説明

火格子燃焼設備の燃焼残滓品質を改善する方法

燃焼火格子上に相互に連続して複数の配置された固体ベッド燃焼区域とその上に配置された燃焼室とを備えた火格子燃焼設備の燃焼残滓品質を改善する方法。本発明の課題は、たとえば火格子燃焼等の廃棄物燃焼において燃焼残滓品質を改善するための簡単かつ高信頼性で制御可能な次のような方法、すなわち、火格子上の固体ベッド燃焼中にすでに良好な燃焼残滓品質が実現される方法を提供することである。前記課題は、酸素を含有する1次ガスが最初の固体ベッド燃焼区域を通流し、該最初の固体ベッド燃焼区域に後続する少なくとも1つの固体ベッド燃焼区域を燃焼室からの高温の燃焼ガスが通流することによって解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば請求項1に記載の火格子燃焼設備の燃焼残滓品質、たとえば廃棄物燃焼設備の燃焼残滓品質を改善する方法に関する。
【0002】
燃焼火格子上で行われる固体の燃料の燃焼、例えば廃棄物、バイオマスまたは石炭の燃焼は理想的には、順次行われる部分プロセスに区分することができ、乾燥プロセスと、揮発性成分の脱ガスプロセスと、残留炭素の焼却プロセスと、火格子灰の焼結プロセスとに区分することができる。しかし実際の火格子燃焼設備では、とりわけ前送り火格子での燃料の混合は非常に悪く、上記部分プロセスは火格子長さ上で相互に重なってしまう。
【0003】
可燃性の燃料成分は主に、乾燥後に分離される揮発性の成分中に集中する。脱ガスで分離された高発熱量のこのようなガスは、局在する酸素に依存して部分的に燃焼し、主に燃焼ベッドの上方で燃焼することにより、局所的な排ガス温度が大きく上昇する。燃焼ベッドに残留する固化した炭素は、炭素インベントリー(Kohlenstoffinventar)のうち小さい割合にしかならないが、完全燃焼するためには格段に長い時間を要する。それゆえ、残留炭素燃焼のための領域は、火格子の過度に大きな領域を占める。残滓燃焼区域の領域において温度を上昇して、固化した炭素の燃焼速度を上昇することにより、一般的には残滓品質の改善の他に、燃料処理量の上昇も可能になる。これらの作用は双方とも、経済的に著しく大きな意義を有する。
【0004】
燃焼残滓は通常、破砕された粒状物として、建築用骨材として使用される。それゆえ、燃焼残渣品質を改善する目的は、燃焼ベッドまたは燃焼部に後置接続された熱後処理部に残留する燃焼残渣の可能な限り完全な炭素燃焼および/または焼結および/または溶融を行うことであり、また、有害物質含有量(たとえばPCDD/F)を小さくすることでもある。
【0005】
DE19961384A1から、ゴミ燃焼設備から出た火格子灰を熱処理する方法が公知である。この方法では、燃焼後に火格子灰を回転炉内に案内し、ここで別の燃料によって、酸素を供給して熱処理する。
【0006】
それに対してDE10213788A1には、別個の装置で後続の処理ステップを行うことなく、廃棄物燃焼設備から出た燃焼残渣に作用する方法が開示されている。燃焼残滓を焼結および/または溶融する工程も、この方法では主燃焼区域の燃焼ベッドで実施される。ここで焼結または溶融されなかった燃焼残渣は、燃焼ベッドの通過後に燃焼工程に再び再循環される。
【0007】
しかし、付加的な処理ステップが追加されると必ず、このような処理ステップにおいて付加的な処理室を使用せずに構成成分を再循環しても、著しく大きな手間が発生し、これは燃焼設備の経済性に直接繋がる。このことはとりわけ、21Vol%を上回る付加的な高コストの酸素富化が行われる付加的な燃焼残滓処理に当てはまる。しかし、高温は燃焼残滓を最適化するための基本的な前提条件である。確かに、燃焼空気の酸素富化を行うことによって高い温度レベルが実現されるが、このことが実現されるのは基本的に、固体ベッド燃焼区域上方のガス室内だけであり、燃焼ベッド全体ではない。このことが、燃焼残滓の品質を決定する。
【0008】
このことを出発点として本発明の課題は、廃棄物燃焼たとえば火格子燃焼で燃焼残滓品質を改善するための簡単かつ高信頼性で制御可能な次のような方法を提供することである。すなわち、火格子で固体ベッド燃焼が行われる際でもすでに良好な燃焼残滓品質が実現される方法を提供することである。その際には、この方法によってたとえばNO等の別の有害物質の形成および/または燃焼排ガスの熱容量のエネルギー利用の有意な低減が発生しないことが特に重要である。
【0009】
この課題は、請求項1の特徴を有する方法で解決される。従属請求項に本方法の好適な実施形態が記載されている。
【0010】
前記課題の解決手段は、連続して配置された複数の固体ベッド燃焼区域(燃焼ベッド区域、燃焼ベッド領域、火格子領域または火格子区域とも称される)を有する燃焼ベッドを使用する燃焼工程を基礎とし、これらの固体ベッド燃焼区域を、燃焼すべき燃料が燃焼中に連続して通過する。通常はこのような燃焼工程は2段階の処理である。すなわち、燃焼の酸素含有1次ガスを固体ベッド燃焼区域に挿入し、また、固体燃焼時に形成され燃料を多く含む排ガスを後燃焼するために同様に酸素含有する2次ガスを、固体ベッド燃焼区域に後置接続された排ガス燃焼区域に挿入する。
【0011】
このような解決手段の重要な特徴は、前記固体ベッド燃焼区域のうち少なくとも1つの固体ベッド燃焼区域上方の燃焼室から燃焼ガスを再循環することによって、燃焼ベッド(すなわち、場合によっては燃焼残滓または灰が形成された固体の燃料)を燃焼火格子上で少なくとも1つの固体ベッド燃焼区域において加熱することを含む。高温の燃焼ガス部分流は、少なくとも1つの固体ベッド燃焼区域上方の燃焼室から直接分岐され、少なくとも1つの後続の固体ベッド燃焼区域の燃焼ベッドに通される。この少なくとも1つの後続の固体ベッド燃焼区域は、有利には最後の固体ベッド燃焼区域である。ここでは、燃焼室内において燃焼によって発生した燃焼ガスの高い温度が、有利には、上記の後続の固体ベッド燃焼区域内の燃焼ベッドにおける温度をさらに付加的に上昇するのに使用される。この後続の固体ベッド燃焼区域は、有利には最後の固体ベッド燃焼区域のうち少なくとも1つの固体ベッド燃焼区域である。
【0012】
上記で述べられたように、火格子燃焼設備で燃焼が行われている間、燃料はすべての固体ベッド燃焼区域を連続的に通過し、上流(第1)の固体ベッド燃焼区域に通過することにより、灰および燃焼残滓成分が形成される燃料の可燃性成分の燃焼が向上する。その際には、このような後続の固体ベッド燃焼区域において、有利には最後の固体ベッド燃焼区域においてこの燃焼残滓成分が積層され、固体の燃焼がすでに大幅に行われていることにより、ここで、この火格子区域に供給された低温の1次ガスによって基本的に、低温の温度レベルが発生する。高温の燃焼ガスを後続の固体ベッド燃焼区域によって上記の燃焼から、有利には最後の固体ベッド燃焼区域のうち1つの固体ベッド燃焼区域によって上記のように方向転換することにより、ここで燃焼残滓成分が所期のように加熱され、品質が改善された燃焼残滓が得られる焼結を実現することができる。このようにしてすでにこの燃焼残滓は、品質が改善された焼結最終生成物として固体ベッド燃焼区域を出る。熱後処理は、必ずしも行う必要がなくなった。また、燃焼残滓を焼結するために高コストの酸素を供給する必要もなくなる。
【0013】
以下で本発明を、図面に基づいて詳述する。
【0014】
図面
図1 例として4つの固体ベッド燃焼区域を有する火格子燃焼設備の燃焼ベッドの基本図である。
図2 ゴミ燃焼設備(TAMARA)で測定された異なる典型的な軸方向の温度経過を示し、また、図1の固体ベッド燃焼区域を横軸にして燃焼ベッド上方の酸素濃度と炭素燃焼量とをプロットしている。
図3 2段階の燃焼設備を示す基本図であり、最後の固体ベッド燃焼区域を通って行われる燃焼ガス成分の方向転換を概略的に示す。
図4aおよび4b 固体ベッド燃焼区域を横軸にして、異なる試験の火格子温度と排煙温度とをプロットして示す図である。
図5aおよび5b 図4aおよび4bに示された試験で得られた燃焼残滓中の未燃焼の残留炭素および塩化物の濃度を示す。
図6 図4および5に示された試験の枠内で得られた燃焼残滓の測定された毒性当量(TEq)を示す。
【0015】
図1に示されたような従来の火格子燃焼設備の燃焼ベッドは、固体燃料(燃焼ベッド14)が燃焼中に連続して通過する4つの固体ベッド燃焼区域P〜Pを有する燃焼火格子1を備えている。その際には、燃焼火格子上の固体燃料の燃焼は、次の部分処理を通過すること、すなわち乾燥処理2、揮発性のゴミ構成成分の脱ガス処理3、残留炭素の燃焼処理4、および火格子灰の焼結処理5を通過することが理想的と考えられている。実際の設備では、とりわけ前送り火格子の場合には混合は非常に悪い。それゆえ、火格子長さ6上でこれらの部分処理は相互に重なる。固体の燃焼は基本的に、燃焼ベッド表面から燃焼火格子の方向に行われる。このような特性により、燃焼ベッド厚さ方向に顕著な垂直方向の温度プロフィールが生じる。通常は燃焼中は、下方から燃焼火格子1のすべての固体ベッド燃焼区域を通って、酸素を含有する1次ガスの供給7が行われる。
【0016】
固体燃料の可燃性成分は主に、乾燥2後の脱ガス3時に分離される揮発性の成分に集中する。脱ガスで分離された高発熱量のこのようなガスは、局所的に1次ガスを有する酸素に依存して部分的に燃焼し、その大部分は燃焼ベッドの上方で燃焼することにより、局所的な排ガス温度が大きく上昇する。
【0017】
脱ガス後に燃焼ベッドに残った固化された炭素、いわゆる残留炭素は、炭素インベントリーの非常に小さい割合でしかないが、完全燃焼するのに必要とする時間は格段に長い。それゆえ、残留炭素燃焼のための領域は、燃焼火格子の過度に大きな領域を占める。固化した炭素の燃焼速度を温度上昇によって上昇することにより、一般的には燃焼残滓品質の改善(低いCl濃度、TOC濃度およびPCDD/F濃度)の他に、燃料処理量の増大も実現することができる。
【0018】
残留炭素の燃焼速度はとりわけ、燃焼ベッドの局所温度と、最後の固体ベッド燃焼区域における酸素供給量とに依存する。このような状況は、燃焼ベッド上方の排ガスにおける温度プロフィールと比較して、燃焼火格子における最大温度の異なる位置で現れる。
【0019】
図2に、燃焼室の4つの固体ベッド燃焼区域P〜Pを横軸にして、ゴミ燃焼設備(Forschungszentrum Karlsruhe の TAMARA)で測定された典型的な軸方向の温度経過8(単位℃)と、燃焼ベッドの炭素燃焼で検出された濃度9(単位%)と、該燃焼ベッド上方の酸素濃度13(単位Vol%)とがプロットされている。ここで燃焼された固体燃料は、29%の水と、39%の揮発性成分と、5%の残留炭素と、27%の灰とから組成されるので、家庭ゴミの典型的な組成を代表する。燃焼室上方の温度経過10と火格子表面で直接測定された温度経過11(燃料ないしは灰層の下限を熱電対によって測定した)との間に、これらの値の間で部分的に著しい温度勾配が現れている。とりわけ最初の2つの固体ベッド燃焼区域PおよびPですでに高い排ガス温度が現れたのに対し、燃焼ベッドにおける温度は、固体燃料の最初の乾燥2と排ガス3とによって低く抑えられている。ここでは、燃焼火格子上の燃料および燃焼残滓の熱伝導度はごく非常に低く、とりわけ前送り火格子の場合には(図1を参照されたい)、燃料層厚さ(燃焼ベッド厚さ)にわたって該燃料および燃焼残滓を垂直方向に混合することは不十分にしか行われないことを考慮すべきである。燃焼室から燃料(燃焼ベッド)への放射熱は燃焼ベッドの上層にのみ作用するので、燃焼火格子を最適化するために該燃焼火格子上で燃焼残滓層の厚さ全体にわたって焼結を行うために使用可能な放射熱はごく非常に制限されている。
【0020】
さらに図2には、燃焼ベッドにおける全炭素含有量の燃焼曲線12と、該燃焼ベッド上方の酸素濃度13とが示されている。主燃焼区域(固体ベッド燃焼区域P)の局所炭素燃焼速度は高いので、酸素消費量も多い。このことは酸素濃度13のO最小値に現れている。ここでの高発熱量の揮発性成分の分離量は大きく、1次空気を介して局所的に得られる酸素は、燃焼ベッド中および該燃焼ベッド上方で直接行われる完全な酸化を保証するのに十分でない。それゆえ完全なガス燃焼は、後置接続された排ガス燃焼区域(図3中の19を参照されたい)において2次ガスを噴入して(図3中の20を参照されたい)行われる。
【0021】
火格子長さ全体にわたって、とりわけ燃焼ベッドの上記の主燃焼区域より下流で、燃焼ベッドにおける炭素濃度12は連続的に下降し、0に漸近する。実際の設備では通常、TOC含有率(TOC:全有機炭素含有率)は約1%に達する。固体ベッド燃焼区域Pから実質的に、固化された炭素(残留炭素)の燃焼が行われる。その後、固体ベッド燃焼区域Pにおいて測定温度は有意に低減する。このことは、この固体ベッド燃焼区域において供給される1次空気が過剰になることで、燃焼ベッドにおける残留炭素含有量と比較して、化学量論比的に過剰量が高くなることに起因する。酸素濃度13は約18%に上昇する。
【0022】
固体ベッド燃焼区域Pにおける1次ガスのこのような過剰量により、燃焼ベッドの冷却が発生して固化炭素の燃焼速度が低減し、ちょうどこの領域において、灰成分および燃料残滓成分が良好に焼結されるのが阻止されるので、このことは望ましくない。この固体ベッド燃焼区域における1次ガス供給の絞りは限られた範囲でのみ行える。というのも、燃焼残滓‐灰層が不均質であり、とりわけ該燃焼残滓‐灰層の有孔度の分布が不均質であることにより、局所的な流動抵抗は燃焼面積にわたって一定に分布されず、線束形成に好影響が及ぼされる。1次ガスは最低抵抗の経路を探し当てるので、灰燃焼残滓層(燃焼ベッド)の通流が不均質になる。しかし、燃焼残滓/灰領域全体の良好な均質の炭素燃焼を実現するためには、酸素を含有するガスを有する灰‐燃焼残滓層の通流が高温で可能な限り均質で行われなければならない。
【0023】
図3に、冒頭に挙げられた形式の2段階の燃焼設備が示されているが、ここでは上記で提起された課題を解決するための手段として、最後の固体ベッド燃焼区域による燃焼ガス成分の方向転換が概略的に図示されている。この設備は基本的に、燃料用の入口16と燃焼残滓または別の固体の燃焼生成物用の出口17(図1中の燃料輸送方向18参照)と燃焼室に後置接続された、排ガス取出し口中の排ガス燃焼区域19とを備えた燃焼室15に設けられた燃焼火格子1上の燃料ベッド14からなる。燃焼室15はすべての固体ベッド燃焼区域P〜Pをカバーし、これらの固体ベッド燃焼区域P〜Pを燃料が燃焼ベッドで連続的に通過する。固体ベッド燃焼区域P〜Pをそのつど燃焼火格子が通流し、その際には、各固体ベッド燃焼区域ごとに酸素を含有する1次ガス7が個別に供給される。それに対し、この実施形態では固体ベッド燃焼区域Pでは1次ガスはこの燃焼ベッドを通流しない。後置接続された排ガス燃焼区域19において排ガス取出し口において酸素含有の2次ガス噴入20が行なわれる。
【0024】
固体燃料の燃焼21(図3では、火炎の記号表示によってのみ示されている)の場所は主に、固体ベッド燃焼区域Pの領域において生じ、固体ベッド燃焼区域P〜P内では必然的に、異なる燃焼状態が存在する(図2参照)。このような異なる燃焼状態はとりわけ、燃料の燃焼進行と温度とに起因する。
【0025】
良好な燃焼残滓品質は、残留炭素(TOC)および塩化物ならびに有機有毒物質(たとえばPCDD/F)の濃度が低いことを特徴とする。このことは、燃焼残滓が高温で火格子の後半(たとえば固体ベッド燃焼区域PおよびP)に滞留する時間が十分に長いことによって保証され、とりわけ最後の固体ベッド燃焼区域Pに滞留する時間が十分に長いことによって保証される。しかし、燃焼ベッド温度が1000℃を超えること、有利には1100℃(燃焼残滓融点)を超えることを回避しなければならない。というのもこのことにより、火格子が損傷または破壊してしまうからである。
【0026】
固体ベッド燃焼区域Pの燃焼ベッドにおける温度を所望の温度に調整することは有利には、通流する(すなわち吸引される)燃焼ガス量を制御するか、または吸入動作(燃焼ガス通流)または1次ガス供給(1次ガス通流)を時間的に(すなわち周期的に)切り換えることによって行われる。
【0027】
良好な焼結生成物を保証するためには、最後の(または上記の後続の)固体ベッド燃焼区域の燃焼火格子で10分を上回る燃焼ベッドの滞留時間で測定された最低温度が600℃である必要がある。これを上回る焼結温度は通常、単位℃で表される燃料残滓融点の少なくとも60〜70%である。有利には、固体ベッド燃焼区域Pにおける燃焼ベッド温度は燃焼残滓層の表面で、有利には放射高温計によって測定された場合、800℃〜最大1000℃である。
【0028】
最後の固体ベッド燃焼区域Pにおいて焼結が行われる際の燃焼残滓の長い滞留時間は、火格子速度を低くすることによって調整することができる。このようにして増大する高い燃焼残滓層は、混合が悪いために、顕著な温度勾配を有する。この固体ベッド燃焼区域に下方から低温の1次ガスが接近すると、燃焼残滓ベッドが冷却され、この領域において行われる炭素燃焼量はなおもごく僅かになってしまう。
【0029】
焼結温度と融点との間の上記の温度レベル、有利には800〜1000℃の間の上記の温度レベルを実現するためには、燃焼ガスを燃焼室から分岐して、有利には、固体ベッド燃焼区域Pにおける燃焼ベッドを通流するのに、可能な限り短い経路を通るように方向転換する。その際には、燃焼室からの燃焼ガスを有利には1つの温度レベルで(図2参照、たとえば約900℃の温度特性10の温度レベルで)、すなわち固体ベッド燃焼区域PおよびPにわたる領域で分岐し、直接、すなわち有利には上方から下方へ固体ベッド燃焼区域Pにおける燃焼ベッドを通って案内されるが、このことは限定的ではない。このようにして、固体ベッド燃焼区域Pにおいて燃焼残滓成分を有する燃焼ベッドを水平方向に完全に通流し、ひいては、燃焼ベッドにおけるすべての燃焼残滓成分が焼結温度を超える温度まで、有利には800℃を超える温度まで加熱される(図2参照、約500〜700℃、温度経過11)。次に、固体ベッド燃焼区域Pにおいて燃焼火格子1を通流する燃焼ガスが1次ガス供給部7に供給されるか、または燃焼火格子上方で再び燃焼室に供給されることにより、高温の燃焼ガスの再循環22が行われる。
【0030】
から再循環されるガスはまだ著しく高い酸素含有率を有するので、Pからの高発熱量の燃焼ガスが部分的に後燃焼される。このことにより、燃焼室内の温度が上昇する(図4aを参照されたい)。このようにして高くなった燃焼ガスの温度レベルにより、固体ベッド燃焼区域Pの燃焼ベッド内の温度も上昇する。
【0031】
また、燃焼ガスまたは排ガスは、固体ベッド燃焼区域Pにおける燃焼ベッドの残留炭素燃焼に十分な酸素量を有することも重要である。
【0032】
有利には、燃焼ガスは上方から下方へ燃焼ベッドを通って循環手段によって、有利には噴射装置または高温ガス送風機を使用して再循環される。このような循環手段は有利には、最後の火格子区域内の燃焼火格子1下方に吸入装置として配置される。その際には、燃焼ガスは有利には、燃焼ベッドへの熱の大部分を排出する。区域4の燃焼火格子の下方の熱損失と、場合によっては少量の低温ガス(有利には空気)が添加混合されることとにより、温度に対して比較的脆弱な可動の設備部品(燃焼火格子、循環手段)が大事に扱われるようになる。吸引される燃焼ガス量(または酸素成分を含む排ガス量)は、最大許容火格子温度(および、燃焼残滓の上記の融点)に相応して制限される。燃焼火格子下方では、排ガス中のO含有量とCO含有量とが測定される。着火性の混合物(CO=空気中では12.5〜74Vol%、着火温度T=620℃)は非常にあり得ない。最低O濃度(約10Vol%)を下回り、最大CO濃度(約1Vol%)を超える場合、上流に位置する固体ベッド燃焼区域P内の1次空気が上昇される。
【0033】
図4aおよび4bは、火格子燃焼を行うゴミ燃焼設備(Forschungszentrum Karlsruhe の TAMARA)で3つの試験(V1,V2,V3)で上記の4つの固体ベッド燃焼区域にわたって検出された火格子温度23(図4a)および排煙温度24(燃焼室内の燃焼ガス温度、図4b)を、これらの固体ベッド燃焼区域にわたってプロットする。図5aおよび5bは、上記の3つの試験で得られた燃焼残滓中のTOC濃度25(単位%)(図5a参照)および塩化物含有量26(単位mg/kg)(図5b参照)を表す(ドライサンプリング)。ここでは、噴射装置を使用して最後の固体ベッド燃焼区域における燃焼ベッドを通って行われる再循環される燃焼ガスの吸引が行われ、また、固体ベッド燃焼区域Pの上方の燃焼室内に再循環される燃焼ガスがフィードバックされる。
【0034】
試験V1は、本発明による燃焼ガスの再循環を行わない基準試験として行われた。固体ベッド燃焼区域P〜Pを、50/100/100/50m/hの1次ガスが通流した。燃料が個々の固体ベッド燃焼区域P〜P内において滞留する燃料滞留時間は火格子駆動装置を介して調整され、前記1次ガスに相応するこのような燃料滞留時間は300/300/600/1200秒であった。
【0035】
それに対して試験V2およびV3は、再循環される燃焼ガスを上記のように上方から下方へ、固体ベッド燃焼区域Pにおける燃焼ベッドを通って吸引して(約35m/h)行われた。しかし、1次ガス供給において漏れが存在すると、1次ガス供給量が低減したとしても約15m/hの1次ガス供給が固体ベッド燃焼区域Pにおいて行われ、燃焼火格子上方の温度と吸引手段(噴射装置)とに冷却作用すなわち好影響を及ぼす。すなわち、ここに存在する機械的部品が大事に扱われる。燃焼火格子下方の吸引される排煙で測定される温度は、V1と対照的に240℃から460℃に上昇している。Pの燃焼火格子直下の上記の最小O濃度は約17.8Vol%であり、最大CO濃度は0.12Vol%であった。燃焼火格子における軸方向の温度プロフィールと燃焼ベッド上方の排ガスにおける軸方向の温度プロフィールとは、火格子終端部では約100〜150℃上昇された(図4aおよび4bを参照されたい)。ここで顕著なのは、V1と比較してTOC濃度(図5a参照)および塩化物含有量(図5b参照)の低減が4倍ないしは3倍であることであり、このことは有利には、燃焼残滓中のPCDD/F濃度の低減に繋がる。図6は、これらの試験で得られた燃焼残滓(塩化物濃度(単位%)28およびTOC濃度(単位%)25)の相応の測定された毒性当量27を単位ng/kg(TEq)で示す。
【0036】
本方法が燃焼工程に悪影響を及ぼすことや、有害物質が形成されることは検出できなかった。NOの形成は約20%も低減された。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】例として4つの固体ベッド燃焼区域を有する火格子燃焼設備の燃焼ベッドの基本図である。
【図2】ゴミ燃焼設備(TAMARA)で測定された異なる典型的な軸方向の温度経過を示し、また、図1の固体ベッド燃焼区域を横軸にして燃焼ベッド上方の酸素濃度と炭素燃焼量とをプロットしている。
【図3】2段階の燃焼設備を示す基本図であり、最後の固体ベッド燃焼区域を通って行われる燃焼ガス成分の方向転換を概略的に示す。
【図4】固体ベッド燃焼区域を横軸にして、異なる試験の火格子温度と排煙温度とをプロットして示す図である。
【図5】図4aおよび4bに示された試験で得られた燃焼残滓中の未燃焼の残留炭素および塩化物の濃度を示す。
【図6】図4および5に示された試験の枠内で得られた燃焼残滓の測定された毒性当量(TEq)を示す。
【符号の説明】
【0038】
1 燃焼火格子
2 乾燥工程
3 脱ガス工程
4 燃焼工程
5 火格子灰の焼結工程
6 火格子長さ
7 1次ガス供給
8 温度経過(℃)
9 濃度
10 燃焼ベッド上方の温度
11 火格子表面上に直接存在する温度
12 炭素燃焼量(%)
13 燃焼ベッド上方の酸素濃度
14 燃焼ベッド
15 燃焼室
16 入口
17 出口
18 燃料輸送方向
19 排ガス燃焼区域
20 2次ガス噴入
21 燃焼
22 再循環
23 火格子温度(℃)
24 排煙温度(℃)
25 TOC濃度(%)
26 塩化物濃度(単位ppm)
27 PCDD/F毒性当量TEq(ng/kg)
28 塩化物濃度(単位%)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火格子燃焼設備の燃焼残滓品質を改善する方法において、
該火格子燃焼設備は、
a)燃焼ベッド(14)と、
b)連続的に配置された複数の固体ベッド燃焼区域(P〜P)と、
c)燃焼火格子(1)と、
d)該燃焼火格子(1)上方に配置された燃焼室(15)と
とを有し、
e)最初の固体ベッド燃焼区域(P〜P)を、酸素を含有する1次ガス(7)が通流し、
f)該燃焼ベッドを、前記最初の固体ベッド燃焼区域(P〜P)に後置された少なくとも1つの固体ベッド燃焼区域(P)で、持続的または時間的に交番して
g)該燃焼室(5)から直接出てきた高温の燃焼ガスが通流し、1次ガス(7)は通流しない
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)は最後の固体ベッド燃焼区域を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記燃焼ガスは、前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)において前記燃焼ベッドを上方から下方へ通流する、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)を持続的に通流するか、または燃焼ベッド温度が最大燃焼ベッド温度を超えることおよび/または火格子温度が最大火格子温度を超えることを回避するために高温の燃焼ガス通流と1次ガス供給(7)とを時間的に交番して通流する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)を通って案内された、前記燃焼ベッド(14)上方の前記燃焼室(15)内の燃焼ガスを、該後置された固体ベッド燃焼区域(P)より上流の領域で再循環する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記燃焼室(15)から吸引された燃焼ガスを、前置された前記最初の固体ベッド燃焼区域(P〜P)の1つまたは複数の1次ガス流(7)に添加混合し、該1次ガス流とともに下方から上方へ前記燃焼ベッド(14)を通って案内する、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記高温の燃焼ガスを吸引手段によって、前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)の燃焼ベッド(14)を通って吸引する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記燃焼火格子(1)の下方で冷却空気が流入するように構成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)の領域における固体ベッドでは、600℃〜前記燃焼残滓の融点の間の温度が発生する、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)の領域における前記燃焼ベッド(14)の燃焼ベッド表面上で高温計によって測定される温度は800〜1000℃の間で発生する、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記後置された固体ベッド燃焼区域(P)の燃焼火格子(1)の直下の再循環される燃焼ガス中の酸素含有量および/または一酸化炭素含有量および/または温度の測定を行い、酸素濃度が最低酸素濃度を下回りかつ/または一酸化炭素濃度が最高一酸化炭素濃度を超える場合には、該後置された固体ベッド燃焼区域(P)より上流の固体ベッド燃焼区域(PおよびP)における1次ガス供給(7)を増大する、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記最低酸素濃度は10Vol%であり、前記最大一酸化炭素濃度は1Vol%である、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−540254(P2009−540254A)
【公表日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513570(P2009−513570)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【国際出願番号】PCT/EP2007/004607
【国際公開番号】WO2007/140885
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(591004618)フォルシュングスツェントルム カールスルーエ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (50)
【氏名又は名称原語表記】Forschungszentrum Karlsruhe GmbH
【住所又は居所原語表記】Weberstrasse 5, D−76133 Karlsruhe,Germany
【Fターム(参考)】