説明

火炎抑制システムおよび航空機用火炎抑制システム

【課題】環境への負担が少ない火炎抑制システムを提供する。
【解決手段】火炎抑制システム20は、イナートガスを含む主ガスコンテナ22および第2のガスコンテナ24を有する。ガスコンテナ22は、マニホールド23およびマニホールド23の下流に位置するフローライン25と連通する。フローライン25は、空気制御部34により制御される圧力調節バルブ30を含む。高圧ガス供給部32は、バルブ36を通して制御ガスを空気制御部34に供給する。空気制御部34は、各ゾーンA,B,Cのバルブ48に対応するフローライン40と、バルブ30に亘る圧力を制御するように制御ガスを圧力調節バルブ30および各コンパートメントA,B,Cに導くタップ42と、を有する。火炎抑制システムは、主コンテナに対応するバルブを備え、バルブは、主コンテナ内の圧力が所定量以下に降下したときに第2のコンテナに切り換える。この切換は、空気制御によって行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御された圧力でガスがコンパートメントに導かれる火炎抑制システムに関する。
【背景技術】
【0002】
火炎抑制システムは周知であり、航空機、建物や収容領域を有する他の構造物に用いられる。例えば、航空機は、通常、火炎が検知されたコンパートメントにハロンを供給する火炎抑制システムを備える。システムの目的は、コンパートメントに対して効果的に抑制剤を放出して、被害が大きくなる前に火炎を抑制することである。航空機の貨物室、電気室および他のコンパートメントは、上記のような抑制システムを備える。
【0003】
通常、このようなシステムは、十分に高い抑制剤濃度をコンパートメントに最初に供給するように用いられる第1の高速排出ユニットを有する。一定時間の経過後、システムは、コンパートメントにおける要求された不活性濃度を維持するように低速排出ユニットに切り換える。
【0004】
ハロンは、モントリオール議定書により、一部の利用領域を除いて禁止されている。航空機産業は、残る最後の利用領域の1つである。ハロン1301製品は、先進国では1994年から禁止されている。近年、ハロンを火炎抑制剤として置換する提案がなされていた。ハロンの供給および時間が少なくなってきているため、性能、スペースおよび重量の面で許容される代替物を見出すことが問題となっている。
【0005】
例えば、イナートガスを用いるという提案がなされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
航空機製造会社は、重量の減少を望んでおり、他のハロン代替物の選択肢(HFC:ハイドロフルオロカーボンなど)では、重量が重くなり過ぎてしまう。候補となる良好な火炎抑制性能を示すハロン代替物用のシステムは、ハロン用のシステムに比べて、重量が著しく重くなり、付加的な燃料が要求されるため、環境に負担がかかり過ぎてしまう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
火炎抑制システムは、保護されるコンパートメントに火炎抑制剤を供給するコンテナを備える。コンテナは、コンパートメントに延びるフローラインと連通する。制御部は、火炎抑制システムを制御する。フローラインに配設されたバルブは、コンテナからフローラインに可変圧力をもたらす。
【0008】
さらに、例示的なシステムでは、単一のガス供給源は、マニホールドを介して複数のコンパートメントにそれぞれ連通する。
【0009】
さらに、例示的なシステムでは、主ガスコンテナは、主コンテナ内の圧力が所定量以下に降下したときに第2のガスコンテナに切り換えられる。
【0010】
以下の発明を実施するための形態によって、本発明の種々の特徴および利点が明らかになるであろう。発明を実施するための形態に伴う図面について以下に簡単に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施例を示す図。
【図2】本発明の第2の実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1に示すシステム20は、航空機などの乗物に搭載される。主ガスコンテナ22は、イナートガスあるいは混合ガスの供給源を有する。第2のガスコンテナ24は、イナートガスあるいは混合ガスを含む。バルブ26は、空気制御部34から制御圧力を受ける。ガスコンテナ22は、マニホールド23およびマニホールド23の下流に位置するフローライン25と連通する。フローライン25は、空気制御部34により制御される圧力調節バルブ30を含む。高圧ガス供給部32は、バルブ36を通して制御ガス(例えば、空気)を空気制御部34に供給する。図1に示すように、空気制御部34は、各ゾーンA,B,Cのバルブ48に対応するフローライン40と、バルブ30に亘る圧力を制御するように制御ガスを圧力調節バルブ30および各コンパートメントA,B,Cに導くタップ42と、を有する。
【0013】
以下に示すように、空気制御部34は各バルブを空気圧で制御するが、油圧式制御、機械的制御および電気制御など他のバルブ制御を用いてもよい。
【0014】
バルブ26は、トグルバルブであり、主ガスコンテナ22内の圧力が所定量以下になると、第2のガスコンテナに対応するバルブ28が第2のガスコンテナを開放し、フローが第2のガスコンテナからマニホールド23に流れる。これは、複数の第2のガスコンテナ24の各々において連続的に行われる。
【0015】
火炎検知機(Fd)52によってコンパートメントA,B,Cの火炎が検知されると、空気制御部34に信号が送られる。初期の火災抑制後に付加的な制御信号を供給するように、温度センサ100および圧力センサ102をコンパートメントA,B,Cに組み込んでもよい。例えば、圧力センサ102は、周囲圧力の変化を感知し、温度センサ100は、保護領域の平均温度の上昇を感知するようにしてもよい。空気制御部34は、上記センサからの信号を利用する。空気制御部34は、火炎のリスクが再び制御されるまで、より低い速度での排出を調節する。
【0016】
コンパートメント、例えば、コンパートメントAで火炎が検知されると、空気制御部34は、バルブ26を介してガスコンテナ22を開放し、バルブ30を通してイナートガスをマニホールド50に供給するとともに、コンパートメントAに対応するリレーバルブ48を通してコンパートメントA内のノズル56にイナートガスを供給する。例えば、コンパートメントAは、航空機の貨物室である。例えば、圧縮機Bは電気室であり、コンパートメントCは補助動力ユニットである。空気制御部34は、空気圧チャンバ250を介してリレーバルブ48を制御する。空気圧チャンバ250は、タップ46から制御信号を受ける。
【0017】
火炎が検知されると、ガスコンテナ22からコンパートメントAにイナートガスが相対的に高い圧力、したがって、相対的に高い速度で排出される。この高い速度での排出は、火炎の脅威に対して、迅速かつ効果的に確実に対処するという要求に応じるものであって、非常に限られた時間に限定されており、コンパートメントの過剰圧力および抑制剤の過剰損失によるダメージをもたらす過剰充填(オーバフィリング:overfilling)のリスクを伴わない。設定された時間の後、イナートガス、あるいは混合ガスでコンパートメントAを要求濃度まで安全に満たすことを許容するように計算された圧力で、空気制御部34は、バルブ30を低圧作動モードに切り換える。これは、むしろ「持続」モードと言うことができる。この「持続」モードでは、イナートガスはより低い速度でコンパートメントAを確実に満たし続けるとともに、漏出するイナートガスを補充し続けて、航空機が着陸するまでコンパートメントを十分に不活性状態に保つ。
【0018】
過圧バルブ54は、マニホールド50に取り付けられる。
【0019】
図2に第2の実施例を示す。第2の実施例120の種々の構成要素は、第1の実施例20のものと同様であり、第1の実施例の構成要素の参照符号に100を加えた参照符号を用いている。したがって、本実施例でも、制御部134はバルブ130およびリレーバルブ148を制御している。
【0020】
しかし、本実施例では、マニホールド150は、オンボードイナートガス生成システム160から窒素濃縮空気(nitrogen−enriched air)を選択的に受ける。このようなシステムは、空気を受け、燃料タンク164などに窒素濃縮空気を供給する。上記システムは、流量計158を通る上記気体の一部または全てを選択的にマニホールド50へと導く多方向切換バルブ162を有する。したがって、このシステムにより、特に、上記低圧作動モード(「持続」モード)において、イナートガスと窒素濃縮空気とを組み合わせて利用することが可能となる。さらに、供給空気内に過度の酸素が含まれないように測定する酸素濃度計166が配設される。本実施例では、窒素濃縮空気が維持モードでコンパートメントに導かれると、主ガスコンテナからの流れは、バルブ130によって完全に停止する。
【0021】
制御部134により、維持モードに対する窒素濃縮空気が十分でないと判断された場合は、バルブ130は再び開となる。
【0022】
この組み合わされたシステムにより複数の利点がもたらされる。開示したいくつかの特徴は、互いに組み合わされて相乗的に作動する。例えば、マニホールド50に作用物質を供給する圧力調節バルブ30,130を有することにより、単一のマニホールド、フローバルブおよびコンテナ22,24は、特定のコンパートメントの容量や漏出によってもたらされる高速排出あるいは低速排出の異なった要求に関係なく、各コンパートメントA,B,Cに抑制剤を供給することができる。バルブ30,130は、保護領域に供給される気体の量を正確に制御することができる。セパレート型のシステムでは、保護されるコンパートメントや容量ごとに高速排出および低速排出が必要となる。
【0023】
さらに、本発明のシステムは、モジュール構造に対して非常に対応しやすい。モジュール構造により、抑制システムは、航空機の変更や貨物室の再構成に容易に適応でき、容易に再構成され得る。
【0024】
コンテナ22,24,122,124は、軽量の繊維強化材から形成される。マニホールドおよびバルブは、セラミック材から形成される。
【0025】
上記の説明は、例示的なものであり、限定的なものではない。本発明の範囲から逸脱することなく、種々の変更および修正がなされることを理解されたい。したがって、添付の特許請求の範囲を検討することによって、本発明の法的保護の範囲を決定されたい。
【符号の説明】
【0026】
20 システム
22 主ガスコンテナ
23 マニホールド
24 第2のガスコンテナ
25 フローライン
26,28,36 バルブ
30,130 圧力調節バルブ
32 高圧ガス供給部
34 空気制御部
40 フローライン
42 タップ
48,148 リレーバルブ
50,150 マニホールド
52 火炎検知機
54 過圧バルブ
56 ノズル
100 温度センサ
102 圧力センサ
134 制御部
158 流量計
162 多方向切換バルブ
164 燃料タンク
166 酸素濃度計
250 空気圧チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎抑制システムであって、
コンパートメントに延びるフローラインと連通し、保護されるコンパートメントに火炎抑制剤を供給するコンテナと、
火炎抑制システムを制御する制御部と、
フローラインに配設されたバルブと、
を備え、
コンテナからフローラインに可変圧力をもたらすように、制御部はバルブを制御することを特徴とする火炎抑制システム。
【請求項2】
コンテナは、複数のコンテナを含み、
火炎抑制システムは、主コンテナに対応するバルブを備え、該バルブは、主コンテナ内の圧力が所定量以下に降下したときに第2のコンテナに切り換えることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制システム。
【請求項3】
主コンテナから第2のコンテナへの切換は、空気制御によって行われることを特徴とする請求項2に記載の火炎抑制システム。
【請求項4】
前記制御部は空気制御部であることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制システム。
【請求項5】
制御部は、最初に、所定の時間の間、前記ラインに高い圧力を供給し、次いで、前記所定の時間の経過後、維持期間の間、より低い圧力へと切り換えることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制システム。
【請求項6】
制御部は、コンパートメントに対応する圧力および温度の少なくとも一方のフィードバックを受け、制御部が低い圧力に切り替わった後、フィードバックに応じて、より高い圧力へと選択的に戻すことを特徴とする請求項5に記載の火炎抑制システム。
【請求項7】
前記フローラインは、マニホールドと連通し、該マニホールドは、複数のコンパートメントと連通し、各コンパートメントは、マニホールドから個々のコンパートメントへの作用物質の流れを制御するリレーバルブを有することを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制システム。
【請求項8】
リレーバルブは、対応するコンパートメントで火炎が検知されたとき、空気制御によって作動することを特徴とする請求項7に記載の火炎抑制システム。
【請求項9】
窒素濃縮ガスは、一定の時間の経過後、発生し、コンパートメントへと供給されることを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制システム。
【請求項10】
窒素濃縮ガスを発生させるジェネレータは、フローバルブと連通し、
窒素濃縮ガスは、通常、火炎抑制システムを有する車両に対応する燃料タンクに導かれ、
バルブは、少なくとも一部の窒素濃縮ガスの供給をコンパートメントへと切り換えることを特徴とする請求項9に記載の火炎抑制システム。
【請求項11】
前記システムは、航空機に対応することを特徴とする請求項1に記載の火炎抑制システム。
【請求項12】
複数のコンパートメントのための火炎抑制システムと、
マニホールドに延びるフローラインと連通し、コンパートメントに火炎抑制剤を供給するコンテナと、
マニホールドから複数のコンパートメントに延びる複数のラインの各々に設けられたリレーバルブと、
1つのリレーバルブを選択的に開放する制御部と、
を備えることを特徴とする航空機用火炎抑制システム。
【請求項13】
リレーバルブは、対応するコンパートメントで火炎が検知されたとき、空気制御によって作動することを特徴とする請求項12に記載の航空機用火炎抑制システム。
【請求項14】
コンパートメントに供給されるガスをそれぞれ含み、主ガスコンテナおよび第2のガスコンテナを含む複数のガスコンテナと、
主ガスコンテナに対応するバルブと、
を備え、
主ガスコンテナは、コンパートメントへと延びるフローラインと連通し、
バルブは、主ガスコンテナ内の圧力が所定量以下に降下したときに、ガスを前記フローラインに連通させるように、第2のガスコンテナに切り換えることを特徴とする火炎抑制システム。
【請求項15】
主コンテナから第2のコンテナへの切換は、空気制御によって行われることを特徴とする請求項14に記載の火炎抑制システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−45711(P2011−45711A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−182017(P2010−182017)
【出願日】平成22年8月17日(2010.8.17)
【出願人】(510079477)キッダ テクノロジーズ,インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】