説明

濾過部材洗浄システム

【課題】効果的なタイミングで濾過部材に逆洗浄を行う濾過部材洗浄システムを提供する。
【解決手段】被処理水W1の濾過を行う濾過部材23を有する濾過処理装置2と、一次側領域21から二次側領域22に向かって被処理水W1を流通させる被処理水流通手段42と、濾過部材23に二次側から一次側に向けて洗浄液W3を供給する洗浄液供給手段62と、一次側領域21と二次側領域22との圧力差の測定を行う圧力差測定手段3と、設定された閾値に基づいて洗浄液供給手段62の起動の判定を行う判定手段81と、判定手段81による判定結果に基づいて洗浄液供給手段62の起動の制御を行う制御手段83とを備え、判定手段81は、洗浄液供給手段62による洗浄液W3の供給終了後において、閾値を、圧力差測定手段3により測定された圧力差である測定圧力差値に基づいて算出される洗浄後圧力差値に所定のオフセット値を加えた値に、再設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムを構成する濾過処理装置における濾過膜モジュール等の濾過部材を洗浄する濾過部材洗浄システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、工場廃水や生活排水などの被処理水(原水)から高純度の処理水(浄化水)を生産し、処理水を各種プロセス水、中水、雑用水等に使用可能とする水処理システムが知られている。水処理システムにおいては、被処理水に対して、例えば、濾過処理装置による濾過処理が行われる。
濾過処理装置は、例えば、濾過部材として、一次側から二次側に向かって被処理水を通過させ被処理水の濾過を行う濾過膜モジュールを有している。濾過処理装置によれば、一次側から二次側に向かって被処理水を濾過膜モジュールに通過させることにより被処理水の濾過処理を行うことができる。
【0003】
また、濾過処理装置においては、濾過処理を繰り返すと、濾過膜モジュールに捕捉された懸濁物質などの不純物により濾過膜モジュールが閉塞する。そのため、閉塞した濾過膜モジュールに対して逆洗浄を行い、濾過膜モジュールに付着した不純物を除去する必要がある(例えば、下記特許文献1参照)。逆洗浄では、濾過膜モジュールに二次側から一次側に向けて水や洗浄液を供給し、濾過膜モジュールの洗浄を行う。逆洗浄は、定期的に(例えば、1ヶ月おきに又は所定の流量を処理毎に)行われることが多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−300969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、例えば、汚染度の高い被処理水が濾過処理装置に導入された場合のように、濾過膜モジュールが大幅に汚染したときには、定期的な逆洗浄が行われる前に、濾過膜モジュールが閉塞する場合がある。濾過膜モジュールが閉塞した状態で濾過処理装置の使用を継続した場合には、所定の濾過処理性能を発揮できないという不具合が生じる。また、閉塞した状態で使用を継続した濾過膜モジュールでは、後に逆洗浄や浸漬洗浄などを行っても、濾過膜モジュールに付着した不純物を除去できなくなり、濾過膜モジュールの寿命を短くする虞もある。
【0006】
また、濾過膜モジュールの閉塞を防止する別の技術として、濾過膜モジュールの二次側における透過水の流量を監視し、透過水の流量が低下した場合に濾過膜モジュールへの不純物の付着を検出する方法が考えられる。
しかし、透過水の流量を監視する方法では、例えば、濾過膜モジュールの一次側又は二次側に設けられたポンプの吐出力を強くすれば、透過水の流量が高くなるため、透過水の流量の低下を検出できない。また、ポンプの吐出力を強くすると、後に逆洗浄や浸漬洗浄などを行っても、濾過膜モジュールに付着した不純物を除去できなくなり、濾過膜モジュールの寿命を短くする虞もある。そのため、透過水の流量を監視する方法は、濾過膜モジュールの閉塞を防止する技術として万全とはいえない。
前述の問題は、濾過部材の一次側に加圧ポンプを設置する外圧型濾過処理装置、及び濾過部材の二次側に吸引ポンプを設置する浸漬型濾過処理装置のいずれの場合においても、同様に発生する。
【0007】
従って、本発明は、濾過処理装置における濾過部材に対して閉塞の発生を抑制しながら、効果的なタイミングで濾過部材に対して逆洗浄を行うことができる濾過部材洗浄システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一次側から二次側に向かって被処理水を通過させ前記被処理水の濾過を行う濾過部材と、該濾過部材により区画される一次側領域及び二次側領域と、を有し、前記一次側領域から前記二次側領域に向かって前記被処理水を前記濾過部材に通過させることにより前記被処理水の濾過処理を行う濾過処理装置と、前記一次側領域から前記二次側領域に向かって前記被処理水を流通させる被処理水流通手段と、前記濾過部材に前記二次側から前記一次側に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、前記一次側領域と前記二次側領域との圧力差の測定を行う圧力差測定手段と、所定の閾値を設定可能で、設定された該閾値に基づいて前記洗浄液供給手段の起動の判定を行う判定手段と、前記判定手段による判定結果に基づいて、前記洗浄液供給手段の起動の制御を行う制御手段と、を備え、前記判定手段は、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後において、前記閾値を、前記圧力差測定手段により測定された圧力差である測定圧力差値に基づいて算出される洗浄後圧力差値に所定のオフセット値を加えた値に、再設定する濾過部材洗浄システムに関する。
【0009】
また、前記判定手段は、前記閾値の再設定を、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後であって前記被処理水流通手段の起動中に行うことが好ましい。
【0010】
また、前記圧力差測定手段は、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後であって前記被処理水流通手段の起動後に前記圧力差の測定を開始し、前記判定手段は、前記洗浄後圧力差値を、前記圧力差測定手段により測定された複数の前記測定圧力差値の全部又は一部の平均により算出することが好ましい。
【0011】
また、前記圧力差測定手段は、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後であって所定時間経過後に、前記圧力差の測定を開始することが好ましい。
【0012】
また、前記制御手段は、前記測定圧力差値が前記閾値以上になった場合に、前記洗浄液供給手段を起動させることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、濾過処理装置における濾過部材に対して閉塞の発生を抑制しながら、効果的なタイミングで濾過部材に対して逆洗浄を行うことができる濾過部材洗浄システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態の濾過部材洗浄システム1を示す構成図である。
【図2】図1に示す濾過部材洗浄システムの動作の一例の1サイクルを示す図である。
【図3】図1に示す濾過部材洗浄システムの動作の一例を示すフローチャートである。
【図4】圧力差の測定のタイミングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態の濾過部材洗浄システム1を示す構成図である。
図1に示す本実施形態の濾過部材洗浄システム1は、水処理システムの一部を構成している。水処理システムは、例えば、工場廃水や生活排水などの被処理水(原水)W1から懸濁物質などの不純物を除去し、各種プロセス水、中水、雑用水等として再利用可能な処理水(浄化水)W2を生成するものである。
【0016】
図1に示すように、本実施形態の濾過部材洗浄システム1は、濾過処理を行う濾過処理装置2と、被処理水流通手段としての濾過用ポンプ42と、処理水W2が貯留される処理水タンク5と、洗浄液W3が貯留される洗浄液タンク7と、洗浄液供給手段としての洗浄用ポンプ62と、圧力差測定手段としての圧力センサ3と、判定手段としての判定部81及び制御手段としての洗浄制御部83を有するシステム制御装置8と、を主体として構成されている。
また、本実施形態の濾過部材洗浄システム1は、更に、被処理水ラインL1、第1処理水ライン(第2洗浄液ライン)L2、第2処理水ラインL3、第1洗浄液ラインL4、処理水バルブ41、処理水逆止弁43、洗浄液バルブ61、洗浄液逆止弁63などを備える。
【0017】
被処理水W1は、濾過処理装置2による濾過処理の前に各種水処理(前濾過処理)が行われ、その後、被処理水ラインL1を介して、濾過処理装置2に供給される。
濾過処理装置2により濾過処理が行われた処理水(透過水)W2は、第1処理水ラインL2及び第2処理水ラインL3(以下、両ラインL2及びL3を併せて「処理水ラインL23」ともいう)を介して、処理水タンク5へ搬送される。
【0018】
洗浄液タンク7に貯留される洗浄液W3は、第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2(以下、両ラインL4及びL2を併せて「洗浄液ラインL42」ともいう)を介して、濾過処理装置2へ搬送される。
なお、第1処理水ラインL2及び第2洗浄液ラインL2は、兼用されるラインであり、使用態様に応じて言い分けることにする。
また、「ライン」とは、流路、経路、管路などの物体の流通が可能なラインの総称である。
【0019】
以下、本実施形態の濾過部材洗浄システム1について詳述する。
濾過処理装置2による濾過処理の前には、各種水処理(前濾過処理)が行われる。図1に示すように、前濾過処理が行われた被処理水W1は、被処理水ラインL1を介して、濾過処理装置2に供給される。
【0020】
濾過処理装置2は、被処理水W1に対して濾過処理を行う装置である。図1に示すように、濾過処理装置2は、濾過処理水槽24と、濾過部材としての濾過膜モジュール23とを備えている。
濾過処理水槽24は、その内部に、被処理水W1を貯留可能であると共に、濾過膜モジュール23を配置可能となっている。濾過処理水槽24の内部には、被処理水ラインL1を介して被処理水W1が供給されて、貯留される。
【0021】
濾過膜モジュール23は、多数の濾過膜(図示せず)を備えており、濾過膜により懸濁物質などの不純物を除去する。
濾過膜としては、例えば、限外濾過膜(UF膜)、精密濾過膜(MF膜)、ナノ濾過膜(NF膜)、逆浸透膜(RO膜)が挙げられる。濾過膜の形状としては、平膜型、中空糸膜型、管状型、ノモリス型が挙げられる。これらの濾過膜は、処理水の用途、例えば、蒸気ボイラ、温水ボイラ、クーリングタワー、給湯器などの熱機器への給水や、半導体製造、電子部品、医療器具などの洗浄など、処理水に求められる用途に応じて適宜選択されて使用される。
【0022】
本実施形態における濾過処理装置2は、膜分離活性汚泥法(MBR;メンブレン・バイオ・リアクター)により濾過処理を行う。なお、MBRによる濾過処理の場合には、通常、中空糸膜型のUF膜又はMF膜が濾過処理水槽24に浸漬された状態で使用される。
【0023】
濾過処理装置2は、濾過処理水槽24の内部で且つ濾過膜モジュール23の外側の領域である一次側領域21と、濾過膜モジュール23の内側の領域である二次側領域22と、を有する。つまり、一次側領域21と二次側領域22とは、濾過膜モジュール23により区画される。
濾過膜モジュール23は、一次側から二次側に向かって被処理水W1を通過させることにより、被処理水W1の濾過を行う。濾過処理装置2によれば、一次側領域21から二次側領域22に向かって被処理水W1を濾過膜モジュール23に通過させることにより、被処理水W1の濾過処理を行い、処理水(透過水)W2を得ることができる。
また、濾過膜モジュール23は、洗浄液を二次側から供給することで、逆洗浄が行われる。
【0024】
濾過処理装置2の濾過膜モジュール23の二次側領域22には、処理水ラインL23(第1処理水ラインL2)が接続されている。この処理水ラインL23(第2処理水ラインL3)の下流側の端部は、処理水タンク5に接続されている。
被処理水W1が濾過処理されて得られる処理水W2は、処理水ラインL23を介して処理水タンク5に搬送されて、貯留される。
【0025】
処理水タンク5は、処理水W2を貯留するタンクである。処理水タンク5は、処理水ラインL23(第2処理水ラインL3)の下流側の端部に接続されている。
【0026】
処理水ラインL23は、濾過処理装置2により得られた処理水W2を処理水タンク5に搬送するラインである。
処理水ラインL23は、第1処理水ラインL2と、第1接続部J1と、第2処理水ラインL3とを有する。第1処理水ラインL2と第2処理水ラインL3とは、第1接続部J1において接続されている。第1処理水ラインL2は、濾過処理装置2の濾過膜モジュール23の二次側領域22と第1接続部J1とを接続するラインである。第2処理水ラインL3は、第1接続部J1と処理水タンク5とを接続するラインである。
【0027】
濾過用ポンプ42は、第2処理水ラインL3の途中に接続されている。濾過用ポンプ42によれば、その吸引力により、処理水ラインL23(第2処理水ラインL3及び第1処理水ラインL2)を介して濾過処理装置2の二次側領域22を負圧にすることができる。そのため、濾過用ポンプ42は、一次側領域21から二次側領域22に向かって被処理水W1を流通させることができる。
【0028】
処理水バルブ41は、第2処理水ラインL3における第1接続部J1と濾過用ポンプ42との間に設けられている。処理水バルブ41によれば、第1接続部J1と濾過用ポンプ42との間において、第2処理水ラインL3を開閉することができる。
【0029】
処理水逆止弁43は、第2処理水ラインL3における濾過用ポンプ42と処理水タンク5側の端部(第2端部)との間に設けられている。処理水逆止弁43は、濾過用ポンプ42から第2処理水ラインL3の第2端部に向かう方向のみ、流体の流通を許容する弁である。
【0030】
圧力センサ3は、第1処理水ラインL2に第2接続部J2において接続されている。圧力センサ3は、一次側領域21と二次側領域22との圧力差の測定を行うセンサである。詳述すると、圧力センサ3は、濾過用ポンプ42の吸引力により負圧となった第1処理水ラインL2の圧力を測定するセンサである。濾過処理装置2の一次側領域21には大気圧が作用しているため、圧力センサ3は、第1処理水ラインL2の圧力を測定することにより、濾過処理装置2の一次側領域21と二次側領域22との膜間差圧(濾過膜モジュール23を挟んで一次側と二次側との間の膜間差圧)を測定することができる。
【0031】
洗浄液ラインL42は、洗浄液タンク7に貯留された洗浄液W3を濾過処理装置2の二次側領域22に搬送するラインである。洗浄液ラインL42は、第1洗浄液ラインL4と、第1接続部J1と、第1処理水ラインL2とを有する。第1洗浄液ラインL4と第1処理水ラインL2とは、第1接続部J1を介して接続されている。
【0032】
第1処理水ラインL2は、処理水ラインL23の一部を構成すると共に、洗浄液ラインL42の一部を構成する。洗浄液ラインL42の一部を構成する第1処理水ラインL2を「第2洗浄液ラインL2」ともいう。
第1洗浄液ラインL4は、洗浄液タンク7と第1接続部J1とを接続するラインである。第2洗浄液ラインL2は、第1接続部J1と濾過処理装置2の二次側領域22とを接続するラインである。
【0033】
第1洗浄液ラインL4は、処理水ラインL23に、第1接続部J1において接続されている。第1洗浄液ラインL4の上流側の端部は、洗浄液タンク7に接続されている。
洗浄液タンク7は、洗浄液W3を貯留するタンクである。洗浄液タンク7は、洗浄液ラインL42(第1洗浄液ラインL4)の上流側の端部に接続されている。洗浄液W3としては、酸化剤、界面活性剤、キレート剤等を含む周知の洗浄液を使用でき、MBRによる濾過処理の場合には、次亜塩素酸ナトリウム水溶液が好ましく使用される。
【0034】
洗浄用ポンプ62は、第1洗浄液ラインL4の途中に接続されている。洗浄用ポンプ62は、濾過膜モジュール23に二次側から一次側に向けて洗浄液W3を供給する。洗浄用ポンプ62によれば、洗浄液ラインL42(第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2)を介して、洗浄液タンク7に貯留される洗浄液W3を濾過処理装置2の二次側領域22に供給することができる。
【0035】
洗浄液バルブ61は、第1洗浄液ラインL4における洗浄用ポンプ62よりも下流(第1接続部J1)側に、詳細には、洗浄液逆止弁63(後述)と第1接続部J1との間に設けられている。洗浄液バルブ61によれば、第1接続部J1と洗浄用ポンプ62との間において、第1洗浄液ラインL4を開閉することができる。
【0036】
洗浄液逆止弁63は、第1洗浄液ラインL4における洗浄液バルブ61と洗浄用ポンプ62との間に設けられている。洗浄液逆止弁63は、第1洗浄液ラインL4における洗浄液タンク7側の第1端部から第1接続部J1に向かう方向のみ、流体の流通を許容する弁である。
【0037】
システム制御装置8は、本実施形態の濾過部材洗浄システム1の全体を制御する。システム制御装置8は、濾過部材洗浄システム1を構成する各要素のうち制御が行われる要素に電気的に接続される。詳細には、システム制御装置8は、圧力センサ3、処理水バルブ41、濾過用ポンプ42、洗浄液バルブ61及び洗浄用ポンプ62に電気的に接続される。
【0038】
システム制御装置8は、判定部81と濾過制御部82と洗浄制御部83とを備える。判定部81は、圧力センサ3に電気的に接続される。濾過制御部82は、処理水バルブ41及び濾過用ポンプ42に電気的に接続される。洗浄制御部83は、洗浄液バルブ61及び洗浄用ポンプ62に電気的に接続される。
【0039】
判定部81は、所定の閾値を設定可能であり、設定された閾値に基づいて洗浄用ポンプ62の起動の判定を行う。所定の閾値は、例えば、作業者に操作によって適宜入力される。
【0040】
判定部81による洗浄用ポンプ62の起動の判定動作の詳細については後述するが、例えば、判定部81は、洗浄用ポンプ62による洗浄液W3の供給終了後において、閾値を、洗浄後圧力差値に所定のオフセット値を加えた値に、再設定する。洗浄後圧力差値は、圧力センサ3により測定された圧力差である「測定圧力差値」に基づいて算出される。
【0041】
判定部81は、前記洗浄後圧力差値を、圧力センサ3により測定された複数の前記測定圧力差値の全部又は一部の平均により算出する。判定部81は、閾値の再設定を、洗浄用ポンプ62による洗浄液W3の供給終了後であって濾過用ポンプ42の起動中に行う。判定部81は、前記洗浄後圧力差値が閾値以上になった場合に、洗浄用ポンプ62を起動させると判定する。
【0042】
濾過制御部82は、処理水バルブ41の開閉の制御、濾過用ポンプ42の起動の制御などを行う。
洗浄制御部83は、所定の定期洗浄のタイミングにおいて又は判定部81による判定結果に基づいて、洗浄液バルブ61の開閉の制御、洗浄用ポンプ62の起動の制御などを行う。
【0043】
圧力センサ3は、洗浄用ポンプ62による洗浄液W3の供給終了後であって濾過用ポンプ42の起動後に圧力差の測定を開始する。また、圧力センサ3は、洗浄用ポンプ62による洗浄液W3の供給終了後であって所定時間経過後に、圧力差の測定を開始する。
【0044】
次に、本実施形態の濾過部材洗浄システム1の動作の一実施例について、図2から図4を参照しながら説明する。図2は、図1に示す濾過部材洗浄システムの動作の一例の1サイクルを示す図である。図3は、図1に示す濾過部材洗浄システムの動作の一例を示すフローチャートである。図4は、圧力差の測定のタイミングを示す図である。
【0045】
本実施例については、濾過部材洗浄システム1において、図2に示すように、洗浄処理(逆洗浄)が行われた後、濾過処理及び休止のセットが複数セット繰り返し行われ、次の洗浄処理(逆洗浄)を行われる迄の1サイクルについて説明する。本実施例では、説明の便宜上、洗浄処理が行われた後、濾過処理及び休止のセットが4セット繰り返された後、定期洗浄として洗浄処理が行われるようになっているものとする。また、4セット目の濾過処理が終了する前であっても、所定の洗浄条件を満たした場合には、定期洗浄とは別に前倒しで洗浄処理(以下、この洗浄を「前倒し洗浄」ともいう)を行うようになっている。
【0046】
まず、1回の洗浄処理並びに4セットの濾過処理及び休止からなる1サイクルが行われ、次の洗浄処理が定期洗浄として行われる例(定期洗浄フロー)について説明する。定期洗浄とは、濾過膜モジュール23の閉塞の程度に拘わらず、所定の頻度で定期的に行われる洗浄のことである。定期洗浄は、例えば、所定回数(本実施例では4回)の濾過処理が行われた後や、所定時間おきに行われる。
【0047】
定期洗浄フローにおいては、図2に示すように、洗浄処理(所要時間:t1)の後、直ちに、濾過処理(所要時間:t2)及び休止(所要時間:t5)のセットが4セット繰り返される。これにより、定期洗浄フローの1サイクルが終了する。その後、次のサイクルの最初において、定期洗浄としての洗浄処理が行われる。
また、本実施例においては、各濾過処理が開始してから所定時間(間隔)t3が経過した後、圧力差(膜間差圧)の測定(所要時間:t=4)が開始される。圧力差の測定は、濾過処理の停止と同時又はその前後において、停止される。
【0048】
次に、本実施例において定期洗浄の前に濾過膜モジュール23の閉塞の虞を検出し、1サイクルが終了する前に前倒しで洗浄処理(洗浄液W3の供給)を開始する例(前倒し洗浄フロー)について説明する。
【0049】
図3と共に図2及び図4を参照して、本実施例における前倒し洗浄フローについて説明する。図3に示すフローチャートにおける各ステップ(ST)のうち、図2又は図4に示すことが可能なステップについては、図2又は図4に示している。
【0050】
図3に示すように、ステップST1(図2及び図4も参照)において、洗浄制御部83は、洗浄液バルブ61を開放すると共に、洗浄用ポンプ62を起動させる。これにより、洗浄液タンク7に貯留される洗浄液W3は、洗浄液ラインL42(第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2)を介して、濾過膜モジュール23に二次側から供給される。このようにして、濾過膜モジュール23の洗浄処理が開始され、洗浄液W3により濾過膜モジュール23の逆洗浄が行われる。洗浄処理は、所要時間t1に亘って行われる。
【0051】
図3に示すように、ステップST2(図2及び図4も参照)において、洗浄処理の開始から所要時間t1の経過後、洗浄制御部83は、洗浄液バルブ61を閉鎖すると共に、洗浄用ポンプ62を停止させる。これにより、濾過膜モジュール23への洗浄液W3の供給が停止し、洗浄処理(逆洗浄)が終了する。
【0052】
図3に示すように、洗浄処理の終了後、ステップST3(図2及び図4も参照)において、濾過制御部82は、処理水バルブ41を開放すると共に、濾過用ポンプ42を起動させる。これにより、被処理水W1の濾過処理が開始され、濾過用ポンプ42の一次側領域21(濾過処理水槽24)に貯留される被処理水W1は、濾過膜モジュール23を通過し、二次側領域22に移動する。その結果、被処理水W1に濾過処理を行った処理水W2が得られる。処理水W2は、処理水ラインL23(第1処理水ラインL2及び第2処理水ラインL3)を介して、処理水タンク5に供給される。濾過処理は、所要時間t2に亘って行われる。
【0053】
図2及び図4に示すように、濾過処理の開始後(濾過用ポンプ42の起動後)であって更に所定時間t3が経過した後、図3に示すように、ステップST4において、判定部81は、圧力センサ3に圧力差の測定を開始させる。所定時間(間隔)t3は、例えば10秒以上である。
【0054】
図3に示すように、ステップST5(図4も参照)において、圧力センサ3は、圧力差の測定を繰り返し行う。圧力センサ3により測定された圧力差を「測定圧力差値」ともいう。圧力差の測定は、所要時間t4に亘って行われる。
【0055】
圧力差の測定は次のように行われる。
図4に示すように、所要時間t4に亘る圧力差の測定期間において、所定の測定間隔t41おきに圧力差の測定を複数回行う。例えば、圧力差の測定期間において、圧力差の測定を9回行う。そして、圧力差の測定の度に、その圧力差の測定期間における圧力差の平均値を算出する。
【0056】
具体的には、例えば、2回目の圧力差の測定の際には、1回目及び2回目の測定値の平均値を算出する。3回目の圧力差の測定の際には、1回目から3回目の測定値の平均値を算出する(更新する)。(最後の)9回目の圧力差の測定の際には、1回目から9回目の測定値の平均値を算出する(更新する)。(最後の)9回目の圧力差の測定の際に算出された1回目から9回目の測定値の平均値を「洗浄後圧力差値」という。
【0057】
図2及び図4に示すように、1セット目の濾過処理の開始後であって更に所要時間t2が経過した後、濾過制御部82は、処理水バルブ41を閉鎖すると共に、濾過用ポンプ42を停止させる。これにより、1セット目の濾過処理が停止される。
【0058】
図2及び図4に示すように、1セット目の濾過処理が停止された後、濾過処理の休止を行う。濾過処理の休止は、所要時間t5に亘って行われる。このような濾過処理及び休止のセットが4セット繰り返される。
【0059】
前述の通り、濾過処理及び休止が4セット行われると、定期洗浄フローの1サイクルが終了する。
一方、前倒し洗浄フローでは、定期洗浄フローの1サイクルが終了する前(次のサイクルの洗浄処理が開始される前)に、前倒し洗浄が行われる。
以下、前倒し洗浄が行われる迄のフローについて説明する。
【0060】
図3に示すように、ステップST6において、判定部81は、圧力差の測定期間内で、測定圧力差値が閾値以上である(測定圧力差値≧閾値)か否かを判定する。測定圧力差値が閾値未満(測定圧力差値<閾値)の場合(NO)には、ステップST5に戻り、圧力差の測定が繰り返される。測定圧力差値が閾値以上である(測定圧力差値≧閾値)の場合(YES)には、ステップST7へ進む。
本実施例では、閾値は、作業者により予め設定されている。閾値は、濾過処理装置2の二次側領域22は負圧となっているため、閾値は負圧の絶対値(正の値)に設定されている。
【0061】
図3に示すように、測定圧力差値が閾値以上である(測定圧力差値≧閾値)の場合(YES)には、ステップST7(図2及び図4も参照)において、判定部81は、現在の洗浄後圧力差値にオフセット値を加えて、閾値を再設定する。洗浄後圧力差値は、圧力センサ3により測定された圧力差である「測定圧力差値」に基づいて算出される。
【0062】
詳細には、洗浄後圧力差値は、圧力センサ3により測定された複数の前記測定圧力差値の全部(本実施例では9回)の平均により算出する。
なお、洗浄後圧力差値は、圧力センサ3により測定された複数の測定圧力差値の一部(例えば、9回中7回)の平均により算出することができ、また、測定された複数の測定圧力差値のうちの最大値を採用することができ、また、測定された複数の測定圧力差値のうちの最小値を採用することもできる。
【0063】
本実施例では、濾過処理装置2の二次側領域22は負圧となっているため、オフセット値は負の値に設定されている。オフセット値は、作業者により予め設定され、判定部81に記憶されている。オフセット値は、例えば、−15kPaである。
本実施例では、圧力センサ3により測定される測定圧力差値は、負圧として測定されるため、正の値の測定圧力差値に、負の値のオフセット値が加えられ、これにより、閾値は再設定される。従って、再設定された閾値の絶対値は、再設定前の閾値の絶対値よりも小さくなる。
【0064】
このように閾値を再設定することにより、次のサイクルの洗浄処理の後の濾過処理においては、測定圧力差値が閾値を超えやすくなる(ステップST6において、YESとなりやすくなる)。つまり、濾過膜モジュール23の閉塞の虞が生じた段階で前倒し洗浄を行うことにより、逆洗浄を行っても濾過膜モジュール23の閉塞を解消できない程度まで濾過膜モジュール23が過剰使用されることを抑制できる。これにより、濾過膜モジュール23の寿命を長くすることができる。
【0065】
図3に示すように、ステップST8(図2も参照)において、圧力差の測定は停止される。詳細には、判定部81は、圧力センサ3による圧力差の測定を停止させる。
【0066】
図3に示すように、ステップST9(図2も参照)において、濾過処理は停止される。詳細には、濾過制御部82は、処理水バルブ41を閉鎖すると共に、濾過用ポンプ42を停止させる。
【0067】
図3に示すように、ステップST9の後(濾過処理が停止した後)、1サイクルが終了する前であっても、ステップST1に戻り、次の洗浄処理(1サイクル)が開始される。
そして、図3に示すように、ステップST1(図2及び図4も参照)において、洗浄制御部83は、洗浄液バルブ61を開放すると共に、洗浄用ポンプ62を起動させる。これにより、洗浄液タンク7に貯留される洗浄液W3は、洗浄液ラインL42(第1洗浄液ラインL4及び第2洗浄液ラインL2)を介して、濾過膜モジュール23に二次側から供給される。これにより、前倒し洗浄としての濾過膜モジュール23の洗浄処理が開始され、洗浄液W3により濾過膜モジュール23の逆洗浄が行われる。
【0068】
ここで、前述のように、閾値は再設定されているため、判定部81は、再設定された閾値に基づいて、洗浄液バルブ61及び洗浄用ポンプ62の起動の判定を行う。そして、再設定された閾値に基づく判定結果に基づいて、洗浄制御部83は、洗浄液バルブ61及び洗浄用ポンプ62の起動を開始する。
【0069】
本実施形態の濾過部材洗浄システム1によれば、例えば、次のような効果が奏される。
本実施形態においては、所定の閾値を設定可能であり設定された閾値に基づいて洗浄用ポンプ62の起動の判定を行う判定部81と、判定部81による判定結果に基づいて洗浄用ポンプ62の起動の制御を行う洗浄制御部83と、を備え、判定部81は、洗浄用ポンプ62による洗浄液W3の供給終了後において、閾値を、圧力センサ3により測定された圧力差である測定圧力差値に基づいて算出される洗浄後圧力差値に所定のオフセット値を加えた値に、再設定している。
【0070】
そのため、濾過膜モジュール23の定期的な洗浄処理(定期洗浄)の前であっても、所定の条件(閾値)に基づいて前倒しの洗浄(前倒し洗浄)が行われる。そのため、濾過膜モジュール23の逆洗浄を適切なタイミングで行うことができる。また、前倒し洗浄の度に、閾値が再設定され、測定圧力差値が閾値を超えやすくなり、その結果、前倒し洗浄が行われるタイミングが早くなる。
このように本実施形態によれば、洗浄処理の度に閾値を再設定することにより、測定圧力差値が閾値を超えやすくなるようにしている。従って、一定の条件に基づいて定期的に洗浄処理を行う場合と比べて、濾過膜モジュール23の閉塞の発生を抑制しながら、効果的なタイミングで濾過膜モジュール23に対して逆洗浄を行うことができる。
【0071】
また、本実施形態においては、圧力センサ3は、洗浄用ポンプ62による洗浄液W3の供給終了後であって所定時間(t3)経過後に、圧力差の測定を開始する。洗浄液W3の供給終了後であって濾過用ポンプ42の起動直後においては、圧力差の測定値(測定圧力差値)が不安定となりやすいが、このような不安定な測定圧力差値を排除した上で、測定圧力差値の平均値を算出することができるため、測定圧力差値の平均値(つまり、洗浄後圧力差値)の精度が向上する。
【0072】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、種々の形態で実施することができる。
例えば、前記実施形態においては、濾過処理装置2は、濾過部材としての浸漬型の濾過膜モジュール23を備えているが、これに制限されない。濾過処理装置2は、外圧型の濾過膜モジュールを備える装置であってもよく、あるいは、粒状濾材を使用する活性炭濾過装置や砂濾過装置であってもよい。
前記実施形態においては、被処理水流通手段は、吸引ポンプとしての濾過用ポンプ42から構成されているが、濾過処理装置が外圧型の濾過膜モジュールを備える場合には、吐出ポンプから構成することもできる。この場合、圧力センサ3により測定される圧力差は、正圧として測定される。
【0073】
前記実施形態においては、制御手段としての洗浄制御部83は、濾過用ポンプ42の起動のON/OFFを制御しているが、これに制限されない。洗浄制御部83は、更に洗浄液の量、濃度などの制御を行うこともできる。
圧力センサ3による圧力差の測定は、洗浄用ポンプ62による洗浄液の供給終了と同時に又は直後に行うこともできる。
通常フローの1サイクルにおける濾過処理の回数(前記実施例では4回)、1回の濾過処理に対応する圧力差の測定期間における圧力差の測定回数(前記実施例では9回)などはいずれも制限されない。
【符号の説明】
【0074】
1 濾過部材洗浄システム
2 濾過処理装置
21 一次側領域
22 二次側領域
23 濾過膜モジュール(濾過部材)
3 圧力センサ(圧力差測定手段)
42 濾過用ポンプ(被処理水流通手段)
5 処理水タンク
62 洗浄用ポンプ(洗浄液供給手段)
7 洗浄液タンク
81 判定部(判定手段)
82 濾過制御部
83 洗浄制御部(制御手段)
W1 被処理水
W2 処理水
W3 洗浄液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次側から二次側に向かって被処理水を通過させ前記被処理水の濾過を行う濾過部材と、該濾過部材により区画される一次側領域及び二次側領域と、を有し、前記一次側領域から前記二次側領域に向かって前記被処理水を前記濾過部材に通過させることにより前記被処理水の濾過処理を行う濾過処理装置と、
前記一次側領域から前記二次側領域に向かって前記被処理水を流通させる被処理水流通手段と、
前記濾過部材に前記二次側から前記一次側に向けて洗浄液を供給する洗浄液供給手段と、
前記一次側領域と前記二次側領域との圧力差の測定を行う圧力差測定手段と、
所定の閾値を設定可能で、設定された該閾値に基づいて前記洗浄液供給手段の起動の判定を行う判定手段と、
前記判定手段による判定結果に基づいて、前記洗浄液供給手段の起動の制御を行う制御手段と、
を備え、
前記判定手段は、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後において、前記閾値を、前記圧力差測定手段により測定された圧力差である測定圧力差値に基づいて算出される洗浄後圧力差値に所定のオフセット値を加えた値に、再設定する濾過部材洗浄システム。
【請求項2】
前記判定手段は、前記閾値の再設定を、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後であって前記被処理水流通手段の起動中に行う請求項1に記載の濾過部材洗浄システム。
【請求項3】
前記圧力差測定手段は、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後であって前記被処理水流通手段の起動後に前記圧力差の測定を開始し、
前記判定手段は、前記洗浄後圧力差値を、前記圧力差測定手段により測定された複数の前記測定圧力差値の全部又は一部の平均により算出する請求項2に記載の濾過部材洗浄システム。
【請求項4】
前記圧力差測定手段は、前記洗浄液供給手段による洗浄液の供給終了後であって所定時間経過後に、前記圧力差の測定を開始する請求項1から3のいずれかに記載の濾過部材洗浄システム。
【請求項5】
前記制御手段は、前記測定圧力差値が前記閾値以上になった場合に、前記洗浄液供給手段を起動させる請求項1から4のいずれかに記載の濾過部材洗浄システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−31145(P2011−31145A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178158(P2009−178158)
【出願日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【出願人】(000175272)三浦工業株式会社 (1,055)
【Fターム(参考)】