説明

災害時の情報収集システム

【課題】 データ送信が困難な場合にその情報を保持し、確実に送信を完了することが可能なシステムが求められている。
【解決手段】 携帯電話端末は、現場で入力された現場情報を同携帯電話端末の記憶媒体に記憶させ、送信可能となった時点で情報サーバに送信することで確実に送信できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、位置情報に基づく電柱状況を管理するシステムに関し、特に大規模災害時等に通信が規制されている状況でも確実に電柱状況に関する情報を収集するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、台風や地震などの大規模災害時などには、電力設備などのライフラインに関する被害状況の把握を迅速に実施する必要があるため、巡視者(現場)は、例えば、携帯端末のカメラ機能およびGPS機能を利用して、現場情報(電柱等を含む現場の画像等)及び位置情報などの情報を短期間に大量に送信しなければならない。
しかし、かかる状況においては、通信制限が行われたり、停電などにより通信自体が困難になる場合が想定される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】マルティスープ(株)のMshot Location(R)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、携帯端末からの現場情報(電柱等を含む現場の画像等)及び位置情報などの情報を、確実に送信することが可能なシステムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、携帯端末により取得された現場情報を、一時、同携帯端末の記憶媒体に記憶させ、送信可能となったときに未送信現場情報データを情報サーバに自動送信することにより確実に送信することが可能なシステムを提供する。
【0006】
請求項2の発明は、前記自動送信がデータ収集ソフトとは別に用意されたデータ送信専用ソフトを用いて、記憶媒体に未送信データが残っている限り、未送信データの送信を試み続けるシステムを提供する。
【0007】
請求項3の発明は、現場情報が電柱に関するものの場合に、電柱の状況を現場で入力することも可能であるし、クライアントPCの操作者が画像データを閲覧して被害の状況を判断して補足入力することも可能であるシステムを提供する。
【発明の効果】
【0008】
大規模災害時には、携帯端末の通信網が混雑して輻輳したり、通信設備が損壊して通信が困難になる場合が考えられるが、送信を試みたが失敗した現場情報等の送信データを、一時的に携帯端末の記憶媒体に記憶させておき、送信可能となった時点で情報サーバに自動送信することにより、確実に現場情報等の送信データを送信することが可能になる。
【0009】
また、携帯端末の記憶媒体に現場情報等の未送信データが残っている限り、そのデータの送信を重ねて試み続けることにより、現場を離れた後でも、送信可能になったときに確実に自動送信される。
【0010】
さらに、災害により電柱がどのような被害を受けたかを判定するために、電柱の状況を現場で入力することも可能であるし、現場状況を撮影した画像を含む現場情報を情報サーバに送信後に、クライアントPCの操作者が画像データを閲覧して被害の状況を判断して補足入力することもできるので、データ入力に関して柔軟性を備える。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明のシステムの概略構成図である。
【図2】制御フローを示す図である。
【図3】管理データベースの図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は本発明のシステムの概略構成図である。現場情報を集める携帯端末10にはフラッシュメモリ等の記憶媒体を備え、現場情報を収集して情報サーバ30へ送信する専用のソフトウェアが記憶されている。各現場で携帯端末10のカメラ機能により撮影された現場状況の画像データ等の現場情報を、撮影と同時に携帯端末のGPS機能で取得された位置情報等と共にFOMA網等の基地局20aを介して情報サーバ30へ送信する。情報サーバ30には、記憶媒体40に記憶されたデータベースと連携して現場の状況管理を行う状況管理ソフトウェアが記憶されていて、このソフトウェアを用いて、携帯端末10から送られたデータを現場情報を管理する管理データベースに整理して情報サーバ30に接続された記憶媒体40に記憶し、同じく記憶媒体40に記憶された地図データと組み合わせて、クライアントPC50に記憶されたブラウザ等のソフトウェアでクライアントPCの操作者が閲覧でき、管理データベースを操作できる。クライアントPC50は情報サーバ30とLAN(Local Area Network)またはWAN(Wide Area Network)等の回線網を介して接続されている。
【0013】
図2は携帯端末10における操作の制御フロー図である。この制御フローは、携帯端末10を用いて、電柱等の現場の状況を撮影し、情報サーバ30に送信するものである。
【0014】
最初に、この制御フローでは、携帯端末から現場情報を送信するための「スタートボタン」が押されたか否かを判断する(S1)。この「スタートボタン」は、例えば携帯端末に付設された「*109」のボタンとする。
【0015】
前記のステップ(S1)において、「スタートボタン」が押されなかった場合にはこのフローを実行しない。「スタートボタン」が押された場合にはこのフローを実行し、「シャッターボタン」が押されたか否かを判断する(S2)。「シャッターボタン」が押された場合には、電柱等の現場状況を撮影した画像が取得されたので、その画像と共に携帯電話のGPS機能を用いて位置情報(x,y)を取得する(S3)。
【0016】
次に、撮影した画像が電柱に関するものである場合、その電柱の状況(正常、傾柱、倒壊)を入力するために、携帯端末の表示器に「1」:正常、「2」:傾柱「3」:倒壊の番号を入力する旨の表示をさせる。そしていずれかの番号が入力されると、図2(C)に示す送信データを記憶媒体に記憶する(S5)。
【0017】
図2(C)に示されるデータには、情報サーバ30に送信済みか否かを示す「送信済」欄、保存された画像ファイル名を示す「画像ファイル名」欄、携帯端末のGPS機能により取得されたその画像を取得した場所の位置情報を示す「位置情報」欄、および、電柱の状況を示す「状況」欄を設けている。
【0018】
例えば、図2(C)中において、1行目は既に情報サーバ30に送信済みの画像ファイル名(data001)、位置(x1,y1)、状況は「2」で示される傾柱である。2行目は情報サーバ30に未送信の画像ファイル名(data002)、位置(x2,y2)、状況は「3」で示される倒壊である。
【0019】
前記記憶媒体に保存された送信データを、この携帯端末から既知である情報サーバに送信し(S6)、送信が完了したら図2(C)で示されるデータの「送信済」欄に送信済みである旨を記載する。回線の輻輳、通信設備の損壊等で送信が不可能であった場合には、図2Cに示される「送信済」欄は未送信である旨を記載したままで、終了ボタンが押されたか否かを判断し、押されなかった場合にはステップS2に戻って、画像の撮影準備に入る。押された場合には現場情報収集のフローを終了する。終了ボタンが押されるまで情報収集と送信を行い、送信できたときにはその旨を送信データの「送信済」欄に記載する。なお、ステップS6の実行は、この段階で実行する必要はなく、後に説明するS9で実行されてもよい。
【0020】
次に、図2(B)は未送信データを送信するフローを示し、この制御ソフトは常時実行され、まず、携帯端末の記憶媒体に保存されている図2(C)に示されるデータに関して、まだ情報サーバ30へ未送信のデータが存在するか否かを判断する(S8)。未送信データが存在する場合には、情報サーバ30への送信を試みる(S9)。これを未送信データが全て送信完了するまで繰り返し、未送信データが無くなったと判断されると(S8)、このフローを終了する。なお、携帯端末に搭載された加速度センサにより一定以上の速度を検出したときに自動送信されてもよい。
【0021】
なお、このステップS8およびS9は、未送信データがある場合に、送信可能な状況になったときに送信するものであり、前記画像の取り込み後、情報サーバ30に送信するステップ(S6)を実行したときに、送信ができなかった場合に備えるものである。
【0022】
以上のように、携帯端末は、現場の状況を示す画像を取り込んで位置情報を取得しても、その場所で情報サーバ30に送信できないときに、常時送信を試みるソフトウェアを実行し、送信可能な状態になったとき情報サーバ30に自動送信するので、未送信のデータは順次情報サーバ30に確実に自動送信される。
【0023】
図3には、携帯端末10から情報サーバ30に送信されたデータを、情報サーバに記憶されたソフトウェアを用いて整理して入力され、記憶媒体40に記憶される管理データベースの例が示されている。この管理データベースには、「正常、傾柱、倒壊」等の電柱の状況を示す「備考」欄、電柱の識別番号を示す「電柱情報」欄、電柱の位置を示す「位置情報」欄、電柱の住所を示す「住所」欄、現場状況を撮影した画像ファイル名を示す「画像データ名」欄が設けられている。
【0024】
ここで、情報サーバ30が、携帯端末10から送信された位置情報(x,y)に該当する「管理データベース」に登録済みの「電柱」を検索する。そして、この電柱に対して「備考」欄に電柱の状況を示す「正常、傾柱、倒壊」のいずれかを記入し、画像ファイル名を「画像データ名」欄に記載する。
【0025】
以上の操作により、携帯端末10で収集した情報は、携帯端末10からの通信が画像取得時に不通であっても、場所を変える、時間経過を待つ等により送信可能になったときに順次情報サーバ30に送信され、この情報サーバ30により、順次電柱の状態などの現場情報がわかる「管理データベース」が作成される。
【0026】
なお、携帯端末において電柱の状況を示す「正常、傾柱、倒壊」のいずれかを入力する構成で説明してきたが、この入力を携帯端末では行わず、画像を情報サーバ30に送信し、情報サーバ30においてクライアントPCからブラウザ等の閲覧ソフトで前記画像を操作者が見て、電柱の状況を示す「正常、傾柱、倒壊」のいずれかを補足入力する構成であってもよい。
【0027】
また、本発明はソフトウェアにより実現されるので特に記載しなかったが、携帯電話及び情報サーバのRAMに読み込まれた専用ソフトウェアによりCPUが駆動されてネットワークのインタフェースを介して上記の処理がされることは言及するまでもない。
【符号の説明】
【0028】
10 携帯端末
20a 基地局
20b 基地局サーバ
30 情報サーバ
40 記憶媒体
50 クライアントPC


【特許請求の範囲】
【請求項1】
携帯電話のカメラ機能およびGPS機能を利用したアプリケーションを用いて、現場から画像および位置情報等の現場情報を送信し、情報サーバに同現場情報を蓄積すると共に巡視結果や被害状況を集計し、情報サーバに有線又は無線のネットワーク接続されたクライアントPCでその情報を把握できる管理システムであって、
前記携帯電話は、現場で取得された現場情報を同携帯電話の記憶媒体に記憶させ、送信可能になったときに情報サーバに自動送信するシステム。
【請求項2】
請求項1に記載のシステムであって、前記自動送信がデータ収集ソフトとは別に用意されたデータ送信専用ソフトを用いて、記憶媒体に未送信データが残っている限り、未送信データの送信を試み続けることを特徴とするシステム。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のシステムであって、電柱の状況を現場で入力することも可能であるし、クライアントPCの操作者が、現場から情報サーバに送信された画像データを閲覧して被害の状況を判断して補足入力することも可能であることを特徴とするシステム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−239445(P2010−239445A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85923(P2009−85923)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000213297)中部電力株式会社 (811)
【出願人】(501198084)ナカシャ クリエイテブ株式会社 (3)
【Fターム(参考)】