説明

炊飯器

【課題】内鍋内の雑菌の繁殖を抑えて、腐敗臭の発生を防止できる炊飯器を提供する。
【解決手段】本体1の上部に開閉自在に取り付けた蓋体2に、イオン発生器24とシャッター25とを設ける。この炊飯器は、本体1内に取り出し可能に収納される内鍋10と、内鍋10の温度を検出する温度センサ34,35と、内鍋10を加熱する加熱部31,32,33とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、炊飯器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、炊飯器としては、特開平10−155652号公報(特許文献1)に記載されたものがある。
【0003】
この炊飯器では、設定された時間の経過後に炊飯を自動的に開始する予約炊飯手段と、ご飯を保温する保温手段とを備えて、予約炊飯や保温を可能としている。
【0004】
ところで、近年、独身者等では、予約炊飯の時間が長時間(1日を越える)にわたる場合があり、また、予定していた帰宅時間が突然の出張命令等によって計画変更される場合がある。
【0005】
その場合、従来予想だにしていなかった程に予約時間と保温時間が長くなることで内鍋内に雑菌が繁殖していまい、雑菌の繁殖による腐敗が進行すると共に腐敗臭が発生して、内鍋内のご飯(調理物)を食べることができなくなる問題がある。本発明者は、このような新規な問題を発見したのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−155652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、この発明の課題は、内鍋内の雑菌の繁殖を抑えて、腐敗臭の発生を防止できる炊飯器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、この発明の炊飯器は、
本体と、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記本体の上部開口を閉じることができる蓋体と、
上記本体内に取り出し可能に収納される内鍋と、
上記内鍋の温度を検出する温度センサと、
上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記内鍋内にイオンを放出するイオン発生器と
を備えたことを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、イオン発生器から内鍋内にイオンが放出される。このイオン発生器から放出されたイオンによって、内鍋内の雑菌が分解,除去されるので、内鍋内の雑菌の繁殖を抑えることができる。
【0010】
また、一実施形態の炊飯器では、浸水工程中または保温工程中に、上記イオン発生器を作動させている。
【0011】
上記実施形態によれば、浸水工程中と保温工程中に、上記イオン発生器が作動させられ、イオン発生器から内鍋内にイオンが放出される。このイオン発生器から放出されたイオンによって、内鍋内の雑菌が分解,除去されるので、浸水工程中および保温工程中において、内鍋内の雑菌の繁殖が抑えられる。したがって、浸水工程中および保温工程中に雑菌の繁殖が原因の腐敗臭が発生することがなく、また、長時間の浸水工程,保温工程を衛生面において安全に行うことができる。
【0012】
また、一実施形態の炊飯器では、発芽玄米を作成するための発芽工程時に上記イオン発生器を作動させる発芽玄米制御部と、炊飯工程時に上記加熱部を上記内鍋の温度が目標温度になるように制御する炊飯制御部とを有する制御装置を備えている。
【0013】
上記実施形態によれば、発芽工程時には、上記イオン発生器が発芽玄米制御部によって作動させられ、イオン発生器から内鍋内にイオンが放出される。このイオン発生器から放出されたイオンによって、内鍋内の雑菌が分解,除去される。
【0014】
発芽玄米を作る際、従来の炊飯器においては、内鍋内の28〜34℃の水に、玄米を3〜6時間浸けて発芽が行われ、この発芽工程中に発生する腐敗臭を、開閉弁から室内に排出していた。このため、従来の炊飯器では、発芽工程特有の腐敗臭を開閉弁から室内に排出しているため、室内(台所)が耐え難い悪臭に満たされる場合があったのである。
【0015】
また、この実施形態によれば、イオン発生器から放出されたイオンによって、内鍋内の雑菌が分解,除去されるので、腐敗臭が発生することがなく、発芽工程中に内鍋内の水を取り替える必要がなくなる。したがって、玄米の発芽と炊飯とを水を入れ換えることなく行うことが可能である。
【0016】
従来の炊飯器には、発芽工程において、3〜6時間で玄米を発芽させることが可能であると謳ったものがあるが、全ての玄米について発芽を完了させるには、実際には、1日程かかる場合がある。そのため、玄米の発芽時に発生する灰汁の腐敗臭(雑菌の繁殖による)を除去するために、約2〜3時間おきに水の入れ換えが必要であり、従来の炊飯器では、玄米の発芽と炊飯とを人の手を煩わせないで、全て自動で連続して行うことが実際にはできないのである。
【0017】
また、一実施形態の炊飯器では、上記発芽玄米制御部は、上記発芽工程において、上記温度センサの出力に基づいて、上記内鍋の温度が発芽設定温度になるように上記加熱部を制御する。
【0018】
上記実施形態によれば、発芽玄米制御部によって、発芽工程中の内鍋の温度が発芽設定温度になるように加熱部を制御するので、内鍋内の玄米を迅速かつ完全に発芽させる発芽設定温度に内鍋内の温度を保つことができる。
【0019】
また、一実施形態の炊飯器では、上記イオン発生器の出口と上記内鍋内との間を開閉する開閉装置を備えている。
【0020】
上記実施形態によれば、開閉装置によってイオン発生器と内鍋内との間を開閉することができるので、イオンを放出するときには、開閉装置によってイオン発生器と内鍋内との間を開けて、イオンを内鍋内に放出することができる。また、イオンを放出しないときには、開閉装置によってイオン発生器と内鍋内との間を遮って、湯気等がイオン発生器に行かないようにして、イオン発生器の耐久性を増すことができる。
【0021】
また、一実施形態の炊飯器では、上記イオン発生器の出口と上記内鍋内との間を開閉する開閉装置を備え、
上記発芽玄米制御部は、上記発芽工程時に上記開閉装置を開放または開閉するように制御している。
【0022】
上記実施形態によれば、発芽玄米制御部は、発芽工程時にイオン発生器と開閉装置を制御して、イオン発生器と開閉装置とを連動して作動させることができるので、イオンを発生したときのみ開閉装置を開けて、内鍋内にイオンを放出することができ、かつ、イオン発生器がイオンを発生しないときは、開閉装置を閉めて、炊飯工程時に湯気等の水蒸気にさらされないようにできる。
【0023】
また、一実施形態の炊飯器では、上記制御装置は、上記発芽工程と上記炊飯工程とが順次連続して行われるように、上記発芽玄米制御部と上記炊飯制御部とを順次連続して作動させる連続制御部を有する。
【0024】
上記実施形態によれば、上記イオン発生器の存在によって、玄米を発芽させるときに内鍋内の水を換える必要が無いことと、上記連続制御部が、発芽玄米制御部と炊飯制御部とを順次作動させることによって、発芽工程と炊飯工程を人の手を煩わせないで連続して行うことが可能で、発芽工程から炊飯工程までを連続して自動で行うことができる。
【0025】
また、一実施形態の炊飯器では、上記イオン発生器は、H(HO)(mは任意の自然数)である正イオンと、O(HO)(nは任意の自然数)である負イオンとを放出する。
【0026】
上記実施形態によれば、イオン発生器から、プラズマクラスターイオン(登録商標第4687401号)すなわち、H(HO)(mは任意の自然数)である正イオンと、O(HO)(nは任意の自然数)である負イオンが放出される。これらの正イオンと負イオンが同時に発生したときに生成される活性種は、内鍋内の雑菌を効果的に除去することができるので、発芽工程において、玄米の発芽時に発生する腐敗臭を略完全に除去することができる。
【0027】
また、一実施の形態では、上記イオン発生器は、上記蓋体に設けられている。
【0028】
上記実施形態によれば、上記イオン発生器が蓋体に設けられているので、イオン発生器からのイオンを内鍋に邪魔されることなく最短距離で内鍋内に放出することができる。
【発明の効果】
【0029】
以上より明らかなように、この発明の炊飯器によれば、内鍋内にイオンを放出するイオン発生器を備えるので、内鍋内の雑菌の繁殖を抑えて、腐敗臭の発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、この発明の一実施形態の炊飯器の斜視図である。
【図2】図2は、上記炊飯器の蓋体を開いた状態の斜視図である。
【図3】図3は、図1のIII−III線からみた炊飯器の縦端面図である。
【図4】図4は、上記炊飯器の制御ブロック図である。
【図5】図5は、上記炊飯器のフローチャートである。
【図6】図6は、上記炊飯器の官能試験データである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、この発明の炊飯器を図示の実施形態により詳細に説明する。
【0032】
この実施形態の炊飯器は、図1に示すように、本体1と、この本体1の上部に開閉自在に取り付けた蓋体2とを備えている。上記本体1には、前面側に設けた表示操作部3と、前面かつ上側に設けたフックボタン4と、後面側に回動自在に取り付けた本体ハンドル5と、後面側かつ下側に接続した電源コード6とを有している。上記表示操作部3は、液晶ディスプレイと複数の操作ボタンを有している。上記蓋体2は、本体1に設けているラッチ機構(図示せず)に解除可能に係止した状態で閉じている。また、上記蓋体2の後面側に蒸気口2aを設けている。
【0033】
図2は、上記炊飯器の蓋体2を開いた状態の斜視図である。
【0034】
上記蓋体2は、図2に示すように、外蓋21および内蓋22を有している。この蓋体2は、本体1の上側かつ後面側に取り付けていて、ヒンジ軸(図示せず)を中心に回動自在である。
【0035】
また、上記本体1内には、内鍋10を取り出し可能に収容している。この内鍋10は、被加熱物(米や水等)を収容する。上記内鍋10の上端は開口しており、この開口の上面視の形状は略円形となっている。また、内鍋10の上端の開口の縁には環状のフランジ部10aを設けている。そして、内鍋10のフランジ部10aには、径方向において互いに対向するように耐熱樹脂製の内鍋把手11,11を取り付けている。
【0036】
また、上記本体1の上面の2箇所には、それぞれ、互いに対向するように凹部12a(図2では1つだけ示す)を設けている。この凹部12a,12aに上記内鍋10の内鍋把手11,11を嵌合することで、本体1に対する内鍋10の位置を決めている。
【0037】
図3は、図1のIII−III線からみた炊飯器の縦端面図である。
【0038】
上記本体1は、図3に示すように、外ケース12と、この外ケース12内に配置され、内鍋10が収納される内ケース13とを有する。この内ケース13は、耐熱性と電気絶縁性を有する材料で形成している。
【0039】
また、上記内鍋10は、平面視略円形状で、フランジ部10aと胴体部10bとを有している。上記胴体部10bは、上記フランジ部10aの内周縁部から鉛直下方に延びて、この鉛直部分の下端から中央に向かって傾斜し、環状の底に連なっている。
【0040】
上記本体1の内ケース13の下側には、内鍋10を誘導加熱するための誘導コイル31を配置している。この誘導コイル31は、耐熱性を有する樹脂などにより内ケース13に接着している。さらに、誘導コイル31の下側に、誘導コイル31の漏れ磁束を防止するフェライト部材39などを配置している。なお、上記炊飯器では、加熱源として誘導コイル31を用いているが、加熱源は、例えば、電熱ヒータやガス火でもよい。
【0041】
また、上記内ケース13の下側には、底温度センサ34(図4に示す)を配置している。この底温度センサ34は、内ケース13に収納した内鍋10に当接して、内鍋10の温度を検出する。
【0042】
また、上記本体1内には、側面ヒータ32を配置している。この側面ヒータ32は、内ケース13の上側の側部を囲むように周方向に沿って設けている。
【0043】
上記内ケース13に内鍋10を収納したときに、内ケース13の上端面に取り付けた環状の耐熱ゴム製の下パッキン26が内鍋10のフランジ部10aの下面に接離可能に密着して、内鍋10と内ケース13との間をシールしている。
【0044】
上記蓋体2は、本体1に回動自在に支持された外蓋21と、この外蓋21の内鍋10に対向する側に取り付けられた内蓋22とを有している。
【0045】
上記内蓋22は、平面視において、上記内鍋10のフランジ部10aを含めた外形寸法よりもやや小さい略円形状である。この内蓋22の外周には環状の耐熱ゴム製の上パッキン23を着脱自在に取り付けている。蓋体2を閉じたときに、上パッキン23は、内鍋10のフランジ部10aの上面に接離可能に密着して、内鍋10と内蓋22との間をシールしている。
【0046】
上記蓋体2内の外蓋21内の左面側(図3の左側)には、イオン発生器24と、断面略矩形状のイオン収容室28とを設けている。上記イオン発生器24は、イオンを放出する放出口のある端部が、イオン収容室28の左側面を貫通した状態で取り付けている。また、上記イオン収容室28内と内鍋10内とに連通しているイオン供給口20が、イオン収容室28の下面に開口している。さらに、イオン供給口20を開閉する開閉装置の一例のシャッター25をイオン収容室28内に設けている。このシャッター25は、イオン収容室28の右側面の下部に取り付けている。
【0047】
上記イオン発生器24は、プラズマクラスター(登録商標第4582023号)であり(特許第3680121号)、H(HO)(mは任意の自然数)である正イオンと、O(HO)(nは任意の自然数)である負イオンとを放出している。これらのイオン(プラズマクラスターイオンという)は、空気中の浮遊細菌の表面に付着し、化学反応して活性種であるHまたは・OH(水酸基ラジカル)を生成する。Hまたは・OHは、極めて強力な活性を示すため、空気中の浮遊細菌であるカビや雑菌を取り囲んで不活化、除去することができる。以下、プラズマクラスターイオンを、単にイオンという。
【0048】
上記イオン発生器24から放出されたイオンは、まず、イオン収容室28内に放出される。そして、シャッター25を開くことで、イオン供給口20が開放されて、イオン収容室28内と内鍋10内とが連通して、このイオン供給口20から内鍋10内にイオンが放出される。
【0049】
上記イオン発生器24は、蓋体2に設けられているので、イオン発生器24からのイオンを内鍋10に邪魔されることなく最短距離で内鍋10内に放出することができる。
【0050】
また、上記蓋体2内には、蓋ヒータ33と蓋温度センサ35(図4に示す)とを配置している。蓋ヒータ33は、内蓋22に当接するように外蓋21の内鍋10に対向する側に設けている。
【0051】
図4は、上記炊飯器の制御ブロック図である。
【0052】
上記本体1内に配置した制御装置30は、マイクロコンピュータと入出力回路等からなり、図4に示すように、表示操作部3からの操作信号や浸水制御部36,発芽玄米制御部37,炊飯制御部38,連続制御部41,保温制御部42からの制御信号,あるいは、底温度センサ34,蓋温度センサ35からの信号等に基づいて、表示操作部3,浸水制御部36,発芽玄米制御部37,炊飯制御部38,連続制御部41,保温制御部42,誘導コイル31,側面ヒータ32,ヒータダクト16,蓋ヒータ33,イオン発生器24,シャッター25を制御する。
【0053】
上記構成の炊飯器において、浸水工程時には、上記浸水制御部36によってイオン発生器24とシャッター25が制御される。浸水工程とは、内鍋10内において、炊飯前に米を水に浸している段階をいい、玄米を水に浸して発芽させる発芽工程は含まない。
【0054】
上記シャッター25が開くことにより、イオン供給口20が開放される。このイオン供給口20から内鍋10内に、イオン発生器24から放出されたイオンが内鍋10内に放出される。このとき、イオン発生器24から放出されるイオンの放出割合は、ユーザによって表示操作部3の操作パネルで自由に設定可能である。
【0055】
上記イオン発生器24から放出されたイオンによって、内鍋10内の雑菌が分解,除去されるので、浸水工程時において、内鍋10内の雑菌の繁殖が抑えられる。したがって、浸水工程中に雑菌の繁殖が原因の腐敗臭が発生することがなく、また、長時間の浸水工程を衛生面において安全に行うことができる。特に、気温が高くなり、雑菌が繁殖しやすくなる夏場においても、長時間の浸水工程を衛生面において安全に行うことができる。また、炊き込みご飯など、内鍋10内に米だけでなく種々の具材を混ぜて炊飯する場合も同様に、浸水工程中に雑菌の繁殖が原因の腐敗臭が発生することがなく、長時間の浸水工程を衛生面において安全に行うことができる。
【0056】
また、保温工程時には、上記保温制御部42によって、イオン発生器24とシャッター25と側面ヒータ32および蓋ヒータ33とが制御される。
【0057】
上記シャッター25が開けられることで、イオン供給口20が開放される。このイオン供給口20から内鍋10内に、イオン発生器24から放出されたイオンが放出されると共に、内鍋10が保温設定温度になるように、側面ヒータ32と蓋ヒータ33とで内鍋10が加熱される。このとき、イオン発生器24から放出されるイオンの放出割合および保温設定温度は、ユーザによって表示操作部3の操作パネルで自由に設定可能である。
【0058】
なお、保温工程中は、イオン放出に必要なときだけシャッター25を開けるようにするのが好ましい。保温中のご飯の湯気等がイオン発生器24に行かないようにして、イオン発生器24の耐久性を増すことができる。
【0059】
上記保温工程時は、イオン発生器24からイオンを放出して雑菌を分解,除去すると共に、側面ヒータ32と蓋ヒータ33とで内鍋10の温度を70〜75℃に上昇させて、雑菌の繁殖を防いでいる。したがって、ご飯の腐敗進行を抑え、食味の良いご飯を長時間維持できる。そのため、腐敗進行の速い炊き込みご飯の長時間の保温も可能である。
【0060】
図5は、上記炊飯器のフローチャートである。この発明の上記構成の炊飯器における発芽工程と炊飯工程の連続制御処理について、図5を用いて説明する。
【0061】
まず、ステップS1では、連続制御部41が、発芽玄米制御部37を作動させて発芽工程をスタートさせ、ステップS2に進む。
【0062】
ステップS2では、上記発芽玄米制御部37は、底温度センサ34と蓋温度センサ35からの信号によって内鍋10の温度を検出して、底温度センサ34と蓋温度センサ35によって検出された内鍋10の温度が、発芽設定温度であるか否かを判断する。発芽設定温度は、玄米を発芽させるために設定された内鍋10内の水の温度で、ユーザによって炊飯開始前に操作パネル3で自由に設定可能である。底温度センサ34と蓋温度センサ35によって検出された内鍋10の温度が予め定められた発芽設定温度に達している場合、ステップS3に進む。
【0063】
一方、底温度センサ34と蓋温度センサ35によって検出された内鍋10の温度が、発芽設定温度に達していない場合には、ステップS5に進み、上記側面ヒータ32と蓋ヒータ33とをオンにして、内鍋10を加熱する。そして、ステップ2に戻り、再び内鍋10の温度を検出して、内鍋10の温度が発芽設定温度に達しているか否かを判断する。このように、上記発芽玄米制御部37は、内鍋10の温度が発芽設定温度に達するまで、側面ヒータ32と蓋ヒータ33とをオンにし続ける。
【0064】
なお、上記発芽設定温度は28度から35度が好ましく、より好ましくは、30度から34度であり、さらにより好ましくは、略32度である。
【0065】
ステップS3では、上記発芽玄米制御部37は、上記側面ヒータ32と蓋ヒータ33をオフにして、ステップS4に進む。
【0066】
ステップS4では、上記発芽玄米制御部37は、発芽工程をスタートしてから経過した時間が、発芽設定時間に達しているか否かを判断する。発芽設定時間は、玄米を発芽させるために設定された玄米を水に浸漬する時間で、ユーザによって炊飯開始前に表示操作部3の操作パネルで自由に設定可能である。発芽工程をスタートしてから経過した時間が発芽設定時間に達している場合は、ステップS9に進む。
【0067】
一方、発芽工程をスタートしてから経過した時間が、発芽設定時間に達していない場合は、ステップS2へ戻る。そして、上記発芽玄米制御部37は、発芽工程をスタートしてから経過した時間が発芽設定時間に達するまで、上記側面ヒータ32と蓋ヒータ33をオンにしたりオフにしたりして、内鍋10の温度を発芽設定温度に維持し続ける。
【0068】
なお、すべての玄米が完全に発芽するには、略32度の水に浸漬して1日程かかる場合があるため、発芽設定時間は、少なくとも24時間設定可能であるのが好ましい。
【0069】
また、上記発芽玄米制御部37は、ステップS1で発芽工程をスタートするとき、ステップS2に進むのと同時に、イオン発生器24の制御を開始する。このとき、発芽玄米制御部37は、イオン放出設定を検出して、ステップS6に進む。イオン放出設定は、内鍋10内に放出するイオンの放出割合の設定であり、ユーザによって炊飯開始前に表示操作部3の操作パネルで自由に設定可能である。この炊飯器では、50/60秒デュティの割合でイオンを放出する設定にしている。
【0070】
ステップS6では、上記発芽玄米制御部37は、イオン発生器24とシャッター25を制御して、イオン放出設定で設定された時間の間、イオン発生器24から内鍋10内にイオンを放出して、ステップS7に進む。このとき、発芽玄米制御部37は、シャッター25を開けるよう制御して、イオン供給口20を開放した状態にする。
【0071】
そして、ステップS7では、上記発芽玄米制御部37は、イオン発生器24を制御して、イオン放出設定で設定された時間の間、イオンの内鍋10内への放出を停止して、ステップS8に進む。
【0072】
ステップS8では、上記発芽玄米制御部37は、発芽工程をスタートしてから経過した時間が、発芽設定時間に達しているか否かを判断する。発芽工程をスタートしてから経過した時間が発芽設定時間に達している場合は、ステップS9に進む。
【0073】
一方、発芽工程をスタートしてから経過した時間が発芽設定時間を経過していない場合は、ステップS6へ戻る。そして、上記発芽玄米制御部37は、再びイオン放出設定に基づいてイオン発生器24を制御して、発芽設定時間を経過するまで、内鍋10内へのイオンの放出と停止を繰り返す。
【0074】
ステップS9では、上記連続制御部41は、発芽設定時間の経過により発芽工程を終了する。そして、発芽工程の終了後、連続制御部41は、発芽玄米制御部37から炊飯制御部38に自動的に制御部を切り替えて、ステップS10に進む。
【0075】
ステップS10では、炊飯制御部38が作動して炊飯工程に移行する。炊飯制御部38は、誘導コイル31,側面ヒータ32,蓋ヒータ33をオンにして炊飯を開始して、ステップS11に進む。このとき、炊飯制御部38は、シャッター25を制御して、イオン供給口20を塞ぐためにシャッター25を閉じる。
【0076】
ステップS11では、上記炊飯制御部38は、炊飯設定時間の経過と共に、誘導コイル31をオフにして、炊飯工程を終了する。炊飯設定時間は、炊飯前に設定された炊飯工程に基づいて設定される炊飯時間であり、ユーザによって炊飯開始前に表示操作部3の操作パネルで自由に設定可能である。なお、炊飯工程終了後は、自動的に保温工程に移行する。
【0077】
上記構成の炊飯器は、発芽工程時に、イオン発生器24が発芽玄米制御部37によって作動させられ、イオン発生器24から内鍋10内にイオンが放出される。このイオン発生器24から放出されたイオンによって、内鍋内の雑菌が分解,除去されるので、発芽工程時において、腐敗臭が室内(台所)に放出されることなく、除去される。このとき、発芽玄米制御部37は、イオン発生器24とシャッター25とを連動して作動させるので、内鍋10内にイオンを放出できる。
【0078】
また、上記発芽玄米制御部37によって、内鍋10の温度が発芽設定温度になるように側面ヒータ32と蓋ヒータ33とを制御するので、内鍋10内の温度を発芽設定温度に保って、内鍋10内の玄米を迅速かつ完全に発芽させることができる。
【0079】
また、炊飯工程時には、炊飯制御部38が誘導コイル31,側面ヒータ32,蓋ヒータ33を制御して、内鍋10の温度が目標温度に達するように内鍋10を加熱するので、最適な温度で炊飯を行うことができる。またこのとき、炊飯制御部38は、シャッター25を制御して、シャッター25によってイオン供給口20を塞ぐので、湯気等の水蒸気にイオン発生器24がさらされないようにできるので、イオン発生器24の耐久性を増すことができる。
【0080】
さらに、上記連続制御部41が、発芽玄米制御部37と炊飯制御部38とを順次連続して作動するように制御するので、内鍋10内の水を換える必要がないことと相俟って、発芽工程と炊飯工程を人の手を煩わせないで連続して行うことが可能で、発芽工程から炊飯工程までを連続して自動で行うことができる。
【0081】
上記構成の炊飯器において、官能試験を行った結果を図6に示す。この官能試験のテスターは5名であり、玄米1カップと炊飯に必要な水とを内鍋10に入れて、常温で24時間浸漬した場合を調査した。調査対象の1つは、24時間そのまま放置した炊飯器で、もう1つは、玄米の浸漬中にプラズマクラスターイオンを50/60秒デュティの割合で内鍋10内に放出した炊飯器である。
【0082】
図6の試験結果から分かるように、玄米の発芽工程時に内鍋10内にイオン発生器24からプラズマクラスターイオンを放出することによって、玄米の発芽時に発生する腐敗臭を略完全に除去することができる。
【0083】
上記実施形態では、イオン発生器24は、プラズマクラスターイオンを発生しているので、殺菌能力が高く、臭いを略完全に除去でき、かつ、実効値1.1kV〜1.4kVの低電圧でプラズマクラスターイオンを発生でき、高圧回路が不要で、簡単,安価に炊飯器が製造できる。
【0084】
尤も、イオン発生器24は、プラズマクラスターイオン発生器に限らず、例えば、高電圧を使用する通常のイオン発生器を用いてもよい。
【0085】
上記構成の炊飯器は、発芽工程から炊飯工程,保温工程までを連続して自動で行うことができるが、浸水工程,炊飯工程,保温工程を連続して自動で行うこともできるのは勿論である。さらに、例えば、発芽工程のみ、あるいは炊飯工程のみを単独で行うこともできるのは、勿論である。
【0086】
また、例えば、発芽工程完了後、一定時間してから炊飯工程に移行するように、1つの工程終了から次の工程開始までの時間をタイマー設定できるようにしてもよい。
【0087】
また、特定の工程(例えば、発芽工程のみ、あるいは、浸水工程と保温工程のみ)のときにだけイオン発生器24を制御して、イオンを放出できるようにしてもよい。
【0088】
上記実施形態においては、イオン発生器24は、ユーザが行った設定に従って、制御装置30によって工程毎に制御されてイオンを放出しているが、制御装置30によらず、例えば、各々の工程におけるイオンの放出をスイッチ等によって全て手動で行えるようにしてもよい。
【0089】
また、予めいくつかのイオン放出設定を制御装置30に記憶させておいてもよい。それぞれの工程に最適なイオン放出設定を制御装置30の各制御部が自動で選択してイオンを放出するようにしてもよいし、それぞれの工程毎に決まったイオン放出設定を制御装置30の各制御部が選択してイオンを放出するようにしてもよい。
【0090】
それぞれの工程において、一定時間だけイオン発生器24を作動させて内鍋10内にイオンを放出するようタイマー設定できるようにしてもよい。
【0091】
また、例えば、浸水工程で浸水制御部36が側面ヒータ32と蓋ヒータ33を制御可能にして、浸水工程時に米を浸す水の温度を調節することができるようにしてもよいし、浸水制御部36が発芽玄米制御部37を兼ねてもよい。
【0092】
また、イオン発生器24は、蓋体2ではなく本体1に設けて、イオン通路により内鍋10内にイオンを放出するようにしてもよい。
【0093】
上記イオン発生器24は、例えば、蓋体2の上面に点検口などを設けて、蓋体2内から取り外しができるようにしてもよい。おねば等によってイオン発生器24が汚れても、イオン発生器24を蓋体2から取り外して洗浄することができる。このようにイオン発生器24を洗浄することで、炊飯器内部を清潔に保つことができ、イオン発生器24の性能を常に最大限発揮できる。
【0094】
また、イオン発生器24の放出口のあるイオン収容室28の左側面に、送風ファンを設けてもよい。この送風ファンによってイオン供給口20に向かって風が送られるので、イオン発生器24から放出されたイオンをイオン収容室28から確実に内鍋10内に放出でき、イオンの放出効率を高めることができる。
【0095】
また、例えば、蓋体2内の外蓋21内の右面側(図3の右側)に、攪拌装置、あるいは、空気バブル発生装置を設けてもよい。イオン発生器24からイオンが放出されているときに、攪拌装置または空気バブル発生装置によって内鍋10内の水の表面を攪拌することで、イオンが水中に溶け込み易くなり、内鍋10内の雑菌の分解,除去効果をさらに高めることができる。
【符号の説明】
【0096】
1…炊飯器本体
2…蓋体
2a…蒸気口
3…表示操作部
4…フックボタン
5…本体ハンドル
6…電源コード
10…内鍋
10a…フランジ部
10b…胴体部
11…内鍋把手
12…外ケース
12a…凹部
13…内ケース
20…イオン供給口
21…外蓋
22…内蓋
23…上パッキン
24…イオン発生器
25…シャッター
26…下パッキン
28…イオン収容室
30…制御装置
31…誘導コイル
32…側面ヒータ
33…蓋ヒータ
34…底温度センサ
35…蓋温度センサ
36…浸水制御部
37…発芽玄米制御部
38…炊飯制御部
39…フェライト部材
41…連続制御部
42…保温制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本体と、
上記本体の上部に開閉自在に取り付けられ、上記本体の上部開口を閉じることができる蓋体と、
上記本体内に取り出し可能に収納される内鍋と、
上記内鍋の温度を検出する温度センサと、
上記内鍋を加熱する加熱部と、
上記内鍋内にイオンを放出するイオン発生器と
を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項2】
請求項1に記載の炊飯器において、
浸水工程中または保温工程中に、上記イオン発生器を作動させることを特徴とする炊飯器。
【請求項3】
請求項1または2に記載の炊飯器において、
発芽玄米を作成するための発芽工程時に上記イオン発生器を作動させる発芽玄米制御部と、炊飯工程時に上記加熱部を上記内鍋の温度が目標温度になるように制御する炊飯制御部とを有する制御装置を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項4】
請求項3に記載の炊飯器において、
上記発芽玄米制御部は、上記発芽工程において、上記温度センサの出力に基づいて、上記内鍋の温度が発芽設定温度になるように上記加熱部を制御することを特徴とする炊飯器。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1つに記載の炊飯器において、
上記イオン発生器の出口と上記内鍋内との間を開閉する開閉装置を備えたことを特徴とする炊飯器。
【請求項6】
請求項3または4に記載の炊飯器において、
上記イオン発生器の出口と上記内鍋内との間を開閉する開閉装置を備え、
上記発芽玄米制御部は、上記発芽工程時に上記開閉装置を開放または開閉するように制御することを特徴とする炊飯器。
【請求項7】
請求項3から6のいずれか1つに記載の炊飯器において、
上記制御装置は、上記発芽工程と上記炊飯工程とが順次連続して行われるように、上記発芽玄米制御部と上記炊飯制御部とを順次連続して作動させる連続制御部を有することを特徴とする炊飯器。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1つに記載の炊飯器において、
上記イオン発生器は、H(HO)(mは任意の自然数)である正イオンと、O(HO)(nは任意の自然数)である負イオンとを放出することを特徴とする炊飯器。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1つに記載の炊飯器において、
上記イオン発生器は、上記蓋体に設けられていることを特徴とする炊飯器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−125384(P2012−125384A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279013(P2010−279013)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】