説明

炭火焼物器

【課題】耐久性が向上し、炭火の高熱から調理者を守るための配慮が施された炭火焼物器を提供する。
【解決手段】炭火焼物器1は、ケーシング10の前面上部を覆うヒートプロテクター60を備える。ヒートプロテクター69とケーシングの前面上部との間には、上下に口の開いたスキマが形成され、このスキマに自然対流による空気流が流れることによりヒートプロテクター60とケーシング10の前面上部との間を断熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼き鳥や牛タンなどの食品を炭火で焼いて調理するための炭火焼物器に関する。特には、耐久性を向上させるための改良や、炭火の高熱から調理者を守るための配慮などを施した炭火焼物器に関する。
【背景技術】
【0002】
焼き鳥や牛タンなどを提供する料理店では、炭火焼き調理を行う炭火焼物器が使用されている。このような炭火焼物器は、ケーシング内の炭槽に炭を置いて、炭火を起こし、その上で食物を焼くものが一般的である。焼き鳥などの串に刺された食物は、ケーシングの上面に配置されたロストル間に掛け渡されて置かれ、牛タンなどの食物はロストル上に置かれた焼き網上に置かれる。炭槽としては、底面に炭すのこが敷かれた炭コンロや、ケーシングの内部に炭受け格子を配置してその上に炭を置くものが多い。
【0003】
このような炭火焼物器においては、炭の燃焼時に高熱が発生する。そして、この熱がケーシングの表面に伝わり、ケーシング表面が高温になってしまうことがあり、調理者が不用意に触れると火傷を負うおそれがある。特に、調理者が焼き鳥を裏返したりする作業時に、ケーシングの前面上端に触れやすい手からひじにかけての部分に火傷を負う事例が多い。
【0004】
そこで、ケーシングの高温対策として、ケーシングと炭槽との間に、冷却用空気を流すための冷却路を形成した炭火焼物器が開示されている(特許文献1参照)。この炭火焼物器は、ケーシングの前壁、後壁及び底面と炭槽との間に冷却路を設けている。冷却路はケーシングの上面の吸気口から炭槽の内部に通じている。冷却路には吸引装置が設けられている。この吸引装置で外部空気を冷却路に流し、炭槽からケーシングへの熱の伝達を阻止している。
【0005】
【特許文献1】特許第3499503号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
また、炭の燃焼時に発生する高熱により、他に以下のような問題点がある。まず、ケーシング内の炭槽の下に配置されている炭受け格子やバーナーが、このような高温によって変形・損傷する。このため、このような部品の寿命が短くなってしまう。これに対する対策として、炭受け格子を鉄製の頑丈なものとする場合もあるが、重量が非常に重くなってしまい、取り扱いが容易ではない。また、バーナーを炭受け格子の下方に設置した場合は、同格子間から落下した灰がバーナーの炎口に詰まってしまうことがある。
【0007】
さらに、例えば、焼物器がコールドテーブル(台付き冷凍・冷蔵庫)上に設置されている場合、ケーシングの熱が冷蔵庫に伝わり、冷蔵庫が十分な冷却能力が得られないような事態も起こる。
さらには、高温対策のためにケーシングや各部品をステンレスや鉄で作製するとともに、厚さを厚くしているので、焼物器全体が非常に重くなってしまう。このような重量物をテーブル等に置いた場合、重量が脚に集中し、脚が置かれるテーブルの部分がへこんでしまうような事態も起こり得る。
【0008】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたものであって、耐久性を向上させるための改良や、炭火の高温から調理者を守るための配慮等が施された炭火焼物器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に関連する第1の態様の炭火焼物器は、 ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、 前記炭受け格子が、複数のセラミック製の棒を配列することにより構成されていることを特徴とする。
炭受け格子を、熱伝導係数の小さいセラミック棒を配列して構成したので、同格子の下方への熱の伝達を抑えることができる。このため、ケーシングの下方の部分の温度上昇を抑えることができるとともに、炭の燃焼熱を効率的に調理に利用することができる。また、セラミックは耐熱性が高く、変形や酸化が生じ難いので炭受け格子の耐久性が向上する。
なお、本出願にいう炭は、自然の炭、擬似炭(ねり成形炭)を含む。
【0010】
この炭火焼物器においては、 前記セラミック製の棒を、2mm〜7mmの間隔で配列することにより、熱の下方への伝達を抑制できるとともに、炭が燃え尽きた灰をセラミック棒間からそれほど詰まらずに落下させることができる。
【0011】
本発明の第2の態様の炭火焼物器は、 ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、 前記ケーシングの前面上部を覆うヒートプロテクターを備え、該ヒートプロテクターと前記ケーシングの前面上部との間に上下に口の開いたスキマを設け、該スキマに自然対流による空気流が流れることにより前記ヒートプロテクターと前記ケーシングの前面上部との間を断熱することを特徴とする。
調理者の手が特に触れやすい前かまち(ケーシングの前面上部)の部分を、特に効果的に断熱することができ、安全性が向上する。また、空気流は炭槽の上昇気流を利用した自然対流であるため、ファン等の強制通気機構を設ける必要がない。
【0012】
本発明に関連する第3の態様の炭火焼物器は、 ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、 前記ケーシングが耐熱断熱層上に載置されていることを特徴とする。
断熱層上にケーシングを載置することによって、ケーシングから下方向への熱の伝達を抑制できる。したがって、炭火焼物器をコールドテーブル等の上に置くような場合にも支障が生じ難い。
【0013】
本発明に関連する第4の態様の炭火焼物器は、 ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、 炭火を起こすバーナーを備え、該バーナーの炎口が前記炭受け格子の真下から外れた位置にあり、該バーナーから横方向に噴き出された火炎が前記炭受け格子の間から上方に向かうことを特徴とする。
バーナーを炭受け格子の真下から外れた位置に設置することにより、炭受け格子から落下する灰等がバーナーの炎口に詰まることが防がれる。したがって、バーナーの着火不良などを防止できる。
【0014】
本発明に関連する第5の態様の炭火調理器は、 ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、 前記炭受け格子上の前記ケーシングの左右方向に掛け渡されたロストルを備え、該ロストルの両端がラッチ式昇降機構により左右独立に昇降可能であることを特徴とする。
ロストルの左右端を独立して昇降できるため、ロストルを斜めに配置することもでき、食材や炭の燃焼具合に応じて近火から遠火までを調整できる。また、昇降機構がラッチ式なので操作しやすい。
【0015】
本発明の第6の態様の炭火調理器は、 ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、 前記ケーシング内の前記炭受け格子上の空間(炭槽)の周囲が複数のセラミック製の耐火部材で囲まれており、該耐火部材の隣接部が厚さ方向に交互に重なるオーバーラップ構造を有することを特徴とする。
炭から発する熱を炭槽内に輻射するとともに、外側のケーシングへの熱の伝達を抑制できる。
【発明の効果】
【0016】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、炭槽から発する熱のケーシングへの伝達を抑制するように改良を加えた炭火焼物器を提供できる。したがって、耐久性が向上し、炭火の高熱から調理者を守るための配慮が施された炭火焼物器を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る炭火焼物器の全体を示す図である。
図2は、図1の炭火焼物器の正面図である。
図3は、図1の炭火焼物器の正面断面図である。
図4は、図1の炭火焼物器の平面断面図である。
図5は、図1の炭火焼物器の側面断面図である。
これらの図面、及び以下の図面において、調理者から見た炭火焼物器の左側を左方向、右側を右方向とし、調理者側を前方向、反調理者側を奥方向とする。
【0018】
図1、図2を参照して、炭火焼物器1の全体の構成を説明する。
この炭火焼物器1は、横長の直方体状のケーシング10と、このケーシング10内に配置された炭槽20と、火起こし用バーナー31(図3、図4、図5参照)と、ケーシング10の上方に配置された昇降式ロストル組立体80と、ケーシング10が載置される断熱架台75などを備える。炭火焼物器1で食物を焼く場合は、所定の量の炭を炭槽20内の炭受け格子(図4の符号21)の上に置いて、バーナー31で点火する。ロストル81(又は焼き網111)上に置かれた食品は、起こされた炭火で焼き調理される。燃え尽きた炭は灰となって、炭槽20から下方に落下する。
【0019】
まず、ケーシング10と炭槽20について説明する。
ケーシング10は、図4に分かりやすく示す前板11a、奥板11b、左右側板11c、11dと、図3に判りやすく示す二重の底板(上底板11e、下底板11f)で囲まれた凹状のものである。なお、ケーシング10の上面の周囲の部分(炭槽20以外の部分)には天板13が貼られている。なお、図5に示すように前側の天板13aは、前から奥へ向けて斜め上方に傾斜しており、前かまちとも言われる。ケーシング10の各板11や天板13として、例えば、板厚3mmのSUS304を使用できる。
【0020】
図3に示すように、ケーシング10の内部のほぼ半分の高さの面には、炭受け格子21が配置されている。この炭受け格子21の上方の空間が、炭火が起こされる炭槽20となる。炭受け格子21の下方の空間は、炭が燃えた灰が落下して収集されたり、炭槽20に空気を供給するための通気空間41である。
【0021】
図4に分かりやすく示すように、炭槽20は、四方に敷設された耐火セラミック壁25と、炭受け格子21で囲まれた空間である。炭槽20の手前面及び奥面には、各々3枚の耐火セラミック壁25が、ケーシング前板11a及び後板11bから所定のスキマを開けて敷設されている。また、炭槽20の左右側面には、各々1枚の耐火セラミック壁25が、ケーシング左右側板11c、11dから所定のスキマを開けて敷設されている。つまり、炭槽20の四面と、ケーシング10の四面との間は空間(空気層)となっている。また、耐火セラミック壁25の隣接部は、厚さ方向に互いに重なり合うオーバーラップ構造となっている。耐火セラミック壁25としては、例えば、気孔率33%、吸水率23%、安全使用温度1000℃の特性を有するコージュライト質耐火物を使用できる。
なお、これらの耐火セラミック壁25は、ドライバ等の器具を用いて外すことができる。
【0022】
図6は、炭槽の構造を説明する斜視図である。
炭受け格子21は、複数の、断面が円形のセラミック棒22の列で構成されている。図4に示すように、炭受け格子21は、横に延びる複数本(一例で15本)のセラミック棒22が縦に並んだ列が、複数列(この例では3列)並んで構成されている。セラミック棒22間の間隔は5mm〜6mmである。この間隔は、後述するように、7mm以下であり、できるだけ狭いことが好ましい(ただし2mm以上は必要)。各セラミック棒22の両端は、ケーシング前板11aと後板11bとの間に掛け渡されている棒受け23に支持されている。各棒受け23の両端は、ケーシングの前板11aと奥板11bに設けられたブラケット24に保持されている。
この例では、セラミック棒22の径は17mm、長さは320mmである。このようなセラミック棒22として、例えば、吸水率0%、安全使用温度1450℃、熱伝導係数0.04cal/cm・sec・℃のアルミナ磁器(アルミナ組成率90%)を使用できる。
【0023】
セラミック棒22は棒受け23から1本ずつ取り外すことができる。このため、例えば、セラミック棒22が1本だけ損傷したような場合には、その棒だけ交換すればよい。また、各棒受け23もブラケット24から取り外すことができる。
【0024】
図7は、炭槽から発生する熱の伝達状態を説明するための模式的な図である。
この炭火焼物器1においては、炭槽20をセラミック棒配列構造とすることにより、炭受け格子21の下方への放熱を抑制することができる。つまり、炭受け格子21を熱伝導率の小さいセラミック棒22で作製したことにより、同格子上21で火が起こされると、その放熱量の大半は、図の白抜き矢印A1で示すように、上方の炭槽20内に放出される。そして、少量の放熱量が、図の白抜き矢印A2に示されるように、格子21から下方に放出される。また、炭槽20の四方に敷設されている耐火セラミック壁25も熱の伝導・吸収が少なく、図の白抜き矢印A3で示されるように、炭槽20内に熱を輻射する。このため、炭受け格子21の下方に配置されている部品(後述するバーナーや灰受けトレイ)への熱の伝導が抑制される。また、炭槽20の四面とケーシング10の四面との間には空気層が存在しているため、炭槽20からケーシング21の各板への熱の伝導も抑制できる。
【0025】
その結果、炭の燃焼熱を効率的に調理に利用することができ、炭の使用量を低減できる。一例として、通常の鉄製の炭受け格子を使用する場合と比べて、20%程度使用量を減らすことができる。なお、セラミック棒22の間隔が狭いほど、炭受け格子21の下方への熱の伝導を少なくすることができて好ましいが、炭が燃えた後の灰が詰まらずに落下するだけの間隔が必要であり、2mm以上7mm以下であることが好ましい。
また、セラミックは耐熱性が高く、変形や酸化が生じ難いので炭受け格子の耐久性が向上する。
【0026】
なお、この例では、セラミック棒22からなる炭受け格子20を1段のみとしたが、2段とすることもできる。この際、各段でセラミック棒22を側面が千鳥状となるように配列することが好ましい。このようにすることによって、炭槽20から炭受け格子21の下方への熱の伝達をより抑制できる。
【0027】
図3に示すように、炭受け格子21の下方には、バーナー31が横方向に向くように設けられている。バーナー31は、図4に示すように、ケーシング右側板11dの外側に、前後方向に2つ並んで設けられている。図3、図4に示すように、バーナー31の先端は炭槽には突出していない。このため、炭受け格子21の間から落下した灰や食物から落下した油などが、バーナー31に付着するようなことがない。また、炭火から発する熱が、炭受け格子21の下方に配置されているバーナー31には伝達されにくいため、バーナー31の汚れや腐食がほとんどなく、バーナー31の耐久性が向上する。
【0028】
各バーナー31には、ガス管33が接続している。図5に示すように、ガス管33は、ケーシング奥板11bに設けられたガス入口からケーシング前板11aに設けられた点火スイッチ35に延び、このスイッチ35から一端奥方向に延びた後、上方に曲がり、その後で前方にやや延びて、各バーナー31に接続している。各バーナー31には着火素子付きのパイロットバーナ(図示されず)が備えられている。
スイッチ35でパイロットバーナから点火すると、各バーナー31から火炎が横方向に噴き出される。この火炎は炭受け格子21のほぼ中央まで達し、同格子のセラミック棒22間のスキマから上方に噴き出す。なお、火炎は炭受け格子21のほぼ中央までしか達しないが、炭受け格子21の全面上に置かれた炭を起こすことができる。
【0029】
図3に示すように、炭受け格子21の下方は、上述のように炭が燃えた灰が落下するとともに炭に空気を送る通気空間41となっている。同空間41の下方には、2つの灰受けトレイ43が、ケーシング10から前方に引き出し可能に設けられている。各灰受けトレイ43の底板と両側板との間の隅には、高温に対しての補強用段部が形成されている。各灰受けトレイ43は、ケーシング上底板11e上に配設されたレール45上に保持されている。レール45はL字型であり、レール45の端面で、灰受けトレイ43をケーシング上底板11eからやや浮かして保持している。このようにトレイ43とレール45との接触部の面積をできるだけ少なくして、トレイ43が高温によって変形しても、レール45上をスライドできるようにしている。また、トレイ43の底板とケーシング上底板11eとの間にスキマを開けて、油などによるトレイ43とケーシング上底板11eとの密着を防いでいる。
【0030】
図2、図3に示すように、通気空間41のケーシング前板11aには、複数の通気孔47が開けられている。これらの通気孔47は、ツマミ49(図2参照)を持って遮蔽板を左右にスライドさせることにより開閉可能であり、各孔47の開口率を変化させることができる。孔47の開口率を変えることにより、通気空間41内に取り込まれる空気の量を調整して、炭の燃焼具合を調整する。
また、図3に示すように、同空間41において、ケーシング前板11aとケーシング後板11bとの間には補強フレーム51が渡されている。
【0031】
次に、ケーシング10の高温対策としての、ヒートプロテクター60と底板断熱構造について説明する。
まず、ヒートプロテクター60を説明する。図1、図2、図5に示すように、ヒートプロテクター60は、ケーシング10の前かまち13aの部分に脱着可能に取り付けられる。焼き鳥を裏返す作業中に、調理者の手から腕は、前かまちの部分に特に触れやすい。そこで、この部分にヒートプロテクター60を設けることにより、同部の温度上昇を抑えている。
【0032】
ヒートプロテクター60は、前板61と左右の側板63とから構成されて、前かまち13aの部分を前方と両側方から囲むような形状を有する。各側板63には、切り欠き65が形成されている。この切り欠き65は、ケーシング左右側板11c、11fから突出した突起12に噛み合わされて、ヒートプロテクター60がケーシング10に取り外し可能に取り付けられる。ヒートプロテクター60は、例えば板厚3mmのSUS304で作製できる。
【0033】
図8は、ヒートプロテクターの作用を説明する図である。
ヒートプロテクター60がケーシング10に取り付けられると、ヒートプロテクター60の前板とケーシングの前かまち13aとの間に、上下に口が開いたスキマが形成される。このスキマの寸法は、一例で10mmである。このスキマが空気層Sとなって、前かまち13aからヒートプロテクター60への熱の伝達が抑制される。炭火焼物器が使用されている間、炭槽20からは、図の白抜き矢印で示すように、炭火で熱せられた空気が上方へ流れている。このような空気の上方への流れに伴い、図の白抜き矢印で示すように、空気層Sにも下方から上方へ空気が流れて、同層Sは通風状態となる。このため、同層Sには室温程度の温度の空気の通風状態となり、断熱効果が得られる。一例として、ヒートプロテクター60の表面温度を75℃程度に抑えることができる。
また、ヒートプロテクター60はケーシング10から簡単に取り外すことができるため、汚れた場合でも、容易に洗うことができる。
【0034】
次に、底板断熱構造について説明する。
図9は、ケーシングの下部を拡大して示す図であり、図9(A)は正面図、図9(B)は側面図である。
ケーシング10の底板は、上底板11eと下底板11fの二重構造となっている。上底板11eと下底板11fとの間には縦方向に延びる3本のアジャスタネジ部71が敷設されており、両底板の間に空気層S11を形成している。下底板11fのこれらのアジャスタネジ部71に相当する位置には、下方に突き出る6個の脚73が突設されている。そして、ケーシング10は、この脚73で断熱架台75上に設置されている。断熱架台75は、断熱材が金属製の偏平な箱内に充填されたものである。断熱材としては、例えばセラミックファイバー断熱材を使用できる。断熱架台75の下面には、横方向に延びる2本のフレーム77が設けられている。
【0035】
このような構造により、ケーシング10の下方は、上から順に、両底板間の空気層S11、下底板と断熱架台層間の空気層S12、断熱材層75、及び、断熱材層75と設置面間の空気層S13の4つの断熱層が形成される。このためケーシング10から下方への熱の伝達を抑制できる。このため、炭火焼物器1をコールドテーブル等の上に載せても安全である。また、炭火焼物器1の重量は2本のフレーム77にかかることになるが、これらのフレーム77は断面積が広く、同器1の重量を分散して受けることができるため、同器1が置かれる面に局所的に負荷をかけることがない。
【0036】
次に、昇降式ロストル組立体80について説明する。この昇降式ロストル組立体80は、ロストル81をケーシング10の天板13上を最大10cmの高さまで段階的に昇降可能であり、ロストル81を左右方向に斜めに傾斜させることもできる。
図1、図2に示すように、ロストル81は、2本の角棒であり、炭槽20上のケーシング10の前側と奥側で、左右天板間に掛け渡されている。各ロストル81の両端は、それぞれにラッチ式昇降機構を備えるロストル受け83に支持されている。各ロストル受け83は、前後方向の2ヶ所に設けられた昇降ロッド85によって、ケーシング10に支持されている。
【0037】
図10は、ロストル昇降機構を説明するための図である。
ロストル受け83に設けられた各昇降ロッド85は、上部がケーシング天板13に形成された上ガイドブッシュ87を通り、下部が内ケーシング14に形成された下ガイドブッシュ89を通って、上下にスライド可能である。各ブッシュの内面には摺動材が巻かれている。各昇降ロッド85はほぼ中央部でタイロッド91によって連結されている。
【0038】
前側の昇降ロッド85には、鋸歯状の係止爪93が、下端から5段階に渡って形成されている。係止爪と係止爪の間は、斜めに延びる傾斜部となっている。これらの係止爪93は、ケーシング10に設けられたストッパー95と噛み合って、前昇降ロッド85を所定の高さに保持する。前昇降ロッド85を上下させることにより、ロストル受け83全体を水平に上下させることができる。
【0039】
ストッパー95は、ケーシング前板11aと内ケーシング14を貫通して、前奥方向にスライド可能となっている。ストッパー95は、ケーシング前板11aの外側(前側)に位置するツマミ96、内フレーム14の内側(後側)に突き出た係合爪97、両部の間を延びるロッド98からなる。係合爪97はロッド85の各係止爪93と噛み合うもので、断面が半円形で、同部の先端は鋭角に尖っている。また、ロッド98の最も奥側(係合部側)には、ロッド98より径の大きい大径部98aが形成されている。ロッド98には、バネ99が挿嵌されている。このバネ99は、大径部98aをケーシング前板11aに対して後方へ付勢して、大径部98aを内ケーシング14に当接させている。大径部98aが内ケーシング14に当接すると、係合爪97は内ケーシング14内に突き出て、ロッド85の係止爪93に係合する。
【0040】
図10に示す状態は、ストッパー95の係合爪97が昇降ロッド85の最上端の係止爪93−1に係合している状態を示しており、このとき、ロストル81は最下位置(天板の直ぐ上)に位置する。ロストル81の位置を高くする場合は、手でロストル受け83を持って上方に引き上げる。昇降ロッド85が上方にスライドすると、ストッパー95の係合爪97は昇降ロッド85の係止爪93−1から離れて傾斜部に沿ってガイドされる。すると、バネ99が縮み、ストッパー95が昇降ロッド85の傾斜部で前方向に押される。そして、昇降ロッド85の次の係止爪93−2が係合爪97に達すると、同爪97はバネ99で付勢されて次の係止爪93−2に係合する。このように、ストッパー95の係合爪97を昇降ロッド85の各係止爪93に係合させることにより、ロッド85の高さ、即ち、ロストル受け83の高さを段階的に変えることができる。この例では、係止爪93間の間隔は25mm、最下係止爪93−5と最上係止爪93−1との間隔は100mmである。つまり、ロストル81の高さを天板13上から最大100mmの高さまで、25mm間隔で変更できる。
【0041】
ロストル81の高さを下げるには、ツマミ96を持ってストッパー95を手側に引く。すると、バネ99が縮んで係合爪97が係止爪93から離れ、ロッド85が下降する。ツマミ96を離すと、係合爪97がバネ99で奥方向に付勢されて、次の下の係止爪に係合する。
【0042】
このロストル昇降機構体80は、左右独立して動かすことができるため、ロストル81を左右方向に斜めに配置することができる。こうすることによって、食材や炭の燃焼具合に合わせて、近火から遠火の調整を行うことができる。
【0043】
また、図1や図2に示すように、ロストル81上に焼き網111を置くこともできる。焼き鳥などの串に刺された食材の場合は、串をロストル81間に掛け渡して調理できるが、牛タン等の場合は、焼き網111上に置いて調理する。
【0044】
また、図1、図2に示すように、この炭火調理器1は、脱着可能な調理補助台120を備える。
調理補助台120は、図2に示すように、ケーシング前板11aの、ヒートプロテクター60と通気孔と47の間に、脱着可能に取り付けられる。同補助台120は、ケーシング前板から手前方向に水平に延びる保持面121を有する。同面の周囲は垂直な側壁で囲まれている。後側壁の左右2ヶ所には、フック部123が形成されている。このフック部123がケーシング前板11aに設けられた突部16に引っ掛けられると、保持面121はケーシング前板11aから手前方向に水平に延びるように保持される。
【0045】
この補助120板には、いろいろな調味料や、次に調理する食材などを一時的に置くことができ、段取り良く調理を進めることができる。また、ケーシング10から簡単に取り外せるので、汚れた場合にはすぐに洗うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る炭火焼物器の全体を示す図である。
【図2】図1の炭火焼物器の正面図である。
【図3】図1の炭火焼物器の正面断面図である。
【図4】図1の炭火焼物器の平面断面図である。
【図5】図1の炭火焼物器の側面断面図である。
【図6】炭槽の構造を説明する斜視図である。
【図7】炭槽から発生する熱の伝達状態を説明するための模式的な図である。
【図8】ヒートプロテクターの作用を説明する図である。
【図9】ケーシングの下部を拡大して示す図であり、図9(A)は正面図、図9(B )は側面図である。
【図10】ロストル昇降機構を説明するための図である。
【符号の説明】
【0047】
1 炭火焼物器
10 ケーシング 11 前板、左右側板、奥板、底板
12 突起 13 天板
14 内ケーシング 16 突部
20 炭槽 21 炭受け格子
22 セラミック棒 23 棒受け
24 ブラケット 25 セラミック壁
31 火起こし用バーナー 33 ガス管
35 点火スイッチ 41 通気空間
43 灰受けトレイ 45 レール
47 通気孔 49 ツマミ
51 補強フレーム 60 ヒートプロテクター
61 前板 63 側板
65 切り欠き 71 アジャスタネジ部
73 脚 75 断熱架台
77 フレーム
80 昇降式ロストル組立体 81 ロストル
83 ロストル受け 85 昇降ロッド
87 上ガイドブッシュ 89 下ガイドブッシュ
91 タイロッド 93 係止爪
95 ストッパー 96 ツマミ
97 係合爪 98 ロッド
99 バネ 111 焼き網
120 調理補助台 121 保持面
123 フック部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーシング及び該ケーシング内に配置された炭受け格子を備え、該炭受け格子上で炭火を起こしてその上で食物を焼く炭火焼物器であって、
前記ケーシングの前面上部を覆うヒートプロテクターを備え、
該ヒートプロテクターと前記ケーシングの前面上部との間に上下に口の開いたスキマを設け、該スキマに自然対流による空気流が流れることにより前記ヒートプロテクターと前記ケーシングの前面上部との間を断熱することを特徴とする炭火焼物器。
【請求項2】
前記ケーシング内の前記炭受け格子上の空間(炭槽)の周囲が複数のセラミック製の耐火部材で囲まれており、該耐火部材の隣接部が厚さ方向に交互に重なるオーバーラップ構造を有することを特徴とする請求項1記載の炭火焼物器。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−164301(P2010−164301A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−67350(P2010−67350)
【出願日】平成22年3月24日(2010.3.24)
【分割の表示】特願2004−180520(P2004−180520)の分割
【原出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(592181440)株式会社マルゼン (29)
【Fターム(参考)】