説明

灯具ユニット

【課題】リフレクタからの反射光を利用して直線的に延在する高照度領域を適切に形成することができる灯具ユニットを提供する。
【解決手段】灯具ユニットにおいて、フィラメントは、光軸に対して角度を持って伸びる。リフレクタは、フィラメントの照射光を反射する。リフレクタは、投影レンズの焦点面上に配置されるシェード18に映し出されるフィラメントの像が第1ラインL1に沿って伸びるようフィラメントの照射光を反射する第1部分を有する。リフレクタは、第1部分およびその周辺部分による反射光がシェード18の第1開口部18aにおいて重畳されることにより、第1ラインL1に沿って直線的に延在する第1高照度領域を形成する。投影レンズは、シェード18によって形成された光源像の反転像を灯具ユニットの前方に位置する仮想鉛直スクリーンに投影する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具ユニットに関し、特に、光源による照射光を反射するリフレクタを有する灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に車両用前照灯は、ロービーム用配光パターンおよびハイビーム用配光パターンの双方を形成可能に設けられている。しかし、これらの配光パターンのみでは車両の様々な走行状況に細かく対応することは困難である。このため、例えば、自車走行レーンおよび対向車走行レーンの双方のレーンマークを明るく照らし出すレーンマーク照射配光パターンを形成する車両用灯具が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、例えば、ヘッドランプ配光パターンの側端部の明るさを補強する補助配光パターンでビーム照射を行う補助灯具ユニットを備える車両用前照灯装置が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2001−260744号公報
【特許文献2】特開2003−48482号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
雨天時は路面に水の膜が形成される。この結果、ロービーム用灯具ユニットによって照射された光が乱反射せずに前方に全反射される可能性が高くなり、前方の視認性が晴天時よりも低下するおそれがある。発明者による鋭意なる研究開発の結果、自動車線側の路肩や対向車線側の路肩などに沿って強い光を照射してこの領域の視認性を向上させることで、雨天時による前方の視認性低下に伴う運転しにくさを抑制できることが判明した。一方、このように自車線側および対向車線側の各々の路肩を適切に照らし出すためには、直線的に延在する高照度領域を有する配光パターンを形成することが必要となる。
【0004】
そこで、本発明は上述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、リフレクタからの反射光を利用して直線的に延在する高照度領域を適切に形成することができる灯具ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の灯具ユニットは、光軸に対して角度を持って伸びる線状光源と、線状光源の照射光を反射するリフレクタと、を備える。リフレクタは、所定の仮想面に映し出される線状光源の像が所定方向に伸びるよう線状光源の照射光を反射する所定部分を有し、所定部分およびその周辺部分による反射光が仮想面上において重畳されることにより、所定方向に直線的に延在する、周辺よりも照度が高い高照度領域を形成する。
【0006】
線状光源を光軸に対して角度を持って伸びるよう配置した場合、線状光源の周囲に沿った個所によって反射され仮想面に映し出される像は、その個所の周方向に沿うように伸びる。この態様によれば、このように所定方向またはそれに近い方向に伸びる線状光源の像を重畳させることにより、線状光源が光軸と平行に配置された場合に比べ、所定方向に直線的に延在する高照度領域を容易に作り出すことができる。このため、例えば路肩など直線的に延在する個所に適切に光を照射する灯具ユニットを簡易な構成で提供することができる。なお、リフレクタは、高照度領域に代えて、所定方向に直線的に延在する、周辺よりも光度が高い高光度領域を形成してもよい。
【0007】
リフレクタは、高照度領域を形成すべき仮想面上の位置と光軸に対して左右同じ側に所定部分が位置してもよい。
【0008】
高照度領域を形成すべき仮想面上の位置と光軸に対して左右反対側に所定部分が位置している場合、リフレクタの所定部分にて反射した光はその所定部分と光軸を挟んで左右反対側に進む必要がある。このように光を反射するリフレクタを設計することは一般に困難である。この態様によれば、リフレクタの所定部分にて反射した光はその所定部分と光軸を基準に左右同じ側に進めばよいため、リフレクタを含む光学系の設計を容易なものとすることができる。
【0009】
リフレクタによる反射光を利用して仮想面上に高照度領域を含む光源像を形成する光源像形成部材と、形成された光源像を仮想面とは異なる所定の仮想スクリーンに投影する投影レンズと、をさらに備えてもよい。この態様によれば、仮想面上に形成された高照度領域を投影レンズを用いて投影することで、直線的に延在する個所を適切に照らし出すことが可能となる。
【0010】
線状光源は、光軸より上方に配置され、リフレクタは、線状光源の下方に所定部分が位置するよう設けられてもよい。
【0011】
このように直線的な高照度領域を形成可能な灯具ユニットは、例えば消点から左下方向に直線的に伸びる自車線側の路肩や、消点から右下方向に直線的に伸びる対向車線側の路肩へ光を照射する用途が考えられる。例えば自車線側の路肩などに光を強く照射するために投影レンズを介して光軸から左下方向に直線的に延在する高照度領域を有する配光パターンを形成する場合、投影レンズの後方焦点周辺において、光軸から右上方向に直線的に延在する高照度領域を有する光源像を形成する必要がある。
【0012】
一方、上述したように、線状光源を光軸に対して角度を持って伸びるよう配置した場合、線状光源の周囲に沿った個所によって反射され仮想面に映し出される像は、その個所の周方向に沿うように伸びる。このとき、反射した線状光源の像が右上方向に向けて伸びるのは、線状光源よりも右下および左上の部分となる。しかし、例えば線状光源よりも上方の所定部分で反射した光で高照度領域を形成しようとすると、線状光源よりも左上の部分を利用することになる。このため、光軸から右上方向に直線的に延在する高照度領域を有する光源像を形成する場合、リフレクタの反射面と光軸を挟んで左右反対側に光源像を形成することになり、光学系の設計が困難となる。なお、例えば投影レンズを介して光軸から右下方向に直線的に延在する高照度領域を有する配光パターンを形成する場合も、線状光源より上方の所定部分で反射した光で高照度領域を形成しようとすると、光軸から左上方向に直線的に延在する高照度領域を有する光源像を形成する場合に光学系の設計が困難となる。
【0013】
この態様によれば、光学系の設計を容易としつつ、光軸から右上方向に直線的に延在する高照度領域および光軸から左上方向に直線的に延在する高照度領域を適切に形成することが可能となる。このため、例えば自車線側の路肩や対向車線側の路肩などに適切に光を照射可能な灯具ユニットを提供することができる。
【0014】
リフレクタは、線状光源の照射光を仮想面である仮想スクリーンに向けて反射することにより、高照度領域を一部に含む配光パターンを仮想スクリーンに形成してもよい。この態様によれば、投影レンズを介することなくリフレクタによる反射光でそのまま配光パターンを形成するパラボラ光学系において、直線的に延在する高照度領域を含む配光パターンを形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る灯具ユニットによれば、リフレクタからの反射光を利用して直線的に延在する高照度領域を適切に形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(以下、実施形態という)について詳細に説明する。
【0017】
図1は、本実施形態に係る灯具ユニット10を右側面から見た断面図である。図1は、灯具ユニット10の光軸Xを含む鉛直な平面による断面図を示している。図2は、図1のP−P断面図である。以下、図1および図2の双方に関連して灯具ユニット10の構成について詳細に説明する。
【0018】
灯具ユニット10は、光源バルブ12、リフレクタ16、シェード18、投影レンズ20、およびホルダ22を有する。光源バルブ12は、ハロゲンランプなどフィラメント14を有する白熱灯によって構成されている。フィラメント14は直線状に伸びるよう形成される。光源バルブ12は、このフィラメント14から光が放射されることにより発光する。したがって、フィラメント14は線状光源として機能する。
【0019】
なお、光源バルブ12は、メタルハライドバルブなどのHIDランプ(ディスチャージランプともいう)からなる放電灯が採用されてもよい。また、光源バルブ12に代えて光源素子が用いられてもよい。この光源素子は、半導体発光素子からなる発光チップ、および発光チップを覆うように設けられる薄膜によって構成されていてもよい。なお、光源バルブ12として放電灯が採用された場合、または光源バルブ12に代えて光源素子が採用された場合においても、これらの発光部分は直線状に伸びるように形成される。
【0020】
光源バルブ12は、光軸Xに対して垂直且つ水平方向にフィラメント14が伸びるよう配置される。なお、光源バルブ12は、光軸Xに対して垂直にフィラメント14が伸びなくてもよく、光軸Xに対して角度をもってフィラメント14が伸びるよう配置されてもよい。また、光源バルブ12は、水平方向にフィラメント14が伸びるよう配置されずに、例えば鉛直方向にフィラメント14が伸びるよう配置されてもよく、また水平方向から角度をもって傾斜してフィラメント14が伸びるよう配置されてもよい。
【0021】
リフレクタ16は、光源バルブ12の後方に配置される。リフレクタ16は、光源バルブ12を囲うような曲面状の反射面を内面に有する。投影レンズ20は、リフレクタ16の前方に配置される。投影レンズ20は、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズからなり、その後方焦点面上に形成される光源像を反転像として灯具ユニット10の前方に投影する。投影レンズ20は、ホルダ22によって保持される。シェード18は、リフレクタ16の前方且つ投影レンズ20の後方焦点面周辺に配置される。シェード18は板状に形成され、表面が光軸Xと垂直になるよう配置される。
【0022】
光源バルブ12のフィラメント14によって照射された光は、リフレクタ16の反射面によってシェード18に向けて反射される。シェード18は、リフレクタ16からの反射光を利用して光源像を形成する。したがって、シェード18は光源像形成手段として機能する。投影レンズ20は、シェード18によって形成された光源像を反転像として灯具ユニット10より前方の仮想鉛直スクリーンに投影する。本実施形態では、例えば車両前方25メートルの位置に配置された仮想鉛直スクリーン上に形成される投影像を基準に説明する。なお、投影像が形成されるものとする仮想面はこのような鉛直な面に限られないことは勿論であり、例えば路面を想定した水平面であってもよい。
【0023】
図3は、本実施形態に係る灯具ユニット10によって仮想鉛直スクリーン上に形成すべき高照度領域を示す図である。灯具ユニット10が搭載される車両には、ロービーム用配光パターンPLを形成するロービーム用灯具ユニット(図示せず)が、車両右前部および車両左前部に設けられている。
【0024】
ロービーム用配光パターンPLは左配光のロービーム用配光パターンであり、その上端縁に第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3を有する。第1カットオフラインCL1〜第3カットオフラインCL3は、灯具正面方向の消点であるH−V点を通る鉛直線であるV−V線を境にして左右段違いで水平方向に延在する。第1カットオフラインCL1は、V−V線より右側且つH−H線より下方において水平方向に延在する。このため、第1カットオフラインCL1は対向車線カットオフラインとして利用される。第3カットオフラインCL3は、第1カットオフラインCL1の左端部から左上方向に向かって15°の傾斜角度で斜めに延在する。第2カットオフラインCL2は、第3カットオフラインCL3とH−H線との交点から左側においてH−H線上に延在する。このため、第2カットオフラインCL2は自車線側カットオフラインとして利用される。ロービーム用配光パターンPLにおいて、第1カットオフラインCL1とV−V線との交点であるエルボ点EはH−V点の下方に位置しており、このエルボ点Eをやや左よりに囲むようにして高光度領域であるホットゾーンが形成される。
【0025】
雨天時は、路面に水による膜が形成されるため、ロービーム用灯具ユニットによって前方に光を照射しても、路面に到達した光が乱反射せずに前方に向けて全反射する可能性が高くなる。このように路面への照射光が全反射すると、車両の運転者に向けて反射される路面の反射光が低下し、車両前方の視認性が低下するおそれがある。
【0026】
一方、車両が直進しているときは、車両を運転する運転者からは、H−H線およびV−V線の交点すなわち車両前方における消点であるH−V点から左下方向に直線的に自車線側の路肩が延在して見える。また、H−V点から右下方向に直線的に対向車線側の路肩が延在して見える。発明者による鋭意なる研究開発の結果、自動車線側の路肩や対向車線側の路肩などに沿って強い光を照射してこの領域の視認性を向上させることで、雨天時による前方の視認性低下に伴う運転しにくさを抑制できることが判明した。しかしながら、ロービーム用灯具ユニットでは、自車線側の路肩や対向車線側の路肩を明るく照らし出すことは困難である。
【0027】
このため、灯具ユニット10は、特に雨天時においてロービーム用灯具ユニットによる光の照射を補完すべく設けられる。灯具ユニット10は、車両右前部および車両左前部の各々に配置される。なお、灯具ユニット10は車両前部に一つだけ配置されてもよく、また、車両右前部および車両左前部の各々に複数個が配置されてもよい。
【0028】
灯具ユニット10は、自車線側の路肩に沿うように、H−V点から左下方向に直線的に延在する第1高照度領域R1を含む配光パターンを形成する。第1高照度領域R1は、第2カットオフラインCL2より下方に形成される。このように第1高照度領域R1が形成されることによって、例えば自車線側の路肩や道路構造物の視認性を向上させることが可能となる。
【0029】
また、灯具ユニット10は、対向車線側の路肩に沿うように、H−V点から右下方向に直線的に延在する第2高照度領域R2を含む配光パターンを形成する。第2高照度領域R2は、第1カットオフラインCL1より下方に上端が位置するよう形成される。このように第2高照度領域R2が形成されることによって、例えば対向車線側の路肩を歩行する歩行者の視認性を向上させることができる。
【0030】
なお、灯具ユニット10は、第1高照度領域R1と第2高照度領域R2の間の自車線上および対向車線上に位置する照射回避領域R3への光の照射を回避するよう設けられている。雨天時にこのように車両前方の路面に光を照射すると、路面に到達した光が乱反射せずにさらに前方に全反射し、対向車や先行車などの前走車の運転者にグレアを与える可能性がある。灯具ユニット10は、このような領域への光の照射を回避し、前走車の運転者に与えるグレアを抑制している。
【0031】
図4は、図1における視点Qからシェード18を見た図である。シェード18は水平後方に長い長方形に形成される。投影レンズ20によってH−H線上に投影される仮想的な直線を仮想H−H線Lhとして示している。また、投影レンズ20によってV−V線上に投影される仮想的な直線を仮想V−V線Lvとして示している。
【0032】
シェード18には、第1開口部18aおよび第2開口部18bが設けられている。第1開口部18aは、第1高照度領域R1を含む配光パターン形成するための光源像を形成する。投影レンズ20はシェード18によって形成される光源像の反転像を仮想鉛直スクリーン上に投影する。このため、第1開口部18aは、仮想H−H線Lhより上方且つ仮想V−V線Lvより右側に設けられる。第1開口部18aは、上辺と下辺が仮想H−H線Lhと平行であり、左辺が仮想H−H線Lhと仮想V−V線Lvとの交点から右上方向に直線的に伸びるよう形成される。
【0033】
また、第2開口部18bは、第2高照度領域R2を含む配光パターンを形成するための光源像を形成する。このため、第2開口部18bは、仮想H−H線Lhより上方且つ仮想V−V線Lvより左側に設けられる。第2開口部18bは、左辺と右辺が仮想V−V線Lvと平行であり、上辺が左上方向に伸びるよう形成される。
【0034】
第1開口部18aの内部には、自車線側の路肩に相当する部分の光源像部分となる第1ラインL1が仮想H−H線Lhと仮想V−V線Lvとの交点から右上方向に直線的に伸びる。仮想鉛直スクリーン上で第1高照度領域R1を形成するためには、図4に示すように、第1ラインL1を中心に含んで第1ラインL1と同一方向に延在する第1高照度領域T1が第1開口部18aに形成される必要がある。また、第2開口部18bの内部には、対向車線側の路肩に相当する部分の光源像部分となる第2ラインL2が仮想H−H線Lhと仮想V−V線Lvとの交点から左上方向に直線的に伸びる。仮想鉛直スクリーン上で第2高照度領域R2を形成するためには、図4に示すように、第2ラインL2を中心に含んで第2ラインL2と同一方向に延在する第2高照度領域T2が第2開口部18bに形成される必要がある。
【0035】
図5は、リフレクタ16の反射面の位置と、当該位置の反射光によってシェード18上に形成されるフィラメント14の像との対応関係を示す図である。図5は、リフレクタ16の反射面のうち、後方から見てフィラメント14を囲う円上に位置する複数個所の対応関係を示している。なお、図5においてフィラメント14の像は理解を容易にすべく模式的に示したものであり、実際のフィラメント14の像はこれよりも小さいものとなる。リフレクタ16の反射面のうち、フィラメント14の中心を通過する鉛直線および水平線によって区画される4つの領域のうち、右上の領域を領域A、右下の領域を領域B、左下の領域を領域C、左上の領域を領域Dとする。
【0036】
線状光源であるフィラメント14を光軸に対して垂直に伸びるよう配置することにより、対応する線状光源像すなわちフィラメント14の像は周方向に伸びる。また、フィラメント14を水平に伸びるように配置することにより、まずフィラメント14の下方の個所に対応するフィラメント14の像、およびフィラメント14の上方の個所に対応するフィラメント14の像は最も長く伸びる。フィラメント14の下方の個所または上方の個所からフィラメント14の左の個所または右の個所に近づくにしたがってフィラメント14の像が短くなっていく。
【0037】
図5に示すように、リフレクタ16の反射面のうち所定部分を反射して第1開口部18a上に映し出されるフィラメント14の像は第1ラインL1と平行に延在する。本実施形態では、このような所定部分のうちフィラメント14よりも下方の部分を第1部分S1とし、上方の部分を第2部分S2とする。第1部分S1は、リフレクタ16の反射面上において、フィラメント14の後方に位置する部分から右下方向に向かって直線的に延在する。第2部分S2は、リフレクタ16の反射面上において、フィラメント14の後方に位置する部分から左上方向に向かって直線的に延在する。
【0038】
リフレクタ16は、第1部分S1およびその周辺部分、すなわち領域Bによる反射光が第1開口部18aにおいて重畳されるよう設けられ、これによって第1ラインL1と平行に延在する第1高照度領域T1を、第1ラインL1を中心に含むよう第1開口部18a内に形成する。なお、リフレクタ16は、第1ラインL1と平行に延在する、周囲よりも光度が高い高光度領域を第1開口部18a内に形成してもよい。
【0039】
また、図5に示すように、リフレクタ16の反射面のうち、別の所定部分を反射して第2開口部18bに映し出されるフィラメント14の像は第2ラインL2と平行に延在する。本実施形態では、このような所定部分のうちフィラメント14よりも下方の部分を第3部分S3とし、上方の部分を第4部分S4とする。第3部分S3は、リフレクタ16の反射面上において、フィラメント14の後方に位置する部分から左下方向に向かって直線的に延在する。第4部分S4は、リフレクタ16の反射面上において、フィラメント14の後方に位置する部分から右上方向に向かって直線的に延在する。
【0040】
リフレクタ16は、第3部分S3およびその周辺部分、すなわち領域Cによる反射光が第2開口部18bにおいて重畳されるよう設けられ、これによって第2ラインL2と平行に延在する第2高照度領域T2を形成する。なお、リフレクタ16は第2ラインL2と平行に延在する高光度領域を第2開口部18b内に形成してもよい。
【0041】
図6は、第1部分S1およびその周辺部分による反射光が第1開口部18aにおいて重畳された状態を示す図である。なお、図6においてフィラメント14の像は理解を容易にすべく模式的に示したものであり、実際の像はこれよりも小さいものとなる。
【0042】
リフレクタ16は、反射したフィラメント14の像の中心が第1開口部18a内の第1ラインL1上に位置するよう、第1部分S1およびその周辺部分による反射光を重畳させる。リフレクタ16は、領域Bの左下の部分から徐々に右上方向に進むにしたがって、その部分により反射したフィラメント14の像の中心が第1ラインL1の左下端部から徐々に第1ラインL1に沿って右上方向に進むよう、フィラメント14からの照射光を反射する。
【0043】
同様に、リフレクタ16は、反射したフィラメント14の像の中心が第2開口部18b内の第2ラインL2上に位置するよう、第3部分S3およびその周辺部分による反射光を重畳させる。リフレクタ16は、領域Cの右下の部分から徐々に左上方向に進むにしたがって、その部分により反射したフィラメント14の像の中心が第2ラインL2の右下端部から徐々に第2ラインL2に沿って左上方向に進むよう、フィラメント14からの照射光を反射する。
【0044】
まずフィラメント14を光軸に対して垂直に伸びるよう配置することにより、図5に示すように、対応するフィラメント14の像は周方向に伸びることになる。このように周方向に伸びるフィラメント14の像を利用することで、フィラメント14の像の一部を直線的に並ぶように容易に重畳させることができ、第1ラインL1または第2ラインL2に沿った直線状の高照度領域を簡易に作り出すことができる。
【0045】
なお、リフレクタ16は、右側に位置する第1部分S1およびその周辺部分による反射光が、シェード18において同じく右側の第1高照度領域T1を形成するよう設けられる。同様に、リフレクタ16は、左側に位置する第3部分S3およびその周辺部分による反射光が、シェード18において同じく左側の第2高照度領域T2を形成するよう設けられる。これにより、リフレクタ16の所定部分を反射した光がシェード18において当該所定部分と左右反対側に高照度領域を形成する場合に比べ、リフレクタ16や投影レンズ20の設計を容易なものとすることができる。
【0046】
また、フィラメント14は光軸Xより上方に配置される。リフレクタ16は、フィラメント14の下方に位置する第1部分S1およびその周辺部分、すなわち領域Bの反射光によって第1開口部18a内の第1高照度領域T1を形成する。また、リフレクタ16は、フィラメント14の下方に位置する第3部分S3およびその周辺部分の反射光によって第2開口部18b内の第2高照度領域T2を形成する。
【0047】
例えば、リフレクタ16の反射面のうち、投影レンズ20の後方焦点面上に映し出されるフィラメント14の像が第1ラインL1と平行に延在するような所定部分は、第1部分S1の他に第2部分S2も存在する。しかし、第2部分S2およびその周辺部分による反射光を利用して第1開口部18aに第1高照度領域T1を形成しようとした場合、リフレクタ16の左側で反射した光を左右反対側の第1開口部18aに入射させる必要が生じる。
【0048】
同様に、リフレクタ16の反射面のうち、投影レンズ20の後方焦点面上に映し出されるフィラメント14の像が第2ラインL2と平行に延在するような所定部分は、第2ラインL2の他に第4部分S4も存在する。しかし、第4部分S4およびその周辺部分による反射光を利用して第2開口部18bに第2高照度領域T2を形成しようとした場合、リフレクタ16の右側で反射した光を左右反対側の第2開口部18bに入射させる必要が生じる。
【0049】
反射光をシェード18において左右反対側に入射するようリフレクタ16を設計することは、左右同一側に入射するよう設計する場合に比べて困難となる。このようにリフレクタ16の反射面のうちフィラメント14の下方の部分を利用することにより、リフレクタ16の設計を容易なものとしつつ、第1高照度領域T1および第2高照度領域T2を適切に形成することが可能となる。
【0050】
図7は、シェード18において形成された光源像の照度分布を示す図である。図7では、等しい照度を示す等照度線が楕円形に形成され、楕円が小さくなるほど照度が高くなっている。図7に示すように、第1開口部18aには、第1ラインL1に沿った高照度領域が形成されている。また、第2開口部18bには、第2ラインL2に沿った高照度領域が形成されている。これにより、第1開口部18aおよび第2開口部18bによって形成される光源像が投影レンズ20によって灯具ユニット10の前方に投影され、自車線側の路肩、および対向車線側の路肩に対して適切に光を照射することができる。
【0051】
本発明は上述の各実施形態に限定されるものではなく、各実施形態の各要素を適宜組み合わせたものも、本発明の実施形態として有効である。また、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を各実施形態に対して加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれうる。
【0052】
ある変形例では、灯具ユニット10は、シェード18および投影レンズ20を有しない。このためリフレクタ16は、投影レンズ20を介することなくフィラメント14の照射光を仮想鉛直スクリーンに向けて反射する。こうしてリフレクタ16は、第1高照度領域R1および第2高照度領域R2を含む配光パターンを仮想鉛直スクリーン上に直接投影する。このように投影レンズ20を介しないパラボラ光学系においても、直線的に延在する高照度領域を形成することができる。
【0053】
なお、リフレクタ16は、左側に位置する第2部分S2およびその周辺部分、すなわち領域Dによる反射光が、仮想鉛直スクリーンにおいて同じく左側に位置する第1高照度領域R1を形成するよう設けられる。同様にリフレクタ16は、右側に位置する第4部分S4およびその周辺部分、すなわち領域Aによる反射光が、仮想鉛直スクリーンにおいて同じく右側の第2高照度領域R2を形成するよう設けられる。これにより、リフレクタ16の所定部分を反射した光が仮想鉛直スクリーンにおいて左右反対側に高照度領域を形成する場合に比べ、リフレクタ16の設計を容易なものとすることができる。なお、リフレクタ16は、領域Bによる反射光が第1高照度領域R1を形成し、領域Cによる反射光が第2高照度領域R2を形成するよう設けられてもよい。
【0054】
このようにリフレクタ16における反射個所と左右同じ側に高照度領域を形成するため、フィラメント14は光軸Xより下方に配置される。リフレクタ16は、フィラメント14の上方に位置する第2部分S2およびその周辺部分の反射光によって仮想鉛直スクリーン上に第1高照度領域R1を形成する。また、リフレクタ16は、フィラメント14の上方に位置する第4部分S4およびその周辺部分の反射光によって仮想鉛直スクリーン上に第2高照度領域R2を形成する。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本実施形態に係る灯具ユニットを右側面から見た断面図である。
【図2】図1のP−P断面図である。
【図3】本実施形態に係る灯具ユニットによって仮想鉛直スクリーン上に形成すべき高照度領域を示す図である。
【図4】図1における視点Qからシェードを見た図である。
【図5】リフレクタの反射面の位置と、当該位置の反射光によってシェード上に形成されるフィラメントの像との対応関係を示す図である。
【図6】第1部分およびその周辺部分による反射光が第1開口部において重畳された状態を示す図である。
【図7】シェードにおいて形成された光源像の照度分布を示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 灯具ユニット、 12 光源バルブ、 14 フィラメント、 16 リフレクタ、 18 シェード、 18a 第1開口部、 18b 第2開口部、 20 投影レンズ、 22 ホルダ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光軸に対して角度を持って伸びる線状光源と、
前記線状光源の照射光を反射するリフレクタと、
を備え、
前記リフレクタは、所定の仮想面に映し出される前記線状光源の像が所定方向に伸びるよう前記線状光源の照射光を反射する所定部分を有し、前記所定部分およびその周辺部分による反射光が前記仮想面上において重畳されることにより、前記所定方向に直線的に延在する、周辺よりも照度が高い高照度領域を形成することを特徴とする灯具ユニット。
【請求項2】
前記リフレクタは、前記高照度領域を形成すべき前記仮想面上の位置と光軸に対して左右同じ側に前記所定部分が位置することを特徴とする請求項1に記載の灯具ユニット。
【請求項3】
前記リフレクタによる反射光を利用して前記仮想面上に前記高照度領域を含む光源像を形成する光源像形成部材と、
形成された光源像を前記仮想面とは異なる所定の仮想スクリーンに投影する投影レンズと、
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の灯具ユニット。
【請求項4】
前記線状光源は、光軸より上方に配置され、
前記リフレクタは、前記線状光源の下方に前記所定部分が位置するよう設けられることを特徴とする請求項3に記載の灯具ユニット。
【請求項5】
前記リフレクタは、前記線状光源の照射光を前記仮想面である仮想スクリーンに向けて反射することにより、前記高照度領域を一部に含む配光パターンを前記仮想スクリーンに形成することを特徴とする請求項1または2に記載の灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−3620(P2010−3620A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−163218(P2008−163218)
【出願日】平成20年6月23日(2008.6.23)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】