説明

炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの製造方法

本発明は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの調製の為の方法を提供する。当該方法は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルが生成されるように、(i)少なくとも一つの亜リン酸ジヒドロカルビル、(ii)少なくとも一つのアルカリ金属ヒドロカルビルオキシド、および(iii)少なくとも一つのアルコールを含む成分からの反応混合物を生成することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルを生成するための新規かつ効率的な方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ホスホン酸を作り出す従来の手法は、ミカエリス・アルブーゾフ転位に依存する。この反応は、有機化学においてもっとも広範囲にわたって研究され、かつ良く知られている反応の一つである。この反応は、1898年にミカエリスによって最初に発見され、ホスホン酸系への効率的かつ直接的な導入を与えている。
【0003】
具体的には、ミカエリス・アルブーゾフ転位における炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの生成は、触媒としての遷移金属塩の存在下において、ハロゲン化アルキルを用いた亜リン酸トリアルキルの反応に依存する。今日では、多くの商業的に入手可能なホスホン酸化学薬品は、メタンホスホン酸ジメチルを含め、この技術を用いて製造される。しかし、この方法は、その現行の実施において問題を提起する。場合によっては、この方法は、ハロゲン化アルキルおよび当該遷移金属触媒の必須の使用が原因で、経済的に実行不可能である。加えて、オゾン層破壊等の環境問題が、ホスホン酸を製造する方法によって引き起こされ得る。さらに、これらの反応はしばしば100℃超過の温度を必要とし、かつ実際は発熱性である傾向がある。上記問題または欠点を最小化する、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルを製造する為の新しい方法を発見できれば望ましいだろう。
【発明の概要】
【0004】
ホスホン酸ジヒドロカルビルを調製する為の方法が発見され、その方法は上述のミカエリス・アルブーゾフ転位の、全部ではないが、多くの有害な影響を最小化または除去する。本発明の方法は有利に、単一反応器内で行うことができるので、工程所要時間を減らし、そして経済上の資源を節約することができる。
【0005】
その実施形態の一つでは、本発明は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの調製の為の方法を提供し、その方法は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルが生成されるように、(i)少なくとも一つの亜リン酸ジヒドロカルビル、(ii)少なくとも一つのアルカリ金属ヒドロカルビルオキシド、および(iii)少なくとも一つのアルコールを含む成分からの反応混合物を生成することを含む。
【0006】
上記の実施形態およびその他の実施形態は、次の記述および添付の特許請求の範囲から明白だろう。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本明細書全体を通して用いられる通り、用語「ヒドロカルビル」は、アルキル基、アリール基、アルカリル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基を含む。当該アルキル基およびアルケニル基は、直鎖または分岐鎖であり得る。本文全体を通して、用語「アルコール」は、当該ヒドロキシ基がアルキル基、アリール基、アルカリル基、アラルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、またはシクロアルケニル基に結合するアルコールを含むように用いられる。本発明の方法において用いられる亜リン酸ジヒドロカルビルは、より正確には亜リン酸水素ジヒドロカルビルと呼ばれ、従って、本文全体を通して用いられる通り、用語「亜リン酸ジヒドロカルビル」およびこのようなあらゆる特定の亜リン酸ジヒドロカルビル(例えば、亜リン酸ジメチル)が、亜リン酸水素ジヒドロカルビル(例えば、亜リン酸水素ジメチル)を意味することを理解
されたい。
【0008】
上記に記載される通り、本発明は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの調製の為の方法を提供し、その方法は、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルが生成されるように、(i)少なくとも一つの亜リン酸ジヒドロカルビル、(ii)少なくとも一つのアルカリ金属ヒドロカルビルオキシド、および(iii)少なくとも一つのアルコールを含む成分からの反応混合物を生成することを含む。より具体的には、本発明の方法の生成物は、下記の化学式の一つ以上の化合物である:
RP(O)(OR1)(OR2)
式中、R、R、およびRは同一または異なり、かつそれぞれはヒドロカルビル基である。これらの化合物の命名において、上記化学式におけるRおよびRは、当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルのジヒドロカルビル基であり、かつエステル結合によってリンに結合する。Rは、リンに直接結合する。Rはヒドロカルビル基であるが、上記の化学式におけるRは、それを当該エステル結合基であるRおよびRと区別する為に、当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルにおける炭化水素基として命名される。例えば、Rがメチル基である時、当該炭化水素ホスホン酸ジアルキルはメタンホスホン酸ジアルキルと呼ばれ、あるいはRがフェニル基である時、当該炭化水素ホスホン酸ジアルキルはベンゼンホスホン酸ジアルキルと呼ばれる。
【0009】
従って、本発明の方法においては、理論に制約されることを望むことなく、当該起こるとみられる全体の反応は、以下の反応式によって表すことができる:
HP(O)(OR1)(OR2)+AOR→RP(O)(OR1)(OR2)
式中、Aはアルカリ金属であり、R、R、およびRは同一または異なり、かつそれぞれはヒドロカルビル基である。R、R、およびRが同一である時、当該反応は上記の等式に示される通りに進むように思われる。R、R、およびRの内の少なくとも一つがR、R、およびRの内のその他二つと異なる時、エステル交換が起こり、そして生成物の混合物が得られ、例えば、これらはRP(O)(OR)(OR)に加えてRP(O)(OR)(OR)およびRP(O)(OR)(OR)である。亜リン酸ジフェニル等の亜リン酸アリールが、アルコキシドであるアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドと反応する時、異なる結果が得られる。すなわち、当該亜リン酸上の全てのアリール基が、アルキル基によって置換される。
【0010】
炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの調製の為の方法において、少なくとも一つの亜リン酸ジヒドロカルビルが、当該反応混合物を生成する為に用いられる。当該亜リン酸ジヒドロカルビルのヒドロカルビル基は、同一または異なり得るが、同一であることが好ましい。一般的に、当該亜リン酸ジヒドロカルビルのヒドロカルビル基は、一個から約三十個の炭素原子を有する。当該亜リン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアルキル基は、一個から約六個の炭素原子を有する。当該亜リン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアルケニル基は、約四個から約十個の炭素原子を有する。当該亜リン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアラルキル基は、七個から約十二個の炭素原子を有する。当該亜リン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアリール基は、六個から約十五個の炭素原子を有する。当該亜リン酸ジヒドロカルビルのヒドロカルビル基は、両方ともアルキル基であることが好ましい。
【0011】
本発明にて用いることができる亜リン酸ジヒドロカルビルの例としては、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸メチルエチル、亜リン酸ジプロピル、亜リン酸メチルプロピル、亜リン酸ジブチル、亜リン酸ジペンチル、亜リン酸ジシクロペンチル、亜リン酸ジヘキシル、亜リン酸ジシクロヘキシル、亜リン酸ジブテニル、亜リン酸ジペンテニル、亜リン酸ジベンジル、亜リン酸ジ(4−メチルベンジル)、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸ジトリル、亜リン酸ジナフチルなどが挙げられるが、これらに限定されない。好適な
亜リン酸ジヒドロカルビルとしては、亜リン酸ジメチルおよび亜リン酸ジエチルが挙げられる。二つ以上の亜リン酸ジヒドロカルビルの混合物を用いることができ、生成物の混合物が得られるだろう。
【0012】
当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドに関しては、当該アルカリ金属は通常、リチウム、ナトリウム、またはカリウムであり、そしてナトリウムまたはカリウムであることが好ましい。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビル部分は、アルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基であることが好ましい。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビル部分がアルキル基である時、それは一個から約六個の炭素原子を有することが好ましい。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビル部分がアルケニル基である時、それは約四個から約十個の炭素原子を有することが好ましい。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビル部分がアリール基である時、それは六個から約十五個の炭素原子を有することが好ましい。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビル部分がアラルキル基である時、それは七個から約十五個の炭素原子を有することが好ましい。二つ以上のアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドの混合物が、本発明の実施において用いることができる。
【0013】
当該ヒドロカルビル部分がアルキル基またはシクロアルキル基である適切なアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドとしては、リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、カリウムメトキシド、リチウムエトキシド、ナトリウムエトキシド、カリウムエトキシド、リチウムn−プロポキシド、ナトリウムn−プロポキシド、カリウムn−プロポキシド、リチウムイソプロポキシド、ナトリウムイソプロポキシド、カリウムイソプロポキシド、リチウムシクロプロパノキシド、ナトリウムシクロプロパノキシド、カリウムシクロプロパノキシド、リチウムn−ブトキシド、ナトリウムn−ブトキシド、カリウムn−ブトキシド、リチウムsec−ブトキシド、ナトリウムsec−ブトキシド、カリウムsec−ブトキシド、リチウムtert−ブトキシド、ナトリウムtert−ブトキシド、カリウムtert−ブトキシド、リチウムシクロブタノキシド、ナトリウムシクロブタノキシド、カリウムシクロブタノキシド、リチウムペンタノキシド、ナトリウムペンタノキシド、カリウムペンタノキシド、リチウムシクロペンタノキシド、ナトリウムシクロペンタノキシド、カリウムシクロペンタノキシド、リチウムヘキサノキシド、ナトリウムヘキサノキシド、カリウムヘキサノキシド、リチウムシクロヘキサノキシド、ナトリウムシクロヘキサノキシド、カリウムシクロヘキサノキシド、リチウムヘプタノキシド、ナトリウムヘプタノキシド、カリウムヘプタノキシド、リチウムシクロヘプタノキシド、ナトリウムシクロヘプタノキシド、カリウムシクロヘプタノキシド、リチウムオクタノキシド、ナトリウムオクタノキシド、カリウムオクタノキシド、リチウムシクロオクタノキシド、ナトリウムシクロオクタノキシド、カリウムシクロオクタノキシドなどが挙げられる。
【0014】
当該ヒドロカルビル部分が不飽和(アルケニル、シクロアルケニル、アリール、またはアラルキル)である適切なアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドとしては、リチウム2−ブテン−1−オキシド、ナトリウム2−ブテン−1−オキシド、カリウム2−ブテン−1−オキシド、リチウム3−ペンテン−1−オキシド、ナトリウム3−ペンテン−1−オキシド、カリウム3−ペンテン−1−オキシド、リチウム3−ヘキセン−1−オキシド、ナトリウム3−ヘキセン−1−オキシド、カリウム3−ヘキセン−1−オキシド、リチウム2−シクロヘキセン−1−オキシド、ナトリウム2−シクロヘキセン−1−オキシド、カリウム2−シクロヘキセン−1−オキシド、リチウムフェノキシド、ナトリウムフェノキシド、カリウムフェノキシド、リチウムメチルフェノキシド、ナトリウムメチルフェノキシド、カリウムメチルフェノキシド、リチウムジメチルフェノキシド、ナトリウムジメチルフェノキシド、カリウムジメチルフェノキシド、リチウムエチルフェノキシド、ナトリウムエチルフェノキシド、カリウムエチルフェノキシド、リチウム2−ナフトキシド、ナトリウム2−ナフトキシド、カリウム2−ナフトキシド、リチウム2−メチル−1−ナフ
トキシド、ナトリウム2−メチル−1−ナフトキシド、カリウム2−メチル−1−ナフトキシド、リチウムベンゾキシド、ナトリウムベンゾキシド、カリウムベンゾキシド、リチウム4−メチルベンゾキシド、ナトリウム4−メチルベンゾキシド、カリウム4−メチルベンゾキシド、リチウム4−エチルベンジオキシド、ナトリウム4−エチルベンジオキシド、カリウム4−エチルベンジオキシド、リチウム2−フェニルエトキシド、ナトリウム2−フェニルエトキシド、カリウム2−フェニルエトキシド、リチウム3−メチルフェネトキシド、ナトリウム3−メチルフェネトキシド、カリウム3−メチルフェネトキシド、リチウム1,1−ジフェニルエトキシド、ナトリウム1,1−ジフェニルエトキシド、カリウム1,1−ジフェニルエトキシド、リチウム1−ナフタレンメトキシド、ナトリウム1−ナフタレンメトキシド、カリウム1−ナフタレンメトキシド、リチウム2−ナフタレンメトキシド、ナトリウム2−ナフタレンメトキシド、カリウム2−ナフタレンメトキシド、リチウム6−メチル−2−ナフタレンメトキシド、ナトリウム6−メチル−2−ナフタレンメトキシド、カリウム6−メチル−2−ナフタレンメトキシド、リチウム1−ナフタレンエトキシド、ナトリウム1−ナフタレンエトキシド、カリウム1−ナフタレンエトキシド、リチウム2−ナフタレンエトキシド、ナトリウム2−ナフタレンエトキシド、カリウム2−ナフタレンエトキシドなどが挙げられる。
【0015】
本発明の実施における好適なアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドとしては、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、およびナトリウムベンゾキシドが挙げられる。
【0016】
通常、当該アルコールは、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビルオキシド部分に対応する、すなわち、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのヒドロカルビルオキシド部分は、当該アルコールのヒドロカルビル部分と同一である。例えば、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドがナトリウムメトキシドである時、当該アルコールは通常メタノールである。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドは一般的に、当該対応するアルコール中の溶液として用いられる。必要であれば、本発明の方法を実施する時、追加のアルコールを用いることができる。通常かつ好ましくは、あらゆる追加のアルコールは、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドに対応するアルコールと同一のアルコールである。
【0017】
当該アルコールはヒドロカルビルアルコールであり、そして液体アルコールであることが好ましい。当該アルコールが、当該反応が行われる条件下にて液体でない時、当該アルコールを液化する為に高温および/または高圧を用いることができる。このような条件が当該アルコールを液化する為に用いられない場合、当該液相中にて当該アルコールを生じさせる為に溶媒を用いてもよい。
【0018】
当該アルコールに関しては、当該ヒドロカルビル部分が、アルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基であることが好ましい。当該アルコールのヒドロカルビル部分がアルキル基である時、それは一個から約六個の炭素原子を有することが好ましい。当該アルコールのヒドロカルビル部分がアルケニル基である時、それは約四個から約十個の炭素原子を有することが好ましい。当該アルコールのヒドロカルビル部分がアリール基である時、それは六個から約十五個の炭素原子を有することが好ましい。当該アルコールのヒドロカルビル部分がアラルキル基である時、それは七個から約十五個の炭素原子を有することが好ましい。二つ以上のアルコールの混合物が用いられる時、アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドの混合物、ひいては生成物の混合物が生じる。
【0019】
本発明の方法において用いることができるアルコールの例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、シクロプロパノール、イソブタノール、tert−ブタノール、シクロブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、シクロヘプタノール、オクタノール、シ
クロオクタノール、2−ブテン−1−オール、3−ペンテン−1−オール、3−ヘキセン−1−オール、2−シクロヘキセン−1−オール、フェノール、メチルフェノール、ジメチルフェノール、エチルフェノール、2−ナフトール、2−メチル−1−ナフトール、ベンジルアルコール、4−メチルベンジルアルコール、4−エチルベンジルアルコール、2−フェニルエタノール、3−メチルフェネチルアルコール、1,1−ジフェニルエタノール、3−メチルフェネチルアルコール、1−ナフタレンメタノール、2−ナフタレンメタノール、6−メチル−2−ナフタレンメタノール、1−ナフタレンエタノール、および2−ナフタレンエタノールが挙げられる、これらに限定されない。メタノール、エタノール、およびベンジルアルコールが、好適な液体アルコールである。
【0020】
一般的に、亜リン酸ジヒドロカルビルに対するアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドのモル比は、少なくとも約0.75:1であり、そして約0.9:1から約1.5:1の範囲内にあることが好ましい。亜リン酸ジヒドロカルビルに対して、過剰なアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドを用いることが好適である。
【0021】
当該アルコールは一般的に、少なくとも当該反応混合物の全ての成分を溶液内に保持する為に十分である量にて用いられる。当該アルコールの量が少ない時、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドの濃度はより高く、そしてそのような場合には、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドは、さらなる注意を払って(例えば、より遅い速度で)加えるべきである。一般的に、当該アルコールは、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドに対して、約70重量%から約90重量%の量で存在する(すなわち、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドは、約10重量%から約30重量%のアルコール溶液である)。非常に大量のアルコールは当該反応からの放熱を最小化するが、当該反応に熱を加えることが必要になる場合、それは障害となり得る。
【0022】
水分および酸素の存在が最小化される不活性環境が、少なくとも水分および酸素に対する当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドの感応性の為に、本発明の方法において用いられる。本発明の方法を実施する間に、例えば、窒素、ヘリウム、またはアルゴン等の一つ以上の不活性ガスから成る不活性雰囲気が存在することが好適である。
【0023】
当該成分を混合して反応混合物を生成する推奨方法は、アルコール(通常、当該対応するアルコール)中の当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドを、当該亜リン酸ジヒドロカルビルに加えることである。当該アルコール性アルカリ金属ヒドロカルビルオキシド溶液の添加は、全ての当該亜リン酸ジヒドロカルビルが存在する前に開始することができるが、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシド溶液の添加に関連する放熱を最小化することを促進するために、当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシド溶液を、全ての当該亜リン酸ジヒドロカルビルが当該反応帯内に存在する後に加えることが通常推奨され、かつ好適である。過度の放熱を抑制するアルカリ金属ヒドロカルビルオキシド溶液の添加速度は、生成熱の量を制御下に留めることができるような、すなわち、非制御の放熱が一切起こらないような速度である。当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシド溶液が加えられる速度は、当該反応の規模、および当該反応帯から熱を除去する為に用いられる方法によって異なるだろうことを理解されたい。
【0024】
当該アルカリ金属ヒドロカルビルオキシド溶液が当該亜リン酸ジヒドロカルビルに加えられる時、当該温度は最初に上昇し、そして当該反応帯の冷却が時々必要である。アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドの添加が進むにつれ、当該反応帯内の温度はしばしば下降し、そして少なくともこの段階において、一般的には可能な限り当該反応を完了に向かわせるのに十分な高い温度まで、当該反応混合物を加熱することが望ましい。当該反応の進行は、分光的に、例えば、31P−NMRによって監視できる。
【0025】
実験室規模では、反応時間は一般的に約4時間から約5時間である。当該反応時間は、高温で反応を行うことによって短縮できる。
【0026】
生成後、当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルは、濾過および/または蒸留等の従来の方法によって当該反応混合物から分離できる。当該蒸留過程は、当該分離された成分の純度を改善する為に繰り返すことができる。
【0027】
上記で暗に示されるように、本発明の方法の生成物は炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルである。従って、当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルのヒドロカルビル基は通常、一個から約三十個の炭素原子を有し、当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアルキル基およびアルケニル基は、一個から約六個の炭素原子を有し、当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアラルキル基は、七個から約十二個の炭素原子を有し、また当該炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルにとって好適なアリール基は、六個から約十五個の炭素原子を有する。当該ホスホン酸ジヒドロカルビルのヒドロカルビル基は、両方ともアルキル基であることが好ましい。当該ホスホン酸ジヒドロカルビルのヒドロカルビル基が両方ともアルキル基であり、かつ当該炭化水素がアルカンであることがより好ましい。本発明の方法の好適な生成物は、メタンホスホン酸ジメチル、エタンホスホン酸ジエチル、エタンホスホン酸ジメチル、アレンホスホン酸ジメチル、アレンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチルなどである。
【実施例】
【0028】
下記の実施例は例示の目的で提示されており、また本発明の範囲を限定することを目的とせず、かつこれを限定するものであると解釈されるものではない。
【実施例1】
【0029】
温度計、還流冷却器、および隔膜を取り付けた三つ口の100mL丸底フラスコに、亜リン酸ジメチル(32g、0.29mol)を入れた。ナトリウムメトキシド(メタノール中で25重量%、62.8g、0.29mol)の溶液を、当該フラスコの内容物の温度を85℃に保ちながら注意深く一滴ずつ注入した。当該ナトリウムメトキシド溶液は、当該フラスコの温度を約85℃に保つ速度で加えた。NMR(1H and 31P;product 31P NMR:
δ = 34.99 ppm; m/z = 124.9)によって当該反応進行を監視しながら、当該混合物を還流撹拌した。当該反応が完了した時、当該ホスホン酸生成物、メチルホスホン酸ジメチルを、蒸留によって分離した。当該蒸留された生成物は、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC−MS)によって特徴付けた。
【実施例2】
【0030】
温度計、還流冷却器、および隔膜を取り付けた三つ口の100mL丸底フラスコに、亜リン酸ジエチル(35g、0.25mol)を入れた。ナトリウムメトキシド(メタノール中で25重量%、73g、0.338mol、亜リン酸に対して1.3当量)の溶液を、当該フラスコの内容物の温度を85℃に保ちながら注意深く一滴ずつ注入した。NMR(1H and 31P;product 31P NMR: δ = 34.57, 33.21, 31.82 ppm; m/z = 152.9,138.9, 124.9)によって当該反応進行を監視しながら、当該混合物を還流撹拌した。当該反応が完了した時、当該ホスホン酸生成物、メチルホスホン酸ジメチルおよびメチルホスホン酸ジエチルの混合物を、蒸留によって分離した。当該蒸留された生成物は、GC−MSによって特徴付けた。
【実施例3】
【0031】
温度計、還流冷却器、および隔膜を取り付けた三つ口の100mL丸底フラスコに、亜リン酸ジフェニル(30g、0.13mol)を入れた。ナトリウムメトキシド(メタノ
ール中の25重量%溶液、36.9g、0.17mol、亜リン酸に対して1.3当量)の溶液を、当該フラスコの内容物の温度を85℃に保ちながら注意深く一滴ずつ注入した。NMR(1H and 31P;product 31P NMR: δ = 34.99 ppm; m/z = 124.9)によって当該反応進行を測定しながら、当該混合物を還流撹拌した。当該反応が完了した時、当該ホスホン酸生成物、メチルホスホン酸ジメチルを、蒸留によって分離した。当該蒸留された生成物は、GC−MSによって特徴付けた。
【実施例4】
【0032】
温度計、還流冷却器、および隔膜を取り付けた三つ口の100mL丸底フラスコに、亜リン酸ジエチル(20g、0.14mol)を入れた。ナトリウムエトキシド(エタノール中の21重量%溶液、46.9g、0.14mol)の溶液を、当該フラスコの内容物の温度を85℃に保ちながら注意深く一滴ずつ注入した。NMR(1H and 31P;product 31P NMR: δ = 35.51 ppm)によって当該反応進行を監視しながら、当該混合物を還流撹拌した。当該反応が完了した時、当該ホスホン酸生成物、エチルホスホン酸ジエチルを、蒸留によって分離した。当該蒸留された生成物は、GC−MSによって特徴付けた。
【0033】
本明細書またはその特許請求の範囲内におけるあらゆる箇所において、化学名または化学式によって言及される成分は、言及される対象が単数形か複数形かにかかわらず、それらが、化学名または化学型(例えば、別の成分、溶媒、またはその他のもの)によって言及される別の物質と接触するより前に存在すると同様に識別される。どのような化学変化、化学変換、および/または化学反応が、例え当該得られた混合物または溶液内で起こるとしても問題ではないが、その理由は、このような変化、変換、および/または反応が、本開示に従って要求される条件下にて、当該特定の成分を一つにまとめることの当然の結果であるからである。従って、当該成分は、望ましい操作を行うことに関連して、または望ましい組成物を生成することにおいて、一つにまとめられる原料と言える。同様に、例え添付の特許請求の範囲が、物質、成分、および/または原料を現在形(「含む」、「〜である」など)で言及し得ても、当該言及は、当該物質、当該成分、または当該原料まで指すが、同様に、それらは本開示に従って一つ以上のその他の物質、成分、および/または原料と最初に接触、融合、または混合される直前の時点で存在した。物質、成分、または原料が、接触操作、融合操作、または混合操作の進行の間の化学反応または化学変換を通じて、それらの元の固有性を失い得たという事実は、これらの操作が、本開示に従い、かつ化学者の一般的技術をもって行われる場合、それ故に実際の懸念ではない。
【0034】
本発明は、本明細書にて列挙される物質および/または手順を含み、これらから成り、または本質的にこれらから成る。
【0035】
本明細書にて用いられる通り、本発明の組成物中、または本発明の方法にて用いられる原料の分量を修飾する用語「約」は、例えば、濃縮物を作り出す為に、または実際の溶液を用いる為に用いられる一般的な測定手順および液体処理手順、これらの手順における不注意による誤り、あるいは、当該組成物を作り出す為に、または当該方法を実行する為に用いられる原料の製造、供給源、または純度の差異などを通じて起こり得る数量のばらつきを指す。用語「約」は、特定の初期混合物から生じる組成物に対する様々な平衡条件によって異なる量もまた包含する。用語「約」によって修飾されるかどうかにかかわらず、本特許請求の範囲は当該分量の均等物を含む。
【0036】
明白的に別段の定めがある場合を除いて、冠詞「一つの(aまたはan)」は、もし本明細書にて用いられる場合、また本明細書にて用いられる通り、記述または特許請求の範囲を当該冠詞が指す単一の要素に制限することを目的とせず、またこれらを限定するものと解釈されるものではない。さらに正確には、本文が明白に他に示さない限り、冠詞「一つの」は、もし本明細書にて用いられる場合、また本明細書にて用いられる通り、一つ以
上のこのような要素を対象とすることを目的とする。
【0037】
本明細書のあらゆる部分にて言及されるありとあらゆる特許またはその他刊行物、あるいは公表された文書は、本明細書にて十分説明されたかのように、全体が参照によって本開示に組み込まれる。
【0038】
本発明は、その実施において多大な変形を受け入れることができる。それ故、当該先行の記述は、本発明を上記に提示された特定の例示に限定することを目的とせず、またこれを限定するものと解釈されるものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルが生成されるように、
(i)少なくとも一つの亜リン酸ジヒドロカルビルと、
(ii)少なくとも一つのアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドと、
(iii)少なくとも一つのアルコールと、
を含む成分からの反応混合物を生成するステップを含むことを特徴とする、炭化水素ホスホン酸ジヒドロカルビルの調製方法。
【請求項2】
成分(i)が、ヒドロカルビル基が互いに同一である亜リン酸ジヒドロカルビルであるという特徴、
成分(i)が、ヒドロカルビル基がアルキル基である少なくとも一つの亜リン酸ジヒドロカルビルであるという特徴、
の内の少なくとも一つを有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記成分(i)のアルキル基が一個から約六個の炭素原子を有することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記成分(i)が亜リン酸ジメチルまたは亜リン酸ジエチルであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記成分(ii)が、ヒドロカルビル基がアルキル基、アルケニル基、またはアラルキル基であって、かつアルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである少なくとも一つのアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記成分(ii)が、ヒドロカルビル基が一個から約六個の炭素原子を有するアルキル基またはアルケニル基、あるいは七個から約十五個の炭素原子を有するアラルキル基であって、かつアルカリ金属がナトリウムまたはカリウムである少なくとも一つのアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記成分(ii)がナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、またはナトリウムベンゾキシドであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記成分(iii)が少なくとも一つの液体アルコールであることを特徴とする、請求項1から7の何れかに記載の方法。
【請求項9】
前記成分(iii)がメタノール、エタノール、またはベンジルアルコールであることを特徴とする、請求項1または7に記載の方法。
【請求項10】
前記成分(ii)が、アルカリ金属成分がナトリウムであって、かつヒドロカルビル基がアルキル基であるアルカリ金属ヒドロカルビルオキシドであることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載の方法。
【請求項11】
亜リン酸ジアルキルが亜リン酸ジメチルであって、前記アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドがナトリウムメトキシドであって、かつ前記アルコールがメタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
亜リン酸ジアルキルが亜リン酸ジエチルであって、前記アルカリ金属ヒドロカルビルオキシドがナトリウムエトキシドであって、かつ前記アルコールがエタノールであることを特徴とする、請求項1に記載の方法。

【公表番号】特表2010−529139(P2010−529139A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511314(P2010−511314)
【出願日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/065858
【国際公開番号】WO2008/154268
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(594066006)アルベマール・コーポレーシヨン (155)
【Fターム(参考)】