベーパの凝縮液を保持して凝縮液が前記処理ドラム側に移動するのを抑制する凝縮液保持手段とを備えていることを特徴とする。
【0008】
この発明に係る濃縮装置によれば、処理ドラムで発生したベーパはベーパ流路を通じてベーパ部に流通され、ベーパ部においてベーパが凝縮して生成された凝縮液が、凝縮液保持手段により処理ドラム側に流入するのが抑制される。
その結果、ベーパの浮遊、拡散が抑制されるとともにベーパ凝縮液が容易に除去でき、ひいては、被処理液を効率的に濃縮することができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の濃縮装置であって、前記ベーパ部には、吸引手段が接続されていることを特徴とする。
【0010】
この発明に係る濃縮装置によれば、ベーパ部に吸引手段が接続されているので、ベーパを処理ドラムからベーパ部に効率的に移動させることができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は請求項2に記載の濃縮装置であって、前記処理ドラムには、加熱手段が設けられていることを特徴とする。
【0012】
この発明に係る濃縮装置によれば、処理ドラムに加熱手段が設けられているので、ベーパを被処理液から短時間で蒸発、除去させることができ、その結果、被処理液を効率的に濃縮することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の濃縮装置であって、前記ベーパ部には、ベーパの凝縮を促進するための冷却手段が配置されていることを特徴とする。
【0014】
この発明に係る濃縮装置によれば、ベーパ部に冷却手段が配置されているので、ベーパ部に移動したベーパの凝縮を促進して、ベーパの浮遊、拡散を抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
この発明に係る濃縮装置によれば、被処理液から発生するベーパを効率的に除去して処理ドラム内におけるベーパの浮遊、拡散を抑制することができる。その結果、被処理液を効率的に濃縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係る濃縮装置の概略を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図1を参照し、この発明の一実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る濃縮装置の概略を示す図であり、符号1は濃縮装置を示している。
【0018】
濃縮装置1は、図1に示すように、投入された被処理液M1が攪拌、濃縮される処理ドラム5と、ベーパドラム(ベーパ部)6と、処理ドラム5とベーパドラム6とを貫通するとともに略水平向に伸びる軸線L周りに回転可能に軸支された回転軸11と、回転軸11の周囲に周方向に等間隔に複数形成され処理ドラム5の内周壁面5aと所定間隙をあけて形成された攪拌羽根13と、回転軸11を回転させる駆動装置(駆動手段)25とを備えている。
【0019】
また、この実施形態において、濃縮装置1は、加熱手段と、冷却手段12と、真空ポンプ(吸引手段)15とを備えていて、冷却手段12は、回転軸11に設けられた冷却配管12aとベーパドラム6に設けられた冷却ジャケット12bとから構成されている。
【0020】
処理ドラム5は、内周壁面5aが略円筒形状とされた形態をなしており、処理ドラム5の周壁部には、例えば、軸線L方向の一方側の周囲の上部には被処理液M1を処理ドラム5内に供給する供給口19が形成され、他方側の周囲の下部には処理液M2を処理ドラム5から排出するための排出口21が開口されている。
【0021】
また、処理ドラム5の周壁部は、内周壁面5aと外周壁面との間に熱媒体ジャケット(加熱手段)37を構成する空間が形成された二重構造とされていて、熱媒体ジャケット37には供給口39と排出口41が処理ドラム5の外方に開口しており、供給口39は熱媒体源に排出口41は熱媒体回収回路に接続されている。
【0022】
かかる構成によって、例えば、供給口39から蒸気又は熱水等の熱媒体を供給して排出口41から排出させることにより、熱媒体ジャケット37に熱媒体を流通させて内周壁面5aを介して被処理液M1を加熱することができるようになっている。
その結果、被処理液M1からのベーパを短時間で効率的に発生させ、被処理液M1を効率的に濃縮するようになっている。
【0023】
また、処理ドラム5は、軸線L方向の一方側に開口部5bが形成され、この開口部5bはベーパドラム6の他方側の開口部と接続されている。
また、軸線L方向の他方側に端板5cが設けられ、端板5cの中央部には回転軸11を軸支するための軸受部7が配置されている。
軸受部7は、例えば、メカニカルシールによって処理ドラム5内部と外方(大気)とを密封可能とされており、処理ドラム5の他方側は端板5c及び軸受部7により閉塞されている。
【0024】
ベーパドラム6は、略円筒形状に形成され、処理ドラム5の一方側に処理ドラム5と駆動装置25との間に位置し処理ドラム5と直列に配置され、ベーパドラム6の下方にはベーパの凝縮液を排出するための排出口60が開口している。
【0025】
また、処理ドラム5の開口部5bの外周側には壁部(凝縮液保持手段)6bが濃縮装置1の内周にわたって環状に形成されており、ベーパの凝縮液Tが処理ドラム5に移動するのを抑制するようになっている。
また、壁部6bの内周と回転軸11の外周面との間は、処理ドラム5で発生したベーパがベーパドラム6側に移動するためのベーパ流路6aを構成している。
【0026】
また、ベーパドラム6は、内周壁面と外周壁面との間に冷却ジャケット(冷却手段)12bを構成する空間が形成された二重構造とされていて、冷却ジャケット12bには供給口61と排出口62がベーパドラム6の外方に開口されており、供給口61は冷却媒体源に排出口62は冷却媒体回収回路に接続されている。
【0027】
係る構成により、例えば、供給口61から冷却水等の冷却媒体を供給して排出口62から排出させることにより冷却ジャケット12bに冷却媒体を流通させてベーパドラム6の内周壁面を冷却することにより、この内周壁面に接触したベーパを冷却して、ベーパの凝縮を促進することができるようになっている。
【0028】
また、ベーパドラム6は、一方側の上部に吸引開口部6cが開口し、吸引開口部6cには真空ポンプ15に接続されていて、一方側の端部には端板6dが形成され、端板6dの中央部に軸受部9が配置されている。
軸受部9は、例えば、メカニカルシールによってベーパドラム6の内部と外方(大気)とを密封可能とされており、ベーパドラム6の一方側は端板6d及び軸受部9により密閉されている。
【0029】
その結果、濃縮装置1は、処理ドラム5とベーパドラム6とを連結して、供給口19、排出口21、排出口60を閉塞するとともに吸引開口部6cに真空ポンプ15を接続して、真空ポンプ15を吸引すると、濃縮装置1内が減圧又は真空状態となるとともに、ベーパを処理ドラム5からベーパドラム6側に効率的に移動することができるようになっている。
【0030】
回転軸11は、処理ドラム5とベーパドラム6とを貫通して、一方側が軸受部9により、他方側が軸受部7により回転自在に軸支され、駆動装置25により回転するようになっている。
また、回転軸11は、ベーパドラム6内において回転軸11の周囲に冷却配管(冷却手段)12aが巻回されており、冷却配管12aに冷却水等の冷媒を流通することにより、ベーパの凝縮を促進して浮遊するペーパを効率的に削減することができるようになっている。
【0031】
攪拌羽根13は、軸線L方向に長尺な処理ドラム5内に収容可能に板状に形成され、回転軸11の周方向に等間隔をあけて、回転軸11の外周面から径方向外方に向かって複数設けられている。
また、攪拌羽根13は、回転軸11を回転させた場合に、処理ドラム5の内周壁面5aと、例えば、2mm程度の隙間を維持して回転するようになっている。
【0032】
駆動装置25は、モータ26と、伝達機構27とを備えており、回転軸11は、伝達機構27を介してモータ26に接続され、モータ26により回転するようになっている。
伝達機構27は、例えば、回転軸11に取り付けたプーリ28とモータ26の駆動軸に取り付けたプーリ29と、プーリ28及びプーリ29間に巻回されたベルト30とを備えており、モータ26により回転されたプーリ29の回転をプーリ28に伝達するようになっている。
【0033】
以下、濃縮装置1の作用について説明する。
まず、供給口39から蒸気等の熱媒体を熱媒体ジャケット37に供給して、熱媒体ジャケット37を流通させて処理ドラム5の内周壁面5aを加熱する。
また、冷却手段12に冷却媒体を流通させて、ベーパドラム6内において、ベーパの凝縮が促進され易いようにする冷却する。
次に、真空ポンプ15を起動して、濃縮装置1の内部を減圧する。
次いで、被処理液M1を供給口19から処理ドラム5に投入するとともにモータ26を駆動して回転軸11及び攪拌羽根13を回転させる。
回転軸11及び攪拌羽根13が回転して、被処理液M1が攪拌羽根13により処理ドラム5の内周壁面5aに飛ばされて薄膜状となり、被処理液M1の水分を効率よく蒸発させて処理液M2の水分調整を行なう。この攪拌羽根13により被処理液M1を処理ドラム5の内周壁面5aに飛ばすこと及び加熱すること等により、被処理液M1からベーパが発生する。
処理ドラム5内で発生したベーパは、吸引開口部6cを介して真空ポンプ15に吸引されてベーパドラム6の外部に排出され、図示しない回収装置により回収される。
一方、吸引開口部6cから吸引されなかったベーパは、冷却手段12により冷却、凝縮されて凝縮液Tとなり、ベーパドラム6の底部に落下する。ベーパドラム6に落下、貯留された凝縮液Tは、壁部6bにより処理ドラム5側への移動が阻止される。
また、処理ドラム5からベーパドラム6に移動したベーパは、ベーパドラム6内が処理ドラム5内よりも減圧されているので、処理ドラム5側に流入することが抑制される。
濃縮された処理液M2は、処理ドラム5の排出口21から排出される。
また、ベーパドラム6に貯留された凝縮液Tは、排出口60を介して排出される。
【0034】
濃縮装置1によれば、壁部6bが設けられているので、処理ドラム5内で発生したベーパがベーパドラム6に移動した後に短時間で効率的に凝縮されるので、処理ドラム5でのベーパの浮遊を抑制することができる。
また、ベーパドラム6に移動して凝縮した凝縮液Tが、ベーパドラム6に保持されるので、処理ドラム5への凝縮液Tの移動を抑制することができる。
その結果、処理ドラム5において、効率的かつ高品質に被処理液M1の濃縮して、処理液M2とすることができる。
【0035】
なお、本発明は、上記実施の形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、種々の変更をすることが可能である。
例えば、上記実施の形態においては、濃縮装置1が、冷却手段12と、熱媒体ジャケット37と、真空ポンプ15とを備える場合について説明したが、冷却手段12、熱媒体ジャケット37、真空ポンプ15の一部を備えた構成としてもよいし、これらをすべて備えない構成としてもよい。
【0036】
また、上記実施の形態においては、冷却手段12が、ベーパドラム6内に位置する回転軸11の周囲に設けた冷却配管12aとベーパドラム6の周囲に形成した冷却ジャケット12bにより構成される場合について説明したが、例えば、冷却配管12a、冷却ジャケット12bのいずれか一方、又はこれらに他の冷却機構を付加した構成としてもよい。
【0037】
また、上記実施の形態においては、凝縮液保持手段として設ける壁部6bが、処理ドラム5とベーパドラム6の境界部分にて濃縮装置1の内周にわたって環状に形成されている場合について説明したが、例えば、処理ドラム5とベーパドラム6の境界部分の下側のみにせきを形成して凝縮液保持手段としてもよいし、ベーパドラム6の底部高さを処理ドラム5の底部高さよりも低くして濃縮液面が処理ドラム5の底部高さよりも低く位置させることにより凝縮液保持手段としてもよい。
【0038】
また、上記実施の形態においては、濃縮装置1の軸線Lが水平方向に形成される場合について説明したが、ベーパドラム6に貯留された凝縮液Tが処理ドラム5側に流入しない範囲において、軸線Lが横向きに配置されていれば、完全に水平であることは必要ではない。
【0039】
また、上記実施の形態においては、ベーパドラム6が濃縮装置1の駆動装置25側に配置される場合について説明したが、例えば、濃縮装置1の駆動装置25と反対側に配置してもよいし、濃縮装置1の駆動装置25側と反対側の双方に配置してもよい。
また、上記実施の形態においては、ベーパ部が略円筒形状のベーパドラム6により構成される場合について説明したが、例えば、多角柱体や直方体等、円筒形状以外の形状であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
L 軸線
M1 被処理液
M2 処理液
T 凝縮液
1 濃縮装置
5 処理ドラム
5a 内周壁面
6 ベーパドラム(ベーパ部)
6a ベーパ流路
6b 壁部(凝縮液保持手段)
11 回転軸
12 冷却手段
12a 冷却配管
12b 冷却ジャケット
13 攪拌羽根
15 真空ポンプ(吸引手段)
19 供給口
21 排出口
25 駆動装置(駆動手段)
37 熱媒体ジャケット(加熱手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略水平向に伸びる軸線周りに回転自在に軸支された回転軸と、
内周壁面が略円筒形状とされ、被処理液を投入する供給口と処理液を排出する排出口とが開口された処理ドラムと、
前記回転軸の周囲に形成され、前記処理ドラムの内周壁面と間隙をあけて回転可能とされる攪拌羽根と、
前記回転軸を回転させる駆動手段と、を備えた濃縮装置であって、
前記処理ドラムの軸方向の少なくとも一方側には、前記処理ドラムで発生したベーパを受けるベーパ部が配置され、
前記処理ドラムと前記ベーパ部の間には、前記処理ドラムから前記ベーパ部側にベーパを流通させるベーパ流路と、ベーパの凝縮液を保持して凝縮液が前記処理ドラム側に移動するのを抑制する凝縮液保持手段とを備えていることを特徴とする濃縮装置。
【請求項2】
請求項1に記載の濃縮装置であって、
前記ベーパ部には、吸引手段が接続されていることを特徴とする濃縮装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の濃縮装置であって、
前記処理ドラムには、加熱手段が設けられていることを特徴とする濃縮装置。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の濃縮装置であって、
前記ベーパ部には、ベーパの凝縮を促進するための冷却手段が配置されていることを特徴とする濃縮装置。

【図1】
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