説明

炭素及び水素を含有する化合物からメチルメルカプタンを連続的に製造する方法

本発明は、固体、液体又は気体の炭素含有の及び水素含有の化合物、空気、水及び硫黄を含有する出発材料混合物の反応によりメチルメルカプタンを連続的に製造する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体、液体及び/又は気体の炭素含有及び水素含有の化合物を含有する出発材料混合物を、空気又は酸素及び/又は水及び硫黄と反応させることによりメチルメルカプタンを連続的に製造する方法に関する。
【0002】
メチルメルカプタンは、メチオニンの合成のための、並びにジメチルスルホキシド及びジメチルスルホンの製造のための工業的に重要な中間生成物である。メチルメルカプタンは、主にメタノールと硫化水素とから、酸化アルミニウム担体と遷移金属酸化物とからなる触媒及び塩基性助触媒を用いた反応により製造される。このメルカプタンの合成は、通常では気相中で300〜500℃の温度で、1〜25barの圧力で行われる。この生成物ガス混合物は、生成されたメチルメルカプタン及び水の他に、未反応の出発物質、つまりメタノール及び硫化水素の割合を含有し、かつ副生成物として、ジメチルスルフィド及びジメチルエーテルを含有し、また少量でポリスルフィド(ジメチルジスルフィド)をも含有する。前記反応の範囲内で不活性のガス、例えば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素及び水素も、前記生成物ガス中に含まれている。
【0003】
この生成物ガス混合物からは、生成されたメチルメルカプタンは、例えばUS 5866721に詳説されるように、複数の蒸留塔及び洗浄塔で10〜140℃の温度で分離される。
【0004】
メチルメルカプタンは、それとは別に酸化炭素、水素、硫黄及び/又は硫化水素から製造することができる。US 4665242によると、例えばメチルメルカプタンの製造は、アルカリ金属タングステン酸塩をベースとする触媒を用いて行われる。メタノールに基づく方法と比べて、このプロセスはメチルメルカプタンに対する選択率は低くかつ酸化炭素の転化率も低い。US 4410731は、助触媒として遷移金属酸化物を含有するアルカリ金属硫化モリブデン及び担体として酸化アルミニウムを基にして、酸化炭素、水素及び硫化水素又は硫黄からメチルメルカプタンを製造するための方法及び触媒に関する。WO2005/040082には、助触媒として遷移金属酸化物を含有するアルカリ金属モリブデン酸塩を基にして、酸化炭素、水素及び硫化水素又は硫黄から、メチルメルカプタンを製造するための方法及び触媒が請求されていて、その際、担体として有利に二酸化ケイ素が用いられている。
【0005】
二硫化炭素又は硫化カルボニル及び水からのメルカプタンの製造は、メタノールをベースとする方法に対して他の選択肢である。このプロセスは、しかしながらメチルメルカプタンに対する比較的低い選択率、手間とコストをかけて分離しなければならない多数の副生成物、並びに毒性の二硫化炭素もしくは硫化カルボニルを大量に取り扱う必要性を特徴としている。
【0006】
他のプロセスの場合に生じる、メタン又は高級炭化水素、水、水素及び場合により硫黄含有化合物を含有する混合物をメチルメルカプタンにする直接反応は、今日まで、工業的に重要な収率及び選択率に達しておらず、主成分として特に毒性の二硫化炭素を有する多数の副生成物が生じる。
【0007】
上記のすべての方法は、メチルメルカプタンの製造のために、炭素化合物、例えばメタノール、酸化炭素又は硫黄含有化合物、例えば硫化カルボニル又は二硫化炭素を原料として必要とすることが共通している。これは、重大なコスト要因であり、特にメチルメルカプタンの生成のための生成物選択率が比較的低い場合に特に重大である。さらに、一部では手間のかかる精製方法が必要であり、この場合、多くの副生成物は前記プロセスに戻すことはできない。これは、メチルメルカプタンに対する全体の選択率を低下させ、従ってこの方法の経済性を低めてしまう。
【0008】
出発材料の、天然ガス(メタン)、例えば重油フラクションからなる炭化水素、石油精製からの残留物又は一般に高級の炭化水素、例えばオリゴマー、ポリマー又は多環式芳香族(これらは、通常では例えば他の化学プロセスにおいて廃棄物フローとしても生じる)を、空気又は酸素、水及び硫黄と直接反応させメチルメルカプタンにすることが、本発明の課題である。これは、工業的に実現化された、メタノールをベースとする方法と比較して、明らかに低い原料コストに基づいて変動する運転コストにおいて明らかなコストの利点を有する。前記のことから当業者にとって明らかなように、先行技術によりこのような方法は提供されなかった。比較的低い生成物選択性及び広範囲の副生成物、並びに反応中間体の毒性、それにより人間及び環境の保護のための大規模な安全措置を必要とすることによって、メチルメルカプタンを製造するためのこの種の方法は存在していない。
【0009】
全体のプロセスの経済性は、使用された炭素源に対するメチルメルカプタンの生成物選択率に決定的に依存する。他のプロセスにおいて副成分としてもしくは廃棄物フローとして生じるか又はエネルギーを生み出す燃料としてだけに使用される炭素含有及び水素含有化合物の本発明による使用によって、付加的なコストの利点を達成することができる。例えば、選択的酸化の場合に付加的に化学結合する酸素を含有している一連の副成分、例えばアルコール、アルデヒド、炭酸及び/又は酸化炭素が生じる。これらは、一般に主反応生成物の分離後に焼却されるか、又は他の化学反応で反応させて、処理することができる。出発材料混合物の供給源についてのさらなる例は、有機窒素化合物又は硫黄化合物の工業的製造方法であり、前記方法において大量の副生成物が生じ、この副生成物は一般にさらなる価値の創造なしに焼却されるか又はそのほかの方法で廃棄しなければならない。特に、本発明による方法の場合には、H2S、COS、SO2、SO3を含有する化合物、硫化アルキル又はアルキルポリスルフィドを含む排気ガス流を使用することができる。これには、エネルギーを生み出すプラント又は化学的製品を製造するプラントからの排気ガス流から直接得られたか又は分離技術を介して得られた、又は生物学的物質代謝(例えば発酵プロセス及び分解プロセス)の範囲内で生じるガスも明確に該当する。前記ガス混合物は、主成分として炭化水素、酸化炭素、有機硫黄化合物及び有機窒素化合物又は硫化水素を、他の材料の他に含有し、前記混合物は本発明による方法に供給される。
【0010】
本発明の課題は、炭素含有化合物及び水素含有化合物を含有する出発材料混合物、空気又は酸素、及び/又は水及び硫黄からメチルメルカプタンを経済的に製造する方法を提供することである。
【0011】
本発明の主題は、炭素含有化合物及び水素含有化合物を含有する出発材料混合物の反応によりメチルメルカプタンを連続的に製造する方法であり、その際、次の方法工程が行われる:方法工程1において、前記炭素含有化合物及び水素含有化合物を空気又は酸素と、場合により水と反応させて、主成分として二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含有するガス混合物にする。
【0012】
炭素含有化合物は、固体、液体又は気体の状態で提供することができるが、前記反応の時点で有利に気体である。
【0013】
そのほかに、前記出発材料ガスは有機硫黄化合物又はH2Sを含有することができる。
【0014】
CO、CO2及び水素は、方法工程1から搬出されるガス混合物中に、一般に1〜90体積%の量で含まれている。
【0015】
COについて5〜25体積%、CO2について5〜50体積%及びH2について10〜90体積%の濃度が有利であり、その際、この全体量は有利に<100体積%であり、特に約90体積%である。
【0016】
引き続き、前記ガスのさらなる圧縮及び後処理なしでの、少なくとも5barの反応圧力及び少なくとも200℃の温度での前記ガス混合物と、液状又はガス状の硫黄との直接の反応は1段階又は多段階の反応工程2において行われる。
【0017】
CO2/CO/H2/H2Sのモル比は、水又は水蒸気及び場合により硫化水素の供給により、1:0.1:1:0〜1:1:10:10の割合に調節される。
【0018】
方法工程3において、前記ガス混合物を少なくとも5barの反応圧力及び少なくとも200℃の温度で触媒を介して、主生成物としてメチルメルカプタンを含有する反応混合物に変換される。
【0019】
引き続き、前記メチルメルカプタンの分離を、方法工程4において公知の方法で行う。
【0020】
方法工程5において、前記ガス状の副生成物の分離後に、未反応の使用物質を、水との場合による反応の後で前記プロセスに返送する。
【0021】
メチルメルカプタンについての全体の選択率は、炭素含有、水素含有及び硫黄含有の化合物の第1の、第2の又は第3の方法工程への循環により高めることができる。有利に、酸化炭素、水素、硫化カルボニル及び硫化水素を第2の方法工程又は第3の方法工程にリサイクルし、副生成物、例えば水、炭化水素及び他の硫黄含有化合物、例えば(ポリ)スルフィド及び二硫化炭素は、第1の方法工程に返送される。本発明の特別な利点は、(ポリ)スルフィド及び毒性の二硫化炭素が、1%より低い選択率で生じるだけで、前記方法へのリサイクルによって、これらを技術的に手間及びコストをかけて分離し、かつ廃棄する必要がないことである。
【0022】
前記の第3の方法工程の生成物ガス混合物は、生成されたメチルメルカプタン及び水の他に、未反応の出発物質の、二酸化炭素、一酸化炭素、水素及び硫化水素及び副生成物としての硫化カルボニル、メタン、ジメチルスルフィドを含有し、かつ少量のポリスルフィド(ジメチルジスルフィド)及び二硫化炭素も含有する。この反応の範囲内で、不活性ガス、例えば窒素及び水素は、生成物ガス中にも含まれている。
【0023】
生成物ガス混合物から、生成されたメチルメルカプタンは、例えばDE-A-1768826に詳説されるように、複数の蒸留塔及び洗浄塔中で10〜140℃の温度で分離される。二酸化炭素、一酸化炭素、水素、硫化水素及び副生成物としての硫化カルボニル、メタン、ジメチルスルフィド及び少量のポリスルフィド(ジメチルジスルフィド)及び二硫化炭素は、第1の方法工程、第2の方法工程又は第3の方法工程に返送される。有利に、前記材料流は、場合による第5の方法工程中で、有利に前記プロセス中へ供給された循環ガスが主成分のCO2、CO、H2及びH2Sだけを含有するように水と接触反応させる。
【0024】
全体のプロセスの経済性は、有利に第1の方法工程及び第2の方法工程へ使用物質を供給する前に、手間と費用のかかる潜在的な触媒毒、例えば硫黄含有化合物及び単体の硫黄の分離が必要ないことにより高められる。同様に第1の方法工程における反応の後でも、このような化合物の分離は行われない。前記物質は、反応ガスと一緒に、前記ガスのさらなる後処理及び圧縮なしに、第2の方法工程に直接供給することができ、これは、前記プロセスの投資コスト及び運転コストに関して明らかにコスト上の利点である。従って、第1の方法工程の出発材料混合物及び生成物混合物のコストのかかる脱硫が行われない。有利に、場合により方法工程1の副生成物として生じる硫黄又は硫黄含有スラグは、固体、液体又は気体の形で、出発物質として方法工程2に直接供給することができる。これには、エネルギーを生み出すプラント又は化学的製品を製造するプラントからの排気ガス流から得られたか直接得られたか又は分離技術を介して得られたか、又は生物学的な分解プロセス及び物質代謝プロセスの範囲内で生じるガスも明確に該当し、前記ガスは第2の方法工程に直接供給することができる。前記ガス混合物は、主成分として、炭化水素、酸化炭素、硫黄化合物及び窒素化合物を、他の材料の他に、5〜90体積%の全体濃度で含有することができ、かつ方法工程1、2及び3に供給することができる。
【0025】
第2の方法工程でのガス混合物の反応は、場合により触媒の使用下で、液状又はガス状の硫黄との反応により1段階又は多段階の方法工程で行うことができる。この第2の方法工程において水素の完全は反応は目指されない。前記反応は、反応後にCO2/CO/H2/H2S割合が1:0.1:1:1〜1:1:10:10であるように実施される。有利に、前記反応ガスは、第1の方法工程から少なくとも5barの圧力で搬出され、更に圧縮することなく第2の方法工程に直接供給することができる。これはコスト面での明らかな利点であり、それというのも高い投資コスト及び運転コストがかかるコンプレッサ段階を行わなくてもよいためである。前記の第2の反応工程からの前記反応ガス混合物は、引き続き更に圧縮せずかつ反応生成物の後処理せずに第3の反応工程に供給される。場合により、単体の硫黄又は硫黄含有化合物を分離するための装置を、前記方法工程の前に接続することができる。メチルメルカプタンへのこの反応は第3の方法工程において触媒を用いて行われる。第2及び第3の方法工程において金属酸化物触媒が有利であることが判明した。有利に、アルカリ金属モリブデン酸塩又はアルカリ金属タングステン酸塩をベースとする触媒が使用され、前記触媒は担体上に設けられていてもよい(US 5852219)。特に、酸化物のMo化合物及びK化合物を含有し、その際、Mo及びKは化合物の形で、例えばK2MoO4の形で含有されていてもよく、かつ一般式Axyの活性酸化物の化合物を含有する担体触媒が適している。その際、Aは、マンガン族の元素、特にMn又はReを表し、x及びyは1〜7の整数を表す。前記触媒は、前記化合物を有利に次の質量比
xy/K2MoO4/担体=0.001〜0.5)/(0.01〜0.8)/1もしくは
xy/MoO3/K2O/担体=[0.0001〜0.5)/[0.01〜0.8)/[0.005〜0.5)/1で含有し、
その際、前記質量比は、有利に
xy/K2MoO4/担体=(0.001〜0.3)/(0.05〜0.5)/1もしくは
x4/MoO3/K2O/担体=[0.001〜0.3)/(0.05〜0.3)/0.03〜0.3/1の範囲内にある。
【0026】
前記触媒は、有利に一般式Mxyで示される酸化物の化合物のグループから選択される1種以上の助触媒を含有し、前記式中、Mは遷移元素又は希土類の族からなる金属を表し、x及びyは、使用した元素Mの酸化数に応じて1〜7の整数を表す。
【0027】
有利に、MはFe、Co、Ni、La又はCeを表す。特別な実施態様の場合には、MはSnも表すことができる。この質量割合の比率は、次の範囲内にある:
2MoO4/Mxy/担体=(0.01〜0.80)/(0.01〜0.1)/1、
MoO3/K2O/Mxy/担体=(0.10〜0.50)/(0.10〜0.30)/(0.01〜0.1)/1。
【0028】
前記触媒を使用の前にH2S含有雰囲気にさらす場合、この酸化物の金属化合物(これには担体材料を考慮されていない)は、硫化物の化合物又は酸化物及び硫化物の化合物からなる混合物に変換され、これらも同様に本発明により使用可能である。
【0029】
担体材料として、有利に二酸化ケイ素、二酸化チタン、ゼオライト又は活性炭が使用される。担体として酸化アルミニウムが使用される場合、前記触媒は、酸化レニウム及び/又は硫化レニウムを含有する。
【0030】
二酸化チタンは、有利にアナターゼ60Mol%の含有量で使用される。
【0031】
この製造は多段階の含浸法で行われ、前記の含浸法によって所望の助触媒又は活性酸化物化合物の可溶性化合物が前記担体に設けられる。この含浸された担体を引き続き乾燥し、場合によりか焼する。
【0032】
有利に、第2及び第3の方法を一つの反応装置中で組み合わせられる。これは、異なる触媒又は同じ触媒を使用して行うことができる。有利に、気泡塔、反応蒸留、固定層反応器、段階型反応器(Hordenreaktor)又は管束型反応器がメチルメルカプタンへの接触反応のために使用される。
【0033】
第2の方法工程での前記反応は、200〜600℃、特に250〜500℃の温度でかつ1.5〜50barの圧力で行われる。有利に、2.5〜40barの運転圧力が設定される。メチルメルカプタンへの前記反応は、第3の方法工程において、アルカリ金属モリブデン酸塩又はアルカリ金属タングステン酸塩をベースとする触媒を用いて行われる。200〜600℃、有利に250〜400℃の温度でかつ1.5〜50bar、有利に8〜40barの圧力で行われる。有利に第2及び第3の方法工程において使用される触媒は、WO 2005/040082 , WO 2005/021491, WO 2006/015668及びWO 2006/063669の出願明細書に記載されている。
【0034】
本発明のさらなる実施態様の場合には、前記の第2及び第3の方法工程は一つの装置中で組み合わせられる。
【0035】
生成物ガス混合物の分離は、多様な公知の方法により行うことができる。特に有利な分離は、特許明細書EP-B-0850923 (US 5866721)に記載されている。
【0036】
未反応の酸化炭素、水素及び硫化水素、並びにガス状の副生成物、例えば硫化カルボニル及びメタン、並びに高級炭化水素は前記プロセスに返送される。この返送は、第1、第2又は第3の方法工程の出発材料流中へ行うことができる。有利に、第2又は第3の方法工程への返送の前に、CO2/CO/H2/H2S比率は、水との反応により1:0.1:1:1〜1:1:10:10に調節される。これは、触媒を用いて又は触媒を用いずに、固定層反応器、反応管、洗浄塔又は反応蒸留で少なくとも120℃の温度で行うことができる。有利に、副生成物、例えば硫化カルボニル及び二硫化炭素をこの方法工程で二酸化炭素及び硫化水素に加水分解し、これらを出発材料として再び第2又は第3の方法工程中へ導入する。メルカプタンの分離の間に第4の方法工程で生じる反応成分、例えば硫化物、ポリスルフィド及び炭化水素は、さらに後処理せずに、第1又は第2の方法工程に返送することができ、それにより、このプロセスの炭素に対するメチルメルカプタンの全体の選択率は95%を越えるまで高められる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】有利に使用される方法工程の順序の本発明の実施態様を示す図。
【0038】
図1は、反応工程の有利に使用される順序の使用下での前記方法をさらに説明するために用いられる。前記方法の経済性にとって重要なのは、多くの固体、液体又は気体の炭素含有及び水素含有の出発物質を使用でき、前記出発物質は第1の方法工程に供給され、前記物質流は手間をかけて精製及び脱硫する必要がないことである。さらに、第4の方法工程中で分離される全体の副生成物は、第1、第2又は第3の方法工程中へリサイクルすることができる。有利に、すべてのプロセス工程は、同じ圧力範囲で進行するため、個々のプロセス工程の間にコストをかけてガスを圧縮することを行わなくてもよい。前記反応は前記ガスの出発圧力で行われ、前記ガスは第1の方法工程を離れるか又は第2又は第3の方法工程に他の供給源からプロセス圧力下で供給される。有利にこの圧力は8〜40barに調節される。前記プロセスの範囲内で不活性ガスはが連続的又は不連続的にパージガス流を介して前記プロセスから搬出される。
【0039】
実施例1:
炭化水素−供給ガス流の水蒸気改質及び引き続く硫黄との反応により、主成分のCO2/CO/H2/H2Sを約1/0.1/4/4の比率で含有するガス混合物が得られた。250〜350℃の反応温度及び30barの圧力で、前記反応体を第3の反応工程で多様な触媒によって反応させた。前記触媒活性を、まず前記反応器を通る通過(単流)について測定した。
【表1】

CO2=二酸化炭素
MC=メチルメルカプタン
【0040】
実施例2
メチルメルカプタンを、実施例1の生成物ガス流(方法工程4)から分離した。主成分のCO2、H2、CO及びH2Sを有する返送ガスを、反応工程5において水と反応させた後、方法工程3にリサイクルし、実施例1と同様の反応条件で反応させた。触媒A〜Cにより、90〜94%のメチルメルカプタン選択率が達成された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有化合物及び水素含有化合物を含有する出発材料混合物の反応によりメチルメルカプタンを連続的に製造する方法において、次の方法工程を実施する:方法工程1において、炭素含有化合物及び水素含有の化合物を、空気又は酸素、場合により水と反応させて、二酸化炭素、一酸化炭素及び水素を含有するガス混合物にし、方法工程2において、前記ガス混合物を液状又はガス状の硫黄と1段階又は多段階の方法工程で少なくとも5barの反応圧力でかつ少なくとも200℃の温度で反応させ、CO2/CO/H2/H2Sのモル比を水又は水素及び場合により硫化水素の供給により1:0.1:1:0〜1:1:10:10の比率に調節し、方法工程3において、こうして得られた化合物CO2/CO/H2/H2Sの1:0.1:1:1〜1:1:10:10のモル比を有するガス混合物を少なくとも5barの反応圧力で少なくとも200℃の温度で、触媒を用いて反応させて、主成分としてメチルメルカプタンを含有する反応混合物にし、方法工程4において、前記メチルメルカプタンを分離し、及び方法工程5において、ガス状の副生成物の分離後に、未反応の使用物質を場合により水との反応の後に前記プロセスに返送する、メチルメルカプタンの連続的製造方法。
【請求項2】
前記出発材料混合物は窒素含有化合物を含有する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記出発材料混合物は硫黄含有化合物を含有する、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
前記出発材料混合物は、炭素含有化合物、水素含有化合物及び酸素含有化合物を含有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
前記炭素含有化合物及び水素含有化合物及び場合による酸素含有化合物を、空気又は酸素を用いた部分酸化により又は水蒸気改質によりCO2、CO、H2及び場合によりH2Sを含有するガス混合物に変換する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記出発材料混合物中に含まれる前記化合物は、エネルギー又は化学生成物の製造のためのプロセスからの排気ガス流から生じる、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
炭化水素の酸化及び窒素含有化合物及び硫黄含有化合物の合成のためのプロセスの後処理からの物質流を原材料として前記プロセスに供給する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
生物学的な物質代謝プロセスにおいて製造されたガス混合物を前記方法工程2又は3に導入する、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記ガス混合物は、メタン、C2〜C6−残基を有する高級炭化水素、CO2及びCOのグループから選択される少なくとも1種の化合物を含有する、請求項6、7又は8記載の方法。
【請求項10】
前記方法工程2において、CO2、CO、H2及びH2Sを含有するガス混合物にする反応は、液状又はガス状の硫黄の存在で1工程又は多工程の触媒を用いない均一反応又は触媒を使用して行われる、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
CO2/CO/H2/H2S比が、方法工程2の終わりに1:1:1:1〜1:0.1:4:4に達することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
メチルメルカプタンを反応ガスから分離し、未反応のガス状の使用物質を方法工程1、2又は3に返送する、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
炭素含有の、水素含有の及び硫黄含有の反応副生成物を方法工程1、2又は3に返送する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
前記方法工程3における硫化水素の全体量を、出発材料混合物中に含まれる化合物の炭素−水素比率もしくは反応工程2に供給される反応ガス中のH2割合の変更により及び滞留時間、反応温度及び反応圧力のグループから選択される1つ以上の方法パラメータの変更により調節する、請求項1から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
前記方法工程2及び3において、反応蒸留、気泡塔反応器、固定層反応器、段階型反応器又は管束型反応器をメチルメルカプタンへの接触反応のために使用する、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項16】
前記方法工程2及び3を一つの反応装置中で組み合わせる、請求項1から5までのずれか1項記載の方法。
【請求項17】
第1及び第2の方法工程に引き続き硫黄含有化合物を分離しない、請求項1記載の方法。
【請求項18】
前記ガス混合物を第1の方法工程から少なくとも5barの圧力で搬出し、さらに圧縮せずに第2の方法工程に直接供給し、及び引き続き相応するガス混合物を前記圧力で第3及び第4の方法工程に供給する、請求項1から17までのいずれか1項記載の方法。
【請求項19】
二硫化炭素及び(ポリ)スルフィドの全体の選択率は1%より低い、請求項1記載の方法。
【請求項20】
遷移金属酸化物又は遷移金属硫化物を助触媒として含有するアルカリ金属タングステン酸塩、アルカリ金属モリブデン酸塩又はハロゲン化物を含有するアルカリ金属タングステン酸塩又はアルカリ金属モリブデン酸塩を含有する触媒を使用する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
方法工程3におけるガス混合物の反応を、遷移金属の及びアルカリ金属の酸化物又は硫化物を助触媒として含有するモリブデン酸塩又はタングステン酸塩を含有する触媒を用いて行う、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
コバルト、マンガン及びレニウムの酸化物又は硫化物からなるグループから選択される助触媒の少なくとも1種を含有するアルカリ金属タングステン酸塩、アルカリ金属モリブデン酸塩又はハロゲン化物を含有するアルカリ金属タングステン酸塩又はアルカリ金属モリブデン酸塩を触媒として使用する、請求項20記載の方法。
【請求項23】
酸化物のMo化合物及びK化合物を含有し、その際、Mo及びKは1つの化合物中に含まれていてもよくかつ一般式Axy(式中、Aはマンガン族の元素、特にMn又はReを表し、x及びyは1〜7の整数を表す)の少なくとも1つの活性酸化物化合物を含有する担体触媒を使用する、請求項1から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項24】
前記触媒は、前記化合物を、有利に
xy/K2MoO4/担体=(0.001〜0.5)/(0.01〜0.8)/1又は
x4/MoO3/K2O/担体=[0.001〜0.5)/(0.01〜0.8)/0.005〜0.5)/1
の質量比で含有する請求項1から19まで及び23のいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記質量比は、有利に
xy/K2MoO4/担体=(0.001〜0.3)/(0.05〜0.5)/1又は
x/MoO3/K2O/担体=[0.001〜0.3)/(0.05〜0.3)/0.03〜0.3/1
の範囲内にある、請求項1から19まで及び23、24のいずれか1項記載の方法。
【請求項26】
前記触媒は、一般式Mxy(式中、Mは遷移元素又は希土類のグループからなる金属を表し、x及びyは1〜7の整数を表す)で示される酸化物の化合物のグループから選択される1種以上の助触媒を含有する、請求項1から19まで及び23から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記質量割合の比率は、
2MoO4/Mxy/担体=(0.01〜0.80)/(0.01〜0.1)/1、
MoO3/K2O/Mxy/担体=[0.10〜0.50)/(0.10〜0.30)/(0.01〜0.1)/1(その際x及びyは1から7の整数を表す)の範囲内にある、請求項1から19まで及び23から26までのいずれか1項記載の方法。
【請求項28】
前記比率は
2MoO4/Mxy/担体=(0.10〜0.60)/(0.01〜0.06)/1、
MoO3/K2O/Mxy/担体=[0.10〜0.30)/(0.10〜0.25)/0.01〜0.06/1
の範囲内にある、請求項27記載の方法。
【請求項29】
前記触媒を、使用の前にH2S含有雰囲気にさらす、請求項1から28までのいずれか1項記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−528081(P2010−528081A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509776(P2010−509776)
【出願日】平成20年5月6日(2008.5.6)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055548
【国際公開番号】WO2008/145488
【国際公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】