説明

濾過膜、浄水カートリッジおよび水処理装置

【課題】細孔よりも小さな不純物でも確実に除去することが可能な濾過膜、浄水カートリッジおよび水処理装置を提供する。
【解決手段】原水を濾過する複数の細孔3が設けられた複数の平膜1A〜1Dを、隣接して配置されるものどうしの細孔3が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させることにより、細孔よりも小さな不純物も確実に捕捉すると共に、逆洗浄時に濾過膜を伸縮させて、複数の平膜の表面あるいは細孔に堆積した不純物を効率的に除去する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば水道水等の原水中に含まれた不純物を除去する濾過膜、浄水カートリッジおよび水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の浄水構造として、内部に濾過膜を有した浄水カートリッジに繊維状活性炭のシート状成型物を裁断した細片を充填するとともに、当該浄水カートリッジ内に原水を流水することで、原水中に含まれた不純物を除去するようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−106162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術では、浄水カートリッジに設けられた濾過膜の細孔よりも小さな不純物を繊維状活性炭の細片で吸着できなかった場合に、当該浄水カートリッジの濾過膜を通過して除去できない恐れがある。
【0005】
そこで、本発明は、細孔よりも小さな不純物でも確実に除去することが可能な濾過膜、浄水カートリッジおよび水処理装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、原水を濾過する複数の細孔が設けられた複数の平膜を、隣接して配置されるものどうしの細孔が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明にあっては、原水を濾過する複数の細孔が設けられた複数の平膜を、隣接して配置されるものどうしの細孔が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させた濾過膜と、前記濾過膜の外周縁部を保持する保持部材と、水を通過させる孔部を有するとともに、前記濾過膜の原水が浸入する側と反対側の面を支持する支持プレートとを備え、前記濾過膜は、当該濾過膜に伝達される水圧によって伸縮可能な材質で構成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明にあっては、原水を濾過する複数の細孔が設けられた複数の平膜を、隣接して配置されるものどうしの細孔が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させた濾過膜と、前記濾過膜の外周縁部を縮んだ状態で保持することで、前記濾過膜に伝達される水圧の有無により積層された平膜どうしの間隔を伸縮させることが可能な保持部材と、水を通過させる孔部を有するとともに、前記濾過膜の原水が浸入する側と反対側の面を支持する支持プレートとを備えることを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明にあっては、前記濾過膜には、前記積層された平膜どうしの細孔を位置決めする位置決め手段が設けられていることを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明にあっては、前記位置決め手段は、前記積層された平膜どうしの互いに向かい合う面に配列されて設けられて、当該配列された一方の列に対して他方の列が部分的に重なり合うようにオフセット配置された凸部であることを特徴とする。
【0011】
請求項6の発明にあっては、前記凸部は、互いに向かい合う先端部に向けて縮径していることを特徴とする。
【0012】
請求項7の発明にあっては、原水を導入して少なくとも浄化した浄水を得る請求項2〜6に記載の前記浄水カートリッジを用いたことを特徴とする水処理装置である。
【0013】
請求項8の発明にあっては、導入された原水を前記浄水カートリッジの上流側から当該浄水カートリッジに導水可能な第1水路と、前記第1水路に接続して設けられるとともに、導入された原水を前記浄水カートリッジの下流側から当該浄水カートリッジに導水可能な第2水路と、前記第1水路と前記第2水路との分岐点に設けられて、当該第1水路および第2水路のいずれか一方に原水を導水させる水路切替手段とを備えることを特徴とする請求項7に記載の水処理装置である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明によれば、細孔が重ならないようにオフセット配置して積層された濾過膜を用いるため、細孔より小さな不純物も確実に捕捉して除去することができる。
【0015】
請求項2の発明によれば、浄水カートリッジの下流側から水を逆流させて濾過膜の洗浄を行う逆洗浄時に、簡単な構成で浄水カートリッジを逆洗浄することができるとともに、濾過膜が当該濾過膜に伝達される水圧によって伸縮可能な材質で構成されているため、逆洗浄時に濾過膜を伸縮させて複数の平膜の表面あるいは細孔に堆積された不純物を効率的に除去することができる。
【0016】
請求項3の発明によれば、浄水カートリッジの下流側から水を逆流させて濾過膜の洗浄を行う逆洗浄時に、簡単な構成で浄水カートリッジを逆洗浄することができるとともに、濾過膜の外周縁部を保持する保持部材が濾過膜に伝達される水圧の有無により積層された平膜どうしの間隔を伸縮させることができるため、逆洗浄時に積層された平膜間に堆積された不純物を効率的に除去することができる。
【0017】
請求項4の発明によれば、濾過膜には積層される平膜どうしの細孔を位置決めする位置決め手段が設けられているため、積層される平膜どうしの細孔をオフセット配置させた状態で維持することができる。
【0018】
請求項5の発明によれば、位置決め手段が積層された平膜どうしの互いに向かい合う面に配列されて設けられて、当該配列された一方の列に対して他方の列が部分的に重なり合うようにオフセット配置された凸部であるため、凸部が互いの隙間に入り込もうと動作する簡単な構成で位置決めを行うことができる。
【0019】
請求項6の発明によれば、請求項5に記載の作用効果に加え、凸部は互いに向かい合う先端部に向けて縮径しているため、自動的に凸部が互いの隙間に入り込もうと動作して、位置決めの精度を向上させることができる。
【0020】
請求項7の発明によれば、上記作用効果を奏する浄水カートリッジを用いた水処理装置を得ることができる。
【0021】
請求項8の発明によれば、浄水カートリッジを逆洗浄する構成の水処理装置を容易に得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる水処理装置を示す構成図である。
【図2】本発明の第1実施形態にかかる濾過膜の分解斜視図である。
【図3】本発明の第1実施形態にかかる浄水カートリッジを示した概略図であり、(a)は原水を濾過する通常時、(b)は浄水カートリッジの下流側から水を逆流させて濾過膜の洗浄を行う逆洗浄時を示している。
【図4】本発明の第1実施形態にかかる濾過膜の位置決め手段を示した図である。
【図5】本発明の第2実施形態にかかる浄水カートリッジを示した概略図である。
【図6】本発明の第2実施形態にかかる位置決め手段を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の複数の実施形態には、同様の構成要素が含まれている。よって、以下では、それら同様の構成要素には共通の符号を付与するとともに、重複する説明を省略する。
【0024】
[第1実施形態]
図1〜図4は本発明の第1実施形態を示した図であり、図1は水処理装置を示した構成図、図2は濾過膜を示した図、図3は浄水カートリッジを示した概略図であり、(a)は原水を濾過膜で濾過する通常時を示した図、(b)は浄水カートリッジの下流側から水を逆流させて濾過膜の洗浄を行う逆洗浄時を示した図、図4は濾過膜の位置決め手段を示した図である。
【0025】
まずは、図1を参照して本実施形態にかかる水処理装置の概略構成について説明する。
【0026】
本実施形態の水処理装置100は、図示しない導水ポンプによって導かれた原水を一時貯水する原水槽21と、原水槽21内の原水を浄水カートリッジ20に供給する原水ポンプ22と、原水ポンプ22によって導かれた原水を濾過する浄水カートリッジ20と、浄水カートリッジ20で濾過した処理水を貯水する処理水槽23と、図示せぬ吸入口および吐出口を有して浄水カートリッジ20を収納する収納部26とを備えており、これらの部材が水路25によって接続されている。なお、図中V1〜V3は各水路25に設けられたバルブであり、図示せぬ制御部に接続されている。
【0027】
この水路25は、原水槽21内の原水を浄水カートリッジ20で濾過する通常時に、原水槽21から原水ポンプ22を介して浄水カートリッジ20の上流側から当該浄水カートリッジ20に導水可能な第1水路25aと、この第1水路25aに接続して設けられるとともに、原水を原水ポンプ22を介して浄水カートリッジ20の下流側から当該浄水カートリッジ20に導水可能な第2水路25bとを備えている。
【0028】
かかる構成の本実施形態の水処理装置100では、通常時には第1水路25aと第2水路25bとの分岐点に設けられたバルブV1の第1水路25a側を開け、原水ポンプ22の加圧によって原水がバルブV2を介して収納部26の吸入口(図示せぬ)に導入される。そして、収納部26の内部に設けられた浄水カートリッジ20の濾過膜10で原水が濾過され、濾過された処理水が収納部26の吐出口(図示せぬ)からバルブV3を介して処理水槽23に送られる。
【0029】
そして、予め設定された周期などによって、原水を浄水カートリッジ20の下流側から逆流させて濾過膜10の洗浄を行う。
【0030】
濾過膜10の逆洗浄時には、第1水路25aと第2水路25bとの分岐点に設けられたバルブV1の第2水路25b側を開け、原水ポンプ22の加圧によって原水がバルブV3を介して収納部26の吐出口(図示せぬ)に導入される。そして、収納部26の内部に設けられた浄水カートリッジ20の濾過膜10が原水で洗浄され、洗浄された排水が収納部26の吸入口(図示せぬ)からバルブV2を介して外部に排出される。
【0031】
すなわち、本実施形態では、第1水路25aと第2水路25bとの分岐点に設けられたバルブV1が水路切替手段として機能することとなり、図示せぬ制御部からの信号を受けて原水を濾過する通常時と濾過膜10を洗浄する逆洗浄時とで、第1水路25aと第2水路25bに対する水路25の切替を行っている。
【0032】
このように、本実施形態の水処理装置100では、原水を浄水カートリッジ20の上流側から導水可能な第1水路25aと、浄水カートリッジ20の下流側から導水可能な第2水路25bと、第1水路25aおよび第2水路25bのいずれか一方に原水を導水させる水路切替手段としてのバルブV1とを備える構成であるため、浄水カートリッジ20を逆洗浄する構成の水処理装置100を容易に得ることができる。
【0033】
なお、本実施形態では、濾過膜10の逆洗浄時に原水を利用して逆洗浄を行う構成としたが、例えば処理水槽23に貯留された処理水や、洗浄用の浄化水を用いて逆洗浄を行う構成としてもよい。また、本実施形態では、濾過膜10の逆洗浄を行う際に原水ポンプ22を用いたが、例えば第2水路25bを傾斜させて原水を逆流させたりしてもよい。
【0034】
次に、図2〜図4を参照して本実施形態にかかる浄水カートリッジ20について詳しく説明する。
【0035】
本実施形態の浄水カートリッジ20は、原水を濾過する濾過膜10と、この濾過膜10の外周縁部を保持する保持部材5と、水を通過させる複数の孔部7aを有するとともに、濾過膜10の原水が浸入する側と反対側の面を支持する支持プレート7とを備えている。
【0036】
図2に示すように、本実施形態の濾過膜10は、原水を濾過する複数の細孔3が設けられた略矩形状の平膜を複数(本実施形態では4つ)用いて、この複数の平膜1A、1B、1C、1Dを重ね合わせて積層することによって構成される。
【0037】
ここで、本実施形態では、この4つの平膜1A〜1Dを積層させる際に、隣接して配置されるものどうしの細孔3が互いに重ならないようにオフセット配置して、浄水カートリッジ20の保持部材5に固定して一体化している。なお、本実施形態では、活性炭繊維によって構成された平膜1A〜1Dを用いている。
【0038】
保持部材5は、本実施形態では、濾過膜10の外形を型どる略矩形の筒状体で構成されており、この保持部材5の内壁部5aに例えば接着などの手段により、濾過膜10の外周縁部が固定される。
【0039】
支持プレート7は、濾過膜10と略同形状に形成されており、ケース5の内壁部5aに圧入して設けられ、濾過膜10の後面10aを接触した状態で支持する。
【0040】
かかる構成の浄水カートリッジ20では、図3(a)に示すように、原水が濾過される通常時には、濾過膜10は隣接して配置されるものどうしの細孔3がオフセット配置されているため、原水中に含まれる不純物のうち平膜の細孔3よりも小さな不純物が例えば平膜1Aの細孔3を通過してしまった場合でも、隣接して配置される平膜1Bの表面4で捕捉することができるため、細孔3より小さな不純物も確実に除去することが可能となる。
【0041】
そして、浄水カートリッジ20の下流側から水を逆流させて濾過膜10の洗浄を行う逆洗浄時には、図3(b)に示すように、濾過膜10に伝達される水圧によって濾過膜10が逆流方向に押される。この際、本実施形態では、活性炭繊維によって構成された濾過膜10を用いているため、当該濾過膜10が伸縮して複数の細孔3が拡径するとともに、各平膜1A〜1Dが水圧によって個別に振動し、各平膜1A〜1Dの表面4あるいは細孔3に堆積された不純物を除去することができる。
【0042】
また、本実施形態の濾過膜10には、積層される平膜1A〜1Dどうしの細孔3を位置決めする位置決め手段が設けられている。
【0043】
具体的には図4に示すように、本実施形態では、積層される平膜1A〜1Dどうしの互いに向かい合う面(表面、裏面)4、6に位置決め手段としての凸部が設けられており、この凸部は平膜1A〜1Dの繊維によって構成されている。
【0044】
すなわち、本実施形態では、平膜1A〜1DのX軸方向(図面左右方向)に延在してY軸方向(図面鉛直方向)に複数配列して設けられる一方の繊維に対して、Y軸方向に延在してX軸方向に複数配列して設けられる他方の繊維を、例えば溶着等により網目状に接合することによって凸部を構成している。
【0045】
そして、この繊維により構成された凸部を、隣接して配置される平膜(例えば1A、1B)の互いに向かい合う面(表面、裏面)4、6に対向配置させるようにして、平膜1Aの裏面6に配列された一方の列の凸部8aに対して、平膜1Bの表面4に配列された他方の列の凸部8bが、部分的に重なり合うようにオフセット配置させるようにした。
【0046】
したがって、隣接して配置される平膜(例えば1B、1C)間では、X軸方向(図面左右方向)に延在してY軸方向(図面鉛直方向)に複数配列して設けられる繊維が凸部となり、これら平膜1B、1Cの凸部が対向配置されて部分的に重なり合うようにオフセット配置されていることになる。
【0047】
このように、本実施形態の濾過膜10によれば、逆洗浄時に水圧によって隣接して配置される平膜(例えば1A、1B)の間隔が開いてしまっても、部分的に重なり合うようにオフセット配置された凸部8a、8bが、逆洗浄が終わった際に互いの隙間に入り込もうと動作して、互いの隙間に入り込んだ状態で固定されることとなるため、確実に隣接して配置される平膜(例えば1A、1B)の細孔3をオフセット配置させた状態で維持することが可能となる。なお、隣接して配置される平膜(例えば1B、1C)間では、X軸方向に延在してY軸方向に配列された凸部が、互いの隙間に入り込んだ状態で固定されることになる。
【0048】
以上、詳細に説明してきたように、本実施形態では、原水を濾過する複数の細孔3が設けられた複数の平膜1A〜1Dを、隣接して配置されるものどうしの細孔3が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させた濾過膜10を用いて浄水カートリッジ20を構成している。そのため、原水中に含まれる不純物のうち平膜1の細孔3よりも小さな不純物が例えば平膜1Aの細孔3を通過してしまった場合でも、隣接して配置される平膜1Bの表面4で捕捉することができるため、細孔3より小さな不純物も確実に除去することが可能となる。
【0049】
また、本実施形態の濾過膜10は、オフセット配置させた複数の平膜1A〜1Dを積層させる構成であるため、例えば平膜1A〜1DとしてMF膜(精密濾過膜)を用いた場合には、比較的コストの低いMF膜を用いて、当該MF膜よりも細孔の小さいUF膜(限外濾過膜)と同等の除去効果を得ることも可能となるという利点もある。
【0050】
また、本実施形態の濾過膜10は、複数の平膜1A〜1Dを積層させる構成であるため、本実施形態では活性炭繊維で構成された平膜1A〜1Dを用いたが、例えば、導電性樹脂や脱臭剤、酸化チタンなどで平膜を構成してもよく、不純物のターゲットに応じて複数の平膜1A〜1Dの材質を1つ1つ異ならせることによって原水中に含まれる様々な種類の不純物を除去することが可能な多機能膜とすることができる。
【0051】
また、本実施形態の浄水カートリッジ20は、上記濾過膜10とこの濾過膜10の外周縁部を保持する保持部材5と、水を通過させる孔部7aを有するとともに、濾過膜10の原水が浸入する側と反対側の面10aを支持する支持プレート7とを備えている。そのため、浄水カートリッジ20の下流側から水を逆流させて濾過膜10の洗浄を行う逆洗浄時に、簡単な構成で浄水カートリッジ20を逆洗浄することができるとともに、濾過膜10が当該濾過膜10に伝達される水圧によって伸縮可能な材質で構成されているため、逆洗浄時に濾過膜10を伸縮させて複数の平膜1A〜1Dの表面4あるいは細孔3に堆積された不純物を効率的に除去することができる。
【0052】
また、本実施形態の濾過膜10には、積層される平膜1A〜1Dどうしの細孔3を位置決めする位置決め手段が設けられており、この位置決め手段が積層された平膜1A〜1Dの互いに向かい合う面(表面、裏面)4、6に配列されて設けられて、当該配列された一方の列に対して他方の列が部分的に重なり合うようにオフセット配置された凸部であるため、平膜1A〜1Dの繊維によって構成された凸部が互いの隙間に入り込もうと動作する簡単な構成で位置決めを行うことができる。
【0053】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態について図面を参照して説明する。図5は本実施形態にかかる浄水カートリッジを示した概略図であり、(a)は原水を濾過膜で濾過する通常時を示した図、(b)は原水を逆流させて濾過膜を洗浄する逆洗浄時を示した図、図6は本実施形態にかかる濾過膜の位置決め手段を示した図である。
【0054】
本実施形態にかかる浄水カートリッジ40は、上記第1実施形態にかかる浄水カートリッジ20に対して、濾過膜10を保持する保持部材5Aと濾過膜10の位置決め手段とが異なっている。
【0055】
具体的には、本実施形態では、濾過膜10を保持する保持部材5Aとしてジャバラで構成された筒状体を用いており、この保持部材5Aの内壁部5aに当該保持部材5Aを縮ませた状態で濾過膜10の外周縁部を保持させるようにした。
【0056】
そして、支持プレート7を濾過膜10の後面10a側から嵌め込んで当該濾過膜10の後面10aを支持させるとともに、原水を濾過する通常時に保持部材5Aの濾過膜10が保持されない部位が水圧によって変形しないように支持プレート7で規制する。
【0057】
かかる構成の浄水カートリッジ40では、図5(a)に示すように、原水が濾過される通常時には、上記第1実施形態と同様に、濾過膜10は隣接して配置されるものどうしの細孔3がオフセット配置されているため、原水中に含まれる不純物を効率的に除去することができる。
【0058】
そして、浄水カートリッジ40の下流側から水を逆流させて濾過膜10の洗浄を行う逆洗浄時には、図5(b)に示すように、濾過膜10に伝達される水圧によって濾過膜10が逆流方向に押される。この際、本実施形態では、ジャバラにより構成された保持部材5Aを縮ませた状態で濾過膜10の外周縁部を保持させるようにしているため、水圧によって保持部材5Aが伸び、これによって積層された平膜1A〜1Dの間隔が開いて平膜1A〜1D間に堆積された不純物を除去することができる。
【0059】
また、図6に示すように、本実施形態の濾過膜10には、上記第1実施形態と同様に、積層される平膜1A〜1Dどうしの細孔3を位置決めする位置決め手段としての凸部が設けられており、この凸部が平膜1A〜1Dの繊維によって構成されており、互いに向かい合う先端部に向けて縮径している。
【0060】
本実施形態では、例えば断面形状がテーパー形をした無機繊維を用いて、このテーパー状繊維を網目状に接合することで凸部を構成することができる。なお、その他の手段で断面がテーパー状の無機フィルターを構成してもよい。
【0061】
したがって、本実施形態の濾過膜10によれば、逆洗浄時に水圧によって隣接して配置される平膜(例えば1A、1B)の間隔が開いてしまっても、部分的に重なり合うようにオフセット配置された凸部50a、50bが、逆洗浄が終わった際に互いの隙間に入り込もうと動作して、互いの隙間に入り込んだ状態で固定されることとなるため、確実に隣接して配置される平膜(例えば1A、1B)の細孔3をオフセット配置させた状態で維持することが可能となる。なお、隣接して配置される平膜(例えば1B、1C)間では、X軸方向(図面左右方向)に延在してY軸方向(図面鉛直方向)に配列された凸部が、互いの隙間に入り込んだ状態で固定されることになる。
【0062】
さらに、本実施形態の凸部によれば、互いに向かい合う先端部に向けて縮径しているため、平膜1A〜1Dの繊維によって構成された凸部が逆洗浄が終わった際に自動的に互いの隙間に入り込もうと動作するため、位置決めの精度を向上させることができる。
【0063】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態には限定されず、種々の変形が可能である。例えば、上記第2実施形態では、ジャバラによって構成された保持部材5Aを用いたが、これに限定されず、バネやゴム等の材質で保持部材5Aを構成してもよい。また、上記実施形態では、平膜の繊維によって位置決め手段としての凸部を構成したが、別部材で平膜に凸部を設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1A〜1D 平膜
3 細孔
5、5A 保持部材
7 支持プレート
7a 孔部
10 濾過膜
25a 第1水路
25b 第2水路
100 水処理装置
V1 バルブ(水路切替手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を濾過する複数の細孔が設けられた複数の平膜を、隣接して配置されるものどうしの細孔が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させたことを特徴とする濾過膜。
【請求項2】
原水を濾過する複数の細孔が設けられた複数の平膜を、隣接して配置されるものどうしの細孔が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させた濾過膜と、
前記濾過膜の外周縁部を保持する保持部材と、
水を通過させる孔部を有するとともに、前記濾過膜の原水が浸入する側と反対側の面を支持する支持プレートとを備え、
前記濾過膜は、当該濾過膜に伝達される水圧によって伸縮可能な材質で構成されていることを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項3】
原水を濾過する複数の細孔が設けられた複数の平膜を、隣接して配置されるものどうしの細孔が互いに重ならないようにオフセット配置して積層させた濾過膜と、
前記濾過膜の外周縁部を縮んだ状態で保持することで、前記濾過膜に伝達される水圧の有無により積層された平膜どうしの間隔を伸縮させることが可能な保持部材と、
水を通過させる孔部を有するとともに、前記濾過膜の原水が浸入する側と反対側の面を支持する支持プレートと
を備えることを特徴とする浄水カートリッジ。
【請求項4】
前記濾過膜には、前記積層された平膜どうしの細孔を位置決めする位置決め手段が設けられていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の浄水カートリッジ。
【請求項5】
前記位置決め手段は、前記積層された平膜どうしの互いに向かい合う面に配列されて設けられて、当該配列された一方の列に対して他方の列が部分的に重なり合うようにオフセット配置された凸部であることを特徴とする請求項4に記載の浄水カートリッジ。
【請求項6】
前記凸部は、互いに向かい合う先端部に向けて縮径していることを特徴とする請求項5に記載の浄水カートリッジ。
【請求項7】
原水を導入して少なくとも浄化した浄水を得る請求項2〜6に記載の前記浄水カートリッジを用いたことを特徴とする水処理装置。
【請求項8】
導入された原水を前記浄水カートリッジの上流側から当該浄水カートリッジに導水可能な第1水路と、
前記第1水路に接続して設けられるとともに、導入された原水を前記浄水カートリッジの下流側から当該浄水カートリッジに導水可能な第2水路と、
前記第1水路と前記第2水路との分岐点に設けられて、当該第1水路および第2水路のいずれか一方に原水を導水させる水路切替手段と
を備えることを特徴とする請求項7に記載の水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−214236(P2010−214236A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61004(P2009−61004)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】