説明

火炎検出装置

【課題】フレームロッドを清掃する場合に、清掃用具を準備する必要がなく、また、フレームロッドの表面に触れることなく表面に付着した不純物やすす等を除去することが可能な火炎検出装置を提供する。
【解決手段】火炎のイオン電流を検出するフレームロッド10が挿通されて取り付けられる案内管6aに、フレームロッド10の周面に当接するリング状の清掃部材20を設ける。フレームロッド10を案内管6aに対して軸方向に変位させることにより、清掃部材20をフレームロッド10の周面に摺接させる。案内管6aには、清掃部材20とフレームロッド10の基端部に設けられて案内管6aの端部に嵌合するプラグ15との間の空間19に圧送空気を供給する空気配管16を接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラの火炉内における火炎の有無を判定するために用いられる火炎検出装置に関し、特に、正確な火炎検出を確保するためにフレームロッドを清掃する清掃機構を備えた火炎検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
図4において、従来より知られているボイラ用のイグナイタ装置の構成が示されている。このイグナイタ装置は、火炉2の壁面2aに設けられたホーン3と、ホーン3内に設けられ、火炉2の内部に液体燃料及び空気を噴霧するバーナ4と、このバーナ4から噴霧された液体燃料に点火する着火電極5と、燃焼中の火炎を検出する火炎検出装置6とを備えている。
4bは、バーナ4の先端部に設定されたバーナ噴射部、10は火炎検出装置6の案内管6aに貫通保持されたフレームロッド(検出電極棒)、41は火炎検出装置6の制御電源、42は火炎検出装置6の火炎検出回路である。
【0003】
フレームロッド10は、イオン電流を検出することによって、バーナ噴射部4bから噴射された燃料が着火したか否かを検出するものであって、先端部がホーン3内に突出した状態で配置されている。フレームロッド10による火炎の検出は、制御電源41からの電流によってバーナ噴射部4bとフレームロッド10との間に電圧を印加し、火炎検出回路42によって、これらバーナ噴射部4bとフレームロッド10との間の電気抵抗又は電流を計測することによって行われる。すなわち、着火前の噴出燃料は導電性を示さないが、着火後の火炎はイオン電流によって導電性を示すので、着火前後のバーナ噴射部4bとフレームロッド10との間の電気抵抗又は電流の変化を計測することによって、着火の有無を検出できるようになっている(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、燃焼中は、フレームロッド10に電圧が常時印加されているので、火炎中に浮遊している不純物やすす等44が帯電してフレームロッド10の表面に徐々に付着し堆積してくる。このため、フレームロッド10の表面に付着した不純物やすす等44により火炎検出が不可能になる不都合が生じることから、フレームロッド10の表面に付着した不純物やすす等44を除去する電極清掃が必要となる。
【0005】
そこで、従来においては、ボイラ消火時にフレームロッドを引き抜き、ウエスやスポンジ研磨剤等の清掃用具を使用して、フレームロッドに付着した不純物やすす等を除去する作業を手作業で行うようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−233502公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、ボイラ点火中(運転中)において、火炎検出装置の火炎検知不良が発生した場合には、「イグナイタ点火失敗」の警報が発生し、主バーナの点消火に支障をきたす可能性がでてくるため、ボイラ点火中で高温となったフレームロッドを引き抜いて表面の清掃を行うという危険度の高い作業を行う必要がある。このため、このような作業においては、耐熱手袋やウエス、スポンジ研磨剤等の清掃用具を準備する必要があるだけでなく、作業中は高温となったフレームロッドに触れる必要があるため火傷する可能性が高いものであった。
【0008】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、フレームロッドを清掃する場合に、清掃用具を準備する必要がなく、また、フレームロッドの表面に触れることなく表面に付着した不純物やすす等を除去することが可能な火炎検出装置を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を達成するために、本発明に係る火炎検出装置は、火炎のイオン電流を検出するフレームロッドが案内管に挿通されて取り付けられる構成において、前記案内管に、前記フレームロッドの周面に当接するリング状の清掃部材を設け、前記フレームロッドを前記案内管に対して軸方向に変位させることにより、前記清掃部材を前記フレームロッドの周面に摺接させるようにしたことを特徴としている。
【0010】
したがって、案内管には、フレームロッドの周面に当接するリング状の清掃部材が設けられ、フレームロッドを案内管に対して軸方向に変位させることで、清掃部材がフレームロッドの周面を摺接するので、フレームロッドを抜き差しする操作により、フレームロッド表面に付着した不純物やすす等を清掃部材により除去することが可能となる。このため、フレームロッドを清掃する場合に、清掃用具を準備する必要がなくなり、またフレームロッドの表面に触れることなく表面に付着した不純物やすす等を除去することが可能となる。
【0011】
上述の構成において、前記フレームロッドは、その基端部に前記案内管の端部と嵌合するプラグを設け、前記案内管に、前記清掃部材と前記プラグとの間の空間に空気を圧送する空気配管を接続することが好ましい。
フレームロッドを移動させてフレームロッド表面に付着した不純物やすす等を案内菅に設けられた清掃部材によって除去する場合には、清掃部材に不純物やすす等が付着することが予想されるが、この清掃部材に付着した不純物やすす等を案内管の清掃部材とプラグとの間の空間に供給される圧送空気により火炉内へ排出させることが可能となり、清掃部材に不純物やすす等が堆積する不都合が低減される。
【0012】
ここで、清掃部材は、案内菅に設けられるも、交換できるようにすると共にフレームロッドの動きに伴って移動しないようにするために、前記案内管の内部に着脱自在に、且つ、前記案内管の軸方向の動きが規制された状態で配置されることが好ましい。
また、以上のような清掃部材としては、例えば、ワイヤブラシを環状の保持フレーム22の内側に収納保持して構成することが考えられる。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明に係る火炎検出装置は、火炎のイオン電流を検出するフレームロッドが挿通する案内管に、フレームロッドの周面に当接するリング状の清掃部材を設け、フレームロッドを案内管に対して軸方向に変位させることにより、清掃部材をフレームロッドの周面に摺接させるようにしたので、フレームロッドを抜き差しする操作により、フレームロッド表面に付着した不純物やすす等を清掃部材により除去することができるので、フレームロッドを清掃する場合に、清掃用具を準備する必要がなくなり、またフレームロッドの表面に触れることなく表面に付着した不純物やすす等を除去できるので、火傷の恐れもなくなる。
【0014】
また、案内管に、清掃部材と案内管の端部に嵌合するプラグとの間の空間に圧送空気を供給する空気配管を接続する構成とすることで、清掃部材の表面に付着した不純物やすす等を庄送空気により除去して火炉内へ排出することが可能となり、清掃部材に不純物やすす等が堆積する不都合が低減され、清掃部材の寿命を延ばすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に係る火炎検出装置が用いられるイグナイタ装置の構成例を示す図である。
【図2】図2は、火炎検出装置のフレームロッドを案内菅に抜き差しする状態を示す図であり、(a)は案内菅からフレームロッドを引き抜くように移動させた状態を示す図であり、(b)は案内菅にフレームロッドを終端まで差し込んだ状態を示す図である。
【図3】図3は、火炎検出装置の案内菅に設けられた清掃部材を着脱可能としつつ案内菅の軸方向の移動を規制するようにした構造を示す図であり、(a)はその第1の構成例を示す図であり、(b)はその第2の構成例を示す図である。
【図4】図4は、従来のイグナイタ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る火炎検出装置の実施例を図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1において、火力発電プラントのボイラなどに用いられるイグナイタ装置1が示されている。このイグナイタ装置1は、火炉2の壁面2aに設けられているもので、断面が徐々に広がるホーン3と、ホーン3内に設けられ、火炉2の内部に液体燃料及び空気を噴霧するバーナ4と、このバーナ4から噴霧された液体燃料に点火する着火電極5と、燃焼中の火炎を検出する火炎検出装置6とを備えている。
【0018】
ホーン3は両端3a,3bが開口されており、径が大きくなる開口端3bは、火炉2に開口した状態で、火炉2の壁面2aに取り付けられている。
【0019】
バーナ4は、液体燃料流路及び空気流路を備えるバーナ配管部4aと、バーナ配管部4aの先端に設けられたバーナ噴射部4bとを有し、バーナ配管部4aはホーン3の一端3a側開口部内に挿入され、先端のバーナ噴射部4bはホーン3内に位置している。バーナ配管部4aの基端側には液体燃料供給管7、アトマイズ空気供給管8及びパージ空気供給管9が接続されている。
【0020】
従って、液体燃料供給管7から供給されて液体燃料流路を流れてきた液体燃料と、アトマイズ空気供給管8から供給されて空気流路を流れてきた空気とはバーナ配管部4a内で混合され、この液体燃料と空気の混合流がバーナ噴射部4bからホーン3内へ噴霧されるようになっている。
【0021】
火炎検出装置6は、案内管6aと、この案内管6aに挿通されて保持され、先端部が案内管6aから突出するフレームロッド(検出電極棒)10とを有して構成されている。案内管6aの先端部はホーン3の一端3a側開口部を介してホーン内に挿入され、したがって、フレームロッド10はホーン3内に位置している。バーナ4のバーナ配管部4a、着火電極5の案内管5a及び火炎検出装置6の案内管6aは束ねられ、これらの先端側はホーン3に固定された案内板11に固着され、基端側は取付板12に固着されている。
【0022】
このように構成されたイグナイタ装置1は、以下のように動作する。運転時には、まず、アトマイズ空気として冷空気をアトマイズ空気供給管8から供給し、燃料として液体燃料(軽油)を液体燃料供給管7を介して供給する。アトマイズ空気及び液体燃料は、バーナ配管部4aを経てバーナ噴射部4bの先端から混合された状態でホーン3内に噴霧される。そして、着火電極5を起動してバーナ4から噴霧された液体燃料に着火を行う。これにより、バーナ4の火炎により、図示しない主バーナが点火される。
このバーナ4の着火の有無や燃焼中の火炎の状態は、火炎検出装置6のフレームロッド(検出電極棒)10の電流値によって監視されるようになっている。
【0023】
上述のように構成されているイグナイタ装置1において、火炎検出装置6の案内管6aの内部には、フレームロッド10の周面に当接するリング状の清掃部材20が設けられている。この例において、清掃部材20は、中央に挿通孔が形成された円環状のワイヤブラシ21を環状の保持フレーム22の内側に収納保持して構成されているもので、保持フレーム22は、金属素材で構成され、案内管6aのフレームロッド10が挿入する挿入始端寄りの所定位置に溶接等により案内管6aの内壁に固定されている。保持フレーム22の中央には、フレームロッド10との間に隙間23が形成されるような通孔22aが形成され、したがって、清掃部材20は、フレームロッド10に対してワイヤブラシ21のみが当接されるようになっている。
【0024】
このため、フレームロッド10を案内管6aの軸方向に変位させることにより、清掃部材20のワイヤブラシ21がフレームロッド10の周面を摺接するようになっている。尚、ワイヤブラシ21や保持フレーム22は、耐熱性、耐摩耗性の素材で構成され、長期間の使用に耐えうるような素材で構成されている。
【0025】
フレームロッド10は、その基端部に案内管6aの端部(フレームロッド10が挿入する始端部)に嵌合可能なプラグ15が設けられ、案内管6aのフレームロッド10が挿入する始端部は、このプラグ15により閉塞されている。そして、案内管6aの清掃部材20が設けられた部分と前記プラグ15との間には、アトマイズ空気供給管8から分岐された空気配管16を接続する接続ポート17が2箇所に設けられている。この空気配管16は、開閉弁18により開閉されるようになっており、開閉弁18を開けることで、アトマイズ空気が、案内管6aの清掃部材20とプラグ15との間の空間19に接続ポート17を介して圧送されるようになっている。
【0026】
以上の構成において、フレームロッド10を清掃する場合には、開閉弁18を開としてアトマイズ空気を清掃部材20が設けられた部分とプラグ15が嵌合する端部との間の空間19に供給し、案内管6aの端部からフレームロッド10のプラグ15をゆっくり引き抜く方向に動かす(図2(a)参照)。これにより、清掃部材20がフレームロッド10の軸方向に相対的に移動し、ワイヤブラシ21がフレームロッド10の表面を摺接し、フレームロッド10の表面に付着した不純物やすす等がワイヤブラシ21により除去される。
また、フレームロッド10をプラグ15が案内管6aに嵌合されるまで押し込むことで、空間19に空気配管16を介して圧送された空気は、清掃部材20とフレームロッド10との間の隙間23を介してのみ空間19外へ放出されるので、清掃部材20(ワイヤブラシ21)で除去された不純物やすす等は、この圧送された空気によりボイラ側へ排出され、ワイヤブラシ21に付着して堆積する事態が極力回避される(図2(b)参照)。
【0027】
したがって、フレームロッド10を抜き差しする操作により、フレームロッド10の表面に付着した不純物やすす等を清掃部材20により除去することが可能となるので、フレームロッド10を清掃する場合に、清掃用具を準備する必要がなくなり、またフレームロッド10の表面に触れることなく表面に付着した不純物やすす等を除去することが可能となるので。火傷の恐れもなくなる。
また、清掃部材20により除去された不純物やすす等を空気配管16を介して供給された圧送空気により火炉内へ排出させることが可能となるので、清掃部材20に不純物やすす等が堆積して目詰まりをおこす不都合がなくなる。
【0028】
尚、上述の例では、清掃部材20が案内管6aの内部に溶接等により強固に固定される構成を示したが、清掃部材20(ワイヤブラシ21)も消耗品となり得るので、交換できるようにしてもよい。
【0029】
図3に、そのような例が示され、(a)で示される構成は、案内管6aの接続ポート17よりもボイラ側の内壁に内側へ突出する突起30を設け、案内管6aのフレームロッド10が挿入される挿入始端部から清掃部材20を挿入可能とし、清掃部材20を突起30に当接するまで挿入した後、案内管6aの外側からネジ部材31を螺合して案内管6aの内側へネジ部材の先端を突出させ、突起30と螺子部材31とで清掃部材20を挟み込むようにして、フレームロッド10の軸方向への清掃部材20の動きを規制するようにしている。
【0030】
また、(b)に示されるように、案内管6aを複数の部材(この例では2つの部材6a−1,6a−2を螺合して構成し、螺合部分の前後に案内管6aの内側へ突出する突起32,33を設け、案内管6aを螺合部分で分離させて清掃部材20を着脱可能に挿着するようにしてもよい。このような構成においては、螺合部分の前後に形成される突起32,33間に清掃部材20が収容されるので、清掃部材20は、突起間の距離だけ軸方向の移動が許容されるものの、この突起32,33により軸方向の移動が規制された状態で案内管6aに収容される。
【0031】
尚、上述の例では、アトマイズ空気を供給する接続ポート17は案内管6aの2箇所設けられているが、1箇所としてもよい。
また、開閉弁18の開閉動作をフレームロッドの変位(案内管6aに対するプラグ15の着脱の操作)に連動させ、例えば、プラグ15が案内管6aから外された場合に開閉弁18を開とし、プラグ15が案内管6aに嵌合されて所定時間が経過した後に開閉弁18を閉とするようにしてもよい。このような構成により、開閉弁18の開閉を失念することがなくなり、除去された不純物やすす等の排出を的確に行うことが可能となる。
【符号の説明】
【0032】
6 火炎検出装置
6a 案内管
10 フレームロッド
15 プラグ
16 空気配管
20 清掃部材
21 ワイヤブラシ
22 保持フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
火炎のイオン電流を検出するフレームロッドが案内管に挿通されて取り付けられる火炎検出装置において、
前記案内管に、前記フレームロッドの周面に当接するリング状の清掃部材を設け、前記フレームロッドを前記案内管に対して軸方向に変位させることにより、前記清掃部材を前記フレームロッドの周面に摺接させるようにしたことを特徴とする火炎検出装置。
【請求項2】
前記フレームロッドは、その基端部に前記案内管の端部と嵌合するプラグが設けられ、前記案内管には、前記清掃部材と前記プラグとの間の空間に空気を圧送する空気配管が接続されることを特徴とする請求項1記載の火炎検出装置。
【請求項3】
前記清掃部材は、前記案内管の内部に着脱自在に、且つ、前記案内管の軸方向の動きが規制された状態で配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の火炎検出装置。
【請求項4】
前記清掃部材は、ワイヤブラシを環状の保持フレームの内側に収納保持して構成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の火炎検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−88077(P2013−88077A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230517(P2011−230517)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】