説明

火傷に対する二次的な全身的損傷の処置方法

本発明は、火傷に対する二次的な臓器の機能障害または不全などの火傷に対する二次的な全身的損傷の予防または治療における C5a 受容体のアンタゴニストの使用に関する。ひとつの実施態様において、本発明は、火傷に対する二次的な肺、腎、腸および/または肝の機能障害または不全の予防または治療に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2003年5月26日付けのオーストラリア仮出願 No.2003902586 による優先権を享受する。その全内容を出典明示により本明細書の一部とする。
【0002】
発明の分野
本発明は、火傷に対する二次的な臓器の機能障害または不全などの火傷に対する二次的な全身的損傷の予防または治療における C5a 受容体のアンタゴニストの使用に関する。ひとつの実施態様において、本発明は、火傷に対する二次的な肺、腎、腸および/または肝の機能障害または不全の予防または治療に関する。
【0003】
発明の背景
本明細書に引用されるすべての特許または特許出願を含むすべての文献は、出典明示により本明細書の一部とする。これらの文献が先行技術であることを認めるものでない。文献についての説明はそれらの著者が主張することを述べ、本出願人は引用文献の正否および正確さに反論する権利を留保する。多くの先行の発表が本明細書で引用されても、それらの文献がオーストラリアまたは他の国において、技術における通常の一般的知識の部分を形成することを認めるものでないことは、明白に理解されるであろう。
【0004】
重い火傷に対する二次的な全身的損傷、臓器に機能障害または不全などは、火傷損傷に原因が帰せられないで、疾病率および死亡率の継続的な源であり、軍事的状況に特に関連している。かかる臓器不全を防止する効果的な処置または手段として現在認められているのは、臓器機能の減少を補うための支持ケアのみである。特に皮膚などの身体の火傷に続く肺の機能障害または不全は疾病率および死亡率に顕著な影響をもたらす。肝、腎および/または腸の機能障害も火傷により得る結果であり、これもまた疾病率および死亡率に悪い予後となる。
【0005】
火傷に続いて対象において全身的炎症応答が生じ、これが、火傷部位から離れた臓器の機能障害および不全として現れる遠位組織損傷を導く全般的な炎症であると考えられている。
【0006】
火傷に続く臓器不全を導く生理学的過程の鎖は複雑であり、完全には理解も特徴解明もなされていない。重い火傷の対象において、カテコールアミン、バソプレシンおよびアンギオテンシンの放出が、損傷に遠い臓器の灌流に累を及ぼし得る末梢的および内臓ベットの血管収縮を起こす。心筋の収縮も TNF-αの放出により低下することがある。活性好中球が、皮膚および肺などの遠位臓器において火傷損傷後の数時間内に分離されて、毒性の反応性酸素種およびプロテアーゼの放出をもたらし、血管内皮細胞障害をつくる。肺毛細管および肺胞上皮の統合性に累が及んだとき、血漿および血液が腸および肺胞内の空間にしみ出し、肺浮腫となる。肺機能の減少が、ヒスタミン、セロトニンおよびトロンボキサン A2 などの液素性因子による気管支収縮の結果として、重い火傷になった患者において生じることがある。
【0007】
重い火傷損傷は組織の凝固壊死も起こす。これは生理学的応答をすべての臓器系において開始する。その重篤度は火傷の程度に関連する。組織の破壊はまた、毛細管透過性の増加となり、血管内空間から火傷に近接の組織への液体の大きい流失をもつ。通常でない量の液体が障害表面からの消失によりなくなり、この表面はもはや水を保持し得ない。この毛細管透過性の増加は、消失された水と合いまって、低量ショックを起こし、ショックがまた遠位臓器の機能障害または不全の因となり得る。
【0008】
遠位臓器の機能障害または不全の病理に関与している化合物には、広範な液素性メディエーター、例えばコンプリメントの種々の構成因子; アラキドン酸代謝の産物、例えばリポキシゲナーゼまたはシクロオキシゲナーゼ酵素の産物; 腫瘍壊死因子; サイトカイン、例えばインターロイキン 1 − 13; 一範囲の成長因子および接着分子; 血小板活性化因子; 凝固促進剤; フィブロネクチンおよびオプソニン; 毒性の酸素フリーラジカル; 内因性オピオイド、例えばエンドルフィン; 血管活性ポリペプチドおよびアミン; ブラジキニンなどのキニン; 神経内分泌因子; 心筋デプレッサント因子および凝固因子ならびにそれらの分解産物がある。さらに、炎症の種々の細胞構成因子が臓器の機能障害となる全身的応答に関与している。これには、火傷した対象の臓器の血管において一時的に分離される多形核の白血球 (PMNL) ; 種々の炎症メディエーターを放出する単球およびマクロファージ; 血小板; および血管系と臓器の液体および溶質の通過を仲介する血管内皮細胞がある。
【0009】
火傷に関連する肺機能障害における酸化窒素の役割も調べられてた。酸化窒素の産生増加がヒト火傷患者および熱損傷の動物モデルにおいて認められた。誘導性酸化窒素シンターゼ (iNOS) が広範な皮膚火傷に続く肺の炎症および組織損傷を仲介する。酸化窒素シンターゼ活性の阻害が急性の火傷後炎症応答の治療に有益であると推測される。
【0010】
C5a に対する中性化抗体の投与がラットでの実験的火傷後の肺損傷を有意にブロックすることも報告されている (Schmid E, Piccolo MT, Friedl HP, Warner RL, Mulligan MS, Hugli TE, Till GO, Ward PA. (1997) Requirement for C5a in lung vascular injury following thermal trauma to ラットkin. Shock 8:119-124)。
【0011】
現在のところ、火傷に続く臓器の機能障害または不全の防止または治療において治療的または予防的な使用のために有効と認められた薬物は存在しない。火傷患者は、痛みの処置を含む支持的ケア、液の交換、および胃のびらんの防止および腎不全の防止を目的とするケアについての療法を受ける。急性の上部消化管のびらんおよび潰瘍が重い火傷損傷の患者でおきることがあり、処置は主に予防的である。高いリスクの患者において、制酸剤がストレス潰瘍の発生を胃内容物の中和により減少でき、H2-受容体アンタゴニストが胃酸分泌を阻害できる。腎不全が火傷損傷後に起きることがあり、その防止は、適当な蘇生術、傷などの部位の感染の処置、および腎毒性薬物の回避などを含む。腎機能が液体および電解質の不均衡で悪化すると、透析が必要となる。肺の機能障害または不全のある患者は、体内への十分な酸素運搬を保持するために、人工的な循環法が必要となることがある。臓器の機能障害または不全の徴候は、火傷後まもなく、または火傷後 6 − 18 時間で明らかになり、支持療法がなされるまで進行する。
【0012】
従って、全身的損傷、例えば火傷から遠位の臓器に生じる機能障害または不全を治療的または予防的に処置するための方法について、現在行われている支持療法の補充または代替えとして、大きい必要性がある。
【0013】
本発明の要旨
C5a 受容体アンタゴニストのファミリーに由来する化合物、PMX53 が火傷損傷後の肺の機能障害または不全に対する疾患改変作用を有することを見出した。
【0014】
第1の態様において、本発明は、火傷に対する二次的な全身的損傷を処置する方法を提供する。この方法は、処置を必要とする対象に、C5a 受容体のアンタゴニストであり、下記式の環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物の予防的または治療的に有効な量を投与する工程を含む:
【化1】

【0015】
[式中、A は H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
【0016】
B はアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または L-フェニルアラニンもしくは L-フェニルグリシンなどの D- または L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
【0017】
C は、グリシン、アラニン、ロイシン、バリン。プロリン、ヒドロキシプロリンもしくはチオプロリンなどの D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖などの小さい置換基であり、しかし、好ましくは、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンなどの大きい置換基でなく;
【0018】
D は、D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモ-ノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートもしくは D-チロシンなどの中性 D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、好ましくは、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖などの小さい置換基、D-トリプトファンなどの大きい平面的側鎖または D-アルギニンもしくは D-リシンなどの大きい電荷側鎖でなく;
【0019】
E は、L-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよび L-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸の側鎖などの大きい置換基またはであり、または L-1-ナフチルもしくは L-3-ベンゾチエニルアラニンであり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L-ヒスチジンの側鎖でなく;
【0020】
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり、すなわち、末端グアニジンまたはウレア基が保持されているが、炭素骨格が異なる構造で置換されている側鎖であり、側鎖が全体として親の基と同じ方法で標的タンパク質と反応するものであり; および
【0021】
X は -(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4、好ましくは 2 または 3 の整数);-(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-; -(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または -CH2-CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である]。
【0022】
C について、シスおよびトランス型の両方のヒドロキシプロリンおよびチオプロリンを使用できる。
好ましくは、A は、アセトアミド基、アミノメチル基または置換もしくは非置換スルホンアミド基である。
好ましくは、A が置換スルホンアミドであるとき、置換基は 1 〜 6、好ましくは 1 〜 4 炭素原子のアルキル鎖またはフェニルもしくはトルイル基である。
【0023】
好ましい実施態様において、全身的損傷は臓器の機能障害または不全である。
ひとつの実施態様において、本発明は、火傷に対する二次的な全身的損傷を処置する方法を提供する。それは、治療的または予防的に有効な量の下記化合物を投与する工程を含む:
化合物 1 (PMX53; AcF-[OPdChaWR])
化合物 33 (AcF[OP-DPhe-WR])、
化合物 60 (AcF[OP-DCha-FR])
化合物 45 (AcF[OP-DCha-WCit]) 国際特許出願 No.PCT/AU02/01427 に記載、
HC-[OPdChaWR](PMX205)、
AcF-[OPdPheWR](PMX273)、
AcF-[OPdChaWシトルリン](PMX201) または
HC-[OPdPheWR]( PMX218)。
【0024】
ひとつの態様において、化合物は、限定でないがヒト多形核白血球および/またはヒトマクロファージを含む C5a 受容体のアンタゴニストである。特定の実施態様において、化合物はクラス I C5a 受容体のアンタゴニストである。
【0025】
いくつかの実施態様において、化合物は、C5a 受容体と強力にかつ選択的に結合し、そして例えば強力なアンタゴニスト活性をサブミクロモル濃度で有する。さらに好ましくは、化合物は C5a 受容体親和性 IC50 25μM 以下を有し、アンタゴニスト強度 IC50 1μM 未満を有する。
【0026】
いくつかの実施態様において、化合物は、C5a 受容体に対するアンタゴニスト活性を有し、検出可能な C5a アゴニスト活性を有さない。
【0027】
別の実施態様において、本発明は、火傷から生じる臓器機能障害または不全を治療または予防するための上記化合物の使用を提供する。
【0028】
別の態様において、本発明は、火傷に対する二次的な臓器の機能障害または不全などの全身的損傷を予防または治療する医薬の調製における上記化合物の使用を提供する。
【0029】
別の実施態様において、本発明は、上記化合物を含み、火傷に対する二次的な臓器の機能障害または不全などの全身的損傷を予防または治療するための医薬または獣医薬を提供する。
【0030】
別の実施態様において、本発明は、上記化合物を医薬的または獣医薬的に許容される担体とともに含み、火傷に対する二次的な臓器の機能障害または不全などの全身的損傷を予防または治療するための医薬組成物または獣医薬組成物を提供する。
いくつかの実施態様において、臓器は、肺、肝、腎および/または腸である。
【0031】
図面の簡単な説明
下記する実施例において、下記の添付の図面を参照する。
図1は、熱皮膚火傷4時間後、ラットの皮膚へのエバンスブルーの漏洩を表す写真である。左側の2サンプルは火傷のみで処置されていないラットからのものであり、中央のサンプルは火傷なしで非処置の対照であり、右側の2サンプルは火傷の前に PMX53 で予め処置されたラット(10mg/kg SC 30 分間) である。PMX53-前処置のラットは、暗色の強度が低いことで表されるように、皮膚への漏洩が顕著に少ない。
【0032】
図2は、火傷ラットの皮膚組織へのエバンスブルー/アルブミンの漏洩を表す写真である。上側の2皮膚サンプルは火傷のみのラットである。下側の2サンプルは PMX53 で予め処置されたラットである。右側の皮膚サンプルは正常な対照ラットである。
【0033】
図3は、火傷4時間後の肺の肉眼的様相を示す写真である。左側の2肺は火傷のみの対照ラットであり、真ん中の肺は火傷のない対照であり、右側の2肺は PMX53 10mg/kg SC で前処置された火傷のラットのものである。火傷のみの肺は拡大的硬化を示し、一方、PMX53-前処置ラットの肺は正常である。
【0034】
図4は、火傷4時間後のラットにおける気管支肺胞洗液 (BAL) から回収された細胞の全数を示すグラフである。火傷動物の非処置の肺からの BAL が比較的多数の細胞を含有していたが、PMX53 で処置された火傷動物は擬似処置非火傷動物での数に近い数を示した。
【0035】
図5は、火傷30分前の PMX53 10mg/kg SC 前処置の、火傷4時間後での肺ミエロペルオキシダーゼ (MPO) レベルに対する作用を示すグラフである。MPO の上昇レベルは肺における好中球の存在を示す。
【0036】
図6は、火傷6時間後の組織障害および PMNL の分布を示す火傷ラット皮膚サンプルの写真である。写真 A は、正常な火傷のない皮膚のサンプルであり、B は非処置の火傷皮膚であり、C は局所投与の PMX53 で処置された火傷皮膚である。
【0037】
図7は、PMX53 の局所投与の、火傷6時間後の血漿中 IgG レベルに対する作用を示すグラフである。
【0038】
発明の詳細な記述
他に定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術的および科学的用語は、本発明の属する技術分野の当業者により普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと類似または等価のいかなる材料および方法を、本発明の実施および試験に使用し得るが、ここでは好ましい材料および方法を記載する。
【0039】
本発明の特許請求の明細書において、文言または必要な表示のために、内容が別の必要性を持たない限り、語「含む」またはその変形「含んでいる」などは、包括的な意味、すなわち記述の特性の存在を具体化するために使用されており、本発明の種々の実施態様におけるさらなる特性の存在または追加を除外するものではない。
【0040】
本明細書での使用において、単数形「a」、「an」および「the」は、内容が別のものを明らかに述べていない限り、複数も含む。すなわち、「a 化合物」の使用についての言及は単一の化合物および2以上の化合物の使用を含む。
【0041】
本明細書に記載の化合物は、対象に火傷後に投与し得るが、臓器の機能障害または不全などの全身的損傷の検出可能な徴候の進展の前にも投与できる。すなわち、用語「予防」は、その最も広い意味で使用し、臓器の機能障害または不全などの全身的損傷あるいはその現れまたは徴候を完全にまたは部分的に予防する予防的使用を意味すると理解されるべきである。化合物は火傷を受けるおそれのある対象に投与することもできる。
【0042】
次のことも理解されるべきである。本明細書に記載の化合物は、対象に火傷の後および全身的損傷の検出可能な徴候の出現の後に投与でき、投与は化合物の前の予防的投与から継続できる。すなわち、用語「処置」は、その最も広い意味で使用され、臓器の機能障害または不全の部分的または完全なケアのために化合物を使用することを意味する。本明細書で使用される用語「処置」は、脊椎動物、哺乳動物、特にヒトにおける症状の治療または予防を含み、症状の阻止、すなわちその進展の停止;または症状の効果の緩解または軽減、すなわち症状の効果の減成を起こすことを含む。
【0043】
本明細書で使用される用語「臓器」は、特定の機能を適応している身体の部分または構造を意味し、限定でないが、肺、肝、腎および胃や腸を含む消化器を意味する。特に、身体の別の部分から生じた火傷からの機能障害および不全を起こしやすい臓器を含んでいる。
【0044】
本明細書で使用される用語「臓器機能障害」は、臓器の正常な機能における微小な攪乱から「臓器不全」すなわち生命維持に十分な臓器の停止までの範囲にある一連の徴候を意味する。肺において、例えば、臓器機能障害は、肺および組織コンプライアンスの減少による肺機能の低下として表し得る。初期の後蘇生術期間において、通常、火傷4−6日後に肺機能を損なう主な異常は、肺浮腫、上気道閉塞および低下した肺壁コンプライアンスを含む。心臓において、熱損傷に対する応答は、末梢血管抵抗性の増加を伴う心臓のアウトプットの減少である。心不全は、炎症性サイトカイン、TNF の放出からくる心筋収縮に対する直接作用および末端組織における酸素灌流の減少からくる組織低酸素症の間接作用で起こり得る。血栓静脈炎などの血管複合症は四肢おける二次的虚血障害を起こすことがある。腎において、臓器機能障害は保持イオンの排泄不能として表れ、全身的イオンの不均衡となり得る。中枢神経系において、再水和療法から低ナトリウム血症が起きることがあり、脳浮腫および場合により火傷後脳症となることがある。消化管において、いくつかの形態の複合症が重い火傷の後に起きることがある。出血性症候群が胃粘膜に対する胃酸の作用により生じ、Curling's 潰瘍とよばれている状態に進行し得る。他の起こり得る症状は麻痺性イレウスであり、腸の運動性および統合性の減少により生じる。
【0045】
多くの臓器において、臓器機能障害は、臓器血流の減少、臓器血管系および周辺組織に位置する PMNL の負担増加および血管透過性の増加から起こり得る。
【0046】
重い火傷の対象は敗血症の大きい危険性もある。皮膚が微生物侵入の障壁としてもはや働かないので、細菌侵傷が火傷の患者で生じる。有効な全身的免疫応答を起こす能力の低下のために, 重い火傷患者は敗血症が進行しやすく、生命の危険性のある敗血ショックになりやすい。しかし、敗血症は、火傷に対し二次的に起きる臓器の機能障害または不全とは別個の合併症である。火傷に対し二次的に起きる臓器の機能障害または不全は敗血症の不存在で起こり得る。
【0047】
本発明でいうところの全身的損傷、臓器機能障害または臓器不全は、後の損傷、機能障害または不全をもたらす火傷が問題の臓器に直接的に作用しないことである。すなわち損傷が火傷に対し二次的である。理論的なメカニズムに縛られる意図でないが、火傷の結果として起きる全身的炎症応答が続いて起きる機能障害または臓器不全の主要な原因であるといえよう。
【0048】
本発明は、いかなる原因にもよる火傷からおきる臓器の機能障害または不全などの全身的損傷の処置に適用できる。その原因には、乾燥の熱または冷火傷、熱傷、日光火傷、電気的火傷、酸およびアルカリなどの化学物質、例えば、ヒドロフルオル酸、ホルミル酸、無水アンモニウム、セメントおよびフェノール、または放射火傷がある。低温または高温への暴露から来る火傷も本発明の範囲にある。火傷の重さおよび広さは様々であるが、二次的な臓器の機能障害または不全は、火傷が非常に広範で非常に重いとき (第2または第3度の火傷)、通常生じる。二次的な臓器の機能障害または不全の進展は、火傷の程度、患者の免疫系の応答および感染や敗血症などの他の因子に依存する。
【0049】
本明細書で使用される用語 "アンタゴニスト" は、C5a 活性を阻害する記述化合物の能力を意味する。提案のメカニズムに縛られる意図でないが、本明細書に記載の C5a 受容体アンタゴニストは、C5a 受容体との結合により作用する C5a の競合的阻害剤であると思われる。これらの化合物のアンタゴニスト活性を、本明細書の一般的方法に記載したような受容体結合アッセイにより定量できる。アンタゴニスト強度は、ナノモル範囲での濃度における活性でもって表す。特性を、他の型の受容体に対する低濃度での化合物の不活性でもって表す。本発明の好ましい化合物は高いレベルの選択性を有し、IC50 がホルミル化 met-leu-phe、ロイコトルエン B4- もしくは血小板活性化因子-誘導酵素の放出に対して 100 μM より大きい。
【0050】
逆に、本明細書で使用される用語「アゴニスト活性が実質的にない」は、C5a 受容体の活性化、例えば、PMNL の活性化、血管透過性の増加および種々の炎症性メディエーターの産生などのこの受容体に伴う生理学的結果を導くシグナル移行事象を誘導する化合物の不能力を意味する。化合物 PMX53 は、好中球の走化性および極性化についての敏感なアッセイ (Finch AM et al: Low molecular weight peptidic and cyclic antagonists of the receptor for the complement factor C5a. J Med Chem 42: 1965-1974, 1999) でモニターされるように、検出可能なアゴニスト活性を欠いている。この活性の定性測定は、本明細書の一般的方法の章に記載されたミエロペルオキシダーゼ放出アッセイを用いて行い得る。
【0051】
本明細書を通じて、通常の1文字および3文字コードをアミノ酸の表示に使用する。
本明細書で使用される他の略号を下記する:
BAL 気管支肺胞洗液
Cit シトルリン
dCha D-シクロヘキシルアミン
DPhe D-フェニルアラニン
EB エバンスブルー
lg イムノグロブリン
IL-6 インターロイキン-6
ip 腹腔内
iv 静脈
LPS リポポリサッカライド
MAP 平均動脈圧
MPO ミエロペルオキシダーゼ
PMNL 多形核白血球 (多形核顆粒球)
PMSF フェニルメチルスルホニルフルオリド
sc 皮下
TNF-α 腫瘍壊死因子-α
【0052】
「通常」アミノ酸は、グリシン、ロイシン、イソロイシン、バリン、アラニン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパルテート、アスパラギン、グルタメート、グルタミン、システイン、メチオニン、アルギニン、リシン、プロリン、セリン、トレオニンおよびヒスチジンよりなる群から選ばれる L-アミノ酸である。
【0053】
「非通常」アミノ酸は、限定でないが、D-アミノ酸、ホモアミノ酸、N-アルキルアミノ酸、デヒドロアミノ酸、フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン以外の芳香族アミノ酸、オルト-、メタ- もしくはパラ-アミノ安息香酸、オルニチン、シトルリン、カナバニン、ノルロイシン、γ-グルタミン酸、アミノ酪酸、L-フルオレニルアラニン、L-3-ベンゾチエニルアラニンおよびα,α-ジ置換アミノ酸を含む。
【0054】
本明細書の目的のために、用語「アルキル」は、1 − 6、好ましくは 1 − 4 炭素原子の直鎖、分枝または環状の置換または非置換アルキル鎖を意味する。最も好ましくは、アルキル基がメチル基である。
【0055】
用語「アシル」は、1 − 6、好ましくは 1 − 4 炭素原子の置換または非置換アルキル鎖を意味する。最も好ましくは、アシル基がアセチルである。
【0056】
用語「アリール」は、置換または非置換のホモ環状またはヘテロ環状アリール基を意味し、その環が 5 または 6 員であるのが好ましい。
【0057】
本明細書に記載の化合物は、火傷の処置に有用な1以上の他の物質と合わせて使用できる。それには、限定でないが、静脈液ならびに鎮痛剤および抗生物質の投与などの一般的保持手段がある。
【0058】
本明細書に記載の組成物は、経口、非経口、噴霧、鼻内、経直腸または経皮での使用に製剤できるが、経口または局所製剤が好ましい。すべてではないが大部分の化合物が、代謝酵素の存在、例えば、消化管、血液、肺または細胞内酵素の存在で安定であると思われる。かかる安定性は、当業者に既知の日常的な方法で容易に試験できる。
【0059】
本明細書に記載の化合物は、いずれの適当な用量で、いずれの適当な経路で投与できる。経口または経皮の投与が、その大きい便宜性および許容性からして好ましい。有効量は、処置しようとする状態ならびに個々の被処置者の年齢、体重および主要な健康状態に依存する。これは、担当の医師または獣医師の裁量である。適当な用量レベルは、当技術分野でよく知られている方法を用いて、試行錯誤試験により容易に決定できる。
【0060】
本明細書に記載の代表的化合物は、PMX53 を含み、血漿中の 37℃ 1 時間のインキュベーションで安定かつ活性を保持する。
【0061】
ヒトについての化合物の用量は、経口適用で 0.5 〜 20 mg/kg 体重、好ましくは 1.0 〜 10 mg/kg 体重、静脈投与で 0.1 〜 1 mg/kg 体重、皮下投与で 0.1 〜 10 mg/kg 体重、局所投与で 10 mg/ml ゲルの範囲にあると理解できる。
【0062】
以前の試験は、ラットに対する100 mg/kg 体重/日の PMX53 経口投与が、ヒツジ赤血球 ISHQ アッセイにおいてT細胞依存性抗原応答を軽減または増加しなかったことを示している。100 mg/kg 体重/日の PMX53 経口投与はまた、cynomolgus サルにおいて顆粒球の食作用または酸化バースト機能を検出可能な程度に弱めなかった。
【0063】
いかなる所望の経路による投与用に適する製剤は、標準的方法で調製し得る。例えば、周知のテキストブック、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, Vol. II, 2000 (20th edition), A.R. Gennaro (ed), Williams & Wilkins, Pennsylvania などを参照のこと。
【0064】
本発明はいかなる意味においても特定の動物または種の処置に限定されるものでなく、ヒトの医学的処置に有用であり、また獣医学的処置、特にネコやイヌなどの愛玩動物、ウシやウマ、ヒツジなどの家畜、および非ヒトの霊長類、大きいウシ科、ネコ科、有蹄類およびイヌ科の動物を含む動物園の動物の処置に有用である。
【0065】
疾患を改善するための種々の医薬組成物の使用を特定の実施態様に記載する。ひとつの実施態様による医薬組成物は、式Iの化合物、そのアナログ、誘導体もしくは塩および1以上の薬理学的に活性の物質、あるいは式Iと1以上の薬理学的に活性の物質の組合せ物を、担体、賦形剤および添加物または補助剤を用いて対象への投与に適した形態にすることにより調製する。
【0066】
よく使用される担体または補助剤には、炭酸マグネシウム、二酸化チタニウム、ラクトース、マンニトールなどの糖、タルク、乳タンパク質、ゼラチン、デンプン、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物および植物油、ポリエチレングリコール、ならびに無菌水、グリセロールおよびポリ水和アルコールなどの溶媒がある。静脈ビヒクルは、液体および栄養の補充物を含む。保存剤には、抗菌剤、抗酸化剤、キレート剤および不活性ガスがある。他の医薬的に許容される担体には、水性溶液、塩を含む非毒性賦形剤、保存剤、緩衝液などがあり、例えば、下記に記載されている: Remington's Pharmaceutical Sciences, 20th ed. Williams & Wilkins (2000) および The British National Formulary 43rd ed. (British Medical Association and Royal Pharmaceutical Society of Great Britain, 2002; http://bnf.rhn.net) (これらの内容を、出典明示により本明細書の一部とする)。医薬組成物の種々の成分についての pH および正確な濃度は、当技術分野の日常的事項に従って調整できる。参照、Goodman and Gilman's The Pharmacological Basis for Therapeutics (7th ed., 1985)。
【0067】
医薬組成物を用量単位で調製し投与するのが好ましい。固体の用量単位は、錠剤、カプセルおよび座剤を含む。対象処置のために、化合物の活性、投与方法、障害の性質および重篤度、対象の年齢および体重に従って、異なる1日量を使用し得る。しかし、ある状況において、より高いまたはより低い1日量が適している。用量を、個々の用量単位またはいくつかの用量単位における単一投与により、投与できる。あるいは、特別の間隔でサブ分割用量を複数回で投与できる。
【0068】
特定の実施態様の医薬組成物を医療上有効な量で局所的または全身的に投与できる。この使用における有効な量は、もちろん、疾患の重篤度ならびに対象の体重および一般的状態に依存する。一般的に、インビトロで使用される用量が医薬組成物のインシトゥ投与に有用な量について有用な指針を提供し、そして動物モデルを利用して細胞毒性副作用の処置のために有効用量を決定し得る。種々の考慮が記述されている、例えば、Langer, Science, 249: 1527, (1990)。経口使用の製剤は、硬ゼラチンカプセルの形態であり得る。そこでは、活性成分を、不活性の固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムまたはカオリンと混合する。製剤は、軟ゼラチンカプセルの形態でもあり得る。活性成分を、水またはピーナッツ油、液体パラフィンまたはオリーブ油などの油性媒体と混合する。
【0069】
水性懸濁液は、通常、活性物質が水性緩衝液の製造に適した賦形剤と混合されて含有する。これらの賦形剤は、懸濁剤になり得、例えば、カルボキシメチル・ナトリウム、セルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、タラガントガムおよびアラビアガム;拡散剤または湿潤剤であり得る。拡散剤または湿潤剤は下記であり得る。
【0070】
(a) レシチンなどの自然界に存在するホスファチド;
(b) アルキレンオキシドと脂肪酸との縮合産物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン;
(c) エチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールの縮合産物、例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール;
(d) エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトールから誘導される部分的エステルの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレン・ソルビトール、または
(e) エチレンオキシドと脂肪酸およびヘキシトール無水物から誘導される部分的エステルの縮合産物、例えば、モノオレイン酸ポリオキシエチレン・ソルビタン。
【0071】
医薬組成物は、無菌の注射用水性または油性の懸濁液の形態であり得る。この懸濁液は、既知の方法に従い、上記のような拡散もしくは湿潤剤および懸濁剤を用いて製剤できる。無菌の注射用製剤は、非毒性の非経口に適用し得る希釈液または溶媒での無菌の注射用溶液、例えば、1,3-ブタンジオールの溶液であり得る。適用し得る許容のビヒクルおよび溶媒は、水、リンゲル液および等張の塩化ナトリウム液である。さらに、無菌の固定油を溶媒または懸濁媒体として通常使用する。この目的のために、いかなるブランドの固定油を、合成のモノまたはジグリセリドを含み、適用できる。さらに、オレイン酸などの脂肪酸を注射用製剤に適用できる。
【0072】
式 I の化合物は、小さい単層小胞、大きい単層小胞および多層小胞などのリポソーム運搬系の形態でも投与できる。リポソームは種々のホスホリピド、例えば、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンから形成され得る。
【0073】
明細書に記載の化合物を火傷損傷に適用される包帯または被覆物により局所的に投与するのが好都合であり得る。このような場合、当技術分野で周知の標準的方法を用いて、ゲル中に製剤するか、カプセル封入できる。濃度 10mg/ml ゲルで局所投与の PMX53 は、関連のない臨床試験に参加した対象において 56 日間以上でよく耐容し安全であることがわかった。
【0074】
本発明の式Iの化合物の用量レベルは、体重kgあたり約 0.5mg 〜 20mg であり、好ましい用量範囲は体重kgあたり1日、約 1.0mg 〜 10mg (患者1日、約 0.1g 〜約 1.0g) である。単一用量をつくるために担体材料と組合せられる活性成分の量は、処置される宿主および投与経路の特定の様式に応じて変わり得る。例えば、ヒトへの経口投与を意図する製剤は、約 5mg から 1g の活性化合物を、全組成物の約 5 〜 95 %の範囲にある適当で好都合な担体材料量とともに含有する。用量単位形態は、一般的に、約 5mg 〜 500mg の活性成分を含有する。
【0075】
しかし、特定の患者についての具体的な用量レベルは、種々の因子に依存することを理解すべきである。それには、用いる具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄速度、薬物組合せ、治療を受けようとする特定の疾患の重篤度などがある。
【0076】
さらに、本発明のいくつかの化合物は、水または通常の有機溶媒とともに溶媒化合物を形成することがある。かかる溶媒化合物は本発明の範囲内である。
本発明の化合物は、他の治療化合物との組合せで操作的組合せ物を提供する。これは、組合せが本発明の式Iの活性をなくさない限り、医薬的に活性の物質のいかなる化学的に和合性の組合せを含むことを意図する。
本発明を、下記の一般的方法および実験的実施例のみを参照して説明する。
【0077】
一般的方法
ペプチド合成
式Iの環状ペプチド化合物を、われわれの以前の出願 No. PCT/AU98/00490 および No. PCT/AU02/01427(出典明示により本明細書の一部とする)に詳細に記載された方法に従って調製する。本発明を、化合物 AcF-[OPdChaWR] (PMX53) について具体的に明示する。この対応の線状ペプチドは Ac-Phe-Orn-Pro-dCha-Trp-Arg である。明らかに理解されるように、本発明はこの化合物に限定されない。
【0078】
国際出願 No.PCT/AU98/00490 に開示された化合物 1-6、17、20、28、30、31、36 および 44 ならびに国際出願 PCT/AU02/01427 に初めて開示された化合物 10-12、14、15、25、33、35、40、45、48、52、58、60、66 および 68-70 は、ヒト好中球上の C5a 受容体に対する評価可能なアンタゴニスト強度 (IC50 < 1 μM) を有する。PMX53 ならびに PCT/AU02/01427 の化合物 33、45 および 60 が最も好ましい。
【0079】
現在までに試験した式Iのすべての化合物が広い薬理学的活性を有することを見出した。なお、個々の化合物の物理化学的性質、力価およびバイオアベイラビリティは、具体的な置換基によってある程度異なる。 C5a アンタゴニスト活性における構造的類似性および表された機能的類似性の観点から、本明細書に表される PMX53 の活性が式 I の定義されたクラスの範囲内の他の化合物について予測し得ることは、当業者に理解されるであろう。
下記の一般的試験を C5a 受容体の候補阻害剤についての最初のスクリーニングに使用し得る。
【0080】
薬物の調製および製剤
ヒト C5a 受容体アンタゴニスト AcF-[OPdChaWR] (AcPhe[Orn-Pro-D-シクロヘキシルアラニン-Trp-Arg]) を国際特許出願 No. PCT/AU98/00490 および No. PCT/AU02/01427 に記載のように合成し、逆相 HPLC で精製し、質量分光測定およびプロトン NMR 分光法で特徴を完全に調べた。C5a アンタゴニストを、経口投与についてオリーブ油溶液 (10 mg/mL) に、SC 投与について 30% ポリエチレングリコール溶液 (0.6 mg/mL) に調製した。IP 注射について 50% プロピレングリコール溶液 (30 mg/kg) に調製した。
【0081】
受容体結合アッセイ
以前に記述されているように (Sanderson, S.D., Kirnarsky, L., Sherman, S.A., Vogen, S.M., Prakesh, O., Ember, J.A., Finch, A.M. and Taylor, S.M. J. Med. Chem., 1995 38 3669-3675) 単離された新鮮なヒト PMN についてのアッセイを、50 mM HEPES、1 mM CaCl2、5 mM MgCl2、0.5% ウシ血清アルブミン、0.1% バシトラシンおよび 100 μM フェニルメチルスルホニルフルオリド (PMSF) の緩衝液を用いて行った、4℃で行ったアッセイにおいて、緩衝液、非標識ヒト組換え C5a (Sigma) またはペプチド、Hunter/Bolton 標識 125I-C5a (〜20 pM) (New England Nuclear, MA) および PMN (0.2 x 106) を順次 Millipore Multiscreen アッセイプレート (HV 0.45) に加え、最終量を 200μL/ウエルとした。60 分間 4℃でのインキュベーションの後、サンプルをろ過し、プレートを1回緩衝液で洗った。フィルターを乾燥し、パンチし、LKB ガンマ計量器で計測した。非特異的結合を 1mM ペプチドまたは 100 nM C5a の挿入で調べ、典型的に 10-15% 全結合となった。
データを非直線回帰および Dunnett ポスト検定の統計処理で解析した。
【0082】
受容体アゴニスト活性アッセイ
化合物の C5a 受容体アゴニスト活性を、例えば、Seligmann et al. (Agents and Actions (1987) 21:375-378) に開示のカルシウム上昇アッセイまたは下記のミエロペルオキシダーゼ放出アッセイを用いて行った。
【0083】
アンタゴニスト活性についてのミエロペルオキシダーゼ放出アッセイ
細胞を以前に記述されているように (Sanderson et al, 1995) 単離し、サイトカラシン B (5μg/mL、15 分間、37℃) とともにインキュベートした。0.15% ゼラチンおよび ペプチドを含有する Hank's Balanced Salt 溶液を 96 ウエルプレート上に加え (全量 100 μL/ウエル)、ついで 25 μL 細胞 (4x106/mL) を加えた。各ペプチドの C5a をアンタゴニストする能力を調べるために、細胞を 5 分間 37℃で各ペプチドとともにインキュベートし、ついで C5a (100 nM) を加え、さらに 5 分間インキュベートした。ついで、50 μL のリン酸ナトリウム (0.1M、pH 6.8) を各ウエルに加え、プレートを室温まで冷やし、等量のジメトキシベンチジン (5.7 mg/mL) と H2O2 (0.51%) の新鮮な混合物 25 μL を各ウエルに加えた。反応を 10 分で 2% アジドナトリウムの添加で停止した。吸光度を 450 nm で Bioscan 450 プレートリーダーにより測定し、対照値 (ペプチドなし) について補正し、非直線回帰で分析した。
【0084】
統計学的分析
値は平均値 ± 標準誤差平均 (SEM) であり、群間の相違は P<0.05 で有意とした。データを1方向 ANOVA で解析し、個々の群の比較を Student's t 検定で行った。
【0085】
実施例1
ラットにおける皮膚火傷後の二次的損傷に対する PMX53 の抑制作用
雌 Wistar ラット、体重 250-300 g を本試験で使用した。ラットを3群に分けた:
群 1 火傷のみ (n = 4);
群 2 火傷 + PMX53 処置 (n = 4); および
群 3 火傷または薬物処置のない対照ラット (n = 2)。
【0086】
PMX53 処置は、PMX53 の蒸留水溶液を用量 10mg/kg で火傷 30 分前に皮下注射する。
深麻酔のラットを用い、全皮膚の 30% に等しい背中の皮膚の堅くクリップで挟んだ面積を水に温度 75 ℃で 30 秒間さらした。その結果、完全な堅い皮膚火傷となった (Schmid et al, Shock 8(2): 119-124, 1997)。火傷よる急死を防ぐために、ラットをすぐに 8-10 ml 正常塩類溶液の腹腔内注入で処置した。同時にエバンスブルー (EB) を濃度 20mg/kg で大腿静脈から注入した。ついで、正常の体温を維持するために、ラットを熱板上に置き、4 時間モニターした。必要に応じ麻酔薬を補充した。実験の終了時に 1-2 ml の血液を取り、血清/血漿を血清 TNF-α レベルについての次のアッセイのために−20 ℃で保存した。血管から皮下組織への EB/アルブミンの漏出を、皮膚サンプルを調べることにより評価した。
【0087】
皮下組織への血液漏出は、図1および2に示すように、ブルー染色で表した。図1に示すように、火傷のみの群では、EB が直ちに火傷の全領域に分布した。1 時間後、ブルー染色が明確になり、皮膚が厚くなり浮腫をもった。PMX53-処置群では、火傷のみの群に比して、ブルー染色および皮膚の肥厚が小であった。火傷の 4 時間後に、動物を殺し剖検したところ、皮下組織における EB 浸潤の程度に、薬物処置と非処置の火傷ラットの間に評価可能な差違がなかった。図2に示す。
【0088】
別個の実験を同様に、肺でのミエロペルオキシダーゼ (MPO) レベルを調べるために行った。この実験において、群は下記の通りである:
群 1 火傷 (n = 6);
群 2 火傷 + PMX53 (n = 6); および
群 3 対照 (n = 6)。
【0089】
火傷に続く 4 時間のモニター期間後直ちに、肺を 10ml の塩類溶液で肺大動脈を介して洗った。気管支肺胞洗液 (BAL) を、気管を介する1回の 1ml 塩類溶液 37℃の肺への潅注により集め、洗液中に存在する細胞の全数を調べた。約 50% の左肺の重さを量り、ついで 0.05% アジドナトリウムの 0.1M PBS (pH 6.4) 溶液 1ml 中で均質化し、音波処理して、遠心分離した。肺の上澄み液中の MPO レベルを組織 MPO アッセイで調べ、結果を吸光度/組織重量 (g) として計算した。影響を受けた肺、肝および腎のサンプルを組織病理学的検査のために収集した。
【0090】
エバンスブルー実験の結果を図3に示す。PMX53 で前処置されたラットは、正常な肺に類似する色および構造の肺を有した。火傷のみ群の肺は、薬物処置ラットまたは非火傷の対照ラットに比して EB 染色および硬化の程度が大きかった。
【0091】
図4は、擬似操作ラット、火傷ラットおよび火傷で PMX53-処置ラットの BAL 液からの細胞数検査の結果を示す。火傷損傷 4 時間後で PMX35-処置ラットの BAL 液中に存在する細胞数は、非処置火傷動物中に存在する数よりも顕著に少なかった。
【0092】
図5に示すように、PMX53 はまた、処置ラットの肺における MPO レベルの増加を、火傷のみラットに比して有意に阻害する (p<0005、ANOVA による検定)。すなわち、PMX53 は好中球浸潤に対して予防作用を有した。
【0093】
この試験は、PMX53 皮下投与による前注入は、重い火傷 4 時間後の肺における MPO の放出を有意に抑制した (30% の表面積および二次的程度)。
【0094】
さらなる実験を行って、この知見を火傷後のより長い時間ならびに肝、腎および腸などの他の組織に拡大している。皮膚、肺、腸、肝および腎のサンプルについての組織病理学的検査を行い、炎症の程度および各組織への好中球浸潤の程度を調べる。AS-D Napthol 染色を用いて、組織セクション中の PMNL を同定できる。
【0095】
実施例2 肺透過性の測定
肺の透過性を測定するために、動物に 125I-アルブミン (〜1μCi) を、尾静脈カテーテルを介して与え、30 分間静置し、処置後の均衡を保持した。安定および試験期間中、肺灌流物を 10 分ごとに採取した。試験期間中、血液サンプル (0.3 ml) を1時間間隔で採取した。血液サンプルを、下記のように、全アルブミン濃度および肺アルブミン損失の計算に使用される 125I-アルブミンの特異的活性の測定に用いた。
【0096】
心臓および肺の全体を切除し、左肺を3回 3.5 ml リンゲル・ラクテート液で洗い、気管支肺胞洗液 (BAL) を採取した。血液および BAL 液の重量を量り、125I 活性を調べ、肺透過性インデックス (LPI) を下記式で計算した:
LPI=BAL-125I(cpm/g)/血液-125I(cpm/g)
あるいは、エバンスブルーを用いて評価できる。
【0097】
実施例3 局所投与での PMX53 の火傷に対する抑制作用
実施例1の試験は、PMX53 皮下の前投与が重い火傷 4 時間後の肺における MPO の放出を有意に抑制することを示す (30% の表面積および二次程度)。しかし、このモデルでは火傷の面積における好中球の浸潤が明らかでなかった。C5a アンタゴニストの全身的投与が火傷患者における臓器機能障害の治療または予防に必要かどうかを決定することにも興味があった。なぜなら、重い火傷後の免疫系の全身的な低下がないことが患者にとって好都合であろうからである。
【0098】
火傷後の好中球浸潤に対する局所適用の PMX53 の抑制作用を 6 時間後の期間で調べた。免疫系に対する PMX53 の作用を確認するために、イムノグロブリン 4 (IgG) レベルを調べた。IgM レベルを類似の方法で調べ得る。
【0099】
火傷のラット皮膚上への局所投与に続く PMX53 の血流への通過の速度も調べた。前の実験によると、PMX53 のラットへの局所投与は、他の経路での投与に比して薬物の全身的レベルが低い結果となった。
【0100】
雌 Wistar ラット、体重約 250 g をこの試験に使用した。全9ラットを実験に用い、各3匹の3群に分けた:
群 1 火傷なし;
群 2 火傷のみ; および
群 3 火傷 + PMX53 処置。
【0101】
麻酔ラットの両体側を剃毛した。ラットの各体側の中央部分に沿った3点で、熱真ちゅう体 (100℃の水で処理) 直径 1 cm、高さ 2 cm、重さ 30 g で 10 秒間火傷せしめた。2度の火傷が 15% のラット表面積で生じた。薬物処置群には、40μl の PMX53 溶液 (400μg/点、10mg PMX53/ml の、30% ポリエチレングリコール含有の蒸留水溶液) を、火傷後すぐに火傷の皮膚に適用した。
【0102】
ついでラットを加熱板上におき、6 時間密接にモニターした。実験の終了時に血漿または血清を、イムノグロブリン測定および循環 PMX53 のレベルの分析のために採取した。皮膚サンプルを組織病理学的検査のために採取した。
【0103】
これらの実験結果を図6に示す。
火傷のない皮膚は組織検査で正常の構造であった。少数の好中球を認めたが、主に血管内であった (図6A)。
火傷の皮膚は構造が壊れ、浮腫を示した。好中球の辺縁が深筋肉層の血管で見られ、周りにいくらかの好中球が散在した (図6B)。
【0104】
PMX53-処置の皮膚は、火傷の皮膚と同じ構造的損傷を示すが、好中球の動員が少ない (図6C)。少数の好中球が火傷の組織に、火傷 6 時間後に移行するが、これは比較的短い期間である。
【0105】
PMX53 投与後の循環 IgG レベルの変化を図7に示す。血漿中に IgG レベルは ELISA アッセイで測定した。IgM レベルも通常の ELISA 法で測定できる。火傷 6 時間後の期間で 15% の ラット皮膚表面積まで IgG の抑制がなかった (n=3)。PMX53 の局所投与、用量 400μg/部位 (全 6 部位、2.4mg/ラット) は IgG レベルのいかなる低下も同じラットモデルで起こさなかった。この結果は、15% 未満の完全な肥厚の皮膚火傷が全身的イムノグロブリンに対する作用をラットモデルで有さないことを示唆する。6 時間期間は、火傷に対する検出可能な全身的反応について短すぎるのかもしれない。
【0106】
同様の実験を 12、18、24、36 および 48 時間等のより長い期間について、循環 IgG および IgM のレベルが長時間で変化するかを調べるために、実施し得る。ヒト IgG および IgM のレベルを定量するための ELISA アッセイキットを容易に入手し得る (参照、例えば、Bethyl Laboratories, Human IgM ELISA Quantitation Kit and Human IgG ELISA Quantitation Kit)。
【0107】
下記の表に火傷皮膚への局所投与後の血流に入る PMX53 の測定についての結果を要約する。

【表1】

【0108】
各時点について浸透値を、PMX53 の血中濃度 (A) を用いて算定した。血液量を 6% の 250g 体重 (B) と見積もり、用いた用量 (C) 投与による皮膚の全表面積 (D) を関数として、下記式を用いた:

A x 15 x 100%
C x D
【0109】
PMX53 の火傷ラット皮膚への浸透の程度には大きい相違がある。このことは、薬物の火傷患者に対する局所適用が薬物の全身的レベルを増加し得ることを示す。化合物の火傷ラット皮膚への浸透は、正常のラット皮膚への浸透よりも有意に高かった (0.16%/cm2、60分)。従って、局所適用する化合物の用量および火傷患者に投与のための表面積の大きさは、安全性のために注意深く調整しなければならない。これらの結果は、ラット皮膚応答とヒト皮膚応答の差違からして、ヒト皮膚について同じ結果となり得ない。例えば、2度火傷のラット皮膚は水疱を生じない。しかし、当業者は、日常的方法を用いて、局所投与についての用量を容易に決定できるであろう。
【0110】
局所投与後の血流への PMX53 の比較的迅速な浸透は、この分子がイムノグロブリンなどの大きい分子と異なり容易に全身に分布し得ることを表すように、その利点を証明し得る。
【0111】
実施例4 PMX53 と銀コート傷被覆物との相互作用
Acticoat(商標、Smith and Nephew) 抗微生物被覆物が外因性細菌汚染に対する傷部位の持続的保護を提供する。抗微生物障壁は 7 日間まで有効である。
【0112】
銀イオンが Acticoat(商標) 傷被覆物の表面から漏出するので、PMX53 がこの過程に対してなんらかの作用を有するのか、あるいは傷治癒または抗菌性の減少を導きかねないで銀被覆と相互作用するのかを調べることは意味がある。
【0113】
Acticoat 被覆物の統一的な大きさのセグメント (10 mm 直径) を、7ml PMX53 溶液 (1.0 mM 無菌水中) または無菌水のみ中、37℃で 7 日間インキュベートした。ついで、セグメントを取り出し、電子顕微鏡の走査で銀被覆が影響を受けたかを検査した。
【0114】
PMX53 の銀イオン漏出に対する定量的検査を、1、3、5 および 7 日間の上記インキュベーション後の各溶液中の銀イオン濃度を測定して行った。銀イオンの測定は、Spectroflame モデル P ICPAES 機器を用いて行った。
【0115】
インキュベーション溶液に残る PMX53 の分析を高性能液体クロマトグラフィーで行い、PMX53 の濃度がインキュベーション期間中一定かを確かめた。PMX53 溶液を 37℃で被覆物なしでインキュベートし、対照とした。
【0116】
PMX53 との 7 日間インキュベーション後で Acticoat(TM) 被覆物セグメントの表面に、電子顕微鏡 2000 倍で可視の明確な変化がなかった。
【0117】
銀漏出実験の結果を表2に示す。インキュベーション中の PMX53 (1 mM) の存在は、Acticoat(商標) 被覆物からの銀イオンの漏出を 37℃での1日間インキュベーション後 2.5 倍に増加せしめた。その後、インキュベーション溶液中の銀イオン濃度は、第 1 日から第 7 日まで変化しなかった。
【0118】
【表2】

【0119】
PMX53 のインキュベーション溶液中の濃度に対する Acticoat(商標) 被覆物の作用についての検定結果を表3に示す。Acticoat(商標) 被覆物とともにインキュベートされた PMX53 の濃度は Acticoat (商標) 被覆物対照の PMX53 溶液に比べると実験中変化しなかった。PMX53 は Acticoat(商標) 被覆物セグメントとのインキュベーションにより減成されないようである。
【0120】

【0121】
これらの試験において、われわれが初めて、重い火傷から起きる臓器機能障害などの全身的損傷を具体的な小分子 C5a 受容体アンタゴニスト、PMX53 で緩解できることを示した。
【0122】
本発明を明確性および理解のためにかなり詳細に記述したが、本明細書に記載した実施態様および方法について種々の改変および変更を、本明細書に開示の発明的概念の範囲から逸脱しないで、なし得ることは、当業者にとって明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】図1は、熱皮膚火傷4時間後、ラットの皮膚へのエバンスブルーの漏洩を表す写真である。
【図2】図2は、火傷ラットの皮膚組織へのエバンスブルー/アルブミンの漏洩を表す写真である。
【図3】図3は、火傷4時間後の肺の肉眼的様相を示す写真である。左側の2肺は火傷のみの対照ラットであり、真ん中の肺は火傷のない対照であり、右側の2肺は PMX53 10mg/kg SC で前処置された火傷のラットのものである。
【図4】図4は、火傷4時間後のラットにおける気管支肺胞洗液 (BAL) から回収された細胞の全数を示すグラフである。
【図5】図5は、火傷30分前の PMX53 10mg/kg SC 前処置の、火傷4時間後での肺ミエロペルオキシダーゼ (MPO) レベルに対する作用を示すグラフである。MPO の上昇レベルは肺における好中球の存在を示す。
【図6】図6は、火傷6時間後の組織障害および PMNL の分布を示す火傷ラット皮膚サンプルの写真である。
【図7】図7は、PMX53 の局所投与の、火傷6時間後の血漿中 IgG レベルに対する作用を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火傷に対する二次的な全身的損傷を処置する方法であって、処置を必要とする対象に、C5a 受容体のアンタゴニストであり、下記式Iの環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物の有効量を投与する工程を含む方法:
【化1】


[式中、A は H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
B はアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または D- もしくは L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
C は D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖であり、しかし、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンの側鎖でなく;
D は中性 D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖、大きい平面的側鎖または大きい電荷側鎖でなく;
E は大きい置換基であり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L-ヒスチジンの側鎖でなく;
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり; および
X は -(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4 の整数);-(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-; -(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または -CH2-CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である]。
【請求項2】
n が 2 または 3 である、請求項1の方法。
【請求項3】
A がアセトアミド基、アミノメチル基または置換もしくは非置換スルホンアミド基である、請求項1または2の方法。
【請求項4】
A が置換スルホンアミドであり、置換基が 1 〜 6 炭素原子のアルキル鎖またはフェニルもしくはトルイル基である、請求項1または2の方法。
【請求項5】
置換基が 1 〜 4 炭素原子鎖である、請求項4の方法。
【請求項6】
B が L-フェニルアラニンまたは L-フェニルグリシンの側鎖である、請求項1−5のいずれかの方法。
【請求項7】
C がグリシン、アラニン、ロイシン、バリン、プロリン、ヒドロキシプロリンまたはチオプロリンの側鎖である、請求項1−6のいずれかの方法。
【請求項8】
D が D-ロイシン、D-ホモロイシン、D-シクロヘキシルアラニン、D-ホモシクロヘキシルアラニン、D-バリン、D-ノルロイシン、D-ホモ-ノルロイシン、D-フェニルアラニン、D-テトラヒドロイソキノリン、D-グルタミン、D-グルタメートまたは D-チロシンの側鎖である、請求項1−7のいずれかの方法。
【請求項9】
E が L-フェニルアラニン、L-トリプトファンおよび L-ホモトリプトファンよりなる群から選ばれるアミノ酸あるいは L-1-ナフチルもしくは L-3-ベンゾチエニルアラニンの側鎖である、請求項1−8のいずれかの方法。
【請求項10】
化合物が C5a 受容体に対し検出可能なアゴニスト活性を有さない、請求項1−9のいずれかの方法。
【請求項11】
化合物が受容体親和性 IC50 < 25μM およびアンタゴニスト強度 IC50 < 1μM を有する、請求項1−10のいずれかの方法。
【請求項12】
化合物が PCT/AU02/01427 に記載の化合物 1 − 6、10 − 15、17、19、20、22、25、26、28、30、31、33 − 37、39 − 45、47 − 50、52 − 58 および 60 − 70 よりなる群から選ばれる化合物である、請求項1−11のいずれかの方法。
【請求項13】
化合物が AcF[OP-DCha-WR]、AcF[OP-DPhe-WR]、AcF[OP-DCha-FR]、AcF[OP-DCha-WCit])、HC-[OpdChaWR]、AcF-[OpdPheWR]、AcF-[OpdChaWシトルリン] または HC-[OpdPheWR] である、請求項12の方法。
【請求項14】
全身的損傷が臓器の機能障害または不全である、請求項1−13のいずれかの方法。
【請求項15】
処置が予防的処置である、請求項1−14のいずれかの方法。
【請求項16】
処置が治療的処置である、請求項1−14のいずれかの方法。
【請求項17】
臓器の機能障害または不全が1以上の肺、腎、肝および腸の機能障害または不全よりなる群から選ばれる、請求項14−16のいずれかの方法。
【請求項18】
臓器の機能障害または不全が肺の機能障害または不全である、請求項17の方法。
【請求項19】
対象がヒトである、請求項1−17のいずれかの方法。
【請求項20】
阻害剤が静脈、経口、皮下、経皮または局所に投与される、請求項1−18のいずれかの方法。
【請求項21】
阻害剤が静脈または局所に投与される、請求項1−18のいずれかの方法。
【請求項22】
火傷に対する二次的な全身的損傷の処置において使用される医薬の調製のための、C5a 受容体のアンタゴニストであり、環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物の使用であって、この化合物が下記式 I である:
【化2】


[式中、A は H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
B はアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または D- もしくは L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
C は D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖であり、しかし、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンの側鎖でなく;
D は中性 D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖、大きい平面的側鎖または大きい電荷側鎖でなく;
E は大きい置換基であり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L-ヒスチジンの側鎖でなく;
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり; および
X は -(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4 の整数);-(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-; -(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または -CH2-CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である]。
【請求項23】
全身的損傷が臓器の機能障害または不全である、請求項22の使用。
【請求項24】
処置が予防的処置である、請求項22または23の使用。
【請求項25】
処置が治療的処置である、請求項22または23の使用。
【請求項26】
C5a 受容体のアンタゴニストであり、下記式Iの環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物を含む、火傷に対する二次的な全身的損傷を処置するための医薬または獣医薬:
【化3】


[式中、A は H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
B はアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または D- もしくは L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
C は D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖であり、しかし、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンの側鎖でなく;
D は中性 D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖、大きい平面的側鎖または大きい電荷側鎖でなく;
E は大きい置換基であり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L-ヒスチジンの側鎖でなく;
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり; および
X は -(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4 の整数);-(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-; -(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または -CH2-CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である]。
【請求項27】
C5a 受容体のアンタゴニストであり、下記式Iの環状ペプチドまたはペプチド様化合物である化合物ならびに医薬的または獣医薬的に許容される担体を含む、火傷に対する二次的な全身的損傷を処置するための組成物:
【化4】


[式中、A は H、アルキル、アリール、NH2、NH-アルキル、N(アルキル)2、NH-アリール、NH-アシル、NH-ベンゾイル、NHSO3、NHSO2-アルキル、NHSO2-アリール、OH、O-アルキルまたは O-アリールであり;
B はアルキル、アリール、フェニル、ベンジル、ナフチルまたはインドール基、または D- もしくは L-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシン、D-フェニルアラニン、L-ホモフェニルアラニン、L-トリプトファン、L-ホモトリプトファン、L-チロシンまたは L-ホモチロシンの側鎖でなく;
C は D-、L- またはホモ-アミノ酸の側鎖であり、しかし、イソロイシン、フェニルアラニンまたはシクロヘキシルアラニンの側鎖でなく;
D は中性 D-アミノ酸の側鎖であり、しかし、グリシンもしくは D-アラニンの側鎖、大きい平面的側鎖または大きい電荷側鎖でなく;
E は大きい置換基であり、しかし、D-トリプトファン、L-N-メチルトリプトファン、L-ホモフェニルアラニン、L-2-ナフチル L-テトラヒドロイソキノリン、L-シクロヘキシルアラニン、D-ロイシン、L-フルオレニルアラニンまたは L-ヒスチジンの側鎖でなく;
F は L-アルギニン、L-ホモアルギニン、L-シトルリンまたは L-カナバニンの側鎖、またはそのバイオ等価体であり; および
X は -(CH2)nNH- または (CH2)n-S-(うち、n は 1 〜 4 の整数);-(CH2)2O-; -(CH2)3O-; -(CH2)3-; -(CH2)4-; -CH2COCHRNH-; または -CH2-CHCOCHRNH-(うち、R は通常または非通常のアミノ酸の側鎖)である]。
【請求項28】
局所投与のために製剤される、請求項27の組成物。
【請求項29】
包帯または被覆物の形態にある、請求項27または28の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−528209(P2006−528209A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529451(P2006−529451)
【出願日】平成16年5月26日(2004.5.26)
【国際出願番号】PCT/AU2004/000703
【国際公開番号】WO2004/103392
【国際公開日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(500020760)ザ・ユニバーシティ・オブ・クイーンズランド (20)
【Fターム(参考)】