説明

炭化水素流れ中のアセチレン類及びジエン類の選択的水素化

水素、メタン、C〜Cオレフィン類及びパラフィン類、C〜Cアセチレン類及びジエン類、ベンゼン、トルエン、キシレン類、及び他のC+成分を含む流れ中のアセチレン類及びジエン類を、反応の熱は反応器中で液体によって吸収されて蒸気を生じるような下降流沸点反応器中で水素化する。反応器への供給物の他に、反応器内部の触媒粒子が湿潤することを確実にするのに十分な率で供給される再循環流れが存在する。下流の蒸留塔から取り出された第3の流れを供給して、反応器中で蒸発した質量に対応する補給質量を提供する。この第3の流れの組成は、反応器を通って流れる液体の定常状態組成を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化水素流れ中のアセチレン類及びジエン類を選択的に水素化する方法に関する。より詳細には、本発明は、下降流沸点反応器を使用した、水素、オレフィン類並びにより少量のアセチレン類及びジエン類を含む炭化水素流れ中のアセチレン類及びジエン類の選択的水素化に関する。
【背景技術】
【0002】
炭化水素水蒸気分解装置のクエンチ系から生じた蒸気生成物流れは典型的に、主として水素、メタン、C〜Cオレフィン類及びパラフィン類、C〜Cアセチレン類及びジエン類、ベンゼン、トルエン、キシレン類、及び他のC+成分からなる。炭素数に従った生成物の分離及び回収は一般に、高圧コールドボックス系におけるメタンからの水素の最初の分離の後に逐次蒸留系において成し遂げられる。蒸留系の設計は、同じ炭素数を有するオレフィン類、アセチレン類、及びジエン類の相対揮発度の差は小さく、純粋なオレフィン生成物を製造するのを困難にするという事実によって複雑になる。この問題を回避する1方法は、炭素数留分を最初に分離し、次に各留分を選択的に水素処理して、アセチレン及び/またはジエンをその対応するオレフィンまたはパラフィンに転換するというものである。このいわゆる“バックエンド”手法は、各炭素数留分につき別個の水素処理系並びに必要量の水素を各系に加えることを必要とする。他の方法は、含まれる水素を転換のための水素の源として使用して、分離前に供給物流れを水素処理することである。このいわゆる“フロントエンド”手法は、水素のかなりの部分を供給物流れからコールドボックスへと除去し、それによってコールドボックスのサイズ及び冷却要件を低減するという利点を有する。
【発明の開示】
【0003】
本発明は、水素、メタン、C〜Cオレフィン類及びパラフィン類、C〜Cアセチレン類及びジエン類、ベンゼン、トルエン、キシレン類、及び他のC+成分を含む流れ中のアセチレン類及びジエン類を水素化する触媒の床の内部の温度の有効な制御に対処する“フロントエンド”水素処理系を提供する。本発明は、反応の熱は反応器中で液体によって吸収されて蒸気を生じるような下降流沸点反応器を利用する。反応器への供給物の他に、反応器内部の触媒粒子が湿潤することを確実にするのに十分な率で供給される再循環流れが存在する。下流の蒸留塔から取り出された第3の流れを供給して、反応器中で蒸発した質量に対応する補給質量を提供する。この第3の流れの組成は、反応器を通って流れる液体の定常状態組成を制御する。この流れの組成を、流れを抜き出す下流の蒸留塔からの箇所を選択することによって制御してよい。塔中の抜き出し箇所が低い程、第3の流れ中の成分の沸点は高い。反応器を通って流れる液体の定常状態組成は、圧力と共に、反応器の温度プロフィールを決定する。
【0004】
“沸点反応器”においては、たとえ反応成分は反応の発熱による熱によって蒸発するとしても、液相が常に維持される。反応流れが蒸発すると思われるいかなる反応においても、不活性でより高沸点の成分を加えて液相を維持できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
アセチレン類及びジエン類の選択的水素化のために有用な触媒は、アルミナ表面に担持された酸化パラジウムを含む。1つのこのような触媒は、1/8インチ球表面に担持された0.34重量%のパラジウムを含み、G68Cと呼ばれ、ズュード−ケミー(Sud-Chemie)(以前はユナイテッド・カタリストInc.(United Catalyst Inc.))によって供給されている。別の触媒は、8〜12メッシュ球表面に担持された0.5重量%のパラジウムを含み、E144SDUと呼ばれ、カルシキャト、カタリスト・アンド・パーフォーマンス・ケミカルズ・ディビジョン、マリンクロット、Inc.(Calcicat, Catalyst and Performance Chemicals Division, Mallinckrodt, Inc.)によって供給されている。最良の結果を得るためには、共通に所有される米国特許第5,730,843号において開示されているように、触媒を構造化充填材中に担持する。しかしながら、触媒は、単に反応器中に装填してよい。
【0006】
ここから図1を参照すると、アセチレン類及びジオレフィン類よりもかなり多量(モルベース)の水素及びオレフィン類を含む炭化水素流れ中のアセチレン類及びジオレフィン類の選択的水素化が、下降流沸点反応器中で実行される。塔10として示す下降流沸点反応器は、12において構造化充填材中に担持された粒子状触媒を含む垂直配置反応器である。ガス状供給物流れは、フローライン101を経て塔10の頂部に供給される。また反応器の頂部に供給されるのは、下記により詳細に説明するように、フローライン102中の循環する流れと蒸留塔40から得たフローライン103中の流れとの混合物であるフローライン104中の液体である。気体及び液体流れは同時に下向きに塔を通過して流れ、流れ形式は気体連続(gas continuous)である。気体及び液体の並流は、暴走反応の可能性を無くす。
【0007】
反応器10は断熱的に稼働し、その結果、反応の熱は、より軽質の液相成分を優先的に蒸発させることに使用される。反応器から生じたフローライン105中の流出液を蒸気/液体分離器20に供給し、分離器20中で蒸気及び液体は分離する。フローライン106中の蒸気の熱含量は、反応器10中で発生した反応の熱を含み、一方、その質量速度は、下記に説明するスリップ流れ107を差し引いたフローライン101及び103中の流れの合わせた流れに等しい。フローライン102中の液体を反応器10の頂部にフィードバックする。フローライン102中の流れの流量は可変であり、触媒粒子が反応器10中の全ての位置で十分に湿潤することを確実にするのに少なくとも十分なように維持される。フローライン103中の流れは、フローライン106中の流れの一部として反応器系から出る反応器中で蒸発する質量に対応する補給質量を提供する。フローライン103中の流れの組成は、反応器10を通って流れる液体の定常状態組成を制御する。これは、反応器圧力は反応器の温度プロフィールを決定することと組み合わせて、重要な稼働パラメータである。スリップ流れをフローライン107によって取り出して、蒸気/液体分離器容器20中の液体ストックを制御する。
【0008】
塔40はC/Cスプリッターである。塔への供給物は、分離器20から生じたフローライン106中の蒸気である。これは、フローライン103中の再循環流れと共に交換器30中で間接熱交換によって加熱される。塔40を、C+成分を本質的に含まないフローライン108を経た蒸気留出物留分並びにC及びより軽質の成分を本質的に含まないフローライン109中のボトムス液体生成物を回収するように設計する。オーバーヘッドを、フローライン130を経て取り出し、分縮器50を通過させ、分縮器50中で、より重質の成分を凝縮する。オーバーヘッドを受け器分離器60中で集め、受け器分離器60中で、液体炭化水素をフローライン120を経て抜き出し、還流として塔40に戻す。水を、フローライン110を経て取り出す。言及したように、留出物生成物をフローライン108を経て除去する。
【0009】
フローライン103中の再循環流れの抜き出し位置またはトレイは稼働変数である。取り除く箇所を塔のさらに下方に移動させると、流れ中のより高沸点の成分は増大する。抜き出しが塔40の底部段から生じる場合、固定温度プロフィールでの反応器10の最小稼働圧力が実現する。
【実施例】
【0010】
図1に表す系への供給物は、圧縮及び酸性ガス(acid gas)(CO及びHS)除去後の、オレフィン類製造水蒸気分解装置のクエンチ塔から生じた蒸気生成物である。水素化触媒を負荷した約14,000ft構造化充填材を反応器に装填した。床寸法は、直径約15ft×長さ70ftである。反応器の稼働条件は次の通り:反応器頂部/底部圧力250/240psia;液体再循環率(フローライン102中の流れ)4,000,000lb./hr.;フローライン107中のスリップ流れ2243lb./hr.。蒸留塔40は、直径16.4ftの20段(理論的な)頂部区画及び10.5ftの20段(理論的な)底部区画を有するように構成された塔である。蒸留塔40の設計条件は次の通り:還流比0.18;還流温度136°F、凝縮器圧力は238psiaであり;塔圧力低下は2psiであり;底部段側流抜き出し;デカンター温度84°F。熱及び物質収支の結果を表Iに与える。反応器にわたる温度プロフィールを図2に与える。
【0011】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の1具体例の概略形態の流れ図である。
【図2】本発明の典型的な反応器中の温度プロフィールのグラフ図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素、メタン、C〜Cオレフィン類及びパラフィン類、C〜Cアセチレン類及びジエン類、ベンゼン、トルエン、キシレン類、及び他のC+成分を含む流れ中のアセチレン類及びジエン類の水素化方法であって、前記流れを、下降流沸点反応器中に含まれる水素化触媒上を通過させることを含む方法において、前記反応器は前記反応器中の混合物の沸点で稼働し、反応の熱は液体を沸騰することによって吸収され、前記アセチレン類及びジエン類の一部は、同じ炭素数を有するそれらの対応するオレフィン類及びパラフィン類に転換される、方法。
【請求項2】
前記下降流沸点反応器から生じた流出液中の液体及び蒸気は分離され、前記液体の一部は再循環されて、前記下降流沸点反応器の頂部に戻る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
再循環される前記液体の量は、前記触媒が前記下降流沸点反応器内部の全ての位置で十分に湿潤することを確実にするのに十分なように維持される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記流出液中の前記蒸気はC/Cスプリッターに供給され、該スプリッター中でC及びより軽質の材料はオーバーヘッドとして取り出され、C及びより重質の材料はボトムスとして取り出される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記C/Cスプリッターから側流抜き出しが取り出され、前記下降流沸点反応器の頂部に供給される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記下降流沸点反応器中を流れる液体の定常状態組成は、前記C/Cスプリッターの高さに沿った前記側流抜き出しの抜き出し箇所の位置によって制御される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記側流抜き出しは、前記C/Cスプリッターの底部段から取り出される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水素、メタン、C〜Cオレフィン類及びパラフィン類、C〜Cアセチレン類及びジエン類、ベンゼン、トルエン、キシレン類、及び他のC+成分を含む流れ中のアセチレン類及びジエン類の水素化方法であって:
(a)前記流れを、下降流沸点反応器中に含まれる水素化触媒上を通過させ、前記反応器は前記反応器中の混合物の沸点で稼働し、反応の熱は液体を沸騰することによって吸収され、前記アセチレン類及びジエン類の一部は、同じ炭素数を有するそれらの対応するオレフィン類及びパラフィン類に転換される工程と;
(b)前記下降流沸点反応器から生じた流出液中に含まれる液体及び蒸気を分離する工程と;
(c)分離された液体の一部を前記下降流沸点反応器の頂部に戻す工程と;
(d)再循環される前記液体の量を、前記触媒が前記下降流沸点反応器内部の全ての位置で十分に湿潤することを確実にするように維持する工程と;
(e)前記流出液中の前記蒸気をC/Cスプリッターに供給し、該スプリッター中でC及びより軽質の材料はオーバーヘッドとして取り出され、C及びより重質の材料はボトムスとして取り出される工程と;
(f)前記C/Cスプリッターから側流抜き出しを取り出し、該側流抜き出しを前記下降流沸点反応器の頂部に供給する工程と;
(g)前記下降流沸点反応器中を流れる液体の定常状態組成を、前記C/Cスプリッターの高さに沿った前記側流抜き出しの位置を選択することによって制御する工程と;
を含む方法。
【請求項9】
前記側流抜き出しは、前記C/Cスプリッターの底部段から取り出される、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−522120(P2006−522120A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−509063(P2006−509063)
【出願日】平成16年3月4日(2004.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/006535
【国際公開番号】WO2004/081149
【国際公開日】平成16年9月23日(2004.9.23)
【出願人】(599003073)キャタリティック・ディスティレイション・テクノロジーズ (28)
【Fターム(参考)】