炭素を含む複合材料部品の酸化に対する保護層、およびそのように保護された部品
炭素を含み、開放内部残留気孔を有する複合材料で作られている部品を、含浸組成物(前記含浸組成物は少なくとも1種の金属燐酸塩と二ホウ化チタンとを含む)を塗布する少なくとも1つの段階を実施することで、酸化に対して保護する。1000°以上の温度で、炭素酸化触媒の存在下でも、湿気を帯びた媒質中でも有効な酸化に対する保護層がこのようにして得られる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化に対する保護層をもつ炭素を含む複合材料で作られている部品の提供に関し、特に、少なくとも部分的に炭素によって構成されているマトリックスによって緻密化された炭素繊維補強材を含む熱構造複合材料で作られている部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱構造複合材料は、良好な機械特性、およびその特性を高温で維持できる能力によって特徴付けられる。しかしながら、酸化性の媒質中では、良好な機械特性を高温で維持できるこの能力は酸化に対する有効な保護層の存在に依存する。どのような方法でこのような材料を調製しても、不可避的に残留した内部気孔を示し、それらは開放しており、周囲媒質の酸素を材料の中心に近づける。
【0003】
さらに、ある用途、特に航空の分野で使用されるような炭素/炭素(C/C)複合材料で作られるブレーキディスクでは、酸化触媒(滑走路で使用する氷結防止剤中に存在する)の存在下でも、また水分(湿った滑走路での着陸およびタキシング)の存在下でも、酸化に対する保護層が有効であり続ける必要がある。
【0004】
このために、燐酸アルミニウム、またはより一般的には金属燐酸塩単独に基づく、または燐酸アルミニウムおよび燐酸亜鉛といった組合せに基づく保護層を用いることが良く知られている。保護しようとする部品上への堆積を量と幾何分布の点で制御しなくてはいけない。これは、例えば、ブレーキディスクの摩擦表面といった、保護組成物の存在が摩擦特性を損なうであろうある領域に保護組成物を塗布することを避けるためである。保護組成物の深さ方向の浸透を促進させるために湿潤剤を有効に使用する。この薬剤を前もって塗布する、または保護組成物と直接混ぜ合わせて、組成物を塗料のように塗布する。例えば、以下の文書:US 5 853 821、EP 0 747 334、EP 0 677 499、およびEP 0 606 851を参照できる。
【0005】
しかしながら、このような組成物の有効性は、ある温度閾値以上では制限される。この温度は約1000℃であり、その温度では複合材の活性成分が分解してしまう。
【0006】
高温に耐え得る能力を向上させるために、金属燐酸塩ベースの酸化に対する保護層と、高温で酸素が複合材料に近づくのを阻止する拡散バリアを組合せることが考えられる。拡散バリアとしては例えば、癒着ガラス層、または気密外部層(例えば、化学蒸着(CVD)によって、または懸濁液中でシリコンカーバイドを含む、もしくはシリコンカーバイドの前駆体(熱処理によってシリコンカーバイドに変質するポリカルボシラン(PCS)型の樹脂といった)を含む液体複合物を塗布することによって得られる、シリコンカーバイド(SiC)の外部層)が挙げられる。しかしながら、その保護層は各々それ自身の固有な実施処理を必要とする2層の重複層で構成されるので、酸化に対する完全な保護層を形成する方法はさらにより複雑となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、炭素を含む複合材料からできた部品を酸化に対して保護する方法であって、容易に実行でき、酸化触媒の存在下でも、水分の存在下でも、そして高温、つまり1000℃以上に曝された場合でも有効な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、溶液中に少なくとも1種の金属燐酸塩を含む含浸用組成物を塗布することを含む方法であり、本発明に従って、二ホウ化チタンをさらに含む組成物を塗布する方法によって達成される。
【0009】
既知の方法において、二ホウ化チタンはTiO2、B2O3といった酸化物の非常に進行性のある形成のためのリザーバとしてふるまう。これらの酸化物は、酸化に対する保護層に、周囲媒質からの酸素の拡散に対するバリア特性を与えることができ、それにより高温、すなわち1000℃以上、典型的には1400℃またはそれ以上の温度に耐えることを可能とする。
【0010】
中でも、組成物に存在する元素燐P、および使用する燐酸塩前駆体から生じるかまたは外部由来の炭素を酸化させる触媒に曝すことで生じる金属Meと結合して、TiB2はTi−O−P−Me型の錯体酸化物を形成することができる。従って、このような酸化物を形成することにより外部由来の酸化触媒をガラスの形態、すなわち1000℃以上でトラップすることができる。さらに、この方法で形成したガラスは、少なくとも1400℃まで、酸素拡散のバリア効果に寄与すると共に、水に不溶な、すなわち湿った媒質中で安定な保護層を得ることを可能とする。
【0011】
二ホウ化チタンは、例えば、0.1マイクロメーター(μm)から200μmまでの範囲にある平均粒径を有する粉末の形態で含浸組成物に有利に存在する。
【0012】
含浸組成物は、有利に粉末の形態で、二ホウ化チタン以外の固体耐熱性フィラー、好ましくはホウ化物以外のフィラー、例えばシリカ、アルミナ、粘土、特にカオリン、またはタルクのフィラーを含んでもよい。
【0013】
含浸組成物に含まれる金属燐酸塩を、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムから選んでもよい。
【0014】
典型的に、含浸組成物は:
・20重量%から70重量%の金属燐酸塩;
・5重量%から50重量%の二ホウ化チタン;
・20重量%から50重量%の水;
・0重量%から40重量%の二ホウ化チタン以外の固体フィラー
を含んでもよい。
【0015】
含浸組成物は、例えばブラシまたはスプレーを使用して、塗料のように有利に塗布される。
【0016】
湿潤剤の水溶液に含浸させて複合材料を処理し、その後水溶液を乾燥させて、湿潤剤の存在により増加する水和性を複合材料に与えてもよい。
【0017】
この方法の実施の他の特徴によると、溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩とともに二ホウ化チタン(および場合により他の固体フィラー)を含む組成物を塗布する前に、固体フィラーをまったく含まない、少なくとも1種の金属燐酸塩の溶液を塗布する工程を含んでもいてよい。そのより低い粘度のおかげで、固体フィラーをまったく含まず、特に二ホウ化チタンをまったく含まない溶液は、複合材料の残留した開放内部気孔の中へより深く浸透することができる。結果として、酸化に対する保護層は、複合材料の気孔に深く固定されている1種またはそれ以上の金属燐酸塩を含み、かつ金属燐酸塩、二ホウ化チタン、および場合によれば他の固体フィラーの結合を複合材料の表面近傍に含む。
【0018】
本発明の他の目的は、炭素を含み、酸化に対して保護された複合材料部品を提供することである。
【0019】
この目的は、少なくとも1種の金属燐酸塩と二ホウ化チタンを含む、酸化に対する保護層を備えた部品によって達成される。
【0020】
酸化に対する保護層は、二ホウ化チタン以外の耐熱性固体フィラーをさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の特徴によると、酸化に対する保護層は、部品の表面近傍に位置する部分では、部品の表面より深い部分よりも、高い二ホウ化チタン含有量を示す。従って、酸化に対する保護層は部品の表面から最も離れた部分にはまったく二ホウ化チタンを含まなくてもよい。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として示され、添付の図面を参照する、以下の説明を読むことで明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
炭素含有複合材料で作られた部品、すなわちマトリックスによって緻密化された繊維補強材で作られている部品に本発明を適用する。ここで、この補強繊維および/またはこのマトリックスは少なくとも部分的に炭素で構成されている。典型的に、部品はC/C複合材料部品、または炭素繊維補強材とマトリックス(セラミックスマトリックスか、炭素とセラミックスとが結合しているマトリックスかである)とを有する複合材料で作られている部品である。このような部品の例は、ブレーキディスク、特に航空機ブレーキ用のディスクを含む。
【0024】
このタイプの複合材料部品の調製は、繊維補強構造体を作り、それをマトリックスを用いて緻密化することを含む。緻密化は液相方法によって、すなわち補強繊維にマトリックスの前駆体を含む液体組成物(例えば樹脂を含む組成物)を含浸させ、その後前駆体を熱処理によって変換させることによって行ってもよい。また、緻密化を気相方法、すなわち化学蒸気浸透法(CVI)によって行ってもよい。
【0025】
どの調製方法を使用しても、得られた複合材料は残留した内部開気孔、すなわち材料の厚さの中で互いに連通している一連の気孔を示す。
【0026】
液体組成物を含浸させて酸化に対する保護層を適切に設けることは、それゆえ、複合材料の接近できる気孔中に、組成物が塗布される部品の表面の下の所定の深さまでコーティングを形成することにある。
【0027】
図1の実施において、この方法の第1段階は、材料の通気孔に浸透する水溶液を用いて部品の深さ方向の処理を行うことにある(工程10)。この溶液は湿潤剤または界面活性剤を含む。乾燥(工程20)後、材料の気孔の表面に存在する湿潤剤は上昇した水和性をそこに与える。
【0028】
このような部品の深さ方向処理の前段階は、上で挙げた文書US 5 853 821に記載されている。
【0029】
水溶性で非イオン性の湿潤剤(例えば、オキシエチレン脂肪酸、オキシエチレン脂肪アルコール、オキシエチレンアルキルフェノール、またはより高級のポリオールエステル)を使用することは有利である。水溶液が流動性を保持することを確実にするために、湿潤剤を水に、好ましくは水の0.05重量%から5重量%までの濃度で添加し、材料の中心へ容易に浸透することを可能にする。
【0030】
また、部品の前処理は、複合材料の洗浄を目的として行ってもよい。これを目的として、部品を、例えば、水溶液の状態の湿潤剤を収容する超音波容器に浸すことができる。
【0031】
前処理後、固体フィラーをまったく添加していない、特に二ホウ化チタンを添加していない、少なくとも1種の金属燐酸塩の水溶液を使用して第1含浸工程30を複合材料部品に施すことができる。好ましくは燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムから選ばれる1種またはそれ以上の燐酸塩を使用する。溶液中の燐酸塩の含有量は好ましくは、20重量%から70重量%までの範囲にある。
【0032】
次の工程40(金属燐酸塩水溶液の乾燥前か後かに行ってもよい)は、再度部品を含浸することにあるが、ここでは水溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩とともに、粉末状の二ホウ化チタンTiB2とを含む組成物を使用する。使用する少なくとも1種の金属燐酸塩は、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムからなる群より選択する。
【0033】
TiB2に加えて、別の固体耐熱性フィラーを含浸組成物に添加してもよい。これらのフィラーは特に複合材料の気孔を埋めることに特に寄与する。追加の耐熱性フィラーはホウ化物を含まないことが好ましい。シリカ、アルミナ、カオリン、粘土およびタルクから選択してもよい。
【0034】
典型的に、含浸組成物は、20重量%から70重量%の金属燐酸塩、5重量%から50重量%のTiB2、20重量%から50重量%の水、および0重量%から40重量%の追加の固体フィラーを含む。
【0035】
深さ方向で複合材料に含浸できる能力を維持するために、TiB2粉の平均粒径は0.1μmから200μmの範囲にある。追加の固体フィラーを形成する粉末の粒径にも同じことが当てはまる。
【0036】
工程30での水溶液、さらにまた工程40での含浸組成物は、複合材料部品の表面に大気圧下で、例えば、ブラシによってペイントするか噴霧するかによって、塗布することができる。含浸組成物を圧力差の影響で強制的に深く浸透させるために、高圧または真空に頼る必要はない。さらに、含浸組成物を部品の所定の場所だけに選択的に塗布することが容易にできる。ブレーキディスクに対して、これにより酸化に対する保護層が摩擦面に塗布されることを防ぐことができる。そうしないとその保護層が摩擦挙動を損なう恐れがある。
【0037】
工程30を、数回連続的に繰り返してもよく、工程40も同様に繰り返すことができる。
【0038】
工程40の後、例えば、オーブン内で空気中、約350℃までの温度で乾燥工程を行う(工程50)。
【0039】
乾燥後、オーブン内で不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で部品に熱処理を施す(工程60)。それにより、炭素の触媒酸化に対する保護層を与える活性化合物を形成することが可能となる。熱処理は約700℃から900℃まで温度を上昇させて行う。
【0040】
前段階(工程10、20)および工程30は任意であることに気付かれたい。しかし、前段階によって材料が中心まで含浸されるのを確実にすることができる。工程30は酸化からの燐酸塩をベースとする酸化に対する保護層が材料の深さ方向に存在することを確実にする働きをする。一方で、工程40で使用する含浸組成物は、この含浸組成物の粘度が高いために、材料の中心まで浸透するのは困難である。酸化に対して保護された部品がこのようにして得られ、この部品は、部品の表面近くに位置する部分では部品の表面からさらに離れた部分よりも高い二ホウ化チタン含有量を示す保護層によって、酸化に対して保護されている。適切に設けられた酸化に対する保護層は、部品の表面から最も離れた場所では、完全に二ホウ化チタンまたは追加の固体フィラーがなくてもよい。
【0041】
変形(図2)では、前処理段階(工程10および20)後に、水溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩とともに、ニホウ化チタンを含む組成物を使用して、含浸(工程30’)を行う。
【0042】
しかしながら、含浸組成物中のTiB2含有量は、深さ方向の浸透を可能とするために、低いことが好ましい。典型的に含浸組成物は、20重量%から70重量%の金属燐酸塩、および5重量%から30重量%のTiB2を含み、残部は水である。同様の理由で、TiB2粉末はかなり小さく、例えば100μm以下の平均粒径を有するものが選ばれる。
【0043】
この方法は、図1の方法の工程と同様に、含浸、乾燥および熱処理の工程40、50および60と続く。
【0044】
以下に示す例は、水分が存在し、炭素を酸化させる触媒が存在する中で高温(1000℃またはそれ以上)に曝す場合に、特に文書US 5 853 821で説明されている技術の状態と比較して、TiB2の存在が、本発明に従って保護された部品の酸化媒質中における挙動に明らかな改善をもたらすことを示す。
【0045】
出願人は、使用時に酸化によってB2O3およびTiO2を形成することに加えて、TiB2の存在により、燐酸塩または存在する可能性のある酸化触媒から生じる元素Pおよび金属Meと結合し、錯体Ti-P-O-Me酸化物を形成することが可能となり、この錯体は、湿った雰囲気であっても、まず酸化触媒をトラップし、次に単純な酸化物B2O3およびTiO2によって与えられる酸素拡散バリア効果に寄与することで、約1000℃以上で、金属燐酸塩の保護作用を継承することができると考える。
【0046】
これらの特性はTiB2以外のホウ化物を用いては現れないことに気付かれたい。つまり、TiB2以外のホウ化物を追加の耐熱性固体フィラーとして使用または添加することはどちらかというと望ましくない。
【0047】
(例1)
C/C複合材料のサンプルを以下のように作製した。
【0048】
炭素前駆体繊維(前もって酸化してあるポリアクリロニトリル)の一方向性の繊維シートを様々な方向で重ね合わせ、ニードリングにより互いを結合させて重層を形成した。できあがった繊維プレフォームに熱処理を施し、熱分解によって前駆体を炭素に変換させた。その後、化学蒸気浸透法によって熱分解性炭素マトリックスで緻密化させた。このような方法は良く知られている。例えば文書US 4 790 052を参照することができる。この方法で得られたC/C材料のブロックから、20mm×25mm×8mmの寸法を持つ矩形のブロックの形態のサンプルを切り出した。
【0049】
いくつかのサンプルに以下の工程を含む方法で酸化に対する保護層を与えた:
a)ドイツの供給業者Huelsから「Marlophen NP 9」の名で入手可能なポリエトキシルイソノニルフェノール系の湿潤剤の水溶液を収容している超音波容器にそれらを浸すことでサンプルの前処理を行った(湿潤剤は溶液に5重量%の濃度で存在する)。含浸後、サンプルをオーブンで乾燥させ、湿潤剤に沿って並ぶ複合材料の気孔が残った;
b)ペイントブラシを用いてサンプルの表面に、50重量%の燐酸二水素アルミニウムAl(H2PO4)3を含み、残部は水である水溶液を塗布した。このような溶液はフランスで特に供給業者Europhosにより「Phosphate aluminique」の名で販売されている(Al(H2PO4)3の水溶液は他の供給業者、特にドイツの供給業者Chemical Fabrik Budenheim KGから入手可能である);
c)数分後、(Al(H2PO4)3溶液が乾燥する前に、ペイントブラシを用いてサンプルの表面に、35重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を持つ44重量%のTiB2粉末とを含み、残部は水である水溶液を塗布した;
d)空気中、オーブン内で、90℃で5時間(h)、150℃で3h、220℃で1h、350℃で1h保持しながら温度を350℃までゆっくりと上昇させて(約1℃/分)、乾燥を行った;
e)オーブン内、窒素雰囲気下で以下のサイクルを実施する熱処理を行った:
・温度を300℃まで約5℃/分の速度で上昇させ;
・温度を300℃から700℃まで約2℃/分の速度で上昇させ;かつ
・700℃で5時間保持した。
【0050】
本発明による方法によるこの方法で保護したサンプルに以下のそれぞれの酸化試験を施した。各々の試験を3つのサンプルに対して行った。
【0051】
I)650℃で5時間空気に曝すことを含む酸化サイクルと、室温に戻して、5重量%の酢酸カリウムを含み、残部は水である水溶液に浸して「汚染」させることと、途中室温に戻しながら、650℃で空気に5時間連続的に曝すことによる4つの酸化サイクルとを行った(ここで、酢酸カリウムは炭素を酸化させる触媒であり、滑走路で使用する凍結防止組成物の一般的な成分である);
II)酸化サイクルが空気に850℃で30分間曝すことを含むこと以外は試験I)と同様の試験を行った;
III)空気に650℃で5時間曝すことによる酸化サイクルと、空気に1000℃で1時間曝すことと、酢酸カリウムの水溶液(5重量%)に浸して汚染させることと、空気に650℃で5時間曝すことによる2つの連続的な酸化サイクルとを行った;
IV)空気に650℃で5時間曝すことによる酸化サイクルと、空気に1200℃で20分間曝すことと、酢酸カリウムの水溶液(5重量%)に浸して汚染させることと、空気に650℃で5時間曝すことによる2回の連続的な酸化サイクルとを行った;
V)酢酸カリウムによる汚染を行わないこと以外、試験IV)と同様の試験を行った;
VI)酢酸カリウムによる汚染を行わず、第1酸化サイクル後に空気に1400℃で10分間曝す(1200℃で20分間の代わりに)こと以外は試験IV)と同様の試験を行った;
VII)酢酸カリウムによる汚染の工程を行う代わりに、水道水に室温で24時間浸す工程を行うこと以外は試験IV)と同様の試験を行った;
VIII)酢酸カリウムによる汚染の工程を行う代わりに、沸騰水に1時間浸す工程を行うこと以外は試験IV)と同様の試験を行った。
【0052】
比較として、各々の試験を、文書US 5 853 821に記載されている従来技術の方法(すなわち上で説明したa)、b)(一度だけ繰り返す)、d)およびe)の工程を含む方法、つまりTiB2を含む組成物で含浸することを省いた方法)で保護した以外は同じであるC/C複合材料の3つのサンプルについても行った。
【0053】
以下の表Iおよび図3から図10の曲線は、初期質量に対する比率として測定した、本発明による方法で保護したサンプルと従来技術の方法で保護した参照サンプルとについて各々の試験後の質量損失を示す。
【表1】
【0054】
試験の結果は、対象の従来技術と比較すると、本発明による方法を使用して実施した酸化に対する保護は以下の特徴を表すことを示す。
【0055】
・炭素酸化触媒が存在し、650℃から850℃の範囲にある温度に曝した場合には、有効性は同様であった;
・酸化触媒が存在する場合、1000℃に曝した後(20%に対して、平均約11%の質量損失)と、1200℃に曝した後(43%に対して、平均約14%の質量損失)とで、有効性は非常に著しく増加した;
・酸化触媒が存在しない場合、1200℃に曝した後(12%に対して、平均約3%の質量損失)と、1400℃に曝した後(24%に対して、平均約3%の質量損失であり、結果はより分散した)とで、有効性はかなり向上した;
・湿った雰囲気での有効性はかなりより良好となった(水に室温で24時間浸した後では、32%に対して、平均約7%の質量損失であった。沸騰水に1時間浸した後では、24%に対して、平均約8%であり、結果は広く分散した。)。
【0056】
(例2)
工程c)において、32重量%のAl(H2PO4)3と、56重量%のZrB2とを含み、残部は水である含浸組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0057】
例2の方法を使用して保護したいくつかのサンプルに、上述のV)と同じ酸化試験を施した。
【0058】
以下の表IIは、酸化試験を実施した後の様々なサンプルについて測定した相対的な質量損失(初期質量に対する割合として)を示す。比較として、表IIは例1に従って保護したサンプルと参照の保護サンプルとについて同じ酸化試験で観察された質量損失を示す。
【表2】
【0059】
結果は、TiB2の代わりとしてZrB2を含浸組成物で使用すると、酸化に対する保護層の有効性が著しく損なわれ、その保護層は従来技術に従って保護したサンプルで観察されたものと同程度であることを示す。
【0060】
(例3)
例1と同じ種類のC/C複合材料で作られているサンプルを使用し、例1で説明した方法を以下のように変更して酸化に対する保護を行った:
・工程b)において、44重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmの平均粒径を有する粉末の形態の14%重量のTiB2とを含み、残部は水である含浸組成物を使用した;および
・工程c)において、34重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を有する粉末の形態の39重量%のTiB2を含む含浸組成物を使用した。
【0061】
(例4)
工程b)の間に、39重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を有する粉末の形態の28重量%のTiB2とを含み、残部は水である含浸組成物を使用し、工程c)では、35重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を有する粉末の形態の44重量%のTiB2とを含む含浸組成物を使用したこと以外、例3と同じ手順で行った。
【0062】
例3および例4の方法を用いて保護した2つのサンプルE3およびE4に、上述のIV)と同じ酸化試験をそれぞれ施した。
【0063】
以下の表IIIおよび図11は、酸化試験を行った後に測定した相対的質量損失(初期質量に対する比率)を示す。例1に従って保護したサンプルE1、E’1、およびE’’1、ならびに参照の保護サンプルER、E’R、およびE’’Rによって得られた結果も再度示す。
【表3】
【0064】
TiB2を燐酸塩を含む第1含浸組成物に混和させることにより、有効な保護層を得ることができる。しかし、中心まで含浸することをより困難にさせる。
【0065】
上述の例は酸化物を形成するためのソースとしてTiB2を使用することで明白な利点が与えられることを示す。この酸化物は、周囲媒質からの酸化に対する保護バリア機能を果たすことが可能であり、かつ燐および金属(使用する燐酸塩から、または炭素酸化触媒から生じるかのいずれであっても関係なく)と共に作用して、湿気に耐え、かつ外からくる酸化触媒をトラップするガラスを形成することが可能である。
【0066】
(例5)
工程c)において、23重量%のAl(H2PO4)3と、37%重量のTiB2粉末と、9重量%のカオリン粉末と、30重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0067】
(例6)
工程c)において、24重量%のAl(H2PO4)3と、39重量%のTiB2粉末と、5重量%のカオリン粉末と、5重量%のアルミニウム粉末と、27重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0068】
(例7)
工程c)において、25重量%のAl(H2PO4)3と、40重量%のTiB2粉末と、10重量%の水酸化アルミニウムAl(OH)6と、25重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0069】
(例8)
工程c)において、25重量%のAl(H2PO4)3と、40重量%のTiB2粉末と、10重量%の燐酸亜鉛Zn3(PO4)2と、25重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0070】
(例9)
工程c)において、25重量%のAl(H2PO4)3と、40重量%のTiB2粉末と、10重量%のメタ燐酸アルミニウムAl(PO3)3と、25重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0071】
例5に従って保護したサンプルE5およびE’5、例6に従って保護したサンプルE6、E’6およびE’’ 6、例7に従って保護したサンプルE7およびE’7、例8に従って保護したサンプルE8およびE’8、ならびに例9に従って保護したサンプルE9およびE’9に上述の試験V)と同じ酸化試験を施した。
【0072】
図12は、これらの様々なサンプルについて、および例1に従って保護したサンプルE1、E’1およびE’’1および参照の保護サンプルERおよびE’Rについて測定(初期質量に対する比率として)した相対的質量損失を示す。
【0073】
例5から例9に従って保護したサンプルは、例1に従って保護したサンプルよりはある程度劣るものの、参照のサンプルと比較して向上した酸化耐性能力を示すということがわかる。これは、コストを抑えることが可能な不活性固体フィラー(カオリン、アルミナ)、さらには反応性フィラー(水酸化アルミニウム)、Al(H2PO4)3以外の抗触媒特性を有する燐酸塩(例えば、燐酸亜鉛)、またはAl(H2PO4)3以外のアルミニウム燐酸塩も使用することが本発明の範囲内で可能であることを示す。
【0074】
TiB2、Al(H2PO4)3およびH2O以外の1種またはそれ以上のこれらの成分の第2の保護層を塗布する(工程c)ために使用する組成物中での含有量は、好ましくは0重量%から40重量%の範囲から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の方法の実施を示すフローチャート。
【図2】図1の方法の変形を示す図。
【図3】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図4】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図5】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図6】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図7】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図8】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図9】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図10】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図11】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図12】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化に対する保護層をもつ炭素を含む複合材料で作られている部品の提供に関し、特に、少なくとも部分的に炭素によって構成されているマトリックスによって緻密化された炭素繊維補強材を含む熱構造複合材料で作られている部品に関する。
【背景技術】
【0002】
熱構造複合材料は、良好な機械特性、およびその特性を高温で維持できる能力によって特徴付けられる。しかしながら、酸化性の媒質中では、良好な機械特性を高温で維持できるこの能力は酸化に対する有効な保護層の存在に依存する。どのような方法でこのような材料を調製しても、不可避的に残留した内部気孔を示し、それらは開放しており、周囲媒質の酸素を材料の中心に近づける。
【0003】
さらに、ある用途、特に航空の分野で使用されるような炭素/炭素(C/C)複合材料で作られるブレーキディスクでは、酸化触媒(滑走路で使用する氷結防止剤中に存在する)の存在下でも、また水分(湿った滑走路での着陸およびタキシング)の存在下でも、酸化に対する保護層が有効であり続ける必要がある。
【0004】
このために、燐酸アルミニウム、またはより一般的には金属燐酸塩単独に基づく、または燐酸アルミニウムおよび燐酸亜鉛といった組合せに基づく保護層を用いることが良く知られている。保護しようとする部品上への堆積を量と幾何分布の点で制御しなくてはいけない。これは、例えば、ブレーキディスクの摩擦表面といった、保護組成物の存在が摩擦特性を損なうであろうある領域に保護組成物を塗布することを避けるためである。保護組成物の深さ方向の浸透を促進させるために湿潤剤を有効に使用する。この薬剤を前もって塗布する、または保護組成物と直接混ぜ合わせて、組成物を塗料のように塗布する。例えば、以下の文書:US 5 853 821、EP 0 747 334、EP 0 677 499、およびEP 0 606 851を参照できる。
【0005】
しかしながら、このような組成物の有効性は、ある温度閾値以上では制限される。この温度は約1000℃であり、その温度では複合材の活性成分が分解してしまう。
【0006】
高温に耐え得る能力を向上させるために、金属燐酸塩ベースの酸化に対する保護層と、高温で酸素が複合材料に近づくのを阻止する拡散バリアを組合せることが考えられる。拡散バリアとしては例えば、癒着ガラス層、または気密外部層(例えば、化学蒸着(CVD)によって、または懸濁液中でシリコンカーバイドを含む、もしくはシリコンカーバイドの前駆体(熱処理によってシリコンカーバイドに変質するポリカルボシラン(PCS)型の樹脂といった)を含む液体複合物を塗布することによって得られる、シリコンカーバイド(SiC)の外部層)が挙げられる。しかしながら、その保護層は各々それ自身の固有な実施処理を必要とする2層の重複層で構成されるので、酸化に対する完全な保護層を形成する方法はさらにより複雑となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、炭素を含む複合材料からできた部品を酸化に対して保護する方法であって、容易に実行でき、酸化触媒の存在下でも、水分の存在下でも、そして高温、つまり1000℃以上に曝された場合でも有効な方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的は、溶液中に少なくとも1種の金属燐酸塩を含む含浸用組成物を塗布することを含む方法であり、本発明に従って、二ホウ化チタンをさらに含む組成物を塗布する方法によって達成される。
【0009】
既知の方法において、二ホウ化チタンはTiO2、B2O3といった酸化物の非常に進行性のある形成のためのリザーバとしてふるまう。これらの酸化物は、酸化に対する保護層に、周囲媒質からの酸素の拡散に対するバリア特性を与えることができ、それにより高温、すなわち1000℃以上、典型的には1400℃またはそれ以上の温度に耐えることを可能とする。
【0010】
中でも、組成物に存在する元素燐P、および使用する燐酸塩前駆体から生じるかまたは外部由来の炭素を酸化させる触媒に曝すことで生じる金属Meと結合して、TiB2はTi−O−P−Me型の錯体酸化物を形成することができる。従って、このような酸化物を形成することにより外部由来の酸化触媒をガラスの形態、すなわち1000℃以上でトラップすることができる。さらに、この方法で形成したガラスは、少なくとも1400℃まで、酸素拡散のバリア効果に寄与すると共に、水に不溶な、すなわち湿った媒質中で安定な保護層を得ることを可能とする。
【0011】
二ホウ化チタンは、例えば、0.1マイクロメーター(μm)から200μmまでの範囲にある平均粒径を有する粉末の形態で含浸組成物に有利に存在する。
【0012】
含浸組成物は、有利に粉末の形態で、二ホウ化チタン以外の固体耐熱性フィラー、好ましくはホウ化物以外のフィラー、例えばシリカ、アルミナ、粘土、特にカオリン、またはタルクのフィラーを含んでもよい。
【0013】
含浸組成物に含まれる金属燐酸塩を、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムから選んでもよい。
【0014】
典型的に、含浸組成物は:
・20重量%から70重量%の金属燐酸塩;
・5重量%から50重量%の二ホウ化チタン;
・20重量%から50重量%の水;
・0重量%から40重量%の二ホウ化チタン以外の固体フィラー
を含んでもよい。
【0015】
含浸組成物は、例えばブラシまたはスプレーを使用して、塗料のように有利に塗布される。
【0016】
湿潤剤の水溶液に含浸させて複合材料を処理し、その後水溶液を乾燥させて、湿潤剤の存在により増加する水和性を複合材料に与えてもよい。
【0017】
この方法の実施の他の特徴によると、溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩とともに二ホウ化チタン(および場合により他の固体フィラー)を含む組成物を塗布する前に、固体フィラーをまったく含まない、少なくとも1種の金属燐酸塩の溶液を塗布する工程を含んでもいてよい。そのより低い粘度のおかげで、固体フィラーをまったく含まず、特に二ホウ化チタンをまったく含まない溶液は、複合材料の残留した開放内部気孔の中へより深く浸透することができる。結果として、酸化に対する保護層は、複合材料の気孔に深く固定されている1種またはそれ以上の金属燐酸塩を含み、かつ金属燐酸塩、二ホウ化チタン、および場合によれば他の固体フィラーの結合を複合材料の表面近傍に含む。
【0018】
本発明の他の目的は、炭素を含み、酸化に対して保護された複合材料部品を提供することである。
【0019】
この目的は、少なくとも1種の金属燐酸塩と二ホウ化チタンを含む、酸化に対する保護層を備えた部品によって達成される。
【0020】
酸化に対する保護層は、二ホウ化チタン以外の耐熱性固体フィラーをさらに含んでもよい。
【0021】
本発明の特徴によると、酸化に対する保護層は、部品の表面近傍に位置する部分では、部品の表面より深い部分よりも、高い二ホウ化チタン含有量を示す。従って、酸化に対する保護層は部品の表面から最も離れた部分にはまったく二ホウ化チタンを含まなくてもよい。
【0022】
本発明の他の特徴および利点は、非限定的な例として示され、添付の図面を参照する、以下の説明を読むことで明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
炭素含有複合材料で作られた部品、すなわちマトリックスによって緻密化された繊維補強材で作られている部品に本発明を適用する。ここで、この補強繊維および/またはこのマトリックスは少なくとも部分的に炭素で構成されている。典型的に、部品はC/C複合材料部品、または炭素繊維補強材とマトリックス(セラミックスマトリックスか、炭素とセラミックスとが結合しているマトリックスかである)とを有する複合材料で作られている部品である。このような部品の例は、ブレーキディスク、特に航空機ブレーキ用のディスクを含む。
【0024】
このタイプの複合材料部品の調製は、繊維補強構造体を作り、それをマトリックスを用いて緻密化することを含む。緻密化は液相方法によって、すなわち補強繊維にマトリックスの前駆体を含む液体組成物(例えば樹脂を含む組成物)を含浸させ、その後前駆体を熱処理によって変換させることによって行ってもよい。また、緻密化を気相方法、すなわち化学蒸気浸透法(CVI)によって行ってもよい。
【0025】
どの調製方法を使用しても、得られた複合材料は残留した内部開気孔、すなわち材料の厚さの中で互いに連通している一連の気孔を示す。
【0026】
液体組成物を含浸させて酸化に対する保護層を適切に設けることは、それゆえ、複合材料の接近できる気孔中に、組成物が塗布される部品の表面の下の所定の深さまでコーティングを形成することにある。
【0027】
図1の実施において、この方法の第1段階は、材料の通気孔に浸透する水溶液を用いて部品の深さ方向の処理を行うことにある(工程10)。この溶液は湿潤剤または界面活性剤を含む。乾燥(工程20)後、材料の気孔の表面に存在する湿潤剤は上昇した水和性をそこに与える。
【0028】
このような部品の深さ方向処理の前段階は、上で挙げた文書US 5 853 821に記載されている。
【0029】
水溶性で非イオン性の湿潤剤(例えば、オキシエチレン脂肪酸、オキシエチレン脂肪アルコール、オキシエチレンアルキルフェノール、またはより高級のポリオールエステル)を使用することは有利である。水溶液が流動性を保持することを確実にするために、湿潤剤を水に、好ましくは水の0.05重量%から5重量%までの濃度で添加し、材料の中心へ容易に浸透することを可能にする。
【0030】
また、部品の前処理は、複合材料の洗浄を目的として行ってもよい。これを目的として、部品を、例えば、水溶液の状態の湿潤剤を収容する超音波容器に浸すことができる。
【0031】
前処理後、固体フィラーをまったく添加していない、特に二ホウ化チタンを添加していない、少なくとも1種の金属燐酸塩の水溶液を使用して第1含浸工程30を複合材料部品に施すことができる。好ましくは燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムから選ばれる1種またはそれ以上の燐酸塩を使用する。溶液中の燐酸塩の含有量は好ましくは、20重量%から70重量%までの範囲にある。
【0032】
次の工程40(金属燐酸塩水溶液の乾燥前か後かに行ってもよい)は、再度部品を含浸することにあるが、ここでは水溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩とともに、粉末状の二ホウ化チタンTiB2とを含む組成物を使用する。使用する少なくとも1種の金属燐酸塩は、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムからなる群より選択する。
【0033】
TiB2に加えて、別の固体耐熱性フィラーを含浸組成物に添加してもよい。これらのフィラーは特に複合材料の気孔を埋めることに特に寄与する。追加の耐熱性フィラーはホウ化物を含まないことが好ましい。シリカ、アルミナ、カオリン、粘土およびタルクから選択してもよい。
【0034】
典型的に、含浸組成物は、20重量%から70重量%の金属燐酸塩、5重量%から50重量%のTiB2、20重量%から50重量%の水、および0重量%から40重量%の追加の固体フィラーを含む。
【0035】
深さ方向で複合材料に含浸できる能力を維持するために、TiB2粉の平均粒径は0.1μmから200μmの範囲にある。追加の固体フィラーを形成する粉末の粒径にも同じことが当てはまる。
【0036】
工程30での水溶液、さらにまた工程40での含浸組成物は、複合材料部品の表面に大気圧下で、例えば、ブラシによってペイントするか噴霧するかによって、塗布することができる。含浸組成物を圧力差の影響で強制的に深く浸透させるために、高圧または真空に頼る必要はない。さらに、含浸組成物を部品の所定の場所だけに選択的に塗布することが容易にできる。ブレーキディスクに対して、これにより酸化に対する保護層が摩擦面に塗布されることを防ぐことができる。そうしないとその保護層が摩擦挙動を損なう恐れがある。
【0037】
工程30を、数回連続的に繰り返してもよく、工程40も同様に繰り返すことができる。
【0038】
工程40の後、例えば、オーブン内で空気中、約350℃までの温度で乾燥工程を行う(工程50)。
【0039】
乾燥後、オーブン内で不活性雰囲気下、例えば窒素雰囲気下で部品に熱処理を施す(工程60)。それにより、炭素の触媒酸化に対する保護層を与える活性化合物を形成することが可能となる。熱処理は約700℃から900℃まで温度を上昇させて行う。
【0040】
前段階(工程10、20)および工程30は任意であることに気付かれたい。しかし、前段階によって材料が中心まで含浸されるのを確実にすることができる。工程30は酸化からの燐酸塩をベースとする酸化に対する保護層が材料の深さ方向に存在することを確実にする働きをする。一方で、工程40で使用する含浸組成物は、この含浸組成物の粘度が高いために、材料の中心まで浸透するのは困難である。酸化に対して保護された部品がこのようにして得られ、この部品は、部品の表面近くに位置する部分では部品の表面からさらに離れた部分よりも高い二ホウ化チタン含有量を示す保護層によって、酸化に対して保護されている。適切に設けられた酸化に対する保護層は、部品の表面から最も離れた場所では、完全に二ホウ化チタンまたは追加の固体フィラーがなくてもよい。
【0041】
変形(図2)では、前処理段階(工程10および20)後に、水溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩とともに、ニホウ化チタンを含む組成物を使用して、含浸(工程30’)を行う。
【0042】
しかしながら、含浸組成物中のTiB2含有量は、深さ方向の浸透を可能とするために、低いことが好ましい。典型的に含浸組成物は、20重量%から70重量%の金属燐酸塩、および5重量%から30重量%のTiB2を含み、残部は水である。同様の理由で、TiB2粉末はかなり小さく、例えば100μm以下の平均粒径を有するものが選ばれる。
【0043】
この方法は、図1の方法の工程と同様に、含浸、乾燥および熱処理の工程40、50および60と続く。
【0044】
以下に示す例は、水分が存在し、炭素を酸化させる触媒が存在する中で高温(1000℃またはそれ以上)に曝す場合に、特に文書US 5 853 821で説明されている技術の状態と比較して、TiB2の存在が、本発明に従って保護された部品の酸化媒質中における挙動に明らかな改善をもたらすことを示す。
【0045】
出願人は、使用時に酸化によってB2O3およびTiO2を形成することに加えて、TiB2の存在により、燐酸塩または存在する可能性のある酸化触媒から生じる元素Pおよび金属Meと結合し、錯体Ti-P-O-Me酸化物を形成することが可能となり、この錯体は、湿った雰囲気であっても、まず酸化触媒をトラップし、次に単純な酸化物B2O3およびTiO2によって与えられる酸素拡散バリア効果に寄与することで、約1000℃以上で、金属燐酸塩の保護作用を継承することができると考える。
【0046】
これらの特性はTiB2以外のホウ化物を用いては現れないことに気付かれたい。つまり、TiB2以外のホウ化物を追加の耐熱性固体フィラーとして使用または添加することはどちらかというと望ましくない。
【0047】
(例1)
C/C複合材料のサンプルを以下のように作製した。
【0048】
炭素前駆体繊維(前もって酸化してあるポリアクリロニトリル)の一方向性の繊維シートを様々な方向で重ね合わせ、ニードリングにより互いを結合させて重層を形成した。できあがった繊維プレフォームに熱処理を施し、熱分解によって前駆体を炭素に変換させた。その後、化学蒸気浸透法によって熱分解性炭素マトリックスで緻密化させた。このような方法は良く知られている。例えば文書US 4 790 052を参照することができる。この方法で得られたC/C材料のブロックから、20mm×25mm×8mmの寸法を持つ矩形のブロックの形態のサンプルを切り出した。
【0049】
いくつかのサンプルに以下の工程を含む方法で酸化に対する保護層を与えた:
a)ドイツの供給業者Huelsから「Marlophen NP 9」の名で入手可能なポリエトキシルイソノニルフェノール系の湿潤剤の水溶液を収容している超音波容器にそれらを浸すことでサンプルの前処理を行った(湿潤剤は溶液に5重量%の濃度で存在する)。含浸後、サンプルをオーブンで乾燥させ、湿潤剤に沿って並ぶ複合材料の気孔が残った;
b)ペイントブラシを用いてサンプルの表面に、50重量%の燐酸二水素アルミニウムAl(H2PO4)3を含み、残部は水である水溶液を塗布した。このような溶液はフランスで特に供給業者Europhosにより「Phosphate aluminique」の名で販売されている(Al(H2PO4)3の水溶液は他の供給業者、特にドイツの供給業者Chemical Fabrik Budenheim KGから入手可能である);
c)数分後、(Al(H2PO4)3溶液が乾燥する前に、ペイントブラシを用いてサンプルの表面に、35重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を持つ44重量%のTiB2粉末とを含み、残部は水である水溶液を塗布した;
d)空気中、オーブン内で、90℃で5時間(h)、150℃で3h、220℃で1h、350℃で1h保持しながら温度を350℃までゆっくりと上昇させて(約1℃/分)、乾燥を行った;
e)オーブン内、窒素雰囲気下で以下のサイクルを実施する熱処理を行った:
・温度を300℃まで約5℃/分の速度で上昇させ;
・温度を300℃から700℃まで約2℃/分の速度で上昇させ;かつ
・700℃で5時間保持した。
【0050】
本発明による方法によるこの方法で保護したサンプルに以下のそれぞれの酸化試験を施した。各々の試験を3つのサンプルに対して行った。
【0051】
I)650℃で5時間空気に曝すことを含む酸化サイクルと、室温に戻して、5重量%の酢酸カリウムを含み、残部は水である水溶液に浸して「汚染」させることと、途中室温に戻しながら、650℃で空気に5時間連続的に曝すことによる4つの酸化サイクルとを行った(ここで、酢酸カリウムは炭素を酸化させる触媒であり、滑走路で使用する凍結防止組成物の一般的な成分である);
II)酸化サイクルが空気に850℃で30分間曝すことを含むこと以外は試験I)と同様の試験を行った;
III)空気に650℃で5時間曝すことによる酸化サイクルと、空気に1000℃で1時間曝すことと、酢酸カリウムの水溶液(5重量%)に浸して汚染させることと、空気に650℃で5時間曝すことによる2つの連続的な酸化サイクルとを行った;
IV)空気に650℃で5時間曝すことによる酸化サイクルと、空気に1200℃で20分間曝すことと、酢酸カリウムの水溶液(5重量%)に浸して汚染させることと、空気に650℃で5時間曝すことによる2回の連続的な酸化サイクルとを行った;
V)酢酸カリウムによる汚染を行わないこと以外、試験IV)と同様の試験を行った;
VI)酢酸カリウムによる汚染を行わず、第1酸化サイクル後に空気に1400℃で10分間曝す(1200℃で20分間の代わりに)こと以外は試験IV)と同様の試験を行った;
VII)酢酸カリウムによる汚染の工程を行う代わりに、水道水に室温で24時間浸す工程を行うこと以外は試験IV)と同様の試験を行った;
VIII)酢酸カリウムによる汚染の工程を行う代わりに、沸騰水に1時間浸す工程を行うこと以外は試験IV)と同様の試験を行った。
【0052】
比較として、各々の試験を、文書US 5 853 821に記載されている従来技術の方法(すなわち上で説明したa)、b)(一度だけ繰り返す)、d)およびe)の工程を含む方法、つまりTiB2を含む組成物で含浸することを省いた方法)で保護した以外は同じであるC/C複合材料の3つのサンプルについても行った。
【0053】
以下の表Iおよび図3から図10の曲線は、初期質量に対する比率として測定した、本発明による方法で保護したサンプルと従来技術の方法で保護した参照サンプルとについて各々の試験後の質量損失を示す。
【表1】
【0054】
試験の結果は、対象の従来技術と比較すると、本発明による方法を使用して実施した酸化に対する保護は以下の特徴を表すことを示す。
【0055】
・炭素酸化触媒が存在し、650℃から850℃の範囲にある温度に曝した場合には、有効性は同様であった;
・酸化触媒が存在する場合、1000℃に曝した後(20%に対して、平均約11%の質量損失)と、1200℃に曝した後(43%に対して、平均約14%の質量損失)とで、有効性は非常に著しく増加した;
・酸化触媒が存在しない場合、1200℃に曝した後(12%に対して、平均約3%の質量損失)と、1400℃に曝した後(24%に対して、平均約3%の質量損失であり、結果はより分散した)とで、有効性はかなり向上した;
・湿った雰囲気での有効性はかなりより良好となった(水に室温で24時間浸した後では、32%に対して、平均約7%の質量損失であった。沸騰水に1時間浸した後では、24%に対して、平均約8%であり、結果は広く分散した。)。
【0056】
(例2)
工程c)において、32重量%のAl(H2PO4)3と、56重量%のZrB2とを含み、残部は水である含浸組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0057】
例2の方法を使用して保護したいくつかのサンプルに、上述のV)と同じ酸化試験を施した。
【0058】
以下の表IIは、酸化試験を実施した後の様々なサンプルについて測定した相対的な質量損失(初期質量に対する割合として)を示す。比較として、表IIは例1に従って保護したサンプルと参照の保護サンプルとについて同じ酸化試験で観察された質量損失を示す。
【表2】
【0059】
結果は、TiB2の代わりとしてZrB2を含浸組成物で使用すると、酸化に対する保護層の有効性が著しく損なわれ、その保護層は従来技術に従って保護したサンプルで観察されたものと同程度であることを示す。
【0060】
(例3)
例1と同じ種類のC/C複合材料で作られているサンプルを使用し、例1で説明した方法を以下のように変更して酸化に対する保護を行った:
・工程b)において、44重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmの平均粒径を有する粉末の形態の14%重量のTiB2とを含み、残部は水である含浸組成物を使用した;および
・工程c)において、34重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を有する粉末の形態の39重量%のTiB2を含む含浸組成物を使用した。
【0061】
(例4)
工程b)の間に、39重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を有する粉末の形態の28重量%のTiB2とを含み、残部は水である含浸組成物を使用し、工程c)では、35重量%のAl(H2PO4)3と、約10μmに等しい平均粒径を有する粉末の形態の44重量%のTiB2とを含む含浸組成物を使用したこと以外、例3と同じ手順で行った。
【0062】
例3および例4の方法を用いて保護した2つのサンプルE3およびE4に、上述のIV)と同じ酸化試験をそれぞれ施した。
【0063】
以下の表IIIおよび図11は、酸化試験を行った後に測定した相対的質量損失(初期質量に対する比率)を示す。例1に従って保護したサンプルE1、E’1、およびE’’1、ならびに参照の保護サンプルER、E’R、およびE’’Rによって得られた結果も再度示す。
【表3】
【0064】
TiB2を燐酸塩を含む第1含浸組成物に混和させることにより、有効な保護層を得ることができる。しかし、中心まで含浸することをより困難にさせる。
【0065】
上述の例は酸化物を形成するためのソースとしてTiB2を使用することで明白な利点が与えられることを示す。この酸化物は、周囲媒質からの酸化に対する保護バリア機能を果たすことが可能であり、かつ燐および金属(使用する燐酸塩から、または炭素酸化触媒から生じるかのいずれであっても関係なく)と共に作用して、湿気に耐え、かつ外からくる酸化触媒をトラップするガラスを形成することが可能である。
【0066】
(例5)
工程c)において、23重量%のAl(H2PO4)3と、37%重量のTiB2粉末と、9重量%のカオリン粉末と、30重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0067】
(例6)
工程c)において、24重量%のAl(H2PO4)3と、39重量%のTiB2粉末と、5重量%のカオリン粉末と、5重量%のアルミニウム粉末と、27重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0068】
(例7)
工程c)において、25重量%のAl(H2PO4)3と、40重量%のTiB2粉末と、10重量%の水酸化アルミニウムAl(OH)6と、25重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0069】
(例8)
工程c)において、25重量%のAl(H2PO4)3と、40重量%のTiB2粉末と、10重量%の燐酸亜鉛Zn3(PO4)2と、25重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0070】
(例9)
工程c)において、25重量%のAl(H2PO4)3と、40重量%のTiB2粉末と、10重量%のメタ燐酸アルミニウムAl(PO3)3と、25重量%の水とを含む組成物を使用した以外、例1と同じ手順で行った。
【0071】
例5に従って保護したサンプルE5およびE’5、例6に従って保護したサンプルE6、E’6およびE’’ 6、例7に従って保護したサンプルE7およびE’7、例8に従って保護したサンプルE8およびE’8、ならびに例9に従って保護したサンプルE9およびE’9に上述の試験V)と同じ酸化試験を施した。
【0072】
図12は、これらの様々なサンプルについて、および例1に従って保護したサンプルE1、E’1およびE’’1および参照の保護サンプルERおよびE’Rについて測定(初期質量に対する比率として)した相対的質量損失を示す。
【0073】
例5から例9に従って保護したサンプルは、例1に従って保護したサンプルよりはある程度劣るものの、参照のサンプルと比較して向上した酸化耐性能力を示すということがわかる。これは、コストを抑えることが可能な不活性固体フィラー(カオリン、アルミナ)、さらには反応性フィラー(水酸化アルミニウム)、Al(H2PO4)3以外の抗触媒特性を有する燐酸塩(例えば、燐酸亜鉛)、またはAl(H2PO4)3以外のアルミニウム燐酸塩も使用することが本発明の範囲内で可能であることを示す。
【0074】
TiB2、Al(H2PO4)3およびH2O以外の1種またはそれ以上のこれらの成分の第2の保護層を塗布する(工程c)ために使用する組成物中での含有量は、好ましくは0重量%から40重量%の範囲から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の方法の実施を示すフローチャート。
【図2】図1の方法の変形を示す図。
【図3】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図4】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図5】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図6】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図7】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図8】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図9】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図10】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図11】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【図12】本発明による酸化に対する保護層を備えたまたは備えていない、様々な条件で酸化試験を施した、C/C複合材料から質量損失を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素を含む複合材料で作られている部品(前記部品は残留した開放内部気孔を示す)を酸化に対して保護する方法であって、少なくとも1種の金属燐酸塩を含む溶液を使用することを含み、少なくとも1種の金属燐酸塩と二ホウ化チタンとを含む含浸組成物を塗布する少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
二ホウ化チタンは前記含浸組成物中において0.1μmから200μmの範囲にある粒径を有する粉末の形態で存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記含浸組成物はさらに耐熱性固体フィラーを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記追加の耐熱性固体フィラーはシリカ、アルミナ、粘土、カオリン、およびタルクから選択されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記含浸組成物は、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の金属燐酸塩を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記含浸組成物は、20重量%から70重量%の金属燐酸塩と、5重量%から50重量%の二ホウ化チタンと、20重量%から50重量%の水と、0重量%から40重量%の二ホウ化チタン以外の耐熱性固体フィラーとを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
湿潤剤を含む溶液に含浸させて前記複合材料部品を処理し、乾燥させて、前記湿潤剤の存在により増加する水和性を前記複合材に与える前工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩と、二ホウ化チタンとを含む前記含浸組成物を塗布する前に、固体フィラーをまったく含まない、少なくとも1種の金属燐酸塩の溶液を塗布する少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
炭素を含み、かつ少なくとも1種の金属燐酸塩を含む、酸化に対する保護層を備えた複合材料部品であって、前記酸化に対する保護層はさらに二ホウ化チタンを含むことを特徴とする部品。
【請求項10】
前記酸化に対する保護層はさらに耐熱性固体フィラーを含むことを特徴とする請求項9記載の部品。
【請求項11】
前記酸化に対する保護層は、前記部品の表面近傍に位置する部分では、前記部品の表面の下のさらに深い部分よりも、高い二ホウ化チタン含有量を示すことを特徴とする請求項9または請求項10記載の部品。
【請求項1】
炭素を含む複合材料で作られている部品(前記部品は残留した開放内部気孔を示す)を酸化に対して保護する方法であって、少なくとも1種の金属燐酸塩を含む溶液を使用することを含み、少なくとも1種の金属燐酸塩と二ホウ化チタンとを含む含浸組成物を塗布する少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
二ホウ化チタンは前記含浸組成物中において0.1μmから200μmの範囲にある粒径を有する粉末の形態で存在することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記含浸組成物はさらに耐熱性固体フィラーを含むことを特徴とする請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記追加の耐熱性固体フィラーはシリカ、アルミナ、粘土、カオリン、およびタルクから選択されることを特徴とする請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記含浸組成物は、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、および燐酸マグネシウムから選択される少なくとも1種の金属燐酸塩を含むことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記含浸組成物は、20重量%から70重量%の金属燐酸塩と、5重量%から50重量%の二ホウ化チタンと、20重量%から50重量%の水と、0重量%から40重量%の二ホウ化チタン以外の耐熱性固体フィラーとを含むことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
湿潤剤を含む溶液に含浸させて前記複合材料部品を処理し、乾燥させて、前記湿潤剤の存在により増加する水和性を前記複合材に与える前工程を含むことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
溶液状態の少なくとも1種の金属燐酸塩と、二ホウ化チタンとを含む前記含浸組成物を塗布する前に、固体フィラーをまったく含まない、少なくとも1種の金属燐酸塩の溶液を塗布する少なくとも1つの工程を含むことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
炭素を含み、かつ少なくとも1種の金属燐酸塩を含む、酸化に対する保護層を備えた複合材料部品であって、前記酸化に対する保護層はさらに二ホウ化チタンを含むことを特徴とする部品。
【請求項10】
前記酸化に対する保護層はさらに耐熱性固体フィラーを含むことを特徴とする請求項9記載の部品。
【請求項11】
前記酸化に対する保護層は、前記部品の表面近傍に位置する部分では、前記部品の表面の下のさらに深い部分よりも、高い二ホウ化チタン含有量を示すことを特徴とする請求項9または請求項10記載の部品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−500665(P2007−500665A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521620(P2006−521620)
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002034
【国際公開番号】WO2005/012744
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【国際出願番号】PCT/FR2004/002034
【国際公開番号】WO2005/012744
【国際公開日】平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願人】(502202281)スネクマ・プロピュルシオン・ソリド (48)
【氏名又は名称原語表記】SNECMA PROPULSION SOLIDE
【Fターム(参考)】
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