説明

炒め物用魚肉ソーセージ

【課題】魚肉ソーセージを野菜等と油炒めするときに、油を使用する必要がない魚肉ソーセージを提供する。
【解決手段】ラード及び/又は豚脂を10〜18重量%を他の原材料と均質化しないように混合されていることを特徴とする魚肉ソーセージである。魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、ラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で均質化しないように混合して製造するのが好ましい。あるいは、魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、5〜10mmのサイズに細断したラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で混合し手製造するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は魚肉すり身に、食塩、砂糖などの調味料、香辛料、澱粉、植物油等の副原料を混合し、ペースト化して樹脂製のケーシングに充填し、レトルト加熱して製造される魚肉ソーセージに関する。詳細には、炒め物等の加熱調理に適した魚肉ソーセージに関する。
【背景技術】
【0002】
魚肉ソーセージは、生でそのまま食べることもできるし、適当な大きさにカットして野菜等と一緒に油炒めして食べることもでき、常温で保存できる安価な食材として広く利用されている。特許文献1には、「原料魚肉を空ずり、塩ずりした後融点が34〜40℃の油脂を原料魚肉に対して5〜20%加えて本ずりし、油脂を添加した後からすりが終了するまではすり上り温度が16〜26℃となるように温度管理することを特徴とするかまぼこと魚肉ソーセージ双方の性質を併有する水産練製品を製造する方法。」が記載されている。また、特許文献2には、「融点が高い植物性油脂を所要の割合でミンチ状魚肉に混入撹拌し、上記植物性油脂を粒子状の固化状態で上記魚肉中に分散させた後、これを薄膜ケーシング内に充填し成形してなる魚肉ウィンナーソーセージ。」が記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開昭58−13370号
【特許文献2】特開2001−275621号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は魚肉ソーセージを野菜等と油炒めするときに、油を使用する必要がない魚肉ソーセージを提供することを課題とする。現代社会は、わずかな手間でも省けるものなら省きたいという消費者の基本的な要望があり、魚肉ソーセージを野菜等と油炒めするときに、フライパンにいちいち油をひく必要がないことはそれだけでも商品価値を高めることになる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
魚肉ソーセージには一般的に〜5%程度の植物油が混練されているが、その程度の油の含有量では、油をひかないフライパン等で加熱するとフライパンにすぐにくっついてしまう。また、特許文献1のように多い量の油を添加しても均一に混ぜてしまうと、フライパン等で加熱しても十分量の油がしみだしてこないため、炒め油を無しでもよいというわけにはいかなかった。
発明者らは、油を均一に混ぜてしまわないで、油のままで存在させることによりその部分の油がすぐに溶け出し、炒め油を用いなくても、ソーセージから溶け出す油が炒め油として機能することを見出し本発明を完成させた。
【0006】
本発明は(1)〜(3)の魚肉ソーセージを要旨とする。
(1)ラード及び/又は豚脂を10〜18重量%を他の原材料と均質化しないように混合されていることを特徴とする魚肉ソーセージ。
(2)魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、ラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で均質化しないように混合したものである(1)の魚肉ソーセージ。
(3)魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、5〜10mmのサイズに細断したラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で混合したものである(1)の魚肉ソーセージ。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、魚肉ソーセージの中にラード及び/又は豚脂を均一にならないように混合させてあるため、フライパン等で加熱するとそれらがすぐに溶け出し、炒め油として機能する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明において魚肉ソーセージとは、魚肉すり身に、食塩、砂糖などの調味料、香辛料、澱粉、植物油等の副原料を混合し、ペースト化して樹脂製のケーシングに充填し、レトルト加熱して製造される魚肉を原料とするソーセージである。蓄肉を原料として用いるものはタンパク質の質も異なり、油脂の含有量も異なるので、魚肉を主原料とするソーセージとは性質が異なる。また、天然の羊腸、豚腸、人工のコラーゲンシートなど、ケーシングごと食べられるように設計されたウィンナーソーセージと異なり、樹脂製のケーシングに充填された魚肉ソーセージは食べるときにケーシングを取り除くので、ソーセージの肉がそのまま露出するため、フライパンなどによる加熱の際にくっつきやすい性質を有する。
【0009】
本発明で用いる油脂はラード及び/又は豚脂である。ラードは豚脂を精製したもので27〜40℃の融点を有する。豚脂は、A、B、C脂などと分けて販売されているが、Aは背脂(組織を含む)、Bは背脂(組織を含まない)、Cは腹脂であり、融点はA>B>Cの順になる。ラード、豚脂は融点が本発明に適するだけでなく、油脂としての旨味が他の動物油脂や植物油に比べて格段に高いので好ましい。
本発明では、油脂を10〜18重量%と、多量に入れるので、脂の好きな人ならそのまま生で食べることもできるが、油炒めにするのが好ましい。豚脂の油がフライパンに敷く油として機能し、一緒に炒める野菜などにも豚脂の旨味がからまり、おいしい炒め物ができる。魚肉ソーセージに添加する油脂の量を段階的に増加して、40gの魚肉ソーセージと野菜182g(キャベツ100g、もやし55g、ニンジン20g、ニラ7g)を炒めて比較試験をしたところ、10%未満の油脂添加量では油脂が不足し蒸し焼きに近い味であったため、10%未満では不十分であると判断された。上限は18重量%より多くてもよのであるが、JAS規格に定められた魚肉ソーセージの規格の範疇にする為、上限は18%とした。
【0010】
油脂を均質にならないように混合するのが本発明の重要な点である。均質化しないとは、油脂が魚肉ペーストと完全に混ざり合っていない、目でみても白い油脂の部分がわかる程度の混合状態であることを意味する。そのように混合するためには、魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、ラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で混合する。混合は、ラードや豚脂の白い部分が材料全体に均一に広がった後、白い部分が混ざって見えなくなる前にやめる。
あるいは、魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、5〜10mmのサイズに細断したラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で混合することもできる。あらかじめラード及び/又は豚脂をチョッパーなどで5〜10mmのサイズにしておき、これらをつぶさないようにペースト状の原材料に混合するとよい。
具体的には、油脂の混合は油脂以外の主副原料が均一に混合されたペースト状になった段階で、油脂を添加し練り肉中に油脂が点在する状態にすることであり、例えば、総重量197kgの場合、ニーダーを30秒〜1分間撹拌する程度でそのような状態になる。
このように混合すると、一部の油脂は魚肉ソーセージの表面にでており、一部の油脂は内部に含まれることになる。野菜炒めなどにする場合、魚肉ソーセージは厚み5〜10mm前後に斜めにカットして使用されることがほとんどであり、内部に含まれた油脂もほどよく、表面に出てくるため、炒め油として機能する。
【0011】
以下に本発明の実施例を記載するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0012】
冷凍すり身105kgを解凍し、荒摺り、塩摺り(食塩3.5kg)し、エキス、砂糖、グルタミン酸ソーダなどの調味料、香辛料、色素を合計33.01kg、澱粉18kg、ゼラチン5kg、グルテン5kg、水45kgを添加、混合しペースト状にした。豚脂C脂40kg(原材料中15.693重量%)をあらかじめチョッパーで5〜10mm程度のサイズに細断しておき、上記ペーストに混合する。豚脂の粒がつぶれてしまわないように10℃以下で均一に拡散させる。これを樹脂製ケーシングに充填し、118℃で16分間加熱し、冷却した。
【0013】
できた魚肉ソーセージは薄ピンクの肉の中に白い豚脂が散った外観であった。これを厚さ8mmくらいの斜め切りして、裁断した野菜と野菜炒めを作った(魚肉ソーセージ40g、キャベツ100g、もやし55g、ニンジン20g、ニラ7g)。フライパンに油をひかず、先のソーセージを炒めてキャベツを添加した。ソーセージもキャベツもフライパンにくっつくことなく、うまく野菜炒めができた。
【産業上の利用可能性】
【0014】
本発明は、魚肉ソーセージに含まれる豚脂が炒め油として機能するので、炒め油を必要としない、野菜炒め用魚肉ソーセージを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラード及び/又は豚脂を10〜18重量%を他の原材料と均質化しないように混合されていることを特徴とする魚肉ソーセージ。
【請求項2】
魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、ラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で均質化しないように混合したものである請求項1の魚肉ソーセージ。
【請求項3】
魚肉ソーセージの原材料をすべて混合した後に、5〜10mmのサイズに細断したラード及び/又は豚脂をこれらの融点以下の温度で混合したものである請求項1の魚肉ソーセージ。


【公開番号】特開2008−182897(P2008−182897A)
【公開日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−16350(P2007−16350)
【出願日】平成19年1月26日(2007.1.26)
【出願人】(000004189)日本水産株式会社 (119)
【Fターム(参考)】