説明

炭化水素の流動触媒分解期間中に触媒に対して有毒な金属を除去する方法

【課題】流動触媒分解(FCC)期間中に、ゼオライト含有触媒に有毒なバナジウム及び他の金属を炭化水素から除去する方法を提供する。
【解決手段】外面上に1種又は複数の捕捉金属を分散させたヒドロタルサイトMe−HTC(ここでMeはBa、Sr、Ca、Fe、Mn、Ce、La又はZnを表す)を、1種又は複数の触媒と同時に炭化水素供給物とともに、又は炭化水素供給物及び1種又は複数の触媒が添加された後にFCCユニットに添加する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
現代の製油所における1つの主要な操作は触媒分解の工程である。この工程において、全原油の分溜時に生成される幾つかの重油(しばしば「ガス油」と呼ばれる)は流動ゼオライト含有触媒を使用して分解又は「クラック」される。
【0002】
過去数年間、軽油の、スイート原油の供給が次第に減少してきたので、ガソリンのような種々の燃料における使用に適する炭化水素の供給を維持するために、触媒分解が次第に重要になってきた。より重い、よりサワーな原油の増加していく使用のために発生した問題は、より重い原油がバナジウム及びニッケルポルフィリンのような実質的により有機的な金属化合物を含有することである。これらの金属は、金属、特にニッケル及びバナジウムが、使用される流動分解触媒に極めて有害である点で、重油分解において、多数の望ましくない反応を惹起する。高沸点留分中に存在するこれらの金属は、分解触媒上に堆積し、経時的に蓄積する。それらは毒物として働き、望ましくない水素及びコークス収量を増加し、液体生成物を製造する時の触媒の選択性を縮小する効果をもつ。更に、バナジウムはまた、触媒分解用の触媒の高活性をもつ成分、ゼオライト自体を攻撃することが確証されている。
【0003】
流動触媒分解(FCC)期間中に、ゼオライト含有触媒に有毒なバナジウム及び他の金属の問題に対処する試みとして、製油所/製油所の触媒産業における当業者により多大な努力が実施されてきた。特許文献1は、提唱されてきた多数の方法につき記載している(特許文献1参照)。大多数のこれらの方法は、触媒又は炭化水素供給物のいずれかとともに、いわゆる「捕捉剤」の添加を取り扱い、そしてバリウム、カルシウム及びストロンチウムのようなこれらの捕捉剤は、ゼオライト含有FCC触媒上の有害金属の有害効果を減少させることが示された。
【0004】
FCC触媒工学における近年の発展にも拘わらず、いまだ、炭化水素からバナジウム及び他の有害金属を有効に除去するための、FCC期間中に捕捉剤を導入するための市販の、便利な手段の需要が存在する。
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,610,255号明細書
【発明の開示】
【0006】
本発明は、炭化水素から1種又は複数の有毒金属を除去するために適する組成物及び方法を提供することにより、現代の需要を遂行する。本発明に従う組成物は、その外面上に1種又は複数の捕捉金属を分散されたヒドロタルサイト(HTC)を含んでなる。本発明に従う、FCCユニット中の炭化水素から1種又は複数の有毒金属を除去する方法は、その外面上に1種又は複数の捕捉金属を分散されたヒドロタルサイトをFCCユニットに添加する工程を含んでなる。本発明の幾つかの態様において、本発明の組成物は、その外面上に少なくとも1種の捕捉金属を分散されたヒドロタルサイトより本質的になるか又はそれよりなる。その上に分散された1種又は複数の捕捉剤のための担体としてHTCを使用する工程は、有毒な金属及び捕捉剤の間の良好な接触を与える。
【0007】
本発明は特定の態様に関して説明されるが、本発明はこれらの特定の態様のいずれか1つに限定されるものではないことは理解される。
【0008】
ヒドロタルサイト
あらゆるヒドロタルサイトを本発明に使用することができる。ヒドロタルサイトは(a
)天然に存在するヒドロタルサイト、(b)合成ヒドロタルサイト、(c)ヒドロタルサイト様物質又は(d)(a)〜(c)のうちのいずれか2種以上の混合物、を含んでなることができる。適当なヒドロタルサイトの担体は米国特許第4,347,353号及び第4,284,762号明細書に記載されている。適当なヒドロタルサイトの担体は例えば、CaO、MgO及びAlの混合金属酸化物を包含する。1つの適当なヒドロタルサイトはMg4.5Al(OH)13CO.3.5HOの化学式を有する。適当なヒドロタルサイト物質はKyowa Chemical Industry Company,Ltd.,Osaka,Japanにより製造され、Mitsui and Company,Ltd.,Osaka,Japan及びMitsui and Company(USA),Inc.,Houston,Tex.,により、「DHT−4」及び「DHT−4A」の商品名で市販されている。
【0009】
ヒドロタルサイト様物質及びその製法
マイクスネライト(meixnerite)、スジョグレナイト(sjogrenite)、パイロオーライト(pyroaurite)、スチクタイト(stichtite)、レエヴェサイト(reevesite)、イアードルヤイト(eardleyite)、マナスサイト(manassite)及びバルベルトナイト(barbertonite)を包含する結晶質アニオン粘土は、本発明に従うヒドロタルサイト様物質である。大部分の商業的適用のためには、結晶質アニオン粘土を球のような成形体に形成する。成形体が、製油所への適用、分離、精製及び吸収工程のような厳しい処理条件及び環境に暴露される適用においては、結晶質アニオン粘土含有の成形体の原型がそのままに維持され、摩耗を防止することが重要である。アルミニウム原料及びマグネシウム原料を含んでなる原料からの結晶質アニオン粘土含有物体の製法は、(a)先駆混合物を製造し、(b)先駆混合物を成形して成形体を得て、(c)場合により成形体を熱処理し、そして(d)熟成させて、結晶質アニオン粘土含有物体を得る:工程を含んでなる。成形体は種々の方法で製造することができる。1つの態様において、アルミニウム原料及びマグネシウム原料をスラーリ中で合わせて、先駆混合物を形成する。次に、該先駆混合物を成形する。形成される成形体を液体中で、場合により熱処理後に熟成させると、結晶質アニオン粘土含有物体を得る。
【0010】
更に、アルミニウム原料又はマグネシウム原料のような唯一の原料から先駆混合物を製造し、それを成形し、そして次に、その後のいずれかの処理工程において、成形体に1種又は複数の更なる他の原料を添加することもできる。熟成工程中に、種々の原料が反応して、結晶質アニオン粘土含有体を与える。もちろん、前記の2種の製造経路の組み合わせを使用することもでき、例えば、アルミニウム原料及びマグネシウム原料を添加して、先駆混合物を形成し、成形して物体を形成し、次に、更なるマグネシウム原料を含有する液体中で成形体を熟成させて、成形体の外側上に、より高いマグネシウムを含有するアニオンの粘土含有体を形成する。
【0011】
適当なアルミナ原料は、酸化アルミニウム及び、遷移アルミナのような水酸化物、アルミニウム三水和物(ギブサイト、ベイエライト)及びその熱処理形態(フラッシュか焼アルミナ)、ゾル、非晶質アルミナ、(擬似)ベーマイト、カオリン、セピオライト、ヒドロタルサイト及びベントナイトのようなアルミニウム含有粘土、メタカオリンのような修飾粘土、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム、クロロ水和アルミニウム、アルミン酸ナトリウムのようなアルミナ塩を包含する。本明細書に記載の製造法により、更に、より粗い等級の、BOC(ボーキサイト鉱石精鉱)のような三水和アルミニウム又はボーキサイトを使用することもできる。粘土がAl−原料として使用される時は、酸又は塩基処理、例えば酸処理ベントナイト、(ヒドロ)熱処理又はそれらの組み合わせ物により粘土中のアルミナを活性化することが必要かも知れない。酸処理は、硝酸、酢酸、リン酸、硫酸、塩酸等による処理を含んでなる。熱処理は通常、30℃〜1000℃、時々は200℃〜
800℃の範囲の温度で、数分間〜24時間、時々は1〜10時間にわたる時間中、実施される。更に、前記のアルミニウム原料の混合物も使用することができ、前記の異なるアルミニウム原料をどんな順序でも、先駆混合物中に合わせることができる。更に、成形工程後にアルミニウム原料を添加することができる。その場合は、先駆混合物はアルミニウム原料をすでに含有していても、含有していなくてもよい。1つの態様において、アルミニウム原料が成形工程後に添加される時は、成形体と接触される時、それは液体中にある。これはアルミニウム原料を分散又は溶解し、そしてそれを成形体に添加することにより実施することができる。あるいはまた、アルミニウム原料を、成形体が熟成される液体に添加することができる。
【0012】
更に、三水和アルミニウムのような粘土以外の他のアルミニウム原料を、先駆混合物への添加の前に又は成形体とそれを接触させる前に、前処理することができる。該前処理は、すべて、場合により種結晶の存在下で、酸、塩基処理、熱及び/又は熱水処理あるいはそれらの組み合わせ物による処理を伴うことができる。すべてのアルミニウム原料を結晶質アニオン粘土に転化する必要はない。あらゆる過剰なアルミニウムは、熟成工程中にシリカ−アルミナ、アルミナ(通常、γ−アルミナ又は(結晶)ベーマイトの形態)及び/又はアルミナ−マグネシアに転化されるであろう。これらの化合物は成形体の結合性を改善し、物体に対して、異なったタイプの望ましい機能性を提供する可能性がある。例えば、シリカ−アルミナ及びアルミナは触媒分解のための酸の部位を提供し、そしてアルミナ(結晶質)ベーマイトはまた、成形体のニッケル封入能を改善する。例えば、(結晶質)ベーマイトの形成は、先駆混合物中、アルミニウム原料中又は熟成期間中のいずれかに、種結晶を添加することにより促進させることができる。
【0013】
適当なマグネシウム原料は、MgO、Mg(OH)のようなマグネシウム酸化物又は水酸化物、ヒドロマグネサイト、酢酸マグネシウム、ギ酸マグネシウム、ヒドロキシ酢酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、ヒドロキシ炭酸マグネシウム、重炭酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、塩化マグネシウムのようなマグネシウム塩、ドロマイト、サポナイト、セピオライトのようなマグネシウム含有粘土を包含する。更に、前記のマグネシウム原料の混合物も使用することができ、前記の異なるマグネシウム原料をいずれの順序でも、そして/又は成形工程後のいずれの処理工程においても先駆混合物中に合わせることができる。1つの態様において、マグネシウム原料が成形工程後に添加される場合は、それは、成形体と接触する時は液体中にある。これは、マグネシウム原料を分散又は分解し、成形体にそれを添加することにより実施することができる。あるいはまた、マグネシウム原料を、成形体が熟成される液体に添加することができる。
【0014】
マグネシウム原料は先駆混合物への添加前に、そして/又は成形体への添加前に前処理することができる。前記の前処理はすべて場合により種結晶の存在下で、熱及び/又は熱水処理、酸処理、塩基処理、及び/又はそれらの組み合わせ物を含んでなることができる。
【0015】
すべてのマグネシウム原料を結晶質アニオン粘土に転化する必要はない。あらゆる過剰なマグネシウムは通常、ブルサイト、マグネシア又はアルミナ−マグネシアに転化されるであろう。明確化のために、成形粒状物中のこの過剰なマグネシウム化合物は、説明中ではマグネシアと呼ばれる。成形体中のマグネシア又はアルミナ−マグネシアの存在は、成形体に望ましい機能性を与えることができる。マグネシアの存在は、成形体を、気体又は液体の強力な酸の流れを除去又は中和するために適するようにさせる塩基性部位を提供する。
【0016】
以下に、種々の処理工程を更に詳細に説明される。
【0017】
ヒドロタルサイト様物質及びその製法−先駆混合物の製造
本工程において、先駆混合物を、液体中のアルミニウム原料及び/又はマグネシウム原料から製造する。実際、種々の原料を有害に妨げない限り、すべての液体が適当である。適当な液体は水、エタノール、プロパノール、等である。液体の量は、乳状物質を含む混合物が得られるように選択することができるが、例えばドウのような、より高い粘度をもつ混合物も適当である。1種を超える原料が先駆混合物に使用される場合は、原料は固形物として添加してもよいが、それらはまた液体で添加することもできる。種々の原料をいずれの順序で添加してもよい。先駆混合物の製造は室温で又は高温で、撹拌しながら、又は撹拌せずに実施することができる。場合により、先駆混合物及び/又は別々の原料を例えば粉砕によりホモジネートする。結晶質アニオン粘土へのある転化は、種々の原料を合わせる時にすでに起ることができる。ある場合には、アニオン粘土の最終総量の少なくとも約5重量%はすでに形成され、そしてある場合には、転化は成形工程後にも起る。他の場合には、成形体中のアニオン粘土の最終量の約25重量%を超える、又は約50重量%を超える、又は約75重量%を超える、又は約80〜約95重量%の間が成形工程後に形成される。Mg:Al比は例えば、約1〜約10、約1〜約6又は約2〜約4、にばらつくことができる。
【0018】
所望される場合は、例えばpHの調整のための有機又は無機酸及び塩基を、先駆混合物に添加しても、あるいは、先駆混合物中にこれらを添加する前に、アルミニウム原料及び/又はマグネシウム原料のいずれか一方に添加してもよい。アンモニウム塩基修飾剤が使用される時は、乾燥時にアニオン粘土中にどんな有害なカチオンも残らない。先駆混合物は成形工程の前に前熟成させることができる。該前熟成温度は約30℃〜約500℃にわたることができ、約100℃を超える温度で、大気圧又は自然発生(autogenous)圧のような増加圧下で実施することができる。熟成時間は約1分から数日間、例えば約7日間にわたることができる。先駆混合物及び/又はアルミニウム及び/又はマグネシウム原料のいずれかに、特定のアニオンを添加することにより、存在する層間電荷平衡化アニオンを制御することができる。適当なアニオンの例は、炭酸、重炭酸、硝酸、塩化物、硫酸、重硫酸、バナデート、タングステート、硼酸、リン酸アニオン、V10O28−6、Mo7O24−6、PW12O40−3、B(OH)4−、B4O5(OH)4−2、HBO4−2、HGaO3−2、CrO4−2のようなピラー形成(pillaring)アニオン、ギ酸、酢酸アニオン及びそれらの混合物である。更に、炭酸、重炭酸、硫酸及び/又は硝酸アニオンのような幾つかのこれらのアニオンの存在は、ブルサイトのような副産物の形成に影響を与えるとも考えられる。例えば、水酸化アンモニウムの添加は、マイクスネライトの形成を促進するが、他方、炭酸アンモニウムの添加はヒドロタルサイトの形成を促進する。
【0019】
ヒドロタルサイト様物質及びその製法−成形
適当な成形法は、噴霧乾燥、ペレット化、押し出し法(場合により混練と組み合わせて)、ビーズ形成、又は触媒及び吸収剤分野で使用されるあらゆる他の従来の成形法又はそれらの組み合わせ物、を包含する。成形に使用される先駆混合物中に存在する液体量は、実施される特定の成形工程に適合しなければならない。時々、先駆混合物をゲル化可能にさせ、それにより成形に適するようにさせるために、先駆混合物中に使用される液体を(一部)除去し、そして/又は、更なるもしくは他の液体を添加し、そして/又は先駆混合物のpHを変更することが忠告される。押し出し添加剤のような、種々の成形法に一般に使用される種々の添加剤を、成形に使用される先駆混合物に添加することができる。
【0020】
ヒドロタルサイト様物質及びその製法−熱処理
成形後に、成形体を場合により熱処理にかけることができる。このような処理は粒状物の物理的強度を増加する。熱処理は、約数分〜約24時間にわたる期間内に、約30℃〜約900℃にわたる温度で、酸素含有雰囲気内で、不活性雰囲気内で、又は流れ中で実施
することができる。例えば、噴霧乾燥の熱処理が本質的に伴う時は、更なる熱処理は必要でないかも知れない。
【0021】
ヒドロタルサイト様物質及びその製法−熟成
この工程において、成形体はプロトン性の液体又はプロトン性の気体媒質中に浸漬される。熟成工程中、結晶質アニオン粘土への結晶化が起る。適当なプロトン性熟成液又は気体媒質は、水、エタノール、メタノール、プロパノール、蒸気、気体状水、気体状エタノール、等のような、成形体がそれに溶解しない液体及び気体媒質である。液体の温度及び/又は圧力を増加すると熟成時間を短縮することができる。熟成はまた、自己加熱条件下で実施することもできる。熟成温度は、約30℃〜約500℃にわたることができる。熟成時間は約1分〜数日、例えば約7日間にわたることができる。なにかの目的にために、場合により、その後に焼成工程を伴う、中間乾燥工程を場合により伴い、幾つかの熟成工程を実施することが有利である。例えば、約100℃未満の温度による熟成工程に、次に約100℃を超える温度及び自己発生圧力における熱水熟成工程を続けても、又はその反対でもよい。以下に更に詳細に説明されるように、あらゆる熟成工程の前、後又はその期間中に添加剤を添加することができる。熟成媒質に特定のアニオンを添加することにより、存在する層間電荷平衡化アニオンを制御することができる。適当なアニオンの例は、炭酸、重炭酸、硝酸、塩素、硫酸、重硫酸、バナデート、タングステート、硼酸、リン酸アニオン、V10O28−6、Mo7O24−6、PW12O40−3、B(OH)4−、B4O5(OH)4−2、HBO4−2、HGaO3−2、CrO4−2のようなピラー形成アニオン、ギ酸、酢酸アニオン及びそれらの混合物である。更に、炭酸、重炭酸、硫酸及び硝酸アニオンのような幾つかのこれらのアニオンの存在は、ブルサイトのような副産物の形成に影響を与えるとも考えられる。例えば、水酸化アンモニウムの添加は、マイクスネライト様粘土の形成を促進するが、他方、炭酸アンモニウムの添加はヒドロタルサイト様粘土の形成を促進する。
【0022】
幾つかの適用に対し、希少土類金属(特にCe及びLa)、Si、P、B、グループVIの金属、グループVIIの金属、Pt及びPdのような貴金属、アルカリ土類金属(例えばCa及びBa)及び/又は遷移金属(例えばMn、Fe、Ti、V、Zr、Cu、Ni、Zn、Mo、Sn)のような金属及び非金属双方の、本発明に従う成形体中そして/又はその上に存在する添加剤、をもつことが望ましい。該金属及び非金属は本発明の製造工程のいずれにでも別々に又は混合物で添加することができる。例えば、それらは熟成前、その間、又はその後に、成形体上に容易に堆積させることができるか、あるいはまた、それらは先駆混合物及び/又はアルミニウムもしくはマグネシウム原料のいずれかに添加することができる。金属又は非金属の適当な原料は、酸化物、ハロゲン化物又は、塩化物、硝酸化物、リン酸化物等のようなあらゆる他の塩である。前記のように、金属及び非金属は製造工程のいずれにでも添加することができる。これは特に、成形体中の金属及び非金属の分布を制御するために有利であることができる。成形体を焼成し、それらを再水和し、そして更なる添加剤を添加することすら可能である。
【0023】
添加剤の補助により、成形体に所望の機能性を提供することができるか又は、所望の機能性を添加剤の添加により増加することができる。FCC中のSOx及び/又はNOx化合物の除去のためのアニオン粘土含有成形体の適合性は、Ce及び/又はVの添加により改善することができる。V及びZnの存在は、FCCのガソリン及びジーゼル画分中のS−化合物の除去の適当性を改善する。前記のように、これらの機能性はまた、過剰なアルミニウム原料及び/又はマグネシウム原料を使用することにより組み入れることができる。これらの方法の組み合わせはその効果を増加する。
【0024】
結晶質アニオン粘土含有物体はまた、マトリックス又は充填物質(例えばカオリンのような粘土、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ、ベントナイ
ト、等)、分子ふるい物質(例えばゼオライトY、ZSM−5、等)のような従来の触媒成分を含有するように製造することができる。該従来の触媒成分は成形工程の前に添加することができる。アニオン粘土はインサイチューで形成されるので、生成される物体はアニオン粘土及び触媒成分の均一な分散をもつであろう。本発明に従う方法により、触媒として又は触媒添加剤として使用することができる多数の機能的物体を製造することができる。
【0025】
製造法は、場合により連続的な多工程操作の、バッチ様又は連続的方法で実施することができる。方法はまた、一部バッチ様でそして一部連続的に実施することができる。
【0026】
所望される場合は、本発明に従う方法により製造される結晶質アニオン粘土含有成形体は、粘土の層内電荷平衡化アニオンが他のアニオンと置換されるイオン交換にかけることができる。前記の他のアニオンは、アニオン粘土中に一般に存在するものであり、V10O28−6、Mo7O24−6、PW12O40−3、B(OH)4−、B4O5(OH)4−2、HBO4−2、HGaO3−2、CrO4−2のようなピラー形成アニオンを包含する。他の適当なピラー形成アニオンは米国特許第4,774,212号明細書に与えられる。該イオン交換は、結晶質アニオン粘土が形成されたら即時に実施することができる。
【0027】
捕捉剤
適当な捕捉剤は、以下の元素:バリウム、カルシウム、マンガン、ランタン、鉄、錫、亜鉛、セリウム、又は新IUPACフォーマット(すなわち、最近のIUPACフォーマット)を使用する元素の周期表に特定されるグループ2中のあらゆる元素、それらのイオンあるいはこのような元素及び/又はそれらのイオンの混合物を含んでなることができる。
【0028】
捕捉剤はバリウム及びバリウムの化合物の少なくとも1種よりなることができる。現在、大部分のバリウムの形態が有効であると考えられる。チタン酸バリウム及び酸化バリウムは捕捉剤としての使用に適するバリウム化合物である。本発明における使用に適するバリウム化合物は有機でも又は無機であってもよい。油溶性及び水溶性バリウム化合物が適当である。適当な無機バリウム化合物は鉱酸のバリウム塩及び塩基性バリウム化合物を包含する。酸化バリウムは適当な捕捉剤である。適当なバリウム塩の例は、硝酸バリウム、硫酸バリウム、塩化バリウムのようなハロゲン化バリウム及び、Ba(ClOのようなオキシハロゲン化バリウムである。ハロゲン含有無機化合物は、処理装置に対するそれらの腐食効果のために余り好ましくない。使用に適する代表的塩基性バリウム化合物は、水酸化バリウム、水硫化バリウム及び炭酸バリウムである。適当な有機バリウム化合物はカルボン酸のバリウム塩及びバリウム−キレート化剤錯体を包含する。バリウムのカルボン酸塩は1分子当り約1個〜約40個の炭素原子を含有することができ、酸部分は脂肪族であるか又は芳香族の性状をもつことができる。代表的化合物は酢酸バリウム、酪酸バリウム、クエン酸バリウム、ギ酸バリウム及びステアリン酸バリウムである。適当なバリウム錯体は、そこに、バリウムが1,3−ジケトン、エチレン−ジアミン四酢酸及びニトリロ三酢酸のような錯体形成剤により取り込まれた錯体を包含する。バリウムペンタンジオネートは適当な捕捉剤である。
【0029】
ヒドロタルサイトの外面上の捕捉剤の分散
捕捉剤はヒドロタルサイトに添加することができ、他方ヒドロタルサイトは本明細書に記載の方法に従って、又は今日知られた又は今後開発される他の方法に従って製造される。あるいはまた、捕捉剤は、例えば当業者に熟知されているように、細孔容量含浸により又は可溶性バリウム原料の使用により、既存のヒドロタルサイトに添加することができる。これらのいずれかの方法を使用して、捕捉剤の少なくとも一部はヒドロタルサイトの外
面上に分散されるであろう。
【0030】
本発明は、本発明に従う1つの組成物中の、ヒドロタルサイトの外面上に、どんな特定の量の捕捉剤にも限定はされないが、捕捉剤及びヒドロタルサイトの総重量に基づき、約5重量%〜約35重量%又は約10重量%〜約20重量%の範囲でその外面上に捕捉剤を分散されたヒドロタルサイトが有用である。
【0031】
FCCに対する本発明の添加剤の添加
本発明に従う組成物は、1種又は複数の触媒と同時に炭化水素供給物とともに、又は炭化水素供給物及び1種又は複数の触媒が添加された後に、FCCユニットに添加することができる。1つの態様において、本発明に従う組成物は、組成物プラス1種又は複数のFCC触媒の総重量に基づく本発明に従う組成物の重量パーセントが約1重量%〜約30重量%、又は約2重量%〜約20重量%、又は約5重量%〜約10重量%であるように、1種又は複数のFCC触媒と組み合わされる。
【実施例】
【0032】
実施例1
本発明に従うMe−HTC(ここでMeはBa、Sr、Ca、Fe、Mn、Ce、La又はZnを表す)は、粉砕され、熟成された、4:1モル比のMgO:Alのスラーリ(20重量%固形物)に、塩としてのMe成分を導入することにより製造された。次に、Me、Mg及びAl含有混合物を噴霧乾燥して、平均粒度を約75マイクロメーターに維持した。次にこの乾燥物質を550℃で1時間焼成し、30℃で30分間水スラーリ中で再水和させた。次に生成された混合物を乾燥し、10重量%レベルで市販のFCC触媒と混合した。次にこのブレンドをメタレート化不活性後に残油供給物を使用して流動床ミクロ−反応ユニット中で評価した。ブレンドを、Mitchell含浸経路を使用し、次に3000ppmのNi及び3000ppmのVでの蒸気処理により不活性化した。表1は本発明の利点を表す。本発明に従うMe−HTCを使用しない市販のFCC触媒の使用により生成されたデータに比較すると、コークスの収率が有意に減少し、他方、転化率及びガソリン収率は改善される。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例2
既存の噴霧乾燥ヒドロタルサイトをバリウムで細孔容量含浸させた。粒状物のSEM写真及びBa、Mg及びAlの元素地図を伴う断面図がヒドロタルサイト粒状物の外面上の
Baを示す。
【0035】
実施例3
既存の噴霧乾燥ヒドロタルサイトを、50℃で30分間、30重量%の固形物のバリウムの存在下で再水和させ、濾過し、110℃で1晩乾燥した。粒状物のSEM写真及びBa、Mg及びAlの元素地図を伴う断面図がヒドロタルサイト粒状物の外面上のBaを示す。
【0036】
実施例4
スラーリ化したMgO/CATAPALを2.5孔径に粉砕し、50℃で2時間熟成させた。硝酸バリウムを添加し、次に混合物を噴霧乾燥し、焼成し、HO中で再水和させた。粒状物のSEM写真及びBa、Mg及びAlの元素地図を伴う断面図が、実施例2及び3に劣るBa分布を示す。
【0037】
本発明の添加剤の使用は、残油ユニットに対して極めて貴重な、改善された金属抵抗をもつ触媒をもたらすと期待される。
【0038】
本発明は1種又は複数の好ましい態様に関して説明されてきたが、以下の請求項中に示される本発明の範囲から逸脱せずに、他の変更を実施することができることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その外面上に少なくとも1種の捕捉金属を分散されたヒドロタルサイトを、FCCユニットに添加することを含んでなる、FCCユニット中の炭化水素から1種又は複数の有毒金属を除去する方法。
【請求項2】
その外面上に1種又は複数の捕捉金属を分散されたヒドロタルサイトを、FCCユニットに添加することから本質的になる、FCCユニット中の炭化水素から1種又は複数の有毒金属を除去する方法。

【公開番号】特開2012−41539(P2012−41539A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−204494(P2011−204494)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【分割の表示】特願2009−518590(P2009−518590)の分割
【原出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(506417681)アルベマール・ネーザーランズ・ベーブイ (20)
【Fターム(参考)】