説明

濾過ユニット

【課題】コンパクト化を図ることができるとともに、メンテナンスを容易にすることが可能な濾過ユニットを提供する。
【解決手段】水平方向に渡された複数本の中空糸膜31がその端部で束ねられて互いに対向される一対のヘッダ32に固定された濾過モジュール30と、この濾過モジュール30が収納されるとともに原水W1が導入されるケーシング20とを備えた濾過ユニット10において、ヘッダ32のそれぞれをケーシング20の側壁23に形成された貫通孔24に液密に嵌め込み、中空糸膜31により原水W1から濾過された濾過水W2を排出する濾過水管40をケーシング20の外側からヘッダ32に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中空糸膜により原水を濾過する濾過モジュールを、原水が導入されるケーシング内に収容した濾過ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
このような濾過ユニットとして、上方および下方が開口した外形直方体状の箱枠型のケーシング内に、多数の中空糸膜を束ねた膜エレメントを、その両端をケーシングの長手方向に対向する一対の端板に取り付けることにより中空糸膜がこの長手方向に渡されるようにして収容したものが、例えば非特許文献1に提案されている。
【0003】
このような濾過ユニットの一例を図5に示す。この濾過ユニット1は、水平方向に渡された複数本の中空糸膜3が端部で束ねられて一対のヘッダ4に固定された濾過モジュール2と、該濾過モジュール2を収容するとともに濾過対象となる原水W1が導入されたケーシング5とを備えている。また、ヘッダ4には、中空糸膜3によって原水W1から濾過された濾過水W2を吸引してケーシング5外部に排出する濾過水管6が接続されており、この濾過水管6の下流側には例えばポンプ等の吸引手段(図示省略)が設けられている。
この濾過ユニット1においては、中空糸膜の内部とヘッダ内部及び濾過水管はそれぞれ連通状態とされており、原水の濾過を行う際には、吸引手段が濾過水管6内の濾過水W2を吸引することで中空糸膜3による原水W1の濾過を促し、効率的な濾過を行うことができるようになっている。
【非特許文献1】鹿島田、中山、笹川、松田「浸漬膜を用いた大容量膜濾過システムの開発(I)」、第55回全国水道研究発表会講演集、社団法人日本水道協会、平成16年5月10日、p.182−183
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような従来の濾過ユニットにおいては、ケーシング5内に濾過モジュール2全体が収容されているため、ヘッダ4に接続された濾過水管6は、ケーシング5内部を経て外部へと配管される。従って、ケーシング5はこの濾過水管6の占有領域も加味した分だけ容積を確保しなければならず、これによって濾過ユニット1が必要以上に大きくなってしまうという問題があった。
また、この状態では濾過水管6がケーシング5内部に収容されて原水W1に浸漬されているため、濾過水管6のメンテナンスを行うにも濾過モジュール2ごと濾過水管6を原水W1から引き上げなければならず、この濾過水管6のメンテナンス等に時間と労力を要する結果となっていた。
【0005】
この発明はこのような課題に鑑みてなされたものであって、コンパクト化を図ることができるとともに、メンテナンスを容易にすることが可能な濾過ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、この発明は以下の手段を提案している。
即ち、本発明に係る濾過ユニットは、水平方向に渡された複数本の中空糸膜がその端部で束ねられて互いに対向される一対のヘッダに固定された濾過モジュールと、該濾過モジュールが収納されるとともに原水が導入されるケーシングとを備えた濾過ユニットにおいて、上記ヘッダのそれぞれが上記ケーシングの側壁に形成された貫通孔に液密に嵌め込まれるとともに、上記中空糸膜によって原水から濾過された濾過水を排出する濾過水管が、上記ケーシングの外側から前記ヘッダに接続されていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴の濾過ユニットによれば、ケーシングの側壁に貫通孔が設けられ、この貫通孔に濾過モジュールのヘッダが嵌め込まれることにより、ヘッダはケーシング内外を貫通するようにしての該ケーシングの外部に露呈する。したがって、ヘッダに接続される濾過水管をケーシング外部にて配管することが可能となるため、ケーシング内に濾過水管を配管するための空間を設ける必要がなく、該ケーシングを、原水を導入するのに適した必要最低限の大きさに留めることができる。また、濾過水管は、原水に浸漬されることなくケーシング外部に配管されるため、濾過モジュールごとケーシング内の原水から引き上げたりすることなく、濾過水管のメンテナンスを行うことができる。
【0008】
また、本発明に係る濾過ユニットは、上記濾過水管が、上記ケーシングに導入された上記原水の液面よりも下方に向かって延びていることを特徴としている。
【0009】
このような特徴の濾過ユニットによれば、濾過水管が原水液面よりも下方に向かって延びているので、水頭差圧を利用してケーシング内の原水を中空糸膜により濾過して濾過水管へと導くことが可能となる。従って、ポンプ等の吸引手段を設けなくとも中空糸膜による原水の濾過を促すことが可能となるため、濾過ユニット自体の構成を簡易なものとすることができ、メンテナンスの容易化および製造コストの低減を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の濾過ユニットによれば、ケーシングの側壁の貫通孔に濾過モジュールのヘッダを嵌め込むことによって、ケーシング内に濾過水管を配管する空間を設ける必要がなくなるため濾過ユニット自体のコンパクト化を図ることができるとともに、濾過水管がケーシング外部に配管されるため、そのメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態である濾過ユニットについて、図面を参照して詳細に説明する。
図1は第1の実施形態に係る濾過ユニットの概略構成を示す透過斜視図、図2は第1の実施形態に係る濾過ユニットの概略構成を示す側断面図、図3は図2の部分拡大図である。
本実施形態に係る濾過ユニット10は、図1および図2に示すように、濾過対象となる原水W1が内部に導入されるケーシング20と、このケーシング20内に収容されて原水W1を濾過水W2へと濾過する濾過モジュール30と、該濾過モジュール30に接続された濾過水管40とを備えている。
【0012】
ケーシング20は、ステンレス等の耐蝕性の高い金属材等によって構成されて、平面視に長方形の有底箱形をなし、その底部を下向きにして設置されるケーシング本体21と、該ケーシング本体21の上部開口部を覆って取り外し可能とされたケーシング蓋部22とを備えている。
ケーシング本体21の4つの側壁のうち、ケーシング本体21が平面視になす上記長方形の短辺に沿った2つの側壁は、濾過モジュール30のヘッダ32が嵌め込まれる取付側壁23とされており、これら取付側壁23のそれぞれにはケーシング20の内外を連通させる貫通孔24が、上記長方形の長辺に沿った横方向(図1および図2の左右方向)に互いに対向するように開口されている。
【0013】
濾過モジュール30は、図1および図2に示すように、上記横方向に渡される複数本(多数本)の中空糸膜31が所定本ずつその両端部で束ねられて、各端部がこの横方向に互いに対向するように設置された一対のヘッダ32にそれぞれ固定されたものである。なお、中空糸膜31としては、例えば親水性ポリエチレン製の中空糸MF膜(孔径0.1μm)を用いることができるが、中空糸膜31を限定するものではない。また、中空糸膜31は、説明のために径が太くされるとともに本数が少なく図示されている。
【0014】
上記ヘッダ32は、詳しくは図3に示すように、その内部に中空糸膜31により原水W1から濾過された濾過水W2が導かれる空間を備えており、糸膜固定部33とヘッダ蓋部35との2つの部材から構成されている。
【0015】
糸膜固定部33は、内部が中空状とされた、図1に示すような円板状、あるいは正方形平板状をなしており、その2つの円形面あるいは正方形面の一方が糸膜固定面33aとされて、一対のヘッダ32の糸膜固定部33同士で上記横方向に対向するように配置されている。そして、これら対向する糸膜固定面33aの間に上記中空糸膜31が渡されて、その中空糸膜31の中空部と糸膜固定部33の中空部とがそれぞれ連通状態となるように中空糸膜31が固定されている。
また、各糸膜固定部33においてこの糸膜固定面33aと反対側の他方の円形面あるいは正方形面は、ケーシング本体21の取付側壁23を後述するOリング38を介して内側から押圧する押圧面33bとされており、該押圧面33bの略中央には上記取付側壁23の貫通孔24に嵌め込まれる円筒部34が、糸膜固定部33内外を連通させるように設けられている。この円筒部34の外径は、取付側壁23における貫通孔24の径より僅かに小さくされて該貫通孔24に嵌め入れ可能とされており、その外周面34aには雄ネジが形成されている。
【0016】
ヘッダ蓋部35は、上記円筒部34の外径より一回り大きな外径を有する有底円筒状をなし、すなわち糸膜固定部33がなす上記円形面と同径あるいは上記正方形面の内接円と略同径とされてその中央に濾過水管40が連通状態にして接続された円形の蓋面部36と、上記円筒部34の雄ネジと螺合可能な雌ネジを内周面37aに有する円筒状の縁部37とが一体に形成された構成とされている。そして、このヘッダ蓋部35は、糸膜固定部33の円筒部34の雄ネジに縁部37の雌ネジを螺合させることで糸膜固定部33と固定一体化され、これにより内部に中空の上記空間を備えたヘッダ32が構成される。なお、縁部37の端面は、ケーシング本体21の取付側壁23を後述するOリング38を介して外側から押圧する押圧端面37bとされている。
【0017】
濾過水管40は、ヘッダ蓋部35の蓋面部36略中央への接続箇所からケーシング20の下方に延びるように配管されている。従って、ケーシング本体21内に導入された原水W1が濾過モジュール30を浸漬している場合など、濾過水管40の蓋面部36への接続箇所の高さよりもケーシング本体21に導入された原水W1の液面が高い位置にある場合には、その水頭差圧による濾過が可能になる。
【0018】
このような構成の濾過モジュール30は、以下のようにしてケーシング20内に収容されて取り付けられる。
まず、濾過モジュール30からヘッダ蓋部35を分離させた状態の中空糸膜31および糸膜固定部33をケーシング本体21内に収容し、糸膜固定部33の円筒部34をケーシング本体21における取付側壁23の貫通孔24に挿通させる。これにより円筒部34はこの貫通孔24をケーシング20の内側から外側に向かって貫通した状態となり円筒部34の先端はケーシング20の外部に露呈した状態となる。
そして、この状態において、ケーシング20の外側から糸膜固定部33の円筒部34の雄ネジにヘッダ蓋部35の縁部37の雌ネジを螺合させて、糸膜固定部33の円筒部34の開口部を閉塞する。
【0019】
この際、詳しくは図3に示すように、取付側壁23は、糸膜固定部33の押圧面33bとヘッダ蓋部35の押圧端面37bとによって、ケーシング本体21の内外から押圧されて挟み込まれる。即ち、糸膜固定部33とヘッダ蓋部35とを一体化させてヘッダ32を構成するのと同時に、当該ヘッダ32が取付側壁23に強固に固定される。なお、本実施形態においては、押圧面33bと取付側壁23との間、および取付側壁23と押圧端面37bとの間にはそれぞれOリング38が介在されており、これによってケーシング20内に導入された原水W1およびヘッダ32内の濾過水W2が漏出しないように液密性が保持されている。
【0020】
なお、本実施形態の濾過ユニット10においては、図2に示すように、ケーシング本体21内の中空糸膜31の下方に、曝気装置25が設けられている。この曝気装置25は、例えば図示されない送気管に接続されて空気を散出する散気管であり、膜の洗浄を行う場合、こうして散出された空気は気泡流となって上方へ向かい中空糸膜31を揺動させる。これによって、該中空糸膜31に付着した原水W1中の濁質を剥離して洗浄し、中空糸膜31の濾過作用が低下するのを防いでいる。また、散気時に逆流洗浄を行うと洗浄効果が大きい。
【0021】
以上のような構成の濾過ユニット10によって原水W1の濾過を行う際には、まず、ケーシング蓋部22に挿通された図示されない原水導入管を通してケーシング本体21内に原水W1を導入して満たす。すると、原水W1が濾過モジュール30の中空糸膜31によって濾過され、混濁物が除去された清澄な濾過水W2が中空糸膜31内の中空部を経てヘッダ32内の上記中空の空間に至り、さらにヘッダ32に接続された濾過水管40によってケーシング20外部に排出される。
【0022】
ここで本実施形態の濾過ユニット10によれば、ケーシング本体21の取付側壁23形成された貫通孔24に濾過モジュール30のヘッダ32が液密に嵌め込まれることにより、ヘッダ32はケーシング20内外を貫通するようにしての該ケーシング20の外部に露呈している。これにともなって、該ヘッダ32に接続される濾過水管40はケーシング20外部に配管することができるため、ケーシング20内に濾過水管40を配管するための空間を設ける必要がない。従って、ケーシング20を、原水W1を導入するのに適した必要最低限の大きさに留めることができ、濾過ユニット10自体のコンパクト化を図ることが可能となる。
【0023】
さらに、上記のように濾過水管40がケーシング20外部に配管されているため、該濾過水管40はケーシング20内の原水W1中に浸漬されることはない。従って、この濾過水管40の保守・点検などを行う場合でも、ケーシング20外部からの作業で済ませることができ、原水W1から濾過モジュール30ごと濾過水管40を引き上げて作業したりする必要がなくなって、このような濾過水管40のメンテナンスを容易にすることが可能となる。
【0024】
一方、本実施形態の濾過ユニット10においては、濾過水管40がヘッダ32との接続箇所からケーシング20の下方に向かって延びるように配管されているため、ケーシング20内に原水W1を導入してその液面が濾過水管40の高さを超えると、該原水W1の液面と濾過水管40との間にはその高低差に応じた水頭差圧が生じる。
従って、この水頭差圧を利用してケーシング20内の原水W1を中空糸膜31で濾過して濾過水管40へと導くことが可能となるため、濾過水管40にポンプ等の吸引手段を別個設けなくとも、中空糸膜31による原水W1の濾過を促すことができる。このため、効率的に濾過を行いながらも、濾過ユニット10自体の構成を簡易なものとすることができ、メンテナンスを一層容易にしたり、製造コストの低減を図ったりすることが可能となる。
【0025】
また、ヘッダ32が、糸膜固定部33とヘッダ蓋部35との二点の部材とからなり、これら部材が固定一体化される際に取付側壁23を挟み込むことで、濾過モジュールを強固にケーシング本体21に嵌め込むことができるとともに、糸膜固定部33およびヘッダ蓋部35と取付側壁23との間にはそれぞれOリング38が介在されて液密性が確保されているため、原水W1および濾過水W2がそれぞれ漏出してしまうことはない。
【0026】
以上、本発明である濾過ユニット10の実施形態について詳細に説明したが、本発明の技術的思想を逸脱しない限り、これらに限定されることはなく、多少の設計変更等も可能である。
例えば、本実施形態においては、濾過水管40はヘッダ32との接続箇所から下方に向かって延びるように配管されたものを説明したが、これに限定されることはなく、例えば図4に示すような変形例の濾過ユニット50であってもよい。この濾過ユニット50は、濾過水管60がヘッダ32との接続箇所から上方に向かって延びており、濾過水管60の下流側にポンプ等の吸引手段を設けることで、中空糸膜31による原水W1の濾過を行うようになっている。
この濾過ユニット50においても、実施形態の濾過ユニット10と同様に、ケーシング本体21に濾過モジュール30のヘッダ32が嵌め込まれて濾過水管60がケーシング20外部に配管されているため、濾過ユニット50自体のコンパクト化及び省メンテナンス化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】第1の実施形態に係る濾過ユニットの概略構成を示す透過斜視図である。
【図2】第1の実施形態に係る濾過ユニットの概略構成を示す側断面図である。
【図3】図2の部分拡大図である。
【図4】変形例の濾過ユニットの概略構成を示す側断面図である。
【図5】従来の濾過ユニットの概略構成を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0028】
10、50 濾過ユニット
20 ケーシング
21 ケーシング本体
22 ケーシング蓋部
23 取付側壁
24 貫通孔
25 曝気装置
30 濾過モジュール
31 中空糸膜
32 ヘッダ
33 糸膜固定部
33a 糸膜固定面
33b 押圧面
34 円筒部
34a 外周面
35 ヘッダ蓋部
36 蓋面部
37 縁部
37a 内周面
37b 押圧端面
38 Oリング
40、60 濾過水管
W1 原水
W2 濾過水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に渡された複数本の中空糸膜がその端部で束ねられて互いに対向される一対のヘッダに固定された濾過モジュールと、この濾過モジュールが収納されるとともに原水が導入されるケーシングとを備えた濾過ユニットにおいて、
上記ヘッダのそれぞれが上記ケーシングの側壁に形成された貫通孔に液密に嵌め込まれるとともに、
上記中空糸膜により原水から濾過された濾過水を排出する濾過水管が、上記ケーシングの外側から上記ヘッダに接続されていることを特徴とする濾過ユニット。
【請求項2】
上記濾過水管が、上記ケーシングに導入された上記原水の液面よりも下方に向かって延びていることを特徴とする請求項1に記載の濾過ユニット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−285527(P2009−285527A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−137706(P2008−137706)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000165273)月島機械株式会社 (253)
【出願人】(000176741)三菱レイヨン・エンジニアリング株式会社 (90)
【Fターム(参考)】