説明

火災模型及び消火設備の性能を評価する方法

【課題】自動車火災の実態に即して消火設備の性能を評価することができる火災模型などを提供する。
【解決手段】自動車を模した模型本体10の中に燃焼装置が設置されることを特徴とする火災模型1であり、第1筐体11と、第1筐体11の後側に接続される第2筐体12と、第2筐体12の後側に接続される第3筐体13と、第2筐体12の上側に接続される第4筐体14とを備え、燃焼装置として火皿20が第2筐体12内に設置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消火設備の性能評価に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、油火災に対する消火設備の性能評価は、消防法に規定されるB火災模型を用いて行われている。B火災模型とは、2mの鉄製燃焼皿に水60リットルを入れ、その上に工業ガソリン2号を60リットル入れたものである(非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「フォームヘッド」、財団法人日本消防設備安全センター、平成13年12月1日、p.38−40
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、油火災の中でも、特に自動車火災の場合は、自動車の中から出火して燃え広がることが多い。このため、上記従来のB火災模型では、自動車で生じる火災の実態に合わない場合が多く、自動車で生じる火災に関して、消火設備の性能を適切に評価することができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、自動車火災の実態に即して消火設備の性能を評価することができる火災模型及び消火設備の性能を評価する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、上記課題は、次の手段により解決される。
【0007】
本発明は、自動車を模した模型本体の中に燃焼装置が設置されることを特徴とする火災模型である。
【0008】
また、本発明は、前記模型本体は、第1筺体と、前記第1筺体の後側に接続される第2筺体と、前記第2筺体の後側に接続される第3筺体と、前記第2筺体の上側に接続される第4筺体と、を備えたことを特徴とする上記の火災模型である。
【0009】
また、本発明は、前記燃焼装置は、前記第2筺体内に設置される、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0010】
また、本発明は、前記燃焼装置は、前記第1筺体内に設置される、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0011】
また、本発明は、前記燃焼装置は、前記第3筺体内に設置される、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0012】
また、本発明は、前記第1筺体、前記第2筺体、前記第3筺体、及び前記第4筺体は、鉄製の枠を有する、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0013】
また、本発明は、前記第2筺体は、前面、後面、右側面、及び左側面のすべて又はいずれかが鉄板により形成され、上面及び下面を有しない、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0014】
また、本発明は、前記第1筺体及び/又は前記第3筺体は、前面、後面、右側面、左側面、上面、及び下面のすべて又はいずれかが鉄板により形成される、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0015】
また、本発明は、前記第4筺体は、上面が鉄板により形成され、前面、後面、右側面、左側面、及び下面のすべて又はいずれかを有しない、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0016】
また、本発明は、前記燃焼装置は、燃料が入った鉄製の火皿である、ことを特徴とする上記の火災模型である。
【0017】
また、本発明は、上記の火災模型を用いることを特徴とする消火設備の性能を評価する方法である。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自動車火災の実態に即して消火設備の性能を評価することができる火災模型及び消火設備の性能を評価する方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る火災模型の概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、添付した図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態について説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係る火災模型の概略構成を示す図であり、(a)は本発明の実施形態に係る火災模型の概略斜視図であり、(b)は本発明の実施形態に係る火災模型から鉄板を取り外した場合の概略斜視図であり、(c)は本発明の実施形態に係る火災模型の概略断面図(A−A断面)であり、(d)は模型本体における各筐体の位置関係を模式的に示す図である。以下、図1を参照しつつ、説明する。
【0022】
図1に示すように、本発明の実施形態に係る火災模型1では、自動車を模した模型本体10の中に火皿20が設置される。模型本体10は、C型鋼材30の上に載置され、火皿20は、重量測定装置40の上に載置される。また、C型鋼材30と重量測定装置40とは、鉄板50の上に載置される。
【0023】
本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、自動車を模した模型本体10の中に火皿20が設置されるため、消火設備の消火効果を大きく左右する散水障害の程度が実車と同等になり、また、上下左右に隣接する自動車に対する加熱状況も実火災と同等になる。このため、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、自動車で生じる火災の実態に即して消火設備の性能を評価することが可能となる。
【0024】
以下、詳細に説明する。
【0025】
[模型本体]
【0026】
模型本体10は、第1筺体11と、第1筺体11の後側に接続される第2筺体12と、第2筺体12の後側に接続される第3筺体13と、第2筺体12の上側に接続される第4筺体14と、を用いて構成される。したがって、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、自動車を容易に模することが可能となる。
【0027】
また、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、筺体の組み合わせ方を変えたり筺体を追加したりなどするだけで、模型本体10の形状を変えることができ、ワゴンやワンボックスなどの様々な車種の自動車を自在に模することが可能となる。
【0028】
第1筺体11、第2筺体12、第3筺体13、及び第4筺体14は、鉄製の枠を有している。このため、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、模型本体10を繰り返し使用することができ、火災実験を低コストで行うことが可能となる。
【0029】
なお、筺体と筺体の接続には、例えば、鉄ボルトを用いることができる。
【0030】
(第1筺体)
第1筺体11は、前面、後面、右側面、左側面、上面、及び下面のすべて又はいずれかが鉄板により形成される。この第1筺体11により、自動車のエンジンルームが模される。
【0031】
(第2筺体)
第2筺体12は、前面、後面、右側面、及び左側面のすべて又はいずれかが鉄板により形成され、上面及び下面を有しない。この第2筺体12により、自動車の居住空間の一部が模される。第2筺体12は、上面及び下面を有しておらず、第4筺体14へ炎が容易に燃え広がる。
【0032】
(第3筺体)
第3筺体13は、前面、後面、右側面、左側面、上面、及び下面のすべて又はいずれかが鉄板により形成される。この第3筺体13により、自動車のトランクルームが模される。
【0033】
(第4筺体)
第4筺体14は、上面が鉄板により形成され、前面、後面、右側面、左側面、及び下面のすべて又はいずれかを有しない。この第4筺体14により、自動車の居住空間の一部が模される。第4筺体14の上面は、自動車の屋根を模する。自動車のフロントガラス、リアガラス、及び窓ガラスは、熱によるクラックなどで容易に破壊される。このため、自動車火災が生じた場合は、これらのガラスが存在した場所から炎が出るが、第4筺体14によれば、この炎の出現も容易に模することができる。
【0034】
[火皿]
火皿20は、第2筺体12内に設置される。これにより、タバコなどを原因とした自動車の居住空間から出火する自動車火災が模される。なお、火皿20を第1筺体11内に設置すれば、自動車のエンジンルームから出火する自動車火災を模することができ、火皿20を第3筺体13内に設置すれば、自動車のトランクルームから出火する自動車火災を模することができる。
【0035】
火皿20は、鉄製である。したがって、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、火皿20を繰り返し使用することができ、火災実験を低コストで行うことが可能となる。
【0036】
本発明の実施形態に係る火災模型1において、火災の発熱速度は、火皿20の大きさや形状などにより決定され、火災の持続時間は、火皿20に入れられる燃料の量などにより決定される。したがって、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、火皿20の大きさや形状などを変えることにより、一つの模型本体10を用いて車種が異なる様々な自動車(高級車、一般車、軽自動車など)の火災を模することができる。
【0037】
なお、一般車における火災を模する場合は、例えば、発熱量が4MW(メガワット)になるように火皿20の大きさ及び形状を決定し、火皿20に60L(リットル)の水70を入れ、その上に60L(リットル)のノルマルヘプタン80を入れる。
【0038】
なお、火皿20は、燃焼装置の一例である。ガスバーナーなどの火皿20以外の装置も燃焼装置として用いることができる。
【0039】
[C型鋼材]
模型本体10は、C型鋼材30の上に載置される。このC型鋼材30により、自動車のタイヤが模される。なお、C型鋼材以外の部材(ポールなど)により自動車のタイヤを模することも可能である。
【0040】
[重量測定装置]
火皿20は、重量測定装置40の上に載置される。重量測定装置40は、ケーブル60を介してコンピュータ(図示せず)に接続されており、このコンピュータ(図示せず)により制御などされる。重量測定装置40によって燃料の重量変化が測定され、火災の発熱速度が計測される。
【0041】
なお、本発明の実施形態に係る火災模型1では、重量測定装置40の上及び左右を断熱部材90(例えば、ケイカル板や鉄板など)により囲み、重量測定装置40を保護している。
【0042】
重量測定装置40としては、例えば、ロードセルを用いることができる。
【0043】
[鉄板]
鉄板50は、火災実験が行われる地面(例えば、コンクリートやアスファルトなど)を保護する。火災実験を行うと、地面が熱でひび割れなどして損傷することがあるが、本発明の実施形態に係る火災模型1によれば、鉄板50により、このような損傷を防止することができる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これらの説明は、本発明の一例に関するものであり、本発明は、これらの説明によって何ら限定されるものではない。
【符号の説明】
【0045】
1 火災模型
10 模型本体
11 第1筺体
12 第2筺体
13 第3筺体
14 第4筺体
20 火皿
30 C型鋼材
40 重量測定装置
50 鉄板
60 ケーブル
70 水
80 ノルマンヘプタン
90 断熱部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車を模した模型本体の中に燃焼装置が設置されることを特徴とする火災模型。
【請求項2】
前記模型本体は、
第1筺体と、
前記第1筺体の後側に接続される第2筺体と、
前記第2筺体の後側に接続される第3筺体と、
前記第2筺体の上側に接続される第4筺体と、
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の火災模型。
【請求項3】
前記燃焼装置は、前記第2筺体内に設置される、ことを特徴とする請求項2に記載の火災模型。
【請求項4】
前記燃焼装置は、前記第1筺体内に設置される、ことを特徴とする請求項2に記載の火災模型。
【請求項5】
前記燃焼装置は、前記第3筺体内に設置される、ことを特徴とする請求項2に記載の火災模型。
【請求項6】
前記第1筺体、前記第2筺体、前記第3筺体、及び前記第4筺体は、鉄製の枠を有する、ことを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載の火災模型。
【請求項7】
前記第2筺体は、前面、後面、右側面、及び左側面のすべて又はいずれかが鉄板により形成され、上面及び下面を有しない、ことを特徴とする請求項2〜請求項6のいずれか1項に記載の火災模型。
【請求項8】
前記第1筺体及び/又は前記第3筺体は、前面、後面、右側面、左側面、上面、及び下面のすべて又はいずれかが鉄板により形成される、ことを特徴とする請求項2〜請求項7のいずれか1項に記載の火災模型。
【請求項9】
前記第4筺体は、上面が鉄板により形成され、前面、後面、右側面、左側面、及び下面のすべて又はいずれかを有しない、ことを特徴とする請求項2〜請求項8のいずれか1項に記載の火災模型。
【請求項10】
前記燃焼装置は、燃料が入った鉄製の火皿である、ことを特徴とする請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の火災模型。
【請求項11】
請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の火災模型を用いることを特徴とする消火設備の性能を評価する方法。

【図1】
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【公開番号】特開2012−239764(P2012−239764A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−115117(P2011−115117)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(591200656)斎久工業株式会社 (5)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【出願人】(000199186)千住スプリンクラー株式会社 (87)
【出願人】(502181883)
【Fターム(参考)】