説明

濾過装置および濾過方法

【課題】 配管機構を単純化させ且つ逆洗による濾層部の均一洗浄性に優れた濾過装置を提供することにある。
【解決手段】 原水を濾過する濾層部が備えられ、該濾層部を透過した透過水を集水する集水管が複数列備えられ、該複数列の集水管に水を圧送する圧力渠が備えられ、前記圧力渠から前記集水管に水が移送されることにより濾層部が逆洗されるように構成されてなる濾過装置であって、
各集水管にかかる圧力差によって、圧力渠から集水管に移送された水を各集水管間で移送させるべく、各集水管を連通させる連通部が設けられてなることを特徴とする濾過装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、濾過装置および濾過方法に関し、例えば、原水を濾過する濾層部が備えられ、該濾層部を透過した透過水を集水する集水管が複数列備えられ、該複数列の集水管に水を圧送する圧力渠が備えられ、前記圧力渠から前記集水管に水が移送されることにより濾層部が逆洗されるように構成されてなる濾過装置、および前記濾過装置の濾層部を逆洗により洗浄する工程を備えてなる濾過方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の濾過装置は、例えば、河川水等の陸水から浄化水たる濾過池処理水を得るのに用いられている。
【0003】
斯かる濾過装置は、集水管の上面部に複数のオリフィスが分散して設けられ、濾層部で濾過された水が該オリフィスから集水管内に移送されて回収されるように構成されてなる。また、斯かる濾過装置は、原水に含まれる不純物が濾層部に蓄積されることにより該濾層部が目詰まりした際には、圧力渠から集水管に水が圧送され該水が前記オリフィスから濾層部に圧送されて該水により濾層部が洗浄(逆洗)されるように構成されてなる(例えば、特許文献1)。
【0004】
ところで、クリプトスポリジウム対策として、旧厚生省より1996年10月に“濾過池処理水の濁度を0.1度以下に維持すること”という暫定指針が通達された。濾過池処理水の濁度を0.1度以下に維持するには、濾層部に不純物が蓄積されないようにする必要がある。よって、濾層部に不純物が蓄積されないようにするために、これまで以上に濾層部全体を均一に洗浄すべく、逆洗時に各オリフィスにかかる水の圧力が均一となることが求められている。
【0005】
また、処理水濁度を安定させるために濾層部の粒径構成を不用意に乱すことのないように、スロースタート、スローダウンというような逆洗のための水の流速を漸増、漸減させる運転方法が提案されている。
この運転方法を採用した場合に於いても、当初設定された一定流速の際における逆洗水の圧力の均一性を保持することは言うに及ばず、変動する流速、特に低流速域においても逆洗水の圧力の均一性を保持する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特公平6−61411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の集水管では、逆洗水の圧力についての均一性は十分でなく、特に、上述の如く逆洗水の流速を変動させる場合に於いてはより一層均一性が不十分となり、その結果、濾層部全体を均一に洗浄できないという問題を有している。
【0008】
ところで、濾層部全体を均一に洗浄する対策としては、前記圧力渠から水が圧送される箇所から集水管の上流側先端に至るまでの距離を短くすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、斯かる濾過装置では、大面積で水処理を行うには、集水管と圧力渠との組み合わせをいくつも作製する必要が生じ、配管機構が複雑になってしまうという問題がある。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、配管機構を単純化でき、逆洗による濾層部の均一洗浄性に優れた濾過装置および濾過方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、原水を濾過する濾層部が備えられ、該濾層部を透過した透過水を集水する集水管が複数列備えられ、該複数列の集水管に水を圧送する圧力渠が備えられ、前記圧力渠から前記集水管に水が移送されることにより濾層部が逆洗されるように構成されてなる濾過装置であって、
各集水管にかかる圧力差によって、圧力渠から集水管に移送された水を各集水管間で移送させるべく、各集水管を連通させる連通部が設けられてなることを特徴とする濾過装置にある。
【0012】
さらに、本発明に係る濾過装置においては、好ましくは、前記集水管が、断面が中空の柱形状を有する外殻体と、該外殻体内に設けられた内殻体とにより構成され、
該内殻体が、該外殻体内部を第1流通部と第2流通部とに区画するように構成され、
前記外殻体の上面部には第1オリフィスが設けられ、該第1オリフィスから前記透過水が第1流通部に移送されるように構成され、
前記内殻体には第2オリフィスが設けられ、該第2オリフィスから第1流通部の透過水が第2流通部に移送されるように構成され、
該第2流通部の側面部の少なくとも一部が、外殻体の側面部の少なくとも一部で構成され、
該外殻体の側面部の少なくとも一部で構成された第2流通部の側面部の部分どうしに連通部が接続されてなる。
【0013】
また、本発明は、前記濾過装置の濾層部を用いて濾過を行い、該濾過部を逆洗により洗浄する工程を備えてなる濾過方法にある。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、配管機構を単純化でき、逆洗による濾層部の均一洗浄性に優れた濾過装置および濾過方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】一実施形態に係る濾過装置の一部破断概略斜視図。
【図2】一実施形態に係る濾過装置の模式図。
【図3】一実施形態に係る濾過装置の集水管を構成する有孔ブロックを示す一部破断概略斜視図。
【図4】一実施形態に係る濾過装置の有孔ブロックの断面図。
【図5】一実施形態に係る濾過装置の断面図。
【図6】一実施形態に係る濾過装置の断面図。
【図7】一実施形態に係る濾過装置の側面図。
【図8】連続等分布配管のモデル図。
【図9】種々のkd における静圧分布。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
なお、図1は、濾過装置の一部破断概略斜視図であり、図中の100は、濾過装置を示しており、101は、この濾過装置100に備えられている濾過槽本体を示している。
103は、この濾過槽本体101の底面をなす底盤部101aの上方に敷設されて複数本の集水管を形成する有孔ブロックを示している。
また、図2は、濾過装置100に於ける集水管2、圧力渠110及び連通部4の位置関係を示す模式図である。
更に、図3は、この有孔ブロック103の構造を示す一部破断を含む概略斜視図であり、図4は、有孔ブロック103を軸方向に直交する面で切断した断面図である。
【0017】
図1、2に示すように、本実施形態の濾過装置100は、被処理水たる原水が収容される濾過槽本体101と、前記原水を下向流で通水させて濾過するように前記濾過槽本体101内に形成されている濾層部102と、前記濾層部102を通過した透過水(濾過水)を集水するとともに前記濾層部102に散気を実施すべく前記濾過槽本体101の底面をなす底盤部101aの上方且つ濾層部102の下方に配された複数本の集水管2とを備えている。
前記集水管2は、それぞれ、筒状で上面部に複数のオリフィスが形成された有孔ブロック103(図3、4参照)が軸方向(長手方向)に連結されて形成されており、その上面部を除いた外表面部が固化されたモルタル108中に埋設された状態で底盤部101aに固定されている。
また、本実施形態の濾過装置100は、前記濾層部102を支持するための支持材層105を前記濾層部102と前記集水管2との間に備えている。
【0018】
本実施形態の濾過装置100は、前記集水管2に連結されて集水管2に流入された透過水をさらに集水するように且つ逆洗時には集水管2に水を逆流圧送するように構成された圧力渠110を備え、該圧力渠110から配水管111を介して濾過槽本体101の外部に排出させるよう構成され、更に、前記圧力渠110から前記集水管2に水が圧送されることにより濾層部102が逆洗されるように構成されてなる。
また、本実施形態の濾過装置100は、逆洗によって濾層部102の上面側に噴出する水(洗浄排水)を濾過槽本体101から外部に排出するための排水トラフ106と、該排水トラフ106から前記洗浄排水が流入される排水ピット107とを備えている。
更に、本実施形態の濾過装置100は、前記濾層部102の逆洗浄等のために有孔ブロック103による散気を実施させるべく、該有孔ブロック103内に空気を供給する気体供給配管104を備えている。
【0019】
前記濾過槽本体101には、平面視矩形の底盤部101aが形成されており、該底盤部101aの周縁に立設された側壁101b1、101b2、101b3、101b4により略直方体形状の内部スペースが形成されている。
また、この底盤部101aは、モルタルやコンクリートなどのセメント組成物が打設、固化されて形成されている。
【0020】
前記濾層部102は、従来公知の濾過装置における濾層と同様に構成されており、砂、アンスラサイト、活性炭、プラスチック濾材等の粒状物(濾過媒体)が濾過槽本体101の深さ方向に一定の厚みとなるように充填されて形成されている。
なお、要すれば、前記濾過媒体には、微生物を表面に付着させて用いることも可能である。
前記支持材層105も、従来公知の濾過装置における支持材層と同様に構成されており、本実施形態においては、多孔プレートが用いられている。
前記多孔プレートは、例えば、直径数mmのビーズを多数接合して構成された板状構造のものを用いうる。
この多孔プレートを形成する前記ビーズとしては、ポリエチレン等のポリオレフィン樹脂といったプラスチックの他、セラミック、焼結金属等が使用可能である。
該多孔プレートに代えて砂利を敷き詰めて支持材層105を形成させることも可能であり、砂利を用いた場合、前記濾層部102を形成する粒状物よりも粒径の大きな砂利を濾過槽本体101の深さ方向に一定の厚みとなるように充填して形成することができる。
【0021】
前記圧力渠110は、前記集水管2の最下流部(具体的には、集水管2の一端側の近傍部で且つ有孔ブロック103の下面に開口部が設けられた部分)の下方に配されており、各集水管2で集められた水を更に集水すべく、集水管2よりもさらに下方に向けて掘り込まれた状態となるように形成されている。
【0022】
本実施形態の濾過装置100は、図2に示すように、各集水管2にかかる圧力差によって、圧力渠110から集水管2に移送された水を各集水管2間で移送させるべく、各集水管2を連通させる連通部4が設けられてなる。
【0023】
前記集水管2における前記連通部4により水が移送される部分(即ち、連通部4が備えられている部位)は、好ましくは、前記圧力渠110から水が圧送される箇所(即ち、圧力渠110が連結されている部位)から集水管2の上流側先端に至るまでの半分以下の距離の地点に形成されてなる。即ち、連通部4により水が移送される部分は、前記圧力渠110から水が圧送される箇所と上流側先端との間で水が圧送される箇所側寄りに形成されてなる。本実施形態の濾過装置100は、斯かる構成を有することにより、オリフィス同士にかかる圧力がより一層均一となるため、逆洗による濾層部102の洗浄効率をより一層高め得るという利点がある。圧力渠110から水が圧送される箇所から集水管2の上流側先端に至るまでの距離が4m以上である場合に、特に、本実施形態の濾過装置100は、斯かる構成が好ましく適用される。
また、該部分は、より好ましくは、該箇所から該上流側先端に至るまでの1/3以下の距離の地点で且つ該箇所から200mm以上離している地点に形成されてなる。本実施形態の濾過装置100は、該部分が、該箇所から200mm以上の距離の地点に形成されてなるという構成を有することにより、圧力渠110から集水管2へと接続する部分の底面積が小さくなることによる強度不足を解決できるという利点がある(この点、詳しく説明すると、圧力渠110の端部に架かる有孔ブロック103には、上部の濾層や支持材層105等の重量物が積載される。従って、この付近の有孔ブロック103本体に開口部を設けたりすることは有孔ブロック103の耐荷重上避けることが好ましいことから、本実施形態の濾過装置100は、上記構成を有することにより、上記利点がある。)。また、本実施形態の濾過装置100は、該部分は、該箇所から該上流側先端に至るまでの1/3以下の距離の地点に形成されてなることにより、オリフィス同士にかかる圧力が更により一層均一となるため、逆洗による濾層部102の洗浄効率を更により一層高め得るという利点がある。圧力渠110から水が圧送される箇所から集水管2の上流側先端に至るまでの距離が6m以上である場合に、特に、本実施形態の濾過装置100は、斯かる構成が好ましく適用される。
【0024】
前記集水管2は、それぞれ複数の有孔ブロック103が長手方向に連結されて構成されている。
図3,4に示すように、前記有孔ブロック103は、断面が矩形で筒形状を有する外殻体13aと、この外殻体13a内に配された、二枚の仕切り壁により断面が逆V字状となるように形成された内殻体13bとを有している。
前記内殻体13bは、該外殻体13a内部を二つの第1流通部13gと第2流通部13fとに区画するように前記外殻体13a内に配されている。
詳しくは、前記内殻体13bは、その前記仕切り壁により形成されている逆V字状の頂部を外殻の上面部13cの内表面の略中央部に沿って当接させ、この頂部から逆V字状に伸びる二枚の仕切り壁の内の一方13b1の先端部を外殻体13aの側面部13dの内の一方13d1の内表面の略中央部に沿って当接させ、他方13b2の先端部を前記一方の側面部13d1と対向する側面部13d2の内表面の略中央部に沿って当接させて外殻体13a内に配されている。
このことにより、互いに対向する側面部13d1、13d2の下方側の約半分と外殻体13aの下面部13eと前記内殻体13bとにより断面逆ホームベース形に形成された中央通路たる第2流通部13fと、該中央通路13fの上部左右に形成された側部通路たる第1流通部13gとが有孔ブロック103に形成されている。
【0025】
前記第1流通部13gの断面積は、好ましくは、1.0×10-2〜2.0×10-22 、より好ましくは、1.0×10-2〜1.7×10-22 である。
【0026】
前記第2流通部13fの断面積は、好ましくは、3.0×10-2〜6.0×10-22 、より好ましくは、3.4×10-2〜6.0×10-22 である。
【0027】
本実施形態に於いて、前記有孔ブロック103には、前記支持材層105を形成する多孔プレート13pが有孔ブロック103の上面部13cを覆うように取り付けられている。
すなわち、本実施形態の有孔ブロック103には、当該有孔ブロック103を底盤部101aの上方に配列することにより、同時に前記支持材層105を形成し得るように、前記多孔プレート13pが取り付けられている。
【0028】
前記集水管2は、前記外殻体13aの上面部に第1オリフィス24aが設けられ、前記濾層部102を流下した透過水が該第1オリフィス24aから第1流通部13gに移送されるように構成されてなる。
【0029】
前記第1オリフィス24aは、開口比(濾層部102平面積(m2 )当たりのオリフィス全面積の比率(%))が、好ましくは、0.5〜1.5%、より好ましくは、0.78〜1.45%となるように形成されている。またその時の第1オリフィス24aは、オリフィスの口の断面形状が円形の場合、口径が4.5〜6.0mmであり、オリフィスの口の断面形状が楕円形の場合、口の断面積が15.9〜28.3mm2 である。
【0030】
また、前記集水管2は、前記内殻体13bに第2オリフィス24bが設けられ、第1流通部13gの透過水が該第2オリフィス24bから第2流通部13fに移送されるように構成されてなる。
【0031】
前記第2オリフィス24bは、開口比(濾層部102平面積(m2 )当たりのオリフィス全面積の比率(%))が、好ましくは、0.6〜0.9%、より好ましくは、0.70〜0.85%である。またその時の第2オリフィス24bは、オリフィスの口の断面形状が円形の場合、口径が20〜22mmであり、オリフィスの口の断面形状が楕円形の場合、口の断面積が314〜380mm2 である。
【0032】
更に、前記各集水管2は、第2流通部13fの側面部の少なくとも一部が外殻体13aの側面部の少なくとも一部で構成されるようになっており、図5に示すように、該外殻体13aの側面部の少なくとも一部で構成された第2流通部13fの側面部にそれぞれ連通部4が設けられて構成されてなる。
そして、隣接する各集水管2同士は、第2流通部13fの側面部に設けられた連通部4を介して、互いに連通するようになっている。
【0033】
前記連通部4は、連通部4を通過する水の全圧力損失がオリフィスを通過する水の全圧力損失よりも小さくなるように形成されてなる。
【0034】
前記連通部4の断面積は、好ましくは、3.0×10-2〜6.0×10-22 、より好ましくは、3.0×10-2〜4.0×10-22 である。
【0035】
本実施形態の濾過装置は、上記の如く構成されてなるが、次ぎに、本実施形態の濾過方法について説明する。
【0036】
本実施形態の濾過方法は、本実施形態の濾過装置100を用いて濾過を行い、濾層部102を逆洗により洗浄する工程を備えてなる方法である。
【0037】
本実施形態の濾過装置および濾過方法は、上記のように構成されているので、以下の利点を有するものである。
【0038】
即ち、本実施形態の濾過装置100は、第2流通部13fの側面部の少なくとも一部が外殻体13aの側面部の少なくとも一部で構成され、該外殻体13aの側面部の少なくとも一部で構成された第2流通部13fの側面部の部分どうしに連通部4が接続されてなることにより、連通部4の機構をより一層単純化させ得るという利点がある。
【0039】
尚、本実施形態の濾過装置および濾過方法は、上記構成により、上記利点を有するものであったが、本発明の濾過装置および濾過方法は、上記構成に限定されず、適宜設計変更可能である。
【0040】
例えば、本実施形態に於いて、有孔ブロック103は、第2流通部13fの側面部の少なくとも一部が外殻体13aの側面部の少なくとも一部で構成されたが、本発明に於いて、有孔ブロック103は、図6に示すように、外殻体13aの側面部が第2流通部13fの構成要素となっていない態様のものであってもよい。即ち、第2流通部13fが内殻体13bと外殻体13aの上面部及び下面部13eとで構成されてなる態様のものであってもよい。
また、斯かる態様に於いては、図6に示すように、各連通部4は、第2流通部13fの下面部13eに設けられてなり、隣接する各集水管2同士は、第2流通部13fの下面部13eに設けられた連通部4を介して、互いに連通するように構成されていてもよい。
【0041】
更に、本発明に於いては、圧力渠110の配される位置は、特に限定されず、図7(イ)に示すように、集水管2の一端側の近傍部下方であってもよく、また、(ロ)に示すように、集水管2の中央部下方であってもよい。
【0042】
<モデルについて>
本実施形態の濾過装置および濾過方法は、上記構成を満たすように構成されてなることにより、配管機構を単純化させ且つ逆洗による濾層部の洗浄効率を高め得る。このことは、下記のモデル計算の結果から明らかとなる。モデルについて以下に説明する。
【0043】
一般に、配管は、メインの流路(主管)から多数の分岐管が出ており、さらにその分岐管から均一に流体が流出するような場合には、連続等分布配管による近似モデルが有効である(日本機械学会編:技術資料 管路・ダクトの流体抵抗(1979)参照)。
【0044】
まず、連続等分布配管の概要を以下に示す。図8(連続等分布配管のモデル図)のような配管を考える。主管(「分配管」ともいう。)に対して垂直にn個の分岐管(「支管」ともいう。)が接続されており、n番目の分岐管からは水がqnだけ流出している。ここで分岐管が無数に存在し、さらに全ての分岐管から水が均一に流出する場合を考える。主管に水が流入する流入口を原点として主管の軸方向に沿ってx軸を取り、主管の長さ(軸方向の長さ)をL、x=Lでの静圧をpe、流体の密度をρ、管摩擦係数をλ、主管の代表長さ(相当直径(内径))をD、あるxにおける静圧及び流速をそれぞれp,Vとすれば、支管の静圧(xにおける静圧)pの分布は下記数式1となる。
【0045】
【数1】

【0046】
ここで、分配管特性パラメータkdを下記数式2とし、種々のkdにおける静圧分布を求めると図9のようになる。図9に示すように、kd<0では、ディフューザー作用による昇圧が管摩擦による圧力低下よりも大きくなる。よって、前記流入口から離れる地点ほど、圧力は高くなる。
【0047】
【数2】

【0048】
流れ方向に対して垂直な向きに水を流出させる力は静圧に比例する。すなわち、逆洗工程において水を均一に流出させるためには、水路内における静圧が均一である必要があり、kdの絶対値を小さくすること、あるいは動圧、すなわち流速を小さくすることが有効である。
【0049】
まず、複数のラテラル(集水管)間における圧力勾配の有無を確認するため、図8において、主管を圧力渠とし、分岐管をラテラルとして、連続等分配による近似モデルを用いた。
【0050】
まず、以下の前提条件を仮定した。即ち、圧力渠は、長さ(軸方向の長さ)Lが9.0m、代表長さ(相当直径(内径))Dが1.53mで、断面積が2.75m2であるとする。また圧力渠から分岐したラテラル(集水管)からは、0.7m/minで水が流出するとする。上記内容と同様の方法によって圧力渠入り口での流速は0.41m/sであるとする。ただし、水の密度及び粘性係数をそれぞれ1000kg/m3、0.001Pa・sとする。
上記前提条件より、レイノルズ数Reは6.23×105(-)なので、管摩擦係数はホワイトの式を用いて下記数式3となり、下記数式4となる。よって分配特性パラメータは下記数式5となる。すると圧力渠内部で図9のkd=‐1(-)に近い圧力勾配が発生するため、水の等分配ができなくなる。すなわち、ラテラル間の流量にも勾配が発生して、均一に水を流出させることができない。
【0051】
【数3】

【0052】
【数4】

【0053】
【数5】

【0054】
以下では、連通部たる連通ブロックの具体的な効果を検証する。前提条件を表1に示す。
【0055】
【表1】

【0056】
表1の条件で運転した場合、分配管(有孔ブロック入口)地点での圧力は1.7×104Paとなる。一方、圧力渠に水が流入する圧力渠入口での動圧pは83Paなので、数式1より、下記数式6となり、圧力渠の両端における圧力差は0.5%程度となる。次に隣接するラテラル間の差圧は、最大約5Paであり、これは圧力渠入口での圧力の約0.03%に相当する。いま、連通ブロックをオリフィスとみなせば、ラテラル間のオリフィスを最大0.06m/sの流速で水が流れる。連通ブロックは、圧力渠の端から250mmから300mmの位置に設置したとすると、流入水が連通ブロック断面を通過するのに約2.9秒間かかるので連通ブロックを通過可能な水量は、圧力渠に流入する水量に対して50%以上あり、隣接するラテラル間の差圧はほぼ完全に緩和できると期待できる。
【0057】
【数6】

【0058】
連通ブロックは、軸方向の長さ(ラテラル間の距離)が30〜50mm程度の流路であり、有孔ブロックの幅(側面の長さ)(軸方向の長さ)(270mm)と比較して非常に薄く、以下ではオリフィスとして考える。オリフィスの流量係数を0.61(-)とし、5.2Paの差圧に相当する流速を求めると0.06m/sとなる。連通ブロック開口部の断面積は0.08(m)×0.77(m)=6.2×10-3m2の長方形でとし、圧力渠から該開口部に流入してきた水がラテラルの断面を通過するのにかかる時間は0.77(m)/0.27(m/s)=2.9sなので、この時間内に圧力差が緩和できれば連通ブロックによって圧力渠によって発生した圧力差をなくすことができる。
【0059】
よって、ベルヌーイの定理より、流量比は、圧力比の1/2乗に比例するので、5.2(Pa)/17000(Pa)×100≒0.03(%)より、圧力渠に由来する流量のばらつきは約0.015%となる。この点、より詳細に説明すると、流量比(v1 /v2 )と、圧力比(P1 /P2 )の関係は、ベルヌーイの定理より、下記数式7となるが、P1とP2どうしの値が非常に近い値であるのでP1/P2=(1+3×10-4)は1に非常に近い(下記数式8参照)。そのため、流速すなわち流量は上式に従って0.5×3×10-4×100=0.015%となる。
【0060】
【数7】

【0061】
【数8】

【0062】
したがって、1列のラテラル当りの流量は1.9×10-2m3/sで、0.015%に相当するのは2.9×10-6m3/sである。連通ブロック断面を0.06m/sで水が通過すると、ばらつきを緩和するのに必要な時間は約8msであり、連通ブロックの断面を通過するのに必要な時間と比較して極めて短い時間である。
【0063】
以上から、連通ブロックによって、圧力渠で発生した圧力勾配を緩和可能となる。
【0064】
さらに、連通ブロックの設置位置について検討する。連通ブロックを圧力渠に近い位置に設置するほど、連通ブロックよりも手前のブロックではラテラル間での差圧が抑制され、水オリフィスを通過する水量の差が抑制され、より一層均一な流出となる。そのため、連通ブロックは、好ましくは、圧力渠から最も近い位置に設置される。
【符号の説明】
【0065】
2:集水管、4:連通部、13a:外殻体、13b:内殻体、13c:上面部、13d:側面部、13e:下面部、13f:第2流通部、13g:第1流通部、13p:多孔プレート、24a:第1オリフィス、24b:第2オリフィス、100:濾過装置、101:濾過槽本体、101a:底盤部、101b1 、101b2 、101b3 、101b4 :側壁、102:濾層部、103:有孔ブロック、104:気体供給配管、105:支持材層、106:排水トラフ、107:排水ピット、108:モルタル、110:圧力渠、111:配水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原水を濾過する濾層部が備えられ、該濾層部を透過した透過水を集水する集水管が複数列備えられ、該複数列の集水管に水を圧送する圧力渠が備えられ、前記圧力渠から前記集水管に水が移送されることにより濾層部が逆洗されるように構成されてなる濾過装置であって、
各集水管にかかる圧力差によって、圧力渠から集水管に移送された水を各集水管間で移送させるべく、各集水管を連通させる連通部が設けられてなることを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
前記集水管が、断面が中空の柱形状を有する外殻体と、該外殻体内に設けられた内殻体とにより構成され、
該内殻体が、該外殻体内部を第1流通部と第2流通部とに区画するように構成され、
前記外殻体の上面部には第1オリフィスが設けられ、該第1オリフィスから前記透過水が第1流通部に移送されるように構成され、
前記内殻体には第2オリフィスが設けられ、該第2オリフィスから第1流通部の透過水が第2流通部に移送されるように構成され、
該第2流通部の側面部の少なくとも一部が、外殻体の側面部の少なくとも一部で構成され、
該外殻体の側面部の少なくとも一部で構成された第2流通部の側面部の部分どうしに連通部が接続されてなる請求項1記載の濾過装置。
【請求項3】
前記請求項1又は2記載の濾過装置を用いて濾過を行い、濾層部を逆洗により洗浄する工程を備えてなる濾過方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−143407(P2011−143407A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−63856(P2011−63856)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【分割の表示】特願2009−241518(P2009−241518)の分割
【原出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【出願人】(000192590)株式会社神鋼環境ソリューション (534)
【Fターム(参考)】