説明

炊飯器

【課題】被調理物である米と水の温度を高精度に検知して、炊飯性能を向上させた電磁誘導加熱式の炊飯器を提供する。
【解決手段】熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した被調理物を入れる鍋1と、前記鍋1を着脱自在に収納する保護枠5と、前記鍋1の外周囲に配置した加熱コイル6と、前記加熱コイル6に高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させるインバータと、前記鍋1の温度を検知する赤外線センサ8と、前記赤外線センサ8が検出した温度に基づき前記加熱コイル6による前記鍋の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサ8に赤外線を放射する前記鍋1の視野部1cは微細な突起を設けて外乱光を拡散するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理容器を誘導加熱する誘導加熱式の炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
誘導加熱式の炊飯器は、調理容器である鍋の周囲の外側に加熱コイルを配し、加熱コイルから発生させる高周波磁界を利用して鍋自体を誘導加熱するので、ヒータを用いて加熱する炊飯器に比べてふっくらとしたおいしいご飯が炊けることから、近年、普及が進んでいる。
【0003】
図5はこのような従来の誘導加熱式の炊飯器を示すもので、本体51の内部には鍋52が着脱自在に収納されている。
【0004】
鍋52は、ステンレス、鉄などの磁性体からなる発熱層と、アルミニウムなどの熱伝導率の良い材料からなる熱伝導層とのクラッド材によって形成されることが多い。
【0005】
保護枠53は、鍋52の収納部を構成するもので、非金属材料により有底円筒状に形成されており、その外周には鍋52を誘導加熱する加熱コイル54が配設されている。
【0006】
55は、鍋52の温度を測定する温度センサで、コンタクト55aと、圧縮コイルバネ55bと、センサケース55cで構成している。
【0007】
アルミニウム製のコンタクト55a内の上部に負特性サーミスタよりなる温度検知素子を嵌着し、前記コンタクト55aの上面が鍋52の外底面に圧接するように、圧縮コイルバネ55cにより常に上方に付勢されている。
【0008】
56は加熱コイル54へ高周波電力を供給し、鍋52の加熱量を制御する加熱制御部で、加熱コイル54に高周波電力を供給するために高電圧、大電流を発生させるスイッチング素子や、商用電源を整流する整流ブリッジ素子などのスイッチング素子を備えている。
【0009】
そのスイッチング素子等で発生する損失熱を冷却ファン57で冷却するようにしている。また、鍋内の調理物である米と水の温度を温度センサへより良く伝導させるために、温度センサ当接部のみ鍋の肉厚を局所的に薄くしたり、発熱層を取り去り熱伝導層を露出させる方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0010】
また、鍋と温度センサの間に米粒などの異物が挟まって、両者が正しく当接しなくなることで、正しい温度検出が行われなくなることを防止するために、鍋から放射される赤外線を検出する赤外線センサで、非接触で鍋の温度を検出する炊飯器も考案されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【0011】
図6は、従来の炊飯器の赤外線センサを示すもので、着脱自在な鍋61を加熱するヒータ62の中央に通孔63と、温度検出装置64が配置されている。
【0012】
温度検出装置64は、支持金具65によって上下方向に進退自在に支持された遮蔽筒体66と、その下方に配置された赤外線センサ67及びリミットスイッチ68を備えている。赤外線センサ67には赤外線取り込み用の窓69が設けられている。
【0013】
ヒータ62に鍋61が載置されて、遮蔽筒体66が下降すると、アーム70により押釦
71が押圧されて、リミットスイッチ68の接点が閉じられ、赤外線センサ67による鍋61の温度測定が開始される。
【0014】
そして、上記赤外線センサ67の出力値に応じてヒータ62への供給電力が調節され、炊飯のための温度制御が行われる。
【特許文献1】実公平3−76516号公報
【特許文献2】特開2005−304709号公報
【特許文献3】特公平5−75407号公報
【特許文献4】特開平9−154715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記従来の圧縮コイルバネで付勢する温度センサでは、可動部を有しているため、まれに異物が筒体と通孔との間にかみ込むとリミットスイッチが閉じず、温度測定が開始されなかったり、あるいは、ヒータと鍋の間に隙間があき、ヒータの熱が正常に鍋に伝導されない可能性があった。
【0016】
他方、鍋の発熱層からの輻射熱を受熱する受熱板の裏側で、受熱板の温度を検出することにより、間接的に鍋の温度を検出する輻射式温度センサでは、従来の接触式の温度センサと検知応答性に格段の優劣差があるものではなかった。
【0017】
また、本体下部などから侵入してくる外乱光(太陽光、オーブントースタ等のヒータ機器が発する遠赤外線など)が偶発ノイズとして、鍋の発熱層からの輻射熱に加算されるため検知精度がばらつくというという課題もあった。
【0018】
本発明はこのような従来の課題を解消したもので、高精度で早い応答性を有し、炊飯性能及び保温性能を大幅に向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の炊飯器は、被調理物を入れる熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋の外周囲に配置した加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させるインバータと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は微細な突起を設けて、外乱光を拡散するようにしているものである。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、高精度で早い応答性を有し、外乱光の影響も受けない鍋温度の測定ができるため、炊飯性能及び保温性能を大幅に向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
第1の発明は、被調理物を入れる熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋の外周囲に配置した加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させるインバータと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は微細な突起を設けて、外乱光を拡散するようにした炊飯器としている。
【0022】
第2の発明は、被調理物を入れる熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋の外周囲に配置した加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させるインバータと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は鍛造加工によりフレネルレンズを形成して、赤外線を集光することにより、外乱光とのS/N比を上げてその影響を低減ようにした炊飯器としている。
【0023】
第3の発明は、特に、第2の発明において、赤外線透過材をメッキ加工してフレネルレンズを形成することにより、より安価に製造できる炊飯器としている。
【0024】
第4の発明は、特に、第2の発明において、赤外線非透過材をメッキ加工してフレネルレンズを形成することにより、より安価に製造できる炊飯器としている。
【0025】
第5の発明は、特に、第2の発明において、赤外線放射材をメッキ加工してフレネルレンズを形成することにより、より安価に製造できる炊飯器としている。
【0026】
第6の発明は、特に、第2の発明において、赤外線透過材を印刷加工してフレネルレンズを形成することにより、より安価に製造できる炊飯器としている。
【0027】
第7の発明は、特に、第2の発明において、赤外線非透過材を印刷加工してフレネルレンズを形成することにより、より安価に製造できる炊飯器としている。
【0028】
第8の発明は、特に、第2の発明において、赤外線放射材を印刷加工してフレネルレンズを形成することにより、より安価に製造できる炊飯器としている。
【0029】
第9の発明は、特に、第1〜8のいずれか1つの発明において、鍋の視野部を除いた底面及び外周部と、保護枠の鍋と対向する面とには赤外線反射材料をそれぞれコーティングするとともに、前記視野部は鍋の発熱層の段差がなくなるように赤外線透過材料を均一に埋設したことにより、鍋の視野部から放射される赤外線を効率良く赤外線センサへ導くとともに、外乱光による誤差を低減するようにした炊飯器としている。
【0030】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0031】
(実施の形態1)
図1,2は、本発明の実施の形態1を示し、アルミニウムなどの熱伝導率の良い材料からなる熱伝導層1aに、磁性金属材料からなるフェライト系ステンレス鋼板の発熱層1bを圧接加工により張り合わせた、いわゆるクラッド材を型鍛造して鍋状に形成した鍋1と、この鍋1を着脱自在に収納する上面が開口した本体2と、開閉自在に本体2を覆う蓋3と、蓋3の開閉状態を検知する蓋開閉検知手段4と、鍋1の収納部を構成する保護枠5と、鍋1の外周囲に配置した加熱コイル6と、この加熱コイル6に高周波電流を流して鍋1を電磁誘導作用により発熱させるインバータ7を備えている。
【0032】
また、本体2の下方部には鍋底から放射される赤外線量を保護枠5の検知窓5aを通して検出し、その温度を測定する赤外線センサ8が、本体2の前上方部には操作キーと表示素子を有する制御基板9がそれぞれ配置してある。
【0033】
本体2下面には、インバータ7内の発熱素子や、加熱コイル6を冷却する外気を取り入れる冷却孔10が形成してある。
【0034】
制御基板9上には炊飯行程を記憶させたマイクロコンピュータを実装し、赤外線センサ8が測定した鍋1の底面温度と、操作キー入力に基づきインバータ7へ制御出力を出力して、加熱コイル6による鍋10の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する。
【0035】
ここで、赤外線センサ8に赤外線を放射する鍋1中央底面の視野部は、型鍛造前に発熱層となるステンレス鋼板を打ち抜き加工してクラッド材とする、あるいは鍛造時にエンボシング加工により微少なくぼみや突起を形成することにより、冷却孔10や、本体2の下面を透過してくる外乱光を乱反射させて拡散し、赤外線センサ8への影響を低減させている。
【0036】
図2において、赤外線センサ8は、防水機能を備えた光学フィルター8aと、鏡筒8bと、赤外線検出素子を収納したセンサケース8cと、取付足8dと、リード線8eで構成している。
【0037】
なお、インバータ7は、加熱コイル6に周波数20〜30kHz程度あるいは50kHz以上の高周波電流を供給しており、例えば一石式のインバータ回路で良い。
【0038】
以上のように構成された炊飯器について、以下その動作、作用を説明する。
【0039】
米とその米量に対応する水を鍋1に入れて本体2内の保護枠5に収納し、蓋3を閉じる。操作部の炊飯キー(図示せず)を使用者が操作すると、制御基板9上のマイクロコンピュータが、このキー入力を受け、炊飯工程の実行を開始する。
【0040】
マイクロコンピュータ内のROMには、浸水、炊き上げ、蒸らし、保温の各工程における鍋1内部の水と米の調節温度の目標値と加熱時間が記憶されている。
【0041】
この温度目標値と加熱時間、及び、赤外線センサ8の出力する鍋1の視野部の検知温度に基づき、制御基板7を駆動する。
【0042】
温度目標値より検知温度が低い時は、制御基板7より加熱コイル6へ高周波電流が供給されることにより高周波磁界が発生し、鍋1の発熱層1bを通過して渦電流が流れる。
【0043】
この渦電流と発熱層1bの表皮電気抵抗値によるジュール熱で、発熱層1bが誘導加熱されて発熱し、その熱が熱伝導層1aを通して被調理物である米と水へ均一に伝導されることで、効率よく加熱調理される。
【0044】
炊飯中の鍋1の視野部1cはエンボシングにより微細な突起を設けてあるため、外乱光の影響を受けにくく、その検知温度は炊飯初期は内容物である米を含んだ水温に依存することになり、一般的には−5℃〜30℃である。
【0045】
また、炊き上げ行程では約134℃〜145℃で炊飯終了を検知して加熱が停止されるので、その間の最高温度は約150℃である。
【0046】
保温行程では約70℃〜73℃に温度調節される。従って、鍋1底面の温度範囲は−5℃〜150℃となるため、その視野部1cから放射される赤外線の波長はウィーンの変位則及びシュテファン・ボルツマン則より、赤外線の放射エネルギー強度は約2μm以上の遠赤外線領域となる。
【0047】
本実施の形態においては、水薄膜の吸収波長帯域の影響を避けるため、約3.3μm〜7μmの波長の赤外線のみを透過させる光学フィルター8aを装着している。
【0048】
ステファン=ボルツマン(Stefan−Boltzmann)の法則によれば、この光学フィルター8aを透過した赤外線をセンサケース8cに収納した赤外線検出素子で検出した赤外線エネルギー値も、鍋1の視野部1cの表面温度の4乗に比例する。
【0049】
従って、赤外線検出素子で検知した赤外線エネルギー値から、鍋1の視野部1cの表面温度を算出することが可能となる。
【0050】
なお、水(厚膜)では約1.9μmと約2.9μmに−OH基の吸収が現れる。さらに、約7ミクロン以上では、水の分子が共振し選択的に強く吸収されるので、膜厚の厚い水滴が光学フィルター8aへ付着した場合、赤外線センサ8へ届く前に、鍋の視野部から放射される赤外線の殆どが吸収されてしまう。
【0051】
他方、視野部1cへ付着した膜厚の厚い水滴は、その波長域での水の放射率が約0.93と高いため、対流・伝導による遅延が生じるが、鍋1の加熱が進むにつれて乾燥して消失するので影響は少ない。
【0052】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線センサ8に赤外線を放射する鍋1の視野部1cは、微細な突起を設けて外乱光を拡散するようにしているので、鍋1内に入れた米と水の温度の温度変化を正確に検出することができる。
【0053】
従って、鍋1の内容物の温度を制御基板7により、約0℃〜150℃まで高精度に温度検知して、加熱調理することにより、良食味のご飯を得ることができる。
【0054】
なお、赤外線エネルギー値と鍋60の視野部1cの表面温度との相関を記述したテーブルデータを、マイクロコンピュータ内のROMに記憶させておき、このテーブルデータを参照する方法で、鍋1の視野部1cの表面温度を求めても良い。
【0055】
また、赤外線検出素子は約3μm〜4.3μmの帯域で感度を持つサーモパイルや、サーミスタ・ボロメータ(一対のサーミスタ素子の片方にのみ赤外線が受光される構成とした簡易型も含む)、焦電素子、あるいは、InSb、HgCdTe、PbS等の半導体化合物による光検出器が適している。
【0056】
なお、鏡筒8bは赤外線検出素子の視野を絞り込み、鍋1の視野部1cとの距離を確保するために用いているが、炊飯行程中の赤外線検出素子の温度がその素子の耐熱温度以内であれば、敢えて使用する必要はない。
【0057】
また、取付足8dは本体2への固定機能以外に、冷却ファンの振動や、誘導加熱される鍋1の振動、加熱コイル6の低周波のうなり振動が赤外線検出素子へ伝達されないように防振する機能をも併せて有するものである。
【0058】
なお、加熱コイル6は保護枠5に固定されていても、一体に埋め込まれていても良いものである。
【0059】
(実施の形態2)
図3は、実施の形態2を示すもので、図3と同作用をおこなう構成部分には同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0060】
図3において、鍋1の視野部1cは型鍛造時にフレネルレンズを形成している。
【0061】
フレネルレンズは、屈折面が連続した球面ではなく、階段状に屈折角の異なったプリズムが同心円状に形成されているもので、赤外線光は、各屈折面で屈折され焦点に向かうため球面レンズと同様な効果を得ることができる。屈折面が非連続であることから、各面の角度は自由に設定できる。
【0062】
従って、球面収差などを補正して、明るい(F/¢=0.6など)、効率のよい短焦点レンズとすることも可能である。このレンズの最大の特徴は、板状であることであり、2mm程度の薄さとすることが可能である。
【0063】
この視野部1cに形成したフレネルレンズで放射面でする赤外線を集光することにより、本体1下部から侵入する太陽光や調理用の熱機器が発生する遠赤外線などの外乱光による影響を低減している。
【0064】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線を放射する鍋1の視野部1cは型鍛造によるフレネルレンズを形成して、放射面で赤外線の放射方向を赤外線センサ8の方向へ集束しているので、外乱光とのS/N比が向上し、鍋1内に入れた米と水の温度の温度変化を正確に検出することができる。
【0065】
従って、鍋1の内容物の温度を制御基板7により約0℃〜150℃まで高精度に温度検知して加熱調理することにより、良食味のご飯を得ることができる。
【0066】
なお、フレネルレンズはメッキ加工、あるいは印刷加工により形成することも可能である。
【0067】
その場合、赤外線透過材、赤外線非透過材、赤外線放射材の何れかをメッキ、あるいは印刷加工することで、階段状に屈折角の異なったプリズムを構成すれば良い。
【0068】
また、その材料は200℃超での使用に耐える材料なら良く、フッ素樹脂系材料やセラミック系材料がある。
【0069】
また、セラミックスのナノ多孔体構造およびセラミックス・ポリマー複合化構造等からなるマルチセラミックス膜新断熱材料を用いれば、コストはやや上がるが熱を伝える三要素(格子振動、対流、輻射)のいずれも抑えることができる。
【0070】
(実施の形態3)
図4は、本発明の実施の形態3を示すもので、図2と同作用をおこなう構成部分には同一符号を付し、その具体的説明は実施の形態1のものを援用する。
【0071】
すなわち、本実施の形態にあっては、鍋1の視野部1cには微細な突起もしくはフレネルレンズ1dが形成してある。
【0072】
そして、この視野部1cの微細な突起もしくはフレネルレンズ1dと、鍋1の発熱層1bとの段差をなくすために均一に赤外線透過材料1eが埋められている。
【0073】
1fは鍋1の視野部1cを除いた底面及び外周部にコーティングした赤外線反射材料、5bは保護枠5の鍋1と対向する面にコーティングした赤外線反射材料である。
【0074】
以上のように、本実施の形態においては、赤外線を放射する鍋1の視野部1cは微細な突起もしくはフレネルレンズ1dが形成されており、赤外線センサ8の受光面へ向けて放射線束8fを集光することができる。
【0075】
さらに、鍋1の視野部1cを除いた底面及び外周部と、保護枠5の鍋1と対向する面には赤外線反射材料1fをコーティングしているので、これらの面からの赤外線放射が抑制される。
【0076】
従って、鍋1内に入れた米と水の温度の温度変化を正確に検出することができ、良食味のご飯を得ることができる。
【0077】
また、赤外線透過材料1eで均一に埋めることにより、鍋1の視野部1cの微細な突起もしくはフレネルレンズ1dを保護することが可能となる。
【0078】
なお、赤外線透過材料1eとしては、溶融石英ガラス、MgF2(フッ化マグネシウム)、LiF(フッ化リチウム)などが使用できる。
【0079】
また、赤外線反射材料1f、5bとしては、セラミック(Si系)、マグネシウム合金などが使用できる。
【0080】
また、鍋1の視野部1cを除いた底面及び外周部については、鏡面仕上げ加工により低放射率としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、機器の設置性、使い勝手、価格を維持しつつ、鍋底面の温度を高精度に検知することができるので、誘導加熱式以外のヒータ式、ガス燃焼式、温風、高温蒸気式の炊飯器の用途にも適用できる。また、業務用炊飯器や炊飯器以外の調理器等の用途にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本発明の実施の形態1を示す炊飯器の全体断面図
【図2】同炊飯器の要部拡大断面図
【図3】本発明の実施の形態2を示す炊飯器の要部拡大断面図
【図4】本発明の実施の形態3を示す炊飯器の要部拡大断面図
【図5】従来の炊飯器の全体断面図
【図6】他の従来例を示す炊飯器の要部拡大断面図
【符号の説明】
【0083】
1 鍋
1c 視野部
1d フレネルレンズ
1e 赤外線透過材料
1f、5b 赤外線反射材料
3 蓋
5 保護枠
6 加熱コイル
8 赤外線センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した被調理物を入れる鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋の外周囲に配置した加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させるインバータと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は微細な突起を設けて外乱光を拡散するようにした炊飯器。
【請求項2】
熱伝導率の高い材料と磁性材料とを有するクラッド材で形成した被調理物を入れる鍋と、前記鍋を着脱自在に収納する保護枠と、前記鍋の開口部を覆う蓋と、前記鍋の外周囲に配置した加熱コイルと、前記加熱コイルに高周波電流を流して前記鍋を電磁誘導作用により発熱させるインバータと、前記鍋の温度を検知する赤外線センサと、前記赤外線センサが検出した温度に基づき前記加熱コイルによる前記鍋の加熱量及び一連の炊飯行程を制御する制御手段とを備え、前記赤外線センサに赤外線を放射する前記鍋の視野部は鍛造加工によりフレネルレンズを形成して赤外線を集光するとした炊飯器。
【請求項3】
赤外線透過材をメッキ加工してフレネルレンズを形成した請求項2に記載の炊飯器。
【請求項4】
赤外線非透過材をメッキ加工してフレネルレンズを形成した請求項2に記載の炊飯器。
【請求項5】
赤外線放射材をメッキ加工してフレネルレンズを形成した請求項2に記載の炊飯器。
【請求項6】
赤外線透過材を印刷加工してフレネルレンズを形成した請求項2に記載の炊飯器。
【請求項7】
赤外線非透過材を印刷加工してフレネルレンズを形成した請求項2に記載の炊飯器。
【請求項8】
赤外線放射材を印刷加工してフレネルレンズを形成した請求項2に記載の炊飯器。
【請求項9】
鍋の視野部を除いた底面及び外周部と、保護枠の鍋と対向する面とには赤外線反射材料をそれぞれコーティングするとともに、前記視野部は鍋の発熱層の段差がなくなるように赤外線透過材料を均一に埋設した請求項1〜8いずれか1項に記載の炊飯器。

【図6】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−136796(P2010−136796A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314044(P2008−314044)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】