説明

炭素含有原料から水素を製造するための方法およびシステム

本発明は、炭素含有バイオマスからHを製造するための方法に関する。バイオマスはガス化されて、一酸化炭素分子(CO)および分子状水素分子(H)を実質的に含有するガス流を生成する。CO、水蒸気(H蒸気)および還元された酸素担体(Me)を実質的に含有するガス流を製造するために、COおよびHのこれらの分子は、次に、酸化された状態にある酸素担体(MeO)によって酸化される。この酸素担体は、次に、水蒸気を用いて酸化され、酸化された酸素担体および二水素(H)を実質的に含有するガス流を製造する。また本発明は、この方法の工程を実施するための手段を具えるシステムにも関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素の製造のためのプロセスに関する。また本発明は、その手順を実施するためのシステムにも関する。
【0002】
本発明の範囲は、炭素含有原料および水蒸気からの水素の生成の範囲である。
【背景技術】
【0003】
炭素含有原料に対して水蒸気を改質することによる水素の製造は周知であり、工業的には様々な製造業者によって体系化され、水蒸気改質と呼ばれる。
【0004】
最も広く使用される水蒸気改質は、現在、メタン水蒸気改質である:CH+2HO → CO+4H。これらの反応は、熱エネルギーを消費して、有害なCO(化石炭素を含有する物質から来る)を捨てる。それらは、800/900℃で、および3.0/3.5MPaの圧力で、触媒の上で、多段階で製造される。水蒸気改質の間にもたらされる熱化学反応は、全体としては吸熱的であり(CHモルあたり165kJ)、1モルのCHの発熱量は804kJ/モルである。
【0005】
水蒸気改質のために最も広く使用される触媒は、ニッケルに基づくものであり、硫黄に非常に敏感であり、硫黄は0.1ppm以上の硫黄の含有量で触媒を汚染する。酸化鉄(Fe)系、酸化クロム(Cr)系、酸化銅系の他の触媒、ならびにアルミナに担持された酸化クロムおよび酸化亜鉛も、これらのスケールの反応で使用される。水素製造システム(このあと開示されるものおよび電解プロセス)は、技術的資源およびエネルギー資源において非常に費用がかかる。既存の水素製造システムのために必要とされる熱エネルギーおよび電気エネルギーは、「外部熱電手段」として知られる手段によって供給される。これらの処理プロセスおよびシステムは、プロセスエネルギーの外部供給源に依存する。
【0006】
それらは、とりわけ、消費されるエネルギーに、およびプロセス自体に帰することができるCO廃棄に起因する「炭素」インパクトに関して、環境に対して大きい負の影響をもたらす工業的システムでもある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記の不都合を回避することである。
【0008】
本発明の別の目的は、より少ない消費エネルギーで水素を製造するためのプロセスおよびシステムを提案することである。
【0009】
本発明の別の目的は、連続的な外部供給源への依存から水素製造システムを開放する、水素についての自立的製造システムを提案することである。
【0010】
本発明の別の目的は、環境に対して低いインパクトしか有しない水素製造のシステムおよびプロセスを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、乾燥原料から水素を製造するためのプロセスであって、当該プロセスは、以下の工程:
− 第1のいわゆるガス化反応器の中での、高温のCOおよび酸素を含有するガス化のガス流を用いた、炭素含有乾燥物質のガス化であって、このガス化は、実質的に一酸化炭素(CO)の分子を含有し、最終的には二水素(H)分子、ならびに最終的には水蒸気(H蒸気)を含有する第1のガス流を供給する、ガス化;
− 第2のいわゆる酸化反応器の中での、酸化された状態にある酸素担体(MeO)および酸素含有ガス流、上記第1のガス流の中に存在する一酸化炭素(CO)の分子および二水素分子(H)による酸化であって、この酸化は、CO、還元された状態にある酸素担体(Me)および最終的にはこの炭素含有乾燥原料の化学配合物の中に含有される水素に比例した水蒸気(H蒸気)を含有する高温の第2のガス流を供給する、酸化;
− 第3のいわゆる活性化反応器内での、実質的に水蒸気を含有する活性化のガス流を用いた、還元された状態にある上記酸素の担体の活性化であって、この活性化は、酸化された状態にある酸素の担体、二水素(H)を含有する第3のガス流および過剰の熱エネルギーを供給する、活性化、
の少なくとも1回の繰り返しを含む、プロセスによって、上記の目的に到達することを可能にする。
【0012】
第1の反応器の中での炭素含有乾燥物質のガス化の実質的部分は、この炭素含有乾燥物質が(その化学組成において)分子状酸素を含む限り、または含まない限り、2つの別個かつ同時の工程において実施される。
【0013】
上記炭素含有乾燥物質(MPCS)がその化学組成において分子状酸素を含有する場合、ガス化は2つの同時の工程で起こる:
− COを実質的に含む加熱ガスによる、強力な熱供給によって、この物質のコアで熱分解作用が最初に起こる。このような熱分解は炭素含有乾燥原料(MPCS)の分子を分解し、Cと分子状酸素1/2Oとの間の化合による分子状炭素の一次ガス化をもたらし、COが得られる。当該分解は、当該物質の化学組成から(最終的な)分子状水素を放出し、マトリクス分子の中にその当量のガス化「酸素」を有しない炭素は残る。
− これらの炭素は、次いで、必要な1/2Oを捕捉することにより、加熱するCOと反応し(COは還元されることになる)、ガス相に入ることになる。この反応は、1000℃の温度におけるブードワ(Boudouard)平衡に従って、COの中のC分子と同程度の多くの、CO中のCO分子を転化する。
【0014】
この炭素含有乾燥物質(MPCS)がその化学組成において他の分子状酸素を有しない場合、ガス化は、1つの単独の工程で起こる:
− 最初に、COを実質的に含む加熱ガスによる当該物質のコアへの強力な熱供給により当該炭素含有乾燥物質(MPCS)の温度が上昇し、その結果、(温度が500℃から1000℃での終末までの反応プラトーに達するかぎり)炭素は、ブードア平衡により、この加熱物質と反応する。この反応は、酸素の1つの原子を当該炭素含有乾燥原料の炭素(C)の1つの原子と交換して、CO分子をCOへと転化(還元)し、純粋な酸素の外部供給源なしにその有機炭素および/または非晶質炭素をCOへとガス化する。
【0015】
この炭素含有原料は、その化学組成において調べることができる炭素比を含有するいずれの物質であってもよい。このプロセスの収率は、単位物質量あたりのその元素の比、およびその組成物の水素含有量に対してである。
【0016】
本発明のプロセスは、エネルギーの外部供給源からの連続的なエネルギー供給をもはや必要としない。本発明のプロセスによって消費される唯一の外部エネルギーは、このプロセスの開始においてガス化工程を開始するために必要とされる最終的な熱エネルギーである。ひとたびガス化が開始されると、本発明のプロセスは、プロセスの一組の工程および当該システムの全体的な稼動を実施するための十分な熱エネルギーを生成する(これは、本発明のプロセスの稼動中の流れによってほとんどが回収される)。
【0017】
それゆえ、本願明細書において詳細に後述するように、第2のガス流の熱容量のための利用できるエネルギー(そして、最終的には、炭素含有乾燥原料の一部の強制的な酸化によって発生される熱エネルギーを補完することにより)は、加えて第2のいわゆる酸化反応器における(当該炭素含有乾燥原料のガス化からの)合成ガスの酸化により、および(H中でHOを還元することにより)酸素担体MeOを活性化することにより供給される熱エネルギーの過剰分によって、熱処理システムに熱エネルギーを供給するのに十分であり、ガス化のガス流をガス化温度にするのに十分であり、所望の水素の製造のために必要とされる水蒸気を製造するのに十分であり、その結果、新しいガス化工程および、それゆえ当該プロセスの工程の新しい繰り返しが実施される。
【0018】
それゆえ、本発明は、現在の最高水準のプロセスおよびシステムよりも高い収率で炭素含有原料、より具体的にはバイオマス、からの水素の製造を可能にし、環境に対する負の影響がなく、かつ、この場合、他の公知のシステムおよびプロセスよりも顕著に少ない。
【0019】
本発明のプロセスは、有利なことに、水からの活性化のガス流の少なくとも一部の製造による、前記第2のガス流からの熱エネルギーおよび/または前記活性化の熱的過剰分の使用を含むことができる。
【0020】
それゆえ、開始サイクル後、本発明のプロセスは、外部のエネルギー供給を必要としない。
【0021】
有利なことに、本発明のプロセスは、他方で、次のサイクルのためのガス化のガス流を、少なくとも一部は、構成するための、第2のガス流の中に存在するCOの少なくとも一部の回収を含むことができる。
【0022】
それゆえ、本発明のプロセスは、生成されたCOを再利用し、環境に対する負の影響を低減することを可能にする。
【0023】
他方、活性化のガス流のうちの少なくとも一部を構成するために、第2のガス流の中に存在する水蒸気のうちの少なくとも一部は、凝縮および回収されてもよい。
【0024】
それゆえ、開始サイクルの後、本発明のプロセスは、原料の分子状水素成分から来る水を再利用して、水素の製造のために必要とされる外部の水の必要性を低減する。
【0025】
他方、当該ガス化のガス流を次のサイクルのためのガス化温度にするために、本発明のプロセスは、酸素担体の活性化の熱的過剰分の少なくとも一部およびガス化の間に生成される熱エネルギーの一部を用いた、ガス化のガス流の温度上昇を含んでもよい。
【0026】
この温度上昇のために必要とされるすべてのエネルギーは、最終的には、ガス化反応器における酸素(O)供給によって供給される熱補完を用いて得ることができる。他方で、この供給は、所望の熱的要求量に限定され、Oの各分子は2分子の水素(H)および/または2つのCの原子を酸化して、2つのHOおよび/または2つのCO(または、炭素含有原料の最初の組成物に応じてHOとCOとを1つずつ)を製造し、こうして、本発明のプロセスの反応のために有用な熱エネルギーを発生させる。本発明のプロセスに供給される熱補完量に加えて、各COは、純粋な水素(H)の分子を発生させる。
【0027】
非常に有利な実施態様では、本発明のプロセスは、微細藻類培養物バイオリアクターでの、第2のガス流の中に存在するCOの一部の光合成による再利用を含んでもよく、このバイオリアクターは、一方でガス状の酸素流(O)を、他方で炭素含有バイオマスを供給してもよい。
【0028】
それゆえ、本発明のプロセスは、炭素を消費して当該分子から酸素を放出する光合成反応器の中で、当該反応によって製造される過剰のCOを再利用することを可能にする。それゆえ、この有利な実施態様では、本発明のプロセスは、もはや、何らかの酸素燃焼のために必要とされるOの供給源に依存しない。
【0029】
本発明のプロセスによって消費される唯一の酸素は、当該プロセスの早期にガス化工程を開始するために最終的に必要とされる酸素、および当該プロセスのために必要とされる熱補完のための酸素である。
【0030】
実際、酸素(O)のガス流のうちの少なくとも一部は、炭素含有原料をガス化するために、ガス化反応器で使用されてもよい。この酸素は、次に、外部供給源から来る酸素を置き換え、従って、本発明のプロセスの経済的および環境上のインパクトを低減させる。
【0031】
他方、本発明のプロセスは、ガス化反応器でガス化されるべき炭素含有バイオマスの少なくとも一部の回収を含んでもよい。それゆえ、本発明のプロセスは、ガス化反応器で消費されるバイオマスのうちの少なくとも一部の製造を可能にする。
【0032】
本発明の別の目的は、炭素含有原料から水素を製造するためのシステムであって、当該前記システムは、
− 高温のCOを含有するガス化のガス流および当該ガス化反応のために有用な最終的な熱補完を可能にする酸素(O)の供給を有する、炭素含有原料についてのガス化反応器であって、このガス化反応器は、一酸化炭素(CO)分子および二水素(H)分子(炭素含有乾燥原料の化学配合物の中に含有される分子状水素)を実質的に含有する第1のガス流を供給する、ガス化反応器と、
− 酸化された状態にある酸素担体(MeO)による、上記一酸化炭素(CO)の分子および第1のガス流の中に存在する二水素(H)の分子の酸化のための反応器であって、この酸化反応器は、COおよび水蒸気(H)、還元された状態にある酸素担体(Me)および過剰の熱水を含有する高温の第2のガス流を供給する、反応器と、
− 実質的に水蒸気を含有する活性化のガス流を用いる、還元された状態にある上記酸素担体についての活性化反応器であって、この活性化反応器は、酸化された状態にある酸素の担体および二水素(H)を含有する第3のガス流および過剰の熱エネルギーを供給する、活性化反応器と
を具える、システムを提案する。
【0033】
他方、本発明のシステムは、上記活性化のガス流のうちの少なくとも一部ならびに第2のガス流の熱エネルギーおよび/または上記活性化の熱的過剰分のうちの少なくとも一部を供給する少なくとも1つの熱交換器を含有してもよい。
【0034】
有利なことに、本発明のシステムは、他方で、少なくとも一部は、次のサイクルのためのガス化のガス流を構成するために、第2のガス流の中に存在するCOのうちの少なくとも一部についての再利用回路を含有することができる。
【0035】
他方、本発明のシステムは、活性化のガス流のうちの少なくとも一部を構成するために、第2のガス流の中に存在する水蒸気のうちの少なくとも一部の回収を含むこともできる。
【0036】
有利な実施態様では、本発明のシステムは、第2のガス流の中に存在するCOの一部を光合成によって再利用するための微細藻類培養物バイオリアクターをも含んでもよく、このバイオリアクターは、一方でガス状の酸素流(O)を、他方で炭素含有バイオマスを供給する。
【0037】
最後に、本発明のシステムは、
− 炭素含有原料をガス化するための、ガス化反応器での注入のための酸素(O)のガス流の少なくとも一部についての回収回路;および/または
− ガス化反応器でのガス化のための、炭素含有バイオマスのうちの少なくとも一部についての回収回路
を含んでもよい。
【0038】
酸素担体は、NiO、Fe、MgO、CaOなどを含有してもよい。
【0039】
他の利点および特徴は、非限定的な実施形態の詳細な説明および添付の図面の分析から明らかになるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明のシステムの第1の実施態様の略図である。
【図2】本発明のシステムの第2の実施態様の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本例では、参考として取り上げられる炭素含有乾燥物質MPCSは植物バイオマスである。反応、エネルギー移動および熱化学的転化は、MPCSが何であれ、同一であり、製造される水素の量的な結果だけが、MPCSの化学組成の中に含有される炭素および分子状水素の比に依存する。
【0042】
実施形態の一例によれば、炭素含有乾燥物質の投入物は以下のものを含有してもよい:
− 植物バイオマスまたは動物バイオマス;
− 石炭;
− 泥炭;
− 褐炭;
− 有機残渣または無機残渣;
− 磨り減ったタイヤ;または
− これらの炭素含有物質のいずれかの組み合わせ。
【0043】
一般的に言えば、有機バイオマスは、その分子組成の中に水素を含有する。このバイオマスの化学組成は、(平均で)50%のC、44%のOおよび6%のHである。
【0044】
しかしながら、本発明者らは、特定の石炭または他の非晶質炭素の供給源の中に、および炭素を含有する特定の残渣の中にも水素を見出した。これらは、炭素含有乾燥物質MPCSとして使用されてもよい。
【0045】
図1は、本発明のシステムの第1の実施態様の略図である。
【0046】
図1に示されるシステム100は、ガス化反応器102、酸化反応器104および酸素担体106のための活性化反応器を具える。
【0047】
炭素含有乾燥原料MPCSがガス化反応器102に導入され、その後、重力により、流れの速度を下げるグリッド(図示せず)としての役割を果たす管状の網によって反応器へと流れる。
【0048】
1000℃の温度にある反応性COおよび加熱COによって実質的に構成されるガス化のガス流FGGがガス化反応器102に導入され、これは、最終的には純粋な酸素(O)が増やされる(酸素(O)のこの供給により、最終的にはガス化反応器への有用な熱補完、ガス化反応器102の温度維持およびガス化のガス流FGGの熱補完が可能になる)。ガス化のガス流FGGは、炭素含有物質MPCSの流れからの向流としてこのガス化反応器に注入される。
【0049】
導入されたCOは、この段階で1000℃以上の温度に達している炭素含有原料MPCSを見つける。この熱分解作用で、炭素含有乾燥物質MPCSの分子が分解される。1000/1100℃という転化/熱分解温度で、炭素含有乾燥物質MPCSの分子の分解は非熱的である。炭素含有乾燥物質MPCSとガス化のガス流FGGとの間の出会いの一次反応は、MPCSの熱分解/ガス化であり、その反応の間に、この分子組成のCおよびOは、COへと結合される(炭素ガス化の第一段階)。同時に、当量の分子状Oを有しないCの各成分の上での、COへのCO転化(すなわち、熱エネルギーにおける)が発生する。この熱分解作用は、化学組成が炭素および分子状酸素を含むあらゆる炭素含有乾燥物質MPCSに当てはまる。当該炭素含有原料MPCSが分子状酸素を含有しない場合には、500℃〜1000/1100℃での転化反応が実施される。
【0050】
最終的には、ガス化のガス流FGGへの酸素(O)の導入によって、ガス化反応の中心部で熱補完量を発生させることができる。導入されるこの酸素の各モルは、そのあと2モルのHおよび/または2モルのCを酸化し、ガス化反応器のコアにおいて対応する熱エネルギーを発生させる。この最終的な補償量は、ガス化反応器の中の反応の熱的調節を制御すること、および水素の最終生成を増加させるように反応の収率を増加させることを可能にする。
【0051】
この炭素含有乾燥物質MPCSの化学特性に応じて、転化/熱分解の結果は異なる組成物をもたらすであろう:
− 炭素含有物質が、炭素含有量が80%以上でありかつ分子状の酸素も水素の成分も含有しない非晶質石炭である場合、ガス化反応器102の中の反応は、炭素含有乾燥原料MPCSの炭素の上でのCOのCOへの転化であろう;
− 炭素含有原料が、有機バイオマスならびに/または、化学組成が分子状酸素の成分および分子状水素の成分を含む物質および残渣の混合物である場合、反応器102の中の反応の結果は、その炭素含有乾燥原料MPCSのガス化であろう。その反応は、最初は熱分解であり、これと併行して炭素含有乾燥原料MPCSが分子的に分解される;最初に、炭素が、分子状酸素との反応によってガス化され、分子状水素(H)が放出される。その後、COは、ガス化されるための分子状酸素の当量を有しない炭素含有乾燥物質MPCSの炭素の上でCOへと転化される。それゆえ、この効果を予測されるCOは、1/2OをCに供給して、炭素含有乾燥物質MPCSをCOの形でガス化し、CO自体はCOへと転化され、従って新しいエネルギーが生成される。これらのCOは、水素(H)の分子とともに、炭素含有乾燥原料MPCSの全エネルギーポテンシャルをシステム100の中の後続の反応セクターへ伝える。
【0052】
それゆえ、反応の結果は、ガス化反応器102の中で、炭素含有乾燥原料MPCSの質に応じて異なる。以下の具体例は、例として、平均化学組成が:
− 50%炭素:500グラム 41.667モルのC
− 44%酸素:440グラム 13.750モルのO
− 6%水素:60グラム 29.762モルのH
である原料有機バイオマスを取り上げる。
【0053】
分解/結合作用:炭素含有原料MPCSの解離、CのCOへの結合およびHの放出は、(本発明のプロセスの1000/1100℃という転化/熱分解温度においては)非熱的であり、この炭素含有乾燥物質MPCSの唯一の固有の熱は、反応を得るためのガス化のガス流FGGによって供給されるべきである。
【0054】
転化反応:COからCOへは、下記の反応によれば吸熱性である:
CO−1/2O=CO+O+283kJ/モル
C+1/2O(COから)=CO−111kJ/モル
すなわち、CO1モルあたり172kJの熱量損失。
【0055】
得られる2分子のCOのうちの各1つは、283kJ/モルの発熱量を有し、すなわち、合計で566kJであるが、一方で、C(一次反応エネルギーの炭素含有物質供給源)の発熱量は394kJ/モルである。これらの条件下で、主目的は、このエネルギーポテンシャルに帰することができない手段によってまたはこのような収率を損なわないであろう別のエネルギーを導入することにより外部の熱的手段によって、転化の吸熱から172kJを供給することである。炭素含有乾燥原料MPCSの分子的分解および結果として起こるガス化は、1000/1100℃という転化/熱分解温度においては非熱的である;それゆえ、この分解の間に放出される水素は、それゆえ、固有の熱供給を必要とせず、242kJ/モルのエネルギーポテンシャルにある。
【0056】
他方で、炭素含有乾燥物質MPCSおよびガス化のガス流FGGの温度を上昇させるために、「熱」という熱エネルギーが必要とされ、これは、ガス化のガス流FGGによって供給されるべきである(当てはまる場合、ガス化のガス流FGGとともに熱分解手段へと運ばれる酸素OによるHおよび/またはCの酸化によって発生される熱エネルギーによって補完され、有用な熱容量が生成される)。
【0057】
有機物質、炭素含有乾燥原料MPCSとしての「バイオマス」のこの例では:「一次」ガス化段階のために、Cの各モルは、分子組成から来る1/2モルのOと反応して1モルのCOを発生させることになる;13.750モルのO(27.5モルのCをCOへと酸化することができる)に対しては、27.5モルのCOが考えられる。
【0058】
この「一次」ガス化反応の最後には、
− 27.5モルのCO;
− 29.762モルのH
− 14.17モルのC(炭素含有乾燥物質MPCSの化学配合物の中に当量のOを有しない)
が得られることになる。
【0059】
これらの14.17モルのCをガス化するために、1/2モルのO、それゆえ、同じ量のCO、すなわち、14.17モルが必要とされ、このCOはCOへと転化され、1/2モルのOを14.17モルのCへと交換し、こうして28.34モルのCOを与えることになろう。
【0060】
この新しい工程では、
− 55.84モルのCO、この結果として起こる発熱量は:
×283kJ/モル=15,802.72kJ
− 29.762モルのH、この結果として起こる発熱量は:
×242kJ/モル=7,202.404kJ
すなわち、酸化可能な85.602モルにおいて、23,005.124kJのエネルギーポテンシャルを得ることになる。
【0061】
1100℃で1kgのMCPSを取り込むための必要なエネルギーは1,068.210kJである;14.17モルのCO(転化に必要とされる)を1100℃で取り込むために、717.930kJが必要とされる;14.17モルのCOの転化の吸熱を補償するために、2,437.24kJが必要とされる。
【0062】
すなわち、熱分解/転化反応についての必要とされるエネルギーの総量:乾燥原料MPCSバイオマス1kgあたり4,233.38kJ。
【0063】
このプロセスエネルギーを供給するために、ガス化のガス流FGG(これは、この例の場合、14.17モルの、反応器106から来る再利用されるCOの第3のガス流TFG1から構成される)は、本発明のプロセスの合成ガスの一部を使用する外部の熱プロセスによって;または当業者に公知の技術によるいずれかのエネルギーの供給源を使用する外部システムによって加熱されてもよい。本発明のプロセスの開始において、当該システムは、これらの手段(図示せず)のうちの1つによる反応の開始のための必要な温度へと移される。これらは、その後、熱エネルギー、ならびにあとの反応にとって有用な反応性ガスおよび加熱ガスを供給することになる。
【0064】
本発明の熱分解手段では、分子状水素は、まず、利用可能な酸素と反応する。(この特定の場合における)本発明のプロセスは29.762モルのHを有し、(ひとたび、ガス化のガス流FGGとともに注入された酸素によって酸化されると)242kJ/モルの発熱量を用いると、7,202.404kJの総エネルギーを有する。
【0065】
ガス化反応器102の中の反応に必要な熱容量を得るおよび/または集めるために、反応器106から来る再利用されるCOの第3のガス流TGF1(ひとたび有用な熱容量で獲得されると、ガス化のガス流FGGの中で変換されることになる)は、熱交換の管状のネットワークの中を循環する。この第3のガス流TFG1は、この経路の間、(システムの中の反応連鎖の間に発生される)利用可能な熱エネルギーのうちの少なくとも一部を回収し、従って有用な熱容量の一部を獲得する。
【0066】
第3のガス流TFG1が、この転化反応に有用なちょうど14.17モルのCOから構成される場合、第3のガス流TFG1が交換器108の中を通過するあいだに、第3のガス流TFG1は800℃を超える温度にあり、すなわち、回収される熱容量は574.334kJだけである。
【0067】
それゆえ、4,233.38−574.344=3,649.036kJの熱容量が、ガス化反応器102の中での反応で失われている。
【0068】
この具体例の手順で理解されるように、このような熱容量を供給するために、上記エネルギーが利用可能である(上記反応連鎖によって発生される)。これは、上記供給源からガス化反応器102へのそのエネルギーの輸送を誘導する。そのため、再利用されるCOの補完量が必要とされる(そのときは、当該プロセスを開始するために、外部供給源が有用である)。
【0069】
このような熱エネルギーを発生させるために、ガス化反応器102の反応段階において、ガス化のガス流FGGの注入口で、ガス化のガス流FGGにOの注入を行うことができる。
【0070】
1100℃における本発明の熱分解手段では、分子状水素は、最初に、利用可能な酸素と反応し、本発明のプロセス(この場合)は29.762モルのHを有するので、総発熱量は7,202.404kJである。
【0071】
これが選ばれた選択肢である場合、失われる熱容量を生成するために、15.079モルの水素が必要とされる。各注入されたモルのOは2モルの水素と反応して、2モルのHOを生成することになり、このとき、この反応のために有用な熱容量の不足を補うために、7.54モルのOが必要とされる。14.683モルのHが、純粋な水素の製造につながる一連の反応を実施するために、COと反応するべきものとして残ることになる。
【0072】
第3のガス流TFG1は、酸化104および再活性化106の反応ならびに熱交換器108の中に置かれた管状のネットワーク(交換器、および酸化/脱酸素物質の流れの速度を下げるためのグリッドの役割を果たす)の中を循環し、この第3のガス流TFG1は、その有用な熱容量全体を獲得し、ガス化のガス流FGGとなる。このガス化のガス流FGGは、1100℃以下というその熱分解/転化チャンバーの反応温度にあり、このチャンバーの中に、ガス化のガス流FGGは、当該反応のために必要とされる7.54モルのOとともに注入される。
【0073】
この特定の場合において、ガス化反応器102の排出口で、900℃を超える温度の55.84モルのCO+14.683モルのHおよび15.079モルの水蒸気(H)によって構成される第1のガス流PFGが得られる(炭素含有乾燥原料MPCSバイオマス1kgあたり)。それゆえ、この第1のガス流PFGは、著しく強力であり反応性である。これは、消散または喪失なしに、炭素含有原料から酸化反応器104へのエネルギー移動を可能にする。第1のガス流PFGは、次いで、酸化反応器104に導入され、そこで、この第1のガス流PFGは、活性なまたは酸化された状態にある酸素担体物質MeOの接触によって酸化されることになる。
【0074】
活性な酸素担体MeOは、反応器104、ならびに熱交換器および流れを減速するグリッド(図示せず)の役割を果たす素通りの管状グリッドの上方部分のレベルで酸化反応器104に導入される。
【0075】
ガス化反応器102から来る第1のガス流PFGは、(参照例によると)1kgの炭素含有乾燥原料(MPCS)について、55.84モルのCO+14.683モルのH+15.079モルの水蒸気(H)から実質的に構成される。この第1のガス流PFGは、酸素担体MeOの流れに対して向流として、(反応器104の下方部分のレベルで)酸化反応器104に導入されるとき、900℃を超える温度にある。酸化された(または活性な)状態にある酸素担体MeOとこの第1のガス流とが出会うと、以下のことが引き起こされる:
− 55.84モルの一酸化炭素COが二酸化炭素COへと酸化される。この反応は発熱的であり、283kJ/モル、すなわち、15,802.72kJを放出する;
− 14.683モルの水素Hが水蒸気(H)の中で酸化される。この反応は発熱的であり、242kJ/モル、すなわち、3,553.286kJを放出する(これらの14.683モルの水蒸気は、当該炭素含有原料MPCSバイオマスの中に存在する合計29.762モル(H)に対するガス化のガス流FGGの熱的要求の生成によって発生される15.079モルに加えられる);
− この酸化を実施するために、70.253モルのMeOが必要とされる;上記70.253モルのMeO、活性な酸素担体、の還元は吸熱性であり、244.3kJ/モル、すなわち、17,228.669kJを吸収する。
【0076】
それゆえ、全体の反応(II)は発熱的である:
70.523MeO−70.523 1/2O+17,228.769kJ+55.84CO+14.683H+70.523 1/2O−(15,802.72+3,553.288) → 55.84CO+14.683HO+70.523Me=−2,127.239kJ。
【0077】
それゆえ、酸化反応器104は、MPCSバイオマス1kgあたり2,127.239kJの発熱的であり、従って90%超(約2,000kJ)が第3の再利用されるガス流TFG1によって回収され、残部は、交換器108において回収される。
【0078】
酸化反応器104は、COおよびHOおよび還元された状態(不活性化されている)にある酸素担体Meを実質的に含む高温(≧900℃)の第2のガス流DFGを供給する。
【0079】
酸化反応器104は、熱交換器およびグリッドとしての管状のネットワーキングによって正しい温度レベル(≦1000℃)に保たれ、そこを第3の再利用されるガス流TFG1は循環し、活性化反応器106を出る(ここで、第3の再利用されるガス流TFG1は、その必須の熱容量を集め、同時に酸化反応器104の温度を調節することになる)。
【0080】
それゆえ、この第2のガス流DFGは重要な熱エネルギーを有する:3,573.083kJの熱容量+液体HOの中で凝縮された29.762モル(H)のエンタルピーからの2,228.951kJ、すなわち、5,802.034kJ。その熱エネルギーは、液体の水からの水蒸気を実質的に含有する活性化のガス流FAを発生するために、熱交換器108で使用される。
【0081】
熱交換器108の排出口でのこの第2のガス流DFGは冷たい(活性化のガス流FAを生成するために交換器に注入される液体の水の温度にある)。この流れの中に存在する水蒸気は凝縮され、その流れの中に存在するCOから分離される。
【0082】
このとき、熱交換器の排出口で、
− 液体の水(凝縮した)29.762モル
− 800℃の温度およびおよそ0.3MPaの圧力にある水蒸気、70.523モルのHを実質的に含む活性化のガス流FA;
(− この活性化のガス流FAの潜熱(800℃での蒸発)は、酸化反応器104の排出口で利用可能な5,802.034kJに対して、5,281.645kJ(これは、熱交換器108によって与えられることになる)である;MPCSバイオマス1kgあたり520.389kJがまだ利用可能である);
− 高温にありかつ乾燥したCOの第3のガス流TFG
が得られることになる。
【0083】
これらの3つの生成物はシステム100で少なくとも一部は使用されることになるということが、本開示においてこのあと理解されるであろう。
【0084】
還元された状態にある酸素担体Meは、活性化反応器106へと導入される。酸化反応器104から活性化反応器106への酸素担体の移動は、機械的手段110によって実施される。この移動は、これらの2つの反応器の構成に従って、重力によっても実施することができる。
【0085】
不活性化された酸素担体Meは、まだ約800℃という高温にあり、著しく反応性である。この活性化反応器106では、不活性化された状態にある酸素担体Meは、向流として循環する水蒸気HOから実質的に構成される活性化のガス流FAの酸素によって再活性化される;70.523モルのMeは、70.523モルのHOと反応し、MPCSバイオマス1kgあたり70.523モルのH、142.174グラムの純粋な水素を製造し、これより、高位発熱量(PCS)は、242倍して、17,066.566kJである。
【0086】
水蒸気と接触した酸素担体Meの酸化は、一方で活性な酸素担体MeOを生成し、他方で二水素のガス流FGHを生成する。
【0087】
活性化のガス流FAが単に水蒸気のみによって構成されるのに対し、水素のガス流FGHは、純粋な水素から構成される。
【0088】
活性化反応器106で検証される最終の反応(III)は発熱的であり、下記の収支に従う過剰のエネルギーを有する:
70,523Me+70.523 1/2O−(244.30×70.523=)17,228.769kJ
70.523HOg−70.523 1/2O+(242×70.523=)17,066.566kJ → 70.523MeO+70.523H−162.203kJ。
【0089】
このとき、活性化反応器106は、MCPSバイオマス1kgあたり162.203kJの発熱的であり、これは、水素のガス流FGHの固有の熱(熱容量)に加えられ、活性化反応器106の中に組み込まれた交換器において第3の再利用されるガス流TFG1によって回収される。800℃における水素のガス流FGHの熱容量は、70.523モルのHについては2,054.523kJであり、すなわち、合計で2,216.726kJである。
【0090】
この熱容量は、第3の再利用されるガス流TFG1において交換され、予備加熱を行い、かつとりわけ製造された水素の、室温での温度低下を可能にする(炭素含有乾燥原料PCS1kgあたり)。
【0091】
それゆえ、この活性化反応器106は、
− 室温の水素のガス流FGH;
− 高温(約600℃)の活性化された酸素保有体MeO;および
− 熱的過剰分
を供給する。
【0092】
MeOの中の反応した酸素担体は、機械的手段110によって酸化反応器104へと移される。
【0093】
交換器108を出てかつCOから実質的に構成される第3のガス流TFGの一部TFG1は、再利用され、以降のサイクルのためのガス化のガス流として使用される。第2のガス流の他の部分TFG2は、ストックされるか、または雰囲気の中へと廃棄される。
【0094】
しかしながら、このガス流TFG1は冷たく、ガス化のガス流FGGとして使用するためには加熱されるべきである。
【0095】
このガス流TFG1は、最初に活性化反応器106の管状の網を通過し、そこで、このガス流TFG1は水素のガス流FGH(これは、純粋な水素によって構成される)の温度を低下させ、ガス流TFG1は熱容量を獲得する。ガス流TFG1は、その後、活性化反応器106の排出口に置かれる熱交換器108の専用の管状の網を循環し、酸化反応器の熱的過剰分によって(800℃よりも高い温度の)その熱容量の第2の部分を獲得し、酸化反応器の熱的過剰分520.389kJが活性化反応器106の2,216.726kJに加えられ、すなわち、2,737.115kJとなる。その熱的過剰分から、14.17モルのガス流TFG1の反応性COによって717.930kJだけが消費され、その後2,019.185kJは、本発明のプロセスの反応連鎖のために利用可能である。この熱的過剰分は、異なる反応への種々のエネルギー移動を最適化するために使用される。この熱的過剰分は、注入されたOによる分子状水素の酸化によって供給される、ガス化反応に有用な熱供給への置換に利用されることが有利であろう。この置換は、プロセス追加物のHにおいて等価物を生成するための、酸化反応器104および活性化106反応器における連鎖反応のための分子状水素分子を与えることを可能にするであろう。
【0096】
活性化反応器106および熱交換器108の排出口で、COのガス流が、800℃を超える温度で得られる。このCOのガス流の温度を上昇させ、温度が1000℃以上であるガス化のガス流FGGを得るために、流れTFG1は、酸化反応器104に置かれた熱交換器を通過し、そこで、流れTFG1は、炭素含有物質に対する転化のために有用なその熱容量のすべてを獲得する。この交換器の排出口で得られるガス化のガス流FGGは、次いで、次のサイクルからの炭素含有乾燥原料をガス化するために、ガス化反応器へと注入される。
【0097】
交換器108の排出口で得られる液体の水は、以降のサイクルのための活性化のガス流FAを発生させるために使用されてもよい。
【0098】
残るエネルギー全体は収支均衡がとられ、反応連鎖に沿って発生される熱エネルギーの過剰分は、本発明のシステム/プロセスの種々の廃棄物および消費物を補う。
【0099】
本発明のプロセス/システムが開始されるとき、本発明のプロセス/システムが、当該反応連鎖において発生されるエネルギーを再利用することにより最適化されることが有利である可能性がある。このような最適化された熱回収は、補完的な加熱COを使用することにより行われ、この加熱COの機能は、使用されていない過剰分のその熱容量を集めてその熱容量を炭素含有乾燥原料のコアへと運ぶことである。それゆえ、使用されていないエネルギーの回収のこのような最適化は、酸素供給の必要性を低減し、(反応エネルギーの生成のための)分子状水素の分子酸化当量を削減する。それゆえ、これらの水素の分子は削減されて、最後に純粋な水素数モルを生成する補完的なMeOによって酸化されうる数モルが生み出される。
【0100】
図2は、本発明のシステムの実施形態の第2の方法の略図である。
【0101】
図2によって表されるシステム200は、図1によって表されるシステム100の要素をすべて含む。
【0102】
システム200は、微細藻類を含有するバイオリアクター202をも具える。
【0103】
交換器108の排出口で得られる第3の冷却されたガス流TFGの一部TFG2は、バイオリアクター202へと注入される。藻類培養物バイオリアクター202では、二酸化炭素COは、微細藻類により実施される光合成によって使用される。光合成は、一方で炭素含有バイオマスBCを生成し、他方で、二酸素(dioxygen)「O」の分子から炭素成分「C」を分離することにより、酸素のガス流FOを生成する。
【0104】
得られる炭素含有バイオマスBCは、バイオマスコンディショニングシステム204へと供給される。このバイオマスコンディショニングシステム204は、例えば、ガス化反応器102へと導入される前に炭素含有バイオマスBCがコンディショニングされるための乾燥システムであってもよい。
【0105】
反応器102の中での炭素含有物質のガス化に有用な熱エネルギーを補完するために使用される酸素を置き換えられるために、ガス状の酸素流FOは、例えばガス化反応器102のレベルで本発明のシステムへと供給されてもよい。
【0106】
有利なことに、実施形態のこの第2の方法における炭素含有バイオマスの製造は、以下の事柄によって、設備の全体の収率を刺激する:
− 高付加価値を有する原料(食用/医薬分子 オメガ3、バイオ石油など)を供給すること、
− 本発明のプロセスに炭素含有乾燥物質を一部は供給するバイオマス石炭(高付加価値を有する分子の抽出物の熱分解残渣)、
− CO流TFG2の完全再利用をして、本発明のプロセスのガス回路を閉じること。
【0107】
炭素含有バイオマスの製造は、本発明のシステム/プロセスに全部導入することもできる。従って、炭素含有原料の回路も、閉じた輪となり、環境およびその資源に対して最小のインパクトしか与えずに、水素は連続的に製造される。
【0108】
この例では、炭素は、Oの分子によって酸化され、従って、再度COが発生し、これは、同様にして再利用される。大気への排出はなく、またはCO隔離も組織される必要はない。
【0109】
それゆえ、本発明のプロセスおよびシステムは、開始段階のあとは、エネルギーのいずれの外部供給源からも独立している。
【0110】
本発明は、これまでに開示された例に決して限定されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素含有原料(MPCS)から水素(H)を製造するためのプロセスであって、以下の工程:
− 第1のいわゆるガス化反応器(102)の中での、高温のCOおよび酸素(O)を含有するガス化のガス流(FGG)を用いた、炭素含有原料(MPCS)のガス化であって、前記ガス化は、一酸化炭素(CO)の分子および分子状二水素(H)の分子を実質的に含有する第1のガス流(PFG)を供給する、ガス化;
− 第2のいわゆる酸化反応器(104)の中での、前記第1のガス流(PFG)の中に存在する前記一酸化炭素(CO)の分子および分子状二水素(104)の、酸化された状態にある酸素担体(MeO)による酸化であって、前記酸化は、COを含有する高温の第2のガス流(DFG)、還元された状態にある酸素担体および過剰の熱エネルギーを供給する、酸化;
− 第3のいわゆる活性化反応器(106)の中での、高温の水蒸気(H蒸気)を実質的に含有する活性化のガス流(FA)による、前記還元された状態にある酸素担体(Me)の活性化であって、前記活性化は、酸化された状態にある酸素担体(MeO)、二水素(H)を含有する第3のガス流(FGH)および過剰の熱エネルギーを供給する、活性化
の少なくとも1回の繰り返しを含むことを特徴とするプロセス。
【請求項2】
一方で、水からの前記活性化のガス流(FA)のうちの少なくとも一部の製造のための、前記第2のガス流(DFG)の熱エネルギーおよび/または前記酸化/活性化の熱的過剰分の使用を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
以降のサイクルのために、前記ガス化のガス流(FGG)のうちの少なくとも一部を構成するための、前記第2のガス流(DFG)の中に存在するCOの少なくとも一部(TFG1)の回収を含む、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記活性化のガス流(FA)のうちの少なくとも一部を構成するための、最終的には前記第2のガス流(DFG)の中に存在する前記水蒸気(H蒸気)のうちの少なくとも一部の回収を含む、請求項1または請求項2に記載のプロセス。
【請求項5】
以降のサイクルのために、前記ガス化のガス流(FGG)をガス化温度にするために、酸素担体による前記第1のガス流(PFG)の酸化および前記酸素担体の活性化の熱的過剰分の少なくとも一部、ならびに前記ガス化の間に発生される前記熱エネルギーの一部を用いた前記ガス化のガス流(FGG)の温度の上昇も含む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
他方、微細藻類培養物バイオリアクター(202)の中での、前記第2のガス流(DFG)の中に存在するCOの一部(TFG2)の光合成による再利用を含み、前記バイオリアクター(202)は、一方で酸素のガス流(FO)を、他方で炭素含有バイオマス(BC)を供給する、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記炭素含有原料(MPCS)をガス化するための、前記ガス化反応器(102)の中での、前記酸素のガス流(FO)のうちの少なくとも一部の使用を含む、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記ガス化反応器(102)の中でのガス化のために、前記炭素含有バイオマス(BC)のうちの少なくとも一部の回収を含む、請求項6または請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
炭素含有原料(MPC)から水素(H)を製造するためのシステム(100、200)であって、
− 高温のCOおよび酸素(O)を含有するガス化のガス流(FGG)を有する、炭素含有乾燥原料(MPCS)のためのガス化反応器(102)であって、前記ガス化反応器(102)は、一酸化炭素(CO)の分子を実質的に含有する高温の第1のガス流(PFG)を供給する、ガス化反応器(102);
− 前記第1のガス流(PFG)の中に存在する前記一酸化炭素(CO)の分子および分子状二水素(H)の、酸化された状態にある酸素担体(MeO)による酸化反応器(104)であって、前記酸化反応器(104)は、COを含有する高温の第2のガス流(DFG)、還元された状態にある酸素担体(Me)および過剰の熱エネルギーを供給する、酸化反応器(104);
− 高温の水蒸気(H蒸気)を実質的に含有する活性化のガス流(FA)による、前記還元された状態にある酸素担体(Me)の活性化反応器(106)であって、前記活性化反応器(106)は、酸化された状態にある酸素担体(MeO)、二水素(106)を含有する室温の第3のガス流(FGH)および過剰の熱エネルギーを供給する、活性化反応器(106)
を具えることを特徴とするシステム(100、200)。
【請求項10】
他方で、少なくとも、水からの前記活性化のガス流(FA)のうちの少なくとも一部ならびに前記第2のガス流(DFG)の熱エネルギーおよび/または前記活性化の前記熱的過剰分のうちの少なくとも一部を供給する熱交換器(108)を具える、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
次のサイクルのための前記ガス化のガス流(FGG)のうちの少なくとも一部を構成するための、前記第2のガス流(DFG)の中に存在するCOの少なくとも一部(TFG1)の再利用回路を含む、請求項9または請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
前記第2のガス流(DFG)の中に存在するCOの一部(TFG2)の、光合成による再利用のための微細藻類培養物バイオリアクター(202)をも具え、前記バイオリアクター(202)は、一方で酸素のガス流(FO)を、他方で炭素含有バイオマス(BC)を供給する、請求項9から請求項11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
− 前記炭素含有原料(MPCS)をガス化するための、前記ガス化反応器(102)での注入のための、前記酸素のガス流(FO)のうちの少なくとも一部のための回収回路;および/または
− 前記ガス化反応器(102)でのガス化のための前記炭素含有バイオマス(BC)のうちの少なくとも一部のための回収回路
を具える、請求項12に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−518030(P2013−518030A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−551450(P2012−551450)
【出願日】平成23年1月17日(2011.1.17)
【国際出願番号】PCT/BR2011/000020
【国際公開番号】WO2011/091496
【国際公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(512200284)シー ― ソルコエス エネルギア イ メイオアンビエンテ リミターダ (4)
【Fターム(参考)】