説明

濾過材およびその製造方法

【課題】産業用または家庭用設備で使用される濾過材において、濾過性能を維持しながら目詰まりを改善する。
【解決手段】繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑剤が付与されてなる濾過材。繊維基材を平滑剤に含浸した後、乾燥させることで繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑剤を付与して濾過材とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用または家庭用の設備で使用される濾過材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に濾過材は微粉が堆積し目詰まりを生じる。このため長時間使用する場合は定期的に新品と交換する必要があるが、この頻度が高いと濾過材のコストがかさむだけでなく、作業性が著しく低下するという問題が生じる。
【0003】
これを改善する方法としてシリコン、ウレタン等の合成樹脂の微粒子を集合させて粒子間に流路を形成したスクラム構造により濾過材の基材表面を被覆することがよく知られている(特許文献1参照)。この方法によれば濾過材表面への微粉堆積が軽減できるが、コストがかかるうえに濾過材の内層部での堆積は軽減できず目詰まり防止効果は充分と言えない。
【0004】
また、濾過材の基材表層部に平滑材を付与したものはあるが(特許文献2参照)、使用を繰り返しているうちに表層の平滑材が脱落してしまうので寿命が長いものではなかった。
【特許文献1】特開2003−88716号公報
【特許文献2】特開平11−156122号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、かかる従来の濾過材の目詰まり問題に鑑み、効果的且つ低コストで目詰まりを軽減できる濾過材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はかかる課題を解決するため、次のような手段を採用する。
【0007】
すなわち、本発明の濾過材は、繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑剤が付与されてなるものである。
【0008】
また、本発明の濾過材の製造方法は、繊維基材を平滑剤に含浸した後、乾燥させることで該繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑剤を付与するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、産業用または家庭用の設備で使用される濾過材において、低コストで、濾過性能を維持しながら目詰まりを著しく改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の濾過材には、粉塵除去装置や焼却場の排ガス装置において、空気や液体の流体中に含まれる微粒子や粉体を分離するために用いられるフィルターが含まれ、家庭用、産業用に広く使用できるものである。
【0011】
本発明の濾過材は繊維基材からなるものであり、織物、編物または不織布のいずれであっても構わないが、濾過材で捕集したい粉体または微粒子より気孔が小さくかつ流体のみが通過できること必要である。ここでいう繊維は、化学繊維や天然繊維のいずれでもよいが、耐久性や耐薬品性及び断面形状が一定であることから、化学繊維が好ましく用いられる。さらに化学繊維の中でもポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維が好ましい。また、繊維断面はいずれの形状でもよいが、濾過性の観点から、三角、星形、丸型が好ましく用いられる。繊維の太さは0.1〜3デシテックスであることが好ましい。
【0012】
濾過材の厚みは、特に制限は無いが、流体の通過性、粉体の捕集性、強度の観点から、0.1mm〜30.0mmが好ましく、0.5mm〜3.0mmであることがより好ましい。
【0013】
本発明においては、濾過材を構成する繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑材が付与されている。従来の濾過材は表層部にしか平滑材が付与されていなかったため、脱落や効果が短いなどの問題があったが、本発明では内層部を構成する繊維の表面にも平滑材が付与されている。すなわち、本発明の濾過材は、濾過材を構成する繊維基材の表層部および内層部を含む全ての繊維の全て表面に平滑剤が付与されているのである。
【0014】
本発明で用いられる平滑剤は、繊維表面に平滑性を付与できるものであれば特に限定されることなく使用することができ、例えば化学油や天然油のいずれを用いてもよい。中でも平滑性及び繊維基材へのなじみ易さの観点から、シリコンオイルが好ましく用いられる。
【0015】
平滑剤としてシリコンオイルを用いる場合、シリコンオイルの水中における不揮発分濃度が2%〜50%の範囲であることが好ましく、30%〜40%の範囲であることがより好ましい。
【0016】
次に本発明の製造方法について説明する。
【0017】
先ず繊維基材を平滑剤に含浸し、次いで乾燥させる。ここでいう含浸とは、平滑剤を含む溶液中に繊維基材を浸し、繊維基材の内部にまで平滑剤を浸透させることである。また、本発明でいう乾燥とは、被乾燥物の水分が固形分に対して重量比1%以下になるようにすることであり、例えば自然乾燥、スチーム乾燥機等による乾燥を用いることができる。
【実施例】
【0018】
以下、実施例に挙げて本発明をより具体的に説明する。
【0019】
実施例1
繊維断面の平均直径が0.1mmのポリエチレンテレフタレート短繊維を用いて、目付500g/mの積層ウェブを作製した。次いでニードルがランダムに植え付けられたニードルパンチマシンを用いて、その短繊維を絡ませフェルト状にした。得られたフェルトを内径10cm、高さ15cmの円筒型にし、ポリエステルの糸で縫い上げて繊維基材を作製した。次いで繊維基材を容器に入った不揮発分濃度37%のシリコンオイルに浸けて1時間放置後、24時間室温にて乾燥させた。
【0020】
このようにして得たシリコンオイルが付与された濾過材を円筒形バグフィルターに設置し、平均粒径0.1mmの微粒子約100個/cmを含む空気を静圧1.5kPaで流し続けた。流し始めの風速を風速計にて測定したところ20.6m/sであった。なお、空気を流している間は5分に1回の周期で圧空200kPaで逆洗を行った。
【0021】
流し初めてから2時間後に同流量計にて流量を測定したところ、この濾過材を用いた配管は19.1m/sであり、流し始めに比べて差が小さく濾過材の交換を要しない程度であった。また、濾過材を通過した空気を1cm採取し、粉塵測定器にて微粒子の存在を確認したところ、粒径0.1mm以上の微粒子は5個/cm以下であった。
【0022】
比較例1
実施例1で作製した繊維基材をシリコンオイルに浸けることなく、そのまま濾過材として同円筒形バグフィルターに設置し、平均粒径0.1mmの微粒子約100個/cmを含む空気を静圧1.5kPaで流し続けた。流し始めの風速を風速計にて測定したところ21.2m/sであった。なお、空気を流している間は5分に1回の周期で圧空200kPaで逆洗を行った。
【0023】
流し初めてから2時間後に同流量計にて流量を測定したところ、この濾過材を用いた配管は8.7m/sであり、目詰まりによる大きな風速ダウンが確認され、濾過材の交換が必要なレベルであった。また、濾過材を通過した空気を1cm採取し、粉塵測定器にて微粒子の存在を確認したところ、粒径0.1mm以上の微粒子は5個/cm以下であった。
【0024】
以上の実施例1と比較例1から明らかなように、実施例1のシリコンオイルを付与した濾過材は、0.1mm以上の微粒子をほとんど通過させることなく、かつ目詰まりによるフィルター交換周期がシリコンを付与しないもの(比較例1)に比べて大きく延長された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑剤が付与されてなることを特徴とする濾過材。
【請求項2】
該繊維基材が不織布、織物および編物から選ばれた少なくとも1つである 請求項1に記載の濾過材。
【請求項3】
該繊維がポリエステル、ナイロンおよびアクリルから選ばれた少なくとも1つから構成される請求項1または2に記載の濾過材。
【請求項4】
該平滑剤が油剤である請求項1〜3いずれかに記載の濾過材。
【請求項5】
該油剤がシリコンオイルである請求項4に記載の濾過材。
【請求項6】
繊維基材を平滑剤に含浸した後、乾燥させることで該繊維基材の表層部および内層部を構成する繊維の表面に平滑剤を付与することを特徴とする濾過材の製造方法。
【請求項7】
該繊維基材が不織布、織物および編物から選ばれた少なくとも1つである 請求項6に記載の濾過材の製造方法。
【請求項8】
該繊維がポリエステル、ナイロンおよびアクリルから選ばれた少なくとも1つから構成される請求項6または7に記載の濾過材の製造方法。
【請求項9】
該平滑剤が油剤である請求項6〜8いずれかに記載の濾過材の製造方法。
【請求項10】
該油剤がシリコンオイルである請求項9に記載の濾過材の製造方法。

【公開番号】特開2006−297292(P2006−297292A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−123354(P2005−123354)
【出願日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】