説明

濾過装置

【課題】濾過装置において、効率良い濾過を行うとともに、耐久性の高い濾過フィルターを備えた構造を得る。
【解決手段】産業機械において使用後の汚濁液中から固体と液体とに濾過する濾過フィルター20を、回転駆動される円筒状の濾過ドラムの外周面に形成された開口部2に対して着脱自在にした濾過ドラム1を備えた濾過装置であって、前記濾過フィルター20は、金属で形成され前記濾過ドラム外側に位置する第1の平織網15と、金属で形成され前記濾過ドラム内側に位置し前記第1の平織網15より大きい網目を有する第2の平織網16と、を焼結して密着させて構成するとともに、前記第2の平織網16は、前記第1の平織網15より太い部材で構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属切削作業を行うにあたって排出される切粉と称する金属片を含んだ切削油を濾過する濾過装置に関し、特に、濾過装置に装着されて回転駆動する濾過ドラムに取り付けられた濾過フィルターの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
金属切削加工の使用後に切粉を含んだ状態になった切削油を、切粉と切削油に分離して再使用可能にする切削油(以下、浄化切削油と言う)を得るための濾過装置は、各種型式のものが存在している。その中の一つとして、胴周に濾過フィルターを張設した濾過ドラムを切削油投入槽の中で回転するように配置し、前記切削油投入槽に切削油を投入し、投入された切削油を前記濾過ドラム内で切粉と油に分離し、分離した切粉を濾過ドラム外側で集め、集めた切粉を複数の掻取板が装着されたチェーンで構成された搬出手段で切削油投入槽外に搬出し、濾過された油は濾過ドラム内に連通する受槽に流出させるという構造のものが存在する(特許文献1参照)。
【0003】
上記構造の濾過装置には、回転駆動される濾過ドラムの外周面に形成された開口部に対して濾過フィルターが着脱自在に巻き付けられており、所定運転時間の経過後または破損が発生した場合に交換するように構成されている。
また、濾過ドラム内には、空気や液体を内側から外側に向けて噴射する噴射ノズルが設けられ、濾過フィルターも目詰を排除するように構成されている。
【特許文献1】特公平3−8802
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記構造の濾過装置において、濾過フィルターは、クリーンな切削油を得るために所定番手のものが使用されるが、網目が細かすぎると目詰がし易くなり、効率良い稼働に支障を来たすという問題点があった。
【0005】
また、濾過フィルターの一部が損傷した場合には、濾過装置の稼動を停止して交換作業を行う必要があり、効率良い稼働を実現するためには濾過フィルターの耐久性を考慮する必要があった。
【0006】
本発明は上記実情に鑑みてなされたもので、効率良い濾過を行うとともに、耐久性の高い濾過フィルターを備えた濾過装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明は、産業機械において使用後の汚濁液中から固体と液体とに濾過する濾過フィルター20を、回転駆動される円筒状の濾過ドラムの外周面に形成された開口部2に対して着脱自在にした濾過ドラム1を備えた濾過装置であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記濾過フィルター20は、金属で形成され前記濾過ドラム外側に位置する第1の平織網15と、金属で形成され前記濾過ドラム内側に位置し前記第1の平織網15より大きい網目を有する第2の平織網16と、を焼結して密着させて構成するとともに、前記第2の平織網16は、前記第1の平織網15より太い部材で構成されている。
【0008】
請求項2の発明は、産業機械において使用後の汚濁液中から固体と液体とに濾過する濾過フィルターを、回転駆動される円筒状の濾過ドラムの外周面に形成された開口部に対して着脱自在にした濾過ドラムを備えた濾過装置であって、次の構成を含むことを特徴としている。
前記濾過フィルター20は、金属で形成され前記濾過ドラム内側に位置する第1の平織網と、金属で形成され前記濾過ドラム外側に位置し前記第1の平織網より大きい網目を有する第2の平織網と、を焼結して密着させて成るとともに、前記第2の平織網は、前記第1の平織網より太い部材で構成されている。
【0009】
また、請求項3の発明は、請求項1又は請求項2の濾過装置において、前記第1の平織網15及び第2の平織網16は、ステンレスで形成されたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、濾過フィルターを第1の平織網と第2の平織網との二層構造により構成したので、耐久性の向上を図ることができる。
また、二層構造を得るに際して焼結して密着させたので、強度が強化されるとともに、平織網同士の隙間にスラッジ等が入り込むのを防止して目詰を防ぐことができる。
また、二層構造の各平織網をステンレスで構成することで、濾過フィルターの耐蝕性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態の一例について、図面を参照しながら説明する。
最初に濾過装置の全体構造の概略について、図1を参照して説明する。
濾過装置は、工作機械(産業機械)100の下方に設置し、工作機械100から切削加工後に発生した粒度の異なる切粉と切削油の混在した被濾過切削油を取り込み、この切削油から切粉を濾過して浄化切削油を分別する装置である。
図1においては、切削油から切粉を濾過する濾過装置としたが、油脂類を固形物から分離する食品機械や、土木機械であって土石の混在した汚濁液から粒度に応じた土砂を濾過する装置等にも適用することができる。
【0012】
濾過装置は、工作機械100から発生し切粉と切削油(液剤)の混在した汚濁状態になっている被濾過切削油を一時的に貯蔵する貯蔵槽(切削油投入槽)107と、貯蔵槽107内に回転するように配置され被濾過切削油の液面Lにより略1/2の高さまで浸される濾過ドラム1と、上流側の投入口(図示せず)から下流側の切粉排出口108にかけて切粉を連続的に搬送するための複数の掻取板112が設けられたエンドレスの左右チェーン(搬出手段)110、111とを具備して構成されている。
【0013】
左右チェーン110、111はギアードモータの駆動力を得て、図中の矢印A方向に移動するとともに、左右チェーン110、111の途中部位において、濾過ドラム1の外周面の右側の一部に固定されたドラムスプロケット41に対して歯合するように構成されている。
そして、左右チェーンは、装置の上流側に配設されたスプロケット118により180度方向転換されて、図中の破線矢印方向に向かうように構成されている。
【0014】
濾過ドラム1の外周面には濾過フィルター20が張設され、濾過された後の浄化切削油が濾過ドラム外に流出するように、濾過ドラム内部に連通するクリーン槽101が設けられている。
また、濾過ドラム1は予め完成した状態のものを複数のボルトを使用して貯蔵槽107内部に固定するものであり、この濾過ドラム1の外周面において装着されている所望の濾過能力の番手の濾過過フィルター20は交換できるように固定されている。
【0015】
濾過ドラム1の内部には回転の主軸4内を通して供給された液体を噴出する噴出管が設けられている。すなわち、主軸内に供給される液体は、クリーン槽101内に貯蔵される浄化切削油をポンプにより濾過ドラム1の内側から勢い良く噴射するようにして、濾過フィルター20面に付着して残留した切粉等を内面側(浄化切削油の流出側)から吹き飛ばすようにして、濾過フィルターの目詰防止を効果的に行うように構成されている。
【0016】
上記構成により、被濾過切削油中で沈降した切粉が濾過ドラムの回転及び左右チェーン110,111の回転により掻取板112で上方に搬送されて、切粉排出口108において外部に排出できるように構成されている。
また、クリーン槽101内には、濾過フィルター20の濾過能力に応じて浄化された浄化切削油が貯蔵される。そして、貯蔵された浄化切削油は、精密切削加工用などに繰り返し使用するとともに、濾過フィルターの洗浄用としてもその一部が用いられる。
【0017】
次に、濾過ドラム1の詳細構造について、図2及び図3を参照しながら説明する。
濾過ドラム1は、円筒状になるように構成されており、回転軸4に連結された軸受(図示せず)に対して回動自在に保持されている。また、回転軸4は中空管から構成されており、噴射ノズル4aからクリーン槽のクリーン液を濾過フィルター20に向けて噴射する「逆洗浄」を可能にしている。
【0018】
円筒状の濾過ドラム1には、矢印方向のドラム回転方向に沿う一対のドラム縁部の取付け面3a、3bと、ドラム回転中心軸に沿う一対のドラム面部の取付け面5a、5bを夫々縁部に形成することで合計3個所の開口部2が等間隔で形成されている。また、この各開口部2の中央にはフィルターの弛みを防止するとともに、補強部材を兼用した架橋部40が適宜設けられている。
【0019】
一方、上記のドラム面部の取付け面5a、5bには図示のように複数のネジ孔5cが設けられており、これらのネジ孔5cに図示の解除位置と、後述する固定位置の間になるようにドライバーなどの工具で操作される締結手段としての六角穴付きボルト6が設けられる。これらのボルト6は、図示のような皿形状の頭部を設けでおり、それぞれ螺合して結合されている。また、これらのボルト6の両側には位置決め用の案内ピン7が固定されている。
【0020】
濾過フィルター20は、縁部10と、この縁部10に固定される第1の平織網15と、第1の平織網15に対して焼結して密着させる第2の平織網16とを有して構成されている。焼結して密着するのは、各平織網15,16の強度の向上を図るためである。また平織網同士を密着させることにより、両者の隙間にスラッジが入り込んで目詰まりすることを防止する効果を有している。
縁部10は、ドラム縁部の取付け面3a,3bに対応する縁部10a、10bと、ドラム面部の取付け面5a、5bに対応する縁部11a、11bにより方形状に構成され、縁部11a、11bには、前記各ボルト6の頭部に対して一対一に対応する取付け孔12と、前記案内ピン7に挿通される案内孔13とが形成されている。
【0021】
第1の平織網15はステンレスで構成された細腺を平織で格子状とすることで所定番手の網を形成したものであり、第1の平織網15に対してその内側位置に第1の平織網15より大きな格子状の網目を有する同一素材の一回り面積が小さい第2の平織網16が焼結密着されて二層構造を構成している。平織網同士を燃結密着することで濾過フィルターとして使用する場合において、切粉(金属粉)の目詰まりが少なく、剥離し易い構造とすることができる。また、前記第2の平織網16は、前記第1の平織網15より太い部材(ステンレス細線)で構成されている。第2の平織網16を太い部材で形成することで、濾過フィルター20全体の強度を向上させることができる。また、二層構造の各平織網15,16をステンレスで構成することで、濾過フィルター20の耐蝕性を向上させることができる。
このように構成された濾過フィルター20を濾過ドラム1に対して3枚使用し、例えば破損した場合に一枚毎に交換可能にしている。
したがって、濾過フィルター20は、濾過ドラム1の外側位置に第1の平織網15が配置され、第1の平織網15より内側位置に第2の平織網16が配置され、濾過ドラム1において工作機械から排出される使用後の汚濁液を固体と液体とに濾過するようになっている。
【0022】
濾過フィルター20は、その外側から枠体30により固定される。すなわち、解除位置に位置するように回転されたボルト6に対して枠体30をスライドするようにセットして固定するようになっている。このために枠体30は、横方向から入り込むU字溝32と、辺の両端に穿孔された案内孔33とを有する一対の部材31a、31bと、全長が可変かつ可変後の状態を固定金具35により維持する機能を有する機能部材であるホースバンド34が一体的に固定されて形成されている。この枠体30は、上記の濾過フィルター20の外形寸法に略合致するようにして3個分が準備され、各案内孔33が濾過ドラムのピン7に、各U字溝32が濾過ドラムのボルト6に嵌合することで濾過ドラム1に対して濾過フィルター20が固定される。
【0023】
図3は、以上のように準備された濾過フィルター20を濾過ドラム1に固定し、液面L中に設置した状態を示すものである。図3に示すように、3個所に形成された開口部の内の一つを液槽の液面Lより上にできるようにしている。このために、交換作業のときに、液中に手を入れずに交換できることになる。また、液中の残りの2枚の濾過フィルターは、取り外さないので、濾過ドラム1が液槽中に設置される状態で交換しても、汚濁液が濾過ドラム1中に進入しないことになるので、液槽から汚濁液を完全に抜き出す必要がなくなる。
【0024】
一方、ボルト6は、完全に取り外すことなく、枠体30を開口部2側から入り込むようにすればU字溝32が全てボルト6の胴部に入るようにしているので、ボルト6の紛失を解消することができる。
【0025】
上記の例では、第1の平織網15に対して一回り面積が小さい第2の平織網16をその内側に焼結密着するようにして二層構造を構成したが、第2の平織網16の周囲に縁部を設けて濾過ドラム1への固定を行うとともに、第2の平織網16に対して第1の平織網15を小さく形成し、第2の平織網16の外側に第1の平織網15を焼結密着するようにしてもよい。すなわち、二層構造の濾過フィルター20において、外側に細かい網目を有する第1の平織網15が配置され、その内側に大きな網目を有する第2の平織網16が配置する構造であればよい。
【0026】
上記例では、記濾過フィルター20において、濾過ドラム内側に第1の平織網15を位置し、濾過ドラム外側に第1の平織網より大きい網目を有する第2の平織網16を位置させているが、これとは逆に、濾過ドラム外側に第1の平織網を位置し、濾過ドラム内側に第1の平織網より大きい網目を有する第2の平織網16を位置させる構成であってもよい。第1の平織網及び第2の平織網は、上述した例と同様に焼結して密着させている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の濾過装置の使用状態を示した一部断面説明図である。
【図2】本発明の濾過装置の濾過ドラムの構造を説明するための分解斜視説明図である。
【図3】図2の濾過ドラムのX−X線断面説明図である。
【符号の説明】
【0028】
1 濾過ドラム
2 開口部
3 ドラム縁部の取り付け面
5 ドラム面部の取り付け面
10a、10b、11a、11b 縁部
15 第1の平織網
16 第2の平織網
20 濾過フィルター
30 枠体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業機械において使用後の汚濁液中から固体と液体とに濾過する濾過フィルターを、回転駆動される円筒状の濾過ドラムの外周面に形成された開口部に対して着脱自在にした濾過ドラムを備えた濾過装置であって、
前記濾過フィルターは、
金属で形成され前記濾過ドラム外側に位置する第1の平織網と、
金属で形成され前記濾過ドラム内側に位置し前記第1の平織網より大きい網目を有する第2の平織網と、を焼結して密着させて成るとともに、
前記第2の平織網は、前記第1の平織網より太い部材で構成された
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項2】
産業機械において使用後の汚濁液中から固体と液体とに濾過する濾過フィルターを、回転駆動される円筒状の濾過ドラムの外周面に形成された開口部に対して着脱自在にした濾過ドラムを備えた濾過装置であって、
前記濾過フィルターは、
金属で形成され前記濾過ドラム内側に位置する第1の平織網と、
金属で形成され前記濾過ドラム外側に位置し前記第1の平織網より大きい網目を有する第2の平織網と、を焼結して密着させて成るとともに、
前記第2の平織網は、前記第1の平織網より太い部材で構成された
ことを特徴とする濾過装置。
【請求項3】
前記第1の平織網及び第2の平織網は、ステンレスで形成された請求項1又は請求項2に記載の濾過装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−83105(P2007−83105A)
【公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−271921(P2005−271921)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【出願人】(500562422)モスニック株式会社 (13)
【Fターム(参考)】