説明

灯具ユニット

【課題】赤外光および可視光を照射可能な灯具ユニットにおける部品点数を削減する。
【解決手段】灯具ユニット10は、赤外光用光源12aと、可視光用光源12bと、第1表面に、可視光用光源12bからの可視光を透過し、赤外光用光源12aからの赤外光を反射する第1反射面20aが形成され、第2表面に、可視光用光源12bからの可視光を反射する第2反射面20bが形成され、少なくとも可視光用光源12bからの可視光が進行可能な部材で構成されたリフレクタ20と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、灯具ユニットに関し、特に赤外光および可視光を照射可能な灯具ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば夜間走行時に、車両前方に存在する歩行者等にグレアを与えることなく運転者に対して車両前方の歩行者や障害物等の存在を知らしめるために、車両前方に赤外光を照射する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示された投光器は、赤外光および可視光のうちいずれか一方の光を反射するとともに他方の光を透過するダイクロイックミラーと、当該ダイクロイックミラーの後方に配置され、他方の光を反射する反射ミラーとを備えている。そして、この投光器は、光源から照射された赤外光および可視光を、それぞれダイクロイックミラーまたは反射ミラーで反射させることで、車両前方に赤外光および可視光を照射している。
【特許文献1】特開2000−235803号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような状況において、本発明者らは以下の課題を認識するに至った。
すなわち、上述の特許文献1に開示された構成ではダイクロイックミラーと反射ミラーという2つのリフレクタを含んでいる。
【0005】
一般に、部品点数の削減は、製造工程の簡略化、製造コストの低減、および設置スペースの縮小等につながるため、自動車等の車両に搭載される灯具ユニットにおいても当然にその要請はある。かかる観点から上述の構成を見るに、上述の特許文献1の構成では、部材点数を削減する余地がある。
【0006】
本発明は、発明者によるこうした認識に基づいてなされたものであり、その目的は、赤外光および可視光を照射可能な灯具ユニットにおける部品点数の削減を可能にする技術の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様は灯具ユニットであり、この灯具ユニットは、赤外光用光源と、可視光用光源と、第1表面に、赤外光用光源および可視光用光源のうちの一方の光源からの光を透過し、他方の光源からの光を反射する第1反射面が形成され、第2表面に、一方の光源からの光を反射する第2反射面が形成され、少なくとも一方の光源からの光が進行可能な部材で構成されたリフレクタと、を備えたことを特徴とする。
【0008】
この態様によれば、赤外光および可視光を照射可能な灯具ユニットにおける部品点数を削減できる。
【0009】
上記態様において、灯具ユニットは、パラボラ型の灯具ユニットであり、第1反射面および第2反射面は、赤外光用光源および可視光用光源を通って略前後方向に延びる光軸を中心軸とした略放物面状であり、第1反射面の焦点近傍に一方の光源が配置され、第2反射面の焦点近傍に他方の光源が配置され、第2反射面は、他方の光源が一方の光源から離間した方向および距離と同一の方向および距離だけ、第1反射面から離間していてもよい。これによれば、歩行者等が赤色光を視認する可能性を低減することができ、自車および他車を含む車両の運転者および歩行者の安全性を向上させることができる。
【0010】
また、上記態様において、灯具ユニットは、リフレクタからの反射光をリフレクタの前方に設けられた投影レンズを介して灯具前方へ照射するプロジェクタ型の灯具ユニットであり、第1反射面および第2反射面は、少なくとも一部が略楕円面状であり、第1反射面の第1焦点近傍に一方の光源が配置され、第2反射面の第1焦点近傍に他方の光源が配置され、第1反射面の第2焦点と第2反射面の第2焦点とが略同位置であってもよい。これによっても、歩行者等が赤色光を視認する可能性を低減することができ、自車および他車を含む車両の運転者および歩行者の安全性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、赤外光および可視光を照射可能な灯具ユニットにおける部品点数を削減できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0013】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る灯具ユニットを備えた車両用灯具の概略垂直断面図である。以下、図1を参照して、本実施形態に係る灯具ユニットを備えた車両用灯具の構成について説明する。
【0014】
図1に示すように、車両用灯具1は、灯具ボディ2と、灯具ボディ2の前端開口部に取り付けられた透光カバー4とで形成された灯室3内に、灯具ユニット10が収容された構成を有する。また、灯室3内には灯具ユニット10を支持するブラケット50が収容されており、灯具ユニット10は、ブラケット50に固定されている。
【0015】
灯具ユニット10は、いわゆるパラボラ型灯具ユニットであり、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとを含む光源モジュール12と、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bから照射された光を反射するリフレクタ20とを備えている。
【0016】
光源モジュール12は、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bが基板13に搭載された構成を有する。
【0017】
赤外光用光源12aは、例えば、発光ダイオード(LED)等からなる赤外光用発光素子である。赤外光用光源12aは、赤外光として例えば波長が770nm〜1μm程度の近赤外光を発光し、さらに例えば840nm近傍に波長ピークを有する光を発光する。なお、赤外光用光源12aが発光する光には、近赤外光の発光に伴って生じる、波長が630nm程度以上の赤色光が含まれている。赤外光用光源12aは、歩行者等にグレアを与えることなく、運転者に対して車両前方の歩行者や障害物等の存在を知らしめるためや、道路上のレーンマークを認識して車両の走行位置を把握するため等に用いられる。
【0018】
可視光用光源12bは、例えば、発光ダイオード(LED)等からなる可視光用発光素子である。可視光用光源12bは、赤色光と異なる波長の可視光、例えば白色光や、赤色の補色であるシアン色の光を発光する。
【0019】
基板13は、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bへ電力を伝達する図示しない電極が形成され、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bを支持する。基板13は、例えばセラミック等で形成された熱伝導性絶縁基板である。本実施形態に係る灯具ユニット10では、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが同一の基板13に搭載されているため、灯具ユニット10の部品点数を削減できる。
【0020】
リフレクタ20は、車両前方側の表面(第1表面)に、可視光用光源12bから照射された光を透過し、赤外光用光源12aから照射された光を反射する第1反射面20aが形成され、車両後方側の表面(第2表面)に、可視光用光源12bから照射された光を反射する第2反射面20bが形成された反射部材である。また、リフレクタ20は、少なくとも可視光用光源12bから照射された光が進行可能な部材で構成されている。リフレクタ20は、例えば透明樹脂材料で形成され、その車両前方側の表面に、赤外光用光源12aの光を反射し可視光用光源12bの光を透過する塗料が蒸着されて第1反射面20aが形成され、その車両後方側の表面に、可視光用光源12bの光を反射する塗料が蒸着されて第2反射面20bが形成されている。リフレクタ20は、図示しない固定部によってブラケット50の後述する光源搭載部52に固定されている。
【0021】
ブラケット50は、光源モジュール12が載置される光源搭載部52と、光源搭載部52と一体的に形成された取付部54とを備える。光源搭載部52および取付部54は、例えば熱伝導性の高い金属材料で形成されている。
【0022】
光源搭載部52は、取付部54の車両前方側の表面から突出して、略前後方向に延びる灯具ユニット10の光軸方向に延在しており、光源搭載部52の突出方向に沿った面に光源モジュール12が載置されている。光源モジュール12は、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bの照射軸が灯具ユニット10の光軸方向(図1中左方向)と略垂直となる略鉛直上方に向けられた状態で、光源搭載部52に載置されている。また、光源モジュール12は、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bが灯具ユニット10の光軸方向に平行に並ぶように配置されている。なお、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bの照射軸は、ブラケット50の形状等に応じて調整可能である。
【0023】
光源モジュール12は、光源搭載部52に対して位置決めされた後、例えばUV接着法を用いて光源搭載部52に接着固定される。すなわち、基板13の底面に塗布したUV(紫外線)硬化型接着剤に紫外線を照射して接着剤を硬化させることで、光源モジュール12が光源搭載部52に固定される。
【0024】
取付部54は、所定の辺縁部に図示しない螺孔を有する。取付部54の螺孔が灯具ボディ2を貫通して前方に延出するエイミングスクリュー60とレベリングシャフト62とに螺合することで、ブラケット50が灯具ボディ2に取り付けられている。レベリングシャフト62はレベリングアクチュエータ64に接続されている。車両用灯具1は、エイミングスクリュー60、レベリングシャフト62およびレベリングアクチュエータ64によって、灯具ユニット10の光軸を水平方向あるいは垂直方向に調整できるように構成されている。
【0025】
また、取付部54には、その車両後方側の表面に複数の放熱フィン56が設けられている。赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bで発生した熱は、光源搭載部52から取付部54に伝達され、放熱フィン56において効率的に拡散される。
【0026】
以下、本実施形態に係る灯具ユニット10の構成について、図2を参照して、さらに詳細に説明する。図2は、灯具ユニット10の構成を説明するための概略垂直断面図である。図2において、ブラケット50は、その一部を抜き出した状態を示している。また、放熱フィン56の図示は省略している。
【0027】
本実施形態では、リフレクタ20の第1反射面20aおよび第2反射面20bが、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bを通って略前後方向に延びる灯具ユニット10の光軸を中心軸とした略放物面状となっている。また、リフレクタ20は、第1反射面20aの焦点近傍に赤外光用光源12aが配置され、第2反射面20bの焦点近傍に可視光用光源12bが配置されるように構成されている。したがって、第1反射面20aは、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bを含む垂直面に沿った断面形状が、赤外光用光源12aを焦点とした略放物線状となっており、また、第2反射面20bは、当該垂直面に沿った断面形状が、可視光用光源12bを焦点とした略放物線状となっている。
【0028】
また、リフレクタ20は、可視光用光源12bが赤外光用光源12aから離間した方向および距離と同一の方向および距離だけ、第2反射面20bが第1反射面20aから離間するように構成されている。すなわち、本実施形態では、可視光用光源12bが赤外光用光源12aから距離Aだけ灯具ユニット10の光軸方向後方に離間しており、したがって、第2反射面20bは、第1反射面20aから距離Aだけ灯具ユニット10の光軸方向後方に離間している。言い換えれば、第2反射面20bは、第1反射面20aと同一形状の反射面が、第1反射面20aから距離Aだけ光軸方向後方に平行移動したものである。したがって、第1反射面20aおよび第2反射面20bは、同一の曲率を有する略放物面状となっている。
【0029】
このような構成において、赤外光用光源12aから照射された、近赤外光と赤色光とを含む光(以下、赤外光IRと呼ぶ場合がある)は、リフレクタ20の第1反射面20aにて反射され、車両前方に照射される。また、可視光用光源12bから照射された白色光等を含む可視光Vは、第1反射面20aを透過して第2反射面20b側に向かってリフレクタ20内を進行する。そして、可視光Vは、第2反射面20bにて反射され、第1反射面20a側に向かってリフレクタ20内を進行し、第1反射面20aを透過して、車両前方に照射される。したがって、灯具ユニット10は、リフレクタ20一つのにみよって赤外光IRおよび可視光Vを車両前方に照射することができる。
【0030】
ここで、赤外光用光源12aから照射される赤外光IRには、上述のように、赤外光だけでなく人が視認可能な赤色光が含まれている。車両において赤色光は、例えばテールランプやブレーキランプ等の灯光色として用いられており、前照灯に赤色光が含まれていると歩行者や他車両の運転者が車両の前後方向を誤認するおそれがあるため、安全上好ましくない。
【0031】
これに対し、本実施形態に係る灯具ユニット10では、赤外光用光源12aから照射された赤外光IRを、第1反射面20aで反射させるとともに、可視光用光源12bから照射された白色光等の可視光Vを、第1反射面20aと同一形状であって、可視光用光源12bが赤外光用光源12aから離間した方向および距離と同一の方向および距離だけ、第1反射面20aから離間した第2反射面20bで反射させている。そのため、赤外光用光源12aから照射され、第1反射面20aで反射された赤外光IRの軌跡と、可視光用光源12bから照射され、第2反射面20bで反射された可視光Vの軌跡とを略完全に重ね合わせることができる。
【0032】
したがって、灯具ユニット10から車両前方に照射される光は、ほぼ赤外光IRと可視光Vとが混合された混色光Mのみとなる。よって、歩行者等が赤色光を視認する可能性をより一層低減することができる。そのため、歩行者等が車両の前後方向を誤認するおそれを防ぎ、これにより自車および他車を含む車両の運転者および歩行者の安全性をより一層向上させることができる。なお、可視光Vがシアン色の光であった場合には、より効果的に赤色光の視認性を低減できる。また、可視光用光源12bから照射された可視光Vは、リフレクタ20内に進入する際、およびリフレクタ20から出射する際に屈折するが、この屈折は、赤外光IRの軌跡と可視光Vの軌跡とを重ね合わせる上で、無視できる程度のものである。
【0033】
本実施形態のように、赤外光IRの軌跡と可視光Vの軌跡とを一致させるようにした構成の場合、可視光用光源12bは、赤外光用光源12aから照射された赤外光IRに含まれる赤色光の視認性を低減するために用いると同時に、ポジションランプやクリアランスランプと呼ばれる、自車両の存在等を歩行者や対向車の運転者等に知らしめるための灯具として用いることができる。また、可視光用光源12bは、その光量に応じてハイビーム用光源として用いることもできる。もしくは、可視光用光源12bは、赤外光用光源12aの点灯時には赤外光IRに含まれる赤色光の視認性を低減するために用い、赤外光用光源12aの非点灯時にはロービーム形成用光源やデイタイムランニングランプ等を含む様々な光源として用いるようにしてもよい。
【0034】
このように、可視光用光源12bを他の光源と兼用することで、車両用灯具1の小型化が可能となる。また、可視光用光源12bが他の光源と兼用された場合は、赤外光IRを照射する灯具ユニット10における光源としての赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bと、当該他の光源とで放熱フィン56を共通化できるため、車両用灯具1のさらなる小型化が可能となる。
【0035】
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係る灯具ユニット10は、第1表面に、可視光用光源12bから照射された可視光Vを透過し、赤外光用光源12aから照射された赤外光IRを反射する第1反射面20aが形成され、第2表面に、可視光用光源12bから照射された可視光Vを反射する第2反射面20bとが形成され、可視光Vが進行可能な部材で構成されたリフレクタ20を備えている。したがって、灯具ユニット10は、リフレクタ20一つのみによって赤外光IRおよび可視光Vを車両前方に照射することができるため、赤外光IRおよび可視光Vを照射可能な灯具ユニットにおける部品点数を削減することができる。また、その結果、灯具ユニット10の製造工程の簡略化、製造コストの低減、および設置スペースの縮小が可能となる。
【0036】
また、本実施形態に係る灯具ユニット10では、第1反射面20aおよび第2反射面20bは、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bを通って略前後方向に延びる光軸を中心軸とした略放物面状であり、かつ、第1反射面20aの焦点近傍に赤外光用光源12aが、第2反射面20bの焦点近傍に可視光用光源12bが、それぞれ配置されている。そして、第2反射面20bは、可視光用光源12bが赤外光用光源12aから離間した方向および距離と同一の方向および距離だけ、第1反射面20aから離間している。そのため、灯具ユニット10から車両前方に照射される光は、ほぼ赤外光IRと可視光Vとが混合された混色光Mのみとなり、歩行者等が赤色光を視認する可能性を低減することができる。その結果、歩行者等が車両の前後方向を誤認するおそれを防ぎ、自車および他車を含む車両の運転者および歩行者の安全性を向上させることができる。
【0037】
さらに、本実施形態の灯具ユニット10では、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが同一の基板13に搭載されているため、灯具ユニット10のさらなる小型化が可能となる。また、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが異なる基板に搭載された構成と比較して、基板の合計量を低減できるため、灯具ユニット10の製造コストを低減できる。
【0038】
(実施形態2)
実施形態2に係る灯具ユニットは、プロジェクタ型の灯具ユニットである点が実施形態1と異なる。以下、本実施形態について説明する。なお、車両用灯具のその他の構成は実施形態1と同一であり、実施形態1と同一の構成については同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0039】
図3は、実施形態2に係る灯具ユニットの構成を説明するための概略垂直断面図である。図3において、ブラケット50は、その一部を抜き出した状態を示している。また、放熱フィン56の図示は省略している。
【0040】
本実施形態の灯具ユニット200は、いわゆる反射型のプロジェクタ型灯具ユニットであり、実施形態1の灯具ユニット10と同様にして灯室3内に収容されている。灯具ユニット200は、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとを含む光源モジュール12と、リフレクタ220と、投影レンズ270とを備えている。
【0041】
光源モジュール12は、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが基板13に搭載された構成を有する。本実施形態に係る灯具ユニット200においても、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが同一の基板13に搭載されているため、灯具ユニット200の部品点数を削減できる。光源モジュール12は、ブラケット50の取付部54から車両前方に突出した光源搭載部52に、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bの照射軸が灯具ユニット200の光軸方向(図3中左方向)と略垂直となる略鉛直下方に向けられた状態で載置されている。また、光源モジュール12は、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bが灯具ユニット10の光軸方向に平行に並ぶように配置されている。
【0042】
リフレクタ220は、車両前方側の表面(第1表面)に、可視光用光源12bから照射された光を透過し、赤外光用光源12aから照射された光を反射する第1反射面220aが形成され、車両後方側の表面(第2表面)に、可視光用光源12bから照射された光を反射する第2反射面220bが形成された反射部材である。また、リフレクタ220は、少なくとも可視光用光源12bから照射された光が進行可能な部材で構成されている。
【0043】
また、リフレクタ220は、第1反射面220aおよび第2反射面220bの少なくとも一部が略楕円面状であり、第1反射面220aの第1焦点近傍に赤外光用光源12aが配置され、第2反射面220bの第1焦点近傍に可視光用光源12bが配置されるように構成されている。本実施形態では、リフレクタ220における赤外光用光源12aの照射軸Bよりも車両後方側の第1領域において、第1反射面220aおよび第2反射面220bが略楕円面状となっている。したがって、第1反射面220aおよび第2反射面220bは、第1領域において、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bを含む垂直面に沿った断面形状が略楕円状となっている。また、リフレクタ220は、第1領域において第1反射面220aの第2焦点と第2反射面220bの第2焦点とが略同一の位置(図中のA:以下、第2焦点Aと呼ぶ場合がある)となるように配置されている。また、赤外光用光源12aと、可視光用光源12bと、第2焦点Aとが、略同一直線上に配置されている。
【0044】
投影レンズ270は、第1反射面220aおよび第2反射面220bにて反射した光を灯具前方に投影する、前方側表面が凸面で後方側表面が平面の平凸非球面レンズであって、車両前後方向に延びる光軸上に配置されている。投影レンズ270は、その後方焦点が第2焦点Aと略一致するように配置され、その後方焦点を含む後方焦点面上の像を、灯具前方に配置された鉛直仮想スクリーン上に反転像として投影するように構成されている。投影レンズ270は、図示しない固定具によって光源搭載部52等に固定されている。
【0045】
このような構成において、赤外光用光源12aから照射された赤外光IRは、リフレクタ220の第1領域の第1反射面220aにて反射され、第2焦点Aを通って投影レンズ270に入射する。また、可視光用光源12bから照射された可視光Vは、第1反射面220aを透過してリフレクタ220内を進行し、第1領域の第2反射面220bにて反射され、リフレクタ220内を進行して第1反射面220aを透過し、第2焦点Aを通って投影レンズ270に入射する。投影レンズ270に入射した光は、投影レンズ270で集光されて略平行な光として車両前方に照射される。したがって、灯具ユニット200は、リフレクタ220一つのにみよって赤外光IRおよび可視光Vを車両前方に照射することができる。
【0046】
本実施形態の灯具ユニット200では、リフレクタ220の第1領域において第1反射面220aと第2反射面220bとで第2焦点が共通しているため、赤外光IRの軌跡と可視光Vの軌跡とを略完全に重ね合わせて、混色光Mとすることができる。したがって、歩行者等が赤色光を視認する可能性をより一層低減することができ、これにより自車および他車を含む車両の運転者および歩行者の安全性をより一層向上させることができる。可視光用光源12bから照射された可視光Vは、リフレクタ220内に進入する際、およびリフレクタ220から出射する際に屈折するが、この屈折は、赤外光IRの軌跡と可視光Vの軌跡とを重ね合わせる上で、無視できる程度のものである。
【0047】
本実施形態の灯具ユニット200においても、可視光用光源12bは、赤外光IRに含まれる赤色光の視認性を低減するために用いると同時に、ポジションランプやクリアランスランプとして、もしくはハイビーム用光源として用いることができる。または、可視光用光源12bは、赤外光用光源12aの点灯時には赤外光IRに含まれる赤色光の視認性を低減するために用い、赤外光用光源12aの非点灯時にはロービーム形成用光源やデイタイムランニングランプ等を含む様々な光源として用いるようにしてもよい。このように、可視光用光源12bを他の光源と兼用することで、車両用灯具1の小型化が可能となり、また、放熱フィンの共通化によって車両用灯具1のさらなる小型化が可能となる。
【0048】
なお、リフレクタ220における赤外光用光源12aの照射軸Bよりも車両前方側の第2領域において、第1反射面220aおよび第2反射面220bは、第2領域で反射された光が投影レンズ270内を透過するように構成されている。具体的には、第1反射面220aは、第1反射面220aと光軸Bとの交点Cと投影レンズ270の上端部Dとを結ぶ線上で投影レンズ270よりも車両前方側の任意の点A’を第2焦点とし(以下、第2焦点A’と呼ぶ場合がある)、赤外光用光源12aを第1焦点とした略楕円面である。また、第2反射面220bは、点A’を第2焦点とし、可視光用光源12bを第1焦点とした略楕円面である。これにより、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bから照射された光をより多く投影レンズ270に入射させることができるようになる。また、第2領域においても、第1反射面220aと第2反射面220bとは第2焦点が共通しているため、赤外光IRの軌跡と可視光Vの軌跡とを略完全に重ね合わせて混色光Mとすることができる。
【0049】
また、リフレクタ220の第1領域と第2領域との境界線は、光軸Bの位置に限定されず、例えば赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bから照射された光をできる限り有効活用できるように位置決めされる。この場合、境界線は、投影レンズ270の上端部Dと投影レンズ270の後方焦点である第2焦点Aとを通る直線と、第1反射面220aとの交点を通るように設定される。
【0050】
以上説明した構成による作用効果を総括すると、本実施形態に係る灯具ユニット200によっても、赤外光IRおよび可視光Vを照射可能な灯具ユニットにおける部品点数を削減することができる。また、その結果、灯具ユニット200の製造工程の簡略化、製造コストの低減、および設置スペースの縮小が可能となる。
【0051】
また、灯具ユニット200から車両前方に照射される光は、ほぼ赤外光IRと可視光Vとが混合された混色光Mのみとなり、歩行者等が赤色光を視認する可能性を低減することができる。その結果、歩行者等が車両の前後方向を誤認するおそれを防ぎ、自車および他車を含む車両の運転者および歩行者の安全性を向上させることができる。
【0052】
さらに、本実施形態の灯具ユニット200では、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが同一の基板13に搭載されているため、灯具ユニット200のさらなる小型化が可能となる。また、赤外光用光源12aと可視光用光源12bとが異なる基板に搭載された構成と比較して、基板の合計量を低減できるため、灯具ユニット200の製造コストを低減できる。
【0053】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、当業者の知識に基づいて各種の設計変更等の変形を加えることも可能であり、そのような変形が加えられた実施形態も本発明の範囲に含まれるものである。
【0054】
例えば、赤外光用光源12aおよび可視光用光源12bの配置が逆であってもよい。この場合、第1反射面20a、220aが可視光Vを反射するとともに赤外光IRを透過するものとなり、第2反射面20b、220bが赤外光IRを反射するものとなる。また、リフレクタ20、200は少なくとも赤外光IRが進行可能な部材で構成されたものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】実施形態1に係る灯具ユニットを備えた車両用灯具の概略垂直断面図である。
【図2】灯具ユニットの構成を説明するための概略垂直断面図である。
【図3】実施形態2に係る灯具ユニットの構成を説明するための概略垂直断面図である。
【符号の説明】
【0056】
A、A’ 第2焦点、 IR 赤外光、 M 混色光、 V 可視光、 1 車両用灯具、 2 灯具ボディ、 3 灯室、 4 透光カバー、 10、200 灯具ユニット、 12 光源モジュール、 12a 赤外光用光源、 12b 可視光用光源、 13 基板、 20、220 リフレクタ、 20a、220a 第1反射面、 20b、220b 第2反射面、 50 ブラケット、 52 光源搭載部、 54 取付部、 56 放熱フィン、 270 投影レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外光用光源と、
可視光用光源と、
第1表面に、前記赤外光用光源および前記可視光用光源のうちの一方の光源からの光を透過し、他方の光源からの光を反射する第1反射面が形成され、第2表面に、前記一方の光源からの光を反射する第2反射面が形成され、少なくとも一方の光源からの光が進行可能な部材で構成されたリフレクタと、
を備えたことを特徴とする灯具ユニット。
【請求項2】
前記灯具ユニットは、パラボラ型の灯具ユニットであり、
前記第1反射面および前記第2反射面は、前記赤外光用光源および前記可視光用光源を通って略前後方向に延びる光軸を中心軸とした略放物面状であり、
前記第1反射面の焦点近傍に前記一方の光源が配置され、前記第2反射面の焦点近傍に前記他方の光源が配置され、
前記第2反射面は、前記他方の光源が前記一方の光源から離間した方向および距離と同一の方向および距離だけ、前記第1反射面から離間していることを特徴とする請求項1に記載の灯具ユニット。
【請求項3】
前記灯具ユニットは、前記リフレクタからの反射光を前記リフレクタの前方に設けられた投影レンズを介して灯具前方へ照射するプロジェクタ型の灯具ユニットであり、
前記第1反射面および前記第2反射面は、少なくとも一部が略楕円面状であり、
前記第1反射面の第1焦点近傍に前記一方の光源が配置され、前記第2反射面の第1焦点近傍に前記他方の光源が配置され、前記第1反射面の第2焦点と前記第2反射面の第2焦点とが略同位置であることを特徴とする請求項1に記載の灯具ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−80342(P2010−80342A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−249022(P2008−249022)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】