説明

炭を含む固化材

【課題】本発明は、軟弱土や汚泥に強度を持たせるとともに、土壌本来の力である、消化能力、浄化能力、通気能力、還元能力を促進させる固化材を提供する。
【解決手段】軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の炭を含む固化材である。この固化材は、軟弱土や汚泥に強度を持たせるとともに、土壌に活力を与えて、環境を浄化する働きを有する。また、前記固化材で土壌を固化した土壌固化物を搬出し、スポーツグランド用の土材等として再利用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟弱土や汚泥に強度を持たせるとともに、土壌本来の力である、消化能力、浄化能力、通気能力、還元能力を高める固化材に関する。
【背景技術】
【0002】
軟弱土や汚泥の土壌地は、農作物成育条件が整わないので、農地として利用することができない。また、そのままでは土壌地に立ち入ることさえも容易でない。軟弱土や汚泥の土質改良には、固化材を用いる固化処理が施される。また、固化材は、軟弱土や汚泥の土質改良をするときだけではなく、土木工事に伴って発生する土、腐食土等を搬出するときなどにも使用される。この場合、土壌の固化処理を施した後、搬出を行う。これまで、セメント系及び石灰系固化材を用いた土壌の固化処理が実施されている。
【0003】
セメント系及び石灰系固化材は、セメント、生石灰等の無機質の粉末からなり、水で練り、型に流しこんだり塗りこんだりして放置すると、水和作用により凝固・硬化する。セメント系及び石灰系固化材で固めることにより耐久性に富む構造物を形成することができる。しかし、セメント系固化材は、原料に必然的に六価クロム(Cr6+)を含有し、その流出が懸念されている。また、有機質土壌や高含水土壌を十分に固めることができない。また、セメント系及び石灰系固化材を使用して固化処理した土壌はpHが11〜14程度と強アルカリ性を示し、生物が付着繁殖しにくいため、生態系に悪影響を及ぼすとされている。さらに、この改良土壌に雨水や地下水等が浸透することにより生じる浸出水が周辺環境に悪影響、すなわちアルカリ公害を引き起こす虞があった。これを防止するために、酸性の化学物質を用いて中和する試みがなされているが、この場合には、改良土壌の固化強度が低下して、必要とする強度が得られない場合が生じていた。
【0004】
セメント系及び石灰系固化材以外の固化材として軽焼マグネシアを成分とする固化材が開発されている。特許文献1には、軽焼マグネシアを主成分とする土壌硬化組成物が開示されている。特許文献2には、軽焼マグネシアを含む土壌固化材が開示されている。また、特許文献3には、軽焼マグネシアを含む汚泥用固化処理材が開示されている。軽焼マグネシアを成分とする固化材は、セメント系及び石灰系固化材と同程度の強度の固化作用を有するだけでなく、セメント系及び石灰系固化材を用いた土壌に比べてpHを低くし、土壌のアルカリ性を解消した環境に負荷の少ないものとなっている。また、軽焼マグネシア固化物は粉砕して土壌と混合しても土壌環境に影響を与えず、肥料分として還元されるという利点がある。
【0005】
一方、土壌は、植物生産の基盤としての機能を持っていると同時に、地球上の元素循環の主要な部分を担い、生物の生息環境を恒常的に保つ働きを持つ。土壌における元素循環の流れは以下に示される。1.土壌中の有効微生物群が、落ち葉、動物の糞尿等の土壌中の有機物を分解する。2.分解物は土壌に還元され、この結果、活力のある土壌となる。3.活力のある土壌は、消化能力、浄化能力、通気能力、還元能力をさらに発揮する。
【特許文献1】特開2001−200252
【特許文献2】特開2003−13063
【特許文献3】特開2005−13973
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、軽焼マグネシアを用いた固化材は、セメント系及び石灰系固化材と比較して長所を有するが、活力のある土壌とする及び環境を浄化する効果に関しては十分な効果が得られていない。このため、固化材として優れた効果を有し、かつ活力のある土壌とする及び環境を浄化する効果に優れた固化材が望まれている。
【0007】
そこで、本発明は、軟弱土や汚泥に強度を持たせるとともに、土壌本来の力である、消化能力、浄化能力、通気能力、還元能力を高める固化材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を鑑みて鋭意検討した結果、軽焼マグネシアを含む固化材に炭を加えることにより、軟弱土や汚泥に強度を持たせるとともに、土壌本来の力である、消化能力、浄化能力、通気能力、還元能力を高める固化材を得られることを見出し、本発明に想到した。
【0009】
本発明の請求項1の固化材は、土壌を固化する固化材において、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及び炭を含むことを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2の固化材は、土壌を固化する固化材において、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の炭を含むことを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3の固化材は、前記請求項1又は2記載の固化材で、前記炭は、産業廃棄物が炭化されたものを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4の固化材は、前記請求項3記載の固化材で、前記産業廃棄物が、家畜の糞尿、籾殻、木材チップ、草木又は食品のいずれか1つ以上であることを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5の固化材は、請求項1〜4のいずれか1項記載の固化材で、前記炭が粉炭であることを特徴とする。
【0014】
本発明の請求項6の土壌固化物の製造方法は、前記請求項1〜5のいずれか1項記載の固化材を土壌に添加し、攪拌することを特徴とする。
【0015】
本発明の請求項7の土壌固化物は、前記請求項6記載の土壌固化物の製造方法により得られたことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8の固化材は、土壌を固化する固化材において、その構成成分に炭を含み、かつ肥料成分に富み、軟弱土壌を改良するとともに土壌に活力を与え、作物や緑化に適することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の請求項1によれば、軽焼マグネシアは土壌中の水分と結合すると水酸化マグネシウムとなり、その後空気中の炭酸ガスと反応して土壌の強度を増大させ、セメント系及び石灰系固化材に比べてpHが低く環境負荷の少ない土壌固化物とする。また、炭の多数の孔内に微生物が繁殖することにより、土壌本来の能力を発揮し、木の実、落ち葉、動物の排泄物や死骸、その他腐敗物を分解し、土壌を活性化できる。このため、農作物等の植物の生産に適した土壌を提供する。また、活力のある土壌は、上記腐敗物からの腐敗臭等の不快臭を浄化する働きもあるため、人が生活しやすい環境を提供する。また、軽焼マグネシア自体もマグネシウム成分として肥料となるとともに、軽焼マグネシア以外の他の肥料を加えることにより、土壌を活性化する効果を高めることができる。さらに、炭には元来から、脱臭作用があるため、腐敗臭等の不快臭の浄化の効果を高めることができる。
【0018】
本発明の請求項2によれば、軽焼マグネシアは土壌中の水分と結合すると水酸化マグネシウムとなり、その後空気中の炭酸ガスと反応して土壌の強度を増大させ、セメント系及び石灰系固化材に比べてpHが低く環境負荷の少ない土壌固化物とする。また、炭の多数の孔内に微生物が繁殖することにより、土壌本来の能力を発揮し、木の実、落ち葉、動物の排泄物や死骸、その他腐敗物を分解し、土壌を活性化できる。このため、農作物等の植物の生産に適した土壌を提供する。また、活力のある土壌は、上記腐敗物からの腐敗臭等の不快臭を浄化する働きもあるため、人が生活しやすい環境を提供する。また、軽焼マグネシア自体もマグネシウム成分として肥料となるとともに、軽焼マグネシア以外の他の肥料を加えることにより、土壌を活性化する効果を高めることができる。加えて、アルカリ中和剤によって、固化材のアルカリ成分を中和し、土壌中の微生物を含む草木の植物にとって適切である中性の土壌環境を提供する。さらに、炭には元来から、脱臭作用があるため、腐敗臭等の不快臭の浄化の効果を高めることができる。
【0019】
本発明の請求項3によれば、産業廃棄物を炭化させ、その一部又は全部を本発明の炭として使用することにより、産業廃棄物を有効に処分できる。この産業廃棄物は土壌中で分解され浄化されると同時に、有機物として土壌中に還元され、土壌に活力を与える効果を有する。さらに、炭の脱臭作用により、産業廃棄物の不快臭を浄化する効果を有する。
【0020】
本発明の請求項4によれば、家畜の糞尿、もみがら、炭、草木、食品といった産業廃棄物を炭化させ、その一部又は全部を本発明の炭として使用することにより、産業廃棄物を有効に処分できる。この産業廃棄物は土壌中で分解され浄化されると同時に、有機物として土壌中に還元され、土壌に活力を与える効果を有する。さらに、炭の脱臭作用により、産業廃棄物の不快臭を浄化する効果を有する。
【0021】
本発明の請求項5によれば、炭を粉炭とすることにより、炭を固化材中に均等に分布させることができる。また、粉状だと物体の容積を取らないため、取り扱いやすくなる。
【0022】
本発明の請求項6の土壌固化物の製造方法によれば、軟弱土や汚泥に強度を持たせるとともに、土壌本来の力である、消化能力、浄化能力、通気能力、還元能力を高める。このため、農作物の生産や土壌の緑化を促進できる。また、炭の脱臭作用より腐敗臭等の不快臭の浄化の効果を高めることができる。さらに、本製造方法で固化された土壌固化物は、目的に応じて搬出することができる。
【0023】
本発明の請求項7によれば、請求項6記載の製造方法で固化された土壌固化物を得ることができる。土壌固化物は目的に応じて搬出することができる。これらの搬出した土壌固化物は、道路路床盛土、構造物の裏込め、道路路体用盛土、道路法面及び道路の中央分離帯用土材、河川堤防土材等の土木工事用の土材、宅地・公園・緑地造成用の地盤改良土材、スポーツグランド用の土材、植生用の培土材、海浜の砂防林帯及び砂漠化防止帯等の用途に適宜好適に再利用することができる。また、川や湖沼等に堆積する底泥土を固化した土壌固化物を搬出することにより、水質の浄化ができる。さらに、土木工事に伴って発生する土、腐食土等を簡便に搬出することができる。
【0024】
本発明の請求項8によれば、その構成成分に炭を含み、かつ肥料成分に富み、軟弱土壌を改良するとともに土壌に活力を与えるので、農作物の生産や土壌の緑化に適する土壌を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
【0026】
本発明は、土壌を固化する固化材において、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及び炭を含むことを特徴とする固化材に関する。固化材には、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及び炭以外にも任意の化学物質を含ませることができる。固化材を構成するものを均一に混合し、粉末状として、固化材にしてもよい。
【0027】
本発明の固化材は、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の炭を含ませることができる。本発明において、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、アルカリ中和剤の重量比は、軽焼マグネシア:他の肥料:アルカリ中和剤=65〜85:2〜8:15〜25であり、より好ましい重量比は、軽焼マグネシア:他の肥料:アルカリ中和剤=75:5:20である。軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して0.5〜10重量部の炭を含む固化材において、強力な土壌固化効果を得ることができる。炭が0.5重量部以下であると、炭の効果が弱く、炭が10重量部以上であると、土壌固化効果が弱くなり、土壌固化材として適していない。軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、約5重量部の炭を含んだ固化材が特に好ましい。
【0028】
本発明に用いられる軽焼マグネシアは、炭酸マグネシウムを800℃前後で焼成することにより得られる。軽焼マグネシアは土壌中の水分と結合すると水酸化マグネシウムとなり、その後空気中の炭酸ガスと反応して土壌の強度を増大させ、セメント系及び石灰系固化材に比べてpHが低く環境負荷の少ない土壌固化物とする。また、マグネシウム成分は植物の生育にとって必要な必須要素であり、軽焼マグネシアは、肥料としての機能も有する。
【0029】
本発明に用いられる軽焼マグネシア以外の他の肥料は、従来から知られている肥料を用いる。例として、尿素、硫酸アンモニウム、石灰窒素などの窒素肥料、過リン酸石灰、溶成リン肥などのリン酸肥料、塩化カリウムなどのカリウム肥料、牛糞尿堆肥、油かす、魚かす、骨粉などの有機質肥料が挙げられる。
【0030】
本発明に用いられるアルカリ中和剤は、アルカリ性の固化材成分を中和できる物質であれば限定されない。アルカリ中和剤によって、アルカリ性である軽焼マグネシアを中和できる。また、アルカリ中和剤によって、アルカリ性の固化材成分を中和し、土壌中の微生物を含む草木の植物にとって適切である中性の土壌環境を提供することができる。アルカリ中和剤の例としては、シュウ酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、硫酸塩などが挙げられる。
【0031】
本発明の炭は、木材等を炭化して作ったものをさすが、その製法は限定されない。例えば、黒炭は木材を400℃〜700℃の温度で炭化させ、熱をさましてから取り出すことにより製法される。一方、白炭は窯で焼きあげている途中で空気を入れて温度を約1000℃まで上げ、最後に窯から取り出して灰をかけ、さますことにより製法される。蒸気を用いた炭の製造方法としてもよい。また、本発明の炭は粉末の状態の粉炭として用いてもよい。さらに、これらの組み合わせであってもよい。なお、炭の効能としては、1.炭の孔内に微生物が生育できる環境を提供する、2.土壌に活力を与える、3.浄化作用を有する、4.脱臭能力がある、等が従来から知られている。
【0032】
また、本発明の炭は、産業廃棄物が炭化されたものを含む。炭は、その一部又は全部を産業廃棄物が炭化されたものから構成することができる。産業廃棄物としては、家畜の糞尿、もみがら、炭、草木、又は食品等が挙げられる。ただし、重金属などの有害物を含んでいる産業廃棄物は土壌を汚染するため、本発明の固化材の炭としては好ましくない。
【0033】
本発明の土壌固化物の製造方法は、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の炭を含む本発明の固化材を土壌に添加し、攪拌することからなる。軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して0.5〜10重量部の炭を含む固化材において、強力な土壌固化効果を得ることができる。炭が0.5重量部以下であると、炭の効果が弱く、炭が10重量部以上であると、土壌固化効果が弱くなり、土壌固化材として適していない。軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、好ましくは3〜7重量部の炭、より好ましくは約5重量部の炭を含んだ固化材が特に好ましい。
【0034】
本発明の固化材の用途としては、棚田、土水路、ため池等の法面を補強することが挙げられるが、これらに限定されない。例えば、宅地、公園、遊歩道等の軟弱土や汚泥を固化するために用いてもよい。
【0035】
また、本発明の土壌固化物の製造方法で製造された土壌固化物は、目的に応じて搬出することができる。例えば、固化材を用いて、土木工事に伴って発生する土、腐食土等を固化処理し、搬出を行ってもよい。これらの搬出した土壌固化物は、道路路床盛土、構造物の裏込め、道路路体用盛土、道路法面及び道路の中央分離帯用土材、河川堤防土材等の土木工事用の土材、宅地・公園・緑地造成用の地盤改良土材、スポーツグランド用の土材、植生用の培土材、海浜の砂防林帯及び砂漠化防止帯等の用途に適宜好適に再利用することができる。
【0036】
以下、本発明の実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0037】
軽焼マグネシアの43.9重量部、半水石膏の56.1重量部、焼成ダストの97.5重量部、硅砂の31.7重量部、高分子凝集剤のアニオン系ポリアクリルアミドの3.66重量部、過リン酸石灰の10重量部を配合させた粉末状混合物を、軽焼マグネシアを含む組成物Aとした。次に、軽焼マグネシアを含む組成物A100重量部当たり、炭の5重量部を配合し、固化材Aを得た。木材を蒸し焼きにし、粉末状にしたものを炭とした。
【0038】
固化材A30重量部、関東ローム100重量部(含水比42%)、水50重量部をホバートミキサーで3分間攪拌して、土壌固化物を得た。1日間室内で静置したところ、土壌固化物はほぼ固化し、3日間室内で静置すると、完全に固化した。固化した土壌10gを100mlの純水に浸漬してpH測定を行うと約10であった。
【実施例2】
【0039】
実施例1の軽焼マグネシアを含む組成物A100重量部に、アルカリ中和剤としてリン酸二水素カリウム27重量部、及び炭5重量部を配合し、粉末状混合物である固化材Bとした。
【0040】
次に、固化材B30重量部、関東ローム100重量部(含水比42%)、水50重量部をホバートミキサーで3分間攪拌して、土壌固化物を得た。1日間室内で静置したところ、土壌固化物はほぼ固化し、3日間室内で静置すると、完全に固化した。固化した土壌10gを100mlの純水に浸漬してpH測定を行うと約8であった。実施例1と比較して、pHが中性に近く、アルカリ中和剤リン酸二水素カリウムの効果が確かめられた。
【実施例3】
【0041】
軽焼マグネシアの50重量部、硅砂の47重量部、及び過リン酸石灰の3重量部からなる組成物100重量部当たりに、炭の5重量部を配合し、粉末状混合物である固化材Cを得た。木材を蒸し焼きにし、粉末状にしたものを炭とした。
【0042】
得られた固化材C15重量部と水田土壌100重量部(含水比61%)を混合攪拌し、1日間静置し固化土壌物を得た。その後、固化土壌物を鉢に敷き観葉植物を植えて、その生育状況を観察した(試験区)。対照として、固化材Cを用いない水田土壌のみを敷いた鉢における観葉植物の生育状況も観察した(対照区)。その結果、対照区に比して試験区の植物は葉の緑が強くつやがあり、健全な植物に成長した。固化材Cの添加により、試験区の土壌の質が改善され、活力のある土壌に変化したためと考えられる。
【実施例4】
【0043】
軽焼マグネシアの50重量部、硅砂の47重量部、及び過リン酸石灰の3重量部からなる組成物100重量部当たりに、15重量部のアルカリ中和剤リン酸二水素カリウムの、及び5重量部の炭を配合し、固化材Dを得た。木材を蒸し焼きにし、粉末状にしたものを炭とした。
【0044】
得られた固化材D20重量部と牛の糞尿が混ざっている畑土壌100重量部(含水比55%)を混合攪拌し、1日間静置し固化土壌物を得た。固化土壌物の強度は固かった。また、炭の脱臭作用により、糞尿の不快臭は抑えられた。
【実施例5】
【0045】
軽焼マグネシアの77重量部、アルカリ中和剤であるリン酸二水素カリウムの18重量部及び過リン酸石灰の5重量部からなる組成物100重量部当たりに、炭の5重量部を配合し固化材Eを得た。木材を蒸し焼きにし、粉末状にしたものを炭とした。固化材E15重量部を水田土壌100重量部(含水比61%)へ加え、攪拌した。攪拌混合物を他の場所へ搬出し放置したところ、18時間経過後ほぼ完全に固化した。その後、固化物を地面に敷き均し、転圧した。2日後、転圧した箇所は固くなった。このことから、土壌固化物は、例えば、スポーツグランド用の土材として好適に用いることができることがわかった。
【実施例6】
【0046】
実施例5の固化材Eを土壌に添加し、農作物ネギに対する効果を調べた。比較例としては、固化材Eを添加しない土壌を使用した。その結果、本発明の固化材Eを添加した土壌で成育したものは、添加しない土壌で成育したものに比べて約1.2〜1.4倍の大きさを有した。このことより、本発明の固化材を用いた土壌は、優れた植物育成効果を有することがわかった。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
土壌を固化する固化材において、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及び炭を含むことを特徴とする固化材。
【請求項2】
土壌を固化する固化材において、軽焼マグネシア、軽焼マグネシア以外の他の肥料、及びアルカリ中和剤を含む組成物100重量部に対して、0.5〜10重量部の炭を含むことを特徴とする固化材。
【請求項3】
前記炭は、産業廃棄物が炭化されたものを含むことを特徴とする請求項1又は2記載の固化材。
【請求項4】
前記産業廃棄物が、家畜の糞尿、籾殻、木材チップ、草木又は食品のいずれか1つ以上であることを特徴とする請求項3記載の固化材。
【請求項5】
前記炭が、粉炭であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の固化材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項記載の固化材を土壌に添加し、攪拌することを特徴とする土壌固化物の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の土壌固化物の製造方法により得られたことを特徴とする土壌固化物。
【請求項8】
土壌を固化する固化材において、その構成成分に炭を含み、かつ肥料成分に富み、軟弱土壌を改良するともに土壌に活力を与え、農作物の生産や土壌の緑化に適することを特徴とする固化材。



【公開番号】特開2006−265504(P2006−265504A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−90000(P2005−90000)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(501362021)株式会社エコ・プロジェクト (6)
【Fターム(参考)】