説明

炎症性腸疾患の処置

化合物:[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンを用いる、炎症性腸疾患の処置が開示されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
炎症性腸疾患の処置
発明の分野
この発明は炎症性腸疾患に罹患しているか、曝されているヒト及び非ヒト患者の治療方法を対象とする。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
マスト細胞介在性炎症状態、特に喘息について公衆衛生上の懸念が高まりつつある。喘息は、しばしば、慢性炎症の発病をもたらす免疫特異的アレルゲン及び全身性の化学又は物理的刺激の双方に対する気管及び気管支の過剰反応が漸進的に進行することによって特徴づけられる。IgE受容体を含む白血球、特にマスト細胞及び好塩基球は、気管支の上皮組織及びその下にある平滑筋組織内に存在する。こうした白血球は、まず特異的な吸入抗原がIgE受容体に結合することによって活性化され、次いでいくつかのケミカルメディエーターが放出される。例えば、マスト細胞の脱顆粒化によって、プロテオグリカン、ペルオキシダーゼ、アリールスルファターゼB、キマーゼ、及びトリプターゼの放出がなされ、その結果、細気管支狭窄が生じる。
【0003】
トリプターゼは、マスト細胞分泌性顆粒内に貯留され、そしてヒトマスト細胞の主要なプロテアーゼである。トリプターゼは、血管拡張性及び気管支拡張性の神経ペプチドの分解(非特許文献1、2及び3)及びヒスタミンに対する気管支応答のモジュレーション(非特許文献4)を含む、様々な生物学的プロセスに関与している。
【0004】
結果として、トリプターゼインヒビターは抗炎症薬(非特許文献5)として、特に慢性喘息の処置に(非特許文献6)有用でありえ、そしてまた、アレルギー性鼻炎(非特許文献7)、炎症性腸疾患(非特許文献8)、乾癬(非特許文献9)、結膜炎(非特許文献10)、アトピー性皮膚炎(非特許文献11)、関節リウマチ(非特許文献12)、変形性関節症(非特許文献13)、痛風性関節炎、リウマチ性脊椎炎、及び関節軟骨破壊疾患の処置又は予防にも有用でありうる。
【0005】
加えて、トリプターゼは、線維芽細胞の強力な有糸分裂促進因子であることが示され、喘息および間質性肺疾患における肺線維症に関与していることが示唆されている(非特許文献14)。
【0006】
それ故、トリプターゼインヒビターは、線維性状態(非特許文献15)、例えば、線維症、強皮症、肺線維症、肝硬変、心筋線維症、神経線維腫及び肥厚性瘢痕の処置又は予防に有用でありうる。
【0007】
これに加えて、トリプターゼインヒビターは、心筋梗塞、卒中、狭心症及びアテローム性動脈硬化性プラーク破裂のその他の帰結の処置又は予防に有用でありうる(非特許文献16)。
【0008】
トリプターゼはまた、更にコラゲナーゼを活性化するプロストロメリシンを活性化し、その結果、軟骨及び歯周の結合組織の破壊を、それぞれ引き起こすことが判明している。
【0009】
それ故、トリプターゼインヒビターは、関節炎、歯周病、糖尿病性網膜症、及び腫瘍増殖の処置又は予防に有用でありうる(非特許文献17)。また、トリプターゼインヒビターは、アナフィラキシー(非特許文献18)、多発性硬化症(非特許文献19)、消化性潰瘍及び合胞体ウイルス感染症の処置にも有用でありうる。
【0010】
こうした化合物は、トリプターゼインヒビターを投与することによって改善することができる状態、例えば、マスト細胞介在性炎症状態、炎症、及び血管拡張性及び気管支拡張性の神経ペプチドの分解に関連する疾患及び障害に罹患している患者を処置する際に容易に有用であり、セミカルバジド感受性アミンオキシダーゼ(SSAO)代謝に関する易罹病性を減少させる。
【0011】
特に、潰瘍性大腸炎(UC)は、マスト細胞介在性であるか、あるいは修飾(modified)疾患であると考えられている:
・マスト細胞の数が上昇し、UC患者の腸粘膜に脱顆粒の証拠が存在する[非特許文献20]。
・b−トリプターゼがUCに罹患している患者の結腸組織において著しく増加する[非特許文献21]。
・ヒトb−トリプターゼの結腸内投与によって腸炎が誘発され、そしてマウスにおいてPAR−2の活性化によって腸透過性が増大した[非特許文献22]。
【0012】
メシル酸ナファモスタット(NM)は、低用量で選択的なb−トリプターゼインヒビターである(Ki=95pM)ことが報告されている。この化合物はラットモデルにおいてTNBSによって誘発された結腸炎で試験された[非特許文献23]:
・結腸内注入[NM(10−9,10−11及び10−13M)、5−ASA(25mg/Kg)又はビヒクル、6日間、毎日]。
・マスト細胞トリプターゼは、シャム処理ラット(sham treated rats)に対してTNBSの結腸粘膜内で増加した。
・NMは、5−ASAと同様、結腸粘膜炎症を著しく軽減した:
【0013】
注入可能なb−トリプターゼインヒビターAPC−2059での臨床研究からのデータによってまた、UCにおいてトリプターゼインヒビターを使用する論拠が提供された[非特許文献24]。
【0014】
軽度〜中等度のUCにおけるオープンラベル第II相パイロット試験
・組み入れ基準:経口5−ASA療法にもかかわらず、疾患活性指標(DAI)が6〜9を有している症状。
・ 28日間にわたりAPC−2059投与(20mg,SC,BID)[経口による5−ASAの患者の既存治療法(patients existing therapy)を背景にして]。
・プライマリーエンドポイント:DAI≦3によって定義されるレスポンス(response)。
・セカンダリーエンドポイント:寛解(DAI=0)、改善(DAI≦3又はベースラインから4ポイント減少)。
・49/56の被験者が試験完結(2人が有害事象、1人が来院せず、4人が早期中止)。
・APC−2059は安全であり、かつ良好な忍容性を示した。
・プライマリー:患者の29%(16/56)が“レスポンスした(responded)”としてプライマリーエンドポイントを満足した。
・セカンダリー:9%(5/56)が“寛解(remission)”基準を満足し、そして49%(27/56)が“改善(improved)”基準を満足した。
・ポストホック(事後:Post hoc):ベースラインDAIスコア6〜7は、ベースラインDAIスコア7〜9(6/33,18%)と比較してより高いレスポンス率(10/22,45%)を有した。1人の患者のベースラインDAI=11はレスポンスしなかった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Caughey, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 244, pages 133-137
【非特許文献2】Franconi, et al., J. Pharmacol. Exp. Ther., 1988, 248, pages 947-951
【非特許文献3】Tam, et al., Am. J. Respir. Cell Mol. Biol., 1990, 3, pages 27-32
【非特許文献4】Sekizawa, et al., J. Clin. Invest., 1989, 83, pages 175-179
【非特許文献5】K Rice, P.A. Sprengler, Current Opinion in Drug Discovery and Development, 1999, 2(5), pages 463-474
【非特許文献6】M.Q. Zhang, H. Timmerman, Mediators Inflamm., 1997, 112, pages 311-317
【非特許文献7】S. J. Wilson et al, Clin. Exp. Allergy, 1998, 28, pages 220-227
【非特許文献8】S.C. Bischoff et al, Histopathology, 1996, 28, pages 1-13
【非特許文献9】A. Naukkarinen et al, Arch. Dermatol. Res., 1993, 285, pages 341-346
【非特許文献10】A.A.Irani et al, J. Allergy Clin. Immunol., 1990, 86, pages 34-40
【非特許文献11】A. Jarvikallio et al, Br. J. Dermatol., 1997, 136, pages 871-877
【非特許文献12】L.C Tetlow et al, Ann. Rheum. Dis., 1998, 54, pages 549-555
【非特許文献13】M.G. Buckley et al, J. Pathol., 1998, 186, pages 67-74
【非特許文献14】Ruoss et al., J. Clin. Invest., 1991, 88, pages 493-499
【非特許文献15】J.A. Cairns and A.F. Walls, J. Clin. Invest., 1997, 99, pages 1313-1321
【非特許文献16】M. Jeziorska et al, J. Pathol., 1997, 182, pages 115-122
【非特許文献17】W.J. Beil et al, Exp. Hematol., (1998) 26, pages 158-169
【非特許文献18】L.B. Schwarz et al, J. Clin. Invest., 1995, 96, pages 2702-2710
【非特許文献19】M. Steinhoff et al, Nat. Med. (N. Y.), 2000, 6(2), pages 151-158
【非特許文献20】World J Gasteroenterol 2004, 10(3), 309-318
【非特許文献21】Scand J Gastroenterol 2001, 2, 174-179
【非特許文献22】Am J Pathol 2002, 161, 1903-1915
【非特許文献23】Isozaki Y et al. Scand. J. Gast (2006), 41:8, 944-953
【非特許文献24】Tremaine WJ et al. Aliment Pharmacol Ther 2002, 16, 407-413
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
式I:
【化1】

の化合物は、ヒトβ−トリプターゼ及びマウスMCPT−6(ヒトβ−トリプターゼのマウスオルソログ)の選択的、かつ可逆的インヒビターである[組み換え酵素を用いてのKiが、それぞれ、38及び920nMである]。
【0017】
発明の概要
我々は、式Iの化合物、又はその製薬学的に許容される塩が炎症性腸疾患の処置に有用であることを現在見出した。
【0018】
すなわち、この発明は、活性成分として式Iによって表される化合物又はその塩を含む、炎症性腸疾患の予防又は治療薬に関する。
【0019】
医薬的に有効な量の下記の式Iによって表される化合物又はその製薬学的に許容される塩を投与する段階を含んでなる、哺乳類の炎症性腸疾患の処置方法もまた開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の概略
この発明は、式I:
【化2】

の化合物を用いる炎症性腸疾患を処置する方法に関する。
【0021】
この化合物はまた、[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノンと呼ばれている。
【0022】
この発明は、炎症性腸疾患の動物モデルにおいて活性であることが現在判明している、式Iの化合物を対象とする。
【0023】
この発明の別の局面は、炎症性腸疾患を処置する医薬組成物である。
【0024】
この発明の別の局面は、炎症性腸疾患を処置することである。
【0025】
更に、この発明の別の局面は、一般的にβ−トリプターゼインヒビターを用いて患者を処置することによって炎症性腸疾患を処置することである。
【0026】
発明の詳細な説明
従って、一局面では、この発明は一般式Iの化合物を含んでなる医薬組成物を対象とし、該化合物はまた、以下のように呼ばれている:[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン。
【0027】
この明細書では、用語“本発明の化合物(compound of the invention)”、及び等価の表現は、上記に述べられている一般式(I)の化合物を包含することを意図しており、この表現は、状況によって可能である場合には、エステルプロドラッグ、製薬学的に許容される塩、及び溶媒和物、例えば、水和物を含む。同様に、中間体への言及は、それら自身が請求されているか否かにかかわらず、状況によって可能である場合には、それらの塩、及び溶媒和物を包含していることを意図している。理解しやすいように、状況によって可能であるときには具体的な例がテキスト中で示されることがあるが、こうした例は単なる例示的なものであり、状況によって可能であるときには他の例を排除することを意図するものではない。
【0028】
製造の詳細
式Iの化合物は、公知の方法を適用又は適合させることによって[公知の方法とは、これまでに使用されているか、又は文献に記載される方法、例えば、R.C.Larock in Comprehensive Organic Transformations, VCH publishers, 1989によって記載されている方法を意味する]、あるいは本明細書中の記載の通りに製造することができる。
【0029】
下記に記載される反応では、反応におけるそれらの好ましくない関与を回避するために、反応性官能基(例えば、アミノ基)を保護する必要がある場合がありうる。従来から使用されている保護基は、標準的手法に従って使用しうる;例えば、T.W. Greene and P.G.M.Wuts in “Protective Groups in Organic Chemistry” John Wiley and Sons, 1991参照。
【0030】
特に、式Iの化合物はスキーム1〜2による説明と同様に製造することができる。
【0031】
例えば、この発明の化合物はアキラルな化合物であり、その製造は収束的合成から成る。本発明の化合物は、下記のスキーム中に示されているようにその安息香酸塩(benzoate
salt)として製造される。
【0032】
【化3】

【0033】
(i)クロロギ酸エチル,ピリジン,THF,0℃,100%;(ii)a:sec−BuLi,THF,−78℃,b:I2,THF,−78℃,52〜68%;(iii)TMS−アセチレン,TEA,CuI,Pd(PPh32Cl2,脱ガスTHF,60℃,93%;(iv)KOH,t−BuOH,70℃,91%;(v)KOH粉末,2−メトキシエチルブロミド,DMSO,室温,95%;(vi)TFAA,DMF,40℃,89%;(vii)5M NaOH,MeOH,85℃,96%;(viii)2,2,2−トリフルオロ−N−(フルオロ−3−ピペリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド・塩酸塩,EDCI,TEA,CH2Cl2(DCM),室温,99%;(ix)a:K2CO3,MeOH/H2O,b:1M HCl(Et2O中),90%。
【0034】
化合物1を、ピリジンなどの適切な塩基の存在下で、クロロギ酸エチルなどのアミノ保護試薬を用いてアミノ基を保護することによって化合物2に変換すると、保護された化合物2が生じる。
【0035】
化合物2を、3工程プロセスで化合物5に変換する。化合物2を、2をセカンダリーブチルリチウムなどの強塩基と反応させ、分子状ヨウ素などのヨージド源と反応するアニオンを形成させることによってカルバミン酸エステルに隣接した位置でヨウ素化すると、化合物3が得られる。次いで化合物3を、トリメチルシリルアセチレン及びトリエチルアミンなどの塩基の存在下で、ヨウ化銅(I)及びビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)ジクロリドなどの触媒条件を用いて、アセチレン化合物4に変換する。化合物4を、水酸化カリウムなどの強塩基を用いて環化し、加熱すると、インドール化合物5が得られる。
【0036】
化合物5を、室温でジメチルスルホキシドなどの双極性非プロトン溶媒中、そのインドールの窒素を水酸化カリウムなどの強塩基の存在下でハロゲン化アルキルを用いてアルキル化することによって化合物6に変換して、化合物6を生じさせる。
【0037】
化合物6は、2工程プロセスで化合物8に変換する。まず、化合物6は、化合物6をN,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒の存在下、トリフルオロ酢酸無水物で処理し、そして加熱することによって化合物7に変換される。化合物7を、水酸化ナトリウムなどの強塩基で処理すると、その3の位置に酸官能基を有する化合物8が得られる。
【0038】
化合物8は、酸8を、ジクロロメタンなどの不活性溶媒中、EDCIなどの酸カップリング試薬(acid coupling reagent)及びトリエチルアミンなどの有機塩基の存在下で、2,2,2−トリフルオロ−N−(フルオロ−3−ピペリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド・塩酸塩(化合物14)と反応させることによってアミド9に変換される。
【0039】
化合物9は、メタノール/水などの混合溶媒中、炭酸カリウムなどの穏和な塩基で処理し、N−ベンジルトリフルオロアセトアミドを脱保護することによって、化合物10に変換される。この塩酸塩は、エーテルなどの極性有機溶媒の存在下で形成されて、式Iの([4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−メチル−1H−インドール−3−イル]−メタノン)の塩酸塩である、化合物10が生じる。
【0040】
このスキームの反応は以下の通りである。
【0041】
工程A:(2−フルオロ−5−トリフルオロメトキシ−フェニル)−カルバミン酸エチルエステル(2)の製造
【化4】

0℃で、THF(500mL)中の1(50.72g,0.26mol)及びピリジン(27.3mL,0.34mol)の溶液に、クロロギ酸エチル(32.2mL,0.39mol)を30分間にわたって滴下した。1時間後、LC/MS及びTLCの双方によって反応が完結したことが示された。この反応混合物をH2OとEtOAcの間で分配した。2つの層に分離した後、有機層を、1M HCl、H2O、及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。粗製物を溶離剤としてヘプタン/EtOAc(95/5〜70/30)を用いるシリカゲルで精製すると、69.23g(99%)の生成物2が透明な無色液体として得られた。
1H NMR (CDCl3) δ 8.11 (br s, 1H), 7.07 (dd, J = 9.1, 9.3 Hz, 1H), 7.00-6.80 (m,
2H), 4.27 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.33 (t, J = 7.1 Hz, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ -57.84 (s, 3F), -134.01 (br s, 1F);
MS 309 (M+CH3CN+1, 100%), 268 (M+1)。
【0042】
工程B:(6−フルオロ−2−ヨード−3−トリフルオロメトキシ−フェニル)−カルバミン酸エチルエステル(3)の製造
【化5】

−78℃で、THF(180mL)中の2(31.34g,117.2mmol)の溶液に、1時間にわたってsec−BuLi(1.4M(シクロヘキサン中),200mL,280mmol)を滴下した。20分後、THF(150mL)中のI2(44.6g,175.8mmol)の溶液を、30分間にわたって滴下した。次いでこの混合物を−78℃で30分間撹拌した。飽和NH4Clを加え、そして冷却浴を取り除いた。この反応混合物をH2OとEtOAcの間で分配した。2つの層に分離した後、有機層を10%Na2SO3、H2O、及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。残留物をDCM(50mL)中に懸濁し、そしてヘプタン(300mL)を加えた。この結果生じる懸濁液からの白色粉末3(18.1g,39%)を吸引ろ過によって回収し、そして空気乾燥した。ろ液を真空下にて濃縮し、そして残留物をヘプタン(200mL)中に懸濁した。別のバッチの3(3.8g,8%)を吸引ろ過によって回収し、そして空気乾燥した。追加の生成物をは、ろ液を、シリカゲルクロマトグラフィーを介して精製することによって得ることができた。
1H NMR (CDCl3) δ 7.30-17.10 (m, 2H), 6.16 (br s, 1H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H),
1.32 (t, J = 7.1 Hz, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ -56.90 (s, 3F), -114.35 (d, J = 8.5 Hz, 1F);
MS 394 (M+1, 100%), 374, 364, 321, 267。
【0043】
工程C:(6−フルオロ−3−トリフルオロメトキシ−2−トリメチルシラニルエチニル−フェニル)−カルバミン酸エチルエステル(4)の製造
【化6】

脱ガスTHF(180mL)中の3(18.1g,45.9mmol)、Et3N(12.8mL,91.9mmol)、Pd(PPh)2Cl2(1.6g,5%mol)、CuI(0.7g,8%mol)、及びTMS−アセチレン(19.6mL,137.8mmol)の混合物を60℃で終夜加熱した。混合物を室温に冷却し、次いでH2OとEtOAcの間で分配した。この混合物をセライトろ過して不溶性物質を取り除いた。ろ液の2つの層が分離した後、そして有機層をH2O及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。粗製物を溶離剤としてヘプタン/EtOAcを用いるシリカゲルで精製すると、15.6g(93%)の生成物4がベージュ色の固形物として得られた。
1H NMR (CDCl3) δ 7.15-7.00 (m, 2H), 6.41 (br s, 1H), 4.26 (q, J = 7.1 Hz, 2H), 1.31 (t, J = 7.1 Hz, 3H), 0.27 (s, 9H); 19F NMR (CDCl3) δ -57.59 (s, 3F), -118.15 (s, 1F);
MS 364 (M+1, 100%)。
【0044】
工程D:7−フルオロ−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール(5)の製造
【化7】

脱ガスt−BuOH(300mL)中の4(28.9g,79.6mmol)及びKOH(35.7g,636.7mmol)の混合物を70℃で終夜加熱した。LC/MSによって反応が完結したことが示された。この混合物を室温に冷却し、次いでH2OとEt2Oの間で分配した。2つの層に分離した後、水層をEt2O(2×)で抽出した。有機層を集め、これをH2O及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。粗製物を溶離剤としてヘプタン/EtOAc(100/0〜60/40)を用いるシリカゲルで精製すると、16g(91%)の5が黄色液体として得られた。1H NMR (CDCl3) δ 8.47 (br s, 1H), 7.35-7.20 (m, 1H), 6.95-6.80 (m, 2H), 6.68 (d, J = 2.5 Hz, 1H); 19F NMR (CDCl3) δ -57.63 (s, 3F), -136.10 (d, J = 8.5 Hz, 1F);
MS 220 (M+1, 100%), 200。
【0045】
工程E:7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール(6)の製造
【化8】

DMSO(150mL)中の5(16g,72.8mmol)及びKOH粉末(20.4g,364.2mmol)の混合物を室温で10分間撹拌した。2−メトキシエチルブロミド(10.3mL,109.2mmol)を加えた。この混合物を室温で終夜撹拌した。LC/MSによって反応が完結したことが示された。この混合物をH2OとEt2Oの間で分配した。2つの層に分離した後、水層をEt2O(2×)で抽出した。有機層を集め、これをH2O及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。粗製物を溶離剤としてヘプタン/EtOAc(100/0〜50/50)を用いるシリカゲルで精製すると、19.3g(95%)の6が黄色液体として得られた。1H NMR (CDCl3) δ 7.15 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.90-6.75 (m, 2H), 6.56 (t, J = 2.5 Hz, 1 H), 3.72 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.72 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.31 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ -57.54 (s, 3F), -137.00 (d, J = 11.3 Hz, 1F);
MS 278 (M+1, 100%)。
【0046】
工程F:2,2,2−トリフルオロ−1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]−エタノン(7)の製造
【化9】

DMF(135mL)中の6(19.3g,69.7mmol)の混合物に、TFAA(26.2mL,188.2mmol)を加えた。この混合物を40℃で終夜加熱した。TLCによって反応が完結したことが示された。この混合物を室温に冷却し、次いでH2OとEt2Oの間で分配した。2つの層に分離した後、有機層を、飽和NaHCO3(2×)、H2O及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。粗製物を溶離剤としてヘプタン/EtOAc(100/0〜50/50)を用いるシリカゲルで精製すると、23.4g(89%)の7が、緑色がかった固形物として得られた。
1H NMR (CDCl3) δ 8.03 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 7.20-6.95 (m, 2H), 4.54 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.76 (t, J = 4.8 Hz, 2H), 3.33 (s, 3H); 19F NMR (CDCl3) δ -57.74 (s, 3F), -71.10 (s, 3F), -134.95 (d, J = 11.5 Hz, 1F);
MS 374 (M+1, 100%)。
【0047】
工程G:7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボン酸(8)の製造
【化10】

MeOH(100mL)及び5M NaOH(100mL)中の7(23.4g,62.6mmol)の混合物を、80℃で終夜加熱した。LC/MSによって反応が完結したことが示された。反応混合物を室温に冷却し、次いで真空下にて濃縮して、大部分のMeOHを除去した。残留物をH2Oに溶解し、次いでEt2Oで1回洗浄した。水層を、濃HClを用いてゆっくり酸性にし、pHをおよそ2にした。酸性にした懸濁液をEt2Oで抽出し、そして有機抽出物をH2O及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。残留物をDCM/ヘプタン(10/90)中に懸濁した。懸濁液中の白色粉末8(19.4g,96%)を吸引ろ過によって回収し、そして空気乾燥した。
1H NMR (CDCl3) δ 8.02 (s, 1H), 7.15-7.05 (m, 1H), 7.00-6.90 (m, 1H), 4.49 (t, J
= 5.0 Hz, 2H), 3.75 (t, J = 4.9 Hz, 2H), 3.33 (s, 3H);
19F NMR (CDCl3) δ -57.74 (s, 3F), -135.65 (d, J = 11.3 Hz, 1F);
MS 363 (M+CH3CN+1), 322 (M+1, 100%)。
【0048】
工程H:2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−{1−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−カルボニル]−ピペリジン−4−イル}−ベンジル)−アセトアミド(9)の製造
【化11】

CH2Cl2中の8(19.1g,59.6mmol)、Et3N(24.8mL,177.9mmol)、2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−ピペリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド・塩酸塩(11,26.4g,77.5mmol)(14)、及びEDCI(17.1g,89.3mmol)の混合物を室温で終夜撹拌した。TLC及びLC/MSの双方によって反応が完結したことが示された。この混合物をH2OとCH2Cl2の間で分配した。2つの層に分離した後、有機層をブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮した。粗製物を溶離剤としてヘプタン/EtOAc(40/60〜0/100)を用いるシリカゲルで精製すると、9(36g,99%)が白色泡状物として得られた。
1H NMR (CDCl3) δ 7.37 (s, 1H), 7.20-7.10 (m, 2H), 7.10-6.85 (m, 4H), 4.95 (br s, 1H), 4.60-4.35 (m, 4H), 3.90 (br s, 1 H), 3.73 (t, J = 5.0 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.25-2.70 (m, 3H), 2.05-1.50(m, 4H);
19F NMR (CDCl3) δ -57.54 (s, 3F), -75.39 (s, 3F), -119.31 (s, 1F), -134.96 (d, J = 11.3 Hz, 1F); MS 608 (M+1, 100%)。
【0049】
工程I:[4−(5−アミノメチル−2−フルオロ−フェニル)−ピペリジン−1−イル]−[7−フルオロ−1−(2−メトキシ−エチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]−メタノン・塩酸塩(10)の製造
【化12】

MeOH(400mL)中の9(36g,59.3mmol)の混合物に、K2CO3水溶液(65.5g,474mmol,(120mLのH2Oに溶解))を加えた。この混合物を室温で終夜撹拌した。LC/MSによって反応が完結したことが示された。この反応混合物を真空下にて濃縮して、大部分のメタノールを除去した。残留物をH2OとEtOAcの間で分配した。2つの層に分離した後、有機層をH2O及びブラインで洗浄し、MgSO4上で乾燥し、ろ過し、そして真空下にて濃縮すると、27.5g(90%)の10が透明な無色の粘着性ガム状物として生じた。
1H NMR (CDCl3) δ 7.42 (s, 1H), 7.25-7.10 (m, 2H), 7.05-6.85 (m, 3H), 4.92 (br s, 1H), 4.46 (t, J = 5.2 Hz, 2H), 3.86 (br s, 3 H), 3.74 (t, J = 5.1 Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.30-2.75 (m, 3H), 2.24 (br s, 2H), 2.05-1.55 (m, 4H);
19F NMR (CDCl3) δ -57.52 (s, 3F), -121.64 (s, 1F), -136.03 (d, J = 11.3 Hz, 1F);
MS 512 (M+1, 100%)。
【0050】
Et2O(30mL)中の上記の物質(2.856g,5.59mmol)の溶液に、2N HCl/Et2O(3mL,6mmol)を滴下した。固体沈殿物が生じ、そしてエーテル溶液をデカントオフした。この固形物を追加のEt2Oで洗浄し、次いでデカントオフした。残留している淡黄色固形物を暖めたMeOH(10mL)に溶解し、次いでEt2O(50mL)を、溶液がすこし濁るまで加えた。約2時間後、固体沈殿物が生じた。追加のEt2O(5〜10mL)を加え、次いでこの懸濁液を終夜冷蔵庫に入れておいた。白色の結晶生成物(2.475g,4.52mmol)を回収し、そして高真空下にて4時間乾燥した。
1H NMR (DMSO-d6) δ 8.32 (br s, 2H), 7.71 (s, 1H), 7.43 (d, 1H, J = 7.2 Hz), 7.36 (m, 1H), 7.26-7.20 (m, 1H), 7.12-7.08 (m, 2H), 4.49 (t, J = 5.1Hz, 2H), 4.00 (s, 2H), 3.71 (t, J = 5.1Hz, 2H), 3.32 (s, 3H), 3.21-3.07 (m, 3H), 2.99 (br s, 2H), 1.80-1.62 (m, 4H);
19F NMR (DMSO-d6) δ -56.79 (s, 3F), -119.34 (s, 1F), -134.53 (d, J = 9.6 Hz, 1F); MS 512 (M+1, 100%)。
CHN:理論値:C 53.06%,H 5.16%,N 7.42%(1.0 H2Oとして計算された)。実測値:C 53.03%,H 4.82%,N 7.22,Cl 6.64%。
【0051】
[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン・安息香酸塩(benzoate)(10の安息香酸塩(benzoate salt))
[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン(1320g,2.58mol)を含むトルエン溶液がすでに入っている、20Lのガラスジャケットリアクターを撹拌し、そして61℃に加熱した。安息香酸(316g,2.58mol)を加え、そして安息香酸をすべて溶解した後、シクロヘキサン(6.04L)を加えた。この反応物を77℃に加熱し、そこで[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン・安息香酸塩(0.100g)を加えて前述のバッチからシーディングした。結晶化が77℃で進行し、15分後、この反応物を1時間あたり−10℃の勾配で冷却させた。この反応物が61℃に達したとき、撹拌及び冷却の双方を停止し、この反応物を室温に冷却させた。終夜放置した後、撹拌を再開し、そして生成物をろ過によって回収した。フィルターケーキをトルエン(3L)及びシクロヘキサン(1.5L)から調製した溶媒混合物で洗浄した。部分的に吸引による乾燥後、生成物を乾燥オーブンに移し、そこで40℃で乾燥すると、[4−(5−アミノメチル−2−フルオロフェニル)ピペリジン−1−イル][7−フルオロ−1−(2−メトキシエチル)−4−トリフルオロメトキシ−1H−インドール−3−イル]メタノン・安息香酸塩が無色固形物として得られた:1408.8g(86%),融点=156〜159℃。元素分析:計算値(C2526533・C762:C, 60.66;H, 5.09;N, 6.63。実測値:C, 60.44;H, 5.01;N, 6.87。赤外スペクトル特徴(cm−1):1612,1526,1511,1501,1394,1362,1256,1232,1211,1158,1117,999,826。
【0052】
【化13】

【0053】
n−プロピルアルコール、n−ブチルアルコールなどのような少なくともイソプロピルアルコールの沸点を有するアルコール系溶媒;ジメチルホルムアミド、1−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどのような極性非プロトン溶媒;2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのようなエーテル系溶媒中、3−ブロモ−4−フルオロベンジルアミン・塩酸塩(Wychem)を、ピリジン−4−ボロン酸(クラリアント(Clariant)、又はボロン・モレキュラー(Boron Molecular))と反応させる。化合物12及び化合物13は、上述の任意の溶媒と水の混合物中、1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン−パラジウム(II)ジクロリド・ジクロロメタン錯体(PdCl2dppf−CH2Cl2)、Pd(PPh34、PdCl2(PPh32、Pd(dtbpf)Cl2などの適切な触媒の存在下で、約70℃〜鈴木カップリング反応混合物の沸点の温度に十分加熱すると、ピリジンが提供される。
【0054】
このピリジンは、酢酸エチル、酢酸イソプロピルなどのようなエステル溶媒;トルエンなどのような芳香族炭化水素溶媒;メチレンクロリド、1,2−ジクロロエタンなどの塩素化炭化水素溶媒のようなトリフルオロアセチル化溶媒中、約−20℃〜約30℃のトリフルオロアセチル化反応温度で、トリフルオロ酢酸無水物、トリフルオロアセチルフルオリド、ペンタフルオロフェニルトリフルオロアセタートなどの適切なトリフルオロアセチル化試薬を用いるトリフルオロアセチル化条件下で、引き続いて塩酸で処理してトリフルオロアセトアミド化合物、2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−ピリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド・塩酸塩に変換される。
【0055】
2,2,2−トリフルオロ−N−(4−フルオロ−3−ピリジン−4−イル−ベンジル)−アセトアミド・塩酸塩は、水素化条件のもとで還元され、化合物14になるが、その手段は、エタノール、イソプロピルアルコールなどのようなアルコール系溶媒;又は酢酸;又はアルコール系溶媒若しくは酢酸と水の混合物のような水素化反応溶媒中、約10〜約60℃の水素化反応温度、そして約20〜約1000psiの水素化反応圧力で、HClなどのような無機酸、あるいは酢酸などのような有機酸を加えるか、それとも加えずに、PtO2、Pd/C、Pd(OH)2、Rh/Cなどの水素化触媒手段の存在下、水素で処理をすることによる。
【0056】
この発明の化合物は、塩基性であり、そしてこうした化合物は遊離塩基の形態、又はその製薬学的に許容される酸付加塩の形態で有用である。
【0057】
酸付加塩は、使用するために;そして実施の際に、より好都合な形態でありえ、塩形態を使用することは、遊離の塩基形態を使用することに本質的に等しい。酸付加塩を調製するのに使用することができる酸は、遊離の塩基と結合するときに、遊離の塩基に固有の有利な阻害作用がアニオンに起因する副作用によって損なわれないような、製薬学的に許容される塩、すなわち、そのアニオンが塩の医薬投与量で患者に対して非毒性である塩を生成する酸が含まれるのが好ましい。前記塩基性化合物の製薬学的に許容される塩が好ましいが、酸付加塩は、例え特定の塩自体が、中間体生成物[例えば、その塩が単に精製、及び同定のための目的のみのために生成されるとき、あるいはその塩がイオン交換過程による製薬学的に許容される塩を調製する際の中間体として使用されるときのような]としてのみ所望であったとしても、遊離の塩基形態源としてすべて有用である。本発明の範囲内の製薬学的に許容される塩には、鉱酸および有機酸から誘導される塩が含まれ、そして、ハロゲン化水素酸塩(例えば、塩酸塩及び臭化水素酸塩)、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、スルファミン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、マロン酸塩、シュウ酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、メチレン−ビス−b−ヒドロキシナフトエ酸塩、安息香酸塩、トシラート、ゲンチジン酸塩、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びびキナ酸塩が含まれる。より特定の塩は、式Iの化合物の塩が、塩酸塩である塩である。この発明の別の特定の塩は、式Iの化合物のフマル酸塩である。この発明の好ましい製薬学的に許容される塩は、式Iの化合物の安息香酸塩である。
【0058】
本発明の化合物の塩は、それ自体が活性化合物として有用であるのみならず、例えば、当技術分野の当業者に周知の技術による塩と親化合物、副生成物及び/又は出発物質との溶解度の差を利用することによって化合物の精製目的のために有用である。
【0059】
本発明の更なる特徴に従って、この発明の化合物の酸付加塩は、遊離塩基を適切な酸と反応させ、公知方法を適用又は適合させることによって調製することができる。例えば、この発明の化合物の酸付加塩は、遊離塩基を適切な酸を含む水又はアルコール水溶液又は他の適切な溶媒中に溶解し、そして溶液を蒸発させることによって塩を単離するか、あるいは有機溶媒中で遊離塩基を酸と反応させる(この場合は塩を直接分離するか、あるいは溶液を濃縮することによって得ることができる)ことによって製造し得る。
【0060】
この発明の化合物の酸付加塩は、公知方法を適用又は適合させることによって塩から再生することができる。例えば、本発明の親化合物は、アルカリ(例えば、重炭酸ナトリウム水溶液又はアンモニア水溶液)で処理することによってその酸付加塩から再生することができる。
【0061】
出発物質および中間体は、公知の方法(例えば、参照実施例中の記載と同様な方法又はそれらの自明な化学等価物)を適用又は適合させることによって製造することができる。
【0062】
この発明はまた、上記のスキーム1中のいくつかの中間体を対象とし、従って、それらを製造する場合の本明細書中に記載されている方法はこの発明の更なる特徴を構成する。
【0063】
略語リスト
本発明の説明を通して上記に使用されている際には、別途指示されない限り、次の略語は次の意味を有しているものと理解されるものとする:
【0064】
ACN アセトニトリル
AIBN 2,2’−アゾビスイソブチロニトリル
bid 1日2回
BOC又はBoc カルバミン酸tert−ブチル
BOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウム
n−Bu3SnH 水素化トリ−n−ブチル錫
t−Bu tert−ブチル
Cbz カルバミン酸ベンジル
PTC 相間移動触媒
DAST (ジエチルアミノ)サルファートリフルオリド(Et2NSF3
DCC ジシクロヘキシルカルボジイミド
DCM ジクロロメタン(CH2CI2
DIC 1,3−ジイソプロピルカルボジイミド
DIPEA ジイソプロピルエチルアミン
DMAP 4−(N,N−ジメチルアミノ)ピリジン
DMP reagent デス・マーチンペルヨージナン試薬
DMF ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
EA 元素分析
EDCI 1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・HCl
eq 当量
Et エチル
Et2O ジエチルエーテル
EtOH エタノール
EtOAc 酢酸エチル
FMOC 9−フルオレニルメトキシカルボニル
HOAt 1−ヒドロキシ−7−アザベンゾトリアゾール
HOBT 1−ヒドロキシベンゾトリアゾール
HOSu N−ヒドロキシスクシンイミド(N-hydroxysuccinamide)
HPLC 高速(高性能)液体クロマトグラフィー
LAH 水素化アルミニウムリチウム無水物(lithium aluminum anhydride)
Me メチル
MeI ヨウ化メチル
MeOH メタノール
MeOC(O) クロロギ酸メチル
MOMCI メトキシメチルクロリド
MOM メトキシメチル
MS 質量分析
NaBH4 水素化ホウ素ナトリウム
Na2446 酒石酸ナトリウム
NMR 核磁気共鳴
P ポリマー結合(Polymer bond)
PO 経口投与
PyBOP ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシトリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスファート
TBD 1,5,7−トリアザビシクロ[4.4.0]−デカ−5−エン
RP−HPLC 逆相高速液体クロマトグラフィー(reverse phase-high pressure liquid chromatography)
TBSCI tert−ブチルジメチルシリルクロリド
TCA トリクロロ酢酸
TFA トリフルオロ酢酸
Tf2O トリフルオロメタンスルホン酸無水物(トリフラート
無水物:triflate anhydride)
THF テトラヒドロフラン
THP テトラヒドロピラン
TLC 薄層クロマトグラフィー
【0065】
定義
上記に、そして本発明の説明を通して使用されている際には、別途指示されない限り、次の用語は次の意味を有しているものと理解されるものとする:
【0066】
“酸生物学的等価体(アシドバイオイソスター)(Acid bioisostere)”とは、カルボキシ基に対して広範囲に同様な生物学的特性をもたらす化学的及び物理的類似性を有する基を意味する(Lipinski, Annual Reports in Medicinal Chemistry, “Bioisosterism In Drug Design” 21, 283 (1986); Yun, Hwahak Sekye, “Application of Bioisosterism To New Drug Design” 33, 576-579, (1933); Zhao, Huaxue Tongbao, “Bioisosteric Replacement And Development Of Lead Compounds In Drug Design” 34-38, (1995); Graham, Theochem, “Theoretical Studies Applied To Drug Design abinitio Electronic Distributions In Bioisosteres” 343, 105-109, (1995)参照)。例示的な酸生物学的等価体には、−C(O)−NHOH、−C(O)−CH2OH、−C(O)−CH2SH、−C(O)−NH−CN、スルホ(sulfo)、ホスホノ(phosphono)、アルキルスルホニルカルバモイル、テトラゾリル、アリールスルホニルカルバモイル、N−メトキシカルバモイル、ヘテロアリールスルホニルカルバモイル、3−ヒドロキシ−3−シクロブテン−1,2−ジオン、3,5−ジオキソ−1,2,4−オキサジアゾリジニル、又は3−ヒドロキシイソオキサゾリル、3−ヒドロキシ−1−メチルピラゾリルなどのようなヒドロキシヘテロアリールが含まれる。
【0067】
“有効な量(effective amount)”とは、所望の治療効果をもたらすのに有効なこの発明による化合物/組成物の量を意味する。
【0068】
“水和物(Hydrate)”とは、溶媒分子(複数を含む)がH2Oである溶媒和物を意味する。
【0069】
“患者(patient)”とは、ヒト及び他の哺乳類の双方を含む。
【0070】
“製薬学的に許容されるエステル(Pharmaceutically acceptable ester)”とは、インビボで加水分解し、そして人体内で容易に分解して、あとに親化合物又はその塩をあとに残すそうしたエステルを含むエステルを意味する。適切なエステル基には、例えば、医薬的に許容される脂肪族カルボン酸、特に、アルカン酸、アルケン酸、シクロアルカン酸及びアルカン二酸(alkanedioic acids)から誘導されたエステルが含まれ、上記においては、それぞれのアルキル又はアルケニルモイエティは、最高6個までの炭素原子を有することが有利である。例示的なエステルには、ギ酸エステル、酢酸エステル、プロピオン酸エステル、酪酸エステル、アクリル酸エステル、琥珀酸エチルなどが含まれる。
【0071】
本明細書中で使用される際には、“製薬学的に許容されるプロドラッグ(Pharmaceutically acceptable prodrugs)”とは、この発明の化合物の、健全な医学的判断(sound medical judgment)の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応などを有する患者の組織と接触させて使用するのに適しており、合理的なベネフィット/リスク比に釣り合っており、そして本発明の化合物の意図した使用に有効である、そうしたプロドラッグを意味する。用語“プロドラッグ(prodrug)”とは、例えば、血中における加水分解によって、インビボで速やかに変換し、上記の式の親化合物を生じさせる化合物を意味する。代謝開裂によって、速やかに変換しうる官能基は、この発明の化合物のカルボキシル基と反応する種類の基をインビボで形成する。こうしたものには、アルカノイル(例えば、アセチル、プロパノイル、ブタノイルなど)、非置換及び置換アロイル(例えば、ベンゾイル及び置換ベンゾイル)、アルコキシカルボニル(例えば、エトキシカルボニル)、トリアルキルシリル(例えば、トリメチル−及びトリエチルシリル)、ジカルボン酸により形成されるモノエステル(例えば、スクシニル)などのような基が含まれるが、これらには限定されない。この発明の化合物の代謝的に開裂可能な基がインビボで開裂する場合を契機に、こうした基を担持している化合物がプロドラッグとして機能する。代謝的に開裂可能な基を担持している化合物は、溶解性及び/又は吸収率の上昇の結果として、生物学的利用性の改善を示すことができるという利点を有し、該利点は代謝的に開裂可能な基の存在によって親化合物に付与される。綿密な議論は、引用によって本明細書中に組み込まれる、Design of Prodrugs, H. Bundgaard, ed., Elsevier(1985);Methods in Enzymology; K. Widder et al, Ed., Academic Press, 42, 309-396 (1985); A Textbook of Drug Design and Development, Krogsgaard-Larsen and H. Bandaged, ed., Chapter 5;“Design and Applications of Prodrugs” 113-191 (1991); Advanced Drug Delivery Reviews, H. Bundgard, 8 , 1-38, (1992);J. Pharm. Sci., 77., 285 (1988); Chem. Pharm. Bull., N. Nakeya et aI, 32, 692 (1984); Pro-drugs as Novel Delivery Systems, T. Higuchi and V. Stella, 14 A.C.S. Symposium Series, and Bioreversible Carriers in Drug Design, E.B. Roche, ed., American Pharmaceutical Association and Pergamon Press, 1987中に提供されている。
【0072】
“製薬学的に許容される塩(pharmaceutically acceptable salts)”とは、この発明の化合物の、比較的非毒性である、無機及び有機酸付加塩、及び塩基付加塩を意味する。こうした塩は、化合物の最終の単離及び精製の間にインサイチュで製造することができる。特に、酸付加塩は、遊離の塩基形態の純粋な化合物を適切な有機又は無機酸と独立して反応させ、そしてこうして形成された塩を単離することによって製造することができる。例示的な酸付加塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、ホウ酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシラート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナフチラート(naphthylate)、メシラート(mesylate)、グルコヘプトナート(glucoheptonate)、ラクチオビオナート(lactiobionate)、スルファミン酸塩、マロン酸塩、サリチル酸塩、プロピオン酸塩、メチレン−ビス−β−ヒドロキシナフトアート、ゲンチサート(gentisates)、イセチオン酸塩、ジ−p−トルオイル酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シクロヘキシルスルファミン酸塩及びラウリルスルホン酸塩などが含まれる。例えば、引用によって本明細書中に組み入れられる、S.M. Berge, et al., “Pharmaceutical Salts,”J. Pharm. Sci., 66, 1-19 (1977)を参照されたい。塩基付加塩もまた、酸形態の純粋な化合物を適切な有機又は無機塩基と独立して反応させ、そしてこうして形成された塩を単離することによって製造することができる。塩基付加塩には、製薬学的に許容される金属及びアミン塩が含まれる。適切な金属塩には、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、バリウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、及びアルミニウム塩が含まれる。ナトリウム塩及びカリウム塩が好ましい。適切な無機塩基付加塩は、水素化ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム、水酸化亜鉛などを含む、金属塩基から製造される。適切なアミン塩基付加塩は、安定な塩を形成するのに十分な塩基度を有するアミンから製造され、そして好ましくは、医学用途のためのそれらの低毒性及び受容性のために医薬化学に頻繁に使用されるそうしたアミンが含まれ、アンモニア、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、リシン、アルギニン、オルニチン、コリン、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、ジエタノールアミン、プロカイン、N−ベンジルフェネチルアミン、ジエチルアミン、ピペラジン、トリス(ヒドロキシメチル)−アミノメタン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルアミン、ジベンジルアミン、エフェナミン、デヒドロアビエチルアミン、N−エチルピペリジン、ベンジルアミン、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、塩基性アミノ酸(例えば、リシン及びアルギニン)、及びジシクロヘキシルアミンなどが含まれる。
【0073】
“溶媒和物(Solvate)”とは、この発明の化合物と1つ又は複数の溶媒分子との物理的な会合を意味する。この物理的会合には、水素結合が含まれる。いくつかの例では、溶媒和物は、例えば1つ又は複数の溶媒分子が結晶固体の結晶格子中に組み込まれるときに単離することができる。“溶媒和物”は、溶液相及び単離可能な溶媒和物の双方を包含する。例示的な溶媒和物には、水和物、エタノラート、メタノラートなどが含まれる。
【0074】
“処置すること(treating)”及び“処置(treatment)”とは、疾患状態又は障害を改善するために、あるいは疾患状態又は障害を予防するために、化合物を投与することを意味する。あるいは、疾患状態又は障害の進行を遅らせる。またこうしたことは、疾患状態又は障害になる可能性を減少させることも意味する。この用語は、非治癒(non-curative)である緩和医療を含むが、それに限定されない。
【0075】
実施形態
本明細書中に述べられている発明に関して、下記はそれに関する特定な実施形態である。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、炎症性腸疾患の処置方法であって、それを必要とする患者に、有効な量の式Iの化合物、又はその対応するN−オキシド、プロドラッグ、製薬学的に許容される塩又は溶媒和物を投与することを含んでなる、上記方法である。
【0077】
本発明の別の特定の実施形態は、式Iの化合物、又はその対応するN−オキシド、プロドラッグ、製薬学的に許容される塩又はその塩を、製薬学的に許容される賦形剤と一緒に含んでなる、炎症性腸疾患を処置するための医薬組成物である。
【0078】
更に本発明の別の実施形態は、炎症性腸疾患の処置方法であって、それを必要とする患者に、有効な量のβ−トリプターゼインヒビターである化合物を投与することを含んでなる、上記方法である。
【0079】
本発明の化合物は、所望により塩として供給されることもある。製薬学的に許容されるこうした塩は、それらが医薬目的のための上記の化合物を投与する際に有用であるので、特に関心がある。製薬学的に許容されない塩は、製造プロセス、単離及び精製目的のため、そしていくつかの例では、この発明の化合物の立体異性体形態を分離するために使用する際に有用である。後者には、光学的に活性なアミンから調製されるアミン塩に特に当てはまる。
【0080】
本発明の化合物がカルボキシ基、又は十分に酸性の生物学的等価体(sufficiently acidic bioisostere)を含んでいる場合には、塩基付加塩が形成しえ、使用する際にとても好都合な形態であり;そして実際に、塩形態を使用することは、遊離の酸形態を使用することに本質的に同じである。
【0081】
また、本発明の化合物が塩基性基、又は十分に塩基性の生物的等価体(suffiently basic bioisostere)を含んでいる場合には、酸付加塩が形成しえ、そして使用する際にとても好都合な形態であり;そして実際に、塩形態を使用することは、遊離の塩基形態を使用することに本質的に同じである。
【0082】
この発明の別の目的は、医薬的に有効な量の式Iの化合物と、製薬学的に許容される担体又は希釈剤を含んでなる医薬組成物を提供することである。
【0083】
それが本発明に従って利用することができる複数の活性成分を含むので、それ自体、有益な組み合わせ療法に利用するために有効である医薬組成物を提供することが、本発明の別の目的である。
【0084】
本発明はまた、患者の黄斑変性症を処置し、又は予防するのに有用である2つ又はそれより多い活性成分を組み合わせたキット又はシングルパッケージを提供する。キットは(単独又は製薬学的に許容される希釈剤若しくは担体と組み合わせて)提供され、式Iの化合物及び追加の活性成分(単独又は希釈剤若しくは担体と組み合わせて)も提供されうる。
【0085】
式Iの化合物は、従来使用されているか、又は文献中に記載されている公知の方法を適用させ、又は適合させることによって、あるいは本明細書中で開示されている方法によって製造することができる。
【0086】
任意の上記の適用における式Iの化合物の量は、医薬的に有効な量でありえ、準最適な(suboptimal)有効な量でありえ、あるいは、成分の最終的な組み合わせが患者の黄斑変性症を処置し、又は予防するのに有効である医薬的に有効な量の化合物を含んでいる限り、その組み合わせでありうる。
【0087】
薬理学
本明細書中に述べられている本発明による化合物は、β−トリプターゼを阻害することができることで有用であり、そしてまた、炎症性腸疾患を処置するのに有用である。
【0088】
本発明の特定の局面では、この化合物は単独でも投与されうるが、本発明による化合物が医薬組成物の形で投与されることが提供される。“医薬組成物(Pharmaceutical composition)”とは、式Iの化合物と、製薬学的に許容される担体、希釈剤、コーティング剤、補助剤(adjuvants)、賦形剤、又はビヒクルから成る群より選択される、少なくとも1つの成分を含んでなる組成物を意味し、該成分には、投与方式の種類、及び投与量、投与形態に応じて、例えば、保存剤、増量剤、崩壊剤、湿潤剤、乳化剤、乳化安定化剤、懸濁化剤、等張剤、甘味料、矯味矯臭剤、芳香剤、着色剤、抗菌剤、抗真菌剤、他の治療剤、滑沢剤、吸着遅延又は促進剤(adsorption delaying or promoting agents)、及び分配・調合剤(dispensing agents)などがある。この組成物は、錠剤、丸剤、顆粒剤、粉末剤、水性溶液又は懸濁液、注入可能な液剤、エリキシル又はシロップの形態で提供されうる。例示的な懸濁剤には、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール及びソルビタンエステル、微結晶セルロース、アルミニウムメタハイドロキサイド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天、及びトラガント、又はこうした物質の混合物が含まれる。微生物の作用を防止するための例示的な抗菌及び抗真菌剤にはパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などが含まれる。例示的な等張剤には、糖、塩化ナトリウムなどが含まれる。吸収を延長させる例示的な吸着遅延剤(adsorption delaying agents)には、モノステアリン酸アルミニウム、及びゼラチンが含まれる。吸収を促進する例示的な吸着促進剤(adsorption promoting agents)には、ジメチルスルホキシド及び関連類似物が含まれる。例示的な担体、希釈剤、溶媒、ビヒクル、可溶化剤、乳化剤及び乳化安定化剤には、水、クロロホルム、スクロース、エタノール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、安息香酸ベンジル、ポリオール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、グリセロール、ポリエチレングリコール、ジメチルホルムアミド、ツイーン(登録商標)60、スパン(登録商標)60、セトステアリルアルコール、ミリスチルアルコール、モノステアリン酸グリセリン及びラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタン脂肪酸エステル、植物油(綿実油、落花生油、はい芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油など)及びオレイン酸エチルなどの注入可能な有機エステル、又はこうした物質の適切な混合物が含まれる。例示的な賦形剤には、ラクトース(lactose)、乳糖(milk sugar)、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムが含まれる。例示的な崩壊剤には、澱粉、アルギン酸及びある種の複合ケイ酸塩が含まれる。例示的な滑沢剤には、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、タルク、及び高分子量ポリエチレングリコールが含まれる。
【0089】
他の治療薬がこの発明の化合物と組み合わせて使用することができる。この発明の化合物と組み合わせて使用される治療薬は、別々に、同時に、又は順に投与することができる。式Iの化合物以外の医薬組成物中の成分の選択は、一般に、溶解性などの活性化合物の化学的特性、具体的な投与方式、及び医薬プラクティスにおいて遵守される規定に従って決定される。例えば、ラクトース、クエン酸ナトリウム、炭酸カルシウム、リン酸二カルシウムなどの賦形剤、及び澱粉、アルギン酸及びある種の複合ケイ酸塩などの崩壊剤は、ステアリン酸マグネシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、及びタルクのような滑沢剤と組み合わせて、錠剤を製造するのに使用することができる。
【0090】
この医薬組成物は、錠剤、丸剤、顆粒剤、粉末剤、水性溶液又は懸濁液、注入可能な液剤、エリキシル又はシロップなどの種々雑多の形態で提供されうる。
【0091】
“液体投与剤形(Liquid dosage form)”とは、患者に投与される活性化合物の投与が液体の形態、例えば、製薬学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルであること意味する。活性化合物のほかに、液体投与剤形には、溶媒、可溶化剤及び乳化剤のような当技術分野で通常使用されている不活性な希釈剤を含むことができる。
【0092】
固体組成物ではまた、ラクトース(lactose)、又は乳糖(milk sugar)、及び高分子量ポリエチレングリコールなどのような賦形剤を用いることによって、ソフト及びハードゼラチンカプセルに増量剤として充填する形で使用することもできる。
【0093】
水性懸濁液を使用するときには、それらは乳化剤又は懸濁を容易にする薬剤を含むことができる。
【0094】
エマルション医薬組成物の油相は、公知の方法で公知の成分から構成することができる。この相は単に乳化剤(または、エマルジェントとも呼ばれている)だけを含んでいてもよいが、所望により、少なくとも1つの乳化剤と、脂肪若しくは油、あるいは脂肪と油の双方との混合物を含む。特定の実施形態では、親水性乳化剤が、安定化剤として働く親油性乳化剤と一緒に含まれる。安定化剤を加えるか、又は加えない乳化剤は、共に、乳化ワックスを形成し、そして油と脂肪を一緒にする方法では、クリーム製剤の油性分散相を形成する乳化軟膏基剤が形成される。
【0095】
所望であれば、クリームベースのうちの水相は、例えば、少なくとも、30%w/wの多価アルコール、すなわち、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、マンニトール、ソルビトール、グリセロール、及びポリエチレングリコール(PEG400を含む)、並びにその混合物などの2つ又はそれより多いヒドロキシル基を担持しているアルコールを含むことが可能である。局所製剤は、所望により、皮膚又は他の患部に活性成分の吸収、又は透過を高める化合物を含めることができる。
【0096】
製剤のための適切な油又は油脂の選択は、所望の特性を実現することをベースにしている。すなわち、このクリームは、チューブ又は他の容器からの漏出を回避するために適切な粘稠性(consistency)を有するべたべたしない、非染色性の、かつ可洗性製品であることが好ましいであろう。直鎖であれ、それとも分岐鎖であれ、ジ−イソプロピルミリスタート、デシルオレアート、パルミチン酸イソプロピル、スレアリン酸ブチル、2−エチルヘキシルパルミタート、又はCrodamol CAPと呼ばれている分岐鎖エステルの混合物などのモノ−又はジ塩基アルキルエステル(mono- or dibasic alkyl esters)を使用することができる。こうしたものは、必要な特性に応じて単独又は組み合わせて使用することができる。これに代わって、白色ソフトパラフィン及び/又は流動パラフィン又は他の鉱物油などの高融点液体を使用することができる。
【0097】
実際には、この発明の化合物/医薬組成物は、局所又は全身投与によって、経口、吸入、直腸、経鼻、バッカル、舌下、膣内、結腸、非経口(皮下、筋肉内、静脈内、皮内、髄腔内、及び硬膜外を含めて)、嚢内及び腹腔内を含めて、ヒト及び動物に適切な製剤の形で投与することができる。好ましいルートは、例えば、レシピエントの状態に応じて変化しうることは理解されるところである。
【0098】
“製薬学的に許容される投与剤形(Pharmaceutically acceptable dosage forms)”とは、本発明の化合物の投与剤形を意味し、例えば、錠剤、糖剤(dragees)、粉末剤、エリキシル、シロップ、懸濁剤などの液剤製剤、スプレー剤、吸入タブレット、ロゼンジ、エマルション、溶液、顆粒剤、カプセル及び坐剤、並びに注入のためのリポソーム製剤などの液体製剤を含む。技術及び製剤については、一般的にRemington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Co., Easton, PA, 最新版に見出される。
【0099】
“経口投与に適切な製剤(Formulations suitable for oral administration)”は、それぞれ所定の量の活性成分を含んでいる、カプセル剤、カシェ剤又は錠剤などの別々の単位として;粉末若しくは顆粒剤として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルション、若しくは油中水型液体エマルションとして、提供されうる。この活性成分はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとしても提供されうる。
【0100】
所望により、1つ又は複数の補助的な成分を加えて、圧縮又は成型によって製造することができる。圧縮錠剤は、粉末又は顆粒などの流動性のある形態で、所望により、結合剤、滑沢剤、不活性希釈剤、保存剤、界面活性又は分散剤と混和して、活性成分を適切な機械装置で圧縮することによって製造することができる。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末の化合物の混合物を適切な機械装置で成型することによって製造することができる。錠剤は、所望により、コーティングするか、又は刻みめをつけることができ、そして錠剤中の活性成分の遅延又は制御放出が可能にするように製剤化することができる。
【0101】
直腸投与用の固体組成物は、公知の方法に従って製剤化し、そして本発明の少なくとも1つの化合物を含む坐剤を含む。
【0102】
所望により、そして分配をより効果的にするために、この化合物は、生体適合性があり、生物分解性のポリマーマトリクス(例えば、ポリ(DLラクタイドCOグリコライド)(poly(d,l-lactide co-glycolide))、リポソーム、及びマイクロスフィアなどの遅延放出又は標的送達システムにマイクロカプセル封入するか、又はこのシステムと結合させ、そして皮下又は筋肉内デポーと呼ばれる手法によって皮下又は筋肉内に注入し、2週間又はそれより長い期間化合物の連続的な遅延放出を可能にすることができる。この化合物は、例えば、細菌保持フィルターに通してろ過するか、あるいは使用する直前に、滅菌水、又は他の何らかの滅菌した注入可能な媒体に溶解することができる滅菌した固体組成物の形で殺菌剤を組み込むことによって滅菌することができる。
【0103】
“経鼻又は吸入投与のための適切な製剤(Formulations suitable for nasal or inhalational administration)”とは、経鼻的に、又は吸入によって患者に投与するのに適した形である製剤を意味する。この製剤は、例えば、1〜500ミクロンの範囲の粒径(20〜500ミクロンの範囲の粒径で、30ミクロン、35ミクロンなどの5ミクロン単位で増分させることを含めて)を有する粉末形態の担体を含むことができる。担体が、例えば、鼻スプレー又は鼻点滴のような投与のための液体である適切な製剤には、活性成分の水溶液又は油溶液が含まれる。エアロゾル投与のための適切な製剤は従来から行なわれている方法に従って製造することができ、そして他の治療剤と共に送達することができる。吸入療法は容易に計量式吸入器によって投与することができる。
【0104】
“経口投与のための適切な製剤(formulations suitable for oral administration)”とは、経口的に患者に投与するのに適した形である製剤を意味する。この製剤は、それぞれ所定の量の活性成分を含んでいる、カプセル剤、カシェ剤若しくは錠剤のような別々の単位として;粉末若しくは顆粒剤として;水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として;又は水中油型液体エマルション、若しくは油中水型液体エマルションとして、提供されうる。この活性成分はまた、ボーラス、舐剤又はペーストとしても提供されうる。
【0105】
“非経口投与のための適切な製剤(Formulations suitable for parenteral administration)”とは、非経口的に患者に投与するのに適した形である製剤を意味する。この製剤は、滅菌されており、そして、懸濁化剤、及び増粘剤、及び抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、及び製剤を等張にする溶質を含みうるエマルション、懸濁液、水性及び非水性注入溶液を含み、そして対象とするレシピエントの血液と一体となってpHを適切に調整している。
【0106】
“直腸又は膣内投与のための適切な製剤(Formulations suitable for rectal or vaginal administrations)”とは、患者に、直腸、又は膣内投与するのに適した形である製剤を意味する。坐剤が、こうした製剤のための具体的な形態であり、これはこの発明の化合物をカカオ脂、ポリエチレングリコール又は坐剤ワックスなどの適切な非刺激性賦形剤又は担体[これは、通常の温度では固体であるが、体温で液体となり、それ故、直腸又は膣空洞内で融解し、そして活性成分を放出する]と混和することによって製造することができる。
【0107】
“全身投与のための適切な製剤(Formulations suitable for systemic administration)”とは、患者に全身投与するのに適した形である(in a form 20 suitable)製剤を意味する。この製剤は、筋肉内(transmuscular)、静脈内、腹腔内、及び皮下を含めて、注入・注射によって投与することが好ましい。注入の場合には、本発明の化合物は、液体溶液、特に、ハンクス溶液又はリンゲル溶液などの生理学的に適合可能な緩衝液中に製剤化されている。加えて、化合物は、固体形態に製剤化されていてもよく、使用する直前に再溶解するか、又は懸濁することができる。凍結乾燥形態もまた含まれる。全身投与はまた、経粘膜的、又は経皮的手段による場合もありえ、あるいは化合物を経口的に投与することもできる。経粘膜的又は経皮的投与の場合には、浸透されるべきバリアに適した浸透剤が製剤中に使用される。こうした浸透剤は、当技術分野で一般に知られており、例えば、経粘膜投与のための胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。これに加えて、浄化剤が浸透を容易にするのに使用することができる。経粘膜投与は、例えば、経鼻スプレー、又は坐剤の使用による場合もありうる。経口投与の場合には、化合物は、従来から使用されているカプセル、錠剤、及び強壮薬などの経口投与形態に製剤化される。
【0108】
“局所投与のための適切な製剤(Formulations suitable for topical administration)”とは、患者に局所的に投与するのに適した形である製剤を意味する。この製剤は、局所用軟膏(ointment)、軟膏(salves)、粉末剤、スプレー及び吸入剤、ゲル(水又はアルコールベース)、クリームとして提供することができ、こうしたことは当技術分野で一般的に知られており、あるいはパッチに適用する場合にはマトリクスベースに組み入れて、経皮バリアを通して化合物の放出を制御することが可能となる。軟膏に製剤化するときには、活性成分をパラフィン系又は水混和性の軟膏ベースと共に使用することができる。あるいは、活性成分は、水中油型クリームベースを用いるクリームで製剤化することができる。眼用の局所投与に適切な製剤には、活性成分が適切な担体、特に活性成分の水溶性溶媒中に溶解し、又は懸濁する点眼液が含まれる。口腔内の局所投与の場合に適切な製剤には、フレーバーベース、通例、スクロース、及びアカシア若しくはトラガカント中に活性成分を含んでなるロゼンジ;ゼラチン及びグリセリン、又はスクロース及びアカシアなどの不活性基礎原料中の活性成分を含んでなるトローチ;及び適切な液体担体中に活性成分を含んでなる口内洗浄液が含まれる。
【0109】
“固体投与剤形(Solid dosage form)”とは、本発明の化合物の投与剤形が、例えば、カプセル、錠剤、丸剤、粉末剤、糖剤(dragees)又は顆粒剤のような固体剤形であることを意味する。こうした固体投与剤形では、本発明の化合物を、少なくとも1つの不活性の慣用の賦形剤(又は担体)、例えば、クエン酸ナトリウム又はリン酸二カルシウム、あるいは、(a)増量剤(fillers)又は増量剤(extenders)、例えば、澱粉、ラクトース、スクロース、グルコース、マンニトール及びケイ酸など、(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース及びアカシアなど、(c)保湿剤、例えば、グリセロールなど、(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、バレイショ又はタピオカデンプン、アルギン酸、ある種の複合ケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなど、(e)遅延剤溶液(solution retarders)、例えば、パラフィンなど、(f)吸収促進剤、例えば、4級アンモニウム化合物など、(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコール及びグリセロールモノステアレートなど、(h)吸着剤(adsorbents)、例えば、カオリン及びベントナイトなど、(i)滑沢剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウムなど、(j)乳白剤(opacifying agents)、(k)緩衝剤、並びに腸管のある部分で本発明の化合物を遅延された方法で放出する薬剤と混和する。
【0110】
本発明の組成物中の活性成分(複数を含む)の実際の投与量レベルは、具体的な組成物及び患者のための投与方法に対する所望の治療反応を得るために有効である活性成分(複数を含む)の量を得るように変化しうる。それ故、任意の特定の患者の投与量レベルの選択は、所望の治療効果を含む様々なファクター、投与経路、所望の処置期間、疾患の原因及び重篤度、患者の状態、体重、性別、食事及び年齢、各活性成分の種類及びポテンシー、吸収率、代謝及び/又は排泄及び他のファクターに左右される。
【0111】
単回又は分割用量で患者に投与される、この発明の化合物の1日の総量は、例えば、1日あたり、約0.001〜約100mg/kg(体重)、好ましくは、0.01〜10mg/kg/日の量でありうる。例えば、成人では、投与量は、一般的に、1日あたり、吸入では、約0.01〜約100、好ましくは、約0.01〜約10mg/kg(体重)であり、経口投与では、1日あたり、約0.01〜約100、好ましくは、0.1〜70、より具体的には、0.5〜10mg/kg(体重)であり、そして静脈内投与では、1日あたり、約0.01〜約50、好ましくは、0.01〜10mg/kg(体重)である。組成物中の活性成分のパーセンテージは変化しうるが、適切な投与量を得られるような割合から構成されるべきである。投与単位組成物は、1日の用量を構成することができるようなその分量単位量を含むことができる。いくつかの単位投与剤形はほとんど同時に投与することができることは自明なことである。投与は、所望の治療効果を得るために必要なら何度も投与することが可能である。高用量又は低用量に速やかに反応しうる患者も存在し、そしてかなり弱い維持用量でも十分であることがわかっている患者も存在する。それぞれの具体的な患者の生理学的要件によって、1日あたり1〜4回の服用量割合で長期間処置をすることが必要な他の患者も存在しうる。1日あたり最高1又は2回の服用量で処方することが必要な患者もいることはいうまでもない。
【0112】
製剤は、薬学の分野で周知の任意の方法によって単位投与剤形に調製することができる。こうした方法には、活性成分を、1つ又は複数の補助的な成分から構成される担体と混合させる段階が含まれる。一般的には、製剤は活性成分を、液体担体又は微粉化した固体担体又は双方と均質、かつ密接に混合させるか、次いで必要ならば、生成物を成型することによって調製される。
【0113】
製剤は、単回投与又は多回投与容器、例えば、エラストマー栓を備えた密封アンプル及びバイアルの形で供給され、そして、使用直前に、滅菌液体担体、例えば、注入用水を添加することだけが必要である凍結乾燥(freeze-dried (lyophilized))状態で保管することができる。即時注入(extemporaneous injection)溶液および懸濁液は、上記に述べられている種類の滅菌粉末、顆粒及び錠剤から調製することができる。
【0114】
この発明の範囲内の化合物は、文献及び下記に述べられている試験によると顕著な薬理学的活性を示し、その試験結果によれば、ヒト及び他の哺乳類において薬理学的活性とよい相関があると考えられている。
【0115】
上記に引用されている参照中に記載されている化学反応は、一般的に、この発明の化合物の製造への最も広い適用の観点から開示されている。この反応が本明細書中に開示されている化合物の範囲内に含まれているそれぞれの化合物に記載のように適用されない場合も時々ありうる。こうしたことが起こる化合物は、当技術分野の当業者によって容易に認知されるところである。こうした場合にはすべて、反応は、当技術分野の当業者に知られている従来から行なわれている修正すること、例えば、妨害となる基を適切に保護すること、慣用の代替試薬に変更すること、反応条件に所定の修正を行うことなどによって、成功裡に遂行することができ、あるいは本明細書中に開示されている、又はそうでない場合には従来から行われている他の反応が、この発明の該当する化合物の製造に適用されるであろう。すべての製造方法では、出発物質はすべて、公知であるか、あるいは公知の出発物質から容易に製造することが可能である。
【0116】
糸球体腎炎に罹患している患者をこの発明の化合物及び/又は組成物で処置するレジメンは、患者の年齢、体重、性別、食生活、及び医学的状態、感染症の重篤度、投与経路、活性、有効性、薬物動態などの薬理学的考察、及び使用する具体的化合物の毒物学的概要、及び薬物送達システムが利用されているかどうかを含めて、種々のファクターを踏まえて選択される。本明細書中で開示されている薬物の併用投与は一般的に、制御され、あるいは根絶されていることが示されるまでそれが容認されている期間、継続されるべきである。本明細書中に開示されている薬物の併用での処置を受けている患者は、定期的に従来から行なわれている腎臓機能を測定する方法によってモニタリングして、治療の有効性を判定することができる。こうした方法によって得られたデータの分析の継続によって、治療の間処置レジメンの修正が可能になり、その結果その併用におけるそれぞれの成分の最適な量が投与され、そして処置期間もまた決定することができる。すなわち、処置レジメン/投与スケジュールを、治療の期間にわたって合理的に修正することができ、その結果その併用で満足すべき有効性を示す、一緒に使用される各化合物の最も低い量が投与され、そして併用の形でのこうした化合物の投与は、腎臓障害を成功裡に処置するのに必要である間だけ継続することとなる。
【0117】
式Iの化合物は、ヒトβ−トリプターゼ及びマウスMCPT−6(ヒトβ−トリプターゼのマウスオルソログ)の選択的、かつ可逆的インヒビターである[組み換え酵素を用いてのKiが、それぞれ、38及び920nMである]。
【0118】
マウスTNBSによって誘発された潰瘍性大腸炎における式Iの化合物の効果。
TNBS(トリニトロベンゼンスルホン酸)は、ある種の系統のマウス及びラットにおいて、結腸タンパク質をハプテン化する(haptenating colonic proteins)ことによって大腸炎を誘発し、その結果免疫応答に帰することが知られている。このモデルは、ヒトIBD(特に、クローン病)の組織学的及び免疫学的な双方の複数の特徴点に似ている。
【0119】
プロトコル:
ある実験では、雄性balb/マウスを、−7日目に皮膚上に1%TNBSを投与してプレセンシタイズした(pre-sensitized)。0日目に、35%エタノールに溶解したTBNS(2.5mg/100mcl)又は50%エタノールに溶解した100mg/kg TNBSを直腸内に投与し、そして大腸炎関連の読み取り値を4日後に測定した。1%カルボキシメチルセルロース−ツイーン中の、塩酸塩又はフマル酸塩としての式Iの化合物を経口投与した。スルファザラジン(スルファサラジン)(sulfazalazine)を100mg/kgで与えた。双方の化合物は1日1回与えた。
【0120】
肉眼的スコア:
0 損傷なし
1 充血(Hyperremia)(潰瘍なし)
2 充血及び腸管壁肥厚(潰瘍なし)
3 1部位の潰瘍(腸管壁肥厚なし)
4 2部位又はそれより多い部位の潰瘍/炎症
5 0.5cmの炎症及び大きな損傷
6〜10 1cm又はそれより大きい大きな損傷(0.5cm=1ポイント)
0/1 下痢+/−
0/1/2 拡張(dilatation)なし/部分的拡張/全長にわたる拡張
【0121】
結果:
式Iの化合物は、3〜30mg/kgの範囲の投与量で肉眼的損傷をおよそ20〜50%減少させた。この化合物はまた、実験的大腸炎の複数の実施態様において保護する効果を示し、これはスルファザラジンポジティブコントロールと比べて遜色がなかった。
【0122】
結果を下記表1に示す。
【表1】

【0123】
このデータによれば、IBD(クローン病及び潰瘍性大腸炎)の処置のための式Iの化合物(及び他のトリプターゼインヒビター)の有用性が示唆された。
【0124】
最近のIBDの処置は、炎症(flares)を制御するために使用するステロイドとともに第一選択処置としての5−ASA(スルファザラジン)から成っている。5−ASAは、せいぜい中等度の有効性を示すことが知られており、そしてステロイドを使用することは多くの毒性によって制限されている。抗−TNFαは、経口治療に応答しない患者に使用される。手術は劇症型、又は難治性症例に対して使用される。式Iの化合物の潜在的利点は、5−ASAに比較してより優れた有効性があること、ステロイドと比較してより優れた安全性があること、及び抗−TNFαと比較して経口投与であることを含んでいる。
【0125】
この発明は、本発明の意図又は本質的な特性から逸脱せずに他の具体的な形で
具体化することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
腸障害を処置する方法であって、それを必要とする患者に有効な量の式I:
【化1】

の化合物、又はその対応するN−オキシド、プロドラッグ、製薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物を投与することを含んでなる、上記方法。
【請求項2】
式Iの化合物、又はその対応するN−オキシド、プロドラッグ、製薬学的に許容される塩若しくは塩を含んでなる、炎症性腸疾患を処置するための医薬組成物。
【請求項3】
医薬的に有効な量の式I:
【化2】

の化合物を投与することによって改善することができる状態に罹患しているか、又は曝されているヒト患者又は非ヒト動物患体を処置する方法であって、状態がクローン病及び潰瘍性大腸炎から選択される、上記方法。

【公表番号】特表2013−515723(P2013−515723A)
【公表日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−546017(P2012−546017)
【出願日】平成22年12月13日(2010.12.13)
【国際出願番号】PCT/US2010/060002
【国際公開番号】WO2011/078983
【国際公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【出願人】(504456798)サノフイ (433)
【Fターム(参考)】